特許第6801667号(P6801667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6801667
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13363 20060101AFI20201207BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20201207BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   G02F1/13363
   G02F1/1335 510
   G02B5/30
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-543424(P2017-543424)
(86)(22)【出願日】2016年9月27日
(86)【国際出願番号】JP2016078419
(87)【国際公開番号】WO2017057347
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2019年4月4日
(31)【優先権主張番号】特願2015-193909(P2015-193909)
(32)【優先日】2015年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】合田 和矢
(72)【発明者】
【氏名】藤井 義徳
【審査官】 磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−050482(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/157182(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2007−0113749(KR,A)
【文献】 国際公開第2005/050299(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13363
G02F 1/1335
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一偏光板、光学異方体(B)、光学異方体(A)、水平配向モードの液晶セル、及び、前記第一偏光板の偏光透過軸に略垂直な偏光透過軸を有する第二偏光板を、視認側からこの順に備える液晶表示装置であって、
前記光学異方体(A)が、固有複屈折値が負の材料からなり、
前記光学異方体(B)が、固有複屈折値が正の材料からなり、
前記光学異方体(A)の面内の遅相軸と、前記光学異方体(B)の面内の遅相軸とが、略平行であり、
前記光学異方体(B)の面内の遅相軸が、前記第一偏光板の偏光透過軸と略垂直であり、
前記光学異方体(A)の波長550nmにおける面内レターデーションRe(A550)が、10nm以上50nm以下であり、
前記光学異方体(A)の波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth(A550)が、−70nm以上−10nm以下であり、
前記光学異方体(B)の波長550nmにおける面内レターデーションRe(B550)が、200nm以上500nm以下であり、
前記光学異方体(B)の波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth(B550)が、100nm以上250nm以下である、液晶表示装置。
【請求項2】
前記光学異方体(A)の、波長450nmにおける面内レターデーションRe(A450)、波長550nmにおける面内レターデーションRe(A550)、及び、波長650nmにおける面内レターデーションRe(A650)が、
0.80≦Re(A450)/Re(A550)≦1.09、及び、
0.97≦Re(A650)/Re(A550)≦1.20
を満たし、
前記光学異方体(B)の波長450nmにおける面内レターデーションRe(B450)、波長550nmにおける面内レターデーションRe(B550)、及び、波長650nmにおける面内レターデーションRe(B650)が、
0.97≦Re(B450)/Re(B550)≦1.09、及び、
0.97≦Re(B650)/Re(B550)≦1.03
を満たす、請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記液晶表示装置が、前記第一偏光板、前記光学異方体(B)、前記光学異方体(A)、前記液晶セル、前記第二偏光板及びバックライトユニットをこの順に備え、
極角60°、前記第一偏光板の偏光透過軸に対する方位角45°の方向から観察した前記液晶表示装置の黒輝度が、前記バックライトユニット単体を点灯し正面方向から観察した場合の輝度を100.0とした相対輝度で、1.4以下である、請求項1又は2記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インプレーンスイッチングモード(IPS)などの水平配向モードの液晶セルは、液晶分子が当該液晶セルの基板面に対して平行に配向しており、視野角特性等の特性に優れる。そのため、近年、このような水平配向モードの液晶セルを備えた液晶表示装置について、様々な検討が進められている(特許文献1〜6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4938632号公報
【特許文献2】特開2007−298960号公報
【特許文献3】特開2014−13414号公報
【特許文献4】特許第4882223号公報
【特許文献5】特開2010−217870号公報
【特許文献6】特表2012−514222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶表示装置では、画質を向上させる観点では、光の透過を遮断した黒表示の際の輝度を低くすることが好ましい。以下、適宜、黒表示の際の輝度を「黒輝度」ということがある。ところが、水平配向モードの液晶セルを備えた液晶表示装置では、正面方向から観察した黒輝度が低くても、傾斜方向から観察した黒輝度が高いことがあった。
【0005】
本発明は前記の課題に鑑みて創案されたもので、黒表示の際に傾斜方向から観察した輝度を低くできる、水平配向モードの液晶セルを備えた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、水平配向モードの液晶セルを備える液晶表示装置の視認側偏光板と液晶セルとの間に、所定の光学異方体(A)及び光学異方体(B)を設けることにより、黒表示の際に傾斜方向から観察した輝度を低くできることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は下記の通りである。
【0007】
