特許第6802361号(P6802361)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6802361光学フィルムならびにこれを有する画像表示装置の前面板、画像表示装置、画像表示機能付きミラ−、抵抗膜式タッチパネルおよび静電容量式タッチパネル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802361
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】光学フィルムならびにこれを有する画像表示装置の前面板、画像表示装置、画像表示機能付きミラ−、抵抗膜式タッチパネルおよび静電容量式タッチパネル
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/11 20150101AFI20201207BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20201207BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20201207BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20201207BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20201207BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20201207BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20201207BHJP
   G06F 3/045 20060101ALI20201207BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20201207BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20201207BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   G02B1/11
   G02B1/14
   H01L27/32
   H05B33/14 A
   G02F1/1333
   G06F3/041 460
   G06F3/044
   G06F3/045
   G06F3/041 495
   B32B7/023
   G09F9/00 313
   G09F9/30 349Z
   G09F9/00 366A
   G09F9/30 365
【請求項の数】16
【全頁数】85
(21)【出願番号】特願2019-508699(P2019-508699)
(86)(22)【出願日】2018年2月8日
(86)【国際出願番号】JP2018004448
(87)【国際公開番号】WO2018179893
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年4月22日
(31)【優先権主張番号】特願2017-67157(P2017-67157)
(32)【優先日】2017年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-89591(P2017-89591)
(32)【優先日】2017年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】玉田 高
(72)【発明者】
【氏名】植木 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】福重 裕一
(72)【発明者】
【氏名】高田 勝之
【審査官】 菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−068942(JP,A)
【文献】 特開2014−136386(JP,A)
【文献】 特開2016−114938(JP,A)
【文献】 特開2014−012366(JP,A)
【文献】 特開2017−033214(JP,A)
【文献】 特開2011−102003(JP,A)
【文献】 特開2012−091406(JP,A)
【文献】 特開2007−233215(JP,A)
【文献】 特開2013−101318(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/047674(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/070737(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/150892(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/171479(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0061193(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101581800(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10− 1/18
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の樹脂フィルム(A)と、該第一の樹脂フィルム(A)の片面に配された接着層(B)と、該接着層(B)の該第一の樹脂フィルム(A)側とは反対側に配された第二の樹脂フィルム(C)とを少なくとも有し、
前記第一の樹脂フィルム(A)の屈折率nA、前記接着層(B)の屈折率nB及び前記第二の樹脂フィルム(C)の屈折率nCが下記式(1)及び(2)を満たし、
|nA−nB|≦0.03 式(1)
|nC−nB|≦0.03 式(2)
前記第一の樹脂フィルム(A)の引張弾性率EA、前記接着層(B)の引張弾性率EB及び前記第二の樹脂フィルム(C)の引張弾性率ECが下記式(3)〜(7)を満たし、
|EA−EB|≦2.5GPa 式(3)
|EC−EB|≦2.5GPa 式(4)
2.0GPa≦EA≦12.0GPa 式(5)
2.0GPa≦EB≦12.0GPa 式(6)
2.0GPa≦EC≦12.0GPa 式(7)
前記第一の樹脂フィルム(A)と前記第二の樹脂フィルム(C)の少なくとも一方がセルロースエステルフィルムであり、
前記第一の樹脂フィルム(A)、前記接着層(B)及び前記第二の樹脂フィルム(C)の合計厚みが100μmより大きく320μm以下である、光学フィルム。
【請求項2】
前記接着層(B)の厚みが10nm以上10μm以下である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
面内方向のレターデーションが6000nmより小さい、請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記第一の樹脂フィルム(A)と前記第二の樹脂フィルム(C)が同一のフィルムである、請求項1〜のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記第一の樹脂フィルム(A)と前記第二の樹脂フィルム(C)を、80℃の環境で48時間保持した後の下記式(8)で表される収縮力Fdが互いに異なる請求項1〜のいずれか1項に記載の光学フィルム。
式(8) Fd=Ed×εd×dd
式中、Ed、εd、ddは、樹脂フィルムを80℃の環境で48時間保持した後のMD方向の弾性率、MD方向の寸法変化率の絶対値、膜厚をそれぞれ表す。
【請求項6】
前記第一の樹脂フィルム(A)と前記第二の樹脂フィルム(C)を、60℃、相対湿度90%の環境で48時間保持した後の下記式(9)で表される収縮力Fwが互いに異なる請求項1〜のいずれか1項に記載の光学フィルム。
式(9) Fw=Ew×εw×dw
式中、Ew、εw、dwは、樹脂フィルムを60℃、相対湿度90%の環境で48時間保持した後のMD方向の弾性率、MD方向の湿度寸法変化率の絶対値、膜厚をそれぞれ表す。
【請求項7】
前記第一の樹脂フィルム(A)及び前記第二の樹脂フィルム(C)の少なくとも一方が、前記接着層(B)と反対側の面にハードコート層を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の光学フィルムを有する、画像表示装置の前面板。
【請求項9】
請求項に記載の前面板と、画像表示素子とを有する画像表示装置。
【請求項10】
前記画像表示素子が液晶表示素子である、請求項に記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記画像表示素子が有機エレクトロルミネッセンス表示素子である、請求項に記載の画像表示装置。
【請求項12】
前記画像表示素子がインセルタッチパネル表示素子である、請求項11のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項13】
前記画像表示素子がオンセルタッチパネル表示素子である、請求項11のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項14】
請求項に記載の前面板を有する抵抗膜式タッチパネル。
【請求項15】
請求項に記載の前面板を有する静電容量式タッチパネル。
【請求項16】
請求項に記載の画像表示装置を用いた画像表示機能付きミラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムならびにこれを有する画像表示装置の前面板、画像表示装置、画像表示機能付きミラ−、抵抗膜式タッチパネルおよび静電容量式タッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置の前面板、特に、タッチパネルの前面板等の高い耐久性が求められる光学フィルム用途には、従来、化学強化ガラス等のガラスが主に用いられてきた。近年、樹脂フィルムの各種機能性(軽量性、靱性(割れにくさ)及び薄膜加工性(薄くできる)等)が注目され、ガラス代替材料としての樹脂フィルムの使用による光学フィルムの機能性の向上が期待されている。
例えば、特許文献1には、偏光膜とこの偏光膜を挟持する一対の保護膜とを有する偏光板を有する液晶表示装置が記載されており、この保護膜にはセルロースアシレートフィルムが使用されている。特許文献1によれば、このセルロースアシレートフィルムは、正面及び膜厚方向レターデーションの発現性に優れ、製造、加工時の取り扱いが容易な薄さを有し、視野角特性変化の少ない液晶表示装置を実現できるとされる。
また、特許文献2には、色ムラの発生が抑制されたハードコートフィルムとして、基材と、基材の少なくとも一方の面に積層されたハードコート層とを備え、面内方向のレターデーションが6000nm以上40000nm以下であるハードコートフィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−221545号公報
【特許文献2】特開2016−164641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タッチパネルの前面板等の表面は、スタイラスペンにより日常的に打鍵される場合があるため、この前面板等に樹脂フィルムを用いる場合、何度打鍵しても割れず、凹まないといった打鍵耐久性をこの樹脂フィルムが十分に満たすことが重要である。
本発明者らが鋭意検討した結果、樹脂フィルムの膜厚を厚くすることで打鍵耐久性を改良できることが分かってきた。その一方、樹脂フィルムの膜厚が厚くなるにつれて、平滑性が低下したり、変形したり、厚膜樹脂フィルム製造の際に担体からの剥離が困難になったりする問題が生じることも分かってきた。また、膜厚の厚い樹脂フィルムを製膜するには相応の時間を要すること、特に溶液製膜の場合には、残留溶媒を除去するための乾燥工程がより長くなることから、製造効率の問題も生じてしまう。このように、樹脂フィルムの打鍵耐久性と、樹脂フィルムの外観ないし製造適性(製造効率)との間には、いわゆるトレードオフの関係が生じることが明らかとなってきた。
【0005】
本発明者らがさらに鋭意検討した結果、樹脂フィルム同士を貼り合せて一枚の厚い光学フィルムを作製する方法を採用することにより製造適性自体は向上する傾向にある一方、この方法では十分な打鍵耐久性を有する光学フィルムを得ることが難しく、また、新たな問題として、樹脂フィルムを貼り合せることによる干渉ムラが発生してしまうことが分かってきた。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、干渉ムラが十分に抑制され、打鍵耐久性に優れ、また、製造適性にも優れる光学フィルム、ならびに、これを有する画像表示装置の前面板、画像表示装置、画像表示機能付きミラ−、抵抗膜式タッチパネルおよび静電容量式タッチパネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、樹脂フィルム同士を貼り合せて一枚の厚い光学フィルムを作製するに当たり、これらの樹脂フィルムとして特定の引張弾性率を有するものを採用し、さらに、樹脂フィルム同士の貼り合せを、各樹脂フィルムとの間の引張弾性率の差および屈折率の差がそれぞれ特定の範囲内にある接着層を介して行うことにより、打鍵耐久性に優れ、干渉ムラが十分に抑制された光学フィルムが得られることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
【0008】
すなわち、上記の課題は以下の手段により解決された。
〔1〕
第一の樹脂フィルム(A)と、この第一の樹脂フィルム(A)の片面に配された接着層(B)と、この接着層(B)のこの第一の樹脂フィルム(A)側とは反対側に配された第二の樹脂フィルム(C)とを少なくとも有し、
上記第一の樹脂フィルム(A)の屈折率nA、上記接着層(B)の屈折率nB及び上記第二の樹脂フィルム(C)の屈折率nCが下記式(1)及び(2)を満たし、
|nA−nB|≦0.03 式(1)
|nC−nB|≦0.03 式(2)
上記第一の樹脂フィルム(A)の引張弾性率EA、上記接着層(B)の引張弾性率EB及び上記第二の樹脂フィルム(C)の引張弾性率ECが下記式(3)〜(7)を満たし、
|EA−EB|≦2.5GPa 式(3)
|EC−EB|≦2.5GPa 式(4)
2.0GPa≦EA≦12.0GPa 式(5)
2.0GPa≦EB≦12.0GPa 式(6)
2.0GPa≦EC≦12.0GPa 式(7)
上記第一の樹脂フィルム(A)と上記第二の樹脂フィルム(C)の少なくとも一方がセルロースエステルフィルムであり、
上記第一の樹脂フィルム(A)、上記接着層(B)及び上記第二の樹脂フィルム(C)の合計厚みが100μmより大きく320μm以下である、光学フィルム。
〔2〕
上記接着層(B)の厚みが10nm以上10μm以下である、〔1〕に記載の光学フィルム。
〔3〕
面内方向のレターデーションが6000nmより小さい、〔1〕又は〔2〕に記載の光学フィルム。

上記第一の樹脂フィルム(A)と上記第二の樹脂フィルム(C)が同一のフィルムである、〔1〕〜〔〕のいずれか1つに記載の光学フィルム。

上記第一の樹脂フィルム(A)と上記第二の樹脂フィルム(C)を、80℃の環境で48時間保持した後の下記式(8)で表される収縮力Fd(単位:10N/m)が互いに異なる、〔1〕〜〔〕のいずれか1つに記載の光学フィルム。
式(8) Fd=Ed×εd×dd
式中、Ed、εd、ddは、樹脂フィルムを80℃の環境で48時間保持した後のMD方向の弾性率、MD方向の寸法変化率の絶対値、膜厚をそれぞれ表す。

上記第一の樹脂フィルム(A)と上記第二の樹脂フィルム(C)を、60℃、相対湿度90%の環境で48時間保持した後の下記式(9)で表される収縮力Fw(単位:10N/m)が互いに異なる、〔1〕〜〔〕のいずれか1つに記載の光学フィルム。
式(9) Fw=Ew×εw×dw
式中、Ew、εw、dwは、樹脂フィルムを60℃、相対湿度90%の環境で48時間保持した後のMD方向の弾性率、MD方向の湿度寸法変化率の絶対値、膜厚をそれぞれ表す。

上記第一の樹脂フィルム(A)及び上記第二の樹脂フィルム(C)の少なくとも一方が、上記接着層(B)と反対側の面にハードコート層を有する、〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の光学フィルム。

〔1〕〜〔〕のいずれか1つに記載の光学フィルムを有する、画像表示装置の前面板。

〕に記載の前面板と、画像表示素子とを有する画像表示装置。
10
上記画像表示素子が液晶表示素子である、〔〕に記載の画像表示装置。
11
上記画像表示素子が有機エレクトロルミネッセンス表示素子である、〔〕に記載の画像表示装置。
12
上記画像表示素子がインセルタッチパネル表示素子である、〔〕〜〔11〕のいずれか1つに記載の画像表示装置。
13
上記画像表示素子がオンセルタッチパネル表示素子である、〔〕〜〔11〕のいずれか1つに記載の画像表示装置。
14
〕に記載の前面板を有する抵抗膜式タッチパネル。
15
〕に記載の前面板を有する静電容量式タッチパネル。
16
〕に記載の画像表示装置を用いた画像表示機能付きミラー。
【0009】
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの一方または両方の意味で用いられる。また、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基の一方または両方の意味で用いられる。「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルの一方または両方の意味で用いられる。
本明細書に記載の各成分は、この成分を、一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。また、各成分の含有量は、構造の異なる二種以上を併用する場合には、それらの合計含有量を意味する。
【0010】
本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、特段の断りがない限り、GPCによってポリスチレン換算の分子量として計測することができる。このとき、GPC装置HLC−8220(東ソー(株)社製)を用い、カラムはG3000HXL+G2000HXLを用い、23℃で流量は1mL/minで、RIで検出することとする。溶離液としては、THF(テトラヒドロフラン)、クロロホルム、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、m−クレゾール/クロロホルム(湘南和光純薬(株)社製)から選定することができ、溶解するものであればTHFを用いることとする。
本明細書において、各層の厚み、屈折率及び引張弾性率は、実施例記載の方法により測定されるものである。
本発明の光学フィルムは、タッチパネルの前面板等として好適に用いることができ、また、偏光フィルム、位相差フィルム及び液晶表示用の輝度向上フィルム等の光学フィルムとしても好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光学フィルムは、干渉ムラが十分に抑制され、打鍵耐久性に優れ、また、製造適性にも優れる。また、本発明の画像表示装置の前面板、画像表示装置、画像表示機能付きミラ−、抵抗膜式タッチパネルおよび静電容量式タッチパネルは、本発明の光学フィルムを有し、干渉ムラが十分に抑制され、優れた打鍵耐久性を示し、また製造適性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】光学フィルムの構成の一実施形態を示す縦断面図である。
図2】ハードコート層を有する光学フィルムの構成の一実施形態を示す縦断面図である。
図3】静電容量式タッチパネルの一実施形態を示す断面概略図である。
図4】タッチパネル用導電フィルムの概略図である。
図5図4における第1電極11と第2電極21との交差部を示す概略図である。
図6図4におけるアクティブエリアS1内における第1導電層8が有してもよい第1ダミー電極11Aの一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の光学フィルムの好ましい実施形態について説明する。
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムの好ましい実施形態を図1に示す。図1に示す光学フィルム4Aは、第一の樹脂フィルム(A)と、この第一の樹脂フィルム(A)の片面に配された接着層(B)と、この接着層(B)上に配された第二の樹脂フィルム(C)(図1においては、順に符号1A、2A、1Bで示される。)とを少なくとも有する光学フィルムである。光学フィルムにおける、上記第一の樹脂フィルム(A)の屈折率nA、上記接着層(B)の屈折率nB及び上記第二の樹脂フィルム(C)の屈折率nCは、下記式(1)及び(2)を満たす。本発明において屈折率は、波長589nmの光の25℃における屈折率を意味する。
|nA−nB|≦0.03 式(1)
|nC−nB|≦0.03 式(2)
また、上記第一の樹脂フィルム(A)の25℃における引張弾性率EA、上記接着層(B)の25℃における引張弾性率EB及び上記第二の樹脂フィルム(C)の25℃における引張弾性率ECは、下記式(3)〜(7)を満たす。本発明において引張弾性率は、25℃における引張弾性率を意味する。
|EA−EB|≦4.0GPa 式(3)
|EC−EB|≦4.0GPa 式(4)
2.0GPa≦EA 式(5)
2.0GPa≦EB 式(6)
2.0GPa≦EC 式(7)
さらに、光学フィルムの厚み、すなわち、上記第一の樹脂フィルム(A)と上記接着層(B)と上記第二の樹脂フィルム(C)の合計厚みは、100μmより大きい。
本発明の光学フィルムは上記構成を有することにより、優れた打鍵耐久性を実現することができる。これは、樹脂フィルムに打鍵を重ねると引張弾性率に大きな差がある面で歪みが発生するところ、本発明の光学フィルムでは引張弾性率が特定値以上の2層の樹脂フィルムを、これらの樹脂フィルムと引張弾性率の差が特定の値以下にある接着層を介して積層し、さらに光学フィルム全体を一定以上の厚みとすることにより、この歪みの発生を効果的に抑制できるためと推定される。また、本発明の光学フィルムは、隣接する樹脂フィルムと接着層との間の屈折率の差を特定の値以下にすることで、界面反射を効果的に抑制でき、干渉ムラも抑制できると考えられる。さらに、本発明の光学フィルムは積層体でありながらも、個々のフィルム厚を抑えることができるため、製造適性にも優れている。
【0014】
樹脂フィルム及び接着層は、等方性であっても異方性であってもよい。異方性を有する場合、屈折率及び引張弾性率は、後述の実施例記載の方法により算出される。
【0015】
(樹脂フィルムの屈折率)
樹脂フィルムの屈折率は、例えば、樹脂フィルムを構成する樹脂の種類により変えることができ、一般に、樹脂の分子量及び/又は結晶化度を高めることにより屈折率は高まる傾向がある。また、樹脂フィルムは、延伸により延伸方向の屈折率を高めることができる。樹脂フィルムが多層からなる場合にも、樹脂フィルムとしての屈折率を意味する。
第一の樹脂フィルム(A)の屈折率nA及び第二の樹脂フィルム(C)の屈折率nCは、干渉ムラをより抑制する点から、各々独立に、1.45〜1.62が好ましく、1.47〜1.60がより好ましく、1.48〜1.59がさらに好ましい。
【0016】
(接着層の屈折率)
接着層(B)(以下、単に「接着層」とも称す。)の屈折率は、例えば、接着層を構成する樹脂の種類により変えることができ、一般に、樹脂の分子量や結晶化度を高めることにより屈折率は高まる傾向がある。また、接着層の構成成分として微粒子を添加することにより、屈折率を調整することができる。
接着層(B)の屈折率nBは、干渉ムラをより抑制する点から、1.45〜1.62が好ましく、1.47〜1.60がより好ましく、1.48〜1.59がさらに好ましい。
【0017】
(樹脂フィルムと接着層の屈折率の差)
上記式(1)で表される、第一の樹脂フィルム(A)の屈折率nAと接着層(B)の屈折率nBとの差の絶対値(|nA−nB|で記載される。以下において、絶対値と記載しない場合にも同様である。)は、干渉ムラをより抑制する点から、0.02以下が好ましく、0.01以下がより好ましい。下限値は特に制限はなく、0.00以上である。
上記式(2)で表される、第二の樹脂フィルム(C)の屈折率nCと接着層(B)の屈折率nBとの差の絶対値(|nC−nB|で記載される。以下において、絶対値と記載しない場合にも同様である。)は、干渉ムラをより抑制する点から、0.02以下が好ましく、0.01以下がより好ましい。下限値は特に制限はなく、0.00以上である。
【0018】
(樹脂フィルムの引張弾性率)
樹脂フィルムの引張弾性率は、例えば、樹脂フィルムを構成する樹脂の種類により変えることができ、一般に、樹脂の分子量及び/又は結晶化度を高めることにより引張弾性率は高まる傾向がある。また、樹脂フィルムは、延伸により延伸方向の引張弾性率を高めることができる。樹脂フィルムが多層からなる場合にも、樹脂フィルムとしての引張弾性率を意味する。
第一の樹脂フィルム(A)の25℃における引張弾性率EA及び第二の樹脂フィルム(C)の25℃における引張弾性率ECは、打鍵耐久性をより高める点から、各々独立に、2.5GPa以上が好ましく、3.0GPa以上がより好ましく、3.5GPa以上がさらに好ましく、4.0GPa以上が最も好ましい。上限値は、特に制限はないが、12.0GPa以下が実際的である。
【0019】
(接着層の引張弾性率)
接着層(B)(以下、単に「接着層」とも称す。)の引張弾性率は、例えば、接着層を構成する樹脂の種類により変えることができ、一般に、樹脂の分子量や結晶化度を高めることにより引張弾性率は高まる傾向がある。また、接着層が架橋性基を持つ場合には、架橋剤などの添加によって接着層の架橋度を向上させることにより引張弾性率を高めることができる。さらに、接着層に重合性組成物が含まれる場合は、重合性基を有する化合物の重合性基当量(この化合物の分子量を、この化合物に含まれる重合性基の総数で除した値)の低減、接着層の重合率の向上、接着層への高弾性物質(例えば無機粒子等)の添加、剛直な分子構造(例えばアダマンタン骨格)を含む化合物の添加等により引張弾性率は高まる傾向がある。
接着層(B)の25℃における引張弾性率EBは、打鍵耐久性をより高める点から、2.5GPa以上が好ましく、3.0GPa以上がより好ましく、3.5GPa以上がより好ましく、4.0GPa以上がさらに好ましく、4.5GPa以上が特に好ましく、5.0GPa以上が最も好ましい。上限値は、特に制限はないが、12.0GPa以下が実際的である。
【0020】
(樹脂フィルムと接着層の引張弾性率の差)
上記式(3)で表される、第一の樹脂フィルム(A)の25℃における引張弾性率EAと接着層(B)の25℃における引張弾性率EBとの差の絶対値(|EA−EB|で記載される。以下において、絶対値と記載しない場合にも同様である。)は、打鍵耐久性をより高める点から、3.4GPa以下が好ましく、3.0GPa以下がより好ましく、2.5GPa以下がより好ましく、2.0GPa以下がさらに好ましく、1.5GPa以下が特に好ましく、1.0GPa以下が最も好ましい。
上記式(4)で表される、第二の樹脂フィルム(C)の25℃における引張弾性率ECと接着層(B)の25℃における引張弾性率EBとの差の絶対値(|EC−EB|で記載される。以下において、絶対値と記載しない場合にも同様である。)は、打鍵耐久性をより高める点から、3.4GPa以下が好ましく、3.0GPa以下がより好ましく、2.5GPa以下がより好ましく、2.0GPa以下がさらに好ましく、1.5GPa以下が特に好ましく、1.0GPa以下が最も好ましい。
【0021】
本発明の光学フィルムは、第一の樹脂フィルム(A)、接着層(B)及び第二の樹脂フィルム(C)が積層された3層構造を少なくとも有し、各樹脂フィルム(A)及び(C)並びに接着層(B)は単層でも、複層であってもよい。
【0022】
(光学フィルムの厚み)
本発明の光学フィルムの厚みは、打鍵耐久性の点から、120μm以上が好ましく、150μm以上がより好ましく、180μm以上がさらに好ましく、200μm以上がさらに好ましい。上限値は320μm以下であることが実際的である。
【0023】
(樹脂フィルムの厚み)
樹脂フィルムの厚みは、打鍵耐久性及び製造適性の点から、各々独立に、50〜160μmが好ましく、60〜160μmがより好ましく、80〜160μmがさらに好ましく、100〜160μmが特に好ましい。
ここで、第一の樹脂フィルムと第二の樹脂フィルムの厚みの合計は、打鍵耐久性の点から、100〜320μmが好ましく、160〜320μmがより好ましく、200〜320μmがさらに好ましい。
(接着層の厚み)
接着層の厚みは、第一の樹脂フィルムと第二の樹脂フィルムを接着する点から10nm以上が好ましく、さらに干渉ムラを抑制する観点から10nm〜10μmが好ましく、10nm〜5μmがより好ましく、10nm〜1μmがさらに好ましい。
【0024】
(面内方向のレターデーション)
光学フィルムの波長550nmにおける面内方向のレターデーションは、干渉ムラを低減する点から、6000nmより小さいことが好ましく、1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、50nm以下がさらに好ましい。
ここで、光学フィルムの面内方向の位相差(レターデーション)は、光学フィルムに直線偏光を入射して、光学フィルムを通過した光を、進相軸および遅相軸に沿った2つの直線偏光に分解したときに、進相軸での屈折率Nxと遅相軸での屈折率Nyおよび光学フィルムの厚さd(単位:nm)とから下記式(A)により示されるR(単位:nm)として定義される。
R=d×(Nx−Ny) (A)
【0025】
本発明および本明細書における波長550nmにおける面内方向のレターデーションは、KOBRA 21ADH(王子計測機器社製)において波長550nmの光を測定対象のフィルムまたは層の法線方向に入射させて測定される。測定波長の選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。なお、面内方向のレターデーションは、AxoScan(AXOMETRICS社)を用いて測定することもできる。
【0026】
以下、本発明の光学フィルムを構成するフィルム及び層の成分及び調製について、詳細を説明する。
【0027】
(1)樹脂フィルム
(樹脂フィルムの材質)
本発明に用いられる樹脂フィルムは、光学フィルムを形成した場合に、上記屈折率の規定及び上記引張弾性率の規定を満たすものであれば、その材質は特に限定されない。
樹脂フィルムは、例えば、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、セルロースアシレート樹脂フィルム(例えば、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム)等のセルロースエステル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂フィルム、ポリオレフィン樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、および、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体フィルムを挙げることができ、アクリル樹脂フィルム、セルロースエステル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタラート樹脂フィルムおよびポリカーボネート樹脂フィルムから選択されるフィルムが好ましく、透湿性の点から、セルロースエステル樹脂フィルムがより好ましい。上記の各種樹脂フィルムは、誘導体及び共重合体等を含む意味で使用する。
尚、アクリル樹脂フィルムとは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルからなる群から選択される1種以上の化合物から形成される重合体または共重合体の樹脂フィルムをいう。アクリル樹脂フィルムの例としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)フィルムが挙げられる。
樹脂の重量平均分子量は、引張弾性率を高める点から、10,000〜1000,000が好ましく、100,000〜1000,000がより好ましい。
【0028】
(樹脂フィルムの構成)
また、樹脂フィルムの構成も限定されず、単層でも、2層以上からなる積層フィルムであってもよいが、2層以上の積層フィルムが好ましい。積層フィルムの積層数は、2〜10層が好ましく、2〜5層がより好ましく、2層または3層がさらに好ましい。3層以上の場合、外層と外層以外の層(コア層等)とは、異なる組成のフィルムが好ましい。また、外層同士は、同じ組成のフィルムが好ましい。
具体的には、TAC−a/TAC−b/TAC−a、アクリル−a/PC/アクリル−aおよびPET−a/PET−b/PET−aの積層構造を有するフィルム、ならびに、ポリカーボネート樹脂単層のフィルムが挙げられる。ここで、同じ符号(a又はb)を付けたフィルム(例えば、Tac−a)は、同じ組成のフィルムを示す。
【0029】
(添加剤)
