特許第6802561号(P6802561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6802561新規光学活性イミダゾリン−フェノール型触媒と光学活性アジリジンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802561
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】新規光学活性イミダゾリン−フェノール型触媒と光学活性アジリジンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/02 20060101AFI20201207BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20201207BHJP
   C07D 233/42 20060101ALN20201207BHJP
   C07D 235/04 20060101ALN20201207BHJP
【FI】
   B01J31/02 103Z
   !C07B61/00 300
   !C07D233/42
   !C07D235/04
【請求項の数】2
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-17178(P2017-17178)
(22)【出願日】2017年2月2日
(65)【公開番号】特開2018-122258(P2018-122258A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2020年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(72)【発明者】
【氏名】中村 修一
(72)【発明者】
【氏名】羽山 大樹
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−151285(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104072425(CN,A)
【文献】 S. Nakamura et al.,Organocatalytic Enantioselective Aza-Friedel-Crafts Reaction of Cyclic Ketimines with Pyrroles using Imidazolinephosphoric Acid Catalysts,Chem. Eur. J.,2016年,22,9478-9482.
【文献】 S. Nakamura et al.,Enantioselective Reaction of 2H-Azirines with Phosphite Using Chiral Bis(imidazoline)/Zinc(II) Catalysts,Angew. Chem. Int. Ed.,2017年,56,8785-8789.,First published: 29 May 2017.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
MARPAT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(1)乃至(9)の何れか1つで示すイミダゾリン-フェノール型触媒。
【化1】

【化2】

【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【請求項2】
請求項1に記載の化学式(1)乃至(9)の何れか1つで示すイミダゾリン-フェノール型触媒とジエチル亜鉛の存在下で、化学式(10)の反応により2H−アジリン類に亜リン酸ジフェニルを反応させて2H−アジリンへの不斉求核付加反応によりアジリジン骨格を有するα-アミノホスホン酸誘導体を製造する方法。
【化10】
(化学式(10)中、Rは、アリール基またはアルキル基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な光学活性イミダゾリン-フェノール型触媒と光学活性アジリジンの合成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
新規な不斉合成手法の開発は、医薬品合成、ファインケミカル合成において非常に重要な研究であり、そのために新規な高機能性不斉触媒の開発が強く望まれている。そこで近年では、キラルな触媒として機能する光学活性イミダゾリン触媒が多数開発され、好成績を与える触媒として利用されている(非特許文献1)。しかしながら、これら触媒においても高度の立体選択性を与えることができない場合も数多く有り、より高度に不斉反応場を設計した不斉触媒の創製が強く望まれている。一方、2H-アジリンへの不斉求核付加反応は、光学活性なアジリジン化合物を与える良い方法であるが、その検討例は少なく(非特許文献2)、触媒量の不斉触媒を用いて、高エナンチオ選択性を発現する例はない。また、生物活性物質合成の原料となりうるα位にホスホニル基が導入されたアジリジンのエナンチオ選択的な合成例もない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Liu, H.; Du, D.-M. Adv. Synth. Catal. 2009, 351, 489
【非特許文献2】E. Risberg, P. Somfai, Tetrahedron: Asymmetry, 2002, 13, 1957
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この出願の発明が解決しようとする課題は、これまでに開発されている従来触媒では、高度の立体選択性の発現、収率、反応性に課題がある点である。本発明は、上記点に鑑みて、新規な光学活性イミダゾリン-フェノール型触媒を提供することにある。また、適切な不斉触媒を用いて光学活性なα位にホスホニル基が導入されたアジリジンの不斉触媒的製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するものとして、この出願の発明1は、化学式(100)を一般式とする、イミダゾリン-フェノール型触媒を提供する。
【化0】

パラメータR、R、R、m、nの特定により、化学式(1)乃至(9)のイミダゾリン-フェノール型触媒となる。
化学式(100)において、R=t-Bu、R=Me、(m=3) 、R=-CH2CH2CH2CH2-、n=1の場合、化学式(1)で表される。
【化1】

化学式(100)において、R=H、R=Me、(m=1)、R=Ph、n=1、の場合、化学式(2)で表される。
【化2】

化学式(100)において、R=t-Bu 、R=Me 、(m=3)、R=-CH2CH2CH2CH2- 、n=2 の場合、化学式(3)で表される。
【化3】
化学式(100)において、R=t-Bu 、R=Me、(m=1)、R=-CH2CH2CH2CH2- 、n=2 の場合、化学式(4)で表される。
【化4】
化学式(100)において、R=t-Bu、R=(CH3)2CH-、(m=3)、R=-CH2CH2CH2CH2-、n=2の場合、化学式(5)で表される。
【化5】
化学式(100)において、R=H、R=Me、(m=1)、R=Ph、n=2 の場合、化学式(6)で表される。
【化6】
式(100)において、R=H、R=Me、(m=1)、R=-CH2CH2CH2CH2-、n=2の場合、式(7)で表される。
【化7】