〔1〕 第一偏光板、光学異方体(B)、光学異方体(A)、水平配向モードの液晶セル、及び、前記第一偏光板の偏光透過軸に略垂直な偏光透過軸を有する第二偏光板を、視認側からこの順に備える液晶表示装置であって、
前記光学異方体(A)が、固有複屈折値が負の材料からなり、
前記光学異方体(B)が、固有複屈折値が正の材料からなり、
前記光学異方体(A)の面内の遅相軸と、前記光学異方体(B)の面内の遅相軸とが、略平行であり、
前記光学異方体(B)の面内の遅相軸が、前記第一偏光板の偏光透過軸と略垂直であり、
前記光学異方体(A)の波長550nmにおける面内レターデーションRe(A550)が、10nm以上50nm以下であり、
前記光学異方体(A)の波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth(A550)が、−70nm以上−10nm以下であり、
前記光学異方体(B)の波長550nmにおける面内レターデーションRe(B550)が、200nm以上500nm以下であり、
前記光学異方体(B)の波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth(B550)が、100nm以上250nm以下である、液晶表示装置。
〔2〕 前記光学異方体(A)の、波長450nmにおける面内レターデーションRe(A450)、波長550nmにおける面内レターデーションRe(A550)、及び、波長650nmにおける面内レターデーションRe(A650)が、
0.80≦Re(A450)/Re(A550)≦1.09、及び、
0.97≦Re(A650)/Re(A550)≦1.20
を満たし、
前記光学異方体(B)の波長450nmにおける面内レターデーションRe(B450)、波長550nmにおける面内レターデーションRe(B550)、及び、波長650nmにおける面内レターデーションRe(B650)が、
0.97≦Re(B450)/Re(B550)≦1.09、及び、
0.97≦Re(B650)/Re(B550)≦1.03
を満たす、〔1〕記載の液晶表示装置。
〔3〕 前記液晶表示装置が、前記第一偏光板、前記光学異方体(B)、前記光学異方体(A)、前記液晶セル、前記第二偏光板及びバックライトユニットをこの順に備え、
極角60°、前記第一偏光板の偏光透過軸に対する方位角45°の方向から観察した前記液晶表示装置の黒輝度が、前記バックライトユニット単体を点灯し正面方向から観察した場合の輝度を100.0とした相対輝度で、1.4以下である、〔1〕又は〔2〕記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、黒表示の際に傾斜方向から観察した輝度を低くできる、水平配向モードの液晶セルを備えた液晶表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る液晶表示装置を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る液晶表示装置を分解して模式的に示す分解斜視図である。
図3図3は、本発明の実施例1におけるシミュレーションで計算された液晶表示装置の黒表示の際の輝度を示すコンター図である。
図4図4は、本発明の実施例2におけるシミュレーションで計算された液晶表示装置の黒表示の際の輝度を示すコンター図である。
図5図5は、本発明の実施例3におけるシミュレーションで計算された液晶表示装置の黒表示の際の輝度を示すコンター図である。
図6図6は、本発明の実施例4におけるシミュレーションで計算された液晶表示装置の黒表示の際の輝度を示すコンター図である。
図7図7は、本発明の実施例5におけるシミュレーションで計算された液晶表示装置の黒表示の際の輝度を示すコンター図である。
図8図8は、本発明の実施例6におけるシミュレーションで計算された液晶表示装置の黒表示の際の輝度を示すコンター図である。
図9図9は、比較例1におけるシミュレーションで計算された液晶表示装置の黒表示の際の輝度を示すコンター図である。
図10図10は、比較例2におけるシミュレーションで計算された液晶表示装置の黒表示の際の輝度を示すコンター図である。
図11図11は、比較例3におけるシミュレーションで計算された液晶表示装置の黒表示の際の輝度を示すコンター図である。
図12図12は、比較例4におけるシミュレーションで計算された液晶表示装置の黒表示の際の輝度を示すコンター図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0011】
フィルムの面内レターデーションは、別に断らない限り、(nx−ny)×dで表される値である。また、フィルムの厚み方向のレターデーションは、別に断らない限り、{(nx+ny)/2−nz}×dで表される値である。さらに、フィルムのNZ係数は、別に断らない限り、(nx−nz)/(nx−ny)で表される値である。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、フィルムの前記面内方向であってnxの方向に垂直な方向の屈折率を表す。nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を表す。dは、フィルムの膜厚を表す。別に断らない限り、前記のレターデーションの測定波長は550nmである。前記のレターデーションは、市販の位相差測定装置(例えば、ポラリメータ(Axiometric社製「Axoscan」)、王子計測機器社製「KOBRA−21ADH」、フォトニックラティス社製「WPA−micro」)あるいはセナルモン法を用いて測定できる。
【0012】
以下の説明において、固有複屈折値が正の材料とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも大きくなる材料を意味する。また、固有複屈折値が負の材料とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも小さくなる材料を意味する。材料の固有複屈折値は、誘電率分布から計算することができる。
【0013】
以下の説明において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含し、「(メタ)アクリロニトリル」は、「アクリロニトリル」及び「メタクリロニトリル」の両方を包含する。
【0014】
以下の説明において、液晶表示装置の正面方向とは、別に断らない限り、当該液晶表示装置の表示面の法線方向を意味し、具体的には前記表示面の極角0°且つ方位角0°の方向を指す。
【0015】
以下の説明において、液晶表示装置の傾斜方向とは、別に断らない限り、当該液晶表示装置の表示面に平行でも垂直でもない方向を意味し、具体的には前記表示面の極角が0°より大きく90°より小さい範囲の方向を指す。
