特許第6802014号(P6802014)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802014
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】麺用乾燥卵白組成物及びそれを用いた麺
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20201207BHJP
【FI】
   A23L7/109 B
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-177004(P2016-177004)
(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公開番号】特開2018-38370(P2018-38370A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年4月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大原 健
【審査官】 西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−223713(JP,A)
【文献】 特開平03−168055(JP,A)
【文献】 特開2000−093103(JP,A)
【文献】 特開2002−345435(JP,A)
【文献】 特開2001−299252(JP,A)
【文献】 田中敏治,しなやかなゲルを形成する新しい乾燥卵白の機能と食品における効果,食品と科学,2005年,Vol. 47; No. 7,pp. 73-76
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109− 7/113
A23L 13/00 −17/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水戻ししたときのpHが8.5以上の乾燥卵白及び油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉(熱変性により食用蛋白でコーティングされたものは除く)を含有し、
前記油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉の配合量が、乾燥卵白100部に対し5部以上100部以下である、
麺用乾燥卵白組成物を含有する麺類であって、
前記乾燥卵白の配合量が、麺類に用いる穀物粉100部に対し0.1部以上5部以下である、
麺類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便に弾力と粘りが優れた麺類を作ることができる麺用乾燥卵白組成物及び麺を提供する。
【背景技術】
【0002】
麺の食感を良くする為に、従来から様々な工夫がされており、例えば特許文献1には、コシが強く足のある麺類を得るために、卵白を乾燥後、さらに50〜75℃で1〜20日間熱蔵処理して得た乾燥卵白を麺に用いることが記載されている。
【0003】
しかしながら、製造方法が煩雑であり、より簡便に食感に優れた麺が求められている。
【0004】
ところで、油脂加工澱粉は、澱粉類に油脂を付着させたもので、特許文献2のように、揚げ物食品(フライ食品)において、主に衣材と動物性食品の種物の結着性を高めるために用いられてきた。
【0005】
しかし油脂は麺の弾力を悪くし、また澱粉は老化により麺の外観と食感を悪くするため、油脂と澱粉を組み合わせた油脂加工澱粉は、麺に用いられてこなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−93103号公報
【特許文献2】特開2003−235475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、簡便に弾力と粘りが優れた麺類を作ることができる麺用乾燥卵白組成物及び麺を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、油脂加工した澱粉を乾燥卵白と共に麺に用いることで、意外にも、簡便に弾力と粘りが優れた麺類を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)乾燥卵白及び油脂加工澱粉を含有する、
麺用乾燥卵白組成物、
(2)(1)記載の麺用乾燥卵白組成物であって、
油脂加工澱粉が油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉である
