特許第6802731号(P6802731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6802731
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】送信装置及び受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/236 20110101AFI20201207BHJP
   H04N 21/434 20110101ALI20201207BHJP
   H04L 7/04 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   H04N21/236
   H04N21/434
   H04L7/04 100
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-38854(P2017-38854)
(22)【出願日】2017年3月2日
(65)【公開番号】特開2018-148288(P2018-148288A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100143568
【弁理士】
【氏名又は名称】英 貢
(72)【発明者】
【氏名】袴田 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】倉掛 卓也
(72)【発明者】
【氏名】楠 知也
【審査官】 長谷川 素直
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−163897(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/146378(WO,A1)
【文献】 特開2002−374220(JP,A)
【文献】 特開2004−266599(JP,A)
【文献】 特開2017−034339(JP,A)
【文献】 特開2008−263592(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0048560(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第2003−0049708(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00−21/858
H04L 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースバンド伝送方式により、パッシブネットワークの伝送路を経由させて複数種類のストリームを時分割多重して送信する送信装置であって、
当該送信装置内のクロックに基づいて、所定の周期で送信時刻を示す送信基準時刻情報を生成する送信基準時刻情報生成手段と、
前記送信基準時刻情報を前記ストリームを構成する伝送フレームに格納し、当該伝送フレームに格納された前記送信基準時刻情報を基準時刻パケットとして生成する基準時刻パケット生成手段と、
前記基準時刻パケットの生成と同時に、前記複数種類のストリームの各々の伝送フレームに前記送信基準時刻情報を付与する送信基準時刻情報付加手段と、
前記送信基準時刻情報を付与した複数種類のストリームの各々の伝送フレームと、前記基準時刻パケットとを巡回的並列送信制御法に基づき時分割多重した伝送信号を生成し、生成した当該伝送信号を制御する時分割多重・送信制御手段と、
前記パッシブネットワークの伝送路で伝送するための符号化処理を前記伝送信号に施し、当該伝送信号を送信する伝送路符号化手段と、
を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記時分割多重・送信制御手段は、巡回的並列送信制御法に基づき、前記送信基準時刻情報を付与した複数種類のストリームの各々における伝送フレームよりも前記基準時刻パケットを最優先で時分割多重した伝送信号を生成することを特徴とする、請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
ベースバンド伝送方式により、パッシブネットワークの伝送路を経由させて複数種類のストリームを時分割多重して受信する受信装置であって、
請求項1又は2に記載の送信装置から送信される前記符号化処理が施された伝送信号を受信して所定の復号処理を施す伝送路符号化復号手段と、