【0016】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。
【0017】
以下の説明において、「偏光板」とは、別に断らない限り、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0018】
以下の説明において、2つの光学部材の光学軸(偏光透過軸、偏光吸収軸及び遅相軸等)がなす角度は、別に断らない限り、前記の光学部材をその厚み方向から見たときの角度を表す。
【0019】
以下の説明において、フィルムの遅相軸とは、別に断らない限り、当該フィルムの面内における遅相軸を表す。
【0020】
[1.液晶表示装置の実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る液晶表示装置100を模式的に示す斜視図である。また、図2は、本発明の一実施形態に係る液晶表示装置100を分解して模式的に示す分解斜視図である。
図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態に係る液晶表示装置100は、第一偏光板としての視認側偏光板110、光学異方体(B)120、光学異方体(A)130、液晶セル140、第二偏光板としての光源側偏光板150及び光源としてのバックライトユニット160を、視認側からこの順に備える。このような液晶表示装置100では、バックライトユニット160が発した光が、光源側偏光板150を透過することによって直線偏光となり、その直線偏光が、液晶セル140、光学異方体(A)130、光学異方体(B)120及び視認側偏光板110をこの順に透過することで、視認側偏光板110の視認側にある表示面に画像が表示される。ここで、視認側とは、液晶表示装置100を観察する観察者に近い側をいい、通常は、液晶表示装置100の表示面に近い側をいう。また、図1において、矢印Aは、表示面の法線方向を示し、矢印Aは、表示面の傾斜方向を示す。
【0021】
〔1.1.第一偏光板110〕
図2に示すように、視認側偏光板110は、偏光透過軸A110を有する偏光板である。この視認側偏光板110は、偏光透過軸A110と平行な振動方向を有する直線偏光を透過させ、それ以外の偏光を吸収しうる機能を有する。ここで、直線偏光の振動方向とは、直線偏光の電場の振動方向を意味する。
【0022】
〔1.2.光学異方体(B)120〕
光学異方体(B)120は、固有複屈折値が正の材料からなる部材である。光学異方体(B)120として固有複屈折値が正の材料からなる部材を用いることにより、正面方向から観察した場合及び傾斜方向から観察した場合の両方において、黒輝度を低くできる。この光学異方体(B)120としては、通常、フィルムを用いる。
【0023】
光学異方体(B)120は、光学的な異方性を有する部材であり、その面内に遅相軸A120を有する。光学異方体(B)120の遅相軸A120は、視認側偏光板110の偏光透過軸A110と、略垂直である。ここで、視認側偏光板110の偏光透過軸A110と光学異方体(B)120の遅相軸A120とが略垂直であるとは、偏光透過軸A110と遅相軸A120とがなす角が、通常85°以上、好ましくは88°以上、より好ましくは89°以上、且つ、通常95°以下、好ましくは92°以下、より好ましくは91°以下であることをいう。光学異方体(B)120の遅相軸A120と視認側偏光板110の偏光透過軸A110とを略垂直にすることで、正面方向から観察した場合及び傾斜方向から観察した場合の両方において、黒輝度を低くできる。
【0024】
光学異方体(B)120の波長550nmにおける面内レターデーションRe(B550)は、通常200nm以上、好ましくは250nm以上、より好ましくは300nm以上であり、通常500nm以下、好ましくは450nm以下、より好ましくは400nm以下である。光学異方体(B)120の面内レターデーションRe(B550)を前記の範囲に収めることにより、正面方向から観察した場合及び傾斜方向から観察した場合の両方において、黒輝度を低くできる。
【0025】
光学異方体(B)120の波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth(B550)は、通常100nm以上、好ましくは125nm以上、より好ましくは150nm以上であり、通常250nm以下、好ましくは225nm以下、より好ましくは200nm以下である。光学異方体(B)120の厚み方向のレターデーションRth(B550)を前記の範囲に収めることにより、正面方向から観察した場合及び傾斜方向から観察した場合の両方において、黒輝度を低くできる。
【0026】
光学異方体(B)120のNZ係数は、好ましくは0.90以上、より好ましくは0.95以上、特に好ましくは0.98以上であり、好ましくは1.1以下、より好ましくは1.05以下、特に好ましくは1.02以下である。光学異方体(B)120のNZ係数を前記の範囲に収めることにより、正面方向から観察した場合及び傾斜方向から観察した場合の両方において、黒輝度を効果的に低くできる。
【0027】
光学異方体(B)120は、測定波長に依って面内レターデーションの値が大きく異ならない面内レターデーションを有することが好ましい。具体的には、光学異方体(B)120の波長450nmにおける面内レターデーションRe(B450)、光学異方体(B)120の波長550nmにおける面内レターデーションRe(B550)、及び、光学異方体(B)120の波長650nmにおける面内レターデーションRe(B650)が、下記の式(B−I)及び(B−II)を満たすことが好ましい。
0.97≦Re(B450)/Re(B550)≦1.09 (B−I)
0.97≦Re(B650)/Re(B550)≦1.03 (B−II)
【0028】
より詳細には、「Re(B450)/Re(B550)」は、好ましくは0.97以上、より好ましくは0.98以上、特に好ましくは0.99以上であり、好ましくは1.09以下、より好ましくは1.07以下、特に好ましくは1.05以下である。
さらに、「Re(B650)/Re(B550)」は、好ましくは0.97以上、より好ましくは0.98以上、特に好ましくは0.99以上であり、好ましくは1.03以下、より好ましくは1.02以下、特に好ましくは1.01以下である。
前記の「Re(B450)/Re(B550)」及び「Re(B650)/Re(B550)」が前記の範囲に収まることにより、正面方向から観察した場合及び傾斜方向から観察した場合の両方において、黒輝度を効果的に低くできる。
【0029】
〔1.3.光学異方体(A)130〕
光学異方体(A)130は、固有複屈折値が負の材料からなる部材である。光学異方体(A)130として固有複屈折値が負の材料からなる部材を用いることにより、正面方向から観察した場合及び傾斜方向から観察した場合の両方において、黒輝度を低くできる。この光学異方体(A)130としては、通常、フィルムを用いる。
【0030】
