(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
仮支持体上に、平均一次粒径が100nm以上380nm以下の粒子(a2)と硬化性化合物(a1)とを、前記硬化性化合物(a1)を含む層(a)中に前記粒子(a2)が埋没する厚みで設ける工程(1)、
前記層(a)の一部を硬化させて層(ca)を得る工程(2)、
支持体及び前記支持体上に粘着剤を含む層(b)を有する粘着フィルムの前記層(b)を、前記層(ca)と貼り合わせる工程(3)、
前記粒子(a2)が、前記層(ca)及び前記層(b)を合わせた層中に埋没し、かつ、前記層(ca)の前記支持体側の界面から突出するように、前記層(ca)の前記支持体側の界面の位置を前記仮支持体側に近づける工程(4)、
前記仮支持体を剥離する工程(5)、
をこの順に有する積層体の製造方法。
前記工程(4)と前記工程(5)との間に、前記粒子(a2)が、前記層(ca)及び前記層(b)を合わせた層中に埋没した状態で前記層(ca)の一部を硬化させる工程(4−2)を有する、請求項3に記載の積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書中、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの少なくとも一種を表し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一種を表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの少なくとも一種を表す。
【0014】
本発明の積層体は、支持体、粘着剤を含む層(b)、平均一次粒径が100nm以上380nm以下の粒子(a2)、及び樹脂を含む層(ca)を有する積層体であって、上記層(b)は上記層(ca)よりも上記支持体に近い側に存在し、上記粒子(a2)は、上記層(b)及び上記層(ca)を合わせた層中に埋没し、かつ上記層(ca)の上記支持体側の界面から突出しており、上記粒子(a2)及び上記層(ca)を含む部分は、上記層(b)から剥離できる、積層体である。
【0015】
本発明の積層体の粒子(a2)及び層(ca)を含む部分は、層(b)から剥離できるものであるので、本発明の積層体を用いて、転写法により、基材上に、本発明の積層体における粒子(a2)及び層(ca)を含む部分(反射防止層)を転写して、反射防止フィルムを製造することができる。したがって、本発明の積層体は反射防止層形成用の転写部材として用いることができる。
【0016】
本発明の積層体のより詳細な説明については後述するものとし、まず本発明の積層体の製造方法及び反射防止フィルムの製造方法について詳細に説明する。
【0017】
[積層体の製造方法及び反射防止フィルムの製造方法]
本発明の積層体の製造方法は、仮支持体上に、平均一次粒径が100nm以上380nm以下の粒子(a2)と硬化性化合物(a1)とを、上記硬化性化合物(a1)を含む層(a)中に上記粒子(a2)が埋没する厚みで設ける工程(1)、上記層(a)の一部を硬化させて層(ca)を得る工程(2)、支持体及び上記支持体上に粘着剤を含む層(b)を有する粘着フィルムの上記層(b)を、上記層(ca)と貼り合わせる工程(3)、上記粒子(a2)が、上記層(ca)及び上記層(b)を合わせた層中に埋没し、かつ、上記層(ca)の上記支持体側の界面から突出するように、上記層(ca)の上記支持体側の界面の位置を上記仮支持体側に近づける工程(4)、上記仮支持体を剥離する工程(5)、をこの順に有する積層体の製造方法である。
【0018】
本発明の積層体の製造方法は、上記工程(4)と上記工程(5)との間に、上記粒子(a2)が、上記層(ca)及び上記層(b)を合わせた層中に埋没した状態で上記層(ca)の一部を硬化させる工程(4−2)を有することが好ましい。
【0019】
本発明の反射防止フィルムの製造方法は、上述の本発明の積層体の製造方法によって得られる積層体を用いる反射防止フィルムの製造方法であり、上述の本発明の積層体の製造方法によって得られた積層体の上記層(ca)と、基材とを貼り合せる工程(6)、上記粒子(a2)が、上記層(ca)と、上記層(b)とを合わせた層中に埋没した状態で上記層(ca)を硬化させる工程(7)、上記粘着フィルムを剥離する工程(8)、をこの順に有する反射防止フィルムの製造方法であることが好ましい。
【0020】
本発明の反射防止フィルムの製造方法は、更に、工程(8)の後に、上記粒子(a2)が、上記層(ca)の上記基材側の界面とは反対側の界面から突出した状態で、上記層(ca)を硬化させる工程(9)、溶剤で洗浄する工程(10)をこの順に有することがより好ましい。
【0021】
本発明において、「層(a)中に粒子(a2)が埋没」するということは、層(a)の厚みが粒子(a2)の平均一次粒径の0.8倍以上であることを表すものである。
また、本発明において、「粒子(a2)が、層(ca)及び層(b)を合わせた層中に埋没」するということは、層(ca)及び層(b)を合わせた層の厚みが粒子(a2)の平均一次粒径の0.8倍以上であることを表すものである。
【0022】
本発明では、工程(1)において、粒子(a2)が埋没する厚みで層(a)を形成するため、工程(4)以降において、粒子(a2)の層(ca)から突出した表面を層(ca)の薄層が被覆する場合がある。上記薄層が被覆した粒子(a2)のことも、便宜上粒子(a2)と呼ぶものとする。
【0023】
まず、本発明の積層体の製造方法の一実施態様の概要を
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の積層体の製造方法の好ましい実施形態の一例を示す模式図である。
図1の(1)は、工程(1)において、仮支持体1上に、硬化性化合物(a1)を含む層(a)(
図1中の符号4)中に平均一次粒径が100nm以上380nm以下の粒子(a2)(
図1中の符号3)が埋没する厚みで設けた状態を模式的に表している。
【0024】
図1の(2)は、工程(2)において、粒子(a2)が層(a)中に埋没した状態で層(a)の一部を硬化しているところを模式的に表している。これにより層(a)の一部を硬化させて層(ca)を得る。なお、
図1及び
図2において、便宜上、層(a)も層(ca)も同じ符号4で表している。また、「UV」は紫外線を示している。
【0025】
図1の(3)は、工程(3)において、支持体5及び上記支持体5上に粘着剤を含む層(b)(
図1中の符号6)を有する粘着フィルム7の層(b)を、層(ca)(
図1中の符号4)と貼り合わせた状態を模式的に表している。
【0026】
図1の(4)は、工程(4)において、粒子(a2)が、層(ca)及び層(b)を合わせた層中に埋没し、かつ、層(ca)の支持体側の界面(層(ca)と層(b)の界面)から突出するように、層(ca)の支持体側の界面の位置を仮支持体側に近づけた状態を模式的に表している。なお、後述するように、層(ca)の支持体側の界面の位置を仮支持体側に近づける方法としては、硬化性化合物(a1)の一部を仮支持体に浸透(仮支持体が機能層を有する場合は機能層に浸透してもよい)させる方法、又は硬化性化合物(a1)の一部を粘着剤を含む層(b)に浸透させる方法が挙げられる。
【0027】
図1の(4−2)は、工程(4−2)において、粒子(a2)が層(ca)及び層(b)を合わせた層中に埋没した状態で層(ca)の一部をさらに硬化しているところを模式的に表している。
【0028】
図1の(5)は、仮支持体1を剥離する工程(6)において、仮支持体1を剥離した後の状態(積層体8)を表している。
なお、工程(5)が完了して、積層体8が得られる。ただし、本発明の積層体の製造方法では工程(4−2)は必須ではないため、工程(4)の後、工程(4−2)を行わずに工程(5)を行ってもよい。
【0029】
次に、本発明の反射防止フィルムの製造方法の一実施態様の概要を、
図2を用いて説明する。
図2は、本発明の反射防止フィルムの製造方法の好ましい実施形態の一例を示す模式図である。
【0030】
図2の(6)は、工程(6)において、基材9を上記積層体8中の層(ca)(
図2中の符号4)と貼り合せた状態を模式的に表している。
【0031】
図2の(7)は、工程(7)において、粒子(a2)が層(ca)及び層(b)を合わせた層中に埋没した状態で層(ca)をさらに硬化しているところを模式的に表している。
【0032】
図2の(8)は、粘着フィルム7を剥離する工程(8)において、粘着フィルム7を剥離した後の状態を模式的に表している。工程(8)は上記積層体8から粘着フィルム7を剥離し、上記積層体8中の粒子(a2)(
図2中の符号3)と層(ca)(
図2中の符号4)を含む部分(
図2中の符号2)を基材9上に転写する工程である。粒子(a2)と層(ca)を含む部分は、粒子(a2)が層(ca)の一方の表面から突出しており、モスアイ構造を形成している。すなわち、粒子(a2)と層(ca)を含む部分は反射防止層である。工程(8)により、基材上に、粒子(a2)と層(ca)からなるモスアイ構造を有する反射防止層を有する反射防止フィルム10が得られる。工程(8)が完了した段階で反射防止フィルム10を得ることができるが、さらに工程(9)及び(10)を行うことが好ましい。
【0033】
図2の(9)は、工程(9)において、粒子(a2)が層(ca)の基材側の界面とは反対側の界面から突出した状態で層(ca)をさらに硬化しているところを模式的に表している。
【0034】
図2の(10)は、工程(10)において、溶剤洗浄をした後の状態の反射防止フィルム10を表している。
【0035】
以下、本発明の積層体の製造方法及び反射防止フィルムの製造方法の各工程について更に詳細に説明する。
【0036】
[工程(1)]
工程(1)は、仮支持体上に、硬化性化合物(a1)と平均一次粒径が100nm以上380nm以下の粒子(a2)とを、硬化性化合物(a1)を含む層(a)中に粒子(a2)が埋没する厚みで設ける工程である。
前述のように、本発明において、「層(a)中に粒子(a2)が埋没する厚み」とは、粒子(a2)の平均一次粒径の0.8倍以上の厚みを表すものとする。
【0037】
工程(1)において、仮支持体上に層(a)を設ける方法は特に限定されないが、仮支持体上に層(a)を塗布することにより設けることが好ましい。この場合、層(a)は、硬化性化合物(a1)と、平均一次粒径が100nm以上380nm以下の粒子(a2)とを含む層(a)形成用組成物を塗布してなる層である。塗布方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等が挙げられる。
【0038】
工程(1)で仮支持体上に設けられた層(a)において、層(a)の表面に直交する方向には粒子(a2)が複数存在しないことが好ましい。ここで、層(a)の表面に直交する方向には粒子(a2)が複数存在しないとは、層(a)の面内の10μm×10μmを走査型電子顕微鏡(SEM)で3視野観察した際に、表面に直交する方向に複数重なって存在していない状態の粒子(a2)の個数の割合が、80%以上であることを表し、好ましくは95%以上である。
【0039】
(仮支持体)
仮支持体としては表面が平滑な支持体であれば特に限定されない。仮支持体は、表面粗さが30nm以下程度の表面平坦性を有し、上記層(a)形成用組成物の塗布を妨げないものであることが好ましく、種々の材質からなる仮支持体を用いることができるが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやシクロオレフィン系樹脂フィルムが好ましく用いられる。
本発明において、表面粗さはSPA−400(日立ハイテクノサイエンス製)を使用し、測定範囲5μm×5μm、測定モード:DFM,測定周波数:2Hzの測定条件で測定する。
【0040】
(層(a))
層(a)は、硬化性化合物(a1)を含む層である。
層(a)に含まれる硬化性化合物(a1)は、硬化されることで、反射防止層中の樹脂(バインダー樹脂)となり得るものである。
工程(1)における層(a)の膜厚は、粒子(a2)の平均一次粒径の0.8倍以上2.0倍以下であることが好ましく、0.8倍以上1.5倍以下であることがより好ましく、0.9倍以上1.2倍以下であることが更に好ましい。
【0041】
<硬化性化合物(a1)>
硬化性化合物(a1)としては、重合性官能基を有する化合物(好ましくは電離放射線硬化性化合物)が好ましい。重合性官能基を有する化合物としては、各種モノマー、オリゴマー又はポリマーを用いる事ができ、重合性官能基(重合性基)としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性不飽和基(炭素−炭素不飽和二重結合性基)等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0042】
重合性不飽和基を有する化合物の具体例としては、ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2−2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;等を挙げることができる。
【0043】
さらにはエポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類も、光重合性官能基を有する化合物として、好ましく用いられる。
【0044】
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。さらに好ましくは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーを少なくとも1種含有することが好ましい。
例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO(プロピレンオキサイド)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0045】