樹脂フィルムは、上述の樹脂の他に添加剤を含有してもよい。添加剤としては、後述のハードコート層で記載する、無機粒子、マット粒子、紫外線吸収剤、含フッ素化合物、表面調整剤、レベリング剤等が挙げられる。
後述の溶融製膜法では、上記添加剤と樹脂とを混合溶融した樹脂溶融物として、また、後述の溶液製膜法では、溶媒(後述のハードコートにおける記載を適用できる。)と樹脂と上記添加剤とを混合したドープ液として、樹脂フィルムの形成に用いることができる。
【0030】
(樹脂フィルム単体の厚み)
本発明の光学フィルムの作製前後で、樹脂フィルムの厚みはほとんど変化しない。
【0031】
(易接着層)
また、本発明に用いられる樹脂フィルムは、易接着層を有していてもよい。易接着層は、特開2015−224267号公報の段落0098〜0133に記載された偏光子側易接着層および偏光子側易接着層の製造方法の内容を、本発明にあわせて本明細書に組み込むことができる。
この場合、易接着層は、本発明の光学フィルムにおける樹脂フィルム(A)あるいは(C)を構成する層とし、樹脂フィルム(A)あるいは(C)の屈折率および引張弾性率は、易接着層を含む樹脂フィルム(A)あるいは(C)の屈折率および引張弾性率を意味する。
【0032】
(樹脂フィルムの製膜方法)
樹脂フィルムは、いずれの方法で製膜してもよく、例えば溶融製膜法および溶液製膜法が挙げられる。
【0033】
<溶融製膜法、平滑化>
樹脂フィルムを溶融製膜法で製膜する場合、樹脂を押出機で溶融する溶融工程と、溶融した樹脂をダイからシート状に押し出す工程と、フィルム状に成形する工程とを含むことが好ましい。樹脂の材質によっては、溶融工程の後に溶融樹脂のろ過工程を設けてもよく、シート状に押し出す際に冷却してもよい。
以下、具体的な溶膜製膜法を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
[樹脂フィルムの形成方法]
上記樹脂フィルムの製造方法は、樹脂を押出機で溶融する溶融工程と、溶融した樹脂をフィルターが設置されたろ過装置に通してろ過するろ過工程と、ろ過した樹脂をダイからシート状に押し出し、冷却ドラムの上に密着させることにより冷却固化して未延伸の樹脂フィルムを成形するフィルム成形工程と、未延伸の樹脂フィルムを、1軸又は2軸延伸する延伸工程とを有する。
このような構成により、樹脂フィルムを製造することができる。溶融した樹脂のろ過工程で使用されるフィルターの孔径が1μm以下であると、異物を十分に取り除くことができる。その結果、得られる樹脂フィルムのフィルム幅方向の表面粗さを制御することができる。
具体的には、樹脂フィルムの形成方法は下記工程を含むことができる。
【0035】
<溶融工程>
上記樹脂フィルムの製造方法は、樹脂を押出機で溶融する溶融工程を含む。
樹脂、または樹脂と添加剤の混合物を含水率200ppm以下に乾燥した後、一軸(単軸)あるいは二軸の押出機に導入し溶融させることが好ましい。この時、樹脂の分解を抑制するために、窒素中あるいは真空中で溶融することも好ましい。詳細な条件は、特許4962661号の<0051>〜<0052>(US2013/0100378号公報の<0085>〜<0086>)を援用して、これらの公報に従い実施でき、これらの公報に記載された内容は本明細書に組み込まれる。
押出機は、一軸混練押出機が好ましい。
さらに、溶融樹脂(メルト)の送り出し精度を上げるためギアポンプを使用することも好ましい。
【0036】
<ろ過工程>
上記樹脂フィルムの製造方法は、溶融した樹脂をフィルターが設置されたろ過装置に通してろ過するろ過工程を含み、ろ過工程で使用されるフィルターの孔径は1μm以下が好ましい。
このような孔径の範囲のフィルターを有するろ過装置は、ろ過工程において1セットのみ設置してもよく、2セット以上設置してもよい。
【0037】
<フィルム成形工程>
上記樹脂フィルムの製造方法は、ろ過した樹脂をダイからシート状に押し出し、冷却ドラムの上に密着させることにより冷却固化して未延伸の樹脂フィルムを成形するフィルム成形工程を含む。
【0038】
溶融(および混練)し、ろ過した樹脂(樹脂を含むメルト)をダイからシート状に押し出す際、単層で押出しても、多層で押出してもよい。多層で押出す場合は、例えば、紫外線吸収剤を含む層と含まない層を積層してもよく、より好ましくは紫外線吸収剤を内層にした3層構成が、紫外線による偏光子の劣化を抑える上、紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制でき、好ましい。
樹脂フィルムが多層で押出されて製造されてなる場合、全層の厚みに対する得られる樹脂フィルムの内層の厚みは、50%以上99%以下が好ましく、より好ましくは60%以上97%以下、さらに好ましくは70%以上95%以下である。このような積層は、フィードブロックダイやマルチマニホールドダイを用いることで実施できる。
【0039】
特開2009−269301号公報の<0059>に従い、ダイからシート状に押し出した樹脂(樹脂を含むメルト)を冷却ドラム(キャスティングドラム)上に押出し、冷却固化し、未延伸の樹脂フィルム(原反)を得ることが好ましい。
【0040】
上記樹脂フィルムの製造方法は、ダイから押し出される樹脂の温度が280℃以上320℃以下であることが好ましく、285℃以上310℃以下であることがより好ましい。溶融工程でダイから押し出される樹脂の温度が280℃以上であることが、原料樹脂の溶融残りを減少させて異物の発生を抑制することができ、好ましい。溶融工程でダイから押し出される樹脂の温度が320℃以下であることが、樹脂の分解を減少させて異物の発生を抑制することができ、好ましい。
ダイから押し出される樹脂の温度は、放射温度計(林電工製、型番:RT61−2、放射率0.95で使用)により樹脂の表面を非接触で測定することができる。
【0041】
上記樹脂フィルムの製造方法は、フィルム成形工程において、樹脂を冷却ドラムの上に密着させる際に静電印加電極を用いることが好ましい。これにより、フィルム面状が荒れないように樹脂を強く冷却ドラムの上に密着させることができる。
【0042】
上記樹脂フィルムの製造方法は、冷却ドラムの上に密着する際(ダイから押出された溶融樹脂が冷却ドラムと最初に接触する点)の樹脂の温度は280℃以上が好ましい。これにより、樹脂の電気伝導性が高まり、静電印加により冷却ドラムに強く密着することができ、フィルム面状の荒れを抑制できる。
冷却ドラムの上に密着する際の樹脂の温度は、放射温度計(林電工製、型番:RT61−2、放射率0.95で使用)により樹脂の表面を非接触で測定することができる。
【0043】
<延伸工程>
上記樹脂フィルムの製造方法は、未延伸の樹脂フィルムを、1軸又は2軸延伸する延伸工程を含む。
縦延伸工程(フィルムの搬送方向と同じ方向に延伸する工程)では、樹脂フィルムが予熱された後、樹脂フィルムが加熱された状態で、周速差のある(すなわち、搬送速度の異なる)ローラー群で搬送方向に延伸される。
【0044】
縦延伸工程における予熱温度は樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)に対して、Tg−40℃以上、Tg+60℃以下が好ましく、Tg−20℃以上、Tg+40℃以下がより好ましく、Tg以上、Tg+30℃以下がさらに好ましい。また、縦延伸工程における延伸温度は、Tg以上、Tg+60℃以下が好ましく、Tg+2℃以上、Tg+40℃以下がより好ましく、Tg+5℃以上、Tg+30℃以下がさらに好ましい。縦方向の延伸倍率は1.0倍以上2.5倍以下が好ましく、1.1倍以上、2倍以下がさらに好ましい。
【0045】
縦延伸工程に加えて、または縦延伸工程に代えて、横延伸工程(フィルムの搬送方向に対して垂直な方向に延伸する工程)により、幅方向に横延伸される。横延伸工程では例えばテンターを好適に用いることができ、このテンターによって樹脂フィルムの幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に延伸する。この横延伸によって、光学フィルムにおける樹脂フィルムの引張弾性率を高めることができる。
【0046】
横延伸は、テンターを用いて実施するのが好ましく、好ましい延伸温度は樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)に対して、Tg以上、Tg+60℃以下が好ましく、より好ましくはTg+2℃以上、Tg+40℃以下、さらに好ましくはTg+4℃以上、Tg+30℃以下である。延伸倍率は1.0倍以上、5.0倍以下が好ましく、1.1倍以上4.0倍以下がさらに好ましい。横延伸の後に縦、横のいずれか、または両方に緩和させることも好ましい。
【0047】
また、厚みの幅方向、長手方向の場所による変動をいずれも10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下、さらに好ましくは4%以下、最も好ましくは2%以下にすることが好ましい。
【0048】
尚、ここで、厚みの変動は、以下の通り求めることができる。
【0049】
延伸された樹脂フィルムを10m(メートル)サンプリングし、フィルム幅方向の両端部20%ずつを除き、フィルム中心部から幅方向、長手方向に等間隔でそれぞれ50点サンプリングし、厚みを測定する。
【0050】
幅方向の厚み平均値ThTD−av、最大値ThTD−max、最小値ThTD−miを求め、
(ThTD−max−ThTD−min)÷ ThTD−av×100 [%]
が幅方向の厚みの変動である。
【0051】
また、長手方向の厚み平均値ThMD−av、最大値ThMD−max、最小値ThD−minを求め、
(ThMD−max−ThMD−min)÷ ThMD−av×100 [%]
が長手方向の厚みの変動である。
【0052】
上記延伸工程により、樹脂フィルムの厚み精度の向上を図ることができる。
【0053】
延伸後の樹脂フィルムは、巻取工程でロール状に巻き取ることができる。その際、樹脂フィルムの巻取りテンションは、0.02kg/mm以下とすることが好ましい。
【0054】
その他詳細な条件については、溶融製膜は特開2015−224267の<0134>−<0148>に記載された内容、延伸工程は特開2007−137028に記載された内容を、本発明にあわせて本明細書に組み込むことができる。
【0055】
<溶液製膜法、平滑化>
樹脂フィルムを溶液製膜法で製膜する場合、ドープ液を流延バンド上に流延し、流延膜を形成する工程と、流延膜に乾燥する工程と、流延膜を延伸する工程とを含むことが好ましい。具体的には、特許第4889335号に記載の方法によって製膜するのが好ましい。
本発明では、以下の方法を採用することが好ましい。
例えば、特開平11−123732号公報に記載の、流延膜の乾燥速度を乾量基準の含有溶媒量で300質量%/min(=5質量%/s)以下とし、緩やかな乾燥を行う方法が挙げられる。また、特開2003−276037号公報に記載の、中間層であるコア層の両表面にスキン層(外層)を有する多層構造の流延膜の共流延法において、コア層を形成するドープ液の粘度を高めて流延膜の強度を確保するとともに外層を形成するドープの粘度を低くする方法が挙げられる。さらに、流延膜を急乾燥して流延膜表面に膜を形成し、形成された膜のレベリング効果により面状を平滑化する方法、及び、流延膜を延伸する方法なども好ましく挙げられる。
【0056】
本発明の光学フィルムは、第一の樹脂フィルム(A)と第二の樹脂フィルム(C)とが同一のフィルムであることが、干渉ムラをより抑制する点、また、光学フィルムが曲がりにくく、より優れた打鍵耐久性を示す点から好ましい。
ここで「同一のフィルム」とは、樹脂フィルムを構成する樹脂の材質が同じ(例えば、いずれもTACフィルム)であることを意味する。なかでも、樹脂の分子量が同じであることが好ましく、樹脂の分子量及び結晶化度が同じであることがより好ましく、樹脂の分子量、結晶化度及び延伸率が同じであることがさらに好ましい。また、上記に加えて、第一の樹脂フィルム(A)と第二の樹脂フィルム(C)の厚みが同じであることもより好ましい。
なお、「同じ」とは、完全同一に限定されず、実質的に同一であることを含む。具体的には、同一の製造方法(膜厚、延伸等が同じになるような条件)で作製したものであり、この条件で生じる誤差が含まれる。
【0057】
すなわち、第一の樹脂フィルム(A)の屈折率nAと第二の樹脂フィルム(C)の屈折率nCとの差(|nC−nA|)は小さいことが好ましく、具体的には、0.03以下が好ましく、0.02以下がより好ましく、0.01以下がさらに好ましい。下限値は特に制限はなく、0.00以上である。
また、第一の樹脂フィルム(A)の25℃における引張弾性率EAと第二の樹脂フィルム(C)の25℃における引張弾性率ECとの差(|EC−EA|)は小さいことが好ましく、具体的には、4.0GPa以下が好ましく、3.0GPa以下がより好ましく、2.0GPa以下がさらに好ましく、1.0GPa以下が特に好ましい。
【0058】
本発明の光学フィルムを有する画像表示装置(パネル)の反りを抑制する点から、本発明の光学フィルムは、第一の樹脂フィルム(A)と第二の樹脂フィルム(C)の下記式(8)で表される熱処理後の収縮力Fd(単位:10N/m)が互いに異なることが好ましく、下記式(9)で表される湿熱処理後の収縮力Fw(単位:10N/m)が互いに異なることがより好ましく、収縮力Fdおよび収縮力Fwのいずれもが互いに異なることがさらに好ましい。
詳細には、第一の樹脂フィルム(A)の熱処理後の収縮力FdAと、第二の樹脂フィルム(C)の熱処理後の収縮力FdCとの差の絶対値が20(10N/m)以上であることが好ましく、30(10N/m)以上であることがより好ましく、50(10N/m)以上であることがさらに好ましい。また、第一の樹脂フィルム(A)の湿熱処理後の収縮力FwAと、第二の樹脂フィルム(C)の湿熱処理後の収縮力FwCとの差の絶対値が20(10N/m)以上であることが好ましく、30(10N/m)以上であることがより好ましく、40(10N/m)以上であることがさらに好ましい。ここで、各差の絶対値の後ろに記載する「(10N/m)」は単位を表す。
熱処理は樹脂フィルムを80℃の環境で48時間保持する処理であり、湿熱処理はフィルムを60℃相対湿度90%の環境で48時間保持する処理を意味する。
式(8) Fd=Ed×εd×dd
[式中、Ed、εd、ddは、樹脂フィルムを80℃の環境で48時間保持した後のMD方向の弾性率、MD方向の寸法変化率の絶対値、膜厚をそれぞれ表す。]
式(9) Fw=Ew×εw×dw
[式中、Ew、εw、dwは、樹脂フィルムを60℃、相対湿度90%の環境で48時間保持した後のMD方向の弾性率、MD方向の湿度寸法変化率の絶対値、膜厚をそれぞれ表す。]
なお、「MD(Machine Direction)方向」とはフィルム搬送方向を意味し、上記のMD方向の弾性率、MD方向の湿度寸法変化率の絶対値および膜厚は、実施例記載の方法により測定されるものである。
【0059】
本発明の光学フィルムを画像表示装置の前面板として用いた際の、膜硬度の点、および反りの点から、第一の樹脂フィルム(A)および第二の樹脂フィルム(C)のうち、いずれか一方の収縮力Fw(単位:10N/m)が50〜250であることが好ましく、70〜230であることがより好ましく、80〜220であることがさらに好ましい。また、第一の樹脂フィルム(A)および第二の樹脂フィルム(C)のうち、他方の収縮力Fwが30〜250であることが好ましく、50〜230であることがより好ましく、60〜220であることがさらに好ましい。
【0060】
また、第一の樹脂フィルム(A)および第二の樹脂フィルム(C)のうち、いずれか一方の収縮力Fd(単位:10N/m)が20〜200であることが好ましく、30〜180であることがより好ましく、40〜170であることがさらに好ましい。また、第一の樹脂フィルム(A)および第二の樹脂フィルム(C)のうち、他方の収縮力Fdが10〜200であることが好ましく、20〜180であることがより好ましく、30〜170であることがさらに好ましい。
【0061】
[接着層]
(接着層を構成し得る成分)
接着層とは、樹脂フィルム同士を貼り合わせる役割を果たす層であり、本発明においては、第一の樹脂フィルムと第二の樹脂フィルムとを接着する。
接着層は、乾燥や反応により接着性を発現する成分(接着剤)を含む組成物を用いて形成することが好ましい。例えば、硬化反応により接着性を発現する成分を含む組成物(以下、「硬化性組成物」と称す。)を用いて形成される接着層は、かかる硬化性組成物を硬化させてなる硬化層である
【0062】
接着剤としては、樹脂を用いることができる。一態様では、接着層は、この層の50質量%以上、好ましくは70質量%以上を樹脂が占める層であることができる。樹脂としては、単一の樹脂を用いても、複数の樹脂の混合物を用いてもよい。樹脂の混合物を用いる場合、上記の樹脂が占める割合は、樹脂の混合物が占める割合をいう。樹脂の混合物としては、例えば、ある樹脂と、この樹脂の一部を変性した構造を有する樹脂の混合物、異なる重合性化合物を反応させて得られた樹脂の混合物等を挙げることができる。
【0063】
接着剤としては、任意の適切な性質、形態および接着機構を有する接着剤を用いることができる。具体的には、接着剤として、例えば、水溶性接着剤、紫外線硬化型接着剤、エマルジョン型接着剤、ラテックス型接着剤、マスチック接着剤、複層接着剤、ペースト状接着剤、発泡型接着剤、サポーテッドフィルム接着剤、熱可塑型接着剤、熱溶融型(ホットメルト)接着剤、熱固化接着剤、熱活性接着剤、ヒートシール接着剤、熱硬化型接着剤、コンタクト型接着剤、感圧性接着剤、重合型接着剤、溶剤型接着剤、溶剤活性接着剤等が挙げられ、水溶性接着剤および紫外線硬化型接着剤が好ましい。これらの中でも、透明性、接着性、作業性、製品の品質および経済性に優れる点で、水溶性接着剤が好ましく用いられる。
【0064】
水溶性接着剤は、たんぱく質、澱粉、合成樹脂等の天然または合成された水溶性成分を含むことができる。合成樹脂としては、例えば、レゾール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル樹脂及びセルロース誘導体が挙げられる。これらの中でも、樹脂フィルムを貼り合わせる際の接着性に優れる点で、ポリビニルアルコール樹脂あるいはセルロース誘導体を含有する水溶性接着剤が好ましい。すなわち、本発明における接着層は、ポリビニルアルコール樹脂あるいはセルロース誘導体を含むことが好ましい。
ここで、セルロース誘導体とは、セルロースを変性したものを意味する。セルロース誘導体に特に制限はなく、公知のセルロース誘導体を使用することができる。例えば、HEC(ヒドロキシエチルセルロース)等を用いることができる。
樹脂の重量平均分子量は、引張弾性率を高める点から、1000以上が好ましく、10、000以上がより好ましい。上限値に特に制限はないが、1,000,000以下が実際的である。
【0065】
接着層は、接着層の屈折率nBを調整する点から、無機微粒子を含有することも好ましい。
無機微粒子の平均粒径は0.2μm以下であり、0.1μm以下が好ましく、0.06μm以下がより好ましい。下限値に特に制限はないが、例えば、0.1nm以上が好ましく、1nm以上がより好ましい。
無機微粒子の平均粒径は、透過電子顕微鏡により測定された値である。より詳細には、HR−TEM(高分解能透過型電子顕微鏡)で無作為に選択した100個の無機微粒子について、投影面積から無機微粒子の占有面積を画像処理装置によって求め、100個の無機微粒子の占有面積の合計を、選択した無機微粒子の個数(100個)で除し、得られた値に相当する円の直径の平均値(平均円相当直径)として算出した。上記平均粒径は、一次粒子が凝集してなる二次粒子の粒径は含まない。
【0066】
接着層の屈折率nBを高める点からは、無機微粒子は、中心が詰まった中実粒子が好ましく、例えば、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫及びアンチモン等から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなる微粒子、並びにこれらの混合物からなる微粒子が挙げられる。具体的には、TiO、ZrO、Al、In、ZnO、SnO、Sb、ITO(錫含有酸化インジウム)及びSiO等が挙げられる。TiO及びZrOが高屈折率化の点で特に好ましい。この無機微粒子の表面は、シランカップリング処理又はチタンカップリング処理されていることも好ましく、表面処理剤としては、微粒子表面に接着剤を構成する樹脂と反応できる官能基を導入できる表面処理剤が好ましく用いられる。
【0067】
接着層の屈折率nBを低くする点からは、無機微粒子は、中空構造を有する中空粒子が好ましく、例えばケイ素、チタン、アルミニウム、スズ、亜鉛およびアンチモン等から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなる微粒子、並びにこれらの混合物からなる微粒子が挙げられる。無機微粒子は、金属酸化物微粒子であることが好ましく、少なくとも粒子表面にケイ素を構成成分とする金属酸化物が含まれることがより好ましい。例えば表面が二酸化ケイ素からなるコアシェル粒子であっても、ケイ素とその他の無機元素とが混晶を形成している粒子であってもよい。特に低屈折率化の点からは中空シリカ粒子であることが好ましい。
【0068】
これらの無機微粒子の添加量は、接着層の全固形分質量中1〜60質量%が好ましく、3〜40質量%がより好ましく、5〜30質量%がさらに好ましい。
なお、このような無機微粒子は、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、接着層を構成する接着剤にこの無機微粒子が分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
【0069】
接着剤を含む組成物に任意に含まれる成分としては、架橋剤(ホウ酸及びSafelink SPM−01(商品名、日本合成化学社製)等)、耐久性改良剤(ヨウ化カリウム等)が挙げられる。
【0070】
接着層は、例えば、接着剤を含有する塗布液を樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に塗布し、乾燥することにより形成することができる。塗布液の調製方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。塗布液としては、例えば、市販の溶液または分散液を用いてもよく、市販の溶液または分散液にさらに溶剤を添加して用いてもよく、固形分を各種溶剤に溶解または分散して用いてもよい。
【0071】
一態様では、接着層は、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させてなる硬化層であることもできる。接着層を形成するための活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー硬化性成分として、カチオン重合性化合物、例えばエポキシ系化合物、より具体的には、特開2004−245925号公報に記載されるような、分子内に芳香環を有しないエポキシ系化合物を含むものが好ましい。このようなエポキシ系化合物としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルを代表例とする芳香族エポキシ系化合物の原料である芳香族ポリヒドロキシ化合物を核水添し、それをグリシジルエーテル化して得られる水素化エポキシ系化合物、脂環式環に結合するエポキシ基を分子内に少なくとも1個有する脂環式エポキシ系化合物、脂肪族ポリヒドロキシ化合物のグリシジルエーテルを代表例とする脂肪族エポキシ系化合物等を挙げることができる。また、接着層を形成するための活性エネルギー線硬化性組成物は、エポキシ系化合物を代表例とするカチオン重合性化合物に加えて、重合開始剤、例えば活性エネルギー線の照射によりカチオン種またはルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物の重合を開始させるための光カチオン重合開始剤、光照射により塩基を発生する光塩基発生剤を含むこともできる。更に、加熱によって重合を開始させる熱カチオン重合開始剤、その他、光増感剤などの各種添加剤が含まれていてもよい。
【0072】
本発明の光学フィルムは、少なくとも、2枚の樹脂フィルムと、これら2枚の樹脂フィルムを貼り合わせるための接着層を有するが、樹脂フィルムは、接着層を有する面とは反対側の面(他方の表面)にも接着層を有していてもよい。例えば、他方の表面に接着層を介して公知の偏光板保護フィルムを設けることもできる。樹脂フィルムの両面に接着層を設ける場合、それぞれの接着層を形成するための組成物は同じであっても異なっていてもよいが、生産性の観点からは、両面とも同じ組成物から形成された接着層を有することが好ましい。接着層を付与される面には、接着層付与前に、ケン化処理、コロナ放電処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0073】
ケン化処理としては、例えば、セルロースエステル樹脂フィルムを、アルカリ鹸化処理することにより、ポリビニルアルコールのような偏光子の材料との密着性を高めることができる。
ケン化の方法については、特開2007−86748号公報の段落番号<0211>及び段落番号<0212>に記載されている方法を用いることができる。
【0074】
例えば、セルロースエステル樹脂フィルムに対するアルカリケン化処理は、フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられる。水酸化イオンの濃度は0.1〜5.0モル/Lの範囲が好ましく、0.5〜4.0モル/Lの範囲が更に好ましい。アルカリ溶液温度は、室温〜90℃の範囲が好ましく、40〜70℃の範囲が更に好ましい。
【0075】
アルカリケン化処理の代わりに、特開平6−94915号公報又は特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。
【0076】
接着剤を用いて樹脂フィルム同士を貼合する方法は、公知の方法を用いることができる。
たとえば、水平方向または鉛直方向に移動する帯状の長尺の樹脂フィルム(A)あるいは(C)の一方の面に、樹脂フィルム(C)あるいは(A)を同じ移動速度で接近させ、上記樹脂フィルム(A)と樹脂フィルム(C)の間に、接着剤層(B)となる接着剤を塗布し、ピンチロールで圧力をかけて樹脂フィルム(A)と樹脂フィルム(C)を貼り合わせることができる。ここで、塗布される接着剤は、接着剤層(B)を構成する材質を塗布できるように溶媒で希釈したものであってもよい。その場合、接着剤層(B)中の溶媒を乾燥させ、樹脂フィルム(A)と樹脂フィルム(C)の接着が完了する。この際の乾燥温度は、接着剤層(B)中の溶媒種および、樹脂フィルム(A)と樹脂フィルム(C)の樹脂種および厚みによるが、例えば接着剤層(B)中の溶媒が水である場合、30〜85℃であることが好ましく、さらに好ましくは45〜80℃である。
【0077】
また、樹脂フィルム(A)あるいは(C)の、いずれか一方あるいは両方に接着剤層(B)となる接着剤を塗布し、乾燥処理を施して接着剤層(B)中に含まれる溶媒を除去し、樹脂フィルム上に接着剤層(B)を形成した後、水平方向または鉛直方向に移動する帯状の長尺の接着剤層(B)を形成した樹脂フィルム(A)あるいは(C)の、接着剤層(B)が形成された面に、樹脂フィルム(C)あるいは(A)を同じ移動速度で接近させ、上記接着剤層(B)を形成した樹脂フィルム(A)と樹脂フィルム(C)の間に、接着剤層(B)を膨潤させる溶媒を塗布し、ピンチロールで圧力をかけて樹脂フィルム(A)と樹脂フィルム(C)を貼り合わせることができる。この場合、溶媒を乾燥させ、樹脂フィルム(A)と樹脂フィルム(C)の接着が完了する。この際の乾燥温度は、溶媒種および、樹脂フィルム(A)と樹脂フィルム(C)の樹脂種および厚みによるが、例えば溶媒が水である場合、30〜85℃であることが好ましく、さらに好ましくは45〜80℃である。
【0078】
(3)ハードコート層(HC層)
本発明においては、表面硬度の点から、第一の樹脂フィルム(A)及び第二の樹脂フィルム(C)の少なくとも一方が、上記接着層(B)の設けられた側とは反対側の面にハードコート層を有することが好ましく、どちらか一方の樹脂フィルムが有することがより好ましい。この場合、ハードコート層は、本発明の光学フィルムにおける樹脂フィルム(A)あるいは(C)を構成する層とはみなさず、樹脂フィルム(A)あるいは(C)の引張弾性率および屈折率は、ハードコート層を含まない樹脂フィルム(A)あるいは(C)の引張弾性率および屈折率を意味する。HC層を有する光学フィルムの一態様として、図2に示すように、第一の樹脂フィルム1A、接着層2A、第二の樹脂フィルム1Bがこの順に積層され、第一の樹脂フィルム1Aの、接着層2Aを有する面とは反対側の面にハードコート層3Aを有する本発明の光学フィルム4Bが挙げられる。HC層は、光学フィルムに所望の鉛筆硬度を付与できれば、いずれの材質から構成されてもよい。
本発明の光学フィルムは、第一の樹脂フィルム(A)及び第二の樹脂フィルム(C)の少なくとも一方にHC層を有している場合にも、本発明の効果を奏する。
以下、HC層の具体的態様を説明するが、本発明は下記態様に限定されるものではない。
【0079】
(ハードコート層(HC層)形成用硬化性組成物を硬化したHC層)
本発明に用いられるHC層は、HC層形成用硬化性組成物に活性エネルギー線を照射することにより硬化することで得ることができる。なお本発明および本明細書において、「活性エネルギー線」とは、電離放射線をいい、X線、紫外線、可視光、赤外線、電子線、α線、β線、γ線等が包含される。
【0080】
HC層の形成に用いられるHC層形成用硬化性組成物は、活性エネルギー線の照射により硬化する性質を有する少なくとも一種の成分(以下、「活性エネルギー線硬化性成分」とも記載する。)を含む。活性エネルギー線硬化性成分としては、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物からなる群から選択される少なくとも一種の重合性化合物が好ましい。なお本発明および本明細書において、「重合性化合物」とは、1分子中に1個以上の重合性基を含む化合物である。重合性基とは、重合反応に関与し得る基であり、具体例としては、後述の各種重合性化合物に含まれる基を例示することができる。また、重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等の各種重合反応を挙げることができる。
本発明に用いられるHC層は、1層構造でも2層以上の積層構造であってもよいが、下記に詳細を記載する1層構造または2層以上の積層構造からなるHC層が好ましい。
【0081】
1)1層構造
1層構造のHC層形成用硬化性組成物の好ましい態様としては、第一の態様として、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物を少なくとも一種含むHC層形成用硬化性組成物を挙げることができる。エチレン性不飽和基とは、エチレン性不飽和二重結合を含有する官能基をいう。また、第二の態様として、少なくとも一種のラジカル重合性化合物と少なくとも一種のカチオン重合性化合物を含むHC層形成用硬化性組成物を挙げることができる。
【0082】
以下、第一の態様のHC層形成用硬化性組成物について説明する。
第一の態様のHC層形成用硬化性組成物に含まれる1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル〔例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート〕、上記のエステルのエチレンオキサイド変性体、ポリエチレンオキサイド変性体やカプロラクトン変性体、ビニルベンゼンおよびその誘導体〔例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン〕、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。
【0083】
エチレン性不飽和基を有する重合性化合物の重合は、ラジカル光重合開始剤の存在下、活性エネルギー線の照射により行うことができる。ラジカル光重合開始剤としては、後述するラジカル光重合開始剤が好ましく適用される。また、HC層形成用硬化性組成物中の、エチレン性不飽和基を有する重合性化合物に対するラジカル光重合開始剤の含有量比については、後述するラジカル重合性化合物に対するラジカル光重合開始剤の含有量比の記載が好ましく適用される。
【0084】
次に、第二の態様のHC層形成用硬化性組成物について説明する。
第二の態様のHC層形成用硬化性組成物は、少なくとも一種のラジカル重合性化合物と少なくとも一種のカチオン重合性化合物とを含む。好ましい態様としては、
アクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基を1分子中に2個以上含むラジカル重合性化合物と;
カチオン重合性化合物と;
を含むHC層形成用硬化性組成物を挙げることができる。
【0085】
上記HC層形成用硬化性組成物は、ラジカル光重合開始剤とカチオン光重合開始剤とを含むことがより好ましい。第二の態様の好ましい一態様としては、
アクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基を1分子中に2個以上含むラジカル重合性化合物と;