前記基準時刻パケット内の前記送信基準時刻情報を基に当該受信装置の時計を設定する時計設定手段と、
当該時計に設定された時刻に一定値を加算した遅延補正時刻情報を生成する遅延補正時刻生成手段と、
前記送信基準時刻情報を持つ複数種類のストリームのうち、選局した1個以上のストリームを分離する分離手段と、
前記遅延補正時刻情報を基に、前記選局した1個以上のストリームを外部に出力するタイミングを調整し、前記複数種類のストリームの各々における伝送フレームを時分割多重することで生じる所定の伝送遅延ゆらぎを補正する伝送遅延ゆらぎ補正手段と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項4】
前記遅延補正時刻生成手段は、予め想定した所定の最大遅延ゆらぎ量以上の値を前記一定値とし当該時計設定した時刻に加算し、前記遅延補正時刻を生成することを特徴とする、請求項3に記載の受信装置。
【請求項5】
前記伝送遅延ゆらぎ補正手段は、前記選局した1個以上のストリームから前記送信基準時刻情報を除去して外部出力する送信基準時刻情報除去手段を備えることを特徴とする、請求項3又は4に記載の受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信側において映像信号、音声信号、又はデータ信号を載せたパケット列で構成される複数種類のストリームを時分割多重してパッシブネットワークの伝送路経由で伝送する送信装置及び受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のデジタル放送で採用されているトランスポートストリームは、MPEG−2 TS(トランスポートストリーム)のパケットのような同期バイト0x47で始まる固定長(188バイト)のパケット列で、或る情報のまとまりをなすものである。
【0003】
MPEG−2 TS以外のストリームとしては、可変長パケットのパケット列で構成されるMMT(MPEG Media Transport)や、TLV(Type Length Value)がある。MPEG−2 TSのパケット(以下、「TSパケット」と称する)、MMTのパケット(以下、「MMTパケット」と称する)、及びTLVのパケット(以下、「TLVパケット」と称する)は、デジタル放送における映像符号化、一般社団法人 電波産業会(ARIB)の標準規格(例えばARIB STD−B32)で規定されている。
【0004】
一方、ケーブルテレビや通信回線上で、放送の再放送を行う方法には、放送と同様に無線周波数(RF)信号で伝送する方法と、一般社団法人 IPTVフォーラム(IPTV−F)で規定するIP(Internet Protocol)マルチキャスト放送がある。RF信号で伝送する方法については、一般社団法人 日本CATV技術協会の標準規格(例えばJCTEA STD−002−5.0)で規定されている。また、IPマルチキャスト放送については、IPTV−Fの運用規定(例えばIPTVFJ STD−0005)で規定している。
【0005】
IPマルチキャスト放送では、受信側から上り信号で所望の伝送ストリームを要求し、視聴するストリームのみを、通信の下り信号に混在して伝送する。一方で、放送やケーブルテレビと同様に、全ての放送ストリームを時分割多重して家庭まで伝送する放送型ベースバンド伝送方式が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1に開示される放送型ベースバンド伝送方式では、放送用に専用の波長を、通信用波長とは別に新たに割り当てるものとなっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】袴田ほか,“10Gイーサネット(登録商標)を用いるFTTHデジタル放送一括配信装置の試作”, 電子情報通信学会技術研究報告 CS,通信方式, vol.114, no.119, CS2014-38, 2014, p.127-130,2014年6月26日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に開示される放送型ベースバンド伝送方式では、複数のストリームを時分割多重してパッシブネットワークの伝送路経由で伝送し、受信装置で所望のストリームを選局・出力することができる。パッシブネットワークの伝送路では、既存のRF信号と同じように、送受間(局間網・アクセス網)でスイッチを介在させないため、予期しない伝送遅延は本来生じにくいものとなっている。
