(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
[フロー式反応システム]
本発明の重合体の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)に用いるフロー式反応システムの一実施形態を、図面を用いて説明する。なお、本発明は、本発明で規定する事項以外は、図面に示された形態に何ら限定されるものではない。
図1は、本発明の製造方法に用いるフロー式反応システムの一例を示す概略図である。
図1に示すフロー式反応システム(100)は、アニオン重合性モノマーを含む液(以下、「液A」ともいう。)の導入手段(5)に接続されたアニオン重合性モノマー供給流路(1)、アニオン重合開始剤を含む液(以下、「液B」ともいう。)の導入手段(6)に接続されたアニオン重合開始剤供給流路(2)、重合停止剤の導入手段(9)に接続された重合停止剤供給流路(7)、上記アニオン重合性モノマー供給流路(1)と上記アニオン重合開始剤供給流路(2)とが合流する合流領域(3、第1合流領域)、この合流領域(3)の下流側端部に連結する反応管(4)、この反応管(4)と上記重合停止剤供給流路(7)とが合流する合流領域(8、第2合流領域)、この合流領域(8)の下流側端部に連結する配管(10)を備える。
図1の形態において、合流領域(3)には多層筒型ミキサーの一形態である2層筒型ミキサー(3b)が配されている
【0015】
本発明のナノ粒子の製造方法を実施するための別の好ましいフロー式反応システム(200)を
図4に示す。
図4に示されるフロー式反応システム(200)は、液Aの導入手段(5)に接続されたアニオン重合性モノマー供給流路(1)、液Bの導入手段(6)に接続されたアニオン重合開始剤供給流路(2)、後述する第三液の導入手段(12)に接続された第3流路(11)、重合停止剤の導入手段(9)に接続された重合停止剤供給流路(7)、アニオン重合性モノマー供給流路(1)とアニオン重合開始剤供給流路(2)と第3流路(11)が合流する合流領域(3、第1合流領域)、この合流領域(3)の下流に繋がる反応管(4)、この反応管(4)と上記重合停止剤供給流路(7)とが合流する合流領域(8、第2合流領域)、この合流領域(8)の下流側端部に連結する配管(10)を備える。
図4の形態では、合流領域(3)に、多層筒型ミキサーの一形態である3層筒型ミキサーを用いている。
【0016】
上記導入手段(5、6、9、12)に特に制限はなく、種々のポンプを用いることができる。このようなポンプとしてはシリンジポンプ、プランジャーポンプ、スムーズフローポンプ等を使用することができ、所望の流速に制御される。
【0017】
図1の実施形態において、少なくとも合流領域(3)、この合流領域(3)から合流領域(8)までの間、合流領域(8)、及び、合流領域(8)に続く配管(10)の一部は、恒温槽(R1)内に配設され、アニオン重合反応と重合停止反応における液温が−100℃〜40℃(好ましくは−80℃〜20℃、より好ましくは−50℃〜10℃)となるように制御されていることが好ましい。
図4に示す形態においても同様に、恒温槽(R1)により液温が上記範囲に調節されることが好ましい。
【0018】
本明細書において「上流」及び「下流」とは、液体が流れる方向に対して用いられ、液体が導入される側(
図1においては導入手段(5、6、9、12)側)が上流であり、その逆側が下流となる。
本発明のフロー式反応システムの各構成についてより詳細に説明する。
【0019】
<アニオン重合性モノマー供給流路(1)>
アニオン重合性モノマー供給流路(1)は、導入手段(5)から導入された液Aを、上記合流領域(3)へと供給する流路である。アニオン重合性モノマー供給流路(1)は、その等価直径を0.1〜10mmとすることが好ましく、1〜10mmとすることがより好ましい。アニオン重合性モノマー供給流路(1)の等価直径を10mm以下とすることにより、合流領域(3)内に入る液の温度を、より正確に制御することができる。アニオン重合性モノマー供給流路(1)の等価直径は1〜8mmとすることがより好ましく、1〜6mmとすることがさらに好ましく、1〜4mmとすることが特に好ましい。
上記「等価直径」(equivalent diameter)は、相当(直)径とも呼ばれ、機械工学の分野で用いられる用語である。任意の管内断面形状の配管ないし流路に対し等価な円管を想定するとき、その等価円管の管内断面の直径を等価直径という。等価直径(deq)は、A:配管の管内断面積、p:配管のぬれぶち長さ(内周長)を用いて、deq=4A/pと定義される。円管に適用した場合、この等価直径は円管の管内断面の直径に一致する。等価直径は等価円管のデータを基に、その配管の流動あるいは熱伝達特性を推定するのに用いられ、現象の空間的スケール(代表的長さ)を表す。等価直径は、管内断面が一辺aの正四角形管ではdeq=4a
2/4a=a、一辺aの正三角形管ではdeq=a/3
1/2、流路高さhの平行平板間の流れではdeq=2hとなる(例えば、(社)日本機械学会編「機械工学事典」1997年、丸善(株)参照)。
【0020】
アニオン重合性モノマー供給流路(1)の長さに特に制限はなく、例えば、長さが10cm〜10m程度(好ましくは、30cm〜5m)のチューブにより構成することができる。
チューブの材質に特に制限はなく、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、テフロン(登録商標)、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ステンレス、銅(又はその合金)、ニッケル(又はその合金)、チタン(又はその合金)、石英ガラス、ライムソーダガラスなどが挙げられる。可撓性、耐薬品性の観点から、チューブの材質は、PFA、テフロン(登録商標)、ステンレス、ニッケル合金(ハステロイ)又はチタンが好ましい。
【0021】
