特許第6802937号(P6802937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6802937
(24)【登録日】2020年12月1日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】水晶振動子の収容ケース
(51)【国際特許分類】
   H03H 3/02 20060101AFI20201214BHJP
   B65D 85/38 20060101ALI20201214BHJP
   G01B 17/02 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   H03H3/02 A
   B65D85/38 300
   G01B17/02 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-26370(P2020-26370)
(22)【出願日】2020年2月19日
【審査請求日】2020年9月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】海田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】小熊 洋介
【審査官】 志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−087490(JP,A)
【文献】 特開2012−169168(JP,A)
【文献】 特開2013−242215(JP,A)
【文献】 特開2014−007290(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0065403(US,A1)
【文献】 米国特許第09920418(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D85/30−B65D85/48
C23C14/00−14/58
G01B17/00−G01B17/08
H01L21/68
H03H3/007−H03H3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空雰囲気での成膜処理中に共振周波数を測定することでその表面に成膜される薄膜の膜厚をモニタするために利用される水晶振動子の収容ケースにおいて、
上面に、水晶振動子の主面を上下方向に向けた水平姿勢での水晶振動子の収容を可能とする複数個の第1凹部が第1仮想円周上に間隔を置いて設けられたケース本体と、ケース本体にその上方から着脱自在に装着される第1キャップ体と、ケース本体に対して第1キャップ体を係止する係止手段とを備え、この係止手段によりケース本体に第1キャップ体が係止された状態で第1凹部に収容された水晶振動子の飛び出しが規制されるように構成したことを特徴とする水晶振動子の収容ケース。
【請求項2】
前記第1凹部の周囲にこれに連続させてこの第1凹部より小面積の第2凹部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の水晶振動子の収容ケース。
【請求項3】
前記第1凹部に、この第1凹部にその上方から落とし込まれた水晶振動子をその外縁部で支持する支持片が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の水晶振動子の収容ケース。
【請求項4】
ケース本体への第1キャップ体の装着に先立って、ケース本体にその上方から着脱自在に装着できる第2キャップ体を備え、ケース本体の上面に対向する第2キャップ体の面に、いずれか1個の第1凹部を臨み、第1凹部に収容された水晶振動子の取り出しを可能とする取出開口が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の水晶振動子の収容ケース。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の水晶振動子の収容ケースであって、
