特許第6801769号(P6801769)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6801769
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20060101AFI20201207BHJP
【FI】
   G02B7/04 D
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-212984(P2019-212984)
(22)【出願日】2019年11月26日
(62)【分割の表示】特願2016-566415(P2016-566415)の分割
【原出願日】2015年12月24日
(65)【公開番号】特開2020-38390(P2020-38390A)
(43)【公開日】2020年3月12日
【審査請求日】2019年11月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-266558(P2014-266558)
(32)【優先日】2014年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(74)【代理人】
【識別番号】100146709
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 直正
(72)【発明者】
【氏名】神尾 和明
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 拓司
【審査官】 ▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−160697(JP,A)
【文献】 特開2004−139061(JP,A)
【文献】 特開2010−014786(JP,A)
【文献】 特開2001−215387(JP,A)
【文献】 特開2014−032356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02−7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筒と、
前記第1筒に対して相対的に光軸方向に直進移動が可能な第2筒と、を備え、
前記第2筒は、第1係合部と、前記第1係合部と前記光軸方向において少なくとも一部が異なる位置に配置される第2係合部と、前記第2係合部と前記光軸方向において少なくとも一部が同じ位置に配置される切り欠き部と、を有し、
前記第1筒は、前記第1係合部を直進案内する第1被係合部と、前記第2係合部を直進案内する第2被係合部と、を有し、
前記第1筒の像面側端部と前記第2筒の像面側端部とが最も近づいた状態で、前記第1筒の少なくとも一部は前記切り欠き部に入り込むレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記切り欠き部は、前記光軸方向における前記第1係合部の像面側に配置される
請求項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記第2係合部は、前記第1係合部と周方向において少なくとも一部が異なる位置に配置される
請求項1又は請求項2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記第2係合部の像面側端部は、前記第1係合部の像面側端部よりも像面側に配置される
請求項1から請求項の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記第2係合部の被写体側端部は、前記第1係合部の被写体側端部よりも像面側に配置される
請求項1から請求項の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記第1筒と前記第2筒との間に配置される第3筒を備え、
前記第3筒の像面側端部は、前記第2筒の像面側端部よりも被写体側に配置される
請求項1から請求項の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記第1係合部は、周方向において略等間隔に複数設けられる
請求項1から請求項の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
請求項1から請求項の何れか1項に記載のレンズ鏡筒を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒、及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズ鏡筒において、相対的に移動する2個の筒の直進移動を案内するための突起と溝が各々の筒に配置した構成がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−262302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