アニオン重合性モノマー供給流路(1)内を流通する液Aの流速に特に制限はなく、流路の等価直径、液Bの濃度、液Bの導入流量等を考慮し、目的に応じて適宜選択することができる。アニオン重合性モノマー供給流路(1)内を流通する液Aの流速は、例えば、1〜2000mL/minが好ましく、5〜500mL/minがより好ましく、10〜200mL/minがさらに好ましく、10〜100mL/minがさらに好ましい。
また、重合体の生産性の向上を高める観点からは、アニオン重合性モノマー供給流路(1)内を流通する液Aの流速は、30mL/min以上が好ましく、40mL/min以上がより好ましく、45mL/min以上がさらに好ましく、50mL/min以上がさらに好ましく、55mL/min以上が特に好ましい。
【0022】
(アニオン重合性モノマーを含む液A)
アニオン重合性モノマー供給流路(1)内を流通させる液Aは、アニオン重合性モノマーそのものであってもよいが、融点、粘度、反応熱の除熱の観点から、通常は、溶媒中にアニオン重合性モノマーを溶解してなる溶液である。
液Aに含まれる溶媒は、用いるモノマーの種類に応じて適宜に選択すればよく、例えば、直鎖、分岐鎖、環状のエーテル溶媒、炭化水素溶媒などが挙げられる。より具体的には、エーテル溶媒としてはテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、メチルターシャリーブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、これらの誘導体などを用いることができる。炭化水素溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、テトラリン、これらの誘導体などを用いることができる。なかでもモノマーの溶解性や重合速度の観点から、テトラヒドロフランを用いることが好ましい。
【0023】
−アニオン重合性モノマー−
液A中のアニオン重合性モノマーに特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ビニル芳香族炭化水素、共役ジエンなどが挙げられる。
【0024】
上記ビニル芳香族炭化水素としては、例えば、スチレン、スチレン誘導体(p−ジメチルシリルスチレン、(p−ビニルフェニル)メチルスルフィド、p−ヘキシニルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブチルジメチルシロキシスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブトキシスチレン、p−t−ブトキシ−α−メチルスチレン、m−t−ブトキシスチレン、p−(1−エトキシエトキシ)スチレンなど)、ビニルナフタレン、2−tert−ブトキシ−6−ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレンなどが挙げられる。
【0025】
上記共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエンなどが挙げられる。
上記モノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
液A中のアニオン重合性モノマーの含有量に特に制限はなく、液B中の開始剤濃度、液Bの流量等を考慮し、目的に応じて適宜に調整されるものである。液A中のアニオン重合性モノマーの含有量は、1〜100質量%とすることが好ましく、3〜70質量%がより好ましく、5〜50質量%がさらに好ましく、10〜40質量%がさらに好ましい。
また、粘度、反応熱の除熱の観点から、液A中のアニオン重合性モノマーのモル濃度は、0.5〜10Mが好ましく、0.5〜5Mがより好ましい。
また、液A中に占めるアニオン重合性モノマーと溶媒の総量の割合は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、97質量%以上がさらに好ましい。
【0027】
<アニオン重合開始剤供給流路(2)>
アニオン重合開始剤供給流路(2)は、導入手段(6)から導入された液Bを、上記合流領域(3)へと供給する流路である。アニオン重合開始剤供給流路(2)は、その等価直径を0.1〜10mmとすることが好ましく、1〜10mmとすることがより好ましい。アニオン重合開始剤供給流路(2)の等価直径を10mm以下とすることにより、合流領域(3)内に入る液の温度を、より正確に制御することができる。アニオン重合開始剤供給流路(1)の等価直径は1〜8mmとすることがより好ましく、1〜6mmとすることがさらに好ましく、1〜4mmとすることが特に好ましい。
【0028】
アニオン重合開始剤供給流路(2)の長さに特に制限はなく、例えば、長さが10cm〜10m程度(好ましくは、30cm〜5m)のチューブにより構成することができる。
チューブの材質に特に制限はなく、上記アニオン重合性モノマー供給流路(1)で例示した材質のチューブを用いることができる。
【0029】
アニオン重合開始剤供給流路(2)内を流通する液Bの流速に特に制限はなく、流路の等価直径、液Aの濃度、液Aの導入流量等を考慮し、目的に応じて適宜選択することができる。アニオン重合開始剤供給流路(2)内を流通する液Bの流速は、例えば、1〜2000mL/minが好ましく、5〜500mL/minがより好ましく、10〜500mL/min以下がさらに好ましく、10〜200mL/minがさらに好ましく、10〜100mL/minがさらに好ましい。
また、重合体の生産性の向上の観点からは、アニオン重合開始剤供給流路(2)内を流通する液Bの流速は、20mL/min以上が好ましく、25mL/min以上がより好ましく、30mL/min以上がさらに好ましく、35mL/min以上が特に好ましい。
また、アニオン重合開始剤供給流路(2)内を流通する液Bの流速Bは、ポリマーの分子量制御の観点から、アニオン重合性モノマー供給流路(1)内を流通する液Aの流速Aよりも遅いことが好ましい。流速Aと流速Bの比は、[流速A]/[流速B]=20/1〜1.2/1が好ましく、[流速A]/[流速B]=10/1〜1.2/1がより好ましく、5/1〜1.2/1がさらに好ましく、3/1〜1.3/1が特に好ましい。また、[流速A]/[流速B]=10/1〜1.05/1とすることも好ましく、[流速A]/[流速B]=5/1〜1.1/1とすることも好ましく、3/1〜1.1/1とすることも好ましく、2/1〜1.15/1とすることも好ましい。本明細書において流速の単位は、上述してきた通りmL/minである。