カチオン重合性化合物と;
ラジカル光重合開始剤と;
カチオン光重合開始剤と;
を含むHC層形成用硬化性組成物を挙げることができる。以下において、本態様を、第二の態様(1)と記載する。
【0086】
第二の態様(1)において、上記のラジカル重合性化合物は、1分子中に2個以上のラジカル重合性基とともに、1分子中に1個以上のウレタン結合を含むことが好ましい。
【0087】
第二の態様の他の好ましい一態様では、
a)脂環式エポキシ基およびエチレン性不飽和基を含み、1分子中に含まれる脂環式エポキシ基の数が1個であり、かつ1分子中に含まれるエチレン性不飽和基の数が1個であり、分子量が300以下であるカチオン重合性化合物と;
b)1分子中に3個以上のエチレン性不飽和基を含むラジカル重合性化合物と;
c)ラジカル重合開始剤と;
d)カチオン重合開始剤と;
を含むHC層形成用硬化性組成物を挙げることができる。以下において、本態様を、第二の態様(2)と記載する。第二の態様(2)のHC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層は、好ましくは、HC層の全固形分を100質量%とした場合に、上記a)由来の構造を15〜70質量%、上記b)由来の構造を25〜80質量%、上記c)を0.1〜10質量%、上記d)を0.1〜10質量%含むことができる。また、一態様では、第二の態様(2)のHC層形成用硬化性組成物は、このHC層形成用硬化性組成物の全固形分を100質量%とした場合に、上記a)を15〜70質量%含むことが好ましい。なお、「脂環式エポキシ基」とは、エポキシ環と飽和炭化水素環とが縮合した環状構造を有する1価の官能基をいうものとする。
【0088】
以下、第二の態様、好ましくは第二の態様(1)または第二の態様(2)のHC層形成用硬化性組成物に含まれ得る各種成分について、更に詳細に説明する。
【0089】
−ラジカル重合性化合物−
第二の態様のHC層形成用硬化性組成物は、少なくとも一種のラジカル重合性化合物と少なくとも一種のカチオン重合性化合物とを含む。第二の態様(1)におけるラジカル重合性化合物は、アクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基を1分子中に2個以上含む。上記ラジカル重合性化合物は、アクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基を、1分子中に、好ましくは例えば2〜10個含むことができ、より好ましくは2〜6個含むことができる。
【0090】
上記ラジカル重合性化合物としては、分子量が200以上1000未満のラジカル重合性化合物が好ましい。なお本発明および本明細書において「分子量」とは、多量体については、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)によりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量をいうものとする。重量平均分子量の具体的な測定条件の一例としては、以下の測定条件を挙げることができる。
GPC装置:HLC−8120(東ソー製)
カラム:TSK gel Multipore HXL−M(東ソー製、内径7.8mm×カラム長30.0cm)
溶離液:テトラヒドロフラン
【0091】
上記ラジカル重合性化合物は、前述の通り、1分子中に1個以上のウレタン結合を含むことが好ましい。上記ラジカル重合性化合物の1分子中に含まれるウレタン結合の数は、好ましくは1個以上であり、より好ましくは2個以上であり、より好ましくは2〜5個であり、例えば2個であることができる。なお1分子中にウレタン結合を2個含むラジカル重合性化合物において、アクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基は、一方のウレタン結合のみに直接または連結基を介して結合していてもよく、2個のウレタン結合にそれぞれ直接または連結基を介して結合していてもよい。一態様では、連結基を介して結合している2個のウレタン結合に、それぞれアクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基が1個以上結合していることが、好ましい。
【0092】
より詳しくは、上記ラジカル重合性化合物において、ウレタン結合とアクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基は直接結合していてもよく、ウレタン結合とアクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基との間に連結基が存在していてもよい。連結基としては、特に限定されるものではなく、直鎖または分岐の飽和または不飽和の炭化水素基、環状基、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる基、等を挙げることができる。上記炭化水素基の炭素数は、例えば2〜20程度であるが、特に限定されるものではなない。また、環状基に含まれる環状構造としては、一例として、脂肪族環(シクロヘキサン環など)、芳香族環(ベンゼン環、ナフタレン環など)、などが挙げられる。上記の基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。なお、本発明および本明細書において、特記しない限り、記載されている基は置換基を有してもよく無置換であってもよい。ある基が置換基を有する場合、置換基としては、アルキル基(例えば炭素数1〜6のアルキル基)、水酸基、アルコキシ基(例えば炭素数1〜6のアルコキシ基)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、アシル基、カルボキシ基等を挙げることができる。
【0093】
以上説明したラジカル重合性化合物は、公知の方法で合成することができる。また、市販品として入手することも可能である。例えば、合成方法の一例としては、アルコール、ポリオール、および/または水酸基含有(メタ)アクリル酸等の水酸基含有化合物とイソシアネートを反応させ、または必要に応じて、上記反応によって得られたウレタン化合物を(メタ)アクリル酸でエステル化する方法を挙げることができる。なお「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の一方または両方を意味するものとする。
【0094】
上記の1分子中に1個以上のウレタン結合を含むラジカル重合性化合物の市販品としては、下記のものに限定されるものではないが、例えば、共栄社化学社製UA−306H、UA−306I、UA−306T、UA−510H、UF−8001G、UA−101I、UA−101T、AT−600、AH−600、AI−600、BPZA−66、BPZA−100、新中村化学社製U−4HA、U−6HA、U−6LPA、UA−32P、U−15HA、UA−1100H、日本合成化学工業社製紫光UV−1400B、同UV−1700B、同UV−6300B、同UV−7550B、同UV−7600B、同UV−7605B、同UV−7610B、同UV−7620EA、同UV−7630B、同UV−7640B、同UV−6630B、同UV−7000B、同UV−7510B、同UV−7461TE、同UV−3000B、同UV−3200B、同UV−3210EA、同UV−3310EA、同UV−3310B、同UV−3500BA、同UV−3520TL、同UV−3700B、同UV−6100B、同UV−6640B、同UV−2000B、同UV−2010B、同UV−2250EAを挙げることができる。また、日本合成化学工業社製紫光UV−2750B、共栄社化学社製UL−503LN、大日本インキ化学工業社製ユニディック17−806、同17−813、同V−4030、同V−4000BA、ダイセルUCB社製EB−1290K、トクシキ製ハイコープAU−2010、同AU−2020等も挙げられる。
【0095】
以下に、上記の1分子中に1個以上のウレタン結合を含むラジカル重合性化合物の具体例として例示化合物A−1〜A−8を示すが、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
【0096】
【化1】
【0097】
【化2】
【0098】
以上、1分子中に1個以上のウレタン結合を含むラジカル重合性化合物について説明したが、アクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基を1分子中に2個以上含むラジカル重合性化合物は、ウレタン結合を有さないものであってもよい。また、第二の態様(1)のHC層形成用硬化性組成物は、アクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基を1分子中に2個以上含むラジカル重合性化合物に加えて、かかるラジカル重合性化合物以外のラジカル重合性化合物の一種以上を含んでいてもよい。
【0099】
以下において、アクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基を1分子中に2個以上含み、かつウレタン結合を1分子中に1個以上含むラジカル重合性化合物を、第一のラジカル重合性化合物と記載し、アクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基を1分子中に2個以上含むか否かに関わらず、第一のラジカル重合性化合物に該当しないラジカル重合性化合物を「第二のラジカル重合性化合物」と記載する。第二のラジカル重合性化合物は、ウレタン結合を1分子中に1個以上有していてもよく、有さなくてもよい。第一のラジカル重合性化合物と第二のラジカル重合性化合物とを併用する場合、それらの質量比は、第一のラジカル重合性化合物/第二のラジカル重合性化合物=3/1〜1/30であることが好ましく、2/1〜1/20であることがより好ましく、1/1〜1/10であることが更に好ましい。
【0100】
第二の態様(1)のHC層形成用硬化性組成物のアクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基を1分子中に2個以上含むラジカル重合性化合物(ウレタン結合の有無を問わない)の含有量は、組成物全量100質量%に対して、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上である。また、第二の態様(1)のHC層形成用硬化性組成物のアクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基を1分子中に2個以上含むラジカル重合性化合物(ウレタン結合の有無を問わない)の含有量は、組成物全量100質量%に対して、好ましくは98質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下であり、更に好ましくは90質量%以下である。
また、第二の態様(1)のHC層形成用硬化性組成物の第一のラジカル重合性化合物の含有量は、組成物全量100質量%に対して、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上である。一方、第一のラジカル重合性化合物の含有量は、組成物全量100質量%に対して、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましい。
【0101】
第二のラジカル重合性化合物は、一態様では、好ましくは、ラジカル重合性基を1分子中に2個以上含み、ウレタン結合を持たないラジカル重合性化合物である。第二のラジカル重合性化合物に含まれるラジカル重合性基は、好ましくはエチレン性不飽和基であり、一態様では、ビニル基が好ましい。他の一態様では、エチレン性不飽和基は、アクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基であることが好ましい。即ち、第二のラジカル重合性化合物は、アクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基を1分子中に1個以上有し、かつウレタン結合を持たないことも好ましい。また、第二のラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性化合物として、一分子中に、アクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基の1個以上と、これら以外のラジカル重合性基の1個以上と、含むこともできる。
第二のラジカル重合性化合物の1分子中に含まれるラジカル重合性基の数は、好ましくは、少なくとも2個であり、より好ましくは3個以上であり、更に好ましくは4個以上である。また、第二のラジカル重合性化合物の1分子中に含まれるラジカル重合性基の数は、一態様では、例えば10個以下であるが、10個超であってもよい。また、第二のラジカル重合性化合物としては、分子量が200以上1000未満のラジカル重合性化合物が好ましい。
【0102】
第二のラジカル重合性化合物としては、例えば以下のものを例示できる。ただし本発明は、下記例示化合物に限定されるものではない。
【0103】
例えば、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール300ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール400ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール600ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性エチレングリコールジ(メタ)アクリレート(市販品として、例えば長瀬産業製デナコールDA−811等)、ポリプロピレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール400ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール700ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO;Ethylene Oxide)・プロピレンオキシド(PO;Propylene Oxide)ブロックポリエーテルジ(メタ)アクリレート(市販品として、例えば日本油脂製ブレンマーPETシリーズ等)、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA EO付加型ジ(メタ)アクリレート(市販品として、例えば東亜合成製M−210、新中村化学工業製NKエステルA−BPE−20等)、水添ビスフェノールA EO付加型ジ(メタ)アクリレート(新中村化学工業製NKエステルA−HPE−4等)、ビスフェノールA PO付加型ジ(メタ)アクリレート(市販品として、例えば共栄社化学製ライトアクリレートBP−4PA等)、ビスフェノールA エピクロルヒドリン付加型ジ(メタ)アクリレート(市販品として、例えばダイセルUCB製エピクリル150等)、ビスフェノールA EO・PO付加型ジ(メタ)アクリレート(市販品として、例えば東邦化学工業製BP−023−PE等)、ビスフェノールF EO付加型ジ(メタ)アクリレート(市販品として、例えば東亜合成製アロニックスM−208等)、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、およびそのエピクロルヒドリン変性品、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、およびそのカプロラクトン変性品、1,4− ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、トリメチロールプロパンアクリル酸・安息香酸エステル、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート(市販品として、例えば東亜合成製アロニックスM−215等)等の2官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0104】
また、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、およびそのEO、PO、エピクロルヒドリン変性品、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、およびそのEO、PO、エピクロルヒドリン変性品、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート(市販品として、例えば東亜合成製アロニックスM−315等)、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、フタル酸水素−(2,2,2−トリ−(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチル、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、およびそのEO、PO、エピクロルヒドリン変性品等の3官能(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、およびそのEO、PO、エピクロルヒドリン変性品、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、およびそのEO、PO、エピクロルヒドリン、脂肪酸、アルキル変性品等の5官能(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびそのEO、PO、エピクロルヒドリン、脂肪酸、アルキル変性品、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびそのEO、PO、エピクロルヒドリン、脂肪酸、アルキル変性品等の6官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
第二のラジカル重合性化合物は2種以上併用してもよい。この場合、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物“DPHA”(日本化薬製)などを好ましく用いることができる。
【0105】
また、第二のラジカル重合性化合物として、重量平均分子量が200以上1000未満のポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートも好ましい。市販品では、ポリエステル(メタ)アクリレートとして、荒川化学工業製の商品名ビームセット700シリーズ、例えばビームセット700(6官能)、ビームセット710(4官能)、ビームセット720(3官能)等が挙げられる。また、エポキシ(メタ)アクリレートとしては、昭和高分子製の商品名SPシリーズ、例えばSP−1506、500、SP−1507、480、VRシリーズ、例えばVR−77、新中村化学工業製商品名EA−1010/ECA、EA−11020、EA−1025、EA−6310/ECA等が挙げられる。
【0106】
また、第二のラジカル重合性化合物の具体例としては、下記例示化合物A−9〜A−11を挙げることもできる。
【0107】
【化3】
【0108】
第二の態様の好ましい一態様である第二の態様(2)のHC層形成用硬化性組成物は、b)1分子中に3個以上のエチレン性不飽和基を含むラジカル重合性化合物を含む。b)1分子中に3個以上のエチレン性不飽和基を含む化合物を、以下において「b)成分」とも記載する。
b)成分としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、ビニルベンゼンおよびその誘導体、ビニルスルホン、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。中でも、アクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基を1分子中に3個以上含むラジカル重合性化合物が好ましい。具体例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルであって、1分子中に3個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を挙げることができる。より詳しくは、例えば、(ジ)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、等が挙げられる。なお上記の「(ジ)ペンタエリスリトール」とは、ペンタエリスリトールとジペンタエリスリトールの一方または両方の意味で用いられる。
【0109】
更に、アクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基を1分子中に3個以上含む樹脂も好ましい。
アクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基を1分子中に3個以上含む樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、スピロアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリチオールポリエン系樹脂、多価アルコール等の多官能化合物等の重合体等も挙げられる。
【0110】
アクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基を1分子中に3個以上含むラジカル重合性化合物の具体例としては、特開2007−256844号公報段落0096に示されている例示化合物等を挙げることができる。
更に、アクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基を1分子中に3個以上含むラジカル重合性化合物の具体例としては、日本化薬製KAYARAD DPHA、同DPHA−2C、同PET−30、同TMPTA、同TPA−320、同TPA−330、同RP−1040、同T−1420、同D−310、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同GPO−303、大阪有機化学工業製V#400、V#36095D等のポリオールと(メタ)アクリル酸のエステル化物を挙げることができる。また紫光UV−1400B、同UV−1700B、同UV−6300B、同UV−7550B、同UV−7600B、同UV−7605B、同UV−7610B、同UV−7620EA、同UV−7630B、同UV−7640B、同UV−6630B、同UV−7000B、同UV−7510B、同UV−7461TE、同UV−3000B、同UV−3200B、同UV−3210EA、同UV−3310EA、同UV−3310B、同UV−3500BA、同UV−3520TL、同UV−3700B、同UV−6100B、同UV−6640B、同UV−2000B、同UV−2010B、同UV−2250EA、同UV−2750B(日本合成化学製)、UL−503LN(共栄社化学製)、ユニディック17−806、同17−813、同V−4030、同V−4000BA(大日本インキ化学工業製)、EB−1290K、EB−220、EB−5129、EB−1830,EB−4358(ダイセルUCB製)、ハイコープAU−2010、同AU−2020((株)トクシキ製)、アロニックスM−1960(東亜合成製)、アートレジンUN−3320HA、UN−3320HC、UN−3320HS、UN−904、HDP−4T等の3官能以上のウレタンアクリレート化合物、アロニックスM−8100、M−8030、M−9050(東亜合成製)、KBM−8307(ダイセルサイテック製)の3官能以上のポリエステル化合物なども好適に使用することができる。
また、b)成分としては、一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種胃需要を併用してもよい。
【0111】
前述の通り、第二の態様(2)のHC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層は、好ましくは、HC層の全固形分を100質量%とした場合に、上記a)由来の構造を15〜70質量%、上記b)由来の構造を25〜80質量%、上記c)を0.1〜10質量%、上記d)を0.1〜10質量%含むことができる。b)由来の構造は、HC層の全固形分を100質量%とした場合に、40〜75質量%含有されることが好ましく、60〜75質量%含有されることがより好ましい。また、第二の態様(2)のHC層形成用硬化性組成物は、このHC層形成用硬化性組成物の全固形分を100質量%とした場合に、b)成分を40〜75質量%含むことが好ましく、60〜75質量%含むことがより好ましい。
【0112】
−カチオン重合性化合物−
第二の態様のHC層形成用硬化性組成物は、少なくとも一種のラジカル重合性化合物と少なくとも一種のカチオン重合性化合物とを含む。カチオン重合性化合物としては、カチオン重合可能な重合性基(カチオン重合性基)を有するものであれば、何ら制限なく用いることができる。また、1分子中に含まれるカチオン重合性基の数は、少なくとも1個である。カチオン重合性化合物は、カチオン重合性基を1分子中に1個含む単官能化合物であっても、2個以上含む多官能化合物であってもよい。多官能化合物に含まれるカチオン重合性基の数は、特に限定されるものではないが、例えば1分子中に2〜6個である。また、多官能化合物の1分子中に2個以上含まれるカチオン重合性基は、同一あってもよく、構造が異なる二種以上であってもよい。
【0113】
また、カチオン重合性化合物は、一態様では、カチオン重合性基とともに、1分子中に1個以上のラジカル重合性基を有することも好ましい。そのようなカチオン重合性化合物が有するラジカル重合性基については、ラジカル重合性化合物についての上述の記載を参照できる。好ましくは、エチレン性不飽和基であり、エチレン性不飽和基は、より好ましくは、ビニル基、アクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれるラジカル重合性基である。ラジカル重合性基を有するカチオン重合性化合物の1分子中のラジカル重合性基の数は、少なくとも1個であり、1〜3個であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
【0114】
カチオン重合性基としては、好ましくは、含酸素複素環基およびビニルエーテル基を挙げることができる。なおカチオン重合性化合物は、1分子中に、1個以上の含酸素複素環基と1個以上のビニルエーテル基を含んでいてもよい。
【0115】
含酸素複素環としては、単環であってもよく、縮合環であってもよい。また、ビシクロ骨格を有するものも好ましい。含酸素複素環は、非芳香族環であっても芳香族環であってもよく、非芳香族環であることが好ましい。単環の具体例としては、エポキシ環、テトラヒドロフラン環、オキセタン環を挙げることができる。また、ビシクロ骨格を有するものとしては、オキサビシクロ環を挙げることができる。なお含酸素複素環を含むカチオン重合性基は、1価の置換基として、または2価以上の多価置換基として、カチオン重合性化合物に含まれる。また、上記縮合環は、含酸素複素環の2個以上が縮合したものであっても、含酸素複素環の1個以上と含酸素複素環以外の環構造の1個以上が縮合したものであってもよい。上記の含酸素複素環以外の環構造としては、これらに限定されるものではないが、シクロヘキサン環等のシクロアルカン環を挙げることができる。
【0116】
以下に、含酸素複素環の具体例を示す。ただし、本発明は、下記具体例に限定されるものではない。
【0117】
【化4】
【0118】
カチオン重合性化合物には、カチオン重合性基以外の部分構造が含まれていてもよい。そのような部分構造は、特に限定されるものではなく、直鎖構造であっても、分岐構造であっても、環状構造であってもよい。これら部分構造には、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子が1個以上含まれていてもよい。
【0119】
カチオン重合性化合物の好ましい一態様としては、カチオン重合性基として、またはカチオン重合性基以外の部分構造として、環状構造を含む化合物(環状構造含有化合物)を挙げることができる。環状構造含有化合物に含まれる環状構造は、1分子中に、例えば1個であり、2個以上であってもよい。環状構造含有化合物に含まれる環状構造の数は、1分子中に、例えば1〜5個であるが、特に限定されるものではない。1分子中に2個以上の環状構造を含む化合物は、同一の環状構造を含んでいてもよく、構造の異なる二種以上の環状構造を含んでいてもよい。
【0120】
上記環状構造含有化合物に含まれる環状構造の一例としては、含酸素複素環を挙げることができる。その詳細は、先に記載した通りである。
【0121】
カチオン重合性化合物の1分子中に含まれるカチオン重合性基の数(以下、「C」と記載する。)によって分子量(以下、「B」と記載する。)を除して求められるカチオン重合性基当量(=B/C)は、例えば300以下であり、HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層と樹脂フィルムとの密着性向上の観点からは、150未満であることが好ましい。一方、HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層の吸湿性の観点からは、カチオン重合性基当量は、50以上であることが好ましい。また、一態様では、カチオン重合性基当量を求めるカチオン重合性化合物に含まれるカチオン重合性基は、エポキシ基(エポキシ環)であることができる。即ち、一態様では、カチオン重合性化合物は、エポキシ環含有化合物である。エポキシ環含有化合物は、HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層と樹脂フィルムとの密着性向上の観点からは、1分子中に含まれるエポキシ環の数によって分子量を除して求められるエポキシ基当量が、150未満であることが好ましい。また、エポキシ環含有化合物のエポキシ基当量は、例えば50以上である。
【0122】
また、カチオン重合性化合物の分子量は500以下であることが好ましく、300以下であることが更に好ましい。上記範囲の分子量を有するカチオン重合性化合物は、樹脂フィルムへ浸透しやすい傾向があり、HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層と樹脂フィルムとの密着性向上に寄与することができると推察している。
【0123】
第二の態様(2)のHC層形成用硬化性組成物は、a)脂環式エポキシ基およびエチレン性不飽和基を含み、1分子中に含まれる脂環式エポキシ基の数が1個であり、かつ1分子中に含まれるエチレン性不飽和基の数が1個であり、分子量が300以下であるカチオン重合性化合物を含む。以下において、上記a)を、「a)成分」と記載する。
【0124】
エチレン性不飽和基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等を含むラジカル重合性基が挙げられ、中でも、アクリロイル基、メタクリロイル基およびC(O)OCH=CHが好ましく、アクリロイル基およびメタクリロイル基がより好ましい。1分子中の脂環式エポキシ基とエチレン性不飽和基の数は、それぞれ1個であることが好ましい。
【0125】
a)成分の分子量は、300以下であり、210以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましい。
【0126】
a)成分の好ましい一態様としては、下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
【0127】
【化5】
【0128】
一般式(1)中、Rは単環式炭化水素または架橋炭化水素を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、Qはエチレン性不飽和基を表す。
【0129】
一般式(1)中のRが単環式炭化水素の場合、単環式炭化水素は脂環式炭化水素であることが好ましく、中でも炭素数4〜10の脂環基であることがより好ましく、炭素数5〜7個の脂環基であることが更に好ましく、炭素数6個の脂環基であることが特に好ましい。好ましい具体例としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基を挙げることができ、シクロヘキシル基がより好ましい。
【0130】
一般式(1)中のRが架橋炭化水素の場合、架橋炭化水素は、2環系架橋炭化水素(ビシクロ環)、3環系架橋炭化水素(トリシクロ環)が好ましい。具体例としては、炭素数5〜20個の架橋炭化水素が挙げられ、例えば、ノルボルニル基、ボルニル基、イソボルニル基、トリシクロデシル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、トリシクロペンテニル基、トリシクロペンタニル基、アダマンチル基、低級(例えば炭素数1〜6)アルキル基置換アダマンチル基等が挙げられる。
【0131】