光学異方体(A)130は、光学的な異方性を有する部材であり、その面内に遅相軸A130を有する。光学異方体(A)130の遅相軸A130は、光学異方体(B)120の遅相軸A120と、略平行である。ここで、光学異方体(A)130の遅相軸A130と光学異方体(B)120の遅相軸A120とが略平行であるとは、遅相軸A130と遅相軸A120とがなす角が、通常−5°以上、好ましくは−2°以上、より好ましくは−1°以上、且つ、通常5°以下、好ましくは2°以下、より好ましくは1°以下であることをいう。光学異方体(A)130の遅相軸A130と光学異方体(B)120の遅相軸A120とを略平行にすることで、正面方向から観察した場合及び傾斜方向から観察した場合の両方において、黒輝度を低くできる。
【0031】
光学異方体(A)130の波長550nmにおける面内レターデーションRe(A550)は、通常10nm以上、好ましくは15nm以上、より好ましくは20nm以上であり、通常50nm以下、好ましくは45nm以下、より好ましくは40nm以下である。光学異方体(A)130の面内レターデーションRe(A550)を前記の範囲に収めることにより、正面方向から観察した場合及び傾斜方向から観察した場合の両方において、黒輝度を低くできる。
【0032】
光学異方体(A)130の波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth(A550)は、通常−70nm以上、好ましくは−65nm以上、より好ましくは−60nm以上であり、通常−10nm以下、好ましくは−15nm以下、より好ましくは−20nm以下である。光学異方体(A)130の厚み方向のレターデーションRth(A550)を前記の範囲に収めることにより、正面方向から観察した場合及び傾斜方向から観察した場合の両方において、黒輝度を低くできる。
【0033】
光学異方体(A)130のNZ係数は、好ましくは−1.10以上、より好ましくは−1.05以上、特に好ましくは−1.02以上であり、好ましくは−0.90以下、より好ましくは−0.95以下、特に好ましくは−0.98以下である。光学異方体(A)130のNZ係数を前記の範囲に収めることにより、正面方向から観察した場合及び傾斜方向から観察した場合の両方において、黒輝度を効果的に低くできる。
【0034】
光学異方体(A)130は、測定波長に依って面内レターデーションの値が大きく異ならない面内レターデーションを有することが好ましい。具体的には、光学異方体(A)130の波長450nmにおける面内レターデーションRe(A450)、光学異方体(A)130の波長550nmにおける面内レターデーションRe(A550)、及び、光学異方体(A)130の波長650nmにおける面内レターデーションRe(A650)が、下記の式(A−I)及び式(A−II)を満たすことが好ましい。
0.80≦Re(A450)/Re(A550)≦1.09 (A−I)
0.97≦Re(A650)/Re(A550)≦1.20 (A−II)
【0035】
より詳細には、「Re(A450)/Re(A550)」は、好ましくは0.80以上、より好ましくは0.85以上、特に好ましくは0.90以上であり、好ましくは1.09以下、より好ましくは1.07以下、特に好ましくは1.05以下である。
さらに、「Re(A650)/Re(A550)」は、好ましくは0.97以上、より好ましくは0.98以上、特に好ましくは0.99以上であり、好ましくは1.20以下、より好ましくは1.15以下、特に好ましくは1.10以下である。
前記の「Re(A450)/Re(A550)」及び「Re(A650)/Re(A550)」が前記の範囲に収まることにより、正面方向から観察した場合及び傾斜方向から観察した場合の両方において、黒輝度を効果的に低くできる。
【0036】
〔1.4.液晶セル140〕
液晶セル140は、図示しない電極から印加される電圧に応じて分子の配向が変化しうる液晶を含む素子であり、印加される電圧に応じて光源側偏光板150を透過した直線偏光を旋光させうるように設けられている。このような液晶セル140は、通常、一対の基板と、それらの基板間に挿入された液晶とを有する。
【0037】
このような液晶セル140として、本実施形態に係る液晶表示装置100は、水平配向モードの液晶セルを用いる。通常、水平配向モードの液晶セル140では、液晶分子が、液晶セル140の基板と平行を保ちながら、印加される電圧に応じて配向の変化を生じる。このような水平配向モードの液晶セル140としては、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、フリンジフィールドスイッチング(FFS)モード及び強誘電性液晶(FLC)モードなどが挙げられる。
【0038】
〔1.5.光源側偏光板150〕
図2に示すように、光源側偏光板150は、偏光透過軸A150を有する偏光板である。この光源側偏光板150は、偏光透過軸A150と平行な振動方向を有する直線偏光を透過させ、それ以外の偏光を吸収しうる機能を有する。
【0039】
光源側偏光板150の偏光透過軸A150は、視認側偏光板110の偏光透過軸A110と、略垂直である。ここで、視認側偏光板110の偏光透過軸A110と光源側偏光板150の偏光透過軸A150とが略垂直であるとは、偏光透過軸A110と偏光透過軸A150とがなす角が、通常85°以上、好ましくは88°以上、より好ましくは89°以上、且つ、通常95°以下、好ましくは92°以下、より好ましくは91°以下であることをいう。視認側偏光板110の偏光透過軸A110と光源側偏光板150の偏光透過軸A150とが略垂直であることにより、画像表示装置100は、液晶セル140によって光の透過及び遮断の制御を行うことが可能となっている。
【0040】
〔1.6.バックライトユニット160〕
バックライトユニット160としては、特に限定されず、液晶表示装置に採用されうる任意の光源を用いうる。バックライトユニット160の具体例としては、冷陰極管、発光ダイオード、有機エレクトロルミネッセンス素子などを備えるバックライトユニットが挙げられる。
【0041】
〔1.7.液晶表示装置100の特性〕
本発明の一実施形態に係る液晶表示装置100は、上述した構造を有する。このような液晶表示装置100では、バックライトユニット160が発した光が、光源側偏光板150を透過することによって直線偏光となり、その直線偏光が視認側偏光板110を透過することで、視認側偏光板110の視認側にある表示面に画像が表示される。また、黒表示の際には、光源側偏光板150を透過した直線偏光が、光源側偏光板150の偏光透過軸A150とは略垂直な偏光透過軸A110を有する前記の視認側偏光板110によって遮断されるので、光は視認側偏光板110を透過できなくなって、輝度が低くなる。
【0042】