本発明の重合体の製造方法において、[流速A]/[流速B]の値は一定とする(固定した比とする)ことが好ましい。
【0030】
(アニオン重合開始剤を含む液B)
アニオン重合開始剤供給流路(2)内を流通させる液Bは、アニオン重合開始剤そのものであっても良いが、粘度、安全性の観点から、通常は溶媒中にアニオン重合開始剤を溶解してなる溶液である。液Bに含まれる溶媒は、用いる開始剤の種類に応じて適宜に選択すればよく、例えば、直鎖、分岐鎖、環状炭化水素溶媒などが挙げられる。より具体的には、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、テトラリン、これらの誘導体などが挙げられる。
なかでも液Bに用いる溶媒は芳香族炭化水素を含むことが好ましい。この芳香族炭化水素の好ましい例としては、トルエン、キシレンを挙げることができ、なかでもトルエンを用いることが好ましい。溶媒として芳香族炭化水素を用いることにより、モノマー転化率が高まり重合速度をより速めることができる。なかでもトルエンを用いることにより、モノマー転化率を高度に高めることができ、特に高分子量の重合体を製造する際に有利である。
【0031】
−アニオン重合開始剤−
液Bに用いるアニオン重合開始剤に特に制限はなく、通常のアニオン重合に用いられる開始剤を広く用いることができ、使用するモノマーの種類に応じて適宜に選択される。
上記重合方式が、リビング重合方式のアニオン重合である場合の重合開始剤としては、例えば、有機リチウム化合物又は有機マグネシウム化合物が挙げられる。
【0032】
上記有機リチウム化合物としては、特に制限は無く、従来公知の有機リチウム化合物から適宜選択することができ、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム(n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、iso−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなど)、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム、メトキシメチルリチウム、エトキシメチルリチウム等のアルキルリチウム;α−メチルスチリルリチウム、1,1−ジフェニル3−メチルペントリルリチウム、3−メチル−1,1−ジフェニルペンチルリチウム等のベンジルリチウム;ビニルリチウム、アリルリチウム、プロペニルリチウム、ブテニルリチウム等のアルケニルリチウム;エチニルリチウム、ブチニルリチウム、ペンチニルリチウム、ヘキシニルリチウム等のアルキニルリチウム;ベンジルリチウム、フェニルエチルリチウム等のアラルキルリチウム;フェニルリチウム、ナフチルリチウム等のアリールリチウム;2−チエニルリチウム、4−ピリジルリチウム、2−キノリルリチウム等のヘテロ環リチウム;トリ(n−ブチル)マグネシウムリチウム、トリメチルマグネシウムリチウム等のアルキルリチウムマグネシウム錯体等が挙げられる。中でも、反応性が高く開始反応を高速化できる点で、アルキルリチウムがより好ましく、n−ブチルリチウムが特に好ましい。ブチルリチウムの中でもn−ブチルリチウムが好ましい理由として、溶液状態における安定性が高いことが挙げられる。例えばsec−ブチルリチウムを用いた場合、溶液に溶解せず、懸濁液の状態で徐々に沈殿が生じてしまい、重合体の工業的生産における品質安定性の点で問題が生じるおそれがある。上記有機リチウム化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
有機マグネシウム化合物としては、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−t−ブチルマグネシウム、ジ−s−ブチルマグネシウム、n−ブチル−s−ブチルマグネシウム、n−ブチル−エチルマグネシウム、ジ−n−アミルマグネシウム、ジベンジルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム等が挙げられる。
【0034】
液B中のアニオン重合開始剤の含有量に特に制限はなく、液Aのモノマー濃度、液Aの導入流量等を考慮し、目的に応じて適宜に調整される。液B中のアニオン重合開始剤の含有量は、通常は0.01〜20質量%であり、0.01〜15質量%がより好ましく、0.01〜10質量%がさらに好ましく、0.05〜10質量%がさらに好ましい。
また、ポリマーの分子量制御の観点から、液B中のアニオン重合開始剤のモル濃度は、0.008〜1.6Mが好ましく、0.01〜1.6Mがより好ましく、0.01〜0.8Mがより好ましい。
また、液B中に占めるアニオン重合開始剤と溶媒の総量の割合は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、97質量%以上がさらに好ましい。
【0035】
液Aと液Bの導入量は、合流領域(3)において両液が均質に混じり合ったと仮定した場合に、かかる混合液中において、アニオン重合性モノマーとアニオン重合開始剤の当量比が、開始剤1当量に対して、モノマーが5〜5000当量が好ましく、10〜5000当量がより好ましく、10〜1000当量が特に好ましい。なかでも当量比を上記の特に好ましい範囲内とすることにより、理論値と事実上等しい分子量のポリマーを得ることができる点で有利である。すなわち、モノマーが重合性官能基を1つ有する化合物である場合、開始剤1モルに対して、モノマーの使用量が5〜5000モルが好ましく、10〜5000モルがより好ましく、10〜1000モルが特に好ましい。
【0036】
<合流領域(3)>
本発明において、合流領域(3)は多層筒型ミキサー(3b)で構成される。
【0037】
(多層筒型ミキサー)
合流領域(3)に用いる多層筒型ミキサーの好ましい形態としては、
図1〜3に示された2層筒型ミキサー、及び、