化学式(100)において、R=H、R=Me、(m=3)、R=-CH2CH2CH2CH2-、n=2の場合、化学式(8)で表される。
【化8】
化学式(100)において、R=H、R=CH3O-、(m=1)、R=-CH2CH2CH2CH2-、n=2の場合、化学式(9)で表される。
【化9】
発明2は、発明1に記載の化学式(100)で示すイミダゾリン-フェノール型触媒とジエチル亜鉛の存在下で、化学式(10)の反応式により、2H-アジリン類に亜リン酸ジフェニルを不斉求核付加反応させて、四置換不斉炭素を有するアジリジンを製造する方法を提供する。
【化10】
(化学式(10)中、Rは、アリール基、アルキル基である。)
【発明の効果】
【0006】
発明1は、新規なイミダゾリン-フェノール型触媒を提供する。発明2は、発明1のイミダゾリン-フェノール型触媒を用いて光学活性な四置換不斉炭素を有するアジリジンを高エナンチオ選択的合成ができる製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明者らは,2H-アジリンを求電子剤とし、亜リン酸ジフェニルを求核剤として用いる触媒的不斉開環反応を実施検討した。また、これまでに高エナンチオ選択的な成功例のない本手法を成功させるために、これまでに使用例のない光学活性イミダゾリン-フェノール型触媒を新規不斉触媒として用い、ジエチル亜鉛と併用した新しい合成手法の実施検討を行った。
【0008】
(第1実施形態)
光学活性イミダゾリン-フェノール型触媒の合成法について説明する。
次化学式(11)は、化学式(1)及び(2)で表されるイミダゾリン- フェノール型触媒の合成方法である。
【化11】
【0009】
化学式(11)中、R1は、水素原子、または、tert-ブチル基を示す。また、Rは、メシチレンスルホニル基、または、p−トシル基を示す。また、R3は、シクロヘキサン骨格(−(CH−)、または、フェニル基を示す。EDCIは、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を、HOBTは、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、DMFは、ジメチルホルムアミドを、PPhOは、トリフェニルホスフィンオキシドを、TfOは、トリフルオロメタンスルホン酸無水物また、CHClは、ジクロロメタンを示す。化学式(11)は、第2実施形態で記述する反応に使用する化学式(1)の新規不斉触媒である光学活性イミダゾリン-フェノール型触媒の合成法である。
【0010】
化学式(11)の合成法の実施により上記式(1)の新規不斉触媒の合成したことについて次の実施例1及び2に記述する。
【0011】
(第2実施形態)
次化学式(12)は、化学式(3)乃至(9)で表されるイミダゾリン-フェノール型触媒の合成方法である。
【化12】
【0012】
化学式(12)中、R1は、水素原子、または、tert-ブチル基を示す。また、Rは、メシチレンスルホニル基、p−トシル基、または2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニル基を示す。また、R3は、シクロヘキサン骨格(−(CH−)、または、フェニル基を示す。ここで、EDCIは、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を、HOBTは、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、DMFは、ジメチルホルムアミドを、PPhOは、トリフェニルホスフィンオキシドを、TfOは、トリフルオロメタンスルホン酸無水物また、CHClは、ジクロロメタンを示す。化学式(12)は、第2実施形態で記述する反応に使用する化学式(3)乃至(9)の新規不斉触媒である光学活性イミダゾリン-フェノール型触媒の合成法である。
【0013】
化学式(12)の合成法の実施により化学式(3)乃至(9)の新規不斉触媒の合成したことについて次の実施例3乃至9に記述する。
【0014】
(実施例1)
化学式(1)で与えられる目的生成物4-tert-Butyl-2-[(4S,5S)-4,5-tetramethylene-1-(2,4,6-trimethylbenzenesulfonyl)- imidazolin-2-yl]-phenolを化学式(11)の合成法により次のようにして合成した。4-tert-Butyl-phenolより既知反応にて、2位をカルボン酸にした。ナスフラスコに、前記カルボン酸(97.1 mg, 0.50 mmol)と、既知反応にてメシチレンスルホニル化させた(1S,2S)−1,2−ジアミノシクロヘキサン(163.0 mg, 0.55 mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(101.3 mg, 1.5 mmol)をジメチルホルムアミド 6.5 mLに溶かした後、0 ℃に冷却した。ここへ、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(143.8 mg, 1.5 mmol)をゆっくりと加え、反応温度を室温まで昇温した後、24時間撹拌した。反応溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、酢酸エチルにて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧下で留去し、粗生成物を得た。ナスフラスコに、トリフェニルホスフィンオキシド(278.3 mg, 1.0 mmol)を塩化メチレン 5.0 mL溶かした後、0 ℃に冷却した。ここへ、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(282.1 mg, 1.0 mmol)をゆっくりと滴下した後、反応温度を室温まで昇温し、1 時間撹拌した。その後、反応溶液を0 ℃に冷却し、前記粗生成物のジクロロメタン溶液 1 mLをゆっくりと滴下し、反応温度0 ℃にて、30 分撹拌した。反応溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、ジクロロメタンで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧下で留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (Hexane:AcOEt = 70:30)で行い、化学式(1)で表わされる目的生成物を97.1 mg (43 %)で得た。
【0015】
当該目的生成物のスペクトル等を以下に示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.08 (s, 9H), 1.20-1.58 (m, 3H), 1.60-1.78 (m, 1H), 1.78-1.90 (m, 2H), 2.28 (s, 3H), 2.30-2.45 (m, 2H), 2.49 (s, 6H), 3.48-3.64 (m, 2H), 6.89 (s, 2H), 6.91 (s, 1H), 7.18 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.30 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 9.02-10.36 (br, 1H); MS (ESI, positive) m/z 455.2[M+H]+
【0016】
(実施例2)