(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類の具体化合物としては、日本化薬(株)製KAYARAD DPHA、同DPHA−2C、同PET−30、同TMPTA、同TPA−320、同TPA−330、同RP−1040、同T−1420、同D−310、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同GPO−303、大阪有機化学工業(株)製V#3PA、V#400、V#36095D、V#1000、V#1080等のポリオールと(メタ)アクリル酸のエステル化物を挙げることができる。また紫光UV−1400B、同UV−1700B、同UV−6300B、同UV−7550B、同UV−7600B、同UV−7605B、同UV−7610B、同UV−7620EA、同UV−7630B、同UV−7640B、同UV−6630B、同UV−7000B、同UV−7510B、同UV−7461TE、同UV−3000B、同UV−3200B、同UV−3210EA、同UV−3310EA、同UV−3310B、同UV−3500BA、同UV−3520TL、同UV−3700B、同UV−6100B、同UV−6640B、同UV−2000B、同UV−2010B、同UV−2250EA、同UV−2750B(日本合成化学(株)製)、UA−306H、UA−306I、UA−306T、UL−503LN(共栄社化学(株)製)、ユニディック17−806、同17−813、同V−4030、同V−4000BA(大日本インキ化学工業(株)製)、EB−1290K、EB−220、EB−5129、EB−1830,EB−4858(ダイセルUCB(株)製)、U−4HA、U−6HA、U−10HA、U−15HA(新中村化学工業(株)製)、ハイコープAU−2010、同AU−2020((株)トクシキ製)、アロニックスM−1960(東亜合成(株)製)、アートレジンUN−3320HA,UN−3320HC,UN−3320HS、UN−904,HDP−4Tなどの3官能以上のウレタンアクリレート化合物、アロニックスM−8100,M−8030,M−9050(東亞合成(株)製、KRM−8307(ダイセルサイテック(株)製)などの3官能以上のポリエステル化合物なども好適に使用することができる。
【0046】
さらに、3個以上の重合性官能基を有する樹脂、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物などのオリゴマー又はプレポリマー等も挙げられる。
【0047】
また、特開2005−76005号、特開2005−36105号公報に記載された化合物、SIRIUS−501、SUBARU−501(大阪有機化学工業(株)製)のようなデンドリマー、特開2005−60425号公報に記載のようなノルボルネン環含有モノマーを用いることもできる。
【0048】
さらに、粒子(a2)と硬化性化合物(a1)を結合させて強固な膜にするために、硬化性化合物(a1)として、重合性官能基を有するシランカップリング剤を用いてもよい。
重合性官能基を有するシランカップリング剤の具体例としては、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルトリエトキシシラン等が挙げられる。具体的には、KBM−503、KBM−5103(信越化学工業(株)製)、特開2014−123091号記載のシランカップリング剤X−12−1048、X−12−1049、X−12−1050(信越化学工業(株)製)、及び下記構造式で表される化合物C3等が挙げられる。
【0050】
さらに、粒子(a2)の凝集を抑制するように働く化合物として、ラジカル反応性基以外の重合性官能基を有するシランカップリング剤を用いても良い。ラジカル反応性基以外の重合性官能基を有するシランカップリング剤の具体例としては、KBM−303、KBM−402、KBM−403、KBE−402、KBE−403、KBM−4803(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
【0051】
重合性官能基を有する化合物は、二種類以上を併用してもよい。これら重合性官能基を有する化合物の重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
【0052】
層(a)は硬化性化合物(a1)以外の化合物を更に含むことができる。
本発明では、硬化性化合物(a1)として、1分子中に2個以下の重合性官能基を有する化合物を用いてもよいが、特に、1分子中に3個以上の重合性官能基を有する化合物と、1分子中に2個以下の重合性官能基を有する化合物、または硬化性化合物(a1)以外の化合物として重合性官能基を有さない化合物を併用することが好ましい。
1分子中に2個以下の重合性官能基を有する化合物、または重合性官能基を有さない化合物としては、重量平均分子量Mwaが40<Mwa<500であることが好ましい。
1分子中に2個以下の重合性官能基を有する化合物は、1分子中に1個の重合性官能基を有する化合物であることが好ましい。
【0053】
さらに、1分子中に2個以下の重合性官能基を有する化合物、または重合性官能基を有さない化合物は、25℃における粘度が100mPas以下であることが好ましく、1〜50mPasがより好ましい。このような粘度範囲にある化合物は、粒子(a2)の凝集を抑制するように働き、ヘイズ、白濁感を抑制できるため好ましい。
【0054】
1分子中に2個以下の重合性官能基を有する化合物は、重合性官能基として、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基、スチリル基、アリル基等を持つものが好ましい。
【0055】
重合性官能基を有さない化合物としては、エステル系化合物、アミン系化合物、エーテル系化合物、脂肪族アルコール系化合物、炭化水素系化合物などを好ましく用いることができ、エステル系化合物が特に好ましい。より具体的には、コハク酸ジメチル(粘度2.6mPas)、コハク酸ジエチル(粘度2.6mPas)、アジピン酸ジメチル(粘度2.8mPas)、コハク酸ジブチル(粘度3.9mPas)、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)(粘度10.8mPas)、スベリン酸ジメチル(粘度3.7mPas)、フタル酸ジエチル(粘度9.8mPas)、フタル酸ジブチル(粘度13.7mPas)、クエン酸トリエチル(粘度22.6mPas)、クエン酸アセチルトリエチル(粘度29.7mPas)、ジフェニルエーテル(粘度3.8mPas)などが挙げられる。
【0056】
本発明における重量平均分子量および数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により下記の条件で測定された値である。
[溶媒] テトラヒドロフラン
[装置名] TOSOH HLC−8220GPC
[カラム] TOSOH TSKgel Super HZM−H
(4.6mm×15cm)を3本接続して使用。
[カラム温度] 25℃
[試料濃度] 0.1質量%
[流速] 0.35ml/min
[校正曲線] TOSOH製TSK標準ポリスチレン Mw=2800000〜1050までの7サンプルによる校正曲線を使用。
【0057】
層(a)に含まれる硬化性化合物(a1)の塗設量は、100mg/m
2〜800mg/m
2が好ましく、100mg/m
2〜600mg/m
2がさらに好ましく、100mg/m
2〜400mg/m
2が特に好ましい。
また、硬化性化合物(a1)と重合性官能基を有さない化合物とを併用する場合は、これらの合計の塗設量が上記範囲であることが好ましい。
【0058】
<平均一次粒径が100nm以上380nm以下の粒子(a2)>
平均一次粒径が100nm以上380nm以下の粒子(a2)を、「粒子(a2)」ともいう。
粒子(a2)は、反射防止フィルムにおいて、バインダー樹脂からなる膜(層(ca))の表面から突出し、凹凸形状(モスアイ構造)を形成する粒子である。
粒子(a2)としては、金属酸化物粒子、樹脂粒子、金属酸化物粒子のコアと樹脂のシェルを有する有機無機ハイブリッド粒子などが挙げられるが、膜強度に優れる観点から金属酸化物粒子が好ましい。
金属酸化物粒子としては、シリカ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、五酸化アンチモン粒子などが挙げられるが、多くのバインダーと屈折率が近いためヘイズを発生しにくく、かつモスアイ構造が形成し易い観点からシリカ粒子が好ましい。
樹脂粒子としては、ポリメタクリル酸メチル粒子、ポリスチレン粒子、メラミン粒子などが挙げられる。
【0059】
粒子(a2)の平均一次粒径は、粒子が並んでモスアイ構造を形成できる観点から100nm以上380nm以下であり、100nm以上300nm以下であることが好ましく、150nm以上250nm以下であることがより好ましく、170nm以上220nm以下であることがさらに好ましい。
粒子(a2)として、1種のみ使用してもよいし、平均一次粒径の異なる2種以上の粒子を用いてもよい。
【0060】
粒子(a2)の平均一次粒径は、体積平均粒径の累積の50%粒径を指す。粒径の測定には走査型電子顕微鏡(SEM)を用いる事ができる。粉体粒子(分散液の場合は乾燥させて溶剤を揮発させたもの)をSEM観察により適切な倍率(5000倍程度)で観察し、一次粒子100個のそれぞれの直径を測長してその体積を算出し、累積の50%粒径を平均一次粒径とすることができる。粒子が球形でない場合には、長径と短径の平均値をその一次粒子の直径とみなす。反射防止フィルム中に含まれる粒子を測定する場合は、反射防止フィルムを表面側から上記同様SEMで観察して算出する。この際、観察し易いように、試料にはカーボン蒸着、エッチング処理などを適宜施してよい。
【0061】
粒子(a2)の形状は、球形が最も好ましいが、不定形等の球形以外であっても問題無い。
粒子(a2)は、中実粒子であっても、中空粒子であってもよいが、中実粒子であることが好ましい。
また、シリカ粒子については、結晶質でも、アモルファスのいずれでもよい。
【0062】
粒子(a2)は塗布液中での分散性向上、膜強度向上、凝集防止のために表面処理された無機微粒子を使用することが好ましい。表面処理方法の具体例及びその好ましい例は、特開2007−298974号公報の<0119>〜<0147>に記載のものと同様である。
特に、バインダー成分である硬化性化合物(a1)との結着性を付与し、膜強度を向上させる観点から、粒子表面を不飽和二重結合および粒子表面と反応性を有する官能基を有する化合物で表面修飾し、粒子表面に不飽和二重結合を付与することが好ましい。表面修飾に用いる化合物としては、硬化性化合物(a1)として上述した、重合性官能基を有するシランカップリング剤を好適に用いることができる。
【0063】
平均一次粒径が100nm以上380nm以下の粒子の具体的な例としては、シーホスターKE−P10(平均一次粒径100nm、日本触媒(株)製アモルファスシリカ)、シーホスターKE−P30(平均一次粒径300nm、日本触媒(株)製アモルファスシリカ)、シーホスターKE−S30(平均一次粒径300nm、耐熱性1000℃、日本触媒(株)製焼成シリカ)、エポスターS(平均一次粒径200nm、日本触媒(株)製メラミン・ホルムアルデヒド縮合物)、エポスターMA―MX100W(平均一次粒径175nm、日本触媒(株)製ポリメタクリル酸メチル(PMMA)系架橋物)、エポスターMA―MX200W(平均一次粒径350nm、日本触媒(株)製ポリメタクリル酸メチル(PMMA)系架橋物)、スタフィロイド(アイカ工業(株)製多層構造有機微粒子)、ガンツパール(アイカ工業(株)製ポリメチルメタクリレ−ト、ポリスチレン粒子)などを好ましく用いることができる。
【0064】
粒子(a2)としては、表面のヒドロキシル基量が適度に多く、かつ硬い粒子であるという理由から、焼成シリカ粒子であることが特に好ましい。
焼成シリカ粒子は、加水分解が可能なシリコン化合物を水と触媒とを含む有機溶媒中で加水分解、縮合させることによってシリカ粒子を得た後、シリカ粒子を焼成するという公知の技術により製造することができ、たとえば特開2003−176121号公報、特開2008−137854号公報などを参照することができる。
焼成シリカ粒子を製造する原料のシリコン化合物としては特に限定されないが、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン等のクロロシラン化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物;テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン等のアシロキシシラン化合物;ジメチルシランジオール、ジフェニルシランジオール、トリメチルシラノール等のシラノール化合物;等が挙げられる。上記例示のシラン化合物のうち、アルコキシシラン化合物が、より入手し易く、かつ、得られる焼成シリカ粒子に不純物としてハロゲン原子が含まれることが無いので特に好ましい。本発明にかかる焼成シリカ粒子の好ましい形態としては、ハロゲン原子の含有量が実質的に0%であり、ハロゲン原子が検出されないことが好ましい。
焼成温度は特に限定されないが、800〜1300℃が好ましく、1000℃〜1200℃がより好ましい。
【0065】
粒子(a2)の塗設量は、50mg/m
2〜200mg/m
2が好ましく、100mg/m
2〜180mg/m
2がさらに好ましく、130mg/m
2〜170mg/m
2が特に好ましい。下限以上では、モスアイ構造の凸部が数多く形成できるため反射防止性がより向上しやすく、上限以下であると、液中での凝集が生じにくく、良好なモスアイ構造を形成しやすい。
【0066】