一般に、液晶表示装置では、液晶表示装置の表示面を、当該表示面に平行でも垂直でもない傾斜方向から観察した場合、光源側偏光板の偏光透過軸と視認側偏光板の偏光透過軸とが垂直でなくなる。そのため、従来の液晶表示装置を黒表示とした場合に、その表示面を傾斜方向から観察すると、一部の光が視認側偏光板を透過して、黒輝度が高くなっていた。
【0043】
これに対し、本実施形態に係る液晶表示装置100では、光学異方体(A)130及び光学異方体(B)120の組み合わせが適切な偏光板補償機能を発揮する。そのため、黒表示にした液晶表示装置100を、図1において矢印Aで示す傾斜方向から観察した場合、光源側偏光板150を透過した直線偏光は、視認側偏光板110によって効果的に遮断される。そのため、本実施形態に係る液晶表示装置100は、黒表示の際に傾斜方向Aから観察した輝度を低くできる。
【0044】
例えば、図1に示すように、本実施形態に係る液晶表示装置100の表示面を、極角θ=60°、視認側偏光板110の偏光透過軸A110に対する方位角φ=45°の方向から観察した黒輝度は、従来よりも低い範囲にできる。具体的には、前記の黒輝度は、バックライトユニット160単体を点灯し正面方向から観察した場合の輝度を100.0とした相対輝度で、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下、特に好ましくは1.2以下であり、理想的には1.0である。
【0045】
また、本実施形態に係る液晶表示装置100は、通常、黒表示の際に正面方向から観察した輝度を低くできる。具体的には、液晶表示装置100の表示面を、極角θ=0°の方向から観察した黒輝度は、バックライトユニット160単体を点灯し正面方向から観察した場合の輝度を100.0とした相対輝度で、好ましくは0.004以下、より好ましくは0.003以下、特に好ましくは0.002以下であり、理想的には0である。
【0046】
さらに、本実施形態に係る液晶表示装置100は、通常、視野角特性に優れる。そのため、液晶表示装置100の表示面に表示された画像を、観察者は、広い角度範囲から視ることができる。
【0047】
〔1.8.変更例〕
以上、本発明の一実施形態に係る液晶表示装置100を説明したが、この液晶表示装置100は、更に変更して実施してもよい。
例えば、光学異方体(A)130及び光学異方体(B)120は、必要に応じて粘着剤又は接着剤を用いて、貼り合わせて、単一の光学積層体としてもよい。さらに、光学異方体(A)に相当する層及び光学異方体(B)に相当する層を備える積層体を、光学異方体(A)130及び光学異方体(B)120に代わる要素として液晶表示装置に設けてもよい。
【0048】
また、例えば、液晶表示装置100は、上述した視認側偏光板110、光学異方体(B)120、光学異方体(A)130、液晶セル140、光源側偏光板150及びバックライトユニット160に組み合わせて、更に任意の構成要素を備えていてもよい。任意の構成要素としては、例えば、反射板、拡散板、輝度向上フィルム、保護フィルム等が挙げられる。
【0049】
[2.各構成要素]
次に、上述した液晶表示装置における各構成要素の好ましい例を、より具体的に説明する。
【0050】
〔2.1.光学異方体(A)〕
光学異方体(A)は、固有複屈折値が負の材料からなる部材であり、通常は、固有複屈折値が負の材料からなる単層構造又は複層構造のフィルムである。また、固有複屈折値が負の材料としては、通常、固有複屈折値が負の樹脂を用い、中でも固有複屈折値が負の熱可塑性樹脂が好ましい。
【0051】
固有複屈折値が負の樹脂は、通常、固有複屈折値が負の重合体を含み、更に必要に応じて任意の成分を含みうる。固有複屈折値が負の重合体としては、例えば、スチレン又はスチレン誘導体の単独重合体、並びに、スチレン又はスチレン誘導体と他の任意のモノマーとの共重合体を含む芳香族ビニル重合体;ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル重合体;ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル重合体;あるいはこれらの多元共重合ポリマー;などが挙げられる。また、スチレン又はスチレン誘導体に共重合させうる任意のモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、無水マレイン酸、メチルメタクリレート、及びブタジエンが挙げられる。これらの中でも、レターデーションの発現性が高いという観点から、芳香族ビニル重合体が好ましい。さらに、これらの重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0052】
固有複屈折値が負の樹脂が含みうる任意の成分としては、特開2011−209627号公報に記載の低分子化合物;固有複屈折値が負の重合体以外の重合体(例えば、固有複屈折が正の重合体、ポリ(2,6−ジメチル−1,4―フェニレンオキサイド)等);滑剤;層状結晶化合物;無機微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;可塑剤;染料及び顔料等の着色剤;帯電防止剤;などが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0053】
固有複屈折値が負の樹脂のガラス転移温度Tgは、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上、中でも好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上である。固有複屈折値が負の樹脂のガラス転移温度Tgがこのように高いことにより、固有複屈折値が負の樹脂の配向緩和を低減することができる。また、固有複屈折値が負の樹脂のガラス転移温度Tgの上限に特に制限は無いが、通常200℃以下である。
【0054】
光学異方体(A)の製造方法に制限は無い。例えば、固有複屈折値が負の樹脂を用いてフィルム状の光学異方体(A)を製造する場合には、固有複屈折値が負の樹脂から延伸前フィルムを製造する第一工程と、この延伸前フィルムを延伸して光学異方体(A)を得る第二工程と、を含む製造方法により、光学異方体(A)を製造しうる。
【0055】
第一工程では、固有複屈折値が負の樹脂をフィルム状に成形することにより、延伸前フィルムを得る。成形方法としては、例えば、溶融成形法、溶液流延法が挙げられる。溶融成形法のより具体的な例としては、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、及び延伸成形法が挙げられる。これらの方法の中でも、機械強度及び表面精度に優れた光学異方体(A)を得るために、押出成形法、インフレーション成形法又はプレス成形法が好ましく、中でも効率よく簡単に延伸前フィルムを製造できる観点から、押出成形法が特に好ましい。
【0056】