相対的に移動する2個の筒において、上記突起及び溝は、光軸OAに沿う方向で係合する部分の長さ(以下、「係合長さ」ともいう)が長いほど筒相互間のガタが小さくなり、安定した光学性能を維持できる。
しかし、筒の繰出し量が大きいレンズ鏡筒では、大きく移動する筒を退避させる隙間が必要となるため、係合長さが短くなるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によると、レンズ鏡筒は、第1筒と、前記第1筒に対して相対的に光軸方向に直進移動が可能な第2筒と、を備え、前記第2筒は、第1係合部と、前記第1係合部と前記光軸方向において少なくとも一部が異なる位置に配置される第2係合部と、前記第2係合部と前記光軸方向において少なくとも一部が同じ位置に配置される切り欠き部と、を有し、前記第1筒は、前記第1係合部を直進案内する第1被係合部と、前記第2係合部を直進案内する第2被係合部と、を有し、前記第1筒の像面側端部と前記第2筒の像面側端部とが最も近づいた状態で、前記第1筒の少なくとも一部は前記切り欠き部に入り込む
本発明の第2の態様によると、撮像装置は、第1の態様によるレンズ鏡筒を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係るカメラ1の全体図である。
図2】レンズ鏡筒3の固定筒周りの構成を示す断面図である。
図3】レンズ鏡筒3の固定筒周りの構成を示す分解斜視図である。
図4】レンズ鏡筒3の固定筒周りの構成を示す断面図である。
図5】レンズ鏡筒3の固定筒周りの構成を示す断面図である。
図6】第1直進筒20に配置された各突起及び固定筒10に設けられた各直進溝の配置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す各図には、説明と理解を容易にするために、XYZ直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸OAを水平として横長の画像を撮影する場合のカメラの位置(以下、正位置という)において撮影者から見て左側に向かう方向をXプラス方向とする。また、正位置において上側に向かう方向をYプラス方向とする。更に、正位置において被写体に向かう方向をZプラス方向又は前側とし、結像面に向かう方向をZマイナス方向又は後側とする。
また、以下の説明においては、光軸OAと平行な方向への移動を「直進」といい、光軸OAを中心とする回動を「回転」という。
【0008】
図1は、本実施形態に係るカメラ1の全体図である。
図1に示すように、カメラ1は、カメラ本体2と、カメラ本体2に対して着脱可能なレンズ鏡筒3と、を備える。カメラ本体2は、レンズ鏡筒3により結像された被写体像を撮像するイメージセンサ(不図示)を備える。また、カメラ本体2は、レンズ鏡筒3のバヨネット部と係合可能なマウント部(不図示)を備える。レンズ鏡筒3は、焦点距離を連続的に変化させることができ、また、不使用時には全長をより小さく変化させることができる沈胴式のズームレンズである。レンズ鏡筒3は、円筒状の筐体内に、撮影光学系となる複数のレンズ群と、これを保持する複数のレンズ枠等(不図示)とを備える。レンズ鏡筒3のバヨネット部(不図示)をカメラ本体2のマウント部に嵌め込み、光軸OAを中心として所定方向に回転させることにより、カメラ本体2にレンズ鏡筒3を装着することができる。このように、本実施形態に係るカメラ1は、レンズ交換可能なデジタル一眼レフカメラである。
【0009】
次に、レンズ鏡筒3の構成について説明する。以下に示す各図では、レンズ群、絞り機構等の図示を省略する。
図2図4及び図5は、レンズ鏡筒3の主要部である固定筒周りの構成(以下、「レンズ筒体LT」ともいう)を示す断面図である。図3は、レンズ鏡筒3の主要部である固定筒周りの構成を示す分解斜視図である。
図2及び図4は、固定筒10に対して各筒の繰り出しを最も長くした時(例えば、望遠端状態)の断面図である。図4は、図2に示すレンズ筒体LTを、Zプラス方向において、光軸OAを中心として時計回りに30度回転させた状態での断面図である。
図4は、固定筒10に対して各筒の繰り出しを最も短くした時(例えば、沈胴状態)の断面図である。図2図4では、各部の重なりを分かり易くするため、部材の断面を示すハッチングを部分的に省略する。
図6は、第1直進筒20に配置された各突起及び固定筒10に設けられた各直進溝の配置を示す模式図である。
【0010】
図2に示すように、レンズ筒体LTは、固定筒10と、第1直進筒20と、第1回転筒30と、第2回転筒40と、第2直進筒50と、を備える。各筒の軸線は、製造誤差等を許容する範囲で、光軸OAと略一致する。なお、光軸OAとは、レンズ鏡筒3に含まれる撮影光学系の光軸である。