図4〜6に示された3層筒型ミキサーが挙げられる。また、4層以上の多層筒型ミキサーを用いてもよい。以下では、好ましい形態である2層筒型ミキサーと3層筒型ミキサーについて説明するが、4層以上の多層筒型ミキサーも、これらの形態に準じて適用することができる。なかでも本発明は、2層筒型ミキサーを用いる形態(
図1の形態)が好ましい。
【0038】
―2層筒型ミキサー―
図2は、
図1の合流領域(3)に適用した2層筒型ミキサー(3b)を用いた液合流の状態を示す断面図である。アニオン重合開始剤供給流路(2)は、2層筒型ミキサー(3b)内を貫通する最小筒(T1、内管)の開口部Bと接続され、あるいはアニオン重合開始剤供給流路(2)自体が最小筒(T1)と一体となり、これにより、アニオン重合開始剤供給流路(2)内を流通する液Bは最小筒(T1)内を開口部BからO側に向けて流通する。本発明において最小筒内を、最小筒内流路と称す。
一方、アニオン重合性モノマー供給流路(1)は、2層筒型ミキサー(3b)の開口部Aと接続される。これにより、アニオン重合性モノマー供給流路(1)内を流通してきた液Aは、2層筒型ミキサー(3b)の、最小筒内流路に隣接する流路内(最小筒(T1)とこの最小筒に隣接する筒(T2、外管)との間)を満たし、O側に向かって流通する。
最小筒流路内をO側に向けて流通する液Bの溶液は、最小筒(T1)のO側末端部(合流部J)において、最小筒流路に隣接する流路内をO側に向けて流通してきた液Aと合流し、その下流に繋がる反応流路(4)内へと導入される。
図2における合流部JをO側から見た断面を
図3に示す。
図3において、最小筒(T1)内に液Bが流通し、最小筒(T1)とこの最小筒に隣接する筒(T2)との間には液Aがそれぞれ流通する。
【0039】
2層筒型ミキサー(3b)により液Aと液Bが合流し、合流した液が反応管(4)を流通中にアニオン重合性モノマーが重合して重合体が生成する。
図1の実施形態では、2層筒型ミキサー(3b)の最小筒内流路を流通する液Bの線速度r1に対する、このミキサーの、最小筒内流路に隣接する流路内を流通する液Aの線速度r2の比の値(r2/r1)を、0.67以下とすることが好ましく、又は1.5以上とすることが好ましい。このように両溶液がミキサー内を流通する線速度に特定の差を設けることにより、得られる重合体の単分散性をより高めることができ、得られる重合体の分散度のバラツキもより抑えることができる。
r2/r1を0.67以下とし、又は1.5以上とすることにより上記効果が発現する理由は定かではないが、液Aと液Bがミキサー内で合流したときに線速度の速い部分が一定の負圧状態となり、引き込み流れが生じたり、両溶液の界面の薄層化が生じるなどして、両溶液を瞬時(例えば50ms程度)に均一に混合することが可能になることが一因と推定される。すなわち、濃度ムラが極めて少ない状態で重合反応を生じさせることができ、得られる重合体が単分散化されるものと推定される。また、この濃度ムラの減少により、得られる重合体の分散度は流速の影響を受けにくくなり、液Aないし液Bを送り出すポンプ等の流速設定を厳密に制御せずとも(例えば、流速が異なる系の間で比較した場合に)、得られる重合体の分散度が変動しにくい。
【0040】
r2/r1を0.67以下とする場合、その下限値に特に制限はなく、通常はr2/r1を0.01以上とし、0.1以上とするのが実際的であり、0.2以上とすることも好ましく、0.3以上とすることも好ましく、0.4以上とすることも好ましい。また、r2/r1を1.5以上とする場合、その上限値に特に制限はなく、通常は100以下とし、10以下とするのが実際的であり、5以下とすることも好ましく、3.3以下とすることも好ましく、2.5以下とすることも好ましい。溶液導入手段により導入される溶液の流速を調整したり、ミキサー内の流路の断面積を調整したりすることにより、r2/r1を調整することができる。
本発明において「線速度」の単位は、例えばcm/分であり、この場合、溶液送液手段により送液される溶液の流速(cm
3/分)を、この溶液が流通する流路の断面積(cm
2)で除することにより、線速度が算出される。
【0041】
なお、上記の形態では、最小筒内流路に液Bを流通させ、最小筒内流路に隣接する流路内に液Aを流通させる形態について説明したが、流通させる液を逆にしてもよい。つまり、最小筒内流路に液Aを流通させ、最小筒内流路に隣接する流路内に液Bの溶液を流通させる形態も、本発明のナノ粒子の製造方法の実施形態として好ましい。この場合も、最小筒内流路を流通する液の流速及び線速度と、最小筒内流路に隣接する流路を流通する液の流速及び線速度との関係は、上記で
図1〜
図3を参照して説明した好ましい形態と同じである。
【0042】
―3層筒型ミキサー―
図5は、
図4の合流領域(3)に適用した3層筒型ミキサー(3c)を用いた液合流の状態を示す断面図である。アニオン重合開始剤供給流路(2)は、3層筒型ミキサー(3c)内を貫通する最小筒(T1)の開口部Bと接続され、あるいはアニオン重合開始剤供給流路(2)自体が最小筒(T1)と一体となり、これにより、アニオン重合開始剤供給流路(2)内を流通する液Bは最小筒(T1)内を開口部BからO側に向かって流通する。
また、アニオン重合性モノマー供給流路(1)は、3層筒型ミキサー(3c)の開口部Aと接続される。これにより、アニオン重合性モノマー供給流路(1)内を流通してきた液Aは、3層筒型ミキサー(3c)の、最小筒内流路に隣接する流路内(最小筒(T1)とこの最小筒(T1)に隣接する筒(T3、中管)との間)を満たし、O側に向かって流通する。
また、第3流路(11)は、3層筒型ミキサー(3c)の開口部Cと接続される。これにより、第3流路(11)内を流通してきた第三液は、3層筒型ミキサー(3c)の、最小筒(T1)に隣接する筒(T3)と、最外筒(T2、外管)との間を満たし、O側に向かって流通する。
【0043】
最小筒内流路をO側に向けて流通する液Bは、最小筒(T1)のO側末端部(合流部J)において、最小内流路に隣接する流路内をO側に向けて流通してきた液Aと合流し、その下流に繋がる反応流路(4)内へと導入される。
図5における合流部JをO側から見た断面を