【0008】
例えば、図7に示すように、送信装置100は複数のストリームを時分割多重してパッシブネットワークの伝送路経由で受信装置200に伝送することができる。図7では、送信装置100が、MMTのストリームと、MPEG−2 TSのストリームを受信装置200に向けて伝送する場合を示している。
【0009】
図7に示す送信装置100は、送信キュー101,102と、時分割多重化部103とを備える。この送信装置100は、MMTのストリームについてはそのMMTパケットをイーサネット(登録商標)フレーム化して送信キュー101に格納し、MPEG−2 TSのストリームについてはそのTSパケットをイーサネット(登録商標)フレーム化して送信キュー102に格納する。
【0010】
送信キュー101及び送信キュー102に格納されたイーサネット(登録商標)フレームの伝送フレームは、巡回的並列送信制御(ラウンドロビン)法に基づき、順番に時分割多重化部103に送出される。
【0011】
時分割多重化部103は、送信キュー101及び送信キュー102から順番に送出された伝送フレームを時分割多重してパッシブネットワークの伝送路経由で受信装置200に伝送する。
【0012】
一方、受信装置200は、分離・選局部210を備え、例えばMMTのストリームを選局すると、分離・選局部210はMMTパケットをイーサネット(登録商標)フレーム化した伝送フレームを分離抽出して出力する。これにより受信装置200は、図示しない後段の処理で、選局したMMTのストリームを復元することができる。
【0013】
しかしながら、この放送型ベースバンド伝送方式では、図7に示すように、送信装置100で時分割多重する際に、伝送フレームの伝送遅延ゆらぎが生じ、受信装置200側から出力するストリームに伝送遅延ゆらぎが生じる。送信装置100から伝送する伝送ストリーム数が増大するほど、受信装置200から出力されるストリームの伝送遅延ゆらぎは大きくなる傾向がある。
【0014】
伝送遅延ゆらぎの増大は、伝送フレーム損失につながるため、受信装置200側では伝送遅延ゆらぎを吸収するのに十分なサイズのバッファサイズを設ける必要があり、コストの増大につながるという問題や、受信装置200の後段の処理(例えば再生処理)で、選局したストリームに関する映像再生等の処理負担の増大につながるという問題が生じる。
【0015】
即ち、従来技法では、MMTパケットやTLVパケットなどの可変長パケット列で構成されるストリームを多重伝送する場合には、そのストリーム間で伝送遅延ゆらぎ量の公平性(即ち、伝送サービスの公平性)を確保することができなくなるため、伝送遅延ゆらぎを抑制する技法が望まれる。
【0016】
本発明は、上述の問題に鑑みて、ストリーム間での伝送遅延ゆらぎ量の公平性を確保して、複数種類のストリームを時分割多重してパッシブネットワークの伝送路経由で伝送する送信装置及び受信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の送信装置は、自装置内のクロックを基に定期的に生成した送信基準時刻情報を格納した基準時刻パケットを生成すると同時に、伝送する複数種類のストリームの各々における伝送フレームに当該送信基準時刻情報を付与して、基準時刻パケットと共に時分割多重し、パッシブネットワークの伝送路経由で受信装置に向けて伝送する。
【0018】
また、本発明の受信装置は、本発明の送信装置から得られる基準時刻パケット内の送信基準時刻情報を基に送受間の同期を確保して時計設定し、選局したストリームを出力するタイミングを調整することにより伝送遅延ゆらぎを補正する。
【0019】
即ち、本発明の送信装置は、ベースバンド伝送方式により、パッシブネットワークの伝送路を経由させて複数種類のストリームを時分割多重して送信する送信装置であって、当該送信装置内のクロックに基づいて、所定の周期で送信時刻を示す送信基準時刻情報を生成する送信基準時刻情報生成手段と、前記送信基準時刻情報を前記ストリームを構成する伝送フレームに格納し、当該伝送フレームに格納された前記送信基準時刻情報を基準時刻パケットとして生成する基準時刻パケット生成手段と、前記基準時刻パケットの生成と同時に、前記複数種類のストリームの各々の伝送フレームに前記送信基準時刻情報を付与する送信基準時刻情報付加手段と、前記送信基準時刻情報を付与した複数種類のストリームの各々の伝送フレームと、前記基準時刻パケットとを巡回的並列送信制御法に基づき時分割多重した伝送信号を生成し、生成した当該伝送信号を制御する時分割多重・送信制御手段と、前記パッシブネットワークの伝送路で伝送するための符号化処理を前記伝送信号に施し、当該伝送信号を送信する伝送路符号化手段と、を備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の送信装置において、前記時分割多重・送信制御手段は、巡回的並列送信制御法に基づき、前記送信基準時刻情報を付与した複数種類のストリームの各々における伝送フレームよりも前記基準時刻パケットを最優先で時分割多重した伝送信号を生成することを特徴とする。