固定筒(第1筒)10は、レンズ筒体LTの基盤となる円筒状の部材であり、レンズ鏡筒3がカメラ本体2装着されて使用される際に、マウント部に対する位置及び角度を固定とされる。固定筒10は、Zマイナス方向側の端部にバヨネット部(不図示)が接合される。
固定筒10は、図2図4に示すように、第1直進溝11と、第2直進溝12と、カム溝13と、を備える。
【0011】
第1直進溝(第1被係合部)11は、第1直進筒20の第1突起21(後述)を直進案内する溝である。第1直進溝11は、固定筒10を貫通する貫通溝であり、光軸OAに沿う方向に直線状に形成されている。第1直進溝11は、図3に示すように、固定筒10の円周方向に等間隔で3箇所に設けられている。
【0012】
第2直進溝(第2被係合部)12は、第1直進筒20の第2突起22を直進案内する溝である。第2直進溝12は、固定筒10を貫通しない非貫通溝であり、光軸OAに沿う方向に直線状に形成されている。第2直進溝12は、図6に示すように、固定筒10の円周方向に等間隔で3箇所に設けられている。それぞれの第2直進溝12は、固定筒10の後端側(本実施形態ではZマイナス方向側)の端部から連続して設けられている。また、それぞれの第2直進溝12は、図6に示すように、光軸OAを中心として、第1直進溝11からそれぞれ30度離れた位置に設けられている。
【0013】
カム溝13は、図4に示すように、第1回転筒30のカムフォロア31を円周方向かつ直進方向に沿って案内する溝である。図3に示すように、カム溝13は、固定筒10の円周方向に等間隔で3箇所に設けられている。それぞれのカム溝13は、固定筒10において、光軸OAに沿う方向に同一形状で略曲線状に形成されている。
【0014】
第1直進筒(第2筒)20は、図2に示すように、固定筒10の内周側に配置され、固定筒10に対して光軸OAに沿う方向に相対的に直進移動が可能な円筒状の部材である。
第1直進筒20は、図3に示すように、第1突起21と、第2突起22と、カムフォロア23と、を備える。
【0015】
第1突起(第1係合部)21は、第1直進筒20の外周面から外方に突出するように形成されている。また、第1突起21は、光軸OAに沿って延びる板状の部材であり、固定筒10の第1直進溝11と係合する。第1突起21は、第1直進溝11を貫通した状態で、第1直進溝11に沿って移動する。第1突起21は、図6に示すように、第1直進筒20の円周方向に等間隔で3箇所に配置されている。第1突起21は、Z方向から見たときに、断面が凸形状となるように形成されている。第1突起21の中央部21aは、第1直進溝11を貫通する。この中央部21aの両側に形成された2つの肩部21bは、第1直進溝11を貫通することなしに、固定筒10の内周側に当接する(図6では、中央部21a、肩部21bの符号を、Y方向の上部に位置する第1突起21にのみ表記する)。
【0016】
第2突起(第2係合部)22は、第1直進筒20の外周面から外方に突出するように形成されている。また、第2突起22は、円周方向において第1突起21とは異なる位置であって、第1突起21と同じ数だけ形成されている(図6参照)。第2突起22は、光軸OAに沿って延びる板状の部材であり、固定筒10の第2直進溝12と係合する。第2突起22は、第2直進溝12の内周面に当接した状態で、第2直進溝12に沿って移動する。
図6に示すように、固定筒10の内周側では、第1直進溝11と第1突起21の肩部21bとが当接すると共に、第2直進溝12と第2突起22とが当接する。そのため、第1突起21の中央部21aが第1直進溝11に沿って移動する際に、固定筒10の内周側において、軸線が光軸OAと一致するように第1直進筒20を安定して保持できる。
【0017】
それぞれの第2突起22は、図6に示すように、光軸OAを中心として、第1突起21からそれぞれ30度離れた位置に配置されている。即ち、第1突起21と第2突起22とは、光軸OAに沿った方向から見て、第1直進筒20の周方向における異なる位置に配置されている。また、図2及び図4に示すように、第2突起22の前端(Zプラス方向の端部)は、第1突起21の前端(Zプラス方向の端部)よりも第1直進筒20の後端側(本実施形態ではZマイナス方向側)に配置されている。また、第2突起22の後端(Zマイナス方向の端部)は、第1突起21の後端(Zマイナス方向の端部)よりも第1直進筒20の後端側(Zマイナス方向側)に配置されている。即ち、第2突起22の前端は、第1突起21の前端とは、光軸OAと沿う方向において異なる位置に配置されている。また、第2突起22の後端は、第1突起21の後端とは、光軸OAに沿う方向において異なる位置に配置されている。なお、第2突起22の前端と第1突起21の後端とは、光軸OAに沿う方向において一致していても異なっていてもよい。
【0018】
