【実施例1】
【0015】
実施例1のSNR推定装置1は、スピーカーから再生される前の信号であるクリーン音声信号と、クリーン音声信号をスピーカーで再生してマイクロホンで収録した信号である収録信号を対応させて用いることで、収録信号のSNRを算出(推定)する装置である。
【0016】
以下、
図3を参照して本実施例のSNR推定装置1の構成を説明する。同図に示すように、本実施例のSNR推定装置1は、音声区間検出部11と、無音声区間分類部12と、第1ポーズフレーム数判定部13と、SNR算出部14を含む。以下、
図4を参照して、各部の動作について説明する。
【0017】
<音声区間検出部11>
音声区間検出部11は、クリーン音声信号を受信し、クリーン音声信号の音声区間と無音声区間を検出する(S11、
図5参照)。例えば、音声区間検出部11は、クリーン音声信号の各フレームのパワーを算出し、予め規定されたしきい値を元に、各フレームを無音、パワー小、パワー中、パワー大に分類し、無音と分類されたフレーム(複数フレーム連続している場合にはその区間)を無音声区間とし、それ以外のフレーム(複数フレーム連続している場合にはその区間)を音声区間として検出してもよい。
【0018】
<無音声区間分類部12>
無音声区間分類部12は、ステップS11における検出結果を取得し、無音声区間を、音声区間に挟まれた無音声区間(別の表現では、発話区間内の短時間無音声区間)である第1ポーズ、それ以外の無音声区間であるサイレントの何れかに分類する(S12、
図5参照)。さらに、無音声区間分類部12はサイレントと分類されたフレームのうち、所定の区間(例えば、発話区間の直前直後の数十ミリ秒、数十フレームの区間、
図5、
図6におけるドットハッチングの区間)を第2ポーズと分類する(S12)。
【0019】
例えば、第2ポーズは、クリーン音声信号の最初のフレームと最後のフレーム(
図5における斜線ハッチングを参照)に該当するフレームを除く所定の区間としてもよい。また第2ポーズは、サイレントのうち、音声区間に隣接するフレーム(別の表現では、発話区間の直前と直後で発話区間に隣接するフレーム、
図6における斜線ハッチングを参照)を含む所定の区間としてもよい。
【0020】
<第1ポーズフレーム数判定部13>
第1ポーズフレーム数判定部13は、ステップS12における分類結果を取得し、クリーン音声信号に第1ポーズのフレームが所定のフレーム数以上存在するか否かを判定する(S13)。具体的には、第1ポーズフレーム数判定部13は、第1ポーズがG.160に規定されるフレーム数以上存在するか否かを判定する。
【0021】
<SNR算出部14>
SNR算出部14は、ステップS11における検出結果、ステップS12における分類結果、ステップS13における判定結果を取得し、第1ポーズのフレームが所定のフレーム数以上存在する場合に、第1ポーズに基づいて収録信号のSNRを算出し、第1ポーズのフレームが所定のフレーム数以上存在しない場合に、少なくとも第2ポーズに基づいて収録信号のSNRを算出する(S14)。
【0022】
第1ポーズのフレームが所定のフレーム数以上存在しない場合、SNR算出部14は、SNRの値を下式により求める。なおx(n)は収録信号、nはフレームインデックス、Nは第1ポーズの区間数の判定しきい値、speech,pause
1,pause
2は、フレームの分類情報を示し、それぞれ、音声、第1ポーズ、第2ポーズを表す。
【0023】
【数1】
【0024】
図7、
図8を参照して、本実施例のSNR推定装置1によりSNRを推定し、実利用環境に則さないSNRとなった収録信号を除外して音声認識を行った場合の音声認識率の変化について説明する。本実施例のSNR推定装置1によりリビング雑音環境下において収録信号のSNRを推定したところ、
図7のようにそのSNR分布を得ることができた。同図の左側に寄っている分布は実利用環境に則さないSNR値となっているため、該当する収録信号をSNRに対するしきい値を適宜変更しながら除外したところ、
図8に示すように、収録信号を適宜除外することで評価データ数(同図の四角形の凡例、右軸の数値)が減少するにつれ、音声認識率(同図の三角形の凡例、左軸の数値)が向上していることが分かる。
【0025】
本実施例のSNR推定装置1によれば、音声認識性能評価のための音声を収録した際に、収録された音声信号(収録信号)に含まれる発話区間内の無音声区間(第1ポーズ)が少ない場合であっても、実態に即したSNR値を推定することができる。
【0026】
また、収録信号、SNR値、音声認識結果を突合することで、収録信号のSNRに対する音声認識性能の変化を確認することができる。
【0027】
<補記>
本発明の装置は、例えば単一のハードウェアエンティティとして、キーボードなどが接続可能な入力部、液晶ディスプレイなどが接続可能な出力部、ハードウェアエンティティの外部に通信可能な通信装置(例えば通信ケーブル)が接続可能な通信部、CPU(Central Processing Unit、キャッシュメモリやレジスタなどを備えていてもよい)、メモリであるRAMやROM、ハードディスクである外部記憶装置並びにこれらの入力部、出力部、通信部、CPU、RAM、ROM、外部記憶装置の間のデータのやり取りが可能なように接続するバスを有している。また必要に応じて、ハードウェアエンティティに、CD−ROMなどの記録媒体を読み書きできる装置(ドライブ)などを設けることとしてもよい。このようなハードウェア資源を備えた物理的実体としては、汎用コンピュータなどがある。
【0028】
ハードウェアエンティティの外部記憶装置には、上述の機能を実現するために必要となるプログラムおよびこのプログラムの処理において必要となるデータなどが記憶されている(外部記憶装置に限らず、例えばプログラムを読み出し専用記憶装置であるROMに記憶させておくこととしてもよい)。また、これらのプログラムの処理によって得られるデータなどは、RAMや外部記憶装置などに適宜に記憶される。
【0029】
ハードウェアエンティティでは、外部記憶装置(あるいはROMなど)に記憶された各プログラムとこの各プログラムの処理に必要なデータが必要に応じてメモリに読み込まれて、適宜にCPUで解釈実行・処理される。その結果、CPUが所定の機能(上記、…部、…手段などと表した各構成要件)を実現する。
【0030】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。また、上記実施形態において説明した処理は、記載の順に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されるとしてもよい。
【0031】
既述のように、上記実施形態において説明したハードウェアエンティティ(本発明の装置)における処理機能をコンピュータによって実現する場合、ハードウェアエンティティが有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記ハードウェアエンティティにおける処理機能がコンピュータ上で実現される。
【0032】
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよい。具体的には、例えば、磁気記録装置として、ハードディスク装置、フレキシブルディスク、磁気テープ等を、光ディスクとして、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM(Random Access Memory)、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)等を、光磁気記録媒体として、MO(Magneto-Optical disc)等を、半導体メモリとしてEEP−ROM(Electronically Erasable and Programmable-Read Only Memory)等を用いることができる。
【0033】
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
【0034】
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の記録媒体に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。また、サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。なお、本形態におけるプログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
【0035】
また、この形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、ハードウェアエンティティを構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。