粒子の平均一次粒径が100nm以上380nm以下で、かつ粒径の分散度(CV値)が5%未満の単分散シリカ微粒子を一種類のみ含有することがモスアイ構造の凹凸の高さが均一になり、反射率がより低下するため好ましい。CV値は通常レーザー回折型粒径測定装置を用いて測定されるが、他の粒径測定方式でも良いし、本発明の反射防止層の表面SEM像から、画像解析によって粒径分布を求め算出することもできる。CV値は4%未満であることがより好ましい。
【0067】
層(a)は、硬化性化合物(a1)及び粒子(a2)以外の成分を含有していてもよく、たとえば、前述の重合性官能基を有さない化合物、溶剤、重合開始剤、粒子(a2)の分散剤、レベリング剤、防汚剤等を含有していてもよい。
【0068】
<溶剤>
溶媒としては、粒子(a2)と極性が近いものを選ぶのが分散性を向上させる観点で好ましい。具体的には、例えば粒子(a2)が金属酸化物粒子の場合にはアルコール系の溶剤が好ましく、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。また、例えば粒子(a2)が疎水化表面修飾がされた金属樹脂粒子の場合には、ケトン系、エステル系、カーボネート系、アルカン、芳香族系等の溶剤が好ましく、メチルエチルケトン(MEK)、炭酸ジメチル、酢酸メチル、アセトン、メチレンクロライド、シクロヘキサノンなどが挙げられる。これらの溶剤は、分散性を著しく悪化させない範囲で複数種混ぜて用いてもかまわない。
【0069】
<粒子(a2)の分散剤>
粒子(a2)の分散剤は、粒子同士の凝集力を低下させることにより、粒子(a2)を均一に配置させ易くすることができる。分散剤としては、特に限定されないが、硫酸塩、リン酸塩などのアニオン性化合物、脂肪族アミン塩、四級アンモニウム塩などのカチオン性化合物、非イオン性化合物、高分子化合物が好ましく、吸着基と立体反発基それぞれの選択の自由度が高いため高分子化合物がより好ましい。分散剤としては市販品を用いることもできる。例えば、ビックケミー・ジャパン(株)製のDISPERBYK160、DISPERBYK161、DISPERBYK162、DISPERBYK163、DISPERBYK164、DISPERBYK166、DISPERBYK167、DISPERBYK171、DISPERBYK180、DISPERBYK182、DISPERBYK2000、DISPERBYK2001、DISPERBYK2164、Bykumen、BYK−2009、BYK−P104、BYK−P104S、BYK−220S、Anti−Terra203、Anti−Terra204、Anti−Terra205(以上商品名)などが挙げられる。
【0070】
<レベリング剤>
レベリング剤は、層(a)形成用組成物の表面張力を低下させることにより、塗布後の液を安定させ硬化性化合物(a1)及び粒子(a2)を均一に配置させ易くすることができる。例えば、特開2004−331812号公報、特開2004−163610号公報に記載の化合物等を用いることができる。
【0071】
上記レベリング剤は、層(a)形成用組成物の全固形分中に0.01〜5.0質量%含有されることが好ましく、0.01〜3.0質量%含有されることがより好ましく、0.01〜2.0質量%含有されることが特に好ましい。
【0072】
<防汚剤>
防汚剤は、モスアイ構造に撥水撥油性を付与することにより、汚れ又は指紋の付着を抑制することができる。例えば、特開2012−88699号公報に記載の化合物等を用いることができる。
【0073】
防汚剤は層(a)中の全固形分に対して0.01〜5.0質量%含有されることが好ましく、0.01〜3.0質量%含有されることがより好ましく、0.01〜2.0質量%含有されることが特に好ましい。
【0074】
<重合開始剤>
層(a)には、重合開始剤を含んでいてもよい。
硬化性化合物(a1)が光重合性化合物である場合は、光重合開始剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。光重合開始剤の具体例、及び好ましい態様、市販品などは、特開2009−098658号公報の段落<0133>〜<0151>に記載されており、本発明においても同様に好適に用いることができる。
【0075】
「最新UV硬化技術」{(株)技術情報協会}(1991年)、p.159、及び、「紫外線硬化システム」加藤清視著(平成元年、総合技術センター発行)、p.65〜148にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
【0076】
層(a)中の重合開始剤の含有量は、層(a)に含まれる重合可能な化合物を重合させるのに十分な量であり、かつ開始点が増えすぎないように設定するという理由から、層(a)中の全固形分に対して、0.1〜8質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
【0077】
層(a)には、上述したシランカップリング剤を反応させるために光あるいは熱により酸又は塩基を発生する化合物(以下、光酸発生剤、光塩基発生剤、熱酸発生剤、熱塩基発生剤と称する場合がある。)を含んでいてもよい。
【0078】
<光酸発生剤>
光酸発生剤としては、例えば、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、イミノスルフォネ−ト等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物、ジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物等を挙げることができる。また、トリアジン類(例えば、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなど)、第四級アンモニウム塩類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、オキシムスルホネート化合物を挙げることもできる。
また、光により酸を発生する基、または化合物をポリマーの主鎖もしくは側鎖に導入した化合物を用いることができる。
さらに、V.N.R.Pillai,Synthesis,(1),1(1980)、A.Abad et al.,Tetrahedron Lett.,(47)4555(1971)、D.H.R.Barton et al.,J.Chem.Soc.,(C),329(1970)、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0079】
<熱酸発生剤>
熱酸発生剤としては、酸と有機塩基からなる塩を挙げることができる。
上記の酸としては、スルホン酸、ホスホン酸、カルボン酸など有機酸や硫酸、リン酸のような無機酸が挙げられる。硬化性化合物(a1)に対する相溶性の観点からは、有機酸がより好ましく、スルホン酸、ホスホン酸が更に好ましく、スルホン酸が特に好ましい。好ましいスルホン酸としては、p−トルエンスルホン酸(PTS)、ベンゼンスルホン酸(BS)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)、p−クロロベンゼンスルホン酸(CBS)、1,4−ナフタレンジスルホン酸(NDS)、メタンスルホン酸(MsOH)、ノナフルオロブタン−1−スルホン酸(NFBS)などが挙げられる。
【0080】
酸発生剤の具体例としては特開2016−803号に記載のものを好適に用いることができる。
【0081】
<光塩基発生剤>
光塩基発生剤としては、活性エネルギー線の作用により塩基を発生する物質を挙げることができる。より具体的には、(1)紫外線、可視光、又は赤外線の照射により脱炭酸して分解する有機酸と塩基の塩、(2)分子内求核置換反応や転位反応などにより分解してアミン類を放出する化合物、あるいは(3)紫外線、可視光、又は赤外線の照射により何らかの化学反応を起こして塩基を放出するものを使用できる。
本発明に用いられる光塩基発生剤は、紫外線、電子線、X線、赤外線および可視光線などの活性エネルギー線の作用により塩基を発生する物質であれば特に限定されない。
具体的には特開2010−243773に記載のものを好適に用いる事ができる。
【0082】
層(a)中の、光又は熱により酸又は塩基を発生する化合物の含有量は、層(a)に含まれる重合可能な化合物を重合させるのに十分な量であり、かつ開始点が増えすぎないように設定するという理由から、層(a)中の全固形分に対して、0.1〜8質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
【0083】
[工程(2)]
工程(2)は、工程(1)の層(a)の一部を硬化させて層(ca)を得る工程であり、具体的には、工程(1)の層(a)中の硬化性化合物(a1)の一部を硬化させて、硬化された化合物(a1c)を含む層(ca)を得る工程である。
工程(2)で硬化性化合物(a1)の一部を硬化させることにより、粒子(a2)を動きにくくして、粒子(a2)が凝集することを抑制することができる。
硬化性化合物(a1)の一部を硬化させるとは、硬化性化合物(a1)のすべてではなく、一部のみを硬化させることを表す。工程(2)で硬化性化合物(a1)の一部のみを硬化させ、未硬化の硬化性化合物(a1)の一部を工程(4)で仮支持体に浸透(仮支持体が機能層を有する場合は機能層に浸透してもよい)させる方法、又は層(b)へ浸透させる方法などにより、層(ca)の厚みを薄くして、粒子(a2)を層(ca)の支持体側の界面から突出させて、良好な凹凸形状(モスアイ構造)を形成することができる。
【0084】
硬化は電離放射線を照射することで行うことができる。電離放射線の種類については、特に制限はなく、X線、電子線、紫外線、可視光、赤外線などが挙げられるが、硬化性化合物(a1)が光硬化性の化合物であって、工程(2)において光(好ましくは紫外線)を照射することにより、硬化性化合物(a1)の一部を硬化させることが好ましい。
工程(2)の硬化性化合物(a1)の一部を硬化させる条件が、層(a)形成用組成物から粒子(a2)を除いた組成物を仮支持体上に2μmの厚さで塗布し、硬化させた場合に、硬化率が2〜20%となる条件であることが好ましく、硬化率が3〜15%となる条件であることがより好ましく、硬化率が5〜12%となる条件であることが更に好ましい。
【0085】
硬化率は、以下の式から求められる。
(1−硬化後の残存重合性官能基数/硬化前の重合性官能基数)×100%
なお、重合性官能基は、重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を有する基である。硬化率は、以下の方法で測定される。
より具体的には、Thermo electron corporationのNICOLET6700 FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を使用して硬化前の硬化性化合物そのものをKBr−IR測定しカルボニル基のピーク(1660−1800cm
−1)面積と重合性の炭素−炭素不飽和二重結合のピーク高さ(808cm
−1)を求め、硬化後の一回反射のIR(infrared spectroscopy)測定から同様にカルボニル基ピーク面積に対する重合性の炭素−炭素不飽和二重結合のピークを求め、紫外線照射前後で比較することにより硬化率を算出した。ここで硬化率の計算に際し、808cm
−1における測定深度を821nm、1660−1800cm
−1における深度を384nmとして規格化している。
【0086】
工程(2)において、紫外線を1〜90mJ/cm
2の照射量で照射することが好ましく、1.2〜40mJ/cm
2の照射量で照射することがより好ましく、1.5〜10mJ/cm
2の照射量で照射することが更に好ましい。照射量の最適値は層(a)形成用組成物の組成によって異なるため、適宜調整することができる。
【0087】
工程(2)において、層(a)の仮支持体側とは反対側から紫外線を照射して硬化性化合物(a1)の一部を硬化させることが製造適正上好ましい。
【0088】
酸素濃度0.1〜5.0体積%の環境下で工程(2)を行うことが好ましく、酸素濃度0.5〜1.0体積%の環境下で工程(2)を行うことがより好ましい。酸素濃度を上記範囲とすることで、特に層(a)の仮支持体側の領域を硬化させることができる。
【0089】
化合物(a1c)は、硬化性化合物(a1)の硬化物である。
化合物(a1c)の分子量は特に限定されない。また、化合物(a1c)は、未反応の重合性官能基を有していてもよい。
工程(2)で得られる層(ca)は、層中に硬化性化合物(a1)と化合物(a1c)とを含む層である。
なお、本発明では、工程(2)の後、工程(4−2)、(7)、及び(9)において、層(ca)を更に硬化させうるものであり、それぞれの工程における硬化前と硬化後で各層が含有する成分及びその組成(硬化性化合物(a1)とその硬化物である化合物(a1c)の組成比など)は異なるが、本発明では便宜的にいずれの段階においても層(ca)と呼ぶものとする。
【0090】
[工程(3)]
工程(3)は、支持体及び上記支持体上に粘着剤を含む層(b)を有する粘着フィルムの層(b)を、上記層(ca)と貼り合わせる工程である。
層(ca)と粘着フィルムの層(b)とを貼り合わせる方法としては特に限定されず公知の方法を用いることができ、たとえばラミネート法が挙げられる。
層(ca)と層(b)とが接するように粘着フィルムを貼り合わせることが好ましい。
工程(3)の前に、層(ca)を乾燥する工程を有していてもよい。層(ca)を乾燥する工程を有する場合は、層(ca)の乾燥温度は20〜60℃が好ましく、20〜40℃がより好ましい。乾燥時間は0.1〜120秒が好ましく、1〜30秒がより好ましい。
【0091】