Lが2価の連結基を表す場合、2価の連結基は、2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は、1〜6の範囲であることが好ましく、1〜3の範囲であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。2価の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基が好ましく、直鎖状または分岐状のアルキレン基がより好ましく、直鎖状のアルキレン基が更に好ましい。
【0132】
Qとしては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等を含むエチレン性不飽和基が挙げられ、中でも、アクリロイル基、メタクリロイル基およびC(O)OCH=CHが好ましく、アクリロイル基およびメタクリロイル基がより好ましい。
【0133】
a)成分の具体例としては、特開平10−17614号公報段落0015に例示されている各種化合物、下記一般式(1A)または(1B)で表される化合物、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン等を挙げることができる。中でも、下記一般式(1A)または(1B)で表される化合物がより好ましい。なお、下記一般式(1A)で表される化合物は、その異性体も好ましい。
【0134】
【化6】
【0135】
【化7】
【0136】
一般式(1A)、(1B)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Lは炭素数1〜6の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
【0137】
一般式(1A)および(1B)中のLで表される2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は、1〜6の範囲であり、1〜3の範囲であることがより好ましく、炭素数1であることが更に好ましい。2価の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基が好ましく、直鎖状または分岐状のアルキレン基がより好ましく、直鎖状のアルキレン基が更に好ましい。
【0138】
第二の態様(2)のHC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層は、好ましくは、HC層の全固形分を100質量%とした場合に、上記a)由来の構造を15〜70質量%含むことが好ましく、18〜50質量%含むことがより好ましく、22〜40質量%含むことが更に好ましい。また、第二の態様(2)のHC層形成用硬化性組成物は、a)成分を、HC層形成用硬化性組成物の全固形分を100質量%とした場合に、15〜70質量%含むことが好ましく、18〜50質量%含むことがより好ましく、22〜40質量%含むことが更に好ましい。
【0139】
上記環状構造含有化合物に含まれる環状構造の他の一例としては、含窒素複素環を挙げることができる。含窒素複素環含有化合物は、HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層と樹脂フィルムとの密着性向上の観点から好ましいカチオン重合性化合物である。含窒素複素環含有化合物としては、イソシアヌレート環(後述の例示化合物B−1〜B−3に含まれる含窒素複素環)およびグリコールウリル環(後述の例示化合物B−10に含まれる含窒素複素環)からなる群から選ばれる含窒素複素環を1分子中に1個以上有する化合物が好ましい。中でも、イソシアヌレート環を含む化合物(イソシアヌレート環含有化合物)は、HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層と樹脂フィルムとの密着性向上の観点から、より好ましいカチオン重合性化合物である。これは、イソシアヌレート環が樹脂フィルムを構成する樹脂との親和性に優れるためと、本発明者らは推察している。この点からは、アクリル系樹脂フィルムを含む樹脂フィルムがより好ましく、HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層と直接接する表面がアクリル系樹脂フィルム表面であることが更に好ましい。
【0140】
また、上記環状構造含有化合物に含まれる環状構造の他の一例としては、脂環構造を挙げることができる。脂環構造としては、例えば、シクロ環、ジシクロ環、トリシクロ環構造を挙げることができ、具体例としては、ジシクロペンタニル環、シクロヘキサン環等を挙げることができる。
【0141】
以上説明したカチオン重合性化合物は、公知の方法で合成することができる。また、市販品として入手することも可能である。
【0142】
カチオン重合性基として含酸素複素環を含むカチオン重合性化合物の具体例としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(株式会社ダイセル製サイクロマーM100等の市販品)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、ユニオンカーバイト製UVR6105、UVR6110およびダイセル化学製CELLOXIDE2021等の市販品)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート(例えば、ユニオンカーバイト製UVR6128)、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド(例えば、ダイセル化学製CELLOXIDE2000)、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、ダイセル化学製CELLOXIDE2081)、1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン(例えば、ダイセル化学製CELLOXIDE3000)、7,7’‐ジオキサ‐3,3’‐ビ[ビシクロ[4.1.0]ヘプタン](例えば、ダイセル化学製CELLOXIDE8000)、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンおよびジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル等を挙げることができる。
【0143】
また、カチオン重合性基としてビニルエーテル基を含むカチオン重合性化合物の具体例としては、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、シキロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル等が挙げられる。ビニルエーテル基を含むカチオン重合性化合物としては、脂環構造を有するものも好ましい。
【0144】
更に、カチオン重合性化合物としては、特開平8−143806号公報、特開平8−283320号公報、特開2000−186079号公報、特開2000−327672号公報、特開2004−315778号公報、特開2005−29632号公報等に例示されている化合物を用いることもできる。
【0145】
以下に、カチオン重合性化合物の具体例として例示化合物B−1〜B−14を示すが、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
【0146】
【化8】
【0147】
【化9】
【0148】
【化10】
【0149】
また、HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層と樹脂フィルムとの密着性向上の観点からは、HC層形成用硬化性組成物の好ましい態様としては、下記態様を挙げることができる。下記態様の1つ以上を満たすことがより好ましく、2つ以上を満たすことが更に好ましく、3つ以上を満たすことがいっそう好ましく、すべて満たすことがよりいっそう好ましい。なお1つのカチオン重合性化合物が、複数の態様を満たすことも好ましい。例えば、含窒素複素環含有化合物が、カチオン重合性基当量150未満であること等を、好ましい態様として例示できる。
(1)カチオン重合性化合物として、含窒素複素環含有化合物を含む。好ましくは、含窒素複素環含有化合物が有する含窒素複素環は、イソシアヌレート環およびグリコールウリル環からなる群から選択される。含窒素複素環含有化合物は、より好ましくは、イソシアヌレート環含有化合物である。更に好ましくは、イソシアヌレート環含有化合物は、1分子中に1つ以上のエポキシ環を含むエポキシ環含有化合物である。
(2)カチオン重合性化合物として、カチオン重合性基当量が150未満のカチオン重合性化合物を含む。好ましくは、エポキシ基当量が150未満のエポキシ基含有化合物を含む。
(3)カチオン重合性化合物が、エチレン性不飽和基を含む。
(4)カチオン重合性化合物として、1分子中に1個以上のオキセタン環を含むオキセタン環含有化合物を、他のカチオン重合性化合物とともに含む。好ましくは、オキセタン環含有化合物は、含窒素複素環を含まない化合物である。
【0150】
上記HC層形成用硬化性組成物のカチオン重合性化合物の含有量は、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物との合計含有量100質量部に対して、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは15質量部以上であり、更に好ましくは20質量部以上である。また、上記HC層形成用硬化性組成物のカチオン重合性化合物の含有量は、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物との合計含有量100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましい。
また、上記HC層形成用硬化性組成物のカチオン重合性化合物の含有量は、第一のラジカル重合性化合物の含有量とカチオン重合性化合物との合計含有量100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上であり、より好ましくは0.1質量部以上であり、更に好ましくは1質量部以上である。一方、カチオン重合性化合物の含有量は、第一のラジカル重合性化合物の含有量とカチオン重合性化合物との合計含有量100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましい。
なお本発明および本明細書において、カチオン重合性基とラジカル重合性基をともに有する化合物は、カチオン重合性化合物に分類し、HC層形成用硬化性組成物における含有量を規定するものとする。
【0151】
−重合開始剤−
HC層形成用硬化性組成物は重合開始剤を含むことが好ましく、光重合開始剤を含むことがより好ましい。ラジカル重合性化合物を含むHC層形成用硬化性組成物は、ラジカル光重合開始剤を含むことが好ましく、カチオン重合性化合物を含むHC層形成用硬化性組成物は、カチオン光重合開始剤を含むことが好ましい。なおラジカル光重合開始剤は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。この点は、カチオン光重合開始剤についても同様である。
以下、各光重合開始剤について、順次説明する。
【0152】
(i)ラジカル光重合開始剤
ラジカル光重合開始剤としては、光照射により活性種としてラジカルを発生することができるものであればよく、公知のラジカル光重合開始剤を、何ら制限なく用いることができる。具体例としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等のアセトフェノン類;1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、オルト−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類;等が挙げられる。また、ラジカル光重合開始剤の助剤として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等を併用してもよい。
以上のラジカル光重合開始剤および助剤は、公知の方法で合成可能であり、市販品として入手も可能である。市販のラジカル光重合開始剤としては、BASF製のイルガキュア(127,651,184,819,907,1870(CGI−403/Irg184=7/3混合開始剤、500,369,1173,2959,4265,4263など)、OXE01)等、日本化薬製のKAYACURE(DETX−S,BP−100,BDMK,CTX,BMS,2−EAQ,ABQ,CPTX,EPD,ITX,QTX,BTC,MCAなど)、サートマー製のEsacure(KIP100F,KB1,EB3,BP,X33,KT046,KT37,KIP150,TZT)等を好ましい例として挙げられる。
【0153】
上記HC層形成用硬化性組成物のラジカル光重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性化合物の重合反応(ラジカル重合)を良好に進行させる範囲で適宜調整すればよく、特に限定されるものではない。上記HC層形成用硬化性組成物に含まれるラジカル重合性化合物100質量部に対して、例えば0.1〜20質量部の範囲であり、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0154】
(ii)カチオン光重合開始剤
カチオン光重合開始剤としては、光照射により活性種としてカチオンを発生することができるものであればよく、公知のカチオン光重合開始剤を、何ら制限なく用いることができる。具体例としては、公知のスルホニウム塩、アンモニウム塩、ヨードニウム塩(例えばジアリールヨードニウム塩)、トリアリールスルホニウム塩、ジアゾニウム塩、イミニウム塩などが挙げられる。より具体的には、例えば、特開平8−143806号公報段落0050〜0053に示されている式(25)〜(28)で表されるカチオン光重合開始剤、特開平8−283320号公報段落0020にカチオン重合触媒として例示されているもの等を挙げることができる。また、カチオン光重合開始剤は、公知の方法で合成可能であり、市販品としても入手可能である。市販品としては、例えば、日本曹達製CI−1370、CI−2064、CI−2397、CI−2624、CI−2639、CI−2734、CI−2758、CI−2823、CI−2855およびCI−5102等、ローディア製PHOTOINITIATOR2047等、ユニオンカーバイト製UVI−6974、UVI−6990、サンアプロ製CPI−10Pを用いることができる。
【0155】
カチオン光重合開始剤としては、光重合開始剤の光に対する感度、化合物の安定性等の点からは、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、イミニウム塩が好ましい。また、耐候性の点からは、ヨードニウム塩が最も好ましい。
【0156】
ヨードニウム塩系のカチオン光重合開始剤の具体的な市販品としては、例えば、東京化成製B2380、みどり化学BBI−102、和光純薬工業製WPI−113、和光純薬工業製WPI−124、和光純薬工業製WPI−169、和光純薬工業製WPI−170、東洋合成化学製DTBPI−PFBSを挙げることができる。
【0157】
また、カチオン光重合開始剤として使用可能なヨードニウム塩化合物の具体例としては、下記化合物PAG−1、PAG−2を挙げることもできる。
【0158】
【化11】
【0159】
【化12】
【0160】
上記HC層形成用硬化性組成物のカチオン光重合開始剤の含有量は、カチオン重合性化合物の重合反応(カチオン重合)を良好に進行させる範囲で適宜調整すればよく、特に限定されるものではない。カチオン重合性化合物100質量部に対して、例えば0.1〜200質量部の範囲であり、好ましくは1〜150質量部、より好ましくは2〜100質量部の範囲である。
【0161】
その他の光重合開始剤としては、特開2009−204725号公報の段落0052〜0055に記載の光重合開始剤を挙げることもでき、この公報の内容は本発明に組み込まれる。
【0162】
−HC層形成用硬化性組成物に任意に含まれ得る成分−
HC層形成用硬化性組成物は、活性エネルギー線の照射により硬化する性質を有する少なくとも一種の成分を含み、任意に少なくとも一種の重合開始剤を含むことができ、含むことが好ましい。それらの詳細は、先に記載した通りである。
次に、HC層形成用硬化性組成物に任意に含まれ得る各種成分について説明する。
【0163】
(i)無機粒子
HC層形成用硬化性組成物は、平均一次粒径が2μm未満の無機粒子を含むことができる。HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層を有する前面板の硬度向上(更にはこの前面板を有する液晶パネルの硬度向上)の観点からは、HC層形成用硬化性組成物およびこの組成物を硬化したHC層は、平均一次粒径が2μm未満の無機粒子を含むことが好ましい。無機粒子の平均一次粒径は、10nm〜1μmの範囲であることが好ましく、10nm〜100nmの範囲であることがより好ましく、10nm〜50nmの範囲であることが更に好ましい。
無機粒子および後述のマット粒子の平均一次粒径については、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、無作為に選択した粒子(一次粒子)100個を観察し、それらの粒径の平均値をもって平均一次粒径とする。
【0164】
上記無機粒子としては、シリカ粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子などが挙げられる。中でもシリカ粒子が好ましい。
【0165】
上記無機粒子は、HC層形成用硬化性組成物に含まれる有機成分との親和性を高めるために、その表面が有機セグメントを含む表面修飾剤で処理されていることが好ましい。表面修飾剤としては、無機粒子と結合を形成するか無機粒子に吸着し得る官能基と、有機成分と高い親和性を有する官能基を同一分子内に有するものが好ましい。無機粒子に結合または吸着し得る官能基を有する表面修飾剤としては、シラン系表面修飾剤、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム等の金属アルコキシド表面修飾剤や、リン酸基、硫酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等のアニオン性基を有する表面修飾剤が好ましい。有機成分との親和性の高い官能基としては、有機成分と同様の親疎水性を有する官能基、有機成分と化学的に結合し得る官能基等が挙げられる。中でも、有機成分と化学的に結合し得る官能基等が好ましく、エチレン性不飽和基または開環重合性基がより好ましい。
【0166】
好ましい無機粒子表面修飾剤は、金属アルコキシド表面修飾剤またはアニオン性基とエチレン性不飽和基もしくは開環重合性基を同一分子内に有する重合性化合物である。これら表面修飾剤によって無機粒子と有機成分とを化学的に結合させることによりHC層の架橋密度を高めることができ、その結果、前面板の硬度(更にはこの前面板を含む液晶パネルの硬度)を向上させることができる。
【0167】
上記表面修飾剤の具体例としては、以下の例示化合物S−1〜S−8が挙げられる。
S−1 HC=C(X)COOCSi(OCH
S−2 HC=C(X)COOCOTi(OC
S−3 HC=C(X)COOCOCOC10OPO(OH)
S−4 (HC=C(X)COOCOCOC10O)POOH
S−5 HC=C(X)COOCOSO
S−6 HC=C(X)COO(C10COO)
S−7 HC=C(X)COOC10COOH
S−8 CHCH(O)CHOCSi(OCH
(Xは、水素原子またはメチル基を表す)
【0168】
表面修飾剤による無機粒子の表面修飾は、溶液中で行うことが好ましい。無機粒子を機械的に分散する際に、一緒に表面修飾剤を存在させるか、無機粒子を機械的に分散した後に表面修飾剤を添加して攪拌するか、または、無機粒子を機械的に分散する前に表面修飾を行って(必要により、加温、乾燥した後に加熱、またはpH(power of hydrogen)変更を行う)、その後に分散を行ってもよい。表面修飾剤を溶解する溶媒としては、極性の大きな有機溶媒が好ましい。具体的には、アルコール、ケトン、エステル等の公知の溶媒が挙げられる。
【0169】
無機粒子の含有量は、HC層形成用硬化性組成物の全固形分を100質量%とした場合に、5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。無機粒子の一次粒子の形状は、球形、非球形を問わないが、無機粒子の一次粒子は球形であることが好ましく、HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層中において球形の2〜10個の無機粒子(一次粒子)が連結した非球形の2次粒子以上の高次粒子として存在することが更なる硬度向上の観点からより好ましい。
【0170】
無機粒子の具体的な例としては、ELCOM V−8802(日揮触媒化成製の平均一次粒径15nmの球形シリカ粒子)やELCOM V−8803(日揮触媒化成製の異形シリカ粒子)、MiBK−SD(日産化学工業製平均一次粒径10〜20nmの球形シリカ粒子)、MEK−AC−2140Z(日産化学工業製の平均一次粒径10〜20nmの球形シリカ粒子)、MEK−AC−4130(日産化学工業製の平均一次粒径45nmの球形シリカ粒子)、MiBK−SD−L(日産化学工業製の平均一次粒径40〜50nmの球形シリカ粒子)、MEK−AC−5140Z(日産化学工業製の平均一次粒径85nmの球形シリカ粒子)等を挙げることができる。中でも、日揮触媒化成製ELCOM V−8802が、更なる硬度向上の観点から好ましい。
【0171】
(ii)マット粒子
HC層形成用硬化性組成物は、マット粒子を含むこともできる。マット粒子とは、平均一次粒径が2μm以上の粒子をいうものとし、無機粒子であっても有機粒子であってもよく、または無機・有機の複合材料の粒子であってもよい。マット粒子の形状は、球形、非球形を問わない。マット粒子の平均一次粒径は、2〜20μmの範囲であることが好ましく、4〜14μmの範囲であることがより好ましく、6〜10μmの範囲であることが更に好ましい。
【0172】
マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO粒子等の無機粒子、架橋アクリル粒子、架橋アクリル−スチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の有機粒子を挙げることができる。中でも、マット粒子が有機粒子であることが好ましく、架橋アクリル粒子、架橋アクリル−スチレン粒子、架橋スチレン粒子であることがより好ましい。
【0173】
マット粒子は、HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層における単位体積あたりの含有量として、0.10g/cm以上であることが好ましく、0.10g/cm〜0.40g/cmであることがより好ましく、0.10g/cm〜0.30g/cmであることがより好ましい。
【0174】
(iii)紫外線吸収剤
HC層形成用硬化性組成物は、紫外線吸収剤を含有することも好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール化合物、トリアジン化合物を挙げることができる。ここでベンゾトリアゾール化合物とは、ベンゾトリアゾール環を有する化合物であり、具体例としては、例えば特開2013−111835号公報段落0033に記載されている各種ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を挙げることができる。トリアジン化合物とは、トリアジン環を有する化合物であり、具体例としては、例えば特開2013−111835号公報段落0033に記載されている各種トリアジン系紫外線吸収剤を挙げることができる。樹脂フィルム中の紫外線吸収剤の含有量は、例えばフィルムに含まれる樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部程度であるが、特に限定されるものではない。また、紫外線吸収剤については、特開2013−111835号公報段落0032も参照できる。なお本発明および本明細書における紫外線とは200〜380nmの波長帯域に発光中心波長を有する光をいうものとする。
【0175】
(iv)含フッ素化合物
HC層形成用硬化性組成物は、レベリング剤および防汚剤等の含フッ素化合物を含有することも好ましい。
レベリング剤としては、含フッ素ポリマーが好ましく用いられる。例えば、特許5175831号に記載されているフルオロ脂肪族基含有ポリマーが挙げられる。またフルオロ脂肪族基含有ポリマーを構成する、一般式(1)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの含有量が全重合単位の50質量%以下のフルオロ脂肪族基含有ポリマーをレベリング剤として用いることもできる。
HC層が防汚剤を含むと、指紋や汚れの付着を低減し、また、付着した汚れの拭き取りを容易にすることができる。また、表面のすべり性を向上させる事により耐擦性をより向上させることも可能になる。
【0176】
HC層形成用硬化性組成物が、防汚剤を含有する場合の含有量は、HC層形成用硬化性組成物の固形分の0.01〜7質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましく、0.1〜2質量%がさらに好ましい。
HC層形成用硬化性組成物は、防汚剤を、1種のみ含んでいても良いし、2種以上含んでいても良い。2種以上含まれている場合、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、HC層形成用硬化性組成物は、防汚剤を実質的に含まない構成とすることもできる。
防汚剤は、含フッ素化合物を含有することが好ましい。含フッ素化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーいずれでもよい。防汚剤としての含フッ素化合物(含フッ素防汚剤)は、HC層中でその他の成分(例えば、後述する含ポリシロキサン化合物、樹脂の構成成分である重合性モノマー、樹脂)との結合形成あるいは相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。この置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。
この置換基は重合性基が好ましく、ラジカル重合性、カチオン重合性、アニオン重合性、縮重合性及び付加重合性のうちいずれかを示す重合性反応基であればよく、好ましい置換基の例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基が挙げられる。その中でもラジカル重合性基が好ましく、中でもアクリロイル基、メタクリロイル基が特に好ましい。
含フッ素化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよい。
【0177】
上記含フッ素防汚剤は、下記一般式(F)で表されるフッ素系化合物が好ましい。
一般式(F): (R)−[(W)−(R
(式中、Rは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基、Wは単結合又は連結基、Rは重合性不飽和基を表す。nは1〜3の整数を表す。mは1〜3の整数を表す。)
【0178】
一般式(F)において、Rは重合性不飽和基を表す。重合性不飽和基は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することによりラジカル重合反応を起こしうる不飽和結合を有する基(すなわち、ラジカル重合性基)であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、及びこれらの基における任意の水素原子がフッ素原子に置換された基が好ましく用いられる。
【0179】
一般式(F)において、Rは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基を表す。
ここで、「(パー)フルオロアルキル基」は、フルオロアルキル基及びパーフルオロアルキル基のうち少なくとも1種を表し、「(パー)フルオロポリエーテル基」は、フルオロポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基のうち少なくとも1種を表す。耐擦性の観点では、R中のフッ素含有率は高いほうが好ましい。
【0180】
(パー)フルオロアルキル基は、炭素数1〜20の基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜10の基である。
(パー)フルオロアルキル基は、直鎖構造(例えば−CFCF、−CH(CFH、−CH(CFCF、−CHCH(CFH)であっても、分岐構造(例えば−CH(CF、−CHCF(CF、−CH(CH)CFCF、−CH(CH)(CFCFH)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環で、例えばパーフルオロシクロへキシル基及びパーフルオロシクロペンチル基並びにこれらの基で置換されたアルキル基)であってもよい。
【0181】
(パー)フルオロポリエーテル基は、(パー)フルオロアルキル基がエーテル結合を有している場合を指し、1価でも2価以上の基であってもよい。フルオロポリエーテル基としては、例えば−CHOCHCFCF、−CHCHOCHH、−CHCHOCHCH17、−CHCHOCFCFOCFCFH、フッ素原子を4個以上有する炭素数4〜20のフルオロシクロアルキル基等が挙げられる。また、パーフルオロポリエーテル基としては、例えば、−(CFO)−(CFCFO)−、−[CF(CF)CFO]―[CF(CF)]−、−(CFCFCFO)−、−(CFCFO)−などが挙げられる。
上記p及びqはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す。ただしp+qは1以上の整数である。
p及びqの総計は1〜83が好ましく、1〜43がより好ましく、5〜23がさらに好ましい。
上記含フッ素防汚剤は、耐擦性に優れるという観点から−(CFO)−(CFCFO)−で表されるパーフルオロポリエーテル基を有することが特に好ましい。
【0182】
本発明においては、含フッ素防汚剤は、パーフルオロポリエーテル基を有し、かつ重合性不飽和基を一分子中に複数有することが好ましい。
【0183】
一般式(F)において、Wは連結基を表す。Wとしては、例えばアルキレン基、アリーレン基及びヘテロアルキレン基、並びにこれらの基が組み合わさった連結基が挙げられる。これらの連結基は、更に、オキシ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基及びスルホンアミド基等、並びにこれらの基が組み合わさった官能基を有してもよい。
Wとして、好ましくは、エチレン基、より好ましくは、カルボニルイミノ基と結合したエチレン基である。
【0184】
含フッ素防汚剤のフッ素原子含有量には特に制限は無いが、20質量%以上が好ましく、30〜70質量%がより好ましく、40〜70質量%がさらに好ましい。
【0185】
好ましい含フッ素防汚剤の例としては、ダイキン化学工業(株)製のR−2020、M−2020、R−3833、M−3833及びオプツールDAC(以上商品名)、大日本インキ(株)製のメガファックF−171、F−172、F−179A、RS−78、RS−90、ディフェンサMCF−300及びMCF−323(以上商品名)が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0186】
耐擦性の観点から、一般式(F)において、nとmの積(n×m)は2以上が好ましく、4以上がより好ましい。
【0187】
一般式(F)において、nとmが同時に1である場合について、以下の好ましい態様の具体例として下記一般式(F−1)〜(F−3)が挙げられる。
【0188】
一般式(F−1):
f2(CFCF22CHCH21OCOCR11=CH
【0189】
(式中、Rf2は、フッ素原子、又は炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基を示し、R11は水素原子又はメチル基を示し、R21は単結合又はアルキレン基を示し、Rは単結合又は2価の連結基を示し、pは重合度を示す整数であり、重合度pはk(kは3以上の整数)以上である。)
【0190】
22が2価の連結基を表す場合、この2価の連結基としては、前述のWと同様のものが挙げられる。
【0191】
一般式(F−1)におけるフッ素原子を含むテロマー型(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類等が挙げられる。
【0192】
上記の一般式(F−1)で表される化合物は、合成の際にテロメリゼイションを用いると、テロメリゼイションの条件及び反応混合物の分離条件等によっては、一般式(F−1)の基であるRf2(CFCF22CHCH21O−のpがそれぞれk、k+1、k+2、・・・等の複数の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを含むことがある。