回転中心を中心とする第2仮想円周上に間隔を置いて複数枚の水晶振動子が設置される設置凹部を備える水晶発振式膜厚モニタ用センサヘッドのホルダに、未使用の水晶振動子をセットできるようにしたものにおいて、
ホルダがその水晶振動子の設置面に回転中心を通る軸線を持つボス部が形成されたものとし、前記第1キャップ体の上面に、ボス部が嵌合して第1仮想円と第2仮想円とを同心に一致させる嵌合凹部が設けられると共に、第1凹部と設置凹部とが上下方向で合致するようにホルダに対する第1キャップ部の位相決めをする位相決め手段が設けられていることを特徴とする水晶振動子の収容ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空雰囲気での成膜処理中に共振周波数を測定することでその表面に成膜される薄膜の膜厚をモニタするために利用される水晶振動子の収容ケースに関し、より詳しくは、水晶発振式膜厚モニタ用センサヘッドのホルダに簡単に水晶振動子をセット(移し替え)できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば真空蒸着法により成膜対象物としての基板に所定の薄膜を成膜する際に、基板に付着した蒸着材料の膜厚をモニタするために水晶発振式膜厚モニタが一般に利用される。この種の水晶発振式膜厚モニタは例えば特許文献1で知られている。このものは、センサヘッドを備え、センサヘッドが、ステッピングモータ(真空パルスモータ)などの駆動手段を有するセンサヘッド本体と、複数枚の水晶振動子が仮想円周上に間隔を置いて設置されて駆動手段により回転駆動されるホルダとを有する。センサヘッド本体からホルダに向かう方向を上として、各水晶振動子が設置されるホルダの上面にはこれを覆うようにマスク体が設置され、マスク体の所定位置には1個の水晶振動子の主面(蒸着材料が付着する面)を臨む成膜用窓が開設されている。
【0003】
真空雰囲気での成膜処理時には、水晶振動子の共振周波数を測定することで、成膜用窓を通して水晶振動子の主面に成膜される薄膜の膜厚がモニタされる。そして、例えば、成膜される薄膜の膜厚が増加するのに従い、測定される共振周波数が所定範囲を超えて変化すると、寿命と判断される。モニタに使用されている水晶振動子が寿命に達すると、ステッピングモータにより次の水晶振動子と成膜用窓とが上下方向で合致する位相までホルダが回転される。この操作を繰り返し、センサヘッドのホルダに設置された全ての水晶振動子が寿命に達すると、成膜処理が中断され、作業者により大気雰囲気中にてセンサヘッド本体からホルダが取り外されて、各水晶振動子が交換されることになる。このような水晶振動子は、通常、専用の収容ケースに収容した状態で持ち運びされる。
【0004】
複数枚の水晶振動子を収納できるようにした水晶振動子の収容ケースは例えば特許文献2で知られている。このものは、円筒状のケース本体(トレイ部分)と、ケース本体にその上方から回転自在に装着されるキャップ体(カバー部分)とを備える。ケース本体の上面外周縁部には周方向に所定間隔で複数個の支持スロット(収容部)が凹設されている。そして、各支持スロットに、その上方から円形の輪郭を持つ水晶振動子が、その主面を上下方向と直交する方向を向けた垂直姿勢で収容され、水晶振動子がその外周縁部のみで支持されるようになっている。
【0005】
キャップ体には、いずれか1個の支持スロットと上下方向で合致するスロット開口が設けられている。そして、スロット開口を通して、支持スロットに収容された1個の水晶振動子がピンセットなどの取出工具を用いて取り出すことができるようになっている。然し、上記従来例のものでは、作業者が取出工具を用いて水晶振動子を支持スロットから取り出すとき、主面を含む水晶振動子の表裏両面を取出工具で挟持する必要があり、取出工具によりその表面を傷付け易いという問題がある。また、ホルダに複数枚(例えば、12個)の水晶振動子をセットする場合に、各水晶振動子を各支持スロットから取り出しながら一枚ずつセットするのでは手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3953505号公報