【0021】
更に、本発明の受信装置は、ベースバンド伝送方式により、パッシブネットワークの伝送路を経由させて複数種類のストリームを時分割多重して受信する受信装置であって、本発明の送信装置から送信される前記符号化処理が施された伝送信号を受信して所定の復号処理を施す伝送路符号化復号手段と、前記基準時刻パケット内の前記送信基準時刻情報を基に当該受信装置の時計を設定する時計設定手段と、当該時計に設定された時刻に一定値を加算した遅延補正時刻情報を生成する遅延補正時刻生成手段と、前記送信基準時刻情報を持つ複数種類のストリームのうち、選局した1個以上のストリームを分離する分離手段と、前記遅延補正時刻情報を基に、前記選局した1個以上のストリームを外部に出力するタイミングを調整し、前記複数種類のストリームの各々における伝送フレームを時分割多重することで生じる所定の伝送遅延ゆらぎを補正する伝送遅延ゆらぎ補正手段と、を備えることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の受信装置において、前記遅延補正時刻生成手段は、予め想定した所定の最大遅延ゆらぎ量以上の値を前記一定値とし当該時計設定した時刻に加算して、前記遅延補正時刻を生成することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の受信装置において、前記伝送遅延ゆらぎ補正手段は、前記選局した1個以上のストリームから前記送信基準時刻情報を除去して外部出力する送信基準時刻情報除去手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、放送型ベースバンド伝送方式にて伝送する複数種類のストリームについて、受信装置から出力するストリームの伝送遅延ゆらぎを補正し、ストリーム間での伝送遅延ゆらぎ量の公平性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による一実施形態の送信装置及び受信装置から構成される放送型ベースバンド伝送方式の伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明による一実施形態の送信装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】本発明による一実施形態の受信装置の概略構成を示すブロック図である。
図4】本発明による一実施形態の送信装置の一実施例の動作を示す図である。
図5】本発明による一実施形態の受信装置の一実施例の動作を示す図である。
図6】本発明による一実施形態の送信装置及び受信装置から構成される放送型ベースバンド伝送方式の伝送システムにおける最大遅延ゆらぎ量の計算値を示す図である。
図7】従来技術の放送型ベースバンド伝送方式の伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明による一実施形態の送信装置10及び受信装置20について説明する。
【0027】
(伝送システム)
まず、図1には、本発明による一実施形態の送信装置10及び受信装置20から構成される放送型ベースバンド伝送方式の伝送システムの概略構成を示している。図1に示す放送型ベースバンド伝送方式の伝送システムは、送信装置10から、複数種類(n種類)のストリームD1〜Dnを時分割多重してパッシブネットワークの伝送路経由で受信装置20に伝送し、受信装置20側で各ストリームD1〜Dnを分離するよう構成されている。図1に示す放送型ベースバンド伝送方式では、放送用に専用の波長を、通信用波長とは別に新たに割り当てている。また、送信装置10及び受信装置20は、既存のRF信号と同じように、限定するものではないがPON(Passive Optical Network)のような、パッシブネットワークの伝送路経由で複数種類のストリームD1〜Dnを時分割多重して伝送するため、送受間(局間網・アクセス網)でスイッチを介在させないものとなっている。