化学式(2)で与えられる目的生成物 2-[(4S,5S)-4,5-diphenyl-1- (4-methylbenzenesulfonyl)imidazolin-2-yl]-phenolを化学式(11)の合成法により、次のようにして合成した。サリチル酸(138.1 mg, 1.0 mmol)と、既知反応にてp−トシル化させた(1S,2S)−1,2−ジフェニル−1,2−エタンジアミン(366.5 mg, 1.0 mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(202.7 mg, 1.5 mmol)をジメチルホルムアミド 15.0 mLに溶かした後、0 ℃に冷却した。ここへ、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(191.7 mg, 1.0 mmol)をゆっくりと加え、反応温度を室温まで昇温した後、24時間撹拌した。反応溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、酢酸エチルにて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧下で留去し、粗生成物を得た。ナスフラスコに、トリフェニルホスフィンオキシド(417.4 mg, 1.5 mmol)を塩化メチレン 8.0 mL溶かした後、0 ℃に冷却した。ここへ、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(423.5 mg, 1.5 mmol)をゆっくりと滴下した後、反応温度を室温まで昇温し、1 時間撹拌した。その後、反応溶液を0 ℃に冷却し、前記粗生成物のジクロロメタン溶液 2.0 mLをゆっくりと滴下し、反応温度0 ℃にて、30 分撹拌した後、室温にて12時間撹拌した。反応溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、ジクロロメタンで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧下で留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (Hexane:AcOEt = 80:20)で行い、化学式(2)で表わされる目的生成物を190.0 mg (41 %)で得た。
【0017】
当該目的生成物のスペクトル等を以下に示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 2.50 (s, 3H), 5.05-5.23 (m, 2H), 6.75 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 6.91-7.31 (m, 10H), 7.33-7.50 (m, 5H), 8.10 (d, J= 8.4 Hz, 1H), 11.25-11.50 (br, 1H)
【0018】
(実施例3)
化学式(3)で与えられる目的生成物4-tert-Butyl-2,6-bis[(4S,5S)-4,5-tetramethylene-1-(2,4,6-trimethylbenzenesulfonyl)imidazolin-2-yl]-phenolを化学式(12)の合成法により次のようにして合成した。
4-tert-Butyl-phenolより既知反応にて、2、6位をカルボン酸にした。ナスフラスコに、前記カルボン酸(119.1 mg, 0.50 mmol)と、既知反応にてメシチレンスルホニル化させた(1S,2S)−1,2−ジアミノシクロヘキサン(355.7 mg, 1.2 mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(270.3 mg, 2.0 mmol)をジメチルホルムアミド 8.0 mLに溶かした後、0 ℃に冷却した。ここへ、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(394.2 mg, 2.0 mmol)をゆっくりと加え、反応温度を室温まで昇温した後、48時間撹拌した。反応溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、酢酸エチルにて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧下で留去し、粗生成物を得た。ナスフラスコに、トリフェニルホスフィンオキシド(556.6 mg, 2.0 mmol)を塩化メチレン 7.5 mL溶かした後、0 ℃に冷却した。ここへ、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(564.3 mg, 2.0 mmol)をゆっくりと滴下した後、反応温度を室温まで昇温し、1 時間撹拌した。その後、反応溶液を0 ℃に冷却し、前記粗生成物のジクロロメタン溶液 2.0 mLをゆっくりと滴下し、反応温度0 ℃にて、30 分撹拌した。反応溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、ジクロロメタンで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧下で留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (Toluene:AcOEt = 70:30)で行い、化学式(3)で表わされる目的生成物を256.2 mg (68 %)で得た。
【0019】
当該目的生成物のスペクトル等を以下に示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.12 (s, 9H), 1.20-1.55 (m, 8H), 1.72-1.89 (m, 4H), 2.26 (s, 6H), 2.30-2.41 (m, 4H), 2.47 (s, 12H), 3.28-3.41 (m, 2H), 3.54-3.64 (m, 2H), 6.84 (s, 4H), 7.39 (s, 2H), 11.4-11.8 (br, 1H)
MS (ESI, positive) m/z 759.4 [M+H]+, 781.3 [M+Na]+
【0020】
(実施例4)
化学式(4)で与えられる目的生成物4-tert-Butyl-2,6-bis[(4S,5S)-4,5-tetramethylene-1-(4-methylbenzenesulfonyl)imidazolin-2-yl]-phenolを化学式(12)の合成法により、次のようにして合成した。