【特許文献2】米国特許第6991110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、取出工具を用いて水晶振動子を取り出すときにその主面が傷付くことが可及的に抑制でき、また、センサヘッドのホルダに複数枚の水晶振動子をセットするときでもその作業性を向上することができる水晶振動子の収容ケースを提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、真空雰囲気での成膜処理中に共振周波数を測定することでその表面に成膜される薄膜の膜厚をモニタするために利用される本発明の水晶振動子の収容ケースは、上面に、水晶振動子の主面を上下方向に向けた水平姿勢での水晶振動子の収容を可能とする複数個の第1凹部が第1仮想円周上に間隔を置いて設けられたケース本体と、ケース本体にその上方から着脱自在に装着される第1キャップ体と、ケース本体に対して第1キャップ体を係止する係止手段とを備え、この係止手段によりケース本体に第1キャップ体が係止された状態で第1凹部に収容された水晶振動子の飛び出しが規制されるように構成したことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ケース本体の上面に設けられた各第1凹部に各水晶振動子が水平姿勢で夫々収容されている。このため、作業者が、第1キャップ体を取り外して第1凹部に収容された1枚の水晶振動子を取り出す場合、ピンセットなどの取出工具で水晶振動子の外縁部を挟持できるので、その主面を傷付けることを可及的に抑制することができる。また、持ち運びの際には、係止手段によりケース本体に第1キャップ体が係止され、この状態では、例えば、複数個の第1凹部が形成されたケース本体の上面に対峙する第1キャップ体の面で水晶振動子の飛び出しが規制される。このため、持ち運び時の振動等で水晶振動子が破損するといった不具合も生じない。なお、本発明において、「水晶振動子が水平姿勢で収容される」といった場合、ケース本体を水平面上に設置した際に水晶振動子が厳密に水平面に平行になるような場合だけでなく、水晶振動子が水平面に対して傾斜した状態で収容されるような場合も含む。
【0010】
本発明において、前記第1凹部の周囲にこれに連続させてこの第1凹部より小面積の第2凹部が設けられていることが好ましい。これによれば、作業者がピンセットなどの取出工具で水晶振動子の外周縁部を挟持するのに際して、第2凹部が水晶振動子に接触しないように取出工具の先端部分を受け入れる役割を果たし、水晶振動子の主面を傷付けることをより一層抑制することができる。なお、各第2凹部は、第1凹部の周囲に対称に2個設けることもできるが、例えば、各第1凹部の径方向内側にまたは外側に統一して1個の第2凹部を夫々設けるようにしてもよい。この場合、収容ケースの小型化を図る上では、各第1凹部の径方向内側だけに各第2凹部を設けることが好ましい。一方、例えば、第2凹部を第1仮想円周上に位置させることもでき、このとき、互いに隣接する第1凹部が第2凹部を介して連通させるように(言い換えると、第1凹部と第2凹部とが周方向に連なった環状の溝で)構成してもよい。その他、第1凹部の径を取出工具の先端部分を受け入れることが可能な寸法とし、後述する外縁部を切り欠くことによって、第2凹部を形成してもよい。
【0011】
また、本発明において、前記第1凹部に、この第1凹部にその上方から落とし込まれた水晶振動子をその外縁部で支持する支持片が形成されている構成を採用することができる。これにより、持ち運び時の振動等で水晶振動子の主面やその裏面が傷付くことを抑制することができ、有利である。この場合、支持片により第1凹部にその上方から落とし込まれた水晶振動子の水平方向の移動が規制されるようにしてもよく、他方で、第1凹部にその上方から落とし込まれた水晶振動子の外縁部が支持されたとき、第1凹部の起立壁部の内面(また、その内面に形成した別要素)で水晶振動子の水平方向の移動が規制されるようにしてもよい。
【0012】