【0028】
(送信装置)
図2は、本発明による一実施形態の送信装置10の概略構成を示すブロック図である。送信装置10は、クロック源11と、送信基準時刻情報生成部12と、カプセル化部13と、基準時刻パケット生成部14と、巡回的並列送信制御部15と、時分割多重化部16と、伝送路符号化部17と、を備える。
【0029】
クロック源11は、送信装置10内のクロックを発生し、常時、送信基準時刻情報生成部12に出力する。
【0030】
送信基準時刻情報生成部12は、クロック源11からのクロックを入力してカウントするクロックカウンタを備え、クロック源11からのクロックを基に定期的に、送信側の時刻情報を生成し、この送信側の時刻情報を送信基準時刻情報として、カプセル化部13及び基準時刻パケット生成部14に出力する。
【0031】
カプセル化部13は、複数種類(n種類)のストリームD1〜Dnの各々に対し、それぞれ送信基準時刻情報付加部131‐1〜131‐nを備えている。
【0032】
送信基準時刻情報付加部131‐1〜131‐nの各々は、対応する複数種類(n種類)のストリームD1〜Dnの各々を入力し、パッシブネットワークの伝送路経由で伝送する所定長の伝送フレームにカプセル化し、送信基準時刻情報生成部12によって定期的に生成される送信基準時刻情報を入力次第、当該伝送フレーム内に付加して巡回的並列送信制御部15に出力する。
【0033】
ここで、当該伝送フレームに送信基準時刻情報を付加する方法として、例えばTSパケットであれば、この伝送フレームとして例えばイーサネット(登録商標)フレームにTSパケット群をカプセル化し、その先頭のTSパケットに送信基準時刻情報を付加したTTS(Time-stamped Transport Stream)パケットとする方法や、その伝送フレームのヘッダ情報内の空き領域に当該送信基準時刻情報を記述する方法などがある。MMTやTLVなどの他のストリームについても同様に構成することができる。即ち、当該伝送フレームに送信基準時刻情報を付加する方法は、送信装置10及び受信装置20間で既知であれば任意の方法とすることができる。
【0034】
基準時刻パケット生成部14は、送信基準時刻情報生成部12によって定期的に生成される送信基準時刻情報を入力次第、その送信基準時刻情報を格納した伝送フレームを基準時刻パケットとして生成し、巡回的並列送信制御部15に出力する。
【0035】
尚、カプセル化部13は、各ストリームを識別するためのID(例えば、ストリームID)と紐づけられたIPアドレスやVLANタグ等の選局識別情報をストリームD1〜Dn毎に割り当て各伝送フレームのヘッダに記述する。同様に、基準時刻パケット生成部14は、基準時刻パケットに対し固定の選局識別情報を割り当て、その伝送フレームのヘッダに記述する。
【0036】
巡回的並列送信制御部15は、複数種類(n種類)のストリームD1〜Dnの各々に対応する伝送フレームをカプセル化部13から入力して格納するそれぞれの送信キュー151‐1〜151‐nと、基準時刻パケットとして構成した伝送フレームを基準時刻パケット生成部14から入力して格納する送信キュー152とを備え、送信キュー151‐1〜151‐n及び送信キュー152に格納される各伝送フレームを、巡回的並列送信制御(ラウンドロビン)法に基づき、順番に時分割多重化部103に送出する。
【0037】
ここで、基準時刻パケットは一定周期ごとに生成されるが、巡回的並列送信制御部15は、当該送信基準時刻情報を付与した複数種類のストリームの各々における伝送フレームよりも当該基準時刻パケットを最優先で巡回的並列送信制御法に基づき時分割多重させるよう時分割多重化部16に送出する。このため、巡回的並列送信制御部15は、送信キュー152に基準時刻パケットとして構成した伝送フレームが格納(エンキュー)された否かを常に監視し、格納された時点で直ちに時分割多重化部16に出力するよう制御する。
【0038】
時分割多重化部16は、巡回的並列送信制御部15から入力される伝送フレームを時分割多重して伝送路符号化部17に出力する。上述したように、時分割多重化部16は、基準時刻パケットについては、複数種類のストリームの各々における伝送フレームよりも最優先で巡回的並列送信制御法に基づき多重して伝送路符号化部17に出力する。
【0039】