4-tert-Butyl-phenolより既知反応にて、2、6位をカルボン酸にした。ナスフラスコに、前記カルボン酸(119.1 mg, 0.50 mmol)と、既知反応にてp−トシル化させた。(1S,2S)−1,2−ジアミノシクロヘキサン(295.2 mg, 1.1 mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(270.3 mg, 2.0 mmol)をジメチルホルムアミド 8.0 mLに溶かした後、0 ℃に冷却した。ここへ、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(394.2 mg, 2.0 mmol)をゆっくりと加え、反応温度を室温まで昇温した後、72時間撹拌した。反応溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、酢酸エチルにて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧下で留去し、粗生成物を得た。ナスフラスコに、トリフェニルホスフィンオキシド(556.6 mg, 2.0 mmol)を塩化メチレン 7.5 mL溶かした後、0 ℃に冷却した。ここへ、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(564.3 mg, 2.0 mmol)をゆっくりと滴下した後、反応温度を室温まで昇温し、1 時間撹拌した。その後、反応溶液を0 ℃に冷却し、前記粗生成物のジクロロメタン溶液 2.0 mLをゆっくりと滴下し、反応温度0 ℃にて、30 分撹拌した。反応溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、ジクロロメタンで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧下で留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (Toluene:AcOEt = 70:30)で行い、化学式(4)で表わされる目的生成物を250.4 mg (71 %)で得た。
【0021】
当該目的生成物のスペクトル等を以下に示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.20-1.38 (m, 15H), 1.75-1.93 (m, 6H), 2.24-2.30 (m, 2H), 2.36 (s, 6H), 2.55-2.73 (m, 2H), 3.08-3.25 (m, 4H), 7.21-7.26 (m, 4H), 7.46 (d, J = 8.1 Hz, 4H), 7.62 (s, 2H), 11.3-11.7 (br, 1H); MS (ESI, positive) m/z 703.3 [M+H]+
【0022】
(実施例5)
化学式(5)で与えられる目的生成物4-tert-Butyl-2,6-bis[(4S,5S)-4,5-tetramethylene-1-(2,4,6-triisopropylbenzenesulfonyl)imidazolin-2-yl]-phenolを化学式(12)の合成法により、次のようにして合成した。4-tert-Butyl-phenolより既知反応にて、2、6位をカルボン酸にした。ナスフラスコに、前記カルボン酸(131.1 mg, 0.55 mmol)と、既知反応にて2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニル化させた(1S,2S)−1,2−ジアミノシクロヘキサン(456.7 mg, 1.2 mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(297.2 mg, 2.2 mmol)をジメチルホルムアミド 8.0 mLに溶かした後、0 ℃に冷却した。ここへ、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(433.6 mg, 2.2 mmol)をゆっくりと加え、反応温度を室温まで昇温した後、72時間撹拌した。反応溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、酢酸エチルにて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧下で留去し、粗生成物を得た。ナスフラスコに、トリフェニルホスフィンオキシド(612.3 mg, 2.2 mmol)を塩化メチレン 8.0 mL溶かした後、0 ℃に冷却した。ここへ、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(619.7 mg, 2.0 mmol)をゆっくりと滴下した後、反応温度を室温まで昇温し、1 時間撹拌した。その後、反応溶液を0 ℃に冷却し、前記粗生成物のジクロロメタン溶液 2.2 mLをゆっくりと滴下し、反応温度0 ℃にて、30 分撹拌した。反応溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、ジクロロメタンで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧下で留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (Toluene:AcOEt = 70:30)で行い、化学式(5)で表わされる目的生成物を326.4 mg (64 %)で得た。
【0023】
当該目的生成物のスペクトル等を以下に示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.08 (s, 9H), 1.10-1.41 (m, 42H), 1.43-1.49 (m, 2H), 1.75-1.85 (m, 4H), 1.85-1.94 (m, 2H), 2.27-2.42 (m, 2H), 2.80-2.92 (m, 2H), 3.30-3.43 (m 2H), 3.43-3.60 (m, 2H), 4.05-4.18 (m, 4H), 7.13 (s, 4H), 7.42 (s, 2H), 12.10-12.31 (br, 1H); MS (ESI, positive) m/z 926.5 [M+H]+
【0024】
(実施例6)
化学式(6)で与えられる目的生成物2,6-Bis[(4S,5S)-4,5-diphenyl-1-(4-methylbenzenesulfonyl)imidazolin-2-yl]-phenolを化学式(12)の合成法により、次のようにして合成した。
2,6-Dimethylphenolより既知反応にて、2、6位をカルボン酸にした。ナスフラスコに、前記カルボン酸(182.0 mg, 1.0 mmol)と、既知反応にてp−トシル化させた(1S,2S)−1,2−ジアミノシクロヘキサン(733.0 mg, 2.0 mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(405.0 mg, 2.0 mmol)をジメチルホルムアミド 18.0 mLに溶かした後、0 ℃に冷却した。ここへ、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(383.4 mg, 2.0 mmol)をゆっくりと加え、反応温度を室温まで昇温した後、72時間撹拌した。反応溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、酢酸エチルにて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧下で留去し、粗生成物を得た。ナスフラスコに、トリフェニルホスフィンオキシド(667.8 mg, 2.4 mmol)を塩化メチレン 7.5 mL溶かした後、0 ℃に冷却した。ここへ、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(677.1 mg, 2.4 mmol)をゆっくりと滴下した後、反応温度を室温まで昇温し、1 時間撹拌した。その後、反応溶液を0 ℃に冷却し、前記粗生成物のジクロロメタン溶液 2.0 mLをゆっくりと滴下し、反応温度0 ℃にて、30 分撹拌した後、室温にて6時間撹拌した。反応溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、ジクロロメタンで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧下で留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (Hexane:AcOEt = 50:50)で行い、化学式(6)で表わされる目的生成物を105.0 mg (12 %)で得た。