図6に示す。
図6において、最小筒(T1)内に液Bが流通し、最小筒(T1)に隣接する筒(T3)と最小筒(T1)との間に液Aが流通し、そして最外筒(T2)と最小筒に隣接する筒(T3)との間には第三液が流通する。
【0044】
3層筒型ミキサー(3c)により液Aと液Bが合流すると、合流した液が下流へと流通中にアニオン重合性モノマーが重合して重合体が生成する。
図4の実施形態では、3層筒型ミキサー(3c)の最小筒内流路を流通する液Bの線速度r1に対し、このミキサーの、最小筒内流路に隣接する流路内を流通する液Aの線速度r2の比の値(r2/r1)を0.67以下とすることが好ましく、又は1.5以上とすることが好ましい。このように両溶液がミキサー内を流通する線速度に特定の差を出すことにより、
図1の実施形態と同様に、得られる重合体の単分散性をより高めることができる。また、液Aないし液Bを送り出すポンプ等の流速設定を厳密に制御せずとも(例えば、流速が異なる系の間で比較した場合に)、得られる重合体の分散度が変動しにくい。
【0045】
r2/r1を0.67以下とする場合、その下限値に特に制限はなく、通常はr2/r1を0.01以上とし、0.1以上とするのが実際的であり、0.2以上とすることも好ましく、0.3以上とすることも好ましく、0.4以上とすることも好ましい。また、r2/r1を1.5以上とする場合、その上限値に特に制限はなく、通常は100以下とし、10以下とするのが実際的であり、5以下とすることも好ましく、3.3以下とすることも好ましく、2.5以下とすることも好ましい。溶液導入手段により導入される溶液の流速を調整したり、ミキサー内の流路の断面積を調整したりすることにより、r2/r1を調整することができる。
【0046】
図4の実施形態では、最外筒(T2)と、最小筒に隣接する筒(T3)との間には、上述の通り第三液を流通させる。この第三液は、液Aと液Bとの混合液(重合反応液)の流路壁面への接触を防ぐことができ、例えば、流路壁面への粒状物の析出を防ぐ役割を担うことができる。例えば、重合開始剤としてn−ブチルリチウムを用いた場合、反応液中に微量に存在する水の作用により加水分解されて水酸化リチウムが一定量生じる。この水酸化リチウムが流路壁面と接触すると、壁面に水酸化リチウムの析出物が徐々に成長するが、第三液として水酸化リチウム溶解能を有する液を流通させることにより、流路壁面への析出物の成長を防ぐことが可能になる。
【0047】
なお、
図4〜6に示す実施形態において、液Bを最小筒内流路に隣接する流路内に流通させ、液Aを最小筒内流路に流通させてもよく、この形態も本発明の製造方法の実施形態として好ましい。
また、第三液を最小筒内流路に隣接する流路内に流通させてもよい。この場合、液A及び液Bの一方を最小筒内流路に流通させ、他方を、最外筒(T2)と、最小筒に隣接する筒(T3)との間に流通させる形態となる。この形態において第三液は、初期の重合速度の均一化、ノズル部の閉塞物の析出抑制の役割を担うことができる。また第三液の線速度は、液Aおよび液Bの線速度の間の範囲にあることが好ましい。
【0048】
多層筒型ミキサーの管、流路ないし開口部の断面形状に特に制限はなく、円形、楕円形の他、矩形、正方形等の多角形状であってもよい。ミキサー内部で液の滞留が起こりにくいという観点から、多層筒型ミキサーの管、流路ないし開口部の断面形状は円形であることがより好ましい。
【0049】
多層筒型ミキサーの最小筒(内管)内径の等価直径は0.1〜50mmが好ましく、0.1〜10mmがより好ましく、0.1〜5mmがさらに好ましく、0.1〜2mmが特に好ましい。また、最外筒(外管)内径の等価直径は、層構成の数にもよるが、通常は0.5〜100mmであり、1〜30mmとすることが好ましく、2〜20mmとすることがより好ましく、2〜15mmがさらに好ましい。最小筒と最外筒の間の中管内径の等価直径は、内管と外管の等価直径に基づき適宜に調節することができる。
なお、多層筒型ミキサーの筒の等価直径は、この筒に連結する流路の等価直径と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0050】
本発明に用いうる多層筒型ミキサーは、例えば、ボアード・スルー・ユニオンティー(Swagelok社製)等の継ぎ手と、任意の内径および外形の配管を組み合わせて製造することができる。また、特開2006−96569号公報に記載の構造物など、公知の構造物を多層筒型ミキサーとして用いることができる。
【0051】
<反応管(4)>
液Aと液Bは、合流領域(3)で合流し、多層筒型ミキサーにより混合された後、反応流路である反応管(4)内へと流れ、反応管(4)内を下流へ流通中に、アニオン重合性モノマーがアニオン重合する。
反応管(4)の形態に特に制限はなく、通常はチューブを用いる。反応管(4)の好ましい材質は、上述したアニオン重合性モノマー供給流路(1)の好ましい材質と同じである。また、反応管(4)の等価直径と長さ、送液ポンプの流量設定等によって、アニオン重合の反応時間を調整することができる。反応管(4)内を流通する反応液の滞留時間は、所望する重合体の分子量に応じて適宜調節すればよい。通常は、反応管(4)の等価直径は0.1〜50mmであり、より好ましくは0.2〜20mmであり、さらに好ましくは0.4〜15mmであり、さらに好ましくは0.7〜10mmであり、さらに好ましくは1〜5mmである。また、反応管(4)の長さは0.05〜50mが好ましく、0.5〜50mがより好ましく、1〜50mがさらに好ましく、3〜50mがさらに好ましい。
【0052】
<重合停止剤供給流路(7)>
重合停止剤供給流路(7)は、重合停止剤の導入手段(9)から導入された重合停止剤を、上記合流領域(8)へと供給する流路である。重合停止剤供給流路(7)の等価直径は、1〜10mmとすることが好ましく、1〜8mmがより好ましく、1〜6mmがさらに好ましく、1〜4mmがさらに好ましい。また、重合停止剤供給流路(7)の長さに特に制限はなく、例えば、長さが10cm〜10m程度(好ましくは、30cm〜5m)のチューブにより構成することができる。重合停止剤供給流路(7)の好ましい材質は、上述したアニオン重合性モノマー供給流路(1)の好ましい材質と同じである。