伝送路符号化部17は、時分割多重化部16から出力する時分割多重化した伝送信号に対し誤り訂正符号化処理などの伝送路符号化処理を施し、パッシブネットワークの伝送路経由で受信装置20に伝送する。この伝送路符号化処理として、例えばIEEEで規格化された10GE−PON符号化(IEEE 802.3av)とすることができる。
【0040】
(受信装置)
図3には、本発明による一実施形態の受信装置20の概略構成を示している。受信装置20は、伝送路符号化復号部21と、分離部22と、クロック再生部23と、基準時刻パケット抽出部24と、時計25と、遅延補正時刻生成部26と、遅延量設定部27と、伝送遅延ゆらぎ補正部28と、を備える。
【0041】
伝送路符号化復号部21は、送信装置10からの伝送信号を受信し、送信装置10における伝送路符号化部17の伝送路符号化処理に対応する復号処理を行い、分離部22に出力する。
【0042】
分離部22は、外部から設定されるストリーム選局信号に基づき、伝送路符号化復号部21による復号処理後の伝送信号から所望の選局したストリームを分離して伝送遅延ゆらぎ補正部28に出力するとともに、伝送路符号化復号部21による復号処理後の伝送信号に基準時刻パケットが含まれているときは、基準時刻パケット抽出部24によって当該基準時刻パケットが抽出される。
【0043】
ストリーム選局信号は、受信装置20の操作者が所望する各ストリームを識別する選局識別情報に基づいた信号である。
【0044】
尚、ストリーム選局信号は、送信装置10から伝送される複数種類(n種類)のストリームD1〜Dnのうちの1つ又は複数を選局でき、図3では、当該複数種類(n種類)のストリームD1〜Dnの全部を選局した例を示している。このため、受信装置20について、予め当該複数種類(n種類)のストリームD1〜Dnの全部を分離し伝送遅延ゆらぎ補正の対象として出力するよう構成するときは、必ずしもストリーム選局信号を分離部22に入力する構成とする必要はない。
【0045】
また、分離部22から出力される当該複数種類(n種類)のストリームD1〜Dnの各々の伝送フレームには送信基準時刻情報(例えば時刻A)が含まれているものがあり、このため分離部22からは、送信基準時刻情報(例えば時刻A)付きの複数種類(n種類)のストリームD1〜Dnが分離して出力される。
【0046】
クロック再生部23は、伝送路符号化復号部21からの出力信号からクロックを再生し、時計25に出力する。
【0047】
基準時刻パケット抽出部24は、分離部22に対し、伝送路符号化復号部21による復号処理後の伝送信号に基準時刻パケットが含まれているか否かを、固有に割り当てられている選局識別情報に基づいて常時監視し、基準時刻パケットが含まれているときは抽出して時計25に出力する。
【0048】
時計25は、クロック再生部23によって再生したクロックを入力してカウントするクロックカウンタを備え、これにより送信側と一致するクロック同期を行い、基準時刻パケット抽出部24から基準時刻パケットを入力次第、基準時刻パケットに含まれる送信基準時刻情報(例えば時刻A)を基に時刻設定し、出力制御部281を時刻同期させ、且つ当該時刻設定した送信基準時刻情報(例えば時刻A)の時刻を遅延補正時刻生成部26に通知する。
【0049】
遅延補正時刻生成部26は、送信基準時刻情報(例えば時刻A)の時刻に対し、遅延量設定部27から設定される一定値(予め想定した最大遅延ゆらぎ量以上の値)を加算した時刻を示す遅延補正時刻情報(例えば時刻B)を生成し、伝送遅延ゆらぎ補正部28に出力する。
【0050】
遅延量設定部27は、一定値(予め想定した最大遅延ゆらぎ量以上の値)を遅延補正時刻生成部26に設定する。
【0051】
伝送遅延ゆらぎ補正部28は、出力制御部281、及び出力バッファ282−1,282−nを備える。
【0052】
出力制御部281は、時計25によって時刻同期して動作し、遅延補正時刻生成部26から遅延補正時刻情報(例えば時刻B)を入力し、複数種類(n種類)のストリームD1〜Dnの各々に付加されている送信基準時刻情報を監視して、送信基準時刻情報(例えば時刻A)を持つ複数種類(n種類)のストリームD1〜Dnの各々の時刻が遅延補正時刻情報(例えば時刻B)になった時点で外部に出力するよう、複数種類(n種類)のストリームD1〜Dnの各々を一時保持するそれぞれの出力バッファ282−1,282−nの出力を制御する。
【0053】