【0025】
当該目的生成物のスペクトル等を以下に示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 2.37 (s, 6H), 4.99 (d, J = 4.5 Hz, 2H), 5.10 (d, J = 3.9 Hz, 2H), 6.71 (d, J = 7.2 Hz, 4H), 7.12-7.25 (m, 11H), 7.36-7.50 (m, 14H), 8.10 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 11.85-12.21 (br, 1H); MS (ESI, positive) m/z 843.3 [M+H]+, 865.2 [M+Na]+
【0026】
(実施例7)
化学式(7)で与えられる目的生成物2,6-Bis[(4S,5S)-4,5-tetramethylene-1-(4-methylbenzenesulfonyl)imidazolin-2-yl]-phenolを化学式(12)の合成法により、次のようにして合成した。
2,6-Dimethylphenolより既知反応にて、2、6位をカルボン酸にした。ナスフラスコに、前記カルボン酸(91.1 mg, 0.5 mmol)と、既知反応にてp−トシル化させた(1S,2S)−1,2−ジアミノシクロヘキサン(259.2 mg, 1.1 mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(270.2 mg, 2.0 mmol)をジメチルホルムアミド 8.0 mLに溶かした後、0 ℃に冷却した。ここへ、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(394.2 mg, 2.0 mmol)をゆっくりと加え、反応温度を室温まで昇温した後、72時間撹拌した。反応溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、酢酸エチルにて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧下で留去し、粗生成物を得た。ナスフラスコに、トリフェニルホスフィンオキシド(556.6 mg, 2.0 mmol)を塩化メチレン 7.5 mL溶かした後、0 ℃に冷却した。ここへ、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(564.3 mg, 2.0 mmol)をゆっくりと滴下した後、反応温度を室温まで昇温し、1 時間撹拌した。その後、反応溶液を0 ℃に冷却し、前記粗生成物のジクロロメタン溶液 2.0 mLをゆっくりと滴下し、反応温度0 ℃にて、30 分撹拌した後、室温にて7時間撹拌した。反応溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、ジクロロメタンで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧下で留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (Toluene:AcOEt = 70:30)で行い、化学式(7)で表わされる目的生成物を194.0 mg (60 %)で得た。
【0027】
当該目的生成物のスペクトル等を以下に示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.18-1.44 (m, 6H), 1.71-1.97 (m, 6H), 2.20-2.35 (m, 2H), 2.40 (s, 6H), 2.54-2.70 (m, 2H), 3.12-3.31 (m, 4H), 6.92 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.27 (d, J = 7.8 Hz, 4H), 7.52 (d, J = 8.1 Hz, 4H), 7.63 (d, J = 8.1 Hz, 2H) 10.35-11.61 (br, 1H); MS (ESI, positive) m/z 647.2 [M+H]+
【0028】
(実施例8)
化学式(8)で与えられる目的生成物2,6-Bis[(4S,5S)-4,5-tetramethylene-1-(2,4,6-trimethylbenzenesulfonyl)imidazolin-2-yl]-phenolを化学式(12)の合成法により、次のようにして合成した。
2,6-Dimethylphenolより既知反応にて、2、6位をカルボン酸にした。ナスフラスコに、前記カルボン酸(136.6 mg, 0.75 mmol)と、既知反応にてp−トシル化させた(1S,2S)−1,2−ジアミノシクロヘキサン(444.6 mg, 1.5 mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(304.0 mg, 2.25 mmol)をジメチルホルムアミド 12.5 mLに溶かした後、0 ℃に冷却した。ここへ、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(431.3 mg, 2.25 mmol)をゆっくりと加え、反応温度を室温まで昇温した後、48時間撹拌した。反応溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、酢酸エチルにて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧下で留去し、粗生成物を得た。ナスフラスコに、トリフェニルホスフィンオキシド(626.1 mg, 2.25 mmol)を塩化メチレン 10 mL溶かした後、0 ℃に冷却した。ここへ、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(634.8 mg, 2.25 mmol)をゆっくりと滴下した後、反応温度を室温まで昇温し、1 時間撹拌した。その後、反応溶液を0 ℃に冷却し、前記粗生成物のジクロロメタン溶液 3.0 mLをゆっくりと滴下し、反応温度0 ℃にて、30 分撹拌した後、室温にて3時間撹拌した。反応溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、ジクロロメタンで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧下で留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (Hexane:AcOEt = 70:30)で行い、化学式(8)で表わされる目的生成物を195.4 mg (37 %)で得た。
【0029】