また、例えば、光学異方体(A)を2層以上の層を備える複層フィルムとして製造する場合、延伸前フィルムを得るための成形方法としては、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出成形方法;ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形方法;ある層に対してそれ以外の層を構成する樹脂溶液をコーティングするコーティング成形方法;などが挙げられる。中でも、製造効率が良く、延伸前フィルムに溶媒などの揮発性成分を残留させないという観点から、共押出成形方法が好ましい。共押出成形法の中でも、共押出Tダイ法が好ましい。さらに共押出Tダイ法にはフィードブロック方式、マルチマニホールド方式が挙げられるが、層の厚さのばらつきを少なくできる点でマルチマニホールド方式がさらに好ましい。
【0057】
通常、延伸前フィルムは、長尺の樹脂フィルムとして得られる。延伸前フィルムを長尺の樹脂フィルムとして用意することにより、光学異方体(A)を長尺のフィルムとして製造することができる。長尺のフィルムは製造ラインにおいて長手方向に連続的に搬送しながら製造工程を行なうことができる。このため、光学異方体(A)を製造する場合に各工程の一部または全部をインラインで行うことが可能であるので、製造を簡便且つ効率的に行なうことできる。
【0058】
第一工程で延伸前フィルムを用意した後で、その延伸前フィルムを延伸する第二工程を行う。第二工程における延伸方法は、延伸により発現させたい光学特性に応じて適切なものを任意に採用しうる。例えば、延伸は、一方向のみに延伸処理を行う一軸延伸処理を行ってもよく、異なる2方向に延伸処理を行う二軸延伸処理を行ってもよい。また、二軸延伸処理では、2方向に同時に延伸処理を行う同時二軸延伸処理を行ってもよく、ある方向に延伸処理を行った後で別の方向に延伸処理を行う逐次二軸延伸処理を行ってもよい。さらに、延伸は、延伸前フィルムの長手方向に延伸処理を行う縦延伸処理、延伸前フィルムの幅方向に延伸処理を行う横延伸処理、延伸前フィルムの幅方向に平行でもなく垂直でもない斜め方向に延伸処理を行う斜め延伸処理のいずれを行ってもよく、これらを組み合わせて行ってもよい。
【0059】
これらの中でも、光学異方体(A)に所望のレターデーションを効率良く発現させる観点では、二軸延伸処理が好ましく、同時二軸延伸処理が好ましい。また、二軸延伸処理を行う場合の延伸方向としては、通常、互いに直交する2方向を採用する。例えば、延伸前フィルムが長尺のフィルムである場合、延伸方向としては、長手方向及び幅方向を採用しうる。また、逐次二軸延伸処理を行う場合、長手方向へ自由端一軸延伸処理を行った後、幅方向に固定端一軸延伸処理を行ってもよい。
【0060】
延伸温度及び延伸倍率は、所望の光学特性を有する光学異方体(A)が得られる限り、任意である。具体的な範囲を示すと、長手方向への延伸倍率は、好ましくは1.80倍以上、より好ましくは1.85倍以上、特に好ましくは1.90倍以上であり、好ましくは2.20倍以下、より好ましくは2.15倍以下、特に好ましくは2.10倍以下である。また、幅方向への延伸倍率は、好ましくは1.10倍以上、より好ましくは1.15倍以上、特に好ましくは1.20倍以上であり、好ましくは1.40倍以下、より好ましくは1.35倍以下、特に好ましくは1.30倍以下である。さらに、延伸温度は、好ましくはTg−10℃以上、より好ましくはTg−5℃以上、特に好ましくはTg−2℃以上であり、好ましくはTg+30℃以下、より好ましくはTg+25℃以下、特に好ましくはTg+20℃以下である。
【0061】
上述した延伸により、延伸前フィルムに含まれる重合体の分子が配向して、所望の光学特性が発現することにより、光学異方体(A)が得られる。こうして得られた光学異方体(A)は、必要に応じて、別の光学部材と貼り合わせられたり、液晶表示装置に設けるのに適した形状に切り取られた後で、液晶表示装置に設けられる。
【0062】
また、特に、上述した式(A−I)及び式(A−II)を満たす光学異方体(A)を製造する方法に特段の制限は無いが、例えば、上述した製造方法において、下記の(a−i)又は(a−ii)の方法を採用しうる。
(a−i) 固有複屈折値が負の樹脂として、芳香族ビニル重合体と、特開2011−209627号公報に記載の低分子化合物とを含む樹脂を用いる。ここで、「特開2011−209627号公報に記載の低分子化合物」とは、「炭素−炭素不飽和結合を有する炭素原子鎖と、前記炭素原子鎖の一方または双方の末端に結合した芳香族基と、を含む長鎖を有する低分子化合物であって、前記長鎖において、前記炭素原子鎖および前記芳香族基にわたるπ電子共役系が形成されているもの」である。
(a−ii) 光学異方体(A)を、(メタ)アクリル重合体を含む(メタ)アクリル樹脂層/芳香族ビニル重合体を含む芳香族ビニル樹脂層/(メタ)アクリル重合体を含む(メタ)アクリル樹脂層をこの順で備える3層構造のフィルムにする。
【0063】
光学異方体(A)の厚みは、好ましくは40μm以上、より好ましくは50μm以上、特に好ましくは60μm以上であり、好ましくは110μm以下、より好ましくは100μm以下、特に好ましくは90μm以下である。光学異方体(A)の厚みが、前記範囲の下限値以上であることにより、所望のレターデーションの発現が容易となり、前記範囲の上限値以下であることにより、液晶表示装置の厚さを薄くできる。
【0064】
〔光学異方体(B)〕
光学異方体(B)は、固有複屈折値が正の材料からなる部材であり、通常は、固有複屈折値が正の材料からなる単層構造又は複層構造のフィルムである。また、固有複屈折値が正の材料としては、通常、固有複屈折値が正の樹脂を用い、中でも固有複屈折値が正の熱可塑性樹脂が好ましい。
【0065】
固有複屈折値が正の樹脂は、通常、固有複屈折値が正の重合体を含み、更に必要に応じて任意の成分を含みうる。固有複屈折値が正の重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の鎖状オレフィン重合体;ノルボルネン系重合体等の環式オレフィン重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル重合体;ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド重合体;ポリビニルアルコール重合体;ポリカーボネート重合体;ポリアリレート重合体;セルロースエステル重合体;ポリエーテルスルホン重合体;ポリスルホン重合体;ポリアリルサルホン重合体;ポリ塩化ビニル重合体;棒状液晶ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、レターデーションの発現性、低温での延伸性の観点から、ポリカーボネート重合体が好ましい。これらの重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、重合体は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。