また、本発明においては、ケース本体への第1キャップ体の装着に先立って、ケース本体にその上方から着脱自在に装着できる第2キャップ体を備え、ケース本体の上面に対向する第2キャップ体の面に、いずれか1個の第1凹部を臨み、第1凹部に収容された水晶振動子の取り出しを可能とする取出開口が形成されている構成を採用してもよい。これによれば、第1凹部に収容された一枚の水晶振動子を取り出す際、それ以外の第1凹部に収容された各水晶振動子はその飛び出しが規制される状態に維持できるため、作業者が一枚の水晶振動子を取り出す際に、誤って他の水晶振動子を破損するといった不具合を回避することができる。
【0013】
また、回転中心を中心とする第2仮想円周上に間隔を置いて複数枚の水晶振動子が設置される設置凹部を備える水晶発振式膜厚モニタ用センサヘッドのホルダに、未使用の水晶振動子をセットするような場合には、ホルダがその水晶振動子の設置面に回転中心を通る軸線を持つボス部が形成されたものとし、前記第1キャップ体の上面に、ボス部が嵌合して第1仮想円と第2仮想円とを同心に一致させる嵌合凹部が設けられると共に、第1凹部と設置凹部とが上下方向で合致するようにホルダに対する第1キャップ部の位相決めをする位相決め手段が設けられていることが好ましい。
【0014】
これによれば、センサヘッドに設置された全ての水晶振動子が寿命に達すると、作業者は、センサヘッド本体からホルダを取り外して使用済みの各水晶振動子をホルダから取り除く。そして、ケース本体から第1キャップ体(第2キャップ体がある場合には、第1及び第2のキャップ体)を取り外した後、ホルダをその上方からそのボス部を嵌合凹部に嵌合させながらケース本体上に設置する。このとき、位相決め手段により第1凹部と設置凹部とが上下方向で合致する姿勢とする。次に、ホルダとケース本体とを一体に上下反転させると、第1凹部に収容された各水晶振動子が設置凹部へと移し替えられる。最後に、ホルダ上のケース本体を上方に持上げて分離した後、ホルダがセンサヘッド本体に再装着される。このように本発明では、特段、ピンセットなどの取出工具を用いることなく、ケース本体に収容される複数枚の水晶振動子を一度の作業でホルダの設置凹部へと夫々セットする(移し替える)ことができる。その結果、その作業性を上記従来例のものと比較して飛躍的に向上することができ、しかも、その主面を傷付けるといった不具合も生じない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の水晶振動子の収容ケースを示す分解斜視図。
図2】収容ケースの第1凹部での水晶振動子の支持状態を拡大して示す部分斜視図。
図3】第1キャップ体を取り外した状態で示す収容ケースの斜視図。
図4】水晶発振式膜厚モニタのセンサヘッドの部分断面図。
図5】(a)及び(b)は、収容ケースからセンサヘッドのホルダへの水晶振動子の移し替えを説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、ホルダに円形の輪郭を持つ12枚の水晶振動子が設置できるセンサヘッドを有する水晶発振式膜厚モニタに適したものを例に本発明の水晶振動子の収容ケースの実施形態を説明する。以下において、上、下等の方向を示す用語は図1の姿勢を基準とする。なお、水晶振動子Cyや、この水晶振動子Cyの共振周波数を測定するための部材、要素としては、公知のものが利用できるため、具体的な膜厚モニタの測定手法を含め、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0017】
図1図3を参照して、SCは、ケース本体1と、第1キャップ体2と、第2キャップ体3とを備える本実施形態の水晶振動子の収容ケースである。ケース本体1は、例えば合成樹脂製であり、略正方径の輪郭を持つベース板部1aと、ベース板部1aの上面に設けられた円筒状の台座部1bとで構成される。台座部1bの上面にはその中央部に位置させて円形の輪郭を持つ嵌合凹部11が設けられ、後述するセンサヘッドのボス部やキャップ体の凸部を嵌合させることができるようにしている。台座部1bの上面にはまた、水晶振動子Cyと同等の輪郭を有し、水晶振動子Cyの主面が上下方向を向く水平姿勢で水晶振動子Cyを収容できる第1凹部12が設けられている。第1凹部12は、センサヘッドに設置される水晶振動子Cyの数に一致させて、嵌合凹部11の孔軸を中心とする第1仮想円周Vc1上に所定間隔で設けられている。この場合、第1仮想円周Vc1は、後述のホルダの第2仮想円周Vc2に一致させて形成されている。