当該目的生成物のスペクトル等を以下に示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.20-1.73 (m, 8H), 1.71-1.97 (m, 4H), 2.17-2.57 (m, 22H), 3.36-3.49 (m, 2H), 3.49-3.64 (m, 2H), 6.31 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 6.82 (s, 4H), 7.05 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 11.57-11.91 (br, 1H); MS (ESI, positive) m/z 703.3 [M+H]+
【0030】
(実施例9)
化学式(9)で与えられる目的生成物2,6-Bis[(4S,5S)-4,5-tetramethylene-1-(4-methoxybenzenesulfonyl)imidazolin-2-yl]-phenolを化学式(12)の合成法により、次のようにして合成した。
2,6-Dimethylphenolより既知反応にて、2、6位をカルボン酸にした。ナスフラスコに、前記カルボン酸(65.6 mg, 0.36 mmol)と、既知反応にてp−トシル化させた(1S,2S)−1,2−ジアミノシクロヘキサン(207.4 mg, 0.73 mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(160.8 mg, 1.19 mmol)をジメチルホルムアミド 8.0 mLに溶かした後、0 ℃に冷却した。ここへ、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(228.1 mg, 1.19 mmol)をゆっくりと加え、反応温度を室温まで昇温した後、96時間撹拌した。反応溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、酢酸エチルにて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧下で留去し、粗生成物を得た。ナスフラスコに、トリフェニルホスフィンオキシド(289.4 mg, 1.04 mmol)を塩化メチレン 3.0 mL溶かした後、0 ℃に冷却した。ここへ、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(293.4 mg, 1.04 mmol)をゆっくりと滴下した後、反応温度を室温まで昇温し、1 時間撹拌した。その後、反応溶液を0 ℃に冷却し、前記粗生成物のジクロロメタン溶液 3.0 mLをゆっくりと滴下し、反応温度0 ℃にて、30 分撹拌した後、室温にて4時間撹拌した。反応溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、ジクロロメタンで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧下で留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (Hexane:AcOEt = 50:50)で行い、化学式(9)で表わされる目的生成物を92.9 mg (38 %)で得た。
【0031】
当該目的生成物のスペクトル等を以下に示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.18-1.48 (m, 6H), 1.70-1.99 (m, 6H), 2.26-2.39 (m, 2H), 2.55-2.70 (m, 2H), 3.17-3.35 (m, 4H), 3.82 (s, 6H), 6.85-6.97 (m, 4H), 7.18-7.26 (m, 1H), 7.54 (d, J = 8.6 Hz, 4H), 7.64 (d, J = 7.5 Hz, 2H) 10.20-11.71 (br, 1H)
MS (ESI, positive) m/z 679.2 [M+H]+
【0032】
(第2実施形態)2H−アジリンへの不斉ヒドロホスホニル化反応
次化学式(10)は本発明の反応の概要である。この化学式(10)のような種々の2H−アジリン類にジエチル亜鉛と不斉触媒存在下で亜リン酸ジフェニルを反応させると、高エナンチオ選択的に光学活性なアジリジンを与える。化学式(10)中、Rは、アリール基またはアルキル基である。
用いる不斉触媒は、第1実施形態に記述したメシチレンスルホニル基を導入したイミダゾリン−フェノール型触媒が最も良い。
【0033】
(参考例1)
本発明の原料として用いる3-フェニル-2H-アジリンは、次の化学式(13)にして得られる。
【化13】
【0034】
1-(アジドエテニル)ベンゼン(726.0 mg , 5.0 mmol)、をトルエン 50.0 mLに溶かし、150 °Cに加熱し、20分間攪拌後、溶媒を減圧下で留去し、粗生成物を得た。精製はシリカゲルカラムクロマトグラフィー (Hexane:AcOEt = 90:10)で行い、目的生成物を439 mg (75%)で得た。
得られた3-フェニル-2H-アジリンのスペクトル等は次のとおりである。
1H NMR (CDCl3) δ 1.80 (s, 2H), 7.50-7.67 (m, 3H), 7.85-7.99 (m, 2H)
【0035】
(実施例1及び2の触媒を用いた場合)
乾燥させたフラスコにモレキュラーシーブ 4A(50 mg)、光学活性イミダゾリン-フェノール型触媒(9.1 mg, 0.012 mmol)、を1,2-ジクロロエタン0.50 mLに溶解させ、ジエチル亜鉛(1.0 M トルエン溶液)(10.0 μL, 0.010 mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。その後、3-フェニル-2H-アジリン(11.7 mg, 0.100 mmol)、亜リン酸ジフェニル(25.0 μL,0.13 mmol)を加えて室温で4時間反応させた。反応はTLCにて確認後、セライト・シリカパッドを用いて濾過を行い、減圧下で溶媒を留去し、粗生成物を得た。精製はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Toluene:AcOEt = 70:30)で行い、化学式(14)で表わされる生成物の(R)-ジフェニル-2-フェニル-アジリジン-2-イル-ホスホネートを 89%の収率で得た。
【化14】
【0036】
得られた(R)ジフェニル-2-フェニル-アジリジン-2-イル-ホスホネートのスペクトル等は次のとおりである。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.69-1.94 (br, 1H), 1.94-2.16 (m, 1H), 2.74 (d, J = 10.2 Hz, 1H), 7.02 (d, J= 7.2 Hz, 2H), 7.12-7.41 (m, 11H), 7.64 (d, J= 7.5 Hz, 2H); HPLC (CHIRALPAK(R) ID, hexane/i-PrOH=90:10, 1.0 mL/min, 40 °C) tf 20.4 (fast), tS 23.9 (slow) min.
【0037】
(実施例3−16の触媒を用いた場合)
下記、化学式(15-1)乃至化学式(15−7)で示す3-フェニル-2H-アジリンへ種々の不斉触媒を用いた実施例の結果を表1に示す。
ここで、化学式(15−1)、(15−2)、(15−3)は比較例であり、化学式(15−4)、化学式(15−5)、(15−6)、(15−7)は本発明のイミダゾリン-フェノール型触媒である。
【化15】

【表1】

[a]CH2ClCH2Cl (1.0 mL) was used. [b] The reaction was carried out at -25 °C.