麺用乾燥卵白組成物、
(3)(1)又は(2)記載の麺用乾燥卵白組成物であって、
乾燥卵白100部に対し油脂加工澱粉を5部以上100部以下含有する、
麺用乾燥卵白組成物、
(4)(1)乃至(3)のいずれかに記載の麺用乾燥卵白組成物を含有する、
麺類、
(5)乾燥卵白及び油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉を含有する
麺類、
(6)(5)記載の麺類であって、
穀物粉100部に対し乾燥卵白を0.1部以上10部以下配合し、
前記乾燥卵白100部に対し油脂加工リン酸架橋タピオカデンプンを5部以上100部以下配合する麺類、
である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」、「部」は「質量部」をそれぞれ意味する。
【0011】
<本発明の特徴>
本発明は、麺用乾燥卵白組成物において、乾燥卵白に油脂加工澱粉を配合することを特徴としており、これにより、高度なノウハウや技術を要せず、簡便に弾力と粘りに優れた麺が得られる。
【0012】
<本発明の麺用乾燥卵白組成物>
麺用乾燥卵白組成物は、一般的な乾燥卵白の性質を維持していればよく、乾燥卵白を主原料とし、油脂加工澱粉を含有した組成物であればよい。
【0013】
<本発明の麺用乾燥卵白組成物に用いる乾燥卵白>
本発明の麺用乾燥卵白組成物に用いる乾燥卵白は、いずれのものを用いてもよいが、これを用いて麺を製した時の弾力と粘りの観点から、特に水戻しpHが8.5以上のものがよい。
また、上限値は特に限定されないが、pH10.5以下が好ましい。
ここで、水戻しpHとは、乾燥卵白を固形分換算で12.5%となるように清水を添加し溶解した卵白液のpHをいい、この溶解した卵白液のpHをpHメーターで測定した値のことである。
水戻しpHが8.5以上の乾燥卵白を製するには、例えば、まず、卵を割卵し卵黄と分離して得た液卵白をそのままpH調整せずに脱糖処理し、スプレードライ等の乾燥装置で乾燥して得られる。脱糖処理に用いる細菌や酵母の種類により必要に応じ脱糖処理前にクエン酸やリン酸等の酸を添加してpH調整してもよいが、この場合乾燥して得た乾燥卵白の水戻しpHが8.5以上になることが肝要である。また、乾燥する前に、液卵白にリン酸三ナトリウム等を添加して、乾燥卵白の水戻しpHが8.5以上になるように、pH調整してもよい。このようにして得られる乾燥卵白は、常法に従い、熱蔵庫で保管し殺菌処理を施して用いるとよい。
なお、一般的な乾燥卵白の製造方法は、クエン酸やリン酸等の酸でpH調整してから脱糖処理を施し、乾燥して得られる乾燥卵白であり、この水戻しpHは6〜8と中性のものである。
【0014】
<本発明で用いる乾燥卵白の原料となる液卵白>
本発明で用いる乾燥卵白の原料となる液卵白としては、例えば、鶏卵を割卵して生液卵黄を除いた生液卵白にストレーナー等によるろ過処理、加熱等による殺菌処理、酵素処理、pH調整等を施したものなどが挙げられる。当該原料となる液卵を用いて噴霧乾燥又は凍結乾燥により、乾燥卵白を得ることができる。
【0015】
<本発明の麺用乾燥卵白組成物に用いる油脂加工澱粉>
本発明の麺用乾燥卵白組成物に用いる油脂加工澱粉は、澱粉と油脂を混合し、澱粉類に油脂を付着させたものであればいずれのものでもよく、さらに乾燥や加熱や保管等の処理を施したものでもよい。なかでも、油脂加工澱粉の乾燥卵白への分散性が良くなりやすいことから乾燥処理を施したものがよい。
【0016】
また澱粉と油脂の混合方法は、澱粉に油脂を分散し、付着可能な方法であれば特に制限は無く、通常の撹拌混合、気流混合、スプレー噴霧等の常法で行うことができる。
【0017】
<油脂加工澱粉に用いる澱粉類>
油脂加工澱粉に用いる澱粉類は、食品用の澱粉であればいずれのものでもよく、例えばタピオカ澱粉、コーンスターチ(トウモロコシ澱粉)、馬鈴薯澱粉、米澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉、葛澱粉、片栗澱粉、サゴ澱粉、蕨澱粉、オオウバユリ澱粉等が挙げられる。
上記澱粉のなかでも麺の弾力と粘りが優れた麺が製することができるため、特にタピオカ澱粉がよい。
【0018】
さらに、前記澱粉に、架橋処理、酸処理、アルカリ処理、酸化処理、エステル化処理、エーテル化処理といった化学修飾処理や、α化処理、造粒処理、湿熱処理、ボールミル処理、微粉砕処理、加熱処理、温水処理、漂白処理、殺菌処理、酵素処理といった加工処理、あるいはそれらの2種以上の加工処理を施した澱粉を使用してもよい。