本発明では、工程(3)において粘着フィルムの層(b)と層(ca)とを貼り合わせ、後述する工程(4)において粒子(a2)を、層(ca)及び層(b)を合わせた層中に埋没し、かつ、層(ca)の支持体側の界面から突出させることで、また、より好ましくは工程(4−2)において粒子(a2)が層(ca)及び層(b)を合わせた層中に埋没した状態で層(ca)の一部をさらに硬化することで、粒子(a2)が層(ca)の硬化前に空気界面に露出しないようにして、凝集を抑制し、粒子(a2)によって形成された良好な凹凸形状を作製できる。
【0092】
(粘着フィルム)
粘着フィルムは、支持体と粘着剤を含む層(b)とを有する。
【0093】
<層(b)>
層(b)は、粘着剤を含む層であり、粘着剤は、ゲル分率が95.0%以上の粘着剤であることが好ましい。
粘着剤のゲル分率が95.0%以上であることで、本発明の反射防止フィルムの製造において、粘着フィルムを剥離する際に、粘着剤成分が反射防止フィルム表面に残りにくくなり、粘着剤成分が粒子の凹凸間を埋めることで生じる反射率の上昇を抑制する効果が高い。
粘着剤のゲル分率は、95.0%以上99.9%以下であることが好ましく、97.0%以上99.9%以下であることがより好ましく、98.0%以上99.9%以下であることが更に好ましい。
粘着剤のゲル分率は、粘着剤を、25℃で、テトラヒドロフラン(THF)に12時間浸漬した後の不溶解分の比率であり、下記式から求められる。
ゲル分率=(粘着剤のTHFへの不溶解分の質量)/(粘着剤の総質量)×100(%)
【0094】
粘着剤におけるゾル成分の重量平均分子量が10000以下であることが好ましく、7000以下であることがより好ましく、5000以下であることが特に好ましい。ゾル成分の重量平均分子量を上記範囲にすることによって、本発明の反射防止フィルムの製造において、粘着フィルムを剥離する際に、粘着剤成分が反射防止フィルム表面に残りにくくすることができる。
粘着剤のゾル成分は、粘着剤を、25℃で、テトラヒドロフラン(THF)に12時間浸漬した後のTHFへの溶解分を表す。重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析することができる。
【0095】
粘着剤の30℃、1Hzでの貯蔵弾性率(G ‘)が1.3GPa以下であり、かつ粘着剤におけるゾル成分の重量平均分子量が10000以下であることも好ましい。
粘着剤の30℃、1Hzでの貯蔵弾性率(G‘)が1.3×10
5Pa以下であり、かつ粘着剤におけるゾル成分の重量平均分子量が10000以下であることも好ましい。
粘着剤の30℃、1Hzでの貯蔵弾性率(G‘)は0.1×10
5Pa以上1.3×10
5Pa以下がより好ましく、0.1×10
5Pa以上1.2×10
5Pa以下が更に好ましい。貯蔵弾性率が0.1×10
5Pa以上であると、粘着剤の凝集破壊が起こりにくく、取り扱いが容易である。貯蔵弾性率が1.3×10
5Pa以下であると、粒子の隙間に粘着剤が入り込みやすくなるため、粒子の凝集を抑制する効果が得られやすくなり、1.2×10
5Pa以下であると特に良好な反射率を有する反射防止フィルムが得られる。
また、この場合の粘着剤におけるゾル成分の重量平均分子量の好ましい範囲も前述したものと同様である。
【0096】
層(b)の膜厚は0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、1μm以上30μm以下であることがより好ましく、1μm以上20μm以下であることが更に好ましい。
【0097】
粘着剤としては、重合体を含むことが好ましく、(メタ)アクリル系重合体を含むことがより好ましい。特に、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種のモノマーの重合体(2種以上のモノマーの場合は共重合体)が好ましい。(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、20万〜200万であることが好ましい。
【0098】
アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソセチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、直鎖、分枝状、環状のいずれでもよい。上記モノマーは2種以上併用されてもよい。
【0099】
脂肪族環を有する(メタ)アクリレートモノマーの好適な例としては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でもシクロヘキシル(メタ)アクリレートであることが特に好ましい。
【0100】
(メタ)アクリル系重合体は、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、他の共重合性モノマーの少なくとも1種とからなる共重体であってもよい。この場合、他の共重合性モノマーとしては、水酸基、カルボキシル基、及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種の基を含有する共重合性ビニルモノマー、ビニル基を有する共重合性ビニルモノマー、芳香族系モノマー等が挙げられる。
【0101】
水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類、及び、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、これらの化合物群の中から選択された、少なくとも1種であることが好ましい。
【0102】
(メタ)アクリル系重合体の100質量部に対して、水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーを0.1〜15質量部含有することが好ましい。
【0103】
カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレートからなどが挙げられ、これらの化合物群の中から選択された、少なくとも1種であることが好ましい。
【0104】
(メタ)アクリル共重合体の100質量部に対して、カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを0.1〜2質量部含有することが好ましい。
【0105】
アミノ基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のモノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0106】
芳香族系モノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステル類のほか、スチレン等が挙げられる。
【0107】
上記以外の共重合性ビニルモノマーとしては、アクリルアミド、アクリロニトリル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの各種ビニルモノマーが挙げられる。
【0108】
粘着剤は、粘着剤を形成するための組成物(粘着剤組成物ともいう)の硬化物を含むものであってもよい。
粘着剤組成物は、上記重合体と架橋剤とを含むことが好ましく、熱又は紫外線(UV)などを用いて架橋しても良い。架橋剤としては、2官能以上のイソシアネート系架橋剤、2官能以上のエポキシ系架橋剤、アルミニウムキレート系架橋剤からなる化合物群のうちから選択される1種以上の架橋剤が好ましい。架橋剤を用いる場合は、本発明の反射防止フィルムの製造において、粘着フィルムを剥離する際に、粘着剤成分を反射防止フィルム表面に残りにくくする観点から、上記重合体の100質量部に対して、0.1〜15質量部含有することが好ましく、3.5〜15質量部含有することがより好ましく、3.5質量部超15質量部未満が更に好ましく、5.1〜10質量部含有することが特に好ましい。
【0109】
2官能以上のイソシアネート系化合物としては、1分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物であればよく、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類(1分子中に2個のNCO基を有する化合物)のビュレット変性体、及びイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパン又はグリセリン等の3価以上のポリオール(1分子中に少なくとも3個以上のOH基を有する化合物)とのアダクト体(ポリオール変性体)などが挙げられる。
また、3官能以上のイソシアネート化合物が、1分子中に少なくとも3個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物であり、特にヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のアダクト体、イソホロンジイソシアネート化合物のアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のビュレット体、イソホロンジイソシアネート化合物のビュレット体からなる化合物群の中から選択された、少なくとも一種以上であることが好ましい。
2官能以上のイソシアネート系架橋剤は、重合体100質量部に対して、0.01〜5.0質量部含まれることが好ましく、0.02〜3.0質量部含まれることがより好ましい。
【0110】
粘着剤組成物は、帯電防止性能を付与するため、帯電防止剤を含有してもよい。帯電防止剤はイオン化合物であることが好ましく4級オニウム塩であることがさらに好ましい。
【0111】
4級オニウム塩である帯電防止剤としては、例えば、炭素数8〜18のアルキル基を有するアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、炭素数8〜18のアルキル基を有するジアルキルメチルベンジルアンモニウム塩、炭素数8〜18のアルキル基を有するトリアルキルベンジルアンモニウム塩、炭素数8〜18のアルキル基を有するテトラアルキルアンモニウム塩、炭素数8〜18のアルキル基を有するアルキルジメチルベンジルホスホニウム塩、炭素数8〜18のアルキル基を有するジアルキルメチルベンジルホスホニウム塩、炭素数8〜18のアルキル基を有するトリアルキルベンジルホスホニウム塩、炭素数8〜18のアルキル基を有するテトラアルキルホスホニウム塩、炭素数14〜20のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウム塩、炭素数14〜20のアルキル基を有するアルキルジメチルエチルアンモニウム塩などを用いることができる。これらのアルキル基は、不飽和結合を有するアルケニル基であってもよい。
【0112】
帯電防止剤としては、他にノニオン系、カチオン系、アニオン系、両性系の界面活性剤、イオン性液体、アルカリ金属塩、金属酸化物、金属微粒子、導電性ポリマー、カーボン、カーボンナノチューブなども用いることができる。
【0113】
アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムからなる金属塩などが挙げられ、イオン性物質の安定化のため、ポリオキシアルキレン構造を含有する化合物を添加しても良い。
【0114】
帯電防止剤は、重合体100質量部に対して、0.1〜10質量部含有することが好ましい。
【0115】
粘着剤組成物は、さらに帯電防止補助剤としてHLBが7〜15のポリエーテル変性シロキサン化合物を含有することもできる。
HLBとは、例えばJIS(日本工業規格) K3211(界面活性剤用語)等で規定する親水親油バランス(親水性親油性比)である。
【0116】
粘着剤組成物は、さらに架橋促進剤を含有することもできる。架橋促進剤は、ポリイソシアネート化合物を架橋剤とする場合に、共重合体と架橋剤との反応(架橋反応)に対して触媒として機能する物質であればよく、第三級アミン等のアミン系化合物、金属キレート化合物、有機錫化合物、有機鉛化合物、有機亜鉛化合物等の有機金属化合物等が挙げられる。本発明では、架橋促進剤として、金属キレート化合物又は有機錫化合物が好ましい。
【0117】
架橋促進剤は、共重合体の100質量部に対して、0.001〜0.5質量部含まれることが好ましい。
【0118】
本発明の積層体は、層(b)の層(ca)側の表面に1分子中に架橋基を3つ以上持ち、架橋基当量が450以下であり、フッ素ないしシリコーンからなる低摩擦部位を有する滑り剤(以下、「滑り剤a」とも呼ぶ。)が存在することが好ましい。
層(b)の層(ca)側の表面に滑り剤aが存在することで、本発明の反射防止フィルムの製造において、粘着フィルムを剥離する際に、層(b)中の粘着剤が反射防止フィルムの表面に残る(転写される)ことを効果的に防ぐことができる。
【0119】
<支持体>
粘着フィルムにおける支持体について説明する。
支持体としては、透明性及び可撓性を有する樹脂からなるプラスチックフィルムが好ましく用いられる。支持体用のプラスチックフィルムとしては、好適には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステルフィルム、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、セルロースアシレート等のセルロース系樹脂等からなるフィルムが挙げられる。ただし、上記(メタ)アクリル系樹脂は、ラクトン環構造を有する重合体、無水グルタル酸環構造を有する重合体、グルタルイミド環構造を有する重合体を含む。
このほか、必要な強度を有しかつ光学適性を有するものであれば、他のプラスチックフィルムも使用可能である。支持体は、無延伸フィルムであっても、一軸または二軸延伸されていてもよく、また、延伸倍率又は延伸の結晶化に伴い形成される軸方法の角度を制御したプラスチックフィルムでもよい。
【0120】
支持体としては、紫外線透過性を有するものが好ましい。紫外線透過性を有することで、工程(4−2)及び(7)において層(ca)を硬化する際、支持体側から紫外線照射が可能になるため、製造適性上好ましい。