【0038】
表1より、触媒はメシチレンスルホニル基を有したビスイミダゾリン-フェノール型触媒3jが最もよい結果を示し、過去に合成された触媒3a-3cに対して高い不斉触媒機能を示した。イミダゾリンフェノール型触媒3e-3kにおいて、触媒3eを除くビスイミダゾリン-フェノール型触媒3f-3kを用いた時の方がモノイミダゾリン-フェノール型触媒(3d, 3l)よりも高い光学純度の生成物が得られる。また、反応温度を下げると生成物の光学純度が高くなりさらに、反応溶液の濃度を低くすると、生成物の光学純度が高くなる。
【0039】
化学式(16)において、3-フェニル-2H-アジリンの代わりに、他の2H-アジリン類に対する、亜リン酸ジフェニルの不斉求核付加反応を示す。ここで、下表に示す種々2H-アジリンは参考例1の合成法に従い合成を行った。
【化16】

【表2】

[a] CH2ClCH2Cl (0.5 mL) was used.
【0040】
以下、化学式(16)の反応により生成した化合物4b-4pの説明をする。
化合物4b(化学式17参照)のスペクトルデータ等(実施例18)
【化17】
【0041】
無色油
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Toluene: AcoEt = 70 : 30)
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.63-1.89 (br, 1H), 1.90-2.08 (m, 1H), 2.37 (s, 3H), 2.72 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 7.04 (d, J = 7.0 Hz, 2H), 7.08-7.36 (m, 10H), 7.52 (d, J = 7.0 Hz, 2H); HPLC (CHIRALPAK(R) ID, hexane/i-PrOH=70:30, 1.0 mL/min, 40 °C) tf9.3 (fast), tS 10.2 (slow) min.
【0042】
化合物4c(化学式18参照)のスペクトルデータ等(実施例19)
【化18】
【0043】
無色油
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Toluene: AcoEt = 70 : 30)
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.72-1.91 (br, 1H), 1.91-2.10 (m, 1H), 2.35 (s, 3H), 2.72 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 7.02 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 7.03-7.21 (m, 5H), 7.03-7.38 (m, 5H), 7.38-7.52 (m, 2H); HPLC (CHIRALPAK(R) ID, hexane/i-PrOH=70:30, 1.0 mL/min, 40 °C) tf 8.3 (fast), tS 9.1 (slow) min.
【0044】
化合物4d(化学式19参照)のスペクトルデータ等(実施例20)
【化19】
【0045】
黄色油
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Toluene: AcoEt = 70 : 30)
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.65-1.88 (br, 1H), 1.88-2.07 (m, 1H), 2.32 (s, 6H), 2.71 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 6.97 (s, 1H), 7.04 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.09-7.23 (m, 6H), 7.09-7.40 (m, 4H); HPLC (CHIRALPAK(R) ID, hexane/i-PrOH=90:10, 1.0 mL/min, 40 °C) tf 16.1 (fast), tS 17.5 (slow) min.
【0046】
化合物4e(化学式20参照)のスペクトルデータ等(実施例21)
【化20】
【0047】
黄色油
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Toluene: AcoEt = 70 : 30)
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.69-1.92 (br, 1H), 1.92-2.19 (m, 1H), 2.78 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 7.04 (d, J = 6.9 Hz, 2H), 7.07-7.22 (m, 5H), 7.22-7.40 (m, 5H), 7.40-7.47 (m, 2H), 7.47-7.70 (m, 4H), 7.85 (s, 1H); HPLC (CHIRALPAK(R) ID, hexane/i-PrOH=90:10, 1.0 mL/min, 40 °C) tf20.7 (fast), tS 22.3 (slow) min.
【0048】
化合物4f(化学式21参照)のスペクトルデータ等(実施例22)
【化21】
【0049】
黄色油
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Toluene: AcoEt = 70 : 30)
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.64-1.86 (br, 1H), 1.86-2.12 (m, 1H), 2.71 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 3.82 (s, 3H), 6.90 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.04 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.07-7.22 (m, 4H), 7.22-7.37 (m, 4H), 7.56 (d, J = 1.8 Hz, 2H); HPLC (CHIRALPAK(R) ID, hexane/i-PrOH=90:10, 1.0 mL/min, 40 °C) tf 13.7 (fast), tS 15.0 (slow) min.
【0050】
化合物4g(化学式22参照)のスペクトルデータ等(実施例23)
【化22】
【0051】
黄色油
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Toluene: AcoEt = 70 : 30)
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.63-1.90 (br, 1H), 1.90-2.15 (m, 1H), 2.73 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 3.79 (s, 3H), 6.87-6.90 (m, 1H), 7.04 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.08-7.22 (m, 5H), 7.22-7.41 (m, 6H); HPLC (CHIRALPAK(R)ID, hexane/i-PrOH=70:30, 1.0 mL/min, 40 °C) tf10.0 (fast), tS 12.1 (slow) min.