上記処理澱粉のなかでも麺の弾力と粘りが優れた麺が製することができるため、架橋澱粉がよく、さらにリン酸架橋澱粉がよく、特にリン酸架橋タピオカ澱粉がよい。
【0019】
リン酸架橋処理の方法としては、例えば、トリメタリン酸塩、オキシ塩化リン、エピクロルヒドリン等、あるいはそれらの2種以上を架橋剤に用いて、当業者に周知の方法により、リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉等のリン酸架橋澱粉を得ることができる。
このとき、架橋剤の添加量、架橋反応温度、架橋反応時間、架橋反応時のpH等を調整する手段により、架橋の程度を制御することがでる。ただし、ヒドロキシプロピル基、アセチル基、カルボキシル基等の置換基が導入された架橋澱粉は、その置換基の影響により澱粉が膨潤し易くなる傾向があるため、リン酸架橋澱粉としては置換基が導入されていないリン酸架橋澱粉が特に好ましい。
【0020】
<油脂加工澱粉に用いる油脂類>
油脂加工澱粉に用いる油脂類は、一般的な食用油脂であればいずれでも用いることができ、例えば、アマニ油、エゴマ油、シソ油、くるみ油、サフラワー油、ぶどう油、大豆油、ひまわり油、とうもろこし油、綿実油、ごま油、なたね油、落花生油、オリーブ油、パーム油、やし油、牛脂、豚脂、鶏脂、羊脂、鯨油、魚油、またこれらの分別油、エステル交換油等の加工油脂等が挙げられ、特に大豆油、アマニ油、エゴマ油、シソ油、サフラワー油等の融点が5℃未満の油脂は澱粉類の表面を均一に被覆しやすくよい。
油脂加工澱粉中の油脂の含有量は、適宜調整すればよいが、油脂加工澱粉の乾燥物重量100部に対して、0.01部以上1部以下がよく、さらに0.02部以上0.5部以下がよい。
油脂加工澱粉中の油脂の含有量が、前記数値範囲内であると、弾力と粘りが優れた麺を得られやすい。
【0021】
<本発明の麺用乾燥卵白組成物に用いる油脂加工澱粉の配合量>
本発明の麺用乾燥卵白組成物に用いる油脂加工澱粉の配合量は、乾燥卵白100部に対し、5部以上100部以下がよく、さらに5部以上75部以下がよい。
本発明の麺用乾燥卵白組成物に用いる油脂加工澱粉の配合量が、前記数値範囲内であると、弾力と粘りが優れた麺を得られやすい。
【0022】
<本発明の麺類>
本発明の麺類は、穀物粉を、食塩、清水等と混合し、混練し、成型した食品であり、中華麺、うどん、そば、パスタ等が含まれる。
また、油を使って揚げた麺であると、麺の弾力や粘りが感じられなくなることから揚げ麺は適さない。
本発明の麺類は、麺類に乾燥卵白と油脂加工したリン酸架橋タピオカ澱粉を添加することにより、弾力と粘りが優れた麺を得ることができる。
なお、麺類には、穀物粉、食塩、清水の他に、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、砂糖、胡椒等の調味材、澱粉、グルテン、かんすい等の副原料を添加することもできる。
【0023】
<本発明の麺類に用いる乾燥卵白>
本発明の麺類に用いる乾燥卵白は、市販されている乾燥卵白であればいずれのものを用いてもよいが、これを用いて麺を製した時の弾力と粘りの観点から、特に水戻しpHが8.5以上10.5以下のものがよい。
【0024】
<本発明の麺類に用いる乾燥卵白の配合量>
本発明の麺類に用いる乾燥卵白の配合量は、穀物粉100部に対し乾燥卵白を0.1部以上10部以下であり、さらに0.1部以上5部以下であればよく、特に0.1部以上2.5部以下がよい。
本発明の麺類に用いる乾燥卵白の配合量が、前記数値範囲内であると、弾力と粘りが優れた麺を得られやすい。
【0025】
<本発明の麺類に用いる油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉>
本発明の麺類に用いる油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉は、リン酸架橋タピオカ澱粉類に油脂を付着させたものであればいずれのものでもよく、さらに乾燥や加熱や保管等の処理を施したものでもよい。
なかでも、油脂加工澱粉の他の麺類材料への分散性が良くなりやすいことから乾燥処理を施したものがよい。
油脂は一般的な食用油脂であればいずれでも用いることができ、例えば、アマニ油、エゴマ油、シソ油、くるみ油、サフラワー油、ぶどう油、大豆油、ひまわり油、とうもろこし油、綿実油、ごま油、なたね油、落花生油、オリーブ油、パーム油、やし油、牛脂、豚脂、鶏脂、羊脂、鯨油、魚油、またこれらの分別油、エステル交換油等の加工油脂等が挙げられ、特に大豆油、アマニ油、エゴマ油、シソ油、サフラワー油等の融点が5℃未満の油脂は澱粉類の表面を均一に被覆しやすくよい。