【0066】
固有複屈折値が正の樹脂が含みうる任意の成分としては、滑剤;層状結晶化合物;無機微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;可塑剤;染料及び顔料等の着色剤;帯電防止剤;などが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0067】
固有複屈折値が正の樹脂のガラス転移温度Tgは、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上、中でも好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上である。固有複屈折値が正の樹脂のガラス転移温度Tgがこのように高いことにより、固有複屈折値が正の樹脂の配向緩和を低減することができる。また、固有複屈折値が正の樹脂のガラス転移温度Tgの上限に特に制限は無いが、通常は200℃以下である。
【0068】
光学異方体(B)の製造方法に制限は無い。例えば、固有複屈折値が正の樹脂を用いてフィルム状の光学異方体(B)を製造する場合には、固有複屈折値が正の樹脂から延伸前フィルムを製造する第三工程と、この延伸前フィルムを延伸して光学異方体(B)を得る第四工程と、を含む製造方法により、光学異方体(B)を製造しうる。
【0069】
第三工程では、固有複屈折値が正の樹脂をフィルム状に成形することにより、延伸前フィルムを得る。成形方法としては、例えば、光学異方体(A)の製造方法において説明した成形方法の範囲から、任意の方法を採用しうる。
【0070】
第三工程で延伸前フィルムを用意した後で、その延伸前フィルムを延伸する第四工程を行う。第四工程における延伸方法は、延伸により発現させたい光学特性に応じて適切なものを任意に採用しうる。延伸は、二軸延伸処理を行ってもよいが、所望の光学特性を効率良く発現させる観点から、一軸延伸処理が好ましく、自由端一軸延伸処理を行うことがより好ましい。
【0071】
延伸温度及び延伸倍率は、所望の光学特性を有する光学異方体(B)が得られる限り、任意である。具体的な範囲を示すと、延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上、特に好ましくは1.3倍以上であり、好ましくは2.0倍以下、より好ましくは1.8倍以下、特に好ましくは1.6倍以下である。また、延伸温度は、好ましくはTg−10℃以上、より好ましくはTg−5℃以上、特に好ましくはTg−2℃以上であり、好ましくはTg+30℃以下、より好ましくはTg+25℃以下、特に好ましくはTg+20℃以下である。
【0072】
上述した延伸により、延伸前フィルムに含まれる重合体の分子が配向して、所望の光学特性が発現することにより、光学異方体(B)が得られる。
また、面内レターデーションが大きい光学異方体(B)を得ようとする場合、上述した製造方法によって製造した複数枚のフィルムを貼り合わせて、光学異方体(B)を製造してもよい。
こうして得られた光学異方体(B)は、必要に応じて、別の光学部材と貼り合わせられたり、液晶表示装置に設けるのに適した形状に切り取られた後で、液晶表示装置に設けられる。
【0073】
また、特に、上述した式(B−I)及び式(B−II)を満たす光学異方体(B)を製造する方法に特段の制限は無いが、例えば、上述した製造方法において、下記の(b−i)又は(b−ii)の方法を採用しうる。
(b−i) 固有複屈折値が正の樹脂として、特許第4726148号公報に記載されている樹脂を用いる。
(b−ii) 固有複屈折値が正の樹脂として、特開2002−221622号公報に記載されているフルオレン骨格を有するポリカーボネート樹脂を用いる。
【0074】
光学異方体(B)の厚みは、好ましくは50μm以上、より好ましくは60μm以上、特に好ましくは70μm以上であり、好ましくは160μm以下、より好ましくは150μm以下、特に好ましくは140μm以下である。光学異方体(B)の厚みが、前記範囲の下限値以上であることにより、所望のレターデーションの発現が容易となり、前記範囲の上限値以下であることにより、液晶表示装置の厚さを薄くできる。
【0075】
〔偏光板〕
偏光板は、通常は偏光子を備え、必要に応じて偏光子を保護するための保護フィルムを備える。
偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等の適切なビニルアルコール系重合体のフィルムに、ヨウ素及び二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の適切な処理を適切な順序及び方式で施したものを用いうる。通常、偏光子を製造するための延伸処理では、延伸前の長尺のフィルムを長手方向に延伸するので、得られる偏光子においては当該偏光子の長手方向に平行な偏光吸収軸が発現しうる。この偏光子は、偏光吸収軸と平行な振動方向を有する直線偏光を吸収しうるものであり、特に、偏光度に優れるものが好ましい。偏光子の厚さは、5μm〜80μmが一般的であるが、これに限定されない。
【0076】
偏光子を保護するための保護フィルムとしては、任意の透明フィルムを用いうる。中でも、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性等に優れる樹脂のフィルムが好ましい。そのような樹脂としては、トリアセチルセルロース等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、鎖状オレフィン樹脂、環式オレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。
【0077】
〔液晶セル〕
水平配向モードの液晶セルの例としては、上述したように、IPSモード、FFSモード及びFLCモードが挙げられる。このような駆動モードに用いられる液晶の例としては、ネマチック液晶、スメクチック液晶が挙げられる。通常、IPSモード及びFFSモードにはネマチック液晶が用いられ、FLCモードにはスメクチック液晶が用いられる。
【0078】
IPSモードは、電圧制御複屈折(ECB:Electrically Controlled Birefringnence)効果を利用し、電界が存在しない状態でホモジニアス配向させた液晶分子を、基板に平行な電界(横電界ともいう。)で応答させる。前記の基板に平行な電界は、例えば、金属で形成された対向電極と画素電極とで発生させうる。より具体的には、例えばノーマリーブッラクモードでは、液晶セルの電界無印加時の配向方向と一方の側の偏光子の偏光吸収軸とを一致させて、上下の偏光板を直交配置させると、電界のない状態で黒表示になる。電界があるときは、液晶分子が基板に平行を保ちながら回転動作することによって、回転角に応じた透過率を得ることができる(テクノタイムズ社出版「月刊ディスプレイ7月号」p.83〜p.88(1997年版)、及び、日本液晶学会出版「液晶vol.2 No.4」p.303〜p.316(1998年版)を参照。)。また、IPSモードは、V字型電極又はジグザグ電極等を採用した、スーパー・インプレーンスイッチング(S−IPS)モード、及び、アドバンスド・スーパー・インプレーンスイッチング(AS−IPS)モードを包含する。