ここで、本実施形態における第1突起21及び第2突起22の作用について説明する。
一般に、固定筒10と第1直進筒20との間の光軸OAに沿う方向の係合長さは、固定筒10又は第1直進筒20の光軸OAに沿う方向の長さにより規制される。そのため、第2突起22を備えていない場合の実質的な係合長さは、図2に示すように、第1突起21の長さaとなる。この場合、光軸OAに沿う方向の係合長さが短く、固定筒10と第1直進筒20との相互間のガタを小さくできないため、安定した光学性能を維持することが難しい。
【0019】
一方、本実施形態のレンズ鏡筒3において、第1直進筒20は、第1突起21、及び第1突起21と光軸OAに沿う方向において異なる位置に配置された第2突起22を備える。そのため、本実施形態のレンズ鏡筒3において、固定筒10と第1直進筒20との間の光軸OAに沿う方向における見かけ上の係合長さは、図2に示すように、長さb(>a)となる。このように、本実施形態のレンズ鏡筒3では、光軸OAに沿う方向の実質的な係合長さをより長く確保できるため、固定筒10と第1直進筒20との相互間のガタを小さくすることが可能となり、安定した光学性能を維持できる。
【0020】
また、第1直進筒20は、第1突起21よりZマイナス方向側の領域を切り欠いて形成することもできる。そのため、第1直進筒20のZマイナス方向側に異なる部材を配置して、レンズ鏡筒3の小型化を達成することも可能である。本実施形態においては、第1直進筒20は、第1突起21の後端側に、光軸OAと直交する方向に突出する立ち壁部24を有している。立ち壁部24は、遮光部材としての機能を有する。また、第1直進筒20は、立ち壁部24よりZマイナス方向側の領域を切り欠かれている。第1直進筒20の切り欠かれた領域には、沈胴状態において、固定筒10の一部が入り込むようになっている。このように、第1突起21の長さを短くすることにより、第1直進筒20の一部を切り欠いて他の部材を配置することが可能である。そのため、沈胴状態におけるレンズ鏡筒3の長さをより短くすることができる。
なお、第1直進筒20は、円筒状の部材の一端から、少なくとも第1突起21の一端が形成された領域を第1直進溝11に沿って突出するように形成してもよい。また、第1直進筒20は、円筒状の部材の他端から、少なくとも第2突起22の他端が形成された領域を第2直進溝12に沿って突出するように形成してもよい。
【0021】
また、図6に示すように、第1突起21と第2突起22とは、第1直進筒20の外周部において、円周方向において異なる位置に配置されている。つまり、第1直進筒20は、複数種類の突起部材で直進案内することになる。そのため、第1直進筒20は、係合長さbの1種類の突起だけで直進案内するよりも、より円滑に直進案内できる。
【0022】
再び、図面を参照しながらレンズ筒体LTの構成について説明する。
図2において、第1直進筒20のカムフォロア23は、第2回転筒40の第1カム溝41(後述)と係合する部材である。カムフォロア23は、第1突起21の上部からより外方に突出するように、第1突起21と一体に形成されている。従って、カムフォロア23は、第1突起21と同じく、第1直進筒20の外周部において、円周方向に等間隔で3箇所に配置されている。
【0023】
第1回転筒(第3筒)30は、図2に示すように、固定筒10と第1直進筒20との間に配置される円筒状の部材である。第1回転筒30のZマイナス側端部は、第1直進筒20のZマイナス側端部より常にZプラス方向側に配置されている。第1回転筒30は、図3に示すように、カムフォロア31と、突起32と、カム溝33(図2参照)と、を備える。
カムフォロア31は、固定筒10のカム溝13と係合する部材である。カムフォロア31は、第1回転筒30の外周部において、円周方向に等間隔で3箇所に配置されている。
突起32は、第2回転筒40の第2カム溝42(後述)と係合する部材である。突起32は、カムフォロア31の上部からより外方に突出するように、カムフォロア31と一体に形成されている。従って、突起32は、カムフォロア31と同じく、第1回転筒30の外周部において、円周方向に等間隔で3箇所に配置されている。
【0024】
カム溝33は、図2に示すように、第2直進筒50のカムフォロア51(後述)を円周方向に沿って案内する溝である。第2回転筒40の回転に伴って第1回転筒30が回転しながら直進すると、第1回転筒30のカム溝33とカムフォロア51を介して係合する第2直進筒50は、直進溝(不図示)に沿って直進する。カム溝33は、第1回転筒30の円周方向に等間隔で3箇所に設けられている。それぞれのカム溝33は、光軸OAに沿う方向に同一形状で形成されている。
【0025】