出力バッファ282−1,282−nの各々は、複数種類(n種類)のストリームD1〜Dnの各々を一時保持するバッファであり、それぞれ送信基準時刻情報除去部282aを備える。送信基準時刻情報除去部282aは、ストリームに付加されている送信基準時刻情報(例えば時刻A)を除去して外部に出力させる機能部である。尚、分離部22にて、複数種類(n種類)のストリームD1〜Dnのうちの1つのみを選局する受信装置20の場合では、出力バッファ282−nを1つとすることができる。
【0054】
(実施例)
以下、より具体的に、図4乃至図6を参照して、本発明による一実施形態の送信装置10及び受信装置20について、それぞれ対応する一実施例の送信装置10a及び受信装置20aを基に、各動作を詳細に説明する。
【0055】
図4は、一実施例の送信装置10aの動作を示す図である。送信装置10aは、MPEG−2 TSのストリームとMMTのストリームを時分割多重して伝送するよう構成され、図2を参照して説明したように、クロック源11、送信基準時刻情報生成部12、カプセル化部13、基準時刻パケット生成部14、巡回的並列送信制御部15、時分割多重化部16、及び伝送路符号化部17を備えている。
【0056】
送信基準時刻情報生成部12は、送信装置10aのクロック源11からのクロックを基にクロックカウンタ12aによりカウントして送信基準時刻情報を一定周期で生成し、カプセル化部13及び基準時刻パケット生成部14に出力する。
【0057】
カプセル化部13は、MPEG−2 TSのストリームとMMTのストリームを伝送フレーム化(例えば、イーサネット(登録商標)フレームによるカプセル化)を行い、一定周期で生成された送信基準時刻情報を付加する。
【0058】
例えば、カプセル化部13は、MPEG−2 TSのストリームのTSパケット群をカプセル化した伝送フレームについて、一定周期で生成された送信基準時刻情報を入力次第、その入力時点に伝送する伝送フレーム内の先頭のTSパケットに付加して、MPEG−2 TTSパケット化する。MMT(もしくはTLVも同様)についても同様に、カプセル化部13は、1個のMMTパケットを伝送フレーム化(例えば、イーサネット(登録商標)フレームによるカプセル化)し、一定周期で生成された送信基準時刻情報を入力次第、その入力時点に伝送する伝送フレーム内の先頭に付加する。
【0059】
また、当該一定周期で生成された送信基準時刻情報は、基準時刻パケット生成部14によって生成される基準時刻パケットに格納される。
【0060】
MPEG−2 TS、MMT、及び基準時刻パケットを時分割多重化部16によって時分割多重するために、巡回的並列送信制御部15は、MPEG−2 TS、MMT、及び基準時刻パケットの各伝送フレームをそれぞれ格納する送信キュー151‐1,151‐2、及び送信キュー152に対し、巡回的並列送信制御(ラウンドロビン)法に基づき、順番に時分割多重化部103に送出する際に、送信キュー152に格納される基準時刻パケットを最優先にキューイング(デキュー)を行う。
【0061】
続いて、時分割多重化部16によって時分割多重化された各伝送フレームは、伝送路符号化部17によって伝送符号化処理が施され、その伝送信号がパッシブネットワークの伝送路経由で受信装置20に伝送される。
【0062】
図5は、一実施例の受信装置20aの動作を示す図である。受信装置20aは、MPEG−2 TSのストリームとMMTのストリームを時分割多重した伝送信号を受信して選局可能に分離し、所望のストリームの伝送遅延ゆらぎ補正を行って出力するよう構成され、図3を参照して説明したように、伝送路符号化復号部21、分離部22、クロック再生部23、基準時刻パケット抽出部24、時計25、遅延補正時刻生成部26、遅延量設定部27、及び伝送遅延ゆらぎ補正部28を備えている。
【0063】
伝送路符号化復号部21によって復号された伝送信号は、分離部22に入力される。
【0064】
分離部22は、外部から設定されるストリーム選局信号に基づき、伝送路符号化復号部21による復号処理後の伝送信号から所望の選局したストリーム(本例では、MPEG−2 TSのストリームとMMTのストリーム)を分離して伝送遅延ゆらぎ補正部28に出力する。
【0065】
ここで、伝送路符号化復号部21による復号処理後の伝送信号に基準時刻パケットが含まれているとき、基準時刻パケット抽出部24は、分離部22に対し当該基準時刻パケットを分離させて抽出し、時計25に出力する。
【0066】
時計25は、クロック再生部23によって再生したクロックを入力してカウントするクロックカウンタ23aにより送信側と一致するクロック同期を行う。