具体的には、支持体の波長250nm〜300nmにおける最大透過率が20%以上であることが好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、60%以上であることが特に好ましい。波長250nm〜300nmにおける最大透過率が20%以上であると支持体側から紫外線を照射して層(ca)を硬化させやすく好ましい。
また、支持体上に層(b)を形成した粘着フィルムの波長250nm〜300nmにおける最大透過率が20%以上であることが好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、60%以上であることが特に好ましい。
【0121】
支持体の膜厚は特に限定されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましく、10μm以上40μm以下であることが更に好ましい。
【0122】
支持体上に層(b)を形成した粘着フィルムとしては、市販の保護フィルムを好適に用いることができる。具体的には、藤森工業(株)製のAS3−304、AS3−305、AS3−306、AS3−307、AS3−310、AS3−0421、AS3−0520、AS3−0620、LBO−307、NBO−0424、ZBO−0421、S−362、TFB−4T3−367AS等が挙げられる。
【0123】
工程(4−2)及び(7)では、粒子(a2)が層(ca)及び層(b)を合わせた層中に埋没した状態を維持しながら層(ca)を硬化するが、工程(4−2)の前の段階(すなわち工程(4)の完了後)において、層(ca)の支持体側の界面から突出した粒子(a2)によって形成された凹凸形状を有していることが好ましい。こうすることで、工程(7)で層(ca)を硬化した後、工程(8)で層(b)を剥離すると、層(a)の表面から粒子(a2)が突出した状態の反射防止フィルムを得ることができる。
工程(4−2)の前の段階で、層(ca)の支持体側の界面から突出した粒子(a2)によって形成された凹凸形状を有しているようにするためには、工程(4)で、硬化性化合物(a1)の一部を層(b)に浸透させることが好ましい。
【0124】
[工程(4)]
工程(4)は、粒子(a2)が、層(ca)及び層(b)を合わせた層中に埋没し、かつ、層(ca)の支持体側の界面から突出するように、層(ca)の支持体側の界面(好ましくは層(ca)と層(b)の界面)の位置を仮支持体側に近づける工程である。
なお、「粒子(a2)が、層(ca)及び層(b)を合わせた層中に埋没し、かつ、層(ca)の支持体側の界面から突出する」とは、別の言い方をすると、「粒子(a2)が、層(ca)及び層(b)を合わせた層から表出しておらず、かつ、層(ca)及び層(b)の両層にまたがって存在している(粒子(a2)が層(ca)と層(b)との界面を横切って存在している)」とも言える。
工程(4)は、硬化性化合物(a1)の一部を層(b)に浸透させることにより行われることが好ましい。
工程(4)において、硬化性化合物(a1)の一部を層(b)に浸透させる場合、工程(3)が完了した後の積層体を60℃未満に保つことが好ましく、40℃以下に保つことがより好ましい。温度を40℃以下に保つことで、硬化性化合物(a1)、化合物(a1c)、及び粘着剤の粘度を高く保つことができるとともに、粒子(a2)の熱運動を抑制することができるため、粒子(a2)の凝集による反射防止能の低下及びヘイズ又は白濁感の上昇を防ぐ効果が大きい。上記積層体を保つ温度の下限は特に限定されるものではなく、室温であっても、室温より低い温度であってもよい。
【0125】
[工程(4−2)]
工程(4−2)は、粒子(a2)が層(ca)及び層(b)を合わせた層中に埋没した状態で層(ca)の一部を硬化させる工程であり、具体的には、層(ca)中の硬化性化合物(a1)及び化合物(a1c)からなる群より選択される化合物の一部を硬化させる工程である。
層(ca)の一部を硬化するとは、層(ca)中の硬化性化合物(a1)及び化合物(a1c)のすべてではなく、一部のみを硬化させることを表す。これにより、反射防止フィルムの反射防止層におけるバインダー樹脂を形成することができる。また、工程(4−2)の完了後の層(ca)中に未硬化の硬化性化合物(a1)を残存させることで、後述する工程(6)において、層(ca)と基材との貼合又は接着が可能となる。
工程(4−2)で粒子(a2)が層(ca)及び層(b)を合わせた層中に埋没した状態を維持することで、粒子(a2)の凝集を抑制し、モスアイ構造を形成することができる。
なお、層(b)を設けた後に層(b)又は層(ca)の成分の揮発などにより、粒子(a2)が層(ca)及び層(b)を合わせた層中に埋没した状態を維持できないと考えられる場合は、層(b)をあらかじめ厚くしておく等の操作を行うことができる。
【0126】
工程(4−2)における硬化は電離放射線を照射することで行うことができる。電離放射線の種類については、特に制限はなく、X線、電子線、紫外線、可視光、赤外線などが挙げられるが、紫外線が広く用いられる。例えば塗膜が紫外線硬化性であれば、紫外線ランプにより10mJ/cm
2〜1000mJ/cm
2の照射量の紫外線を照射して層(ca)中の硬化性化合物(a1)の一部を硬化するのが好ましい。紫外線の照射量が10mJ/cm
2以上であれば、層(b)と粒子(a2)及び層(ca)を含む部分との密着力が適度に強くなり、仮支持体を剥離する工程(5)において仮支持体上に粒子(a2)及び層(ca)が残存しにくく、得られる反射防止フィルムに欠陥(反射率が下がらない領域)が生じにくい。また、紫外線の照射量が1000mJ/cm
2以下であれば、工程(4−2)の完了後の層(ca)中の硬化性化合物(a1)の残存量が減少しすぎず、工程(6)において層(ca)と基材との適度な接着力が得られる。工程(4−2)における照射量は特に限定されず、使用する層(b)と粒子(a2)及び層(ca)を含む部分との密着力、及び層(ca)と基材との密着力を考慮して適宜調整することができる。照射の際には、上記エネルギーを一度に当ててもよいし、分割して照射することもできる。紫外線ランプ種としては、メタルハライドランプ又は高圧水銀ランプ等が好適に用いられる。
【0127】
工程(4−2)における硬化時の酸素濃度は0〜1.0体積%であることが好ましく、0〜0.1体積%であることがさらに好ましく、0〜0.05体積%であることが特に好ましい。硬化時の酸素濃度を1.0体積%よりも小さくすることで、酸素による硬化阻害の影響を受けにくくなり、強固な膜となる。
【0128】
工程(4−2)において、層(ca)中の硬化性化合物(a1)及び化合物(a1c)からなる群より選択される化合物の一部を硬化させる際、支持体の層(ca)側とは反対側から紫外線を照射してもよいし、仮支持体側から紫外線を照射してもよい。
【0129】
[工程(5)]
工程(5)は、工程(4)又は(4−2)の完了後の積層体から仮支持体を剥離する工程である。
工程(4)又は(4−2)の完了後の積層体から仮支持体を剥離できるためには、層(ca)と仮支持体との間に適度な接着力が付与されていることにより、層(ca)及び粒子(a2)を含む部分(
図1の符号3で示される粒子(a2)と符号4で示される層(ca)とからなる部分であり、
図2の反射防止層2に相当する部分)を粘着フィルムに転写できる状態となっていることが好ましい。例えば、製造プロセス中の積層体の曲げ又は搬送テンションでは層(ca)及び粒子(a2)を含む部分は仮支持体から脱離しないが、層(b)に接触させた際、又は層(b)に接触させて紫外線照射を施した際に層(ca)及び粒子(a2)を含む部分が脱離する状態となっていることが好ましい。
【0130】
工程(5)が完了して得られる積層体は、本発明の積層体である。
【0131】
工程(2)、(3)、(4)、(4−2)、(5)において、層(ca)の表面に直交する方向には粒子(a2)が複数存在しないことが好ましい。
ここで、層(ca)の表面に直交する方向には粒子(a2)が複数存在しないとは、層(ca)の面内の10μm×10μmを走査型電子顕微鏡(SEM)で3視野観察した際に、表面に直交する方向に複数重なって存在していない状態の粒子(a2)の個数の割合が、80%以上であることを表し、好ましくは95%以上である。
【0132】
工程(4)、(4−2)、(5)において、層(ca)の膜厚と層(b)の膜厚の合計の膜厚が、粒子(a2)の平均一次粒径よりも大きいことが好ましい。
層(ca)の膜厚と層(b)の膜厚の合計の膜厚が、粒子(a2)の平均一次粒径よりも大きいと粒子(a2)が層(ca)及び層(b)を合わせた層中に埋没した状態にすることができるため好ましい。
【0133】
さらに、工程(4)、(4−2)、(5)において、層(ca)の膜厚は、粒子(a2)の平均一次粒径の5〜70%であることが好ましく、20〜40%であることがより好ましい。層(ca)の膜厚が粒子(a2)の平均一次粒径の5%以上であると、後述する工程(8)で粘着フィルムを剥離して、層(ca)及び粒子(a2)を含む部分を基材へ転写した後に得られる反射防止フィルムから粒子(a2)が脱落しにくく耐擦傷性が向上するため好ましい。また、層(ca)の膜厚が粒子(a2)の平均一次粒径の70%以下であると屈折率の傾斜が十分となり、十分な反射防止性能が得られる。層(ca)の膜厚が粒子(a2)の平均一次粒径の20〜40%であると、十分な耐擦傷性と反射防止能が両立できるため好ましい。後述の工程(6)〜(10)においても同様である。
工程(5)の完了後の層(ca)の膜厚は、層(ca)の膜断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、任意に100箇所の膜厚を計測してその平均値を求めた場合に、10nm〜100nm(より好ましくは20nm〜90nm、さらに好ましくは30nm〜70nm)となるように調整するのが好ましい。
【0134】
工程(5)が完了して得られる積層体における層(ca)の層(b)側とは反対側の面からは粒子(a2)が突出していないことが好ましい。
工程(5)が完了して得られる積層体における層(ca)の層(b)側とは反対側の面の表面粗さは、30nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましい。
層(ca)の層(b)側とは反対側の面の表面粗さが30nm以下であると、粒子(a2)が層(ca)の層(b)側とは反対側の面から突出しておらず、後述する工程(8)で粘着フィルムを剥離して、層(ca)及び粒子(a2)を含む部分(反射防止層)を基材へ転写する際に転写されやすく、また、転写後に反射防止層に欠陥が生じにくい。また、層(ca)の層(b)側とは反対側の面の表面粗さがが10nm以下であると工程(6)において層(ca)と基材とを貼り合せる際に良好な密着を確保することができ、反射防止フィルムのヘイズの上昇を引き起こす転写層(粒子(a2)及び層(ca)を含む部分)−基材間の空隙発生を抑制することができるため好ましい。
本発明において、表面粗さはSPA−400(日立ハイテクノサイエンス製)を使用し、測定範囲5μm×5μm、測定モード:DFM,測定周波数:2Hzの測定条件で測定した。
【0135】
工程(5)が完了して得られる積層体における粒子(a2)及び層(ca)を含む部分は、粘着フィルムの層(b)から剥離できるものである。
粒子(a2)及び層(ca)を含む部分が粘着フィルムの層(b)から剥離できるとは、粒子(a2)及び層(ca)を含む部分と粘着フィルムの層(b)との間に適度な接着力が付与されていることにより、後述の転写工程(工程(8))において粒子(a2)及び層(ca)を含む部分が層(b)の表面から脱離して基材表面に転写できる状態となっていることを示す。粒子(a2)及び層(ca)を含む部分(反射防止層)が基材表面に転写できる、すなわち転写性があるとは、転写後の反射防止フィルムの転写面(反射防止層を有する面)とは反対側に、粘着剤付き黒色ポリエチレンテレフタレートシート(巴川製紙所製;「くっきりみえーる」)を貼り合わせて目視観察した際、反射防止層を転写する前よりも反射率が下がっている領域の面積の割合が、転写する面積に対して、80%以上であることを表す。粒子(a2)及び層(ca)を含む部分と層(b)との接着力については特に限定されないが、例えば幅25mmの転写部材(工程(5)が完了して得られる積層体)の粒子(a2)及び層(ca)を含む部分を接着剤を用いて厚み1.1mmのガラス基材に固定化し、粒子(a2)及び層(ca)を含む部分と層(b)を90°方向に速度1000mm/minで剥離させたときの剥離力によって測定することができる。上記方法によって測定した剥離力が0.2N/25mm〜4.0N/25mmであることが好ましく、0.6N/25mm〜4.0N/25mmであることがより好ましい。剥離力が0.6N/25mm以上であると、工程(5)において、仮支持体を剥離する際に、仮支持体上に粒子(a2)及び層(ca)の一部が残存しにくいため、最終的に得られる反射防止フィルムの反射率及びヘイズが低下する。剥離力が4.0N/25mm以下であると、工程(8)において、粘着フィルムを剥離する際、層(b)に粒子(a2)の一部が残存しにくいため、最終的に得られる反射防止フィルムの反射率及びヘイズが低下する。
【0136】
工程(5)が完了して得られる積層体は、積層体の全ヘイズから、積層体から粒子(a2)及び層(ca)を含む部分を取り除いてなる部分のヘイズを差し引いた値(Δヘイズ)が1.00%以下であることが好ましい。
ヘイズの測定は、フィルム試料40mm×80mmを、25℃、相対湿度60%で、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH4000で、JIS−K7136(2000年)に従って測定することができる。