第2回転筒(第4筒)40は、固定筒10の外周側に配置され、固定筒10に対して相対的に回転可能であって、光軸OAに沿う方向(Z方向)への移動が規制された円筒状の部材である。第2回転筒40の外周部にはズームリング(不図示)が設けられている。撮影者がズームリングを回転させる操作を行うと、第2回転筒40は、ズームリングと共に時計回り又は反時計回りに回転する。第2回転筒40は、第1カム溝41と、第2カム溝42(図4参照)と、を備える。なお、第2回転筒40は、ズームリングと一体であってもよいし、他の部材を介してズームリングと連結されていてもよい。
【0026】
第1カム溝41は、第1直進筒20のカムフォロア23を光軸OAに沿う方向に駆動する溝である。第2回転筒40が回転すると、第2回転筒40の第1カム溝41によりカムフォロア23が光軸OAに沿う方向に駆動される。そのため、第1直進筒20は、第1突起21が第1直進溝11により円周方向への回転が規制された状態で、光軸OAに沿う方向に移動する。第1カム溝41は、第2回転筒40の円周方向に等間隔で3箇所に設けられている。それぞれの第1カム溝41は、光軸OAに沿う方向に同一形状で形成されてい
る。
【0027】
第2カム溝42は、第1回転筒30の突起32を円周方向に駆動する溝である。第2回転筒40が回転すると、第2回転筒40の第2カム溝42により突起32が円周方向に駆動される。そのため、第1回転筒30において、突起32と一体のカムフォロア31は、固定筒10のカム溝13に沿って案内される。これにより、第1回転筒30は、円周方向へ回転しながら光軸OAに沿う方向に移動する。第2カム溝42は、第2回転筒40の円周方向に等間隔で3箇所に設けられている。それぞれの第2カム溝42は、光軸OAに沿う方向に同一形状で形成されている。
【0028】
第2直進筒50は、第1直進筒20の外周側であって、第1直進筒20と第1回転筒30との間に配置されている。第2直進筒50は、第1直進筒20に対して光軸OAに沿う方向に相対的に直進移動が可能な円筒状の部材である。第2直進筒50は、図2及び図3に示すように、カムフォロア51を備える。
カムフォロア51は、第1回転筒30のカム溝33と係合する部材である。カムフォロア51は、第2直進筒50の外周部において、円周方向に等間隔に3箇所に配置されている。
【0029】
次に、レンズ筒体LTの動作について説明する。
撮影者がズームリング(不図示)を回転させる操作を行うと、第2回転筒40は、ズームリングと共に時計回り又は反時計回りに回転する。第2回転筒40が回転すると、図2に示すように、第2回転筒40の第1カム溝41とカムフォロア23を介して係合する第1直進筒20は、第1突起21が第1直進溝11により円周方向への回転が規制された状態で、光軸OAに沿う方向に移動する。また同時に、第1直進筒20の第2突起22は、係合する固定筒10の第2直進溝12に直進案内されながら、光軸OAに沿う方向に移動する。
【0030】
また、第2回転筒40が回転すると、図4に示すように、第2回転筒40の第2カム溝42と突起32を介して係合する第1回転筒30は、カムフォロア31が固定筒10のカム溝13に沿って案内される。これにより、第1回転筒30は、円周方向へ回転しながら、光軸OAに沿って第1直進筒20と同じ方向に移動する。
また、第1回転筒30が円周方向に回転すると、図2に示すように、第1回転筒30のカム溝33とカムフォロア51を介して係合する第2直進筒50は、第1回転筒30のカム溝33に沿って円周方向へ回転しながら、光軸OAに沿って移動する。
【0031】
このように、撮影者の操作するズームリングと共に第2回転筒40が回転すると、第1直進筒20、第1回転筒30及び第2直進筒50は、それぞれ光軸OAに沿って同じ方向に移動(前進又は後退)する。そのため、第2回転筒40を所定方向に回転させることにより、図2及び図4に示すように、各筒の繰り出しを最も長くすることができる。また、第2回転筒40を所定方向と反対回りに回転させることにより、図4に示すように、各筒の繰り出しが最も短い沈胴状態となる。
【0032】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)レンズ鏡筒3は、相対的に移動する固定筒10及び第1直進筒20の係合長さをより長く確保できるため、固定筒10と第1直進筒20との相互間のガタを小さくすることが可能となり、安定した光学性能を維持できる。
(2)レンズ鏡筒3において、第2直進溝12は、固定筒10を貫通しない非貫通溝であるため、第1直進筒20を光軸OAに沿う方向に直進案内が可能な状態に保持できる。また、第2直進溝12は、固定筒10の内周側において、軸線が光軸OAと一致するように第1直進筒20を安定して保持できる。
(3)レンズ鏡筒3において、第1直進筒20の第2突起22の前端部は、第1突起21の前端部よりも前端側に位置する。また、第2突起22と係合する第2直進溝12は、固定筒10の後端側の端部に設けられている。これによれば、レンズ鏡筒3は、第1突起21の前端部に対して第2突起22の後端部の位置を可能な限り離すことができるので、固定筒10と第1直進筒20との間の光軸OAに沿う方向における見かけ上の係合長さをより長くすることができる。