【0053】
−重合停止剤−
重合停止剤としては、活性種であるアニオンを失活させる成分(重合停止成分)を含む液であれば特に制限はなく、重合停止成分としてアルコール及び/又は酸性物質を含む、水溶液や有機溶液(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、メチルターシャリーブチルエーテル、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、トルエン等を溶媒とする溶液)が挙げられる。また、重合停止成分としてハロゲン化アルキルやクロロシラン等の求電子剤を含む液を重合停止剤として用いることもできる。
重合停止成分としてのアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0054】
重合停止成分としての酸性物質としては、例えば、酢酸、塩酸等が挙げられる。
重合停止成分としてのハロゲン化アルキルとしては、例えば、アルキルブロマイド、アルキルヨージド等が挙げられる。
重合停止剤中に含まれるアルコール、酸性物質、求電子剤等の重合停止成分の量は、重合体溶液と合流した混合液中において、重合開始剤1モルに対して、1モル〜100モルとするのが好ましい。
【0055】
導入手段(9)から重合停止剤を導入する際の流速は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、1〜1000mL/minとすることができ、2〜500mL/minがより好ましく、4〜200mL/minがさらに好ましい。流速が上記範囲内であれば、迅速な混合が可能となり、かつ、圧力損失の懸念も低下する。
【0056】
<合流領域(8)>
反応管(4)内を流通しながらアニオン重合反応が進行している重合反応液と、重合停止剤供給流路(7)内を流通する重合停止剤とは、合流領域(8)で合流する。合流領域(8)はミキサー(8b)で構成され、このミキサーは反応管(4)と重合停止剤供給流路(7)とを一本の流路に合流し、下流の配管(10)へと合流した液を送り出すことができれば特に制限されない。
図1及び4の実施形態において、合流領域(8)はT字型のコネクター(T字型ミキサー)を用いている。ミキサー(8b)として、例えば、上述した多層筒型ミキサーを採用することもできる。
合流領域(8)内のミキサー(8b)の流路の等価直径は、混合性能をより良好とする観点から、0.2〜10mmが好ましく、圧損をより抑制する観点から1〜10mmがより好ましい。
ミキサー(8b)の材質に特に制限はない。例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、テフロン(登録商標)、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ステンレス、銅(又はその合金)、ニッケル(又はその合金)、チタン(又はその合金)、石英ガラス、ライムソーダガラスなどの材質からなるものを用いることができる。
また、ミキサー(8b)として、市販されているマイクロミキサーを用いることができる。例えばミクログラス社製ミクログラスリアクター;CPCシステムス社製サイトス;山武社製YM−1、YM−2型ミキサー;島津GLC社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);GLサイエンス社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);Upchurch社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);;Upchurch社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);Valco社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);swagelok社製T字コネクタ等が挙げられ、いずれもミキサー(8b)として適用することができる。
【0057】
<配管(10)>
重合反応液と重合停止剤を含む混合溶液は、配管(10)内を流通しながら反応し、アニオンが失活して重合が停止する。
配管(10)はチューブにより構成することができ、その等価直径は、流通する液の液温をより精密に制御する観点から、1〜50mmが好ましく、1〜10mmがより好ましい。配管(10)の長さは、等価直径、流量、所望する重合体の分子量に合わせて適宜調整すればよく、1〜10mとするのが好ましく、1〜5mがより好ましい。配管(10)の好ましい材質は、上述したアニオン重合性モノマー供給流路(1)の好ましい材質と同じである。
配管(10)内を流通する液の液温は特に限定されないが、
図1及び4に示すように、少なくとも上流側を、反応管(4)内を流通する液の液温と同じく低温にすることが好ましい。
配管(10)内を流通する液の流速は、重合停止剤供給流路(7)内を流通する液の流速と、反応管(4)内を流通する液の流速の合計値となる。
配管(10)の下流において液(PS)を採取することにより、目的の重合体を得ることができる。得られる重合体の液の状態に特に制限はない。例えば、重合体が溶媒中に溶解してなる溶液であってもよく、重合体が溶媒中に乳化分散した分散液であってもよい。
【0058】
本発明の製造方法において、反応管(4)内の滞留時間(反応時間)は、15秒以上とすることが好ましく、20〜1800秒とすることがより好ましく、20〜600秒とすることがさらに好ましい。ここで、滞留時間(反応時間)とは、液Aと液Bの混合液が反応管(4)内に導入されてから配管(5)出口から排出されるまでの時間を意味する。
【0059】
本発明の重合体の製造方法によれば、液A及び液Bが流路内を流通する流速を一定以上の速さとした上で、この流速を変動させた場合であっても、得られる重合体の分散度の変動を効果的に抑えることができ、一定の分散度で単分散化された重合体を安定して得ることが可能になる。すなわち、フロー式反応における流速を厳密に制御しなくても、一定の分散度で単分散化された重合体を安定して得ることができる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0061】