Δヘイズはマイナスの値であっても良い。Δヘイズは、1.00%以下であることが好ましく、0.80%以下であることがより好ましく、0.40%以下であることがさらに好ましい。Δヘイズを1.00%以下とすることで、工程(5)が完了して得られる積層体を用いて得られる反射防止フィルムのヘイズを低くし、良好な反射防止性能を得ることが可能となる。Δヘイズが0.40%以下である場合は特に、工程(5)が完了して得られる積層体を用いて得られる反射防止フィルムの転写面とは反対側を粘着剤付き黒色ポリエチレンテレフタレートシート(巴川製紙所製;「くっきりみえーる」)に貼り合わせて目視観察した際でもヘイズによる白濁感が無く、優れた反射防止フィルムが得られる。
【0137】
[工程(6)]
工程(6)は、上述の本発明の積層体の製造方法によって得られた積層体における層(ca)と基材とを貼り合せる工程である。
層(ca)と基材とを貼り合わせる方法としては特に限定されず公知の方法を用いることができ、たとえばロールラミネート法が挙げられる。
層(ca)と基材とが接するように粘着フィルムを貼り合わせることが好ましい。
【0138】
(基材)
基材は、反射防止フィルムの基材として一般的に使用される透光性を有する基材であれは特に制限はないが、プラスチック基材又はガラス基材が好ましい。
プラスチック基材としては、種々用いることができ、例えば、セルロース系樹脂;セルロースアシレート(トリアセテートセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース)等、ポリエステル樹脂;ポリエチレンテレフタレート等、(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、オレフィン系樹脂等を含有する基材が挙げられ、セルロースアシレート、ポリエチレンテレフタレート、又は(メタ)アクリル系樹脂を含有する基材が好ましく、セルロースアシレートを含有する基材がより好ましく、セルロースアシレートフィルムであることが特に好ましい。セルロースアシレートとしては、特開2012−093723号公報に記載の基材等を好ましく用いることが出来る。
プラスチック基材の厚さは、通常、10μm〜1000μm程度であるが、取り扱い性が良好で、透光性が高く、かつ十分な強度が得られるという観点から20μm〜200μmが好ましく、20μm〜100μmがより好ましい。プラスチック基材の透光性としては、可視光の透過率が90%以上のものが好ましい。
【0139】
なお、本発明においては、工程(6)の前に、基材上に機能層を設けてもよい。基材上に機能層を有する場合は、便宜的に、その機能層と基材との積層体を「基材」と呼ぶこともある。基材上に機能層を設けた場合には、工程(6)においては機能層と層(ca)とを貼り合わせて、以降の工程を行うものとする。機能層としてはハードコート層が好ましい。
【0140】
[工程(7)]
工程(7)は、粒子(a2)が、層(b)及び層(ca)を合わせた層中に埋没した状態で層(ca)を硬化させる工程であり、具体的には、層(ca)中の硬化性化合物(a1)及び化合物(a1c)からなる群より選択される化合物の一部又は全部を硬化させる工程である。なお、層(ca)中の硬化性化合物(a1)及び化合物(a1c)からなる群より選択される化合物の全部を硬化させるとは、通常の方法で硬化させた場合に、硬化しきれなかった化合物が残っている場合も含むものである。工程(7)における硬化率については、特に限定されないが、膜強度の観点から硬化率が60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
工程(7)により、上記工程(6)で貼り合せた基材と層(ca)とを接着させることができる。
【0141】
工程(7)における硬化は上記工程(4−2)に記載の条件と同様の条件で行うことが好ましい。
【0142】
[工程(8)]
工程(8)は、工程(7)で得られた積層体から粘着フィルムを剥離する工程である。
工程(8)において粘着フィルムを剥離するためには、工程(5)が完了して得られる積層体における粒子(a2)及び層(ca)を含む部分と層(b)との接着力の指標として、上記測定法にて測定した剥離力が、0.2N/25mm〜4.0N/25mm以下であることが好ましい。
【0143】
工程(8)が完了した後には、層(ca)の表面に粒子(a2)によって形成された凹凸形状からなるモスアイ構造を有する反射防止フィルムが得られるが、その後に更に工程(9)及び(10)を行ってもよい。
【0144】
[工程(9)]
工程(9)は、粒子(a2)が、層(ca)の基材側の界面とは反対側の界面から突出した状態で、層(ca)を硬化させる工程であり、具体的には、層(ca)中の硬化性化合物(a1)及び化合物(a1c)を全て硬化させる工程である。なお、前述の工程(7)で層(ca)中の硬化性化合物(a1)及び化合物(a1c)を全て硬化させた場合は、工程(9)を行わなくてもよい。
【0145】
工程(9)における硬化は上記工程(4−2)に記載の条件と同様の条件で行うことが好ましい。
工程(9)において、層(ca)の基材側とは反対側から紫外線を照射して層(ca)中の硬化性化合物(a1)及び化合物(a1c)を硬化させることが製造適正上好ましい。
【0146】
工程(9)の完了後の層(ca)は、層中に化合物(a1c)を含む層である。ただし、前述の通り、通常の方法で硬化させた場合に、硬化しきれなかった化合物が残っていてもよい。
【0147】
[工程(10)]
工程(10)は、工程(9)完了後の積層体を溶剤で洗浄する工程である。
本発明の積層体を用いた反射防止フィルムの製造においては、支持体及び層(b)を剥離した際にも層(ca)側に粘着剤が残りにくいが、工程(10)により、基材及び層(ca)は溶解せずに、粘着剤を溶解する溶剤(メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン等)を用いて洗浄してもよい。
【0148】
[積層体]
本発明の積層体は、前述の通り、支持体、粘着剤を含む層(b)、平均一次粒径が100nm以上380nm以下の粒子(a2)、及び樹脂を含む層(ca)を有する積層体であって、上記層(b)は上記層(ca)よりも上記支持体に近い側に存在し、上記粒子(a2)は、上記層(b)及び上記層(ca)を合わせた層中に埋没し、かつ上記層(ca)の上記支持体側の界面から突出しており、上記粒子(a2)及び上記層(ca)を含む部分は、上記層(b)から剥離できる、積層体である。
【0149】
樹脂を含む層(ca)は、前述の本発明の積層体の製造方法において、工程(5)の後の層(ca)に相当し、樹脂とは、工程(5)の層(ca)に含まれる硬化性化合物(a1)を硬化した化合物(a1c)に相当する。
【0150】
本発明の積層体は、積層体の全ヘイズから、上記積層体から上記粒子(a2)及び上記層(ca)を含む部分を取り除いてなる部分のヘイズを差し引いた値が1.00%以下であることが、低ヘイズであり、かつ反射防止性に優れた反射防止フィルムを製造するに当たり好ましい。
【0151】
本発明の積層体は、搬送性及びロール巻き取り性の観点から、層(ca)表面の保護のために層(ca)の層(b)側とは反対側の面に、更に剥離可能な部材(セパレーター)を有していてもよい。
上記セパレーターは、本発明の積層体から剥離可能な材質であれば、特に制限はないが、上記仮支持体と同様の部材を使用することもできるし、仮支持体そのものをセパレーターとして使用することもできる。
【0152】
本発明の積層体において、層(ca)の支持体側の界面の高さが、反対側の界面を起点として粒子(a2)の平均一次粒径の半分以下であることが好ましい。
また、本発明の積層体において、層(ca)の膜厚は粒子(a2)の平均一次粒径の5〜70%であることが好ましく、20〜40%であることがより好ましい。
本発明の積層体における層(ca)側の表面は、その表面粗さが30nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。
本発明の積層体は、粒子(a2)及び層(ca)を含む部分が、層(b)から剥離できる積層体であり、上述の測定法で測定した剥離力が、0.2N/25mm〜4.0N/25mmであることが好ましい。
その他、本発明の積層体における各層及び各成分についての説明、具体例及び好ましい範囲は、前述の本発明の積層体の製造方法において記載したものと同様である。
【0153】
[反射防止フィルム]
本発明の製造方法により得られる反射防止フィルムの好ましい実施形態の一例を
図3に示す。
図3の反射防止フィルム10は、基材9と反射防止層2とを有する。反射防止層2は、粒子(a2)(符号3)と層(ca)であるバインダー樹脂膜(符号4)を含む。粒子3はバインダー樹脂膜4から突出し、モスアイ構造を形成している。
【0154】
(モスアイ構造)
モスアイ構造とは、光の反射を抑制するための物質(材料)の加工された表面であって、周期的な微細構造パターンをもった構造のことを指す。特に、可視光の反射を抑制する目的の場合には、780nm未満の周期の微細構造パターンをもった構造のことを指す。微細構造パターンの周期が380nm未満であると、反射光の色味が小さくなり好ましい。また、モスアイ構造の凹凸形状の周期が100nm以上であると波長380nmの光が微細構造パターンを認識でき、反射防止性に優れるため好ましい。モスアイ構造の有無は、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)等により表面形状を観察し、上記微細構造パターンが出来ているかどうか調べることによって確認することができる。
【0155】
本発明の製造方法により製造された反射防止フィルムの反射防止層の凹凸形状は、隣り合う凸部の頂点間の距離Aと、隣り合う凸部の頂点間の中心と凹部との距離Bとの比であるB/Aが0.4以上であることが好ましい。B/Aが0.4以上であると、凸部同士の距離に対して凹部の深さが大きくなり、空気から反射防止層内部にかけてより緩やかに屈折率が変化する屈折率傾斜層を作ることができるため、反射率をより低減できる。
B/Aは0.5以上であることが更に好ましい。B/Aが0.5以上であれば、隣り合う凸部(粒子により形成される凸部)の頂点間の距離Aが粒子径以上になり、粒子間に凹部が形成されることになる。その結果、凸部上側の曲率に依存する屈折率変化の急峻な部位による界面反射と、粒子間凹部の曲率に依存する屈折率変化の急峻な部位による界面反射の両者が存在することで、モスアイ構造による屈折率傾斜層効果に加えて、より効果的に反射率が低減されるものと推測される。
B/Aは、硬化後の反射防止層におけるバインダー樹脂と粒子の体積比により制御することができる。そのため、バインダー樹脂と粒子の配合比を適切に設計することが重要である。また、バインダー樹脂がモスアイ構造を作製する工程の中で粘着剤を含む層(b)に浸透したり、揮発したりすることにより反射防止層におけるバインダー樹脂と粒子の体積比が反射防止層形成用組成物中の配合比と異なる場合もあるため、反射防止フィルムの製造に用いられる、本発明の積層体における粘着剤を含む層(b)とのマッチングを適切に設定することも重要である。
【0156】
更に、低反射率を実現し、ヘイズの発生を抑制するには凸部を形成する粒子は均一に、適度な充填率で敷き詰められていることが好ましい。上記観点から、凸部を形成する粒子(a2)の含有量は、反射防止層全体で均一になるように調整されるのが好ましい。充填率は、SEMなどにより表面から凸部を形成する無機粒子を観察したときの最も表面側に位置した粒子(a2)の面積占有率(粒子占有率)として測定することができ、25%〜64%であり、25〜50%が好ましく、30〜45%がより好ましい。
【0157】
反射防止フィルムの面の均一性をヘイズで評価することができる。測定は、フィルム試料40mm×80mmを、25℃、相対湿度60%で、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH4000で、JIS−K7136(2000年)に従って測定することができる。粒子同士が凝集し不均一であるものは、ヘイズが高くなる。ヘイズが低い方が好ましい。ヘイズの値は0.0〜3.0%が好ましく、0.0〜2.5%がより好ましく、0.0〜2.0%がさらに好ましい。
【0158】
[ハードコート層]
本発明において、基材と層(ca)の間に、さらにハードコート層を設けることができる。基材上にハードコート層を有する場合は、前述のように、本発明においては、基材上のハードコート層も含めて基材ということもある。
ハードコート層は、重合性基を有する化合物である硬化性化合物(好ましくは電離放射線硬化性化合物)の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、ハードコート層は、電離放射線硬化性の多官能モノマー、又は多官能オリゴマーを含む塗布組成物を基材上に塗布し、多官能モノマー若しくは多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマー、及び多官能オリゴマーの官能基(重合性基)としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0159】
具体的には上述した硬化性化合物(a1)と同様の化合物を用いることができる。
【0160】
フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、ハードコート層の厚さは通常0.6μm〜50μm程度であり、好ましくは4μm〜20μmである。
また、ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましい。さらに、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0161】
本発明におけるハードコート層は、反射防止層との界面から膜厚方向に1μm以内の領域にセルロースアシレートを含んでもよい。