【0193】
一般式(F−2):
F(CF−CH−CHX−CHY(式中、qは1〜20の整数、X及びYは(メタ)アクリロイルオキシ基又は水酸基を示し、X及びYの少なくとも一方は(メタ)アクリロイルオキシ基である。)
【0194】
一般式(F−2)で表される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、末端にトリフルオロメチル基(−CF)をもつ炭素数1〜20のフルオロアルキル基を有しており、この含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは少量でもトリフルオロメチル基が表面に有効に配向される。
【0195】
耐擦性及び化合物の製造の容易性から、qは6〜20が好ましく、8〜10より好ましい。炭素数8〜10のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、他の鎖長のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルと比較しても優れた摩擦係数の低減効果を発現するため、耐擦性に優れる。
【0196】
一般式(F−2)で表される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルとして具体的には、1−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−1−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン及び1,2−ビス(メタ)アクリロイルオキシ4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン等が挙げられる。本発明においては、1−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカンが好ましい。
【0197】
一般式(F−3):
F(CFO(CFCFO)CFCHOCOCR=CH(式中Rは水素原子又はメチル基であり、sは1〜20の整数であり、rは1〜4の整数を表す。)
【0198】
上記一般式(F−3)で表されるフッ素原子含有単官能(メタ)アクリレートは、下記一般式(FG−3)で表されるフッ素原子含有アルコール化合物と(メタ)アクリル酸ハライドとを反応させることにより得ることができる。
【0199】
一般式(FG−3):
F(CFO(CFCFO)CFCHOH(一般式(FG−3)中、sは1〜20の整数の整数であり、rは1〜4の整数を表す。)
【0200】
上記一般式(FG−3)表されるフッ素原子含有アルコール化合物の具体例としては、例えば、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサヘプタン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサオクタン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサウンデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサトリデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサトリデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサヘキサデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15−ペンタオキサヘキサデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15−ペンタオキサノナデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15,18−ヘキサオキサイコサン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15,18−ヘキサオキサドコサン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15,18,21−ヘプタオキサトリコサン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15,18,21−ヘプタオキサペンタコサン−1−オール等を挙げることができる。
これらは市場で入手でき、その具体例としては例えば、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサヘプタン−1−オール(商品名「C5GOL」、エクスフロアー社製)、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサデカン−1−オール(商品名「C7GOL」、エクスフロアー社製)、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサデカン−1−オール(商品名「C8GOL」、エクスフロアー社製)、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサトリデカン−1−オール(商品名「C10GOL」、エクスフロアー社製)、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサヘキサデカン−1−オール(商品名「C12GOL」、エクスフロアー社製)等が挙げられる。
本発明においては、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサトリデカン−1−オールを用いることが好ましい。
【0201】
また、上記一般式(FG−3)で表されるフッ素原子含有アルコール化合物と反応させる(メタ)アクリル酸ハライドとしては、(メタ)アクリル酸フルオライド、(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリル酸ブロマイド、(メタ)アクリル酸アイオダイドを挙げることができる。入手しやすさ等の観点から(メタ)アクリル酸クロライドが好ましい。
【0202】
以下に一般式(F−3)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、これらに限定されるものではない。なお、一般式(F−3)で表される好ましい具体例は、特開2007−264221号公報にも記載がある。
【0203】
(b−1):FOCOCOCFCHOCOCH=CH
(b−2):FOCOCFCHOCOC(CH)=CH
【0204】
更に一般式(F−3)で表される化合物とは別に、下記一般式(F−3)’で表される化合物も好ましく用いることができる。
【0205】
一般式(F−3)’:
f3−[(O)(O=C)(CX−CX=CX
(式中、X及びXは、H又はFを表し、XはH、F、CH又はCFを表し、X及びXは、H、F、又はCFを表し、a、b、及びcは0又は1を表し、Rf3は炭素数18〜200のエーテル結合を含む含フッ素アルキル基を表す)
上記一般式(F−3)’で表される化合物は、Rf3基中に、一般式(FG−3)’:−(CXCFCFO)− (式中、XはF又はH)で示される繰り返し単位を6個以上有する、含フッ素不飽和化合物である。
【0206】
上記一般式(F−3)’表される含フッ素ポリエーテル化合物の例としては、
(c−1) Rf3−[(O)(O=C)−CX=CX
(c−2) Rf3−[(O)(O=C)−CX=CX
(c−3) Rf3−[(O)(O=C)−CF=CH
などを挙げることができる((c−1)〜(c−3)における各記号の定義は一般式(FG−3)’と同義である。)。
上記含フッ素ポリエーテル化合物の重合性不飽和基としては、以下の構造を含むものを好ましく用いることができる。
【0207】
また、上記一般式(F−3)’で表される含フッ素ポリエーテル化合物は、重合性不飽和基を複数個有していてもよい。
本発明においては、−O(C=O)CF=CHの構造を有する化合物が重合(硬化)反応性が特に高く、効率よく硬化物を得ることができる点で好ましい。
【0208】
上記一般式(F−3)’で表される含フッ素ポリエーテル化合物は、Rf3基中に一般式(FG−3)’で表される含フッ素ポリエーテル鎖を繰り返し単位で6個以上含んでいることが重要であり、これによって耐擦性を付与できる。
また更に詳しくは、含フッ素ポリエーテル鎖の繰り返し単位が6個以上のものを含んでいる混合物でもよいが、混合物の形で使用する場合、上記繰り返し単位が6個未満の含フッ素不飽和化合物と6個以上の含フッ素不飽和化合物との分布において、ポリエーテル鎖の繰り返し単位が6個以上の含フッ素不飽和化合物の存在比率が最も高い混合物とすることが好ましい。
一般式(FG−3)’で表される含フッ素ポリエーテル鎖の繰り返し単位は6個以上が好ましく、10個以上がより好ましく、18個以上が更に好ましく、20個以上が特に好ましい。これによって、動摩擦係数を低減し、耐擦性を向上することができる。また、含フッ素ポリエーテル鎖はRf3基の末端にあっても、鎖中に存在していてもよい。
【0209】
f3基は具体的には、
一般式(c−4):
−(CXCFCFO)−(R−(式中、Xは式(FG−3)’で表される含フッ素ポリエーテル鎖、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、含フッ素アルキル基、エーテル結合を含むアルキル基又はエーテル結合を含む含フッ素アルキル基、Rは二価以上の有機基、tは6〜66の整数、eは0又は1を表す。)で表される基が好ましい。
つまり、Rf3基は、二価以上の有機基Rを介して、反応性の炭素−炭素二重結合と結合し、更に末端にRを有する含フッ素有機基である。
は一般式(FG−3)’で表される含フッ素ポリエーテル鎖を反応性の炭素−炭素二重結合に結合させることができる有機基であれば、如何なるものでもよい。例えば、アルキレン基、含フッ素アルキレン基、エーテル結合を含むアルキレン基及びエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基が挙げられる。中でも含フッ素アルキレン基及びエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基が、透明性、低屈折率性の点で好ましい。
【0210】
一般式(F−3)’で表される含フッ素ポリエーテル化合物の具体例としては、再公表特許WO2003/022906号パンフレットに挙げられる化合物などが好ましく用いられる。本発明においては、CH=CF−COO−CHCFCF−(OCFCFCF−OCを特に好ましく用いることができる。
【0211】
一般式(F)において、nとmが同時に1でない場合については、以下の好ましい態様として一般式(F−4)及び一般式(F−5)が挙げられる。
【0212】
一般式(F−4):(Rf1)−[(W)−(R
(一般式(F−4)中、Rf1は(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基、Wは連結基、Rは重合性不飽和基を表す。nは1〜3の整数、mは1〜3の整数を表し、nとmは同時に1であることはない。)
撥水撥油性に優れると共に撥水撥油性の持続(防汚耐久性)に優れるという観点からnが2〜3、mが1〜3であることが好ましく、nが2〜3、mが2〜3であることがより好ましく、nが3、mが2〜3であることがさらに好ましい。
【0213】
f1は一価〜三価のものを用いることができる。Rf1が一価の場合、末端基としては(C2n+1)−、(C2n+1O)−、(XC2nO)−、(XC2n+1)−(式中Xは水素原子、塩素原子、又は臭素原子であり、nは1〜10の整数)であることが好ましい。具体的にはCFO(CO)CF−、CO(CFCFCFO)pCFCF−、CO(CF(CF)CFO)CF(CF)−、F(CF(CF)CFO)CF(CF)−等を好ましく使用することができる。
【0214】
ここでpの平均値は0〜50である。好ましくは3〜30、より好ましくは3〜20、さらに好ましくは4〜15である。
【0215】
f1が二価の場合は、−(CFO)(CO)CF−、−(CFO(CO)(CF−、−CFO(CO)CF−、−CO(CO)−、−CF(CF)(OCFCF(CF))OC2tO(C(CF)CFO)CF(CF)−等を好ましく使用することができる。
【0216】
ここで、式中q、r、sの平均値は0〜50である。好ましくは3〜30、より好ましくは3〜20、最も好ましくは4〜15である。tは2〜6の整数である。
一般式(F−4)で表される化合物の好ましい具体例や合成方法は国際公開第2005/113690号に記載されている。
【0217】
以下では、F(CF(CF)CFO)CF(CF)−においてpの平均値が6〜7のものを“HFPO−”と記載し、−(CF(CF)CFO)CF(CF)−においてpの平均値が6〜7のものを“−HFPO−”と記載し、一般式(F−4)の具体的化合物を示すが、これらに限定されるものではない。
【0218】
(d−1):HFPO−CONH−C−(CHOCOCH=CHCHCH
(d−2):HFPO−CONH−C−(CHOCOCH=CH
(d−3):HFPO−CONH−CNHCHとトリメチロールプロパントリアクリレートの1:1マイケル付加重合物
(d−4):(CH=CHCOOCHH−C−CONH−HFPO−CONH−(CHOCOCH=CH
(d−5):(CH=CHCOOCH−C−CONH−HFPO−CONH−C−(CHOCOCH=CH
【0219】
更に、一般式(F−4)で表される化合物として下記一般式(F−5)で表される化合物を用いることもできる。
【0220】
一般式(F−5):
CH=CX−COO−CHY−CH−OCO−CX=CH
(式中X及びXは、水素原子又はメチル基を示し、Yは、フッ素原子を3個以上有する炭素数2〜20のフルオロアルキル基又はフッ素原子を4個以上有する炭素数4〜20のフルオロシクロアルキル基を示す。)
【0221】
本発明において、重合性不飽和基が(メタ)アクリロイルオキシ基である化合物は、複数の(メタ)アクリロイルオキシ基を有していてもよい。含フッ素防汚剤が複数の(メタ)アクリロイルオキシ基を有していることにより、硬化させた際には、三次元網目構造を呈し、ガラス転移温度が高く、防汚剤の転写性が低く、また汚れの繰り返しの拭取りに対する耐久性を向上させることができる。更には、耐熱性、耐候性等に優れたHC層を得ることができる。
【0222】
上記一般式(F−5)で表される化合物の具体例としては、例えば、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,2−トリフルオロエチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7−トリデカフルオロヘプチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−ヘプタデカフルオロノニルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ノナデカフルオロデシルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−3−トリフルオロメチル−4,4,4−トリフルオロブチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−1−メチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−1−メチル−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルエチレングリコール等を好ましく挙げることができ、使用に際しては単独若しくは混合物として用いることができる。このようなジ(メタ)アクリル酸エステルを調製するには、特開平6−306326号公報に挙げられるような公知の方法により製造できる。本発明においては、ジアクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−ヘプタデカフルオロノニルエチレングリコールが好ましく用いられる。
【0223】
本発明においては、重合性不飽和基が(メタ)アクリロイルオキシ基である化合物として、一分子中に複数個の(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基を有している化合物であってもよい。
【0224】
(含フッ素化合物の分子量)
重合性不飽和基を有する含フッ素化合物の重量平均分子量(Mw)は、分子排斥クロマトグラフィー、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などを用いて測定できる。
本発明で用いられる含フッ素化合物のMwは400以上50000未満が好ましく、400以上30000未満がより好ましく、400以上25000未満が更に好ましい。上記下限値以上であると、防汚剤のHC層中での表面移行性が高くなるため好ましい。また、上記上限値未満であると、HC層形成用硬化性組成物を塗布してから硬化する工程の間に、含フッ素化合物の表面移行性が妨げられず、HC層表面への偏在がより均一に起こりやすくなり、耐擦性及び膜硬度が向上するため好ましい。また、含フッ素化合物は重量平均分子量に関して多峰性であってもよい。
【0225】
(含フッ素化合物の添加量)
含フッ素化合物の添加量は、HC層形成用硬化性組成物中の全固形分に対して、0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、0.5〜5質量%が更に好ましく、0.5〜2質量%が特に好ましい。添加量が上記上限値以上であると、スチールウールに対する摩擦係数を低減でき、耐擦性がより向上される。また、添加量が上記下限値以下であると、HC層形成用硬化性組成物中の重合性化合物(HC層を形成する際の樹脂成分)との混合が不十分な含フッ素化合物が表面に析出することがなく、HC層が白化したり表面に白粉を生じたりすることが抑制されるため好ましい。
HC層が後述する2層以上の積層構造である場合には、含フッ素化合物を含有するHC層を形成する、HC層形成用硬化性組成物中での添加量を意味する。
尚、本明細書では、防汚剤が、重合性基を有する場合であっても、上記重合性化合物1〜3および上記他の重合性化合物には該当しないものとして扱う。
また、後述の(vi)その他の成分に記載するレベリング剤および防汚剤も、上記に加えて含有することができる。
【0226】
本発明で用いることができる防汚剤としては、防汚性を付与できるものであれば、上述の含フッ素化合物に制限されることなく、分子中にポリシロキサン構造を有する化合物(含ポリシロキサン化合物)を用いてもよく、これらを併用してもよい。
【0227】
[含ポリシロキサン化合物]
含ポリシロキサン化合物は、特に制限されることなく、分子中にポリシロキサン構造を有する化合物を用いることができる。
含ポリシロキサン化合物が有するポリシロキサン構造としては、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。
【0228】
上記含ポリシロキサン化合物は、好ましくは下記一般式(F−6)で表される。
【0229】
一般式(F−6):
SiO(4−a−b)/2
(式中、Rは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はフェニル基であり、Rは重合性不飽和基を含有する有機基であり、0<a、0<b、a+b<4である。)
【0230】
aは好ましくは1〜2.75、より好ましくは1〜2.5であり、1以上であると化合物の合成が工業的に容易となり、2.75以下であると、硬化性と膜硬度の両立がしやすくなる。
【0231】
における重合性不飽和基としては、上記一般式(F)におけるRと同様の重合性不飽和基(すなわち、ラジカル重合性基)が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、及びこれらの基における任意の水素原子がフッ素原子に置換した基である。
ポリシロキサン防汚剤においても、膜強度の観点から一分子中に重合性不飽和基を複数有することが好ましく、一分子中に重合性不飽和基を複数有するポリジメチルシロキサンであることがより好ましい。
【0232】
含ポリシロキサン化合物の好ましい例としては、ジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む化合物鎖の末端及び/又は側鎖に置換基を有するものが挙げられる。ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中にはジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでもよい。この置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。
この置換基は重合性基が好ましく、ラジカル重合性、カチオン重合性、アニオン重合性、縮重合性及び付加重合性のうちいずれかを示す重合性基記基であればよい。好ましい置換基の例としては(メタ)アクリロイル基、((メタ)アクリロイルオキシ)基、ビニル基、アリル基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などを含む基が挙げられる。なかでも、ラジカル重合性基が好ましく、特に(メタ)アクリロイルオキシ基が膜硬度を向上する観点で好ましい。
また、化合物中の上記置換基数は、官能基等量として100〜10000g/molが膜強度の観点から好ましく、100〜3000g/molがより好ましく、100〜2000g/molが更に好ましく、100〜1000g/molが特に好ましい。官能基当量を上記下限値以上にすることで、HC層形成用硬化性組成物中の重合性化合物(HC層を形成する際の樹脂成分)と必要以上に相溶することがなく、防汚剤のHC層中での表面移行性が高くなるため好ましい。官能基当量を上記上限値以下にすることで、膜硬度を向上させることができるため好ましい。
【0233】
は(メタ)アクリロイル基を含有する有機基が好ましく、工業的な合成のし易さからSi原子への結合がSi−O−C結合であることがより好ましい。bは好ましくは0.4〜0.8、より好ましくは0.6〜0.8であり、上記下限値以上であると硬化性が向上し、上記上限値以下であると膜硬度が向上する。
【0234】
また、a+bは好ましくは3〜3.7、より好ましくは3〜3.5である。上記下限値以上であると化合物のHC層表面への偏在化が起こりやすくなり、上記上限値以下であると硬化性と膜硬度の両立を向上させることができる。
【0235】
含ポリシロキサン化合物は、1分子中にSi原子を3個以上有することが好ましく、Si原子を3〜40個含有することがより好ましい。Si原子が3個以上あると化合物のHC層表面への偏在化が促進され、十分な膜硬度がより得られやすくなる。
【0236】
含ポリシロキサン化合物は、特開2007−145884号公報に挙げられる公知の方法などを用いて製造することができる。
ポリシロキサン構造を有する添加剤としては、ポリシロキサン{例えば“KF−96−10CS” ,“KF−100T”,“X−22−169AS”,“KF−102”,“X−22−3701IE”, “X−22−164” ,“X−22−164A” ,“X−22−164AS” ,“X−22−164B” ,“X−22−164C”,“X−22−5002”,“X−22−173B”,“X−22−174D”,“X−22−167B”,“X−22−161AS”(商品名)、以上、信越化学工業(株)製;“AK−5”,“AK−30”,“AK−32”(商品名)、以上東亜合成(株)製;、「サイラプレーンFM0725」,「サイラプレーンFM0721」(商品名)、以上チッソ(株)製;、“DMS−U22”、“RMS−033”、“UMS−182”(商品名)、以上Gelest製;、「アクリット8SS−723」(商品名)、以上大成ファインケミカル(株)製等}を添加するのも好ましい。また、特開2003−112383号公報の表2、表3に記載のポリシロキサン系化合物も好ましく使用できる。
【0237】
[含ポリシロキサン化合物の分子量]
含ポリシロキサン化合物の重量平均分子量は、300以上が好ましく、300以上100000以下がより好ましく、300以上30000以下がさらに好ましい。含ポリシロキサン化合物の重量平均分子量が300以上であると、含ポリシロキサン化合物のHC層表面への偏在化が促進され、耐擦性及び硬度がより向上される。
【0238】
[含ポリシロキサン化合物の添加量]
含ポリシロキサン化合物の添加量は、HC層形成用硬化性組成物中の全固形分に対して、0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、0.5〜5質量%が更に好ましく、0.5〜2質量%が特に好ましい。添加量が上記下限値以上であると、打鍵後の耐付着性をより向上することができる。また、添加量が上記上限値以下であると、HC層形成用硬化性組成物中の重合性化合物(HC層を形成する際の樹脂成分)との混合が不十分な含ポリシロキサン化合物が表面に析出することがなく、HC層が白化したり表面に白粉を生じたりすることが抑制されるため好ましい。
なお、HC層が後述する2層以上の積層構造である場合には、含ポリシロキサン化合物を含有するHC層を形成する、HC層形成用硬化性組成物中での添加量を意味する。
【0239】
また、上記の他、特開2012−088699号公報の段落0012〜0101に記載の材料を用いることができ、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0240】
(v)溶媒
HC層形成用硬化性組成物は、溶媒を含むことも好ましい。溶媒としては、有機溶媒が好ましく、有機溶媒の1種または2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。有機溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチルセロソルブ等のセロソルブ類;トルエン、キシレン等の芳香族類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ジアセトンアルコール等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよび酢酸メチルが好ましく、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよび酢酸メチルを任意の割合で混合して用いることがより好ましい。このような構成とすることにより、耐擦性、打抜き性および密着性により優れた光学フィルムが得られる。
【0241】
HC層形成用硬化性組成物中の溶媒量は、上記組成物の塗布適性を確保できる範囲で適宜調整することができる。例えば、重合性化合物および光重合開始剤の合計量100質量部に対して、溶媒を50〜500質量部とすることができ、好ましくは80〜200質量部とすることができる。
また、HC形成用硬化性組成物の固形分は、10〜90質量%であることが好ましく、50〜80質量%であることがより好ましく、65〜75質量%であることが特に好ましい。
【0242】
(vi)その他の成分
HC層形成用硬化性組成物は、上記成分に加えて、公知の添加剤の一種以上を任意の量で含むことができる。添加剤としては、表面調整剤、レベリング剤、重合禁止剤、ポリロタキサン等を挙げることができる。それらの詳細については、例えば特開2012−229412号公報の段落0032〜0034を参照できる。また、市販の防汚剤または公知の方法で調製可能な防汚剤を含むこともできる。ただし添加剤はこれらに限らず、HC層形成用硬化性組成物に一般に添加され得る各種添加剤を用いることができる。また、HC層形成用硬化性組成物は、公知の溶媒を任意の量で含むこともできる。
【0243】
HC層形成用硬化性組成物は、以上記載した各種成分を同時に、または任意の順序で順次混合することにより調製することができる。調製方法は特に限定されるものではなく、調製には公知の攪拌機等を用いることができる。
【0244】
2)2層以上の積層構造
本発明の光学フィルムは、図2におけるHC層3Aが、少なくとも、第1のHC層、および第2のHC層を樹脂フィルム1A側から順に有する態様も好ましい。
樹脂フィルム1Aの表面に、第1のHC層が位置していても、間に他の層を有していてもよい。同様に、第1のHC層の表面に、第2のHC層が位置していても、間に他の層を有していても良い。第1のHC層と第2のHC層の密着性を高める観点からは、第1のHC層の表面に第2のHC層が位置する、すなわち、両層は、膜面の少なくとも一部において接している方が好ましい。
【0245】
また、第1のHC層および第2のHC層は、それぞれ、1層であっても、2層以上であってもよいが、1層が好ましい。
【0246】
HC層が2層以上の積層構造である場合には、防汚剤は、樹脂フィルムから最も離れたHC層が少なくとも含有することが好ましく、樹脂フィルムから最も離れたHC層のみが含有することがより好ましい。
【0247】
詳細を後述するとおり、本発明の光学フィルムをタッチパネルに用いる場合、上記第2のHC層が画像表示素子の前面側となるように光学フィルムを配置することが好ましいが、光学フィルム表面の耐擦性、打抜き性を優れたものにするためには、上記第2のHC層が光学フィルムの表面側、特に、最表面に配置されることが好ましい。
【0248】
<第1のHC層、第1のHC層形成用硬化性組成物>
本発明に用いられる第1のHC層は、第1のHC層形成用硬化性組成物から形成される。
第1のHC層形成用硬化性組成物は、ラジカル重合性基を有する重合性化合物1と、同一分子内にカチオン重合性基とラジカル重合性基を有し、かつ重合性化合物1とは異なる重合性化合物2とを含有し、第1のHC層形成用硬化性組成物に含まれる重合性化合物中、重合性化合物2の含有量が51質量%以上である。
【0249】
(重合性化合物)
重合性化合物1としては、前述のラジカル重合性化合物の記載が好ましく適用され、重合性化合物2としては、前述のカチオン重合性化合物におけるa)成分の記載が好ましく適用される。
また、第1のHC層形成用硬化性組成物は、重合性化合物1とも重合性化合物2とも異なる他の重合性化合物を有していてもよい。
上記他の重合性化合物は、カチオン重合性基を有する重合性化合物であることが好ましい。上記カチオン重合性基としては、重合性化合物2で述べたカチオン重合性基と同義であり、好ましい範囲も同様である。特に、本発明では、他の重合性化合物として、カチオン重合性基を含む、含窒素複素環含有化合物が好ましい。このような化合物を用いることにより、樹脂フィルムと第1のHC層の密着性をより効果的に向上させることができる。
含窒素複素環としては、イソシアヌレート環(後述の例示化合物B−1〜B−3に含まれる含窒素複素環)およびグリコールウリル環(後述の例示化合物B−10に含まれる含窒素複素環)からなる群から選ばれる含窒素複素環が例示され、イソシアヌレート環がより好ましい。他の重合性化合物が有するカチオン性基の数は、1〜10が好ましく、2〜5がより好ましい。また、他の重合性化合物として、カチオン重合性基と含窒素複素環構造を有する重合性化合物を用いる場合、樹脂フィルムは、アクリル系樹脂フィルムを含む樹脂フィルムが好ましい。このような構成とすることにより、樹脂フィルムと第1のHC層の密着性がより向上する傾向にある。
他の重合性化合物の具体例としては、前述の例示化合物B−1〜B−14が挙げられるが、本発明は前述の具体例に限定されるものではない。
【0250】
(その他)
その他、前述の、重合開始剤、無機粒子、マット粒子、紫外線吸収剤、含フッ素化合物、溶媒およびその他の成分の記載を好ましく適用することができる。
特に第1のHC層形成用硬化性組成物は、溶媒を含むことが好ましく、第2のHC層形成用硬化性組成物は、防汚剤を含むことが好ましい。
【0251】
(HC層の厚み)
HC層の厚みは、3μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上70μm以下がより好ましく、10μm以上50μm以下がさらに好ましい。
(HC層の鉛筆硬度)
HC層の鉛筆硬度は、硬いほどよく、具体的には3H以上が好ましく、5H以上がより好ましく、7H以上がさらに好ましい。
【0252】
−HC層の形成方法−
HC層形成用硬化性組成物を、樹脂フィルム上に直接、または易接着層等の他の層を介して、塗布し、活性エネルギー線を照射することにより、HC層を形成することができる。塗布は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ダイコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法等の公知の塗布方法により行うことができる。なおHC層は、二種以上の異なる組成の組成物を同時または逐次塗布することにより二層以上(例えば二層〜五層程度)の積層構造のHC層として形成することもできる。
【0253】