(4)レンズ鏡筒3は、直接に重なり合わない固定筒10と第1直進筒20との間に他の移動する筒を配置しても、光軸OAに沿う方向の係合長さに影響を与えることがない。そのため、レンズ鏡筒3は、ズームレンズ等の複数の筒を備えたレンズ鏡筒とした場合でも、安定した光学性能を維持できる。
(5)レンズ鏡筒3において、第1突起21と第2突起22とは、光軸OAと垂直な方向から見て、第1直進筒20の周方向における異なる位置に配置されている。そのため、レンズ鏡筒3においては、第1突起21及び第2突起22のそれぞれの移動範囲をより長く設計できる。
(6)レンズ鏡筒3において、第1直進筒20の第1突起21は、第1カム溝41と係合するカムフォロア23と一体に形成されている。これによれば、レンズ鏡筒3においては、第1突起21とカムフォロア23とを別部品とする必要がないので、部品点数の削減によるコストの低減、及び構造の簡素化を達成できる。
【0033】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態では、固定筒10と第1直進筒20との間に、2個の移動する筒(第1直進筒20、第1回転筒30)を配置した例について説明した。これに限らず、固定筒10と第1直進筒20との間に配置する他の移動する筒は1つでもよいし、3つ以上であってもよい。
(2)本実施形態では、相対的に移動する2個の筒として、固定筒10と第1直進筒20とを例に説明した。これに限らず、相対的に移動する2個の直進筒に対して本発明の構成を適用してもよい。
(3)本実施形態では、図6に示すように、第1突起21及び第2突起22を、それぞれ第1直進筒20の円周方向において、等間隔で3箇所に設けた例について説明した。これに限らず、第1突起21及び第2突起22を、それぞれ第1直進筒20の円周方向において、等間隔で2箇所に設けてもよいし、等間隔で4箇所以上設けてもよい。また、隣接する第1突起21と第2突起22との間隔は、図6に示すように、30度に限らず、適宜に設定することができる。例えば、図6において、Z方向から見たときの第1突起21と第2突起22との間隔を、光軸OAを中心として60度に配置してもよい。この場合、第1直進筒20の円周方向において、第1突起21と第2突起22とは、均等な間隔で配置される。
なお、第1突起21及び第2突起22は、第1直進筒20の外周部において、円周方向に不均等な間隔で配置されていてもよい。また、第1突起21は、第1直進筒20の外周部において、円周方向に均等な間隔で配置されていてもよく、不均等な間隔で配置されていてもよい。同様に、第2突起22は、第1直進筒20の外周部において、円周方向に均等な間隔で配置されていてもよく、不均等な間隔で配置されていてもよい。また、第1突起21の数と第2突起22の数とは必ずしも一致していなくてもよい。また、第1突起21が第2突起22よりZマイナス側に配置されていてもよい。
(4)本実施形態において、第1回転筒30は、その外周面にカムフォロワ31と突起32とそれぞれ有している。また、一体の金属切削品であるカムフォロワ31と突起32とが、第1回転筒30の外周面に固定されている例について説明した。これに限らず、第1回転筒30とカムフォロワ31と突起32とを一体成型してもよい。また、カムフォロワ31と突起32とをそれぞれ別体で用意し、第1回転筒30の外周面に順次固定してもよ
い。さらに、第1回転筒30とカムフォロワ31とを一体成型し、カムフォロワに突起32を固定してもよい。
(5)本実施形態では、レンズ鏡筒3を、焦点距離を連続的に変化させることができ、かつ、不使用時には全長をより小さくすることができる沈胴式ズームレンズとして説明した。これに限らず、レンズ鏡筒3は、焦点距離の固定された単焦点レンズであってもよい。また、レンズ鏡筒3は、沈胴式でないズームレンズであってもよい。
(6)本実施形態では、レンズ鏡筒3を備えるカメラ1を、レンズ交換可能なデジタル一眼レフカメラとして説明した。これに限らず、レンズ交換可能なミラーレス一眼カメラ、レンズ一体式のデジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯端末等に適用することもできる。
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は、上記実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0034】
1:カメラ、2:カメラ本体、3:レンズ鏡筒、10:固定筒、11:第1直進溝、12:第2直進溝、20:第1直進筒、21:第1突起、22:第2突起、23:カムフォロア、30:第1回転筒、40:第2回転筒、50:第2直進筒

図1
図2
図3
図4
図5
図6