【0052】
化合物4h(化学式23参照)のスペクトルデータ等(実施例24)
【化23】
【0053】
黄色油
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Toluene: AcoEt = 70 : 30)
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.85-2.12 (br, 1H), 2.31 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 2.82-3.23 (br, 1H), 6.80-7.06 (m, 4H), 7.06-7.14 (m, 2H), 7.14-7.31 (m, 4H), 7.40-7.57 (m, 3H), 7.65-7.81 (m, 1H), 7.81-7.95 (m, 2H), 8.30-8.66 (m, 1H); HPLC (CHIRALPAK(R) ID, hexane/i-PrOH=90:10, 1.0 mL/min, 40 °C) tf 32.1 (fast), tS 34.9 (slow) min.
【0054】
化合物4i(化学式24参照)のスペクトルデータ等(実施例25)
【化24】
【0055】
黄色油
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Toluene: AcoEt = 70 : 30)
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.77-2.01 (br, 1H), 2.01-2.21 (m, 1H), 2.82 (d, J = 10.2 Hz, 1H), 6.92-7.08 (m, 2H), 7.08-7.40 (m, 8H), 7.42-7.53 (m, 2H), 7.69-7.90 (m, 4H), 8.07 (s, 1H); HPLC (CHIRALPAK(R) ID, hexane/i-PrOH=90:10, 1.0 mL/min, 40 °C) tf25.4 (fast), tS 27.1 (slow) min.
【0056】
化合物4j(化学式25参照)のスペクトルデータ等(実施例26)
【化25】
【0057】
黄色油
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Toluene: AcoEt = 70 : 30)
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.75-2.14 (m, 2H), 2.72 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.86-7.12 (m, 3H), 7.12-7.56 (m, 10H); HPLC (CHIRALPAK(R) ID, hexane/i-PrOH=90:10, 1.0 mL/min, 40 °C) tf21.1 (fast), tS 26.7 (slow) min.
【0058】
化合物4k(化学式26参照)のスペクトルデータ等(実施例27)
【化26】
【0059】
黄色油
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Toluene: AcoEt = 70 : 30)
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.56-1.83 (m, 1H), 1.92-2.13 (m, 1H), 2.67 (d, J = 9.9 Hz, 1H), 7.00-7.13 (m, 2H), 7.13-7.24 (m, 4H), 7.24-7.40 (m, 6H), 7.48 (s, 1H); HPLC (CHIRALPAK(R)ID, hexane/i-PrOH=90:10, 1.0 mL/min, 40 °C) tf22.9 (fast), tS 27.2 (slow) min.
【0060】
化合物4l(化学式27参照)のスペクトルデータ等(実施例28)
【化27】
【0061】
無色油
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Toluene: AcoEt = 70 : 30)
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.72-1.87 (br, 1H), 1.87-2.10 (m, 1H), 2.75 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 7.02 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.07-7.22 (m, 4H), 7.22-7.42 (m, 4H), 7.43-7.59 (m, 4H); HPLC (CHIRALPAK(R) ID, hexane/i-PrOH=90:10, 1.0 mL/min, 40 °C) tf16.2 (fast), tS 18.1 (slow) min.
【0062】
化合物4m(化学式28参照)のスペクトルデータ等(実施例29)
【化28】
【0063】
無色油
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Toluene: AcoEt = 70 : 30)
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.85-2.08 (br, 1H), 2.08-2.30 (m, 1H), 2.86 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 7.03-7.24 (m, 8H), 7.24-7.51 (m, 5H), 7.63 (dd, J = 6.8, 6.8 Hz, 1H); HPLC (CHIRALPAK(R) ID, hexane/i-PrOH=90:10, 1.0 mL/min, 40 °C) tf 22.6 (fast), tS 27.0 (slow) min.
【0064】
化合物4n(化学式29参照)のスペクトルデータ等(実施例30)
【化29】
【0065】
無色油
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Toluene: AcoEt = 70 : 30)
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.65-1.91 (br, 1H), 1.91-2.14 (m, 1H), 2.75 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 7.02-7.10 (m, 3H), 7.10-7.41 (m, 10H), 7.46 (d, J = 7.2 HZ, 1H); HPLC (CHIRALPAK(R) ID, hexane/i-PrOH=80:20, 1.0 mL/min, 40 °C) tf9.1 (fast), tS 9.8 (slow) min.
【0066】
化合物4o(化学式30参照)のスペクトルデータ等(実施例31)
【化30】
【0067】
無色油
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Toluene: AcoEt = 70 : 30)
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.60-1.92 (br, 1H), 1.92-2.16 (m, 1H), 2.75 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 6.85-7.22 (m, 8H), 7.22-7.46 (m, 4H), 7.61 (dd, J = 5.9 Hz, 2H); HPLC (CHIRALPAK(R) ID, hexane/i-PrOH=90:10, 1.0 mL/min, 40 °C) tf16.4 (fast), tS 21.1 (slow) min.
【0068】
化合物4p(化学式31参照)のスペクトルデータ等(実施例32)
【化31】
【0069】
無色油
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Toluene: AcoEt = 70 : 30)
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.43-1.73 (br, 1H), 1.73-2.01 (m, 1H), 2.57 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 6.50 (dd, J = 15.9, 6.9 Hz, 1H), 6.88 (dd, J = 15.9, 2.4 Hz, 1H), 7.05-7.57 (m, 15H); HPLC (CHIRALPAK(R) ID, hexane/i-PrOH=70:30, 1.0 mL/min, 40 °C) tf 8.9 (fast), tS 9.6 (slow) min.