【0018】
第1凹部12の起立壁部12aには、図2に示すように、その内方に向けて突出する支持片13が設けられ、支持片13により、各第1凹部12にその上方から落とし込まれる水晶振動子Cyがその外縁部で支持されるようにしている。この場合、支持片13により水晶振動子Cyがその外縁部で支持された状態では、起立壁部12aの内面で水晶振動子Cyの水平方向の移動が規制されるようになっている。また、支持片13で水晶振動子Cyが支持された状態で水晶振動子Cyの上面がケース本体1の上面より一段低くなるようにその高さ位置が設置されている。台座部1bの上面にはまた、第1凹部12の周囲にこれに連続させて第1凹部12より小径(小面積)の2個の第2凹部14が対称に設けられている。本実施形態では、各第2凹部14が第1凹部12の径方向内側と径方向外側との夫々対をなすように配置されている。なお、2個の第2凹部14を設けるものを例に説明しているが、これに限定されるものではなく、特に図示して説明しないが、各第1凹部12の径方向内側にまたは外側に統一して1個の第2凹部14を夫々設けるようにしてもよい。この場合、収容ケースSCの小型化を図る上では、各第1凹部12の径方向内側だけに各第2凹部14を設けることが好ましい。一方、例えば、第2凹部14を第1仮想円周Vc1上に位置させることもでき、このとき、互いに隣接する第1凹部12が第2凹部14を介して連通するように(言い換えると、第1凹部12と第2凹部14とが周方向に連なった環状の溝で)構成してもよい。
【0019】
台座部1bの外周面には、径方向内方に窪む切欠き溝15が形成され、後述のセンサヘッドに設けられるピン部材が係合すると、センサヘッドに対してケース本体1が位相決めされるようにしている。本実施形態では、これら切欠き溝15とピン部材とで位相決め手段を構成するようにしている。内蓋としての役割を果たす第2キャップ体3は、円盤状の蓋板部3aと蓋板部3aの外縁部から立設させた筒状の周壁部3bとを備える合成樹脂製のものである。蓋板部3aの中央部には、図3に示すように、ケース本体1の嵌合凹部11に嵌合可能な凸部31が形成され、蓋板部3aを上側にしてケース本体1の台座部1bの上方から、凸部31を嵌合凹部11に嵌め込みながら台座部1bに着脱自在に装着できるようになっている。この場合、凸部31を嵌合凹部11に嵌合した状態で第2キャップ体3の嵌合凹部11の孔軸回りの回転を阻害しないように第2キャップ体3の外形が設定されている。第2キャップ体3の蓋板部3aにはまた、第1凹部12と第2凹部14とを併せて輪郭を持つ取出開口32が開設され、台座部1bへの装着状態で各第1凹部12に収容された水晶振動子Cyが臨むようになっている。
【0020】
外蓋としての役割を果たす第1キャップ2は、第2キャップ体3と同様に、円盤状の蓋板部2aと蓋板部2aの外縁部から立設させた筒状の周壁部2bとを備える合成樹脂製のものである。蓋板部2aの中央部には、第2キャップ体3が存在するときには凸部31の内方空間に、第2キャップ体3が存在しないときにはケース本体1の嵌合凹部11に嵌合可能な凸部21が形成されている。そして、蓋板部2aを上側にしてケース本体1の台座部1bの上方から、凸部21を嵌合凹部11や第2キャップ体3の凸部31内方空間に嵌め込みながら台座部1bに着脱自在に装着され、台座部1bの上面及び周壁を覆うようになっている。
【0021】
