(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
載置台に保持される造形物載置板上に、加熱された造形材料を冷却して固化させる層状構造物を積層して、三次元造形物を造形する三次元造形装置の造形物載置板であって、
前記層状構造物の変形に追従して変形可能なゴムの変形層と、
前記層状構造物が積層される側とは反対側で前記変形層を保持し、該変形層よりも変形しにくい剛性層とを有することを特徴とする造形物載置板。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を、熱溶解積層法(FDM)により三次元造形物を造形する三次元造形装置に適用した一実施形態について説明する。
本発明を適用する三次元造形装置は、熱溶解積層法(FDM)に限定されるものではなく、載置台の表面上又は載置台に保持される載置板上に、加熱された造形材料を冷却して固化させる層状構造物を積層して、三次元造形物を造形する三次元造形装置であれば、他の造形方法で三次元造形物を造形する三次元造形装置にも適用可能である。
【0010】
図1は、本実施形態における三次元造形装置1の構成を示す説明図である。
図2は、本実施形態における三次元造形装置1の内部に設けられるチャンバーの外観を示す斜視図である。
図3は、本実施形態における三次元造形装置1の前方部分を切断して除外した状態の斜視図である。
【0011】
三次元造形装置1は、本体フレーム2の内部に三次元造形用チャンバー(以下「チャンバー」という。)3を備えている。チャンバー3の内部は、三次元造形物を造形するための処理空間となっており、その処理空間内すなわちチャンバー3の内部には、載置台としてのステージ4が設けられている。本実施形態では、このステージ4上に載置板としての造形プレート40を保持させ、その造形プレート40上に三次元造形物が造形される。
【0012】
チャンバー3内の処理空間を囲っている壁部は、その大部分又はその全部が断熱機能を有する断熱壁で構成されている。具体的には、チャンバー3の天井壁部は、後述するように、複数のスライド断熱部材3A,3Bによって構成された断熱壁である。また、チャンバー3の側壁部3C、すなわち、装置左右方向(
図2及び
図3中の左右方向=X軸方向)の両壁部は、ガラスウール等を内包した断熱材を内側板と外側板の間に挟み込んだ構造をもつ断熱壁である。また、チャンバー3の底壁部3Dも、ガラスウール等を内包した断熱材を内側板と外側板の間に挟み込んだ構造をもつ断熱壁である。また、チャンバー3の後壁部及び前壁部3Eも、ガラスウール等を内包した断熱材を内側板と外側板の間に挟み込んだ構造をもつ断熱壁である。
【0013】
本実施形態において、チャンバー3の前壁部3Eには、
図2に示すように、開閉扉3aが設けられている。この開閉扉3aは、前壁部3Eと同様に断熱壁を構成するものであり、十分な断熱機能を発揮する構成となっている。また、チャンバー3の前壁部3Eには、
図2に示すように、窓3bが設けられている。この窓3bは、空気層を挟み込んだ2重ガラス構造であり、前壁部3Eと同様に断熱壁を構成するものである。
【0014】
なお、チャンバー3の各壁部の断熱構成は、必要な断熱機能を発揮できる構成であれば、本実施形態のものに限られず、あらゆる断熱構成のものを利用することができる。本実施形態においては、チャンバー3内の処理空間が造形処理時には200℃以上の高温になるところ、このような高温時でもチャンバー3の外部気温がおよそ40℃以下に収まるような断熱機能を発揮できる断熱壁であることが好ましい。
【0015】
チャンバー3の内部におけるステージ4の上方には、造形材料排出部としての造形ヘッド10が設けられている。造形ヘッド10は、その下方に造形材料であるフィラメントを射出する射出ノズル11を有する。本実施形態では、造形ヘッド10上に4つの射出ノズル11が設けられているが、射出ノズル11の数は任意である。また、造形ヘッド10には、各射出ノズル11に供給されるフィラメントを加熱する造形材料加熱手段としてのヘッド加熱部12が設けられている。
【0016】
フィラメントは、細長いワイヤー形状であり、巻き回された状態で三次元造形装置1にセットされており、フィラメント供給部6により造形ヘッド10上の各射出ノズル11へそれぞれ供給される。なお、フィラメントは、射出ノズル11ごとに異なるものであってもよいし、同じものであってもよい。本実施形態においては、フィラメント供給部6により供給されるフィラメントをヘッド加熱部12で加熱して溶融(あるいは軟化)させ、溶融状態のフィラメントを所定の射出ノズル11から押し出すようにして射出することにより、ステージ4上に保持された造形プレート40上に層状の造形構造物を順次積層して、三次元造形物を造形する。
【0017】
なお、造形ヘッド10上の射出ノズル11には、造形材料のフィラメントではなく、三次元造形物を構成しないサポート材が供給される場合がある。このサポート材は、通常、造形材料のフィラメントとは異なる材料で形成され、最終的にはフィラメントで形成された三次元造形物から除去される。このサポート材も、ヘッド加熱部12で加熱溶融され、溶融状態のサポート材が所定の射出ノズル11から押し出されるように射出されて、層状に順次積層される。
【0018】
造形ヘッド10は、装置左右方向(
図2及び
図3中の左右方向=X軸方向)に延びるX軸駆動機構21に対し、連結部材21aを介して、そのX軸駆動機構21の長手方向(X軸方向)に沿って移動可能に保持されている。造形ヘッド10は、X軸駆動機構21の駆動力により、装置左右方向(X軸方向)へ移動することができる。造形ヘッド10は、ヘッド加熱部12によって加熱されて高温になるため、その熱がX軸駆動機構21に伝わりにくいように、連結部材21aを低伝熱性のものとするのが好ましい。
【0019】
X軸駆動機構21の両端は、それぞれ、装置前後方向(
図2及び
図3中の前後方向=Y軸方向)に延びるY軸駆動機構