セルロースアシレートとしては、特開2012−093723号公報の<0072>〜<0084>に記載の基材等を好ましく用いることが出来る。
反射防止層との界面から膜厚方向に1μm以内の領域にセルロースアシレートを含むハードコート層は、たとえば、セルロースアシレートを含む基材(セルロースアシレートフィルムなど)に、基材に対する浸透性を有する溶媒と硬化性化合物とを含有するハードコート層形成用組成物を塗布し、基材に硬化性化合物を浸透させ、硬化させることで形成することができる。また、セルロースアシレートと硬化性化合物とを混合し、硬化させることでも形成することができる。
【0162】
ハードコート層は、反射防止フィルムをミクロトームで切削し、断面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で分析した時に、セルロースアシレートと、電離放射線硬化性化合物の硬化物が検出される部分として測定することができ、この領域の膜厚も同様にTOF−SIMSの断面情報から測定することができる。
また、ハードコート層は、例えば光の干渉を利用した反射分光膜厚計又はTEM(透過型電子顕微鏡)による断面観察により、基材と反射防止層の中間に別の1層を検出することによっても測定することが出来る。反射分光膜厚計としては、FE−3000(大塚電子(株)製)等を用いることが出来る。
本発明では、例えば塗膜が紫外線硬化性であれば、硬化時の酸素濃度、および紫外線照射量を適宜調整することによりハーフキュアにすることができる。紫外線ランプにより1mJ/cm
2〜300mJ/cm
2の照射量の紫外線を照射して硬化するのが好ましい。5mJ/cm
2〜100mJ/cm
2であることがより好ましく、10mJ/cm
2〜70mJ/cm
2であることがさらに好ましい。照射の際には、上記エネルギーを一度に当ててもよいし、分割して照射することもできる。紫外線ランプ種としては、メタルハライドランプ又は高圧水銀ランプ等が好適に用いられる。
【0163】
硬化時の酸素濃度は0.05〜5.0体積%であることが好ましく、0.1〜2体積%であることがさらに好ましく、0.1〜1体積%であることが特に好ましい。
【0164】
(セルロースアシレートに対する浸透性を有する溶媒)
ハードコート層形成用組成物は、セルロースアシレートに対する浸透性を有する溶媒(「浸透性溶媒」とも言う)を含有することが好ましい。
セルロースアシレートに対する浸透性を有する溶媒とは、セルロースアシレートを含有する基材(セルロースアシレート基材)に対する溶解能を有する溶剤である。
ここで、セルロースアシレート基材に対して溶解能を有する溶剤とは、24mm×36mm(厚み80μm)の大きさのセルロースアシレート基材を上記溶剤の入った15mlの瓶に室温下(25℃)で60秒浸漬させて取り出した後に、浸漬させた溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で分析したとき、セルロースアシレートのピーク面積が400mV/sec以上である溶剤のことを意味する。若しくは24mm×36mm(厚み80μm)の大きさのセルロースアシレート基材を上記溶剤の入った15mlの瓶に室温下(25℃)で24時間経時させ、適宜瓶を揺らすなどして、セルロースアシレート基材が完全に溶解して形をなくすものも、セルロースアシレート基材に対して溶解能を有する溶剤を意味する。
浸透性溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)、炭酸ジメチル、酢酸メチル、アセトン、メチレンクロライド等を好ましく用いることが出来るがこれらに限定されない。メチルエチルケトン(MEK)、炭酸ジメチル、酢酸メチルがより好ましい。
【0165】
ハードコート層形成用組成物は、浸透性溶媒以外の溶媒(たとえば、エタノール、メタノール、1−ブタノール、イソプロパノール(IPA)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン等)を含んでいてもよい。
ハードコート層形成用組成物において、浸透性溶媒の含有量は、ハードコート層形成用組成物に含まれる全溶媒の質量に対して、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
ハードコート層形成用組成物の固形分濃度は、20質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。
【0166】
(その他の成分)
ハードコート層形成用組成物には、上記成分のほかに、更に溶媒、重合開始剤、帯電防止剤、防眩剤等を適宜添加することもできる。更に、反応性又は非反応性レベリング剤、各種増感剤等の各種添加剤が混合されていても良い。
【0167】
(重合開始剤)
必要に応じてラジカル及びカチオン重合開始剤等を適宜選択して用いても良い。これらの重合開始剤は、光照射及び/又は加熱により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。
【0168】
(帯電防止剤)
帯電防止剤の具体例としては、4級アンモニウム塩、導電性ポリマー、導電性微粒子等の従来公知の帯電防止剤を用いることができ、特に限定されるものではないが、安価、かつ取り扱い容易性から、4級アンモニウム塩を有する帯電防止剤であることが好ましい。
【0169】
(屈折率調整剤)
ハードコート層の屈折率を制御する目的で、屈折率調整剤として高屈折率モノマーまたは無機粒子を添加することができる。無機粒子には屈折率を制御する効果に加えて、架橋反応による硬化収縮を抑える効果もある。本発明では、ハードコート層形成後において、上記多官能モノマーおよび/又は高屈折率モノマー等が重合して生成した重合体、その中に分散された無機粒子を含んでバインダーと称する。
【0170】
(レベリング剤)
レベリング剤の具体例としては、フッ素系又はシリコーン系等の従来公知のレベリング剤を用いることが出来る。レベリング剤を添加したハードコート層形成用組成物は、塗布又は乾燥時に塗膜表面に対して塗工安定性を付与することができる。
【0171】
本発明の製造方法で製造された反射防止フィルムは、偏光板保護フィルムとして好適に用いることができる。
本発明の製造方法で製造された反射防止フィルムを用いた偏光板保護フィルムは、偏光子と貼り合せて偏光板とすることができ、液晶表示装置などに好適に用いることができる。
【0172】
[偏光板]
偏光板は、偏光子と、偏光子を保護する少なくとも1枚の保護フィルムとを有する偏光板であって、保護フィルムの少なくとも1枚が本発明の反射防止フィルムの製造方法により製造された反射防止フィルムであることが好ましい。
【0173】
偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子又はポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子及び染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造することができる。
【0174】
[カバーガラス]
本発明の反射防止フィルムの製造方法により製造された反射防止フィルムをカバーガラスに適用することもできる。
【0175】
[画像表示装置]
本発明の反射防止フィルムの製造方法により製造された反射防止フィルムを画像表示装置に適用することもできる。
画像表示装置としては、陰極線管(CRT)を利用した表示装置、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、蛍光表示ディスプレイ(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、及び液晶ディスプレイ(LCD)を挙げることができ、特に液晶表示装置が好ましい。
一般的に、液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有し、液晶セルは、2枚の電極基板の間に液晶を担持している。更に、光学異方性層が、液晶セルと一方の偏光板との間に一枚配置されるか、又は液晶セルと双方の偏光板との間に2枚配置されることもある。液晶セルは、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertically Aligned)モード、OCB(Optically Compensatory Bend)モード、IPS(In−Plane Switching)モードなど様々な駆動方式の液晶セルが適用できる。
【実施例】
【0176】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0177】
<実施例1>
(ハードコート層形成用組成物の調製)
下記に記載の組成で各成分を添加し、得られた組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層塗布液とした。
【0178】
(ハードコート層塗布液HC−1)
A−TMMT・・・33.6質量部
イルガキュア127・・・1.4質量部
メチルエチルケトン(MEK)・・・35.8質量部
酢酸メチル・・・29.2質量部
【0179】
(ハードコート層塗布液HC−2)
A−TMMT・・・24.1質量部
AD−TMP・・・11.8質量部
DPCA−60・・・12.0質量部
イルガキュア127・・・2.1質量部
AS−1・・・6.9質量部
エタノール・・・0.4質量部
メタノール・・・6.7質量部
1−ブタノール・・・4.8質量部
メチルエチルケトン(MEK)・・・16.8質量部
酢酸メチル・・・14.4質量部
FP−1・・・0.05質量部
【0180】
A−TMMT :ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業製)
イルガキュア127:光重合開始剤(BASFジャパン(株)製)
AD−TMP :ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製 NKエステル)
DPCA−60 :カプロラクトン構造含有多官能アクリレートオリゴマー(日本化薬(株)製 KAYARAD)
AS−1 :特許第4678451号公報の合成例6の反応温度と時間を70℃及び6時間としたこと以外は同様にして、上記特許文献の(A−6)に対応する化合物AS−1を作製した。出来上がった化合物AS−1は、エチレンオキサイド鎖を有する4級アンモニウム塩ポリマーであり、GPCで測定した重量平均分子量は約6万であった。
FP−1:下記式で表される含フッ素化合物
【0181】
【化2】
【0182】
[シリカ粒子P1の合成]
撹拌機、滴下装置および温度計を備えた容量200Lの反応器に、メチルアルコール67.54kgと、28質量%アンモニア水(水および触媒)26.33kgとを仕込み、撹拌しながら液温を33℃に調節した。一方、滴下装置に、テトラメトキシシラン12.70kgをメチルアルコール5.59kgに溶解させた溶液を仕込んだ。反応器中の液温を33℃に保持しながら、滴下装置から上記溶液を44分間かけて滴下し、滴下終了後、さらに44分間、液温を上記温度に保持しながら撹拌することにより、テトラメトキシシランの加水分解および縮合を行い、シリカ粒子前駆体を含有する分散液を得た。この分散液を、瞬間真空蒸発装置((ホソカワミクロン(株)社製クラックス・システムCVX−8B型)を用いて加熱管温度175℃、減圧度200torr(27kPa)の条件で気流乾燥させることにより、シリカ粒子P1を得た。
シリカ粒子P1の平均一次粒径は170nm、粒径の分散度(CV値)は3.3%、押し込み硬度は340MPaであった。
【0183】
[焼成シリカ粒子P2の作製]
5kgのシリカ粒子P1をルツボに入れ、電気炉を用いて900℃で2時間焼成した後、冷却して、次いで粉砕機を用いて粉砕し、分級前焼成シリカ粒子を得た。さらにジェット粉砕分級機(日本ニューマ社製IDS−2型)を用いて解砕および分級を行うことにより焼成シリカ粒子P2を得た。
【0184】
[シランカップリング剤処理シリカ粒子P3の作製]
5kgの焼成シリカ粒子P2を、加熱ジャケットを備えた容量20Lのヘンシェルミキサ(三井鉱山株式会社製FM20J型)に仕込んだ。焼成シリカ粒子P2を撹拌しているところに、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製KBM5103)45gを、メチルアルコール90gに溶解させた溶液を滴下して混合した。その後、混合撹拌しながら150℃まで約1時間かけて昇温し、150℃で12時間保持して加熱処理を行った。加熱処理では、掻き落とし装置を撹拌羽根とは逆方向に常時回転させながら、壁面付着物の掻き落としを行った。また、適宜、へらを用いて壁面付着物を掻き落とすことも行った。加熱後、冷却し、ジェット粉砕分級機を用いて解砕および分級を行い、シランカップリング剤処理シリカ粒子P3を得た。
シランカップリング剤処理シリカ粒子P3の平均一次粒径は171nm、粒径の分散度(CV値)は3.3%、押し込み硬度は470MPaであった。
【0185】
[シリカ粒子分散液PA−1の作製]
シランカップリング剤処理シリカ粒子P3を50g、MEK200g、直径0.05mmジルコニアビーズ600gを直径12cmの1L瓶容器に入れ、ボールミルV−2M(入江商会)にセットし、250回転/分で10時間分散した。このようにして、シリカ粒子分散液PA−1(固形分濃度20質量%)を作製した。
【0186】
[化合物C3の合成]
還流冷却器、温度計を付けたフラスコに3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン19.3gとグリセリン1,3−ビスアクリラート3.9g、2−ヒドロキシエチルアクリレート6.8g、ジラウリン酸ジブチル錫0.1g、トルエン70.0gを添加し、室温で12時間撹拌した。撹拌後、メチルハイドロキノン500ppmを加え、減圧留去を行い化合物C3を得た。
【0187】
【化3】
【0188】