周壁部2bの下端部には、その外方に向けて突出させた突条22が設けられ、ベース板部1aの上面には、突条22を係止する複数個の係止突起16が設けられている。そして、蓋板部2aを上側にしてケース本体1の台座部1bの上方から第1キャップ体2をケース本体1の周壁部2bに装着し、第1キャップ体2を下方に向けて押すと、突条22が係止突起16に係止される。この状態では、第2キャップ体3が存在するときには、第1キャップ体2の蓋板部2aが第2キャップ体3の蓋板部3aを周壁部2bの上面に向けて押圧することでこの蓋板部3aの内面により、または、第2キャップ体3が存在しないときには、ケース本体1の上面に対向する第1キャップ体2の蓋板部2aの内面で、第1凹部12に収容された水晶振動子Cyの飛び出しが規制される。以下に、図4及び図5も参照して、収容ケースSCに収容された各水晶振動子Cyの水晶発振式膜厚モニタのセンサヘッドShへのセット手順を説明する。
【0022】
水晶発振式膜厚モニタのセンサヘッドShは、図4に示すように、ステッピングモータSmがその内部に配置されると共に電極41が設けられたセンサヘッド本体4と、複数の水晶振動子Cyが設置されてステッピングモータSmにより回転駆動されるホルダ5と、各水晶振動子Cyが設置されるホルダ5の上面を覆うようにセンサヘッド本体4に取り付けられると共にいずれか1個の水晶振動子Cyが臨む成膜用窓61が開設されたマスク6とを備える。
【0023】
ホルダ5は、ステッピングモータSmの回転軸Ar(回転中心)を中心とする第2仮想円周Vc2上に所定間隔で12個の水晶振動子Cyが設置される設置凹部51を備えるステンレス鋼製の保持板部5aと、保持板部5aの下面に一体に固定されたフッ素樹脂製のリング板部5bとを有し、センサヘッド本体4の所定位置に着脱自在に設置されるようになっている。また、保持板部21の上面(水晶振動子Cyの設置面)にはまた、回転中心を通る軸線を持つボス部52が形成されると共に、その周囲の所定位置にはピン部材53が立設されている。また、保持板部5aには、設置凹部51に夫々収納された水晶振動子Cyに導通する羽型電極23が保持されて、羽型電極23が電極41に当接して導通するようになっている。なお、ここで説明したセンサヘッドShは、一例に係るものであり、第2仮想円周Vc2上に所定間隔で水晶振動子Cyが設置される複数個の設置凹部51を備える公知のものが利用できるため、これ以上の説明は省略する。
【0024】
収容ケースSCは、その各第1凹部12に未使用の水晶振動子Cyがその主面を上方(または下方)にして夫々収容された状態で、蓋板部3aの凸部31をケース本体1の嵌合凹部11に嵌合させながら第2キャップ体3が装着された後、蓋板部2aの凸部21を第2キャップ体3の凸部31の内方空間に嵌合させると共に突条22を係止突起16に係止させて第1キャップ体2が装着された状態となっており、この状態で収容ケースSCが持ち運びされる。作業者が、ホルダ5にセットされた水晶振動子Cyを交換する場合、センサヘッド本体4からホルダ5を取り外し、使用済みの各水晶振動子Cyをホルダから取り除く。収容ケースSCでは、ケース本体1から第1キャップ体2、第2キャップ体3の順でこれらが取り外された後、水晶振動子Cyを収容する第1凹部12が鉛直方向上方を向く姿勢でケース本体1を例えば水平なテーブル(図示せず)上に設置される。具体的には、ケース本体1から第1キャップ体2を取り外す場合、作業者は、周壁部2bの外面を指で押して、突条22を係止突起16との係止位置よりその内方(第1仮想円周Vc1の中心方向)へと第1キャップ体2の周壁部2bを変形させて係止不能な相対位置とし、その上で更に上方(ケース本体1と第1キャップ体2の相対位置で離間方向)へと変形させ、係止突起16の上方位置まで突条22を移動させた後、作業者の指による周壁部2bに対してなしていたその変形力をゆっくりと解除する。
【0025】
仮に、複数個の係止突起16のうち一つに対してのみ上記作業を行ったとすると、解除を行った係止突起16の両隣の突条22と係止突起16とは係止されたままであるため、指で変形力をゆっくりと解除した際に対応する当該突条22の位置は係止突起16の外周面上、上方付近で安定する。この作業を繰り返して、全ての突条22を各係止突起16との係止位置から別位置へと動作させることで、ケース本体1から第1キャップ体2が係止位置から離脱可能となる。なお、作業者の指により第1キャップ体2を変形させて両者の係止を解除するため、変形力の解除を衝撃的に行ってしまう場合がある。この衝撃は、ケース本体1から第1凹部12に収容される水晶振動子Cyに伝達され、離脱し、第1凹部12から水晶振動子Cyが逸脱する状況となる原因となるが、第2キャップ体3は第1キャップ体2によって正規の位置に係止された状況であるので、逸脱が防止されている。