油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉中の油脂の含有量は、適宜調整すればよいが、油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉の乾燥物100部に対して、0.01部以上1部以下がよく、さらに0.02部以上0.5部以下がよい。
油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉中の油脂の含有量が、前記数値範囲内であると、弾力と粘りが優れた麺を得られやすい。
【0026】
さらに、本発明の麺類に用いる油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉は、リン酸架橋以外の各種加工処理が施されていいてもよく、例えばヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉等を挙げることができるが、ヒドロキシプロピル基、アセチル基、カルボキシル基等の置換基が導入された架橋澱粉は、その置換基の影響により澱粉が膨潤し易くなる傾向があるため、置換基が導入されていないリン酸架橋タピオカ澱粉がよい。
【0027】
<本発明の麺類に用いる油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉の配合量>
本発明の麺類に用いる油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉の配合量は、乾燥卵白100部に対し、5部以上100部以下がよく、さらに5部以上75部以下がよい。
本発明の麺類に用いる油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉の配合量が、前記数値範囲内であると、弾力と粘りが優れた麺を得られやすい。
【0028】
<本発明の麺類に用いる穀物粉>
穀物粉としては、麺類の製造に通常使用できるものを用いればよく、例えば、小麦粉(強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム小麦)、大麦粉、ライ麦粉、米粉等があげられ、2種以上を併用してもよい。
本発明の麺類に用いる穀物粉の含有量は、適宜調整すればよいが、穀物粉の含有量は麺類に対し70%以上がよく、さらに80%以上がよく、特に90%以上がよい。
本発明の麺類に用いる穀物粉の配合量が、前記数値範囲内であると、弾力と粘りが優れた麺を得られやすい。
【0029】
以下、本発明を実施例等に基づき、さらに説明する。
【実施例】
【0030】
[実施例1]
(油脂加工澱粉の調製)
リン酸架橋タピオカ澱粉の乾燥物換算100部に対して0.3部のエゴマ油を添加・混合した後、この混合物を乾燥機で乾燥することにより、油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
(麺用乾燥卵白組成物の調製)
乾燥卵白(水戻し時のpH9.5)6gと、油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉4gを予め混合し、麺用乾燥卵白組成物を製した。
(麺の調整)
麺用ミキサーに準強力粉1000g、上記麺用乾燥卵白組成物10g投入し、75rpmで5分間攪拌した。そのまま攪拌を続けながら、予め清水370gに食塩10gとかんすい10gを溶解しておいたものを少しずつ添加し、全量添加後、更に12分間攪拌した。その後、製麺機を用いて、常法通りに整型、複合、圧延、切り出し(切り刃♯20角、麺の厚み1.3mm)を行い、中華麺を製した。
この中華麺100gを沸とう水中で2分45秒茹で、素早く湯切りし、氷水中で20秒冷却後、素早く水切りし、24時間5℃下で冷蔵庫保存した。
これを予め調製しておいたスープに入れ、冷やし中華を製した。
【0031】
得られた冷やし中華を喫食したところ、麺の弾力と粘りが大変優れていた。
【0032】
[比較例1]
実施例1の麺用乾燥卵白組成物の調製において、油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉の代わりに油脂加工していないリン酸架橋タピオカ澱粉を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、乾燥卵白組成物を調製し、さらに中華麺を製した。
具体的には、乾燥卵白(水戻し時のpH9.5)6gと、油脂加工していないリン酸架橋タピオカ澱粉4gを予め混合した後、この混合物を乾燥機で乾燥することにより、乾燥卵白組成物を製した。