塗布されたHC層形成用硬化性組成物に対して活性エネルギー線照射を行うことにより、HC層を形成できる。例えば、HC層形成用硬化性組成物がラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、ラジカル光重合開始剤およびカチオン光重合開始剤を含む場合、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物の重合反応を、それぞれラジカル光重合開始剤、カチオン光重合開始剤の作用により開始させ進行させることができる。照射する光の波長は、用いる重合性化合物および重合開始剤の種類に応じて決定すればよい。光照射のための光源としては、150〜450nm波長帯域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ、LED(Light Emitting Diode)等を挙げることができる。また、光照射量は、通常、30〜3000mJ/cmの範囲であり、好ましくは100〜1500mJ/cmの範囲である。光照射の前および後の一方または両方において、必要に応じて乾燥処理を行ってもよい。乾燥処理は、温風の吹き付け、加熱炉内への配置、加熱炉内での搬送等により行うことができる。HC層形成用硬化性組成物が溶媒を含む場合、加熱温度は、溶媒を乾燥除去できる温度に設定すればよく、特に限定されるものではない。ここで加熱温度とは、温風の温度または加熱炉内の雰囲気温度をいうものとする。
【0254】
(4)衝撃吸収層
本発明の光学フィルムは、樹脂フィルムのHC層を有する面とは反対側の面に、衝撃吸収層を有してもよい。衝撃吸収層は、HC層側から受けた衝撃を吸収することで、例えば、本発明の光学フィルムを画像表示装置の前面板として使用する場合に、HC層側とは反対側に配置される画像表示素子の破損を防ぐことができる。
【0255】
(衝撃吸収層材料)
衝撃吸収層は、本発明の光学フィルムを画像表示装置の前面板として用いた際に、表示内容の視認性を確保できる透明性を有し、かつ前面板への押さえ付け及び衝突等に由来する画像表示素子の破損を防ぐことができるものであれば、樹脂から構成されていてもよいし、エラストマー(油展ゴムを含む)から構成されていてもよい。
上記樹脂としては、1,2−ポリブタジエン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(「EVA」と略す。通常3質量%以上の酢酸ビニル単位を含有する。)及びポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ビニルエステル樹脂(EVAを除く)、飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン等)、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びケイ素樹脂、並びにこれらの樹脂の変性樹脂等が挙げられる。これらの樹脂のうち、ウレタン変性ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂等が好ましい。
【0256】
エラストマーとしては、共役ジエンのブロック(共)重合体、アクリル系ブロック(共)重合体、スチレン系ブロック(共)重合体、芳香族ビニル化合物と共役ジエンとのブロック共重合体、共役ジエンのブロック(共)重合体の水素添加物、芳香族ビニル化合物と共役ジエンとのブロック共重合体の水素添加物、エチレン−α−オレフィン系共重合体、極性基変性オレフィン系共重合体、極性基変性オレフィン系共重合体と金属イオン及び/又は金属化合物とよりなるエラストマー、アクロルニトリル−ブタジエン系ゴム等のニトリル系ゴム、ブチルゴム、アクリル系ゴム、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPO)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)、ポリアミドエラストマー(TPAE)、ジエン系エラストマー(1,2−ポリブタジエン等)などの熱可塑性エラストマー、シリコーン系エラストマー、フッ素系エラストマーなどを挙げることができる。これらのエラストマーのうち、アクリル系ブロック(共)重合体、シリコーン系エラストマーが好ましい。
【0257】
これらの樹脂またはエラストマーは、衝撃吸収層を構成する場合、重合体のみを構成材料とすることもできるが、軟化剤、可塑剤、滑剤、架橋剤、架橋助剤、光増感剤、酸化防止剤、老化防止剤、熱安定剤、難燃剤、防菌剤、防かび剤、耐候剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、造核剤、顔料、染料、有機フィラー、無機フィラー、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等の添加剤及び他の重合体を含有する組成物を構成材料とすることもできる。即ち、衝撃吸収層は、樹脂組成物またはエラストマー組成物を用いて構成されてもよい。
【0258】
(衝撃吸収層の形成方法)
衝撃吸収層の形成方法には特に限定はなく、たとえば、コーティング法、キャスト法(無溶剤キャスト法及び溶剤キャスト法)、プレス法、押出法、射出成形法、注型法及びインフレーション法等が挙げられる。詳細には、上記衝撃吸収材料を溶媒に溶解もしくは分散させた液状物、又は上記衝撃吸収材料を構成する成分の溶融液を調製し、次いで、この液状物又は溶融液を樹脂フィルムに塗布し、その後、必要により溶媒の除去等をすることにより、衝撃吸収層が積層された光学フィルムを作製することができる。
【0259】
また、剥離処理が施された剥離シートの剥離処理面に衝撃吸収層材料を上記と同様に塗布、乾燥し、衝撃吸収層を有するシートを形成し、このシートの衝撃吸収層を樹脂フィルムと貼り合せることで、衝撃吸収層が積層された光学フィルムを作製することもできる。
【0260】
衝撃吸収層が樹脂で構成されている場合、衝撃吸収層は、架橋されていない樹脂により構成されていてもよいし、少なくとも一部が架橋された樹脂により構成されていてもよい。樹脂を架橋する方法については特に限定はなく、例えば、電子線照射、紫外線照射、及び架橋剤(例えば、有機過酸化物等)を用いる方法から選ばれる手段が挙げられる。樹脂の架橋を電子線照射により行う場合は、得られた架橋前の衝撃吸収層に対し、電子線照射装置により電子線を照射することにより、架橋を形成することができる。また、紫外線照射の場合は、得られた架橋前の衝撃吸収層について、紫外線照射装置により紫外線を照射することにより、必要に応じて配合された光増感剤の効果によって架橋を形成することができる。更に、架橋剤を用いる場合は、得られた架橋前の衝撃吸収層について、通常、窒素雰囲気下等、空気の存在しない雰囲気で加熱することにより、必要に応じて配合された有機過酸化物等の架橋剤、更には架橋助剤の効果によって架橋を形成することができる。
【0261】
衝撃吸収層の膜厚は、衝撃吸収性の点から、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。上限値は100μm以下であることが実際的である。
【0262】
(衝撃吸収層の保護層)
本発明の光学フィルムが衝撃吸収層を有する場合、衝撃吸収層の樹脂フィルムとは反対側の面に、保護層を設けることが好ましい。かかる保護層を有することにより、使用前の光学フィルムが有する衝撃吸収層の破損および埃、汚れ等の付着を防ぐことができる。
【0263】
保護層としては、前述のHC層及び樹脂フィルムを使用できる。樹脂フィルムとしてはアクリル樹脂フィルム、セルロースエステル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタラート樹脂フィルムおよびポリカーボネート樹脂フィルムから選択されるフィルムが好ましく、セルロースエステル樹脂フィルムがより好ましい。保護層としてセルロースエステル樹脂フィルムを用いることにより、衝撃吸収層(保護層付き)を有する光学フィルムを、偏光膜等の被貼合物に水糊を用いて貼合できるようになることから、貼合の際に保護層を剥離する工程を省略できる。また、セルロースエステル樹脂フィルムは透湿性に優れるため、衝撃吸収層中の残留溶剤量を低減することもできる。
【0264】
樹脂フィルムを保護層として備える光学フィルムは、樹脂フィルムを衝撃吸収層の表面に積層することにより得ることができる。
【0265】
保護層としての樹脂フィルムと衝撃吸収層との間には、樹脂フィルムの剥離を容易にするために、剥離層を設けることができる。かかる剥離層を設ける方法は、特に限定されるものではなく、例えば、保護層及び衝撃吸収層のうちの少なくともいずれかの表面に剥離コート剤を塗布することにより設けることができる。剥離コート剤の種類については特に限定されるものではなく、たとえば、シリコーン系コート剤、無機系コート剤、フッ素コート剤、有機無機ハイブリッド系コート剤等が挙げられる。
【0266】
樹脂フィルム(保護層)と剥離層とを備える光学フィルムは、通常は樹脂フィルム層表面に剥離層を設けた後、衝撃吸収層の表面に積層することにより得ることができる。この場合、上記剥離層は樹脂フィルム層表面ではなく、衝撃吸収層の表面に設けてもよい。
【0267】
(5)光学フィルムを有する物品
本発明の光学フィルムを含む物品としては、家電業界、電気電子業界、自動車業界、住宅業界をはじめとする様々な産業界において、干渉ムラの抑制ならびに打鍵耐久性および製造適性の向上が求められる各種物品を挙げることができる。具体例としては、タッチセンサ、タッチパネル、液晶表示装置等の画像表示装置、自動車の窓ガラス、住居の窓ガラス、等を挙げることができる。これら物品に、好ましくは表面保護フィルムとして本発明の光学フィルムを設けることにより、干渉ムラが十分に抑制され、優れた打鍵耐久性を示す物品を優れた製造適性で提供することが可能となる。本発明の光学フィルムは、画像表示装置用の前面板に用いられる光学フィルムとして好ましく用いられ、タッチパネルの画像表示素子の前面板に用いられる光学フィルムであることがより好ましい。
本発明の光学フィルムを用いることができるタッチパネルは特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表面型静電容量式タッチパネル、投影型静電容量式タッチパネル、抵抗膜式タッチパネルなどが挙げられる。詳細については、後述する。
なお、タッチパネルとは、いわゆるタッチセンサを含むものとする。タッチパネルにおけるタッチパネルセンサー電極部の層構成が、2枚の透明電極を貼合する貼合方式、1枚の基板の両面に透明電極を具備する方式、片面ジャンパーあるいはスルーホール方式あるいは片面積層方式のいずれでもよい。
【0268】
<<画像表示装置>>
本発明の光学フィルムを有する画像表示装置は、本発明の光学フィルムを有する前面板と、画像表示素子とを有する画像表示装置である。
画像表示装置としては、液晶表示装置(Liquid Crystal Display;LCD)、プラズマディスプレイパネル、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、陰極管表示装置およびタッチパネルのような画像表示装置に用いることができる。
液晶表示装置としては、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super−Twisted Nematic)型、TSTN(Triple Super Twisted Nematic)型、マルチドメイン型、VA(Vertical Alignment)型、IPS(In Plane Switching)型、OCB(Optically CompensatedBend)型等が挙げられる。
画像表示装置は、脆性が改良されハンドリング性に優れ、表面平滑性やシワによる表示品位を損なう事が無く、湿熱試験時の光漏れを低減できることが好ましい。
すなわち、本発明の光学フィルムを有する画像表示装置は、画像表示素子が液晶表示素子であることが好ましい。液晶表示素子を有する画像表示装置としては、ソニーエリクソン社製、エクスペリアPなどを挙げることができる。
【0269】
本発明の光学フィルムを有する画像表示装置は、画像表示素子が有機エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence;EL)表示素子であることも好ましい。
有機エレクトロルミネッセンス表示素子は、公知技術を、何ら制限なく適用することができる。有機エレクトロルミネッセンス表示素子を有する画像表示装置としては、SAMSUNG社製、GALAXY SIIなどを挙げることができる。
【0270】
本発明の光学フィルムを有する画像表示装置は、画像表示素子がインセル(In−Cell)タッチパネル表示素子であることも好ましい。インセルタッチパネル表示素子とは、タッチパネル機能を画像表示素子セル内に内蔵したものである。
インセルタッチパネル表示素子は、例えば、特開2011−76602号公報、特開2011−222009号公報等の公知技術を、何ら制限なく適用することができる。インセルタッチパネル表示素子を有する画像表示装置としては、ソニーエリクソン社製、エクスペリアPなどを挙げることができる。
【0271】
また、本発明の光学フィルムを有する画像表示装置は、画像表示素子がオンセル(On−Cell)タッチパネル表示素子であることも好ましい。オンセルタッチパネル表示素子とは、タッチパネル機能を画像表示素子セル外に配置したものである。
オンセルタッチパネル表示素子は、例えば、特開2012−88683号公報等の公知技術を、何ら制限なく適用することができる。オンセルタッチパネル表示素子を有する画像表示装置としては、SAMSUNG社製、GALAXY SIIなどを挙げることができる。
【0272】
<<タッチパネル>>
本発明の光学フィルムを有するタッチパネルは、例えば、本発明の光学フィルムにタッチセンサーフィルムを貼り合わせてタッチセンサを含むタッチパネルである。本発明の光学フィルムがHC層を有する場合には、HC層が配置された面とは反対側の樹脂フィルム面にタッチセンサーフィルムを貼り合わせることが好ましい。
タッチセンサーフィルムとしては特に制限はないが、導電層が形成された導電性フィルムであることが好ましい。
導電性フィルムは、任意の支持体の上に導電層が形成された導電性フィルムであることが好ましい。
【0273】
導電層の材料としては特に制限されるものではなく、例えば、インジュウム・スズ複合酸化物(Indium Tin Oxide;ITO)、スズ酸化物およびスズ・チタン複合酸化物(Antimony Tin Oxide;ATO)、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、クロムやこれらの合金などがあげられる。
導電層は、電極パターンであることが好ましい。また、透明電極パターンであることも好ましい。電極パターンは透明導電材料層をパターニングしたものでもよく、不透明な導電材料の層をパターン形成したものでもよい。
【0274】
透明導電材料としてはITOやATOなどの酸化物、銀ナノワイヤ、カーボンナノチューブ、導電性高分子等を用いることができる。
【0275】
不透明な導電材料の層としては例えば金属層が挙げられる。金属層としては導電性を持った金属であれば使用可能であり、銀、銅、金、アルミニウム等が好適に用いられる。金属層は単体の金属や合金であってもよく、金属粒子が結着材により結着されたものでもよい。又、必要に応じて、金属表面に対し黒化処理や防錆処理が適用される。金属を用いる場合は、実質透明なセンサー部と周辺の配線部を一括形成することが可能である。
【0276】
導電層が、複数の金属細線を含むことが好ましい。
金属細線が銀または銀を含む合金からなることが好ましい。金属細線が銀または銀を含む合金からなる導電層としては特に制限は無く、公知の導電層を用いることができる。例えば、特開2014−168886号公報の段落0040〜0041に記載の導電層を用いることが好ましく、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
金属細線が銅または銅を含む合金からなることも好ましい。上記合金は、特に制限は無く、公知の導電層を用いることができる。例えば、特開2015−49852号公報の段落0038〜0059に記載の導電層を用いることが好ましく、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0277】
導電層が酸化物からなることも好ましい。導電層が酸化物からなる場合、酸化物が酸化スズを含有する酸化インジウムまたはアンチモンを含有する酸化スズからなることがより好ましい。導電層が酸化物からなる導電層としては特に制限は無く、公知の導電層を用いることができる。例えば、特開2010−27293号公報の段落0017〜0037に記載の導電層を用いることが好ましく、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0278】
これらの構成の導電層の中でも、導電層が、複数の金属細線を含み、金属細線がメッシュ状もしくはランダム状に配置されていることが好ましく、金属細線がメッシュ状に配置されていることがより好ましい。その中でも、金属細線がメッシュ状に配置されており、金属細線が銀または銀を含む合金からなることが特に好ましい。
タッチセンサーフィルムは、両面に導電層を有することも好ましい。
【0279】
タッチセンサーフィルムの好ましい態様については、特開2012−206307号公報の段落0016〜0042に記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0280】
<<抵抗膜式タッチパネル>>
本発明の光学フィルムを有する抵抗膜式タッチパネルは、本発明の光学フィルムを有する前面板を有する抵抗膜式タッチパネルである。
抵抗膜式タッチパネルは、導電性膜を有する上下1対の基板の導電性膜同士が対向するようにスペーサーを介して配置された基本構成からなるものである。なお抵抗膜式タッチパネルの構成は公知であり、本発明では公知技術を何ら制限なく適用することができる。
【0281】
<<静電容量式タッチパネル>>
本発明の光学フィルムを有する静電容量式タッチパネルは、本発明の光学フィルムを有する前面板を有する静電容量式タッチパネルである。
静電容量式タッチパネルの方式としては、表面型静電容量式、投影型静電容量式等が挙げられる。投影型の静電容量式タッチパネルは、X軸電極と、X電極と直交するY軸電極とを絶縁体を介して配置した基本構成からなる。具体的態様としては、X電極およびY電極が、1枚の基板上の別々の面に形成される態様、1枚の基板上にX電極、絶縁体層、Y電極を上記順で形成する態様、1枚の基板上にX電極を形成し、別の基板上にY電極を形成する態様(この態様では、2枚の基板を貼り合わせた構成が上記基本構成となる)等が挙げられる。なお静電容量式タッチパネルの構成は公知であり、本発明では公知技術を何ら制限なく適用することができる。
【0282】
図3に、静電容量式タッチパネルの実施形態の構成の一例を示す。タッチパネル2は表示装置と組み合わせて使用される。表示装置は、図3の保護層7B側、すなわち、表示装置側に配置されて使用される。図3において、本発明の光学フィルム4C側が、視認側(すなわち、タッチパネルの操作者が表示装置の画像を視認する側)である。本発明の光学フィルム4Cは、タッチパネル用導電フィルム1に貼り合せて用いられる。タッチパネル用導電フィルム1は、可撓性の透明絶縁基板5の両面上にそれぞれ導電部材6A(第1導電層8)および導電部材6B(第2導電層9)を有している。導電部材6Aおよび導電部材6Bは、それぞれ後述するタッチパネルとしての電極、周辺配線、外部接続端子、コネクタ部とを少なくとも構成する。
また、図3に示すように、平坦化または、導電部材6Aおよび6Bを保護する目的で、導電部材6Aおよび導電部材6Bを覆うように透明な保護層7Aおよび保護層7Bが配置されていてもよい。
光学フィルム4Cには、後述する周辺領域S2を遮光する加飾層を形成してもよい。
透明絶縁基板5の材質としては、例えば、ガラス、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、COP(シクロオレフィンポリマー)、COC(シクロオレフィンポリマー)、PC(ポリカーボネート)等が使用できる。また、透明絶縁基板5の厚さは20〜200μmが好ましい。
光学フィルム4Cとタッチパネル用導電フィルム1との間には、粘着層(図中で図示しない)を設けてもよく、粘着層としては、光学透明粘着シート(Optical Clear Adhesive)または光学透明粘着樹脂(Optical Clear Resin)が使用できる。粘着層の好ましい厚みは10〜100μmである。光学透明粘着シートとしては、一般的には、例えば3M社製の8146シリーズが好ましく使用できる。粘着層の比誘電率の好ましい値は4.0〜6.0であり、より好ましくは5.0〜6.0である。
保護層7Aおよび保護層7Bとしては、例えば、ゼラチン、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の有機膜、および、二酸化シリコン等の無機膜を使用できる。厚みは、10nm以上100nm以下が好ましい。比誘電率は、2.5〜4.5が好ましい。
保護層7Aおよび保護層7B中のハロゲン不純物の濃度は、50ppm以下であることが好ましく、ハロゲン不純物は含有しないことがより好ましい。この態様によれば、導電部材6Aおよび導電部材6Bの腐食を抑制できる。
【0283】
図4に示されるように、タッチパネル用導電フィルム1には、透明なアクティブエリアS1が区画されると共に、アクティブエリアS1の外側に周辺領域S2が区画されている。
アクティブエリアS1内には、透明絶縁基板5の表面(第1面)上に形成された第1導電層8と透明絶縁基板5の裏面(第2面)上に形成された第2導電層9とが互いに重なるように配置されている。なお、第1導電層8および第2導電層9は、透明絶縁基板5を介して、互いに絶縁された状態で配置されている。
透明絶縁基板5の表面上の第1導電層8により、それぞれ第1の方向D1に沿って延び且つ第1の方向D1に直交する第2の方向D2に並列配置された複数の第1電極11が形成され、透明絶縁基板5の裏面上の第2導電層9により、それぞれ第2の方向D2に沿って延び且つ第1の方向D1に並列配置された複数の第2電極21が形成されている。
これら複数の第1電極11および複数の第2電極21は、タッチパネル2の検出電極を構成するものである。第1電極11および第2電極21の電極幅は1〜5mmが好ましく、電極間ピッチは3〜6mmであることが好ましい。
【0284】
一方、周辺領域S2における透明絶縁基板5の表面上に、複数の第1電極11に接続された複数の第1周辺配線12が形成され、透明絶縁基板5の縁部に複数の第1外部接続端子13が配列形成されると共に、それぞれの第1電極11の両端に第1コネクタ部14が形成されている。第1コネクタ部14に、対応する第1周辺配線12の一端部が接続され、第1周辺配線12の他端部は、対応する第1外部接続端子13に接続されている。
同様に、周辺領域S2における透明絶縁基板5の裏面上に、複数の第2電極21に接続された複数の第2周辺配線22が形成され、透明絶縁基板5の縁部に複数の第2外部接続端子23が配列形成されると共に、それぞれの第2電極21の両端に第2コネクタ部24が形成されている。第2コネクタ部24に、対応する第2周辺配線22の一端部が接続され、第2周辺配線22の他端部は、対応する第2外部接続端子23に接続されている。
タッチパネル用導電フィルム1は、透明絶縁基板5の表面上に第1電極11、第1周辺配線12、第1外部接続端子13および第1コネクタ部14を含む導電部材6Aを有すると共に、透明絶縁基板5の裏面上に第2電極21、第2周辺配線22、第2外部接続端子23および第2コネクタ部24を含む導電部材6Bを有する。
【0285】
図4において、第1電極11と第1周辺配線12とは、第1コネクタ部14を介して接続されているが、第1コネクタ部14を設けずに第1電極11と第1周辺配線12とを直接接続する構成でもよい。また、同じく第2コネクタ部24を設けずに第2電極21と第2周辺配線22とを直接接続する構成でもよい。
第1コネクタ部14および第2コネクタ部24を設けることで、電極と周辺配線との接続箇所での電気的導通を良くすることができる効果がある。特に、電極と周辺配線の材料が異なる場合は、第1コネクタ部14および第2コネクタ部24を設けることが好ましい。第1コネクタ部14および第2コネクタ部24の幅は、それぞれ接続される電極の幅の1/3以上、電極の幅以下であることが好ましい。第1コネクタ部14および第2コネクタ部24の形状はベタ膜形状でもよいし、国際公開WO2013/089085号公報に示されているような枠形状、またはメッシュ形状でもよい。
第1周辺配線12および第2周辺配線22の配線幅は10μm以上200μm以下であり、最小配線間隔(最小配線間距離)は20μm以上100μm以下であることが好ましい。
各周辺配線は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等からなる保護絶縁膜で覆ってもよい。保護絶縁膜を設けることにより、周辺配線のマイグレーション、錆び等を防止できる。なお、周辺配線の腐食を引きこす可能性があるので、絶縁膜中にはハロゲン不純物を含有しないことが好ましい。保護絶縁膜の厚みは1〜20μmが好ましい。
タッチパネル用導電フィルム1をタッチパネルとして使用する場合、第1外部接続端子13と第2外部接続端子23とは異方性導電フィルム(Anisotropic Conductive Film)を介してフレキブル配線基板(Flexible Printed Circuits)と電気的に接続される。フレキシブル配線基板は、駆動機能と位置検出機能とを有するタッチパネル制御基板に接続される。
第1外部接続端子13と第2外部接続端子23はフレキシブル配線基板との電気接続性を良くする目的で、第1周辺配線12および第2周辺配線22の配線幅より大きい端子幅で形成される。具体的には、第1外部接続端子13と第2外部接続端子23の端子幅は0.1mm以上0.6mm以下が好ましく、端子長さは0.5mm以上2.0mm以下が好ましい。
【0286】
なお、透明絶縁基板5は、第1面、および、第1面と対向する第2面を有する基板に該当し、第1面(表面)上に第1導電層8が配置され、第2面(裏面)上に第2導電層9が配置される。なお、図3では、透明絶縁基板5と第1導電層8および第2導電層9とが直接接している形状で示しているが、透明絶縁基板5と第1導電層8および第2導電層9との間に、密着強化層、下塗層、ハードコート層、光学調整層等の機能層を一層以上形成することもできる。
【0287】
図5に、第1電極11と第2電極21との交差部を示す。透明絶縁基板5の表面上に配置された第1電極11は、第1金属細線15からなるメッシュパターンM1により形成されており、透明絶縁基板5の裏面上に配置された第2電極21も、第2金属細線25からなるメッシュパターンM2により形成されている。そして、第1電極11と第2電極21との交差部において、視認側から見たときに、第1金属細線15と第2金属細線25とが互いに交差するように配置されている。なお、図5では、第1金属細線15と第2金属細線25との区別を分かりやすくするために、第2金属細線25を点線で示しているが、実際は第1金属細線15と同様に接続された線で形成されている。
メッシュパターンの形状としては、図5のような同一のメッシュ(定形セル)が繰り返し配置されたパターンが好ましく、メッシュの形状はひし形が特に好ましいが、平行四辺形、正方形、長方形等の四角形でも良く、正六角形や他の多角形であっても良い。ひし形の場合、そのひし形の狭角角度は20°以上70°以下であることが表示装置の画素とのモアレ低減の観点から好ましい。メッシュの中心間距離(メッシュピッチ)は100〜600μmであることが視認性の観点から好ましい。第1金属細線15からなるメッシュパターンM1と第2金属細線25からなるメッシュパターンM2が同一形状であることが好ましい。さらに、図5のように、第1金属細線15からなるメッシュパターンM1と第2金属細線25からなるメッシュパターンM2とを、メッシュピッチ半分相当の距離だけずらして配置し、視認側からはメッシュピッチが半分になるメッシュパターンを形成するように配置することが、視認性の観点から好ましい。別の形態としては、メッシュの形状はランダムなパターン、または特開2013−214545号公報に示されているようなひし形の定形セルのピッチに10%程度のランダム性を付与するような、定形セル形状にある一定のランダム性を付与したセミランダム形状であっても良い。
また、互いに隣り合う第1電極11の間、互いに隣り合う第2電極21の間に、それぞれ第1金属細線15、第2金属細線25で形成された電極と絶縁されたダミーメッシュパターンを有していてもよい。ダミーメッシュパターンは、電極を形成するメッシュパターンと同一のメッシュ形状で形成することが好ましい。
【0288】
タッチパネル2と表示装置とを貼り合わせる方法は、透明な粘着剤を用いて直接貼り合わせる方式(ダイレクトボンディング方式)、または、両面テープを用いてタッチパネル2と表示装置との周辺のみを貼り合わせる方式(エアギャップ方式)があるが、どちらの方式でもよい。タッチパネル2と表示装置とを貼り合わせる際には、導電部材6B上または保護層7B上に別途保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムは、例えばハードコート付きPETフィルム(厚み20〜150μm)が使用され、光学透明粘着シート(Optical Clear Adhesive)を用いて、導電部材6B上または保護層7B上に貼り付けられる構成を採用できる。
ダイレクトボンディング方式に使用される透明な粘着剤は前述の透明な粘着層と同じく、光学透明粘着シート(Optical Clear Adhesive)または光学透明粘着樹脂(Optical Clear Resin)が使用でき、好ましい厚みは10μm以上100μm以下である。光学透明粘着シートとしては、例えば同じく3M社製の8146シリーズが好ましく使用できる。ダイレクトボンディング方式に使用される透明な粘着剤の比誘電率は、前述の透明な粘着層の比誘電率より小さいものを使用することがタッチパネル2の検出感度を向上させる点で好ましい。ダイレクトボンディング方式に使用される透明な粘着剤の比誘電率の好ましい値は、2.0〜3.0である。
【0289】
また、本発明の効果がより優れる点で、第1金属細線15の視認側の表面、および、第2金属細線25の視認側の表面のそれぞれの可視光反射率は5%以下であることが好ましい。さらに、1%未満であることがより好ましい。可視光反射率は本範囲にすることにより、メッシュ見え低減やヘイズ低減を効果的にできる。
上記可視光反射率の測定方法としては、以下のようにして測定する。先ず、日本分光社製紫外可視分光光度計V660(1回反射測定ユニットSLM−721)を使用し、測定波長350nmから800nm、入射角5度で反射スペクトルを測定する。なお、アルミ蒸着平面鏡の正反射光をベースラインとする。得られた反射スペクトルからXYZ表色系D65光源2度視野のY値(等色関数JIS Z9701−1999)を、日本分光社製色彩計算プログラムを用いて計算し、可視光反射率とする。
【0290】
第1金属細線15および第2金属細線25を構成する材料としては、銀、アルミニウム、銅、金、モリブデン、クロム等の金属およびそれらの合金を用いることができ、これらを単層または積層体として用いることができる。金属細線のメッシュ見えおよびモアレの低減の観点から、第1金属細線15および第2金属細線25の線幅は0.5μm以上5μm以下であることが好ましい。第1金属細線15および第2金属細線25は、直線、折線、曲線、または、波線形状でもよい。また、第1金属細線15および第2金属細線25の厚みは、抵抗値の観点から0.1μm以上であり、斜め方向からの視認性の観点から3μm以下であることが好ましい。より好ましい厚みは、金属細線の線幅に対して1/2以下であることが、斜め方向からの視認性の観点およびパターニング加工性の観点からより好ましい。さらに、第1金属細線15および第2金属細線25の可視光反射率低減の為、第1金属細線15および第2金属細線25の視認側に黒化層を設けてもよい。
第1金属細線15を構成する材料で、第1電極11、第1周辺配線12、第1外部接続端子13および第1コネクタ部14を含む導電部材6Aを形成することができる。よって、第1電極11、第1周辺配線12、第1外部接続端子13および第1コネクタ部14を含む導電部材6Aはすべて同じ金属で同じ厚みで形成され、同時形成することができる。
第2電極21、第2周辺配線22、第2外部接続端子23および第2コネクタ部24を含む導電部材6Bに関しても同様である。
【0291】
第1電極11と第2電極21のシート抵抗は0.1Ω/□以上200Ω/□以下であることが好ましく、特に投影型静電容量式タッチパネルに使用する場合は10Ω/□以上100Ω/□以下であることが好ましい。
【0292】
なお、図6に示されるように、アクティブエリアS1内における透明絶縁基板5の表面上に配置されている第1導電層8は、複数の第1電極11の間にそれぞれ配置された複数の第1ダミー電極11Aを有していてもよい。これらの第1ダミー電極11Aは、複数の第1電極11から絶縁されており、第1電極11と同様に、多数の第1セルC1で構成された第1メッシュパターンM1を有している。
なお、第1電極11と隣接する第1ダミー電極11Aとは、連続的な第1メッシュパターンM1に沿って配置された金属細線に幅5μm以上30μm以下の断線を設けることにより、電気的に絶縁している。図6は、第1電極11と隣接する第1ダミー電極11Aとの境界線のみに断線を形成した形状であるが、第1ダミー電極11A内の第1セルC1の辺の全てに、または部分的に断線を形成してもよい。