[層(a)形成用組成物の調製]
下記の組成となるように各成分をミキシングタンクに投入し、60分間攪拌し、30分間超音波分散機により分散し、塗布液とした。
【0189】
組成物(A−1)
U−15HA・・・1.4質量部
化合物C3・・・1.5質量部
A−TMPT・・・1.7質量部
クエン酸トリエチル・・・4.1質量部
イルガキュア127・・・0.2質量部
化合物P・・・0.1質量部
FP−2・・・0.1質量部
シリカ粒子分散液PA−1・・・32.3質量部
エタノール・・・12.7質量部
メチルエチルケトン・・・33.2質量部
アセトン・・・12.7質量部
【0190】
組成物(A−2)
U−15HA・・・1.4質量部
化合物C3・・・1.5質量部
A−TMPT・・・1.7質量部
スベリン酸ジメチル・・・4.1質量部
イルガキュア127・・・0.2質量部
化合物P・・・0.1質量部
FP−2・・・0.1質量部
シリカ粒子分散液PA−1・・・32.3質量部
エタノール・・・12.7質量部
メチルエチルケトン・・・33.2質量部
アセトン・・・12.7質量部
【0191】
組成物(A−3)
U−15HA・・・1.4質量部
化合物C3・・・1.5質量部
A−TMPT・・・1.7質量部
KBM−4803・・・4.1質量部
イルガキュア127・・・0.2質量部
化合物P・・・0.1質量部
FP−2・・・0.1質量部
シリカ粒子分散液PA−1・・・32.3質量部
エタノール・・・12.7質量部
メチルエチルケトン・・・33.2質量部
アセトン・・・12.7質量部
【0192】
U−15HA、化合物C3、及びA−TMPTが硬化性化合物(a1)である。
【0193】
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
U−15HA(新中村化学工業(株)製):ウレタンアクリレート
A−TMPT:多官能アクリレート(新中村化学工業(株)製)
クエン酸トリエチル:エステル系化合物(東京化成工業(株)製)
スベリン酸ジメチル:エステル系化合物(東京化成工業(株)製)
KBM−4803:ラジカル反応性基以外の反応性基を有するシランカップリング剤(信越化学工業(株)製)
イルガキュア127:光重合開始剤(BASFジャパン(株)製)
化合物P:下記構造式で表される光酸発生剤(和光純薬(株)製)
【0194】
【化4】
【0195】
FP−2 :下記式で表される含フッ素化合物
【0196】
【化5】
【0197】
<反射防止フィルム1の作成>
(工程(1) 層(a)の塗工)
仮支持体として100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(FD100M、富士フイルム(製))上に、組成物(A−1)をダイコーターを用いて2.8ml/m
2塗布し、30℃で90秒乾燥させた。
【0198】
(工程(2) 層(a)のプレ露光)
酸素濃度が1.4体積%の雰囲気になるように窒素パージしながら、高圧水銀ランプ(Dr.honle AG社製 型式:33351N 部品番号:LAMP−HOZ 200 D24 U 450 E)を用いて層(a)側から照射量2.4mJ/cm
2、照度0.60mWで光照射し、硬化性化合物(a1)の一部を硬化させて層(ca)を得た。なお、照射量の測定は、アイグラフィック社製 アイ紫外線積算照度計 UV METER UVPF−A1にHEAD SENSER PD−365を取り付け、測定レンジ0.00にて測定した。
【0199】
(工程(3) 粘着フィルムの貼り合わせ)
次いで、層(ca)上に、藤森工業(株)製の保護フィルム(マスタックTFB AS3−304)から剥離フィルムを剥離して得られる粘着フィルムを、粘着剤層(層(b))が層(ca)側になるように貼り合わせた。貼り合わせには、業務用ラミネーターBio330(DAE−EL Co.製)を使用し、速度1で実施した。
なお、ここでの保護フィルムとは、支持体/粘着剤層/剥離フィルムから構成される積層体を指し、保護フィルムから剥離フィルムを剥がした、支持体/粘着剤層から構成される積層体が粘着フィルムである。
【0200】
使用した保護フィルムを以下に示す。
・マスタックTFB AS3−304(藤森工業(株)製 帯電防止機能付き光学用保護フィルム)(以下、「AS3−304」ともいう)
支持体:ポリエステルフィルム(厚み38μm)
粘着剤層厚み:20μm
剥離フィルムを剥がした状態での波長250nm〜300nmにおける最大透過率:0.1%未満
【0201】
透過率の測定は、島津製作所(株)製の紫外可視近赤外分光光度計UV3150を用いて行った。
【0202】
(工程(4) 硬化性化合物(a1)の層(b)への浸透)
粘着フィルムの貼り合わせ後、25℃の環境下で5分間静置し、硬化性化合物(a1)を層(b)へ浸透させた。
【0203】
(工程(4−2) 層(ca)の部分硬化)
続いて、酸素濃度が0.01体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、支持体の層(ca)側とは反対側から照度150mW/cm
2、照射量600mJ/cm
2の紫外線を照射して層(ca)の一部を硬化させた。
【0204】
(工程(5) 仮支持体の剥離 積層体の作製)
上記積層体から、仮支持体であるFD100Mを180°方向に速度30m/minで剥離した。このようにして本発明の実施例である積層体1を作製した。
【0205】
(ハードコート層付き基材の作製)
−ハードコート層の形成− 基材(TJ25、富士フイルム(株)製)上にハードコート層塗布液HC−1をダイコーターを用いて17.3ml/m
2塗布した。90℃で1分間乾燥した後、酸素濃度がおよそ1.5体積%の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度18mW/cm
2、照射量10mJ/cm
2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ8μmのハードコート層を形成した。上記ハードコート層付き基材を「HC−1」とする。
【0206】
(工程(6) 基材の貼り合せ)
上記ハードコート層付き基材HC−1のハードコート層側と工程(5)で仮支持体を取り除いた積層体1の層(ca)側を貼り合わせた。貼り合わせには、業務用ラミネーターBio330(DAE−EL Co.製)を使用し、速度1で実施した。
【0207】
(工程(7) 層(ca)の部分硬化)
続いて、酸素濃度が0.01体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、支持体の層(ca)側とは反対側から照度150mW/cm
2、照射量600mJ/cm
2の紫外線を照射して層(ca)の一部を硬化させた。
【0208】
(工程(8) 粘着フィルムの剥離)
上記作製した積層体から粘着フィルム(マスタックTFB AS3−304から剥離フィルムを剥がしたもの)を剥離した。
【0209】
(工程(9) 層(ca)の硬化)
続いて、酸素濃度が0.01体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、層(ca)の基材とは反対側から照度150mW/cm
2、照射量600mJ/cm
2の紫外線を照射して層(ca)を硬化させた。
【0210】
(工程(10) 洗浄)
続いて、粘着フィルムが貼り合わせてあった面にメチルイソブチルケトンを掛け流して粘着剤層の残渣を洗い流した。その後、25℃で10分乾燥して反射防止フィルム1を得た。
【0211】
仮支持体の種類、層(a)形成用組成物の種類、粘着フィルム(保護フィルム)の種類、工程(2)におけるプレ露光の露光量、使用したハードコート層塗布液の種類または基材の種類を表1のように変更した以外は積層体1及び反射防止フィルム1の作製と同様にして積層体2〜9及び反射防止フィルム2〜9を作製した。なお、前述のように、粘着フィルムとは、保護フィルムから剥離フィルムを剥がした、支持体と粘着剤層からなる積層体である。表1には使用した保護フィルムの種類を記載した。
【0212】
上記以外で使用した仮支持体を以下に示す。
ZF14:100μmのシクロオレフィン系樹脂フィルム(ZEONOR ZF−14、日本ゼオン(製))
【0213】
上記以外で使用した保護フィルムを以下に示す。
・マスタックTFB AS3−310(藤森工業(株)製 帯電防止機能付き光学用保護フィルム)(以下、「AS3−310」ともいう)
支持体:ポリエステルフィルム(厚み38μm)
粘着剤層厚み:15μm
剥離フィルムを剥がした状態での波長250nm〜300nmにおける最大透過率:0.1%未満
【0214】
上記以外で使用した基材を以下に示す。
HC−2:ハードコート層付き基材HC−1の作製において、ハードコート層塗布液HC−1の代わりにハードコート層塗布液HC−2を用いた以外は同様にして作製したハードコート層付き基材である。
FD100M:100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(FD100M、富士フイルム(製)
【0215】
(反射防止フィルムの評価方法)
以下の方法により反射防止フィルムの諸特性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0216】
(積分反射率)
反射防止フィルムの裏面(基材側)をサンドペーパーで粗面化した後に油性黒インキ(補填用マジックインキ:寺西化学)を塗り、裏面反射をなくした状態で、分光光度計V−550(日本分光(株)製)にアダプターARV−474を装着して、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における積分反射率を測定し、平均反射率を算出して反射防止性を評価した。
【0217】
(全ヘイズ)
面の均一性をヘイズ値で評価した。得られた反射防止フィルムの全ヘイズ値(%)をJIS−K7136(2000年)に準じて測定した。装置には日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH4000を用いた。粒子同士が凝集し不均一であるものは、ヘイズが高くなるため、ヘイズが低い方が好ましい。
【0218】
(転写性)
30cm×30cmの大きさに裁断した反射防止フィルムの転写面(反射防止層を有する面)とは反対側に、粘着剤付き黒色ポリエチレンテレフタレートシート(巴川製紙所製;「くっきりみえーる」)をラミネートして貼り合わせ、目視観察することで下記評価基準に従い転写性を評価した。粘着剤付き黒色ポリエチレンテレフタレートシートを反射防止フィルムに貼り合わせ、光をあてながら目視観察することで、反射防止層を転写する前の基材に比べて反射率が下がっている領域(転写できている領域)と元の基材同等まで反射率が上がっている領域(転写できていない領域)を目視確認することができる。また、転写ムラが発生している場合には、転写できている領域のなかで反射率のムラが視認される。転写できている領域の割合は、転写できていない領域を白いマジックで塗りつぶし、画像をスキャナーで取り込み面積を求めることで定量化した。
(評価基準)
A:転写できている領域の割合が90%以上であり、転写ムラが視認されない。
B:転写できている領域の割合が90%以上であり、転写ムラが視認される。
C:転写できている領域の割合が80%以上90%未満である。
D:転写できている領域の割合が80%未満である。
転写性はA〜Cであることが実用上必要であり、A〜Bであることがより好ましく、Aであると転写により作製される反射防止フィルムの信頼性が高くなるため最も好ましい。
【0219】
(積層体の評価方法)
工程(5)の完了により作製された積層体1〜9の諸特性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0220】
(Δヘイズ)
工程(5)が完了して得られる積層体と、使用した粘着フィルムのヘイズを支持体側入射で測定し、差し引くことでΔヘイズを算出した。ヘイズの測定は、各試料40mm×80mmを、25℃、相対湿度60%で、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH4000で、JIS−K7136(2000年)に従って測定した。
【0221】
(表面粗さ)
工程(5)が完了して得られる積層体における層(ca)側の表面の表面粗さを測定した。表面粗さはSPA−400(日立ハイテクノサイエンス製)を使用し、測定範囲5μm×5μm、測定モード:DFM,測定周波数:2Hzの測定条件で測定することで得られる表面凹凸形状から算出した値を用いた。
【0222】
(剥離力)
幅25mmの転写部材(工程(5)が完了して得られる積層体)の支持体側とは反対側の面の粒子(a2)及び層(ca)を接着剤を用いて厚み1.1mmのガラス基材に固定化し、粒子(a2)及び層(ca)からなる部分と層(b)を90°方向に速度1000mm/minで剥離させたときの剥離力を測定した。ただし、粒子(a2)及び層(ca)からなる部分と層(b)の界面で剥離しない場合は、測定不能とした。界面剥離が起きているかどうかの判断は剥離後の層(b)をSEMまたはAFMで観察し、粒子が観察されるかどうかで確認した。
【0223】
【表1】
【0224】
実施例1〜8の本発明の積層体1〜8は、Δヘイズ値及び表面粗さが小さく、剥離力が適度で、基材への良好な転写性を有することが分かった。これに対して、比較例1の積層体は、工程(2)において露光を行っていないため、粒子(a2)が規則的に配置されず、Δヘイズ値及び表面粗さが高くなり、基材へ転写することが満足にできなかった。
また、実施例1〜8の積層体を用い、本発明の製造方法によって得られた反射防止フィルム1〜8は、ヘイズが低く、良好な反射防止性能を有することが分かった。
本発明の積層体は上記のように良好な転写性を有する転写部材であり、様々な形状を有する反射防止フィルム形成用基材に対しても適用することができるものである。