【0026】
一方、ケース本体1に対する第1キャップ体2の係止方法を次のようにすることができる。即ち、特に図示して説明しないが、例えば、第1キャップ体2の周壁部2b内面とケース本体1の台座部1bの外面とのいずれか一方に螺旋溝を形成すると共にその他方に螺旋溝に螺合する突起(または突条)を形成し、または、第1キャップ体2の周壁部2b内面とケース本体1の台座部1bの外周との双方を上方から見た際に楕円とすることで、楔の物理法則を用いた係止方法とすることができる。これにより、ケース本体1と第1キャップ体2の相対回転にて楔による固定と離脱が可能となる。楔の固定から離脱の際に多少の衝撃発生が見込まれるが、各突条22と各係止突起16の離脱方向が水晶振動子Cyに対して上下方向であることに比べて回転による離脱による衝撃は仮想円周方向であり、第1凹部12の起立壁部12aがその衝撃を受け止められる構造となるので、第2キャップ体3を不要とできる。そして、使用済みの各水晶振動子Cyが取り除かれたホルダ5をケース本体1の上方からそのボス部52を嵌合凹部11に嵌合させながらケース本体1上に配置する(図5(a)参照)。このとき、ケース本体1の切欠き溝15にピン部材53を挿通させることでケース本体1に対してホルダ5が位相決めされ、第1仮想円と第2仮想円とを同心に一致させる嵌各第1凹部12と各設置凹部51とが上下方向で合致する姿勢となる。
【0027】
次に、作業者は、ホルダ5とケース本体1とをテーブルから持上げた後、一体に上下反転させる。これにより、第1凹部12に収容された各水晶振動子Cyがホルダ5の設置凹部51へと移し替えられる。この際、設置凹部51と起立壁部12aによる水晶振動子Cyの規制範囲が略一致し、かつ、複数の起立壁部12aに対応する設置凹部51壁面部の隙間は水晶振動子Cyの厚み以下となるような寸法公差でケース本体1が製作される(上記寸法公差でケース本体1が製作されていない、当該隙間に水晶振動子Cyがはまり込んで移し替えできない虞がある)。また、起立壁部12aによる規制は、円形の水晶振動子Cyの位置範囲を規制する意味では3点(3つの起立壁面)以上であれば規制できるので、第1凹部12の断面形状は円形である必要性はない。特に図示して説明しないが、例えば、複数の第1凹部12の全てを互いに連通させた環状の溝とし、第1凹部12に在するその外縁部の支持片にて水晶振動子Cyの第1仮想円周Vc1上の移動方向のみを規制する構成として実現することも可能である。この場合、環状の溝を構成する内外円が同心であることが条件(倣い動作許可条件)となるため、支持片による規制はこの2つの方向が規制されるように構成しなければならない。また、別構成として、環状の溝を構成する外円と内円をこれに設置しようとする水晶振動子Cyの数に応じて等角度分割した(所謂ケーキカット)形状で複数の第1凹部12とすることもできる(このとき、中心側は開放で、外円のみ規定のドーナッツの等角度分割とすることができる)。この場合は3点による位置規制となる、水晶振動子Cyの円に重ならない第1凹部12の残部分はそのまま第2凹部として使用できる。
【0028】
最後に、ホルダ5からケース本体1を上方に持上げた後、この姿勢のままホルダ5がセンサヘッド本体4に再装着される。このように本実施形態では、特段、ピンセットなどの取出工具(図示せず)を用いることなく、ケース本体1に収容される12枚の水晶振動子Cyを一度の作業でホルダ5の設置凹部51へと夫々セットすることができる。その結果、その作業性を上記従来例のものと比較して飛躍的に向上することができ、しかも、その主面を傷付けるといった不具合も生じない。他方、作業者が、収容ケースSCの一枚の水晶振動子Cyのみを交換するような場合には、ケース本体1から第1キャップ体2を取り外す。そして、第2キャップ体3を嵌合凹部11の孔軸回りに適宜回転させ、未使用の水晶振動子Cyが収容された第1凹部12と取出開口32とを上下方向で合致させる。この状態で、ピンセットなどの取出工具の先端部分を第2凹部14に挿入させた後、水晶振動子Cyの外周縁部を挟持して第1凹部12から取り出す。そして、取出工具で挟持した状態でホルダ5の設置凹部51などにセットする。