また、図示しないが、アクティブエリアS1内における透明絶縁基板5の裏面上に配置されている第2導電層9は、複数の第2電極21の間にそれぞれ配置された複数の第2ダミー電極を有していてもよい。これらの第2ダミー電極は、複数の第2電極21から絶縁されており、第2電極21と同様に、多数の第2セルC2で構成された第2メッシュパターンM2を有している。
なお、第2電極21と隣接する第2ダミー電極とは、連続的な第2メッシュパターンM2に沿って配置された金属細線に幅5μm以上30μm以下の断線を設けることにより、電気的に絶縁している。第2電極21と隣接する第1ダミー電極との境界線のみに断線を形成した形状でもよいが、第2ダミー電極内の第2セルC2の辺の全てに、または部分的に断線を形成してもよい。
【0293】
上述したように、タッチパネル用導電フィルム1は、透明絶縁基板5の表面上に第1電極11、第1周辺配線12、第1外部接続端子13および第1コネクタ部14を含む導電部材6Aを形成すると共に、透明絶縁基板5の裏面上に第2電極21、第2周辺配線22、第2外部接続端子23および第2コネクタ部24を含む導電部材6Bを形成することにより製造される。
このとき、第1電極11は、第1メッシュパターンM1に沿って第1金属細線15が配置された第1導電層8からなり、第2電極21は、第2メッシュパターンM2に沿って第2金属細線25が配置された第2導電層9からなり、第1導電層8と第2導電層9とが透明絶縁基板5を挟んで図4のようにアクティブエリアS1内で互いに重なるように配置されるものとする。
これら導電部材6Aおよび導電部材6Bの形成方法は、特に限定されるものではない。例えば、特開2012−185813号公報の<0067>〜<0083>、特開2014−209332号公報の<0115>〜<0126>、または、特開2015−5495号公報の<0216>〜<0215>に記載されているように感光性ハロゲン化銀塩を含有する乳剤層を有する感光材料を露光し、現像処理を施すことによって、導電部材6Aおよび6Bを形成することができる。
【0294】
また、透明絶縁基板5の表面および裏面に、それぞれ金属薄膜を形成し、各金属薄膜にレジストをパターン状に印刷するか、または、全面塗布したレジストを露光し、現像することでパターン化して、開口部の金属をエッチングすることにより、これらの導電部材を形成することもできる。さらに、これ以外にも、導電部材を構成する材料の微粒子を含むペーストを透明絶縁基板5の表面および裏面に印刷してペーストに金属めっきを施す方法、導電部材を構成する材料の微粒子を含むインクを用いたインクジェット法を用いる方法、導電部材を構成する材料の微粒子を含むインクをスクリーン印刷で形成する方法、透明絶縁基板5に溝を形成し、その溝に導電インクを塗布する方法、マイクロコンタクト印刷パターニング法等を用いることができる。
【0295】
なお、上記では、透明絶縁基板5の表面上に第1電極11、第1周辺配線12、第1外部接続端子13および第1コネクタ部14を含む導電部材6Aを配置すると共に、透明絶縁基板5の裏面上に第2電極21、第2周辺配線22、第2外部接続端子23および第2コネクタ部24を含む導電部材6Bを配置しているが、これに限るものではない。
例えば、透明絶縁基板5の一方の面側に、導電部材6Aと導電部材6Bが層間絶縁膜を介して配置される構成とすることもできる。
さらに、2枚基板の構成とすることもできる。すなわち、第1透明絶縁基板の表面上に導電部材6Aを配置し、第2透明絶縁基板の表面上に導電部材6Bを配置し、これら第1透明絶縁基板および第2透明絶縁基板を、光学透明粘着シート(Optical Clear Adhesive)を用いて貼り合わせて使用することもできる。
さらに、透明絶縁基板5を用いずに、図3に示した光学フィルム4Cの表面上に導電部材6Aと導電部材6Bが層間絶縁膜を介して配置される構成としてもよい。
【0296】
静電容量式タッチパネルの電極パターンの形状としては、図4に示す、所謂バーアンドストライプの電極パターン形状以外にも、例えば国際公開WO2010/012179号公報の図16に開示されているダイヤモンドパターン、国際公開WO2013/094728号公報の図7または図20に開示されている電極パターン形状にも適用できることはもちろんのこと、他の形状の静電容量式タッチパネルの電極パターンにも適用できる。
また、US2012/0262414号公報等に開示されている交差部がない電極構成のように検出電極が基板の片側にしかない構成のタッチパネルにも適用できる。
さらに、タッチパネルは他の機能フィルムとの組合せとの使用も可能である、特開2014−13264号公報に開示されている高レタレーション値を有する基板を用いたニジムラを防止する画像品位向上用機能フィルム、特開2014−142462号公報に開示されているタッチパネルの電極の視認性改善の為の円偏光板との組合せ等も可能である。
【0297】
<<画像表示機能付きミラー>>
本発明の光学フィルムは、一方の樹脂フィルムの、接着層を有する面とは反対側の面に、反射層(直線偏光反射層または円偏光反射層)を有してもよい。かかる光学フィルムは、画像表示素子と組み合わせることにより、画像表示機能付きミラーの前面板に用いられる光学フィルムとして好ましく用いられる。本発明の光学フィルムと反射層との間には、粘着層を設けてもよく、粘着層としては、光学透明粘着シート(Optical Clear Adhesive)または光学透明粘着樹脂(Optical Clear Resin)が使用できる。
本明細書において、画像表示機能付きミラーの前面板に用いられる、直線偏光反射層または円偏光反射層を有する光学フィルムを「ハーフミラー」と称することがある。
【0298】
画像表示機能付きミラーで用いられる画像表示素子としては、特に限定されるものではなく、たとえば前述の画像表示装置において好適に用いられる画像表示素子が挙げられる。
【0299】
画像表示機能付きミラーは、ハーフミラーの直線偏光反射層または円偏光反射層を有する側に、画像表示素子が配置されて構成される。画像表示機能付きミラーにおいて、ハーフミラーと画像表示素子は、直接接していてもよく、ハーフミラーと画像表示素子との間に別の層が介在していてもよい。例えば、画像表示素子とハーフミラーとの間には、空気層が存在してもよく、または接着層が存在していてもよい。
【0300】
本明細書においては、画像表示素子に対してハーフミラー側の表面を前面ということがある。
【0301】
画像表示機能付きミラーは、例えば、車両のルームミラー(インナーミラー)として用いることができる。画像表示機能付きミラーは、ルームミラーとしての使用のため、フレーム、ハウジングおよび車両本体に取り付けるための支持アーム等を有していてもよい。あるいは、画像表示機能付きミラーはルームミラーへの組み込み用に成形されたものであってもよい。かかる形状の画像表示機能付きミラーにおいては、通常使用時に上下左右となる方向が特定できる。
【0302】
画像表示機能付きミラーは、板状またはフィルム状であればよく、曲面を有していてもよい。画像表示機能付きミラーの前面は平坦であってもよく、湾曲していてもよい。湾曲させて、凸曲面を前面側とすることにより、広角的に後方視野等を視認できるワイドミラーとすることも可能である。このような湾曲した前面は湾曲したハーフミラーを用いて作製することができる。
湾曲は、上下方向、左右方向、または上下方向および左右方向にあればよい。また、湾曲は、曲率半径が500〜3000mmであればよく、1000〜2500mmであることがより好ましい。曲率半径は、断面で湾曲部分の外接円を仮定した場合の、この外接円の半径である。
【0303】
<<反射層>>
反射層としては、半透過半反射層として機能できる反射層を用いればよい。すなわち、反射層は、画像表示時には、画像表示素子が備える光源からの出射光を透過させることにより、画像表示機能付きミラーの前面に画像が表示されるように機能し、一方で、画像非表示時には、反射層は、前面方向からの入射光の少なくとも一部を反射するとともに、画像表示素子からの反射光を透過させ、画像表示機能付きミラーの前面がミラーとなるように機能するものであればよい。
反射層としては、偏光反射層が用いられる。偏光反射層は、直線偏光反射層または円偏光反射層であればよい。
【0304】
[直線偏光反射層]
直線偏光反射層としては、例えば、(i)多層構造の直線偏光反射板、(ii)複屈折の異なる薄膜を積層してなる偏光子、(iii)ワイヤーグリッド型偏光子、(iv)偏光プリズムおよび(v)散乱異方性型偏光板が挙げられる。
【0305】
(i)多層構造の直線偏光反射板としては、屈折率の異なる誘電体材料を支持体上に斜め方向から真空蒸着法またはスパッタリング法によって積層した複数層積層薄膜が挙げられる。波長選択反射膜とするためには、高屈折率の誘電体薄膜と低屈折率の誘電体薄膜とを交互に複数層積層することが好ましいが、2種以上に限定されず、それ以上の種類であってもよい。積層数は、2層〜20層が好ましく、2層〜12層がより好ましく、4層〜10層が更に好ましく、6層〜8層が特に好ましい。積層数が20層を超えると、生産効率が低下し、本発明の目的及び効果を達成できなくなることがある。
誘電体薄膜の成膜方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオンプレーティングおよびイオンビーム等の真空蒸着法、スパッタリング等の物理的気相成長法(PVD法)ならびに化学的気相成長法(CVD法)が挙げられる。これらの中でも、真空蒸着法またはスパッタリング法が好ましく、スパッタリング法が特に好ましい。
【0306】
(ii)複屈折の異なる薄膜を積層してなる偏光子としては、例えば特表平9−506837号公報などに記載された偏光子を用いることができる。また、屈折率関係を得るために選ばれた条件下で加工することにより、広く様々な材料を用いて、偏光子を形成できる。一般に、第一の材料の一つが、選ばれた方向において、第二の材料とは異なる屈折率を有することが必要である。この屈折率の違いは、フィルムの形成中、又はフィルムの形成後の延伸、押出成形、もしくはコーティングを含む様々な方法で達成できる。更に、2つの材料を同時押出することができるように、類似のレオロジー特性(例えば、溶融粘度)を有することが好ましい。
複屈折の異なる薄膜を積層した偏光子としては、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、DBEF(登録商標)(3M社製)が挙げられる。
【0307】
(iii)ワイヤーグリッド型偏光子は、金属細線の複屈折によって、偏光の一方を透過させ、他方を反射させる偏光子である。
ワイヤーグリッド偏光子は、金属ワイヤーを周期的に配列したもので、テラヘルツ波帯域で主に偏光子として用いられる。ワイヤーグリッドが偏光子として機能するためには、ワイヤー間隔が入射電磁波の波長よりも十分小さいことが必要となる。
ワイヤーグリッド偏光子では、金属ワイヤーが等間隔に配列されている。金属ワイヤーの長手方向と平行な偏光方向の偏光成分はワイヤーグリッド偏光子において反射され、垂直な偏光方向の偏光成分はワイヤーグリッド偏光子を透過する。
【0308】
ワイヤーグリッド型偏光子としては、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、エドモンドオプティクス社製のワイヤーグリッド偏光フィルタ50×50、NT46−636(商品名)が挙げられる。
【0309】
[円偏光反射層]
ハーフミラーに円偏光反射層を用いることにより、前面側からの入射光を円偏光として反射させ、画像表示素子からの入射光を円偏光として透過させることができる。そのため、円偏光反射層を用いた画像表示機能付きミラーでは、偏光サングラスを介しても、画像表示機能付きミラーの方向に依存せずに、表示画像およびミラー反射像の観察を行うことができる。
【0310】
円偏光反射層の例としては、直線偏光反射板と1/4波長板とを含む円偏光反射層、およびコレステリック液晶層を含む円偏光反射層(以下、両者の区別のため、それぞれ「Polλ/4円偏光反射層」「コレステリック円偏光反射層」ということがある。)が挙げられる。
【0311】
[[Polλ/4円偏光反射層]]
Polλ/4円偏光反射層において、直線偏光反射板と1/4波長板とは直線偏光反射板の偏光反射軸に対しλ/4波長板の遅相軸が45°となるように配置されていればよい。また、1/4波長板と直線偏光反射板とは、例えば、接着層により接着されていればよい。
Polλ/4円偏光反射層において、直線偏光反射板が画像表示素子に近い面となるように配置して使用する、つまり、光学フィルムに対し1/4波長板および直線偏光反射板をこの順に配置して使用することで、画像表示素子からの画像表示のための光を効率よく円偏光に変換して、画像表示機能付きミラー前面から出射させることができる。画像表示素子からの画像表示のための光が直線偏光であるとき、この直線偏光を透過するように直線偏光反射板の偏光反射軸を調整すればよい。
Polλ/4円偏光反射層の厚みは2.0μm〜300μmの範囲が好ましく、8.0μm〜200μmの範囲がより好ましい。
直線偏光反射板としては、上記で直線偏光反射層として説明したものを用いることができる。
1/4波長板としては、後述する1/4波長板を用いることができる。
【0312】
[コレステリック円偏光反射層]
コレステリック円偏光反射層は、コレステリック液晶層を少なくとも1層含む。コレステリック円偏光反射層に含まれるコレステリック液晶層は可視光領域で選択反射を示すものであればよい。
円偏光反射層は2層以上のコレステリック液晶層を含んでいてもよく、配向層などの他の層を含んでいてもよい。円偏光反射層はコレステリック液晶層のみからなることが好ましい。また、円偏光反射層が複数のコレステリック液晶層を含むときは、それらは隣接するコレステリック液晶層と直接接していることが好ましい。円偏光反射層は、3層および4層など、3層以上のコレステリック液晶層を含んでいることが好ましい。
コレステリック円偏光反射層の厚みは、2.0μm〜300μmの範囲が好ましく、8.0〜200μmの範囲がより好ましい。
【0313】
本明細書において、「コレステリック液晶層」は、コレステリック液晶相を固定した層を意味する。コレステリック液晶層を単に液晶層ということもある。
コレステリック液晶相は、特定の波長域において右円偏光または左円偏光のいずれか一方のセンスの円偏光を選択的に反射させるとともに他方のセンスの円偏光を選択的に透過する円偏光選択反射を示すことが知られている。本明細書において、円偏光選択反射を単に選択反射ということもある。
【0314】
円偏光選択反射性を示すコレステリック液晶相を固定した層を含むフィルムとして、重合性液晶化合物を含む組成物から形成されたフィルムは従来から数多く知られており、コレステリック液晶層については、それらの常法を参照することができる。
【0315】
コレステリック液晶層は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持されている層であればよく、典型的には、重合性液晶化合物をコレステリック液晶相の配向状態としたうえで、紫外線照射、加熱等によって重合、硬化し、流動性が無い層を形成して、同時に、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることのない状態に変化した層であればよい。なお、コレステリック液晶層においては、コレステリック液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、層中の液晶化合物はもはや液晶性を示していなくてもよい。例えば、重合性液晶化合物は、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
【0316】
コレステリック液晶層の選択反射の中心波長λは、コレステリック液晶相における螺旋構造のピッチP(=螺旋の周期)に依存し、コレステリック液晶層の平均屈折率nとλ=n×Pの関係に従う。なお、コレステリック液晶層の選択反射の中心波長と半値幅は下記のように求めることができる。
分光光度計UV3150(島津製作所社製、商品名)を用いて反射層の透過スペクトル(コレステリック液晶層の法線方向から測定したもの)を測定すると、選択反射領域に透過率の低下ピークがみられる。この最も大きいピーク高さの1/2の高さの透過率となる2つの波長のうち、短波長側の波長の値をλ1(nm)、長波長側の波長の値をλ2(nm)とすると、選択反射の中心波長と半値幅は下記式で表すことができる。
選択反射の中心波長=(λ1+λ2)/2
半値幅=(λ2−λ1)
上記のように求められる、コレステリック液晶層が有する選択反射の中心波長λは、コレステリック液晶層の法線方向から測定した円偏光反射スペクトルの反射ピークの重心位置にある波長と通常一致する。なお、本明細書において、「選択反射の中心波長」はコレステリック液晶層の法線方向から測定した時の中心波長を意味する。
上記式から分かるように、螺旋構造のピッチを調節することによって、選択反射の中心波長を調整できる。n値とP値を調節することにより、所望の波長の光に対して右円偏光または左円偏光のいずれか一方を選択的に反射させるための、中心波長λを調節することができる。
【0317】
コレステリック液晶層に対して斜めに光が入射する場合は、選択反射の中心波長は短波長側にシフトする。そのため、画像表示のために必要とされる選択反射の中心波長に対して、上記のλ=n×Pの式に従って計算されるλが長波長となるようにn×Pを調整することが好ましい。屈折率nのコレステリック液晶層中で、コレステリック液晶層の法線方向(コレステリック液晶層の螺旋軸方向)に対して光線がθの角度で通過するときの選択反射の中心波長をλとすると、λは以下の式で表される。
λ=n×P×cosθ
【0318】
上記を考慮して、円偏光反射層に含まれるコレステリック液晶層の選択反射の中心波長を設計することにより、画像の斜めからの視認性の低下を防止することができる。また、画像の斜めからの視認性を意図的に低下させることもできる。これは例えばスマートフォンやパーソナルコンピューターにおいて、覗き見を防止することができるため有用である。また、上記の選択反射の性質により、本発明の光学フィルムを有する画像表示機能付きミラーは、斜め方向から見た、画像およびミラー反射像に、色味が出てしまうことがある。円偏光反射層に赤外光領域に選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶層を含ませることによって、このような色味を防止することも可能である。この場合の赤外光領域の選択反射の中心波長は具体的には、780〜900nm、好ましくは780〜850nmにあればよい。
赤外光領域に選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶層を設ける場合は、可視光領域に選択反射の中心波長をそれぞれ有するコレステリック液晶層すべてに対し、最も画像表示素子側にあることが好ましい。
【0319】
コレステリック液晶相のピッチは重合性液晶化合物とともに用いるキラル剤の種類、またはその添加濃度に依存するため、これらを調整することによって所望のピッチを得ることができる。なお、螺旋のセンスやピッチの測定法については「液晶化学実験入門」日本液晶学会編 シグマ出版2007年出版、46頁、および「液晶便覧」液晶便覧編集委員会 丸善 196頁に記載の方法を用いることができる。
【0320】
本発明の光学フィルムを有する画像表示機能付きミラーにおいて、円偏光反射層は、赤色光の波長域に選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶層と、緑色光の波長域に選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶層と、青色光の波長域に選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶層とを含むことが好ましい。反射層は、例えば、400nm〜500nmに選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶層、500nm〜580nmに選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶層、および580nm〜700nmに選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶層を含むことが好ましい。
【0321】
また、円偏光反射層が複数のコレステリック液晶層を含むときは、より画像表示素子に近いコレステリック液晶層がより長い選択反射の中心波長を有していることが好ましい。このような構成により、画像における斜め色味を抑えることができる。
【0322】
特に、1/4波長板を含まないコレステリック円偏光反射層を利用した画像表示機能付きミラーにおいて、各コレステリック液晶層が有する選択反射の中心波長は、画像表示素子の発光のピークの波長と5nm以上異なるようにすることが好ましい。この差異は、10nm以上とすることもより好ましい。選択反射の中心波長と画像表示素子の画像表示のための発光ピークの波長をずらすことにより、画像表示のための光がコレステリック液晶層で反射されず、表示画像を明るくすることができる。画像表示素子の発光のピークの波長は、画像表示素子の白表示時の発光スペクトルで確認できる。ピーク波長は上記発光スペクトルの可視光領域におけるピーク波長であればよく、例えば、画像表示素子の上述の赤色光の発光ピーク波長λR、緑色光の発光ピーク波長λG、および青色光の発光ピーク波長λBからなる群から選択されるいずれか1つ以上であればよい。コレステリック液晶層が有する選択反射の中心波長は、画像表示素子の上述の赤色光の発光ピーク波長λR、緑色光の発光ピーク波長λG、および青色光の発光ピーク波長λBのいずれとも5nm以上異なっていることが好ましく、10nm以上異なっていることがより好ましい。円偏光反射層が複数のコレステリック液晶層を含む場合は、すべてのコレステリック液晶層の選択反射の中心波長を、画像表示素子の発光する光のピークの波長と5nm以上、好ましくは10nm以上異なるようにすればよい。例えば、画像表示素子が白表示時の発光スペクトルにおいて赤色光の発光ピーク波長λRと、緑色光の発光ピーク波長λGと、青色光の発光ピーク波長λBとを示すフルカラー表示の表示素子である場合、コレステリック液晶層が有する全ての選択反射の中心波長が、λR、λG、およびλBのいずれとも5nm以上、好ましくは10nm以上異なるようにすればよい。
【0323】
使用するコレステリック液晶層の選択反射の中心波長を、画像表示素子の発光波長域、および円偏光反射層の使用態様に応じて調整することにより、光利用効率良く明るい画像を表示することができる。円偏光反射層の使用態様としては、特に円偏光反射層への光の入射角、画像観察方向などが挙げられる。
【0324】
各コレステリック液晶層としては、螺旋のセンスが右または左のいずれかであるコレステリック液晶層が用いられる。コレステリック液晶層の反射円偏光のセンスは螺旋のセンスに一致する。複数のコレステリック液晶層の螺旋のセンスは全て同じであっても、異なるものが含まれていてもよい。すなわち、右または左のいずれか一方のセンスのコレステリック液晶層を含んでいてもよく、右および左の双方のセンスのコレステリック液晶層を含んでいてもよい。ただし、1/4波長板を含む画像表示機能付きミラーにおいては、複数のコレステリック液晶層の螺旋のセンスは全て同じであることが好ましい。そのときの螺旋のセンスは、各コレステリック液晶層として、画像表示素子から出射して1/4波長板を透過して得られているセンスの円偏光のセンスに応じて決定すればよい。具体的には、画像表示素子から出射して1/4波長板を透過して得られているセンスの円偏光を透過する螺旋のセンスを有するコレステリック液晶層を用いればよい。
【0325】
選択反射を示す選択反射帯の半値幅Δλ(nm)は、Δλが液晶化合物の複屈折Δnと上記ピッチPに依存し、Δλ=Δn×Pの関係に従う。そのため、選択反射帯の幅の制御は、Δnを調整して行うことができる。Δnの調整は重合性液晶化合物の種類やその混合比率を調整したり、配向固定時の温度を制御したりすることで行うことができる。
選択反射の中心波長が同一の1種のコレステリック液晶層の形成のために、周期Pが同じで、同じ螺旋のセンスのコレステリック液晶層を複数積層してもよい。周期Pが同じで、同じ螺旋のセンスのコレステリック液晶層を積層することによっては、特定の波長での円偏光選択性を高くすることができる。
【0326】
(1/4波長板)
コレステリック円偏光反射層を用いた画像表示機能付きミラーにおいて、ハーフミラーはさらに1/4波長板を含んでいてもよく、高Re(面内レターデーション)位相差膜と、コレステリック円偏光反射層と、1/4波長板とをこの順に含むことが好ましい。
画像表示素子とコレステリック円偏光反射層との間に1/4波長板を含むことによって、特に、直線偏光により画像表示している画像表示素子からの光を円偏光に変換してコレステリック円偏光反射層に入射させることが可能となる。そのため、円偏光反射層において反射されて画像表示素子側に戻る光を大幅に減らすことができ、明るい画像の表示が可能となる。また、1/4波長板の利用によりコレステリック円偏光反射層において画像表示素子側に反射するセンスの円偏光を生じさせない構成が可能であるため、画像表示素子およびハーフミラーの間の多重反射による画像表示品質の低下が生じにくい。
すなわち、例えば、コレステリック円偏光反射層に含まれるコレステリック液晶層の選択反射の中心波長が、画像表示素子の白表示時の発光スペクトルにおける青色光の発光ピーク波長と略同一(例えば差異が5nm未満)であったとしても、円偏光反射層において画像表示側に反射するセンスの円偏光を生じさせることなく、画像表示素子の出射光を前面側に透過させることができる。
【0327】
コレステリック円偏光反射層と組み合わせて用いられる1/4波長板は画像表示素子に接着した際に、画像が最も明るくなるように、角度調整されていることが好ましい。すなわち、特に直線偏光により画像表示している画像表示素子に対し、上記直線偏光を最もよく透過させるように上記直線偏光の偏光方向(透過軸)と1/4波長板の遅相軸との関係が調整されていることが好ましい。例えば、一層型の1/4波長板の場合、上記透過軸と遅相軸とは45°の角度をなしていることが好ましい。直線偏光により画像表示している画像表示素子から出射した光は1/4波長板を透過後、右または左のいずれかのセンスの円偏光となっている。円偏光反射層は、上記のセンスの円偏光を透過する捩れ方向を有するコレステリック液晶層で構成されていればよい。
【0328】
1/4波長板は、可視光領域において1/4波長板として機能する位相差層であればよい。1/4波長板の例としては、一層型の1/4波長板、および1/4波長板と1/2波長位相差板とを積層した広帯域1/4波長板などが挙げられる。
前者の1/4波長板の正面位相差は、画像表示素子の発光波長の1/4の長さであればよい。それゆえ、例えば画像表示素子の発光波長が450nm、530nmおよび640nmの場合は、450nmの波長で112.5nm±10nm、好ましくは112.5nm±5nm、より好ましくは112.5nm、530nmの波長で132.5nm±10nm、好ましくは132.5nm±5nm、より好ましくは132.5nm、640nmの波長で160nm±10nm、好ましくは160nm±5nm、より好ましくは160nmの位相差であるような逆分散性の位相差層が、1/4波長板として最も好ましいが、位相差の波長分散性の小さい位相差板や順分散性の位相差板も用いることができる。なお、「逆分散性」とは長波長になるほど位相差の絶対値が大きくなる性質を意味し、「順分散性」とは短波長になるほど位相差の絶対値が大きくなる性質を意味する。
【0329】
積層型の1/4波長板は、1/4波長板と1/2波長位相差板とをその遅相軸を60°の角度で貼り合わせ、1/2波長位相差板側を直線偏光の入射側に配置して、且つ1/2波長位相差板の遅相軸を入射直線偏光の偏光面に対して15°、または75°に交差して使用するもので、位相差の逆分散性が良好なため好適に用いることができる。
【0330】
λ/4波長板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、石英板、延伸されたポリカーボネートフィルム、延伸されたノルボルネン系ポリマーフィルム、炭酸ストロンチウムのような複屈折を有する無機粒子を含有して配向させた透明フィルム、および支持体上に無機誘電体を斜め蒸着した薄膜などが挙げられる。
【0331】
λ/4波長板としては、例えば、(1)特開平5−27118号公報、及び特開平5−27119号公報に記載された、レターデーションが大きい複屈折性フィルムと、レターデーションが小さい複屈折性フィルムとを、それらの光軸が直交するように積層させた位相差板、(2)特開平10−68816号公報に記載された、特定波長においてλ/4波長となっているポリマーフィルムと、それと同一材料からなり同じ波長においてλ/2波長となっているポリマーフィルムとを積層させて、広い波長領域でλ/4波長が得られる位相差板、(3)特開平10−90521号公報に記載された、二枚のポリマーフィルムを積層することにより広い波長領域でλ/4波長を達成できる位相差板、(4)国際公開第00/26705号パンフレットに記載された、変性ポリカーボネートフィルムを用いた広い波長領域でλ/4波長を達成できる位相差板、ならびに(5)国際公開第00/65384号パンフレットに記載された、セルロースアセテートフィルムを用いた広い波長領域でλ/4波長を達成できる位相差板、などが挙げられる。
λ/4波長板としては、市販品を用いることもでき、市販品としては、例えば、ピュアエース(登録商標) WR(帝人株式会社製ポリカーボネートフィルム)が挙げられる。
【0332】
1/4波長板は、重合性液晶化合物、高分子液晶化合物を配列させて固定して形成してもよい。例えば、1/4波長板は、仮支持体、配向膜、または前面板表面に液晶組成物を塗布し、そこで液晶組成物中の重合性液晶化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、光架橋や熱架橋によって固定化して、形成することができる。液晶組成物および製法についての詳細は後述する。1/4波長板は、高分子液晶化合物を含む組成物を、仮支持体、配向膜、または前面板表面に液晶組成物を塗布して液晶状態においてネマチック配向に形成後、冷却することによって配向を固定化して得られる層であってもよい。
λ/4波長板はコレステリック円偏光反射層と、直接接していてもよく、接着層により接着されていてもよく、直接接していることが好ましい。
【0333】
(コレステリック液晶層および液晶組成物から形成される1/4波長板の作製方法)
以下、コレステリック液晶層および液晶組成物から形成される1/4波長板の作製材料および作製方法について説明する。
上記1/4波長板の形成に用いる材料としては、重合性液晶化合物を含む液晶組成物などが挙げられる。上記コレステリック液晶層の形成に用いる材料としては、重合性液晶化合物と、さらにキラル剤(光学活性化合物)とを含む液晶組成物などが挙げられる。必要に応じてさらに界面活性剤や重合開始剤などと混合して溶媒などに溶解した上記液晶組成物を、仮支持体、支持体、配向膜、高Re位相差膜、下層となるコレステリック液晶層、または1/4波長板などに塗布し、配向熟成後、液晶組成物の硬化により固定化してコレステリック液晶層および/または1/4波長板を形成することができる。
【0334】
−重合性液晶化合物−
重合性液晶化合物としては、重合性の棒状液晶化合物を用いればよい。
重合性の棒状液晶化合物の例としては、棒状ネマチック液晶化合物が挙げられる。棒状ネマチック液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
【0335】
重合性液晶化合物は、重合性基を液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、およびアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。重合性基は種々の方法で、液晶化合物の分子中に導入できる。重合性液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、米国特許第5622648号明細書、米国特許第5770107号明細書、WO95/22586A、WO95/24455A、WO97/00600A、WO98/23580A、WO98/52905A、特開平1−272551号公報、特開平6−16616号公報、特開平7−110469号公報、特開平11−80081号公報、および特開2001−328973号公報などに記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0336】
また、液晶組成物中の重合性液晶化合物の含有量は、液晶組成物の固形分質量(溶媒を除いた質量)に対して、80〜99.9質量%であることが好ましく、85〜99.5質量%であることがより好ましく、90〜99質量%であることが特に好ましい。
【0337】
−キラル剤:光学活性化合物−
コレステリック液晶層の形成に用いる材料はキラル剤を含んでいることが好ましい。キラル剤はコレステリック液晶相の螺旋構造を誘起する機能を有する。キラル剤は、化合物によって誘起する螺旋のセンスまたは螺旋ピッチが異なるため、目的に応じて選択すればよい。