これを実施例1と同様に、予め調製しておいたスープに入れ、冷やし中華を製した。
【0033】
得られた中華麺を喫食したところ、麺の粘りが優れているものの弾力が感じられなかった。これはリン酸架橋タピオカ澱粉に油脂が付着していなかったためと考えられる。
【0034】
[試験例1]
乾燥卵白に対する油脂加工澱粉の含有量の違いによる麺の弾力と粘りを調べた。
具体的には、実施例1において、麺用乾燥卵白組成物中の油脂加工したリン酸架橋タピオカ澱粉の含有量を表1に示す割合に変更した以外は、実施例1と同様の方法で4種類の麺用乾燥卵白組成物を製した。
さらに上記麺用乾燥卵白組成物を用いて実施例1と同様の方法で実施例2乃至5の中華麺を製した。
得られた中華麺を喫食し、下記の評価基準に従って、粘りと弾力について評価した。
【0035】
【表1】
【0036】
なお、表1において、「麺の評価」における「弾力」、「粘り」の各評価は以下の通りである。
(麺の弾力)
◎:麺の弾力が大変優れている。
〇:麺の弾力が優れている。
△:麺の弾力が感じられる。
×:麺の弾力が感じられない。
(麺の粘り)
◎:麺の粘りが大変優れている。
〇:麺の粘りが優れている。
△:麺の粘りが感じられる。
×:麺の粘りが感じられない。
【0037】
表1より、乾燥卵白及び油脂加工澱粉を含有する麺用乾燥卵白組成物から製した麺(実施例1〜5)は、麺の弾力と粘りが感じられることが理解される。
また、乾燥卵白100部に対し油脂加工澱粉が5部以上100部以下である麺用乾燥卵白組成物から製した麺(実施例1〜4)は、麺の弾力と粘りが優れていることが理解される。
特に、乾燥卵白100部に対し油脂加工澱粉が5部以上75部以下である麺用乾燥卵白組成物から製した麺(実施例1〜3)は、麺の弾力と粘りが大変優れていることが理解される。
【0038】
[試験例2]
穀物粉に対する麺用乾燥卵白組成物の含有量の違いによる麺の弾力と粘りを調べた。
具体的には、実施例1において、穀物粉に対する麺用乾燥卵白組成物の含有量を表2に示す割合に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施例6乃至10の中華麺を製した。
得られた中華麺を喫食し、表1と同様の評価基準に従って、粘りと弾力について評価した。
【0039】
【表2】
【0040】
表2より、穀物粉100部に対する乾燥卵白の配合量が0.1部以上10部以下である麺(実施例6〜10)は、麺の弾力と粘りが感じられることが理解される。
さらに、穀物粉100部に対する乾燥卵白の配合量が0.1部以上5部以下である麺(実施例6〜9)は、麺の弾力と粘りが優れていることが理解される。
特に、穀物粉100部に対する乾燥卵白の配合量が0.1部以上2.5部以下である麺(実施例6〜8)は、麺の弾力と粘りが大変優れていることが理解される。
【0041】
[実施例11]
実施例1の油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉の調製において、澱粉としてリン酸架橋タピオカ澱粉の代わりにコーンスターチを用いて油脂加工澱粉を製した以外は、実施例1と同様の方法で中華麺を製し、さらに実施例1と同様の方法で、冷やし中華を製した。
【0042】
得られた中華麺を喫食したところ、麺の弾力と粘りが感じられた。
【0043】
[実施例12]
(油脂加工澱粉の調製)
リン酸架橋タピオカ澱粉の乾燥物換算100部に対して0.4部のエゴマ油を添加・混合した後、この混合物を乾燥機で乾燥することにより、油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
<麺の調整>
麺用ミキサーに準強力粉1000g、乾燥卵白(水戻し時pH10)6g、油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉4g投入し、75rpmで5分間攪拌した。そのまま攪拌を続けながら、予め清水370gに食塩10gとかんすい10gを溶解しておいたものを少しずつ添加し、全量添加後、更に12分間攪拌した。その後、製麺機を用いて、常法通りに整型、複合、圧延、切り出し(切り刃♯20角、麺の厚み1.3mm)を行い、中華麺を製した。
この中華麺100gを沸とう水中で2分45秒茹で、素早く湯切りし、氷水中で20秒冷却後、素早く水切りし、24時間5℃下で冷蔵庫保存した。
これを予め調製しておいたスープに入れ、冷やし中華を製した。
【0044】
得られた冷やし中華を喫食したところ、麺の弾力と粘りが大変優れていた。