【0067】
そして、時計25は、基準時刻パケット抽出部24から基準時刻パケットを入力次第、基準時刻パケットに含まれる送信基準時刻情報(例えば時刻A)を基に時刻設定し、伝送遅延ゆらぎ補正部28内の出力制御部281を時刻同期させ、且つ当該時刻設定した送信基準時刻情報(例えば時刻A)の時刻を遅延補正時刻生成部26に通知する。
【0068】
遅延補正時刻生成部26は、送信基準時刻情報(例えば時刻A)の時刻に対し、遅延量設定部27から設定される一定値(予め想定した最大遅延ゆらぎ量以上の値)を加算した時刻を示す遅延補正時刻情報(例えば時刻B)を生成し、伝送遅延ゆらぎ補正部28に出力する。
【0069】
ここで、図6には、本実施形態の伝送システムにおける最大遅延ゆらぎ量の計算値(伝送フレームのフレーム長が1522バイトの場合)を示している。図6に示す最大遅延ゆらぎ量(μsec)は、式(1)によって算出される。
【0070】
【数1】
【0071】
式(1)は、10Gイーサネット(登録商標)を用いる伝送システムを想定し、ラウンドロビン法によりn個のストリームを多重した場合に、j番目のストリームの最大遅延ゆらぎ量を計算する式であり、Lはk番目のストリームの伝送フレームのフレーム長(バイト)を示す。また、LIFGは、或る伝送フレームから次の伝送フレームを送るまでの間隔を示すインターフレームのギャップ(IFG)長を示している。
【0072】
図6から分かるように、最大遅延ゆらぎ量(μsec)と伝送ストリーム数とは、ほぼ比例する関係にあり、本実施形態の伝送システムで伝送するストリーム数の最大を予め規定することで、遅延量設定部27が設定する図6に示す最大遅延ゆらぎ量以上の値を一定値として扱うことができる。
【0073】
伝送遅延ゆらぎ補正部28は、時計25によって時刻同期して動作し、遅延補正時刻生成部26から遅延補正時刻情報(例えば時刻B)を入力し、送信基準時刻情報(例えば時刻A)を持つ当該MPEG−2 TS及びMMTが分離部22から出力されてくるのを監視して、遅延補正時刻情報(例えば時刻B)になった時点で、ストリームに付加されている送信基準時刻情報(例えば時刻A)を除去して外部に出力する。
【0074】
以上のように、本発明に係る送信装置10及び受信装置20によれば、ストリーム間での伝送遅延ゆらぎ量の公平性を確保して、複数種類のストリームを時分割多重してパッシブネットワークの伝送路経由で伝送することができる。
【0075】
特に、MMTパケットやTLVパケットなどの可変長パケット列で構成されるストリームを時分割多重して伝送する際に、伝送遅延ゆらぎの増大を抑制することができる。
【0076】
これにより、受信装置20側ではバッファサイズの縮小化やその後段の処理(例えば再生処理)における時刻合わせを要する処理の負担を軽減させることができる。
【0077】
上述した実施形態の例では、イーサネット(登録商標)形式のカプセル化、及び10Gイーサネット(登録商標)のパッシブネットワークを例に主として説明したが、本発明は、上述した実施形態の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によってのみ制限される。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、ストリーム間での伝送遅延ゆらぎ量の公平性を確保して、複数種類のストリームを時分割多重してパッシブネットワークの伝送路経由で伝送することができるので、放送型ベースバンド伝送方式の伝送システムの用途に有用である。
【符号の説明】
【0079】
10 送信装置
11 クロック源
12 送信基準時刻情報生成部
13 カプセル化部
14 基準時刻パケット生成部
15 巡回的並列送信制御部
16 時分割多重化部
17 伝送路符号化部
20 受信装置
21 伝送路符号化復号部
22 分離部
23 クロック再生部
24 基準時刻パケット抽出部
25 時計
26 遅延補正時刻生成部
27 遅延量設定部
28 伝送遅延ゆらぎ補正部
100 送信装置
101,102 送信キュー
103 時分割多重化部
131‐1,131‐n 送信基準時刻情報付加部
151‐1,151‐2,151‐n,152 送信キュー
200 受信装置
210 分離・選局部
281 出力制御部
282‐1,282‐2 出力バッファ
282a 送信基準時刻情報除去部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7