【0029】
以上の実施形態によれば、ケース本体1の上面に設けられた各第1凹部12に各水晶振動子Cyが水平姿勢で夫々収容されているため、作業者が、第1キャップ体2を取り外して、第2キャップ体3の取出開口32を通して第1凹部12に収容された1枚の水晶振動子Cyを取り出すような場合、第2凹部14が水晶振動子Cyに接触しないように取出工具の先端部分を受け入れる役割を果たすと共に、取出工具で水晶振動子Cyの外周縁部を挟持できるので、その主面を傷付けることを可及的に抑制することができる。また、持ち運びの際には、ケース本体1に第1キャップ体2が係止され、この状態では、ケース本体1の上面に対峙する第1キャップ体2及び第2キャップ体3の面で水晶振動子Cyの飛び出しが規制される。このため、持ち運び時の振動等で水晶振動子Cyが破損するといった不具合も生じない。しかも、第1凹部12にその上方から落とし込まれた水晶振動子Cyは支持片13によりその外縁部で支持されているため、持ち運び時の振動等で水晶振動子Cyの主面やその裏面が傷付くことを抑制することができる。その上、第2キャップ体3を有することで、第1凹部12に収容された一枚の水晶振動子Cyを取り出す際、それ以外の第1凹部12に収容された各水晶振動子Cyはその飛び出しが規制される状態に維持できるため、作業者が一枚の水晶振動子Cyを取り出す際に、誤って他の水晶振動子Cyを破損するといった不具合を回避することができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、一枚ずつ水晶振動子Cyを取り出す場合を想定して第2キャップ体3を備えるものを例に説明したが、収容ケースSCを特定の水晶発振式膜厚モニタのセンサヘッドのホルダ専用とするような場合には、第2キャップ体3を省略することも可能である。また、上記実施形態では、係止手段を突条22と係止突起16とで構成するものを例に説明したが、ケース本体1に第1キャップ体2を装着したときに、第1凹部12に収容された水晶振動子Cyの飛び出しが規制される状態を維持できるものであれば、これに限定されるものではない。更に、上記実施形態では、ホルダ5に備えられているボス部52とピン部材53とを利用して、ホルダ5に対してケース本体1が位置決め及び位相決めされるようにしたものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、他の周知の位置決め及び位相決め手段を用いることもできる。
【符号の説明】
【0031】
Cy…水晶振動子、SC…水晶振動子の収容ケース、Sh…センサヘッド、Vc1…第1仮想円周、Vc2…第2仮想円周、1…ケース本体、11…嵌合凹部、12…第1凹部、13…支持片、14…第2凹部、15…切欠き溝(位相決め手段)、16…係止突起(係止手段)、2…第1キャップ体、22…突条(係止手段)、3…第2キャップ体、32…取出開口、5…ホルダ、51…設置凹部、52…ボス部、53…ピン部材(位相決め手段)。
【要約】
【課題】取出工具を用いて水晶振動子を取り出すときにその主面が傷付くことが可及的に抑制でき、また、センサヘッドShのホルダ5に複数枚の水晶振動子Cyをセットするときでもその作業性を向上することができる水晶振動子の収容ケースを提供する。
【解決手段】本発明の水晶振動子の収容ケースSCは、上面に、その主面を上下方向に向けた水平姿勢での水晶振動子の収容を可能とする複数個の第1凹部12が第1仮想円周Vc1上に間隔を置いて設けられたケース本体1と、ケース本体にその上方から着脱自在に装着される第1キャップ体2と、ケース本体に対して第1キャップ体を係止する係止手段16,22とを備え、ケース本体に第1キャップ体が係止された状態で第1凹部に収容された水晶振動子の飛び出しが規制されるように構成した。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5