キラル剤としては、特に制限はなく、通常用いられる化合物(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)、イソソルビドおよびイソマンニド誘導体を用いることができる。
キラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。キラル剤は、重合性基を有していてもよい。キラル剤と液晶化合物とがいずれも重合性基を有する場合は、重合性キラル剤と重合性液晶化合物との重合反応により、重合性液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、キラル剤から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性キラル剤が有する重合性基は、重合性液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、キラル剤の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基またはアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
また、キラル剤は、液晶化合物であってもよい。
【0338】
液晶組成物におけるキラル剤の含有量は、重合性液晶化合物量に対して、0.01モル%〜200モル%が好ましく、1モル%〜30モル%がより好ましい。
【0339】
−重合開始剤−
本発明に用いられる液晶組成物は、重合開始剤を含有していることが好ましい。紫外線照射により重合反応を進行させる態様では、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、米国特許第2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、米国特許第2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報、特開平10−29997号公報記載)、オキシム化合物(特開2000−66385号公報、日本特許第4454067号明細書記載)、ならびにオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
液晶組成物中の光重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0340】
−架橋剤−
液晶組成物は、硬化後の膜強度向上、耐久性向上のため、任意に架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては、紫外線、熱、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。
架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレートおよびエチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]および4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネートおよびビウレット型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ならびにビニルトリメトキシシランおよびN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物が挙げられる。また、架橋剤の反応性に応じて通常用いられる触媒を用いることができ、膜強度および耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
液晶組成物における架橋剤の含有量は3質量%〜20質量%が好ましく、5質量%〜15質量%がより好ましい。架橋剤の含有量が、上記下限値以上であることにより、架橋密度向上の効果を得ることができる。また、上記上限値以下とすることにより、形成される層の安定性を維持することができる。
【0341】
−配向制御剤−
液晶組成物中には、安定的にまたは迅速にプレーナー配向とするために寄与する配向制御剤を添加してもよい。配向制御剤の例としては特開2007−272185号公報の段落〔0018〕〜〔0043〕等に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマーならびに特開2012−203237号公報の段落〔0031〕〜〔0034〕等に記載の式(I)〜(IV)で表される化合物などが挙げられる。
なお、配向制御剤としては1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0342】
液晶組成物中における、配向制御剤の添加量は、重合性液晶化合物の全質量に対して0.01質量%〜10質量%が好ましく、0.01質量%〜5質量%がより好ましく、0.02質量%〜1質量%が特に好ましい。
【0343】
−その他の添加剤−
その他、液晶組成物は、塗膜の表面張力を調整し厚みを均一にするための界面活性剤、および重合性モノマー等の種々の添加剤から選ばれる少なくとも1種を含有していてもよい。また、液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、色材、金属酸化物微粒子等を、光学的性能を低下させない範囲で添加することができる。
【0344】
−溶媒−
液晶組成物の調製に使用する溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機溶媒が好ましく用いられる。
有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類およびエーテル類が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、環境への負荷を考慮した場合にはケトン類が特に好ましい。
【0345】
−塗布、配向、重合−
仮支持体、配向膜、高Re位相差膜、1/4波長板、及び/又は下層となるコレステリック液晶層などへの液晶組成物の塗布方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワイヤーバーコーティング法、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法およびスライドコーティング法などが挙げられる。また、別途支持体上に塗設した液晶組成物を転写することによっても実施できる。塗布した液晶組成物を加熱することにより、液晶分子を配向させる。コレステリック液晶層形成の際はコレステリック配向させればよく、1/4波長板形成の際は、ネマチック配向させることが好ましい。コレステリック配向の際、加熱温度は、200℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。この配向処理により、重合性液晶化合物が、フィルム面に対して実質的に垂直な方向に螺旋軸を有するように捩れ配向している光学薄膜が得られる。ネマチック配向の際、加熱温度は、25℃〜120℃が好ましく、30℃〜100℃がより好ましい。
【0346】
配向させた液晶化合物は、更に重合させ、液晶組成物を硬化することができる。重合は、熱重合、光照射による光重合のいずれでもよいが、光重合が好ましい。光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm〜50J/cmが好ましく、100mJ/cm〜1,500mJ/cmがより好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下または窒素雰囲気下で光照射を実施してもよい。照射紫外線波長は350nm〜430nmが好ましい。重合反応率は安定性の観点から、高いことが好ましく70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。重合反応率は、重合性の官能基の消費割合をIR吸収スペクトルを用いて測定することにより、決定することができる。
【0347】
個々のコレステリック液晶層の厚みは、上記特性を示す範囲であれば、特に限定はされないが、好ましくは1.0μm以上150μm以下の範囲、より好ましくは2.5μm以上100μm以下の範囲であればよい。また、液晶組成物から形成される1/4波長板の厚みは、特に限定はされないが、好ましくは0.2〜10μm、より好ましくは0.5〜2μmであればよい。
【実施例】
【0348】
以下に、実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。以下の実施例において組成を表す「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0349】
<実施例>
[実施例1]
<1.樹脂フィルムの作製>
(1)コア層セルロースアシレートドープ液の調製
下記の組成物をミキシングタンクに投入して撹拌し、コア層セルロースアシレートドープ溶液を調製した。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
コア層セルロースアシレートドープ液
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
・アセチル置換度2.88、重量平均分子量260,000のセルロースアセテート 100質量部
・下記構造のフタル酸エステルオリゴマーA 10質量部
・下記式Iで表される化合物(A−1) 4質量部
・下記式IIで表される紫外線吸収剤(BASF社製) 2.7質量部
・光安定剤(BASF社製、商品名:TINUVIN123) 0.18質量部
・N−アルケニルプロピレンジアミン3酢酸(ナガセケムテックス社製、商品名:テークランDO) 0.02質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 430質量部
・メタノール(第2溶媒) 64質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0350】
使用した化合物を以下に示す。
フタル酸エステルオリゴマーA(重量平均分子量:750)
【0351】
【化13】
【0352】
下記式Iで表される化合物(A−1)
式I:
【0353】
【化14】
【0354】
式IIで表される紫外線吸収剤式II:
【0355】
【化15】
【0356】
(2)外層セルロースアシレートドープ液の調製
上記のコア層セルロースアシレートドープ液90質量部に下記の無機粒子含有組成物を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープ液を調製した。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
無機粒子含有組成物
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
平均一次粒径20nmのシリカ粒子(日本アエロジル社製、商品名:AEROSIL R972) 2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
メタノール(第2溶媒) 11質量部
コア層セルロースアシレートドープ液 1質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0357】
(3)第一の樹脂フィルム(A)の作製
外層セルロースアシレートドープ液がコア層セルロースアシレートドープ液の両側に配されるように、外層セルロースアシレートドープ液、コア層セルロースアシレートドープ液、および外層セルロースアシレートドープ液の3種を、流延口から表面温度20℃の流延バンド上に同時に流延した。
流延バンドとして幅2.1mで長さが70mのステンレス製のエンドレスバンドを利用した。流延バンドは、厚みが1.5mm、表面粗さが0.05μm以下になるように研磨した。その材質はSUS316製であり、十分な耐腐食性と強度を有する流延バンドを用いた。流延バンドの全体の厚みムラは0.5%以下であった。
得られた流延膜に、風速が8m/s、ガス濃度が16%、温度が60℃の急速乾燥風を流延膜表面に当てて初期膜を形成した。その後、流延バンド上部の上流側からは140℃の乾燥風を送風した。また下流側からは120℃の乾燥風および60℃の乾燥風を送風した。
残留溶媒量を約33質量%にした後、バンドから剥ぎ取った。次いで、得られたフィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、溶媒残留量が3〜15質量%のフィルムを、横方向に1.06倍延伸しつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、更に乾燥し、厚みが100μm(外層/コア層/外層=3μm/94μm/3μm)である第一の樹脂フィルム(A)を作製した。
【0358】
(4)第二の樹脂フィルム(C)の作製
第一の樹脂フィルム(A)と同様の作製方法で、厚みが100μmである第二の樹脂フィルム(C)を作製した。
【0359】
<2.樹脂フィルムのケン化処理>
作製した樹脂フィルム(A)および(C)を、液温55℃に保った1.5mol/LのNaOH水溶液(ケン化液)に2分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、液温25℃の0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に30秒流水下に通して水洗し、フィルムを中性の状態にした。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に雰囲気温度70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、ケン化処理した樹脂フィルム(A)および(C)を作製した。
以降、光学フィルムの作製においては、ケン化処理した樹脂フィルム(A)および(C)を単に樹脂フィルム(A)および(C)と称す。
【0360】
<3.接着層形成用液の調製>
下記表1に示す配合で各成分を混合し、孔径10μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、接着層(B)形成用液A−1〜A−9を調製した。
【0361】
【表1】
【0362】
上記表1において、全成分の合計量が100質量%となるように記載している。
表1に記載した各化合物の詳細を以下に示す。
【0363】
<接着剤>
エポクロス WS300:商品名(日本触媒社製)、オキサゾリン基含有ポリマー
HEC:ヒドロキシエチルセルロース、重量平均分子量74,000
ゴーセネックス Z410:商品名(日本合成化学社製)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール
PVA−117H:クラレポバールPVA−117H(商品名、クラレ社製)、ポリビニルアルコール
【0364】
<エポキシ系UV接着剤>
セロキサイド2021P:商品名(ダイセル社製)、以下に示すエポキシ基含有化合物
【0365】
【化16】
【0366】
リカレジン DME−100:商品名(新日本理化社製)、以下に示すエポキシ基含有化合物
【0367】
【化17】
【0368】
2−EHGE:2−エチルヘキシルグリシジルエーテル
CPI100P:商品名(サンアプロ社製)、以下に示すトリアリールスルホニウム塩系の光酸発生剤
【0369】
【化18】
【0370】
<粒子>
スルーリア2320:商品名(日輝触媒社製)、中空シリカ、平均粒径50nm、固形分濃度20.5質量%。表中では固形分量での配合質量比を示す。
ZrO:酸化ジルコニウム、平均粒径4nm
【0371】
<4.樹脂フィルムの貼合>
上記で作製した膜厚100μmの樹脂フィルム(A)のバンド側と接していた面に、上記で作製した接着層形成用液A−1を乾燥後の接着層(B)の厚みが0.5μmとなるように塗布した。次いで、樹脂フィルム(C)のバンド側と接していた面と上述の接着層(B)とを、ロール機で圧力3MPa、速度900rpmの条件で貼り合わせ、雰囲気温度70℃で10分以上乾燥して、樹脂フィルム(A)および(C)が接着層(B)で貼り合わされた積層体を作製した。
【0372】
<5−1.ハードコート層(HC層)形成用硬化性組成物の調製>
下記表2に示す配合で各成分を混合し、孔径10μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、ハードコート層(HC層)形成用硬化性組成物HC−1およびHC−2を調製した。
【0373】
【表2】
【0374】
上記表2において、固形分および溶媒の合計量がそれぞれ100質量%となるように記載している。
表2に記載した各化合物の詳細を以下に示す。
【0375】
<重合性化合物>
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬社製、商品名:KAYARAD DPHA)
サイクロマーM100:3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(ダイセル社製、商品名)
【0376】
<重合開始剤>
Irg184:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(α−ヒドロキシアルキルフェノン系のラジカル光重合開始剤、BASF社製、商品名:IRGACURE184)
PAG−1:以下に示すヨードニウム塩化合物であるカチオン光重合開始剤
【0377】
【化19】
【0378】
<防汚剤、レベリング剤>
RS−90:防汚剤、商品名(DIC社製)、ラジカル重合性基を有する含フッ素オリゴマー
P−112:レベリング剤、特許5175831号の段落0053に記載の化合物P−112
【0379】
<溶媒>
MEK:メチルエチルケトン
MIBK:メチルイソブチルケトン
【0380】
<5−2.ハードコート層(HC層)の作製>
上記で作製した積層体の、接着層(B)とは逆側の樹脂フィルム(A)の表面上に、HC層形成用硬化性組成物HC−1を塗布し、硬化させてハードコート層を形成した。
塗布および硬化の方法は、具体的には、次の通りとした。特開2006−122889号公報の実施例1記載のスロットダイを用いたダイコート法で、搬送速度30m/分の条件でHC層形成用硬化性組成物を塗布し、雰囲気温度60℃で150秒間乾燥した。その後、更に窒素パージ下、酸素濃度約0.1体積%で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス社製)を用いて、照度20mW/cm、照射量30mJ/cmの紫外線を照射して、塗布したHC層形成用硬化性組成物を硬化させてハードコート層HC−1を形成した後、巻き取りを行った。
【0381】
上記で形成したハードコート層HC−1の表面に、表2に記載のHC層形成用硬化性組成物HC−2を塗布し、ハードコート層HC−1の形成と同じ条件で、乾燥および硬化して第2のHC層を形成し、実施例1の光学フィルムを作製した。下記表3において、セルロースアシレートフィルムをTACと記載した。
【0382】
[実施例2〜4]
接着層形成用液A−1に代えて接着層形成用液A−2、A−5又はA−6をそれぞれ使用した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜4の光学フィルムを作製した。
【0390】
[実施例7]
樹脂フィルム(A)および(C)として、特許第3325560号公報[実施例3]を参考に作製した、厚み100μmのポリカーボネートフィルム(550nmにおける面内方向のレターデーションは140nmだった。)を使用し、接着層形成用液A−1に代えて接着層形成用液A−8を使用した以外、実施例1と同様の方法で、実施例7の光学フィルムを作製した。下記表3において、ポリカーボネートフィルムをPCと記載した。
【0391】
[実施例8]
樹脂フィルム(C)として、上記で作製したアクリル樹脂フィルム(PMMA)を使用し、接着層形成用液A−1に代えて接着層形成用液A−9を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例8の光学フィルムを作製した。
【0392】
[実施例9〜12]
接着層(B)の厚みを下記表3に記載の厚みに変更した以外は、実施例2と同様にして、実施例9〜12の光学フィルムを作製した。
【0393】
<比較例>
[比較例1及び2]
接着層形成用液A−1に代えて接着層形成用液A−4又はA−3をそれぞれ使用した以外は実施例1と同様にして、比較例1及び2の光学フィルムを作製した
比較例4]
樹脂フィルム(C)として、上記で作製したポリカーボネート樹脂フィルム(PC)を使用し、接着層形成用液A−1に代えて接着層形成用液A−3を使用した以外は実施例1と同様にして、比較例4の光学フィルムを作製した。
【0394】
<試験>
上記で作製した光学フィルムについて、以下の試験を行った。試験結果を下記表3にまとめて記載する。なお、表3中、引張弾性率は、弾性率と略して記載する。
【0395】
[試験例1]打鍵耐久性
ガラス板(Corning社製、商品名:イーグル XG、厚み1mm)と、上記で作製した光学フィルム(HC層付き積層体)とを、ガラス板と樹脂フィルム(C)側が向かい合うようにして、厚み20μmの粘着剤(綜研化学社製、商品名:SK−2057)を介して、ゴムローラーで2kgの荷重を掛けながら貼り合わせて、温度25℃、相対湿度60%で2時間調湿した。作製した試験片を、打鍵試験機(株式会社YSC製)を用いて、HC層の上方から入力ペン(ペン先材料はポリアセタール、半径R=0.8mm、ワコム株式会社製)を押し当て(打鍵速度:2回/分、荷重:250g)、光学フィルムの正面から三波長蛍光灯(ナショナルパルック蛍光灯FL20SS・EX−D/18)で照らしながら目視で観察し、以下の基準で「打鍵耐久性」を評価した。
<評価基準>
A:50000回打鍵しても凹みが発生しなかった。
B:10001回〜50000回打鍵する間に凹みが発生した。
C:1001回〜10000回打鍵する間に凹みが発生した。
D:101回〜1000回打鍵する間に凹みが発生した。
【0396】
[試験例2]干渉ムラ
上記で作製した積層体(HC層付与前の積層体)を、第一の樹脂フィルム(A)を上にしてブラックボードの上に置き、積層体の正面50cm手前から三波長蛍光灯(パナソニック社製、ナショナルパルック蛍光灯FL20SS・EX−D/18)でサンプルを照らしながら目視で干渉ムラを観察し、以下の基準で評価した。
<評価基準>
A:干渉ムラが全く見えない。
B:干渉ムラがほとんど見えない。
C:干渉ムラが弱く見えるところがある。
D:干渉ムラが全体に弱く見えるが、問題ないレベルであった。
E:干渉ムラが全体に強く見え、問題があるレベルであった。
【0397】
[試験例3]引張弾性率
各樹脂フィルムの「引張弾性率」は、JIS K7127に記載の方法に従って、以下の方法により試験し、算出した。
上記で作製した樹脂フィルムについて、測定方向に15cmの長さで、幅1cm、の樹脂フィルムを測定用試料として切り出した。切り出した測定用試料を、引張試験機(東洋精機社製、商品名「ストログラフ−R2」)に、測定方向のチャック間隔が10cmとなるように設置し、測定温度25℃の条件下、延伸速度10mm/分でチャック間隔が広がるように延伸し、応力−ひずみ曲線を得た。規定された2点のひずみε=0.0005及びε=0.0025の間の曲線の線形回帰により、25℃における引張弾性率を算出した。
なお、樹脂フィルムが異方性を有する場合は、樹脂フィルムの厚み方向に垂直な面において、配向度の最も大きい配向方向を長辺とする測定用試料の引張弾性率と、この配向方向と直行する方向を長辺とする測定用試料の引張弾性率との平均を、樹脂フィルムの引張弾性率とした。
接着層の「弾性率」については、上記で使用した各接着層形成用液について、ガラス板(厚み1mm)上にアプリケーターを用いて乾燥後の膜厚が20μmとなるように流延し、雰囲気温度80℃で10分以上乾燥したのち、ガラス板から剥離した。得られた接着層の試料を用いて、上記樹脂フィルムの引張弾性率と同様の方法により試験し、算出した。
【0398】
[試験例4]屈折率
各樹脂フィルムの「屈折率」は、JIS K7142に記載の方法に従って、アッベ屈折率計(アタゴ社製)を用い、25℃の温度条件下、光源にナトリウムD線(589nm)を用い、測定した。
なお、樹脂フィルムが異方性を有する場合は、樹脂フィルムの厚み方向に垂直な面において、配向度の最も大きい配向方向の屈折率と、この配向方向と直行する方向の屈折率との平均を、樹脂フィルムの屈折率とした。
接着層の「屈折率」については、樹脂フィルム(A)上に接着層形成用液を塗布し、乾燥処理を施して溶媒を除去し、厚み1μmの接着層を形成した。得られた接着層の表面屈折率を、上記樹脂フィルムの屈折率と同様の方法により測定した。
【0399】
[試験例5]厚み
「厚み」は、以下の方法により、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron microscope;SEM)により観察して測定した。
各構成部材(樹脂フィルム、接着層及びHC層)または各構成部材を含む部材(例えば液晶パネルやその一部)の断面を、イオンビーム、ミクロトーム等の常法により露出させた後、露出した断面においてSEMによる断面観察を行った。断面観察において、部材の幅方向を4等分した際の、両端を除く3つの等分点における厚みの算術平均として、各種厚みを求めた。
【0400】
【表3-1】
【0401】
【表3-2】
【0402】
なお、上記表3において、実施例及び比較例の光学フィルムは、いずれも、第一の樹脂フィルム(A)上に厚み15μmの第一のHC層(HC層1)及び厚み5μmの第二のHC層(HC層2)をこの順に有する。
<表の注>
接着層(B)の粒子(含有量%):接着層(B)に含まれる粒子の種類、および、接着層(B)を構成する固形分中の粒子の含有質量%を意味し、「−」は粒子を含まないことを意味する。
光学フィルムの厚み:樹脂フィルム(A)と接着層(B)と樹脂フィルム(C)の合計厚みを意味する。
【0403】
表3に記載するように、比較例1、2及び4の光学フィルムは、樹脂フィルム(A)と接着層(B)との屈折率の差、及び、樹脂フィルム(C)と接着層(B)との屈折率の差がいずれも0.03より大きい。これらの比較例1、2及び4の光学フィルムは、いずれも干渉ムラが大きく、干渉ムラの抑制が不十分であった。
これに対して、樹脂フィルム(A)、接着層(B)及び樹脂フィルム(C)の屈折率が式(1)及び(2)を満たし、樹脂フィルム(A)、接着層(B)及び樹脂フィルム(C)の引張弾性率が式(3)〜(7)を満たし、光学フィルムの厚みが100μmより大きい実施例1〜4及び7〜12の本発明の光学フィルムは、いずれも、干渉ムラが十分に抑制され、また、打鍵耐久性に優れていた。
【0404】
本発明の光学フィルムを、画像表示装置の前面板、画像表示装置、画像表示機能付きミラ−、抵抗膜式タッチパネルおよび静電容量式タッチパネルに用いた際には、上記前面板等は干渉ムラが十分に抑制され、優れた打鍵耐久性を示し、また製造適正にも優れると考えられる。
【0405】
[実施例13]
樹脂フィルム(C)として、フジタックTDP40UT(商品名、富士フイルム社製、屈折率:1.48、引張弾性率:5.4MPa)を使用した以外は実施例3と同様にして、実施例13の光学フィルムを作製した。
【0406】
[実施例14]
樹脂フィルム(A)として、フジタックTG40UL(商品名、富士フイルム社製、屈折率:1.48、引張弾性率:4.8MPa)を使用した以外は実施例3と同様にして、実施例14の光学フィルムを作製した。
【0407】
<偏光板の作製と評価>
(偏光板の作製)
(1)光学フィルムの鹸化
実施例で作製した各光学フィルム及びフジタックZRD40、TJ40(いずれも商品名、富士フイルム社製)を37℃に調温した4.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(けん化液)に1分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に水洗浴を通した。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理した光学フィルムを作製した。
【0408】
(2)偏光膜の作製
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光膜を調製した。
【0409】
(3)貼り合わせ
このようにして得た偏光膜の両面に、鹸化処理した光学フィルムを、表4に記載の組み合わせで、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117H)3%水溶液を接着剤として用いて、偏光軸と光学フィルムのMD方向とが平行となるようにロールツーロールで貼り合わせて、光学フィルム1/偏光膜/光学フィルム2の構成からなる偏光板101〜104を作製した。
【0410】
【表4】
【0411】
[試験例6]反り
作製した偏光板101〜103から、偏光板の吸収軸と平行する方向が長辺となるように、サイズ250mm×140mmの試験片101〜103を切り出した。また、作製した偏光板104から、偏光板の吸収軸と直交する方向が長辺となるように、サイズ250mm×140mmの試験片104を切り出した。
得られた試験片101〜103のZRD40側の表面に、アクリル系粘着剤(20μm)を介してサイズ255mm×150mmのガラス板(0.3mm厚)をそれぞれ貼り合わせた。得られた偏光板付きガラス板における、試験片101〜103と反対側のガラス板表面に、試験片104を粘着剤を介して貼り合わせた。このとき、試験片101〜103の吸収軸と試験片104の吸収軸が直交するように、かつ、試験片104のZRD40側がガラス板と対向するように貼り合わせた。
得られた偏光板付きガラス板に対して、60℃相対湿度90%で48時間保持する処理(以下、「湿熱処理」とも称す。)をした後にガラス板の4角の反り量を測定し、その平均値を求め、湿熱処理後の反り量とした。また、80℃で48時間保持する処理(以下、「熱処理」とも称す。)をした後にガラス板の4角の反り量を測定し、その平均値を求め、熱処理後の反り量とした。
【0412】
[試験例7]収縮力
第一の樹脂フィルム(A)と第二の樹脂フィルム(C)の、下記式(9)で表される湿熱処理後の収縮力Fw(単位:10N/m)および下記式(8)で表される熱処理後の収縮力Fd(単位:10N/m)を算出した。
式(9) Fw=Ew×εw×dw
[式中、Ew、εw、dwは、樹脂フィルムを60℃、相対湿度90%の環境で48時間保持した後のMD方向の弾性率、MD方向の湿度寸法変化率の絶対値、膜厚をそれぞれ表す。]
式(8) Fd=Ed×εd×dd
[式中、Ed、εd、ddは、樹脂フィルムを80℃の環境で48時間保持した後のMD方向の弾性率、MD方向の寸法変化率の絶対値、膜厚をそれぞれ表す。]
ここで、MD方向の弾性率は試験例3に記載の方法に従って求めた。
MD方向の寸法変化率の絶対値は、第一の樹脂フィルム(A)と第二の樹脂フィルム(C)から、MD方向を長手方向として切り出した長さ12cm(測定方向)、幅3cmのフィルム試料をそれぞれ用意し、この試料に10cmの間隔でピン孔を空け、25℃相対湿度60%にて24時間調湿後、ピン孔の間隔Lをピンゲージで測長した。続いてこの試料を60℃、相対湿度90%の環境で48時間、もしくは80℃の環境で48時間保持した後、25℃、相対湿度80%(湿熱処理後)もしくは25℃、相対湿度10%(熱処理後)にてそれぞれ48時間調湿後、ピン孔の間隔Lをピンゲージで測長した。これらの測定値L及びLを用いて下記式により寸法変化率の絶対値を算出した。
寸法変化率[%]=|L−L
膜厚は試験例5に記載の方法に従って求めた。
【0413】
【表5-1】
【0414】
【表5-2】
【0415】
上記表5に記載するように、第一の樹脂フィルム(A)と第二の樹脂フィルム(C)の湿熱処理後の収縮力Fwが互いに異なる場合、および/または熱処理後の収縮力Fdが互いに異なる場合には、60℃相対湿度90%、および/または80℃におけるパネル反りが小さかった。一方で、第一の樹脂フィルム(A)と第二の樹脂フィルム(C)のFwおよび/またはFdが同じ場合には、これらが異なる場合と比較して、60℃相対湿度90%、および/または80℃におけるパネルの反りが大きかった。
【符号の説明】
【0416】
1A:第一の樹脂フィルム
1B:第二の樹脂フィルム
2A:接着層
3A:ハードコート層(HC層)
4A、4B:光学フィルム
1:タッチパネル用導電フィルム
2:タッチパネル
4C:光学フィルム
5:透明絶縁基板
6A、6B:導電部材
7A、7B:保護層
8:第1導電層
9:第2導電層
11A:第1ダミー電極
11:第1電極
12:第1周辺配線
13:第1外部接続端子
14:第1コネクタ部
15:第1金属細線
21:第2電極
22:第2周辺配線
23:第2外部接続端子
24:第2コネクタ部
25:第2金属細線
C1:第1セル
C2:第2セル
D1:第1の方向
D2:第2の方向
M1:第1メッシュパターン
M2:第2メッシュパターン
S1:アクティブエリア
S2:周辺領域

図1
図2
図3
図4
図5
図6