[実施例1]
図1に示す構成のフロー式反応システムを用いてアニオン重合反応により重合体を合成した。各部の詳細を下記に示す。
【0062】
送液ポンプ(5、6、9):
すべて株式会社GLサイエンス製PU716Bを用い、流量出口側にパルスダンパーHPD−1、テスコム社製背圧弁(44−2361−24)、株式会社IBS社製リリーフバルブRHA(4MPa)を順次設置した。
【0063】
低温恒温槽(R1):
アズワン製卓上小型低温水槽CBi−270Aを使用し、−10℃に設定した。
【0064】
アニオン重合性モノマー供給流路(1):
外径1/16インチ、内径1.0mm、長さ2mのSUS316チューブを用いた。
【0065】
アニオン重合開始剤供給流路(2):
外径1/16インチ、内径1.0mm、長さ2mのSUS316チューブを用いた。
【0066】
合流領域(3)(2層筒型ミキサー):
図2及び3に示す同芯円筒型の2層筒型ミキサー3bとして、スウェージロック社製ユニオン・ティー(SS−400−3)を用いた。アニオン重合性モノマー供給流路(1)は開口部Aに連結し、アニオン重合開始剤供給流路(2)を開口部Bに連結した。ミキサー流路は外管T2に外径1/4インチ、内径4.35mm、長さ50mmのSUS316直管を使用し、内管T1に外径1/8インチ、内径2.17mmのSUS316直管を使用した。液が排出される内管端部Jを外管端部から80mmの位置にセットした。
【0067】
反応管(4):
外径1/8インチ、内径2.17mm、長さ4.8mのSUS316チューブを用いた。
【0068】
重合停止剤供給流路(7):
外径1/16インチ、内径1.0mm、長さ2mのSUS316チューブを用いた。
【0069】
合流領域(8)(T字コネクター):
スウェージロック社製ユニオン・ティー(SS−200−3)を用いた。
上記反応管(4)と上記重合停止剤供給流路(7)を、上記T字コネクターの3つの接続口のうち、互いに対向する2つの接続口にそれぞれ連結した。残りの接続口を、液を送り出す排出口として用いた。
【0070】
配管(10):
外径1/8インチ、内径2.17mm、長さ1.7mのSUS316チューブ;テスコム社製背圧弁(44−2361−24);外径1/8インチ、内径2.17mm、長さ0.3mのSUS316チューブを順に接続した。
【0071】
アニオン重合性モノマー供給流路(1)に導入する、モノマーを含む液A:
<p−t−ブトキシスチレン/テトラヒドロフラン(THF)>
2LSUSタンクに和光純薬製THF(脱酸素グレード)と和光純薬製p−t−ブトキシスチレン(特級グレード)を加え、2M−p−t−ブトキシスチレン/THF溶液2Lを調整した。この溶液をモレキュラーシーブ4Aにより脱水し、液Aとした。
なお、本実施例において、「xM−y/z」との記載は、yを溶媒zに溶解した溶液であって、この溶液中のy濃度がxMであることを意味する。
【0072】
アニオン重合開始剤供給流路(2)に導入する、開始剤を含む液B:
<n−ブチルリチウム(nBuLi)/トルエン>
5LSUSタンクに和光純薬製トルエン(脱酸素グレード)を加え0℃に冷却した。関東化学製nBuLi(1.6M−nBuLi/ヘキサン溶液)を加え、メントール/ビピリジンで滴定して、0.05M−nBuLi/トルエン溶液4Lを調製し、液Bとした。
【0073】
重合停止剤供給流路(3)に導入する重合停止剤:
<メタノール(MeOH)/THF>
3LSUSタンクに和光純薬製THF(脱酸素グレード)と和光純薬製MeOH(脱酸素グレード)を加え、0.5M−MeOH/THF溶液4Lを調製し、重合停止剤とした。
【0074】
送液条件:
液A(2M−p−t−ブトキシスチレン/THF):56.5mL/min
液B(0.05M−nBuLi/トルエン):39.4mL/min
重合停止剤(0.5M−MeOH/THF):47.3mL/min
【0075】
反応管(4)内流通時間:11.1秒
【0076】
2層筒型ミキサー(3b)の最小筒内流路を流通する液Bの線速度r1に対する、このミキサーの、最小筒内流路に隣接する流路内を流通する液Aの線速度r2の比の値:
r2/r1=0.53
【0077】
取り出し:
配管(10)出口から重合体(ポリ(p−t−ブトキシスチレン))を含む溶液10mLを採取し、分子量と分子量分布をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定した。その結果、数平均分子量(Mn)は4300、分子量分布(分散度、Mw/Mn)は1.19であった。
本明細書においてGPCは下記の条件で測定した。
装置:HLC−8220GPC(東ソー社製)
検出器:示差屈折計(RI(Refractive Index)検出器)
プレカラム:TSKGUARDCOLUMN HXL−L 6mm×40mm(東ソー社製)
サンプル側カラム:以下3本を順に直結(全て東ソー社製)
・TSK−GEL GMHXL 7.8mm×300mm
・TSK−GEL G4000HXL 7.8mm×300mm
・TSK−GEL G2000HXL 7.8mm×300mm
リファレンス側カラム:TSK−GEL G1000HXL 7.8mm×300mm
恒温槽温度:40℃
移動層:THF
サンプル側移動層流量:1.0mL/分
リファレンス側移動層流量:1.0mL/分
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:100μL
データ採取時間:試料注入後5分〜45分
サンプリングピッチ:300msec
【0078】
[実施例2]
実施例1において、導入する液の流速を下記の通りとした以外は、実施例1と同様にして重合体を得た。
送液条件:
液A(2M−p−t−ブトキシスチレン/THF):66.0mL/min
液B(0.05M−nBuLi/トルエン):46.0mL/min
重合停止剤(0.5M−MeOH/THF):55.2mL/min
反応管(4)内流通時間:9.5秒