【0079】
FFSモードは、電圧制御複屈折効果を利用し、電界が存在しない状態でホモジニアス分子配列に配向させた液晶分子を、基板に平行な電界(横電界ともいう。)で応答させる。前記の基板に平行な電界は、例えば、透明導電体で形成された対向電極と画素電極とで発生させうる。FFSモードにおける横電界は、フリンジ電界ともいう。このフリンジ電界は、透明導電体で形成された対向電極と画素電極との間隔を、セルギャップより狭く設定することによって、発生させることができる。より具体的には、例えばノーマリーブラックモードでは、液晶セルの電界無印加時の配向方向と一方の側の偏光子の偏光吸収軸とを一致させて、上下の偏光板を直交配置させると、電界のない状態で黒表示になる。電界があるときは、液晶分子が基板に平行を保ちながら回転動作することによって、回転角に応じた透過率を得ることができる(SID(Society for Information Display)2001 Digest,p.484−p.487、及び、特開2002−031812号公報を参照。)。また、FFSモードは、V字型電極又はジグザグ電極等を採用した、アドバンスド・フリンジフィールドスイッチング(A−FFS)モード、及び、ウルトラ・フリンジフィールドスイッチング(U−FFS)モードを包含する。
【0080】
FLCモードは、例えば、強誘電性のカイラルスメクチック液晶を、厚み1μm〜2μm程度の電極基板間に封入した場合に、2つの安定な分子配向状態を示すという性質を利用する。より具体的には、印加電圧によって、上記強誘電性カイラルスメクチック液晶分子を基板に平行な面内で回転させて、応答させる。このFLCモードは、上記IPSモード及びFFSモードと同様の原理で、黒白表示を得ることができる。さらに、FLCモードは、他の駆動モードと比較して、応答速度が速い。また、FLCモードは、表面安定化(SS−FLC)モード、反強誘電性(AFLC)モード、高分子安定化(PS−FLC)モード、及び、V字特性(V−FLC)モードを包含する。
【実施例】
【0081】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中の条件において行った。
【0082】
[I.シミュレーションによる実施例及び比較例]
[実施例1]
液晶表示装置用シミュレーター(シンテック社製「LCD Master」)を用いて、図1及び図2に示すような液晶表示装置100を設定した。この液晶表示装置100は、視認側偏光板110、光学異方体(B)120、光学異方体(A)130、液晶セル140、光源側偏光板150及びバックライトユニット160をこの順に備える。視認側偏光板110の偏光透過軸A110と、光源側偏光板150の偏光透過軸A150とは、垂直にした。また、視認側偏光板110の偏光透過軸A110と、光学異方体(B)120の面内の遅相軸A120とは、垂直にした。さらに、光学異方体(B)120の面内の遅相軸A120と、光学異方体(A)130の面内の遅相軸A130とは、平行にした。
【0083】
このような液晶表示装置100において、光学異方体(A)130及び光学異方体(B)120のレターデーションを、表1に示すように設定し、黒表示の際の輝度を計算した。計算は、2×2マトリクス法を用いた光学シミュレーションにより行った。また、輝度の測定は、極角方向においては、極角0°〜80°の範囲で、5°刻みで行い、また、方位角方向では、方位角0°〜360°の範囲で、5°刻みで行った。さらに、計算される輝度の値は、バックライトユニット160単体を点灯し正面方向から観察した場合の輝度を100.0とした相対輝度で表した。測定結果は、コンター図として表示させた。
【0084】
上述したシミュレーションにおいて、液晶セル140、偏光板110及び150、並びにバックライトユニット160のデータとしては、下記のデータを使用した。
(i)液晶セル140のデータとしては、Apple社製の液晶表示装置「iPad2」用のIPSモードの液晶セルのデータを用いた。また、この液晶セル140のデータは、iPad2を分解し、液晶材料と液晶配向を測定して得られたデータを使用した。
(ii)偏光板110及び150のデータとしては、Apple社製の液晶表示装置「iPad2」を分解し、偏光板を測定して得られたデータを使用した。
(iii)バックライトユニット160のデータとしては、Apple社製の液晶表示装置「iPad2」を分解し、バックライトユニットを測定して得られたデータを使用した。
【0085】
[実施例2〜6、並びに、比較例1、2及び4]
光学異方体(A)及び光学異方体(B)のレターデーションの設定値を、表1又は表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、液晶表示装置の黒表示の際の輝度を計算した。
【0086】
[比較例3]
液晶表示装置が、視認側偏光板、液晶セル、光学異方体(A)、光学異方体(B)、光源側偏光板及びバックライトユニットをこの順に備えるように、光学異方体(A)及び光学異方体(B)の位置を変更した。また、視認側光板の偏光透過軸と、光学異方体(B)の面内の遅相軸と、光学異方体(A)の面内の遅相軸とが平行になるように、光学異方体(B)及び光学異方体(A)の面内の遅相軸の向きを変更した。さらに、光学異方体(A)及び光学異方体(B)のレターデーションの設定値を、表2に示すように変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、液晶表示装置の黒表示の際の輝度を計算した。
【0087】
[結果]
前記の実施例1〜6及び比較例1〜4の結果を、下記の表1及び表2、並びに、図3図12に示す。
下記の表において、略称の意味は、以下の通りである。
NZ:NZ係数。
「黒輝度」の欄の「正面方向」:表示面の正面方向から観察した場合の黒輝度。
「黒輝度」の欄の「傾斜方向」:表示面を、極角60°、視認側偏光板の偏光透過軸に対する方位角45°の方向から観察した場合の黒輝度。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【符号の説明】
【0090】
100 液晶表示装置
110 視認側偏光板
120 光学異方体(B)
130 光学異方体(A)
140 液晶セル
150 光源側偏光板
160 バックライトユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12