r2/r1=0.53
得られた重合体のMnは4270、Mw/Mnは1.11であった。
【0079】
[実施例3]
実施例1において、導入する液の流速を下記の通りとした以外は、実施例1と同様にして重合体を得た。
送液条件:
液A(2M−p−t−ブトキシスチレン/THF):85.0mL/min
液B(0.05M−nBuLi/トルエン):59.3mL/min
重合停止剤(0.5M−MeOH/THF):71.1mL/min
反応管(4)内流通時間:7.4秒
r2/r1=0.53
得られた重合体のMnは4220、Mw/Mnは1.08であった。
【0080】
[実施例4]
実施例1において、導入する液の流速を下記の通りとした以外は、実施例1と同様にして重合体を得た。
送液条件:
液A(2M−p−t−ブトキシスチレン/THF):59.3mL/min
液B(0.05M−nBuLi/トルエン):50.5mL/min
重合停止剤(0.5M−MeOH/THF):71.2mL/min
反応管(4)内流通時間:9.7秒
r2/r1=0.44
得られた重合体のMnは5010、Mw/Mnは1.14であった。
【0081】
[実施例5]
実施例1において、導入する液の流速を下記の通りとした以外は、実施例1と同様にして重合体を得た。
送液条件:
液A(2M−p−t−ブトキシスチレン/THF):34.0mL/min
液B(0.05M−nBuLi/トルエン):29.1mL/min
重合停止剤(0.5M−MeOH/THF):40.8mL/min
反応管(4)内流通時間:16.9秒
r2/r1=0.44
得られた重合体のMnは4820、Mw/Mnは1.24であった。
【0082】
[比較例1]
実施例1において、合流領域(3)に用いるミキサーとして、2層筒型ミキサーに代えてT字型ミキサー(スウェージロック社製ユニオン・ティー(SS−200−3)を用いた。アニオン重合性モノマー供給流路(1)とアニオン重合開始剤供給流路(2)を上記T字型ミキサーの3つの接続口のうち、互いに対向する2つの接続口にそれぞれ連結し、反応管(4)を、残りの接続口に連結した。
導入する液の流速を下記の通りとした。
送液条件:
液A(2M−p−t−ブトキシスチレン/THF):59.3mL/min
液B(0.05M−nBuLi/トルエン):50.5mL/min
重合停止剤(0.5M−MeOH/THF):71.2mL/min
反応管(4)内流通時間:9.7秒
得られた重合体のMnは4940、Mw/Mnは1.17であった。
【0083】
[比較例2]
比較例1において、導入する液の流速を下記の通りとした以外は、比較例1と同様にして重合体を得た。
送液条件:
液A(2M−p−t−ブトキシスチレン/THF):34.0mL/min
液B(0.05M−nBuLi/トルエン):29.1mL/min
重合停止剤(0.5M−MeOH/THF):40.8mL/min
反応管(4)内流通時間:16.9秒
得られた重合体のMnは4890、Mw/Mnは1.39であった。
【0084】
[比較例3]
比較例1において、導入する液の流速を下記の通りとした以外は、比較例1と同様にして重合体を得た。
送液条件:
液A(2M−p−t−ブトキシスチレン/THF):55.4mL/min
液B(0.07M−nBuLi/トルエン):38.8mL/min
重合停止剤(0.5M−MeOH/THF):47.0mL/min
反応管(4)内流通時間:11.3秒
得られた重合体のMnは4750、Mw/Mnは1.26であった。
【0085】
[比較例4]
比較例1において、導入する液の流速を下記の通りとした以外は、比較例1と同様にして重合体を得た。
送液条件:
液A(2M−p−t−ブトキシスチレン/THF):65.0mL/min
液B(0.07M−nBuLi/トルエン):45.5mL/min
重合停止剤(0.5M−MeOH/THF):55.1mL/min
反応管(4)内流通時間:9.6秒
得られた重合体のMnは4900、Mw/Mnは1.11であった。
【0086】
上記各実施例及び比較例の結果を下表にまとめて示す。
【0087】
【表1】
【0088】
上記表に示された結果について説明する。
まず、「液A流速/液B流速」を1.43とした場合において、合流領域(3)にT字ミキサーを用いたときと、多層筒型ミキサーを用いたときとの間で、得られるポリマーの分散度に対する流速の影響を比較する。この比較において、T字型ミキサーを用いたときには、流速が1.17倍(比較例4/比較例3)変わると、分散度が1.14倍(比較例3/比較例4)変動するのに対し、多層筒型ミキサーを用いたときには、流速が1.17倍(実施例2/実施例1)変わっても、分散度の変動はわずか1.07倍(実施例1/実施例2)であった。さらに、多層筒型ミキサーを用いれば、流速を1.5倍(実施例3/実施例1)変えても、分散度の変動は1.10倍(実施例1/実施例3)に過ぎず、流速に対する分散度の変動が効果的に抑えられることがわかる。
【0089】
続いて、「液A流速/液B流速」を1.17とした場合についても同様の比較をする。T字型ミキサーでは、ミキサー内で衝突する液Aと液Bの流速が一定程度近い方が、混合均一性が高まることが分かっている。したがって、T字型ミキサーを用いた系においては、「液A流速/液B流速」を1.17の条件は、「液A流速/液B流速」を1.43よりも、両液の混合均一性は高まっていると推定される。しかしこの系においても、T字ミキサーを用いると、流速が1.7倍(比較例1/比較例2)変わると分散度の変動は1.18倍(比較例2/比較例1)と大きかった。これに対し、多層筒型ミキサーを用いれば、流速が1.7倍(実施例4/実施例5)変わっても、得られる重合体の分散度は1.09倍(実施例5/実施例4)しか変動せず、やはり流速に対する分散度の変動が効果的に抑えられることがわかる。
【0090】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0091】
本願は、2017年9月28日に日本国で特許出願された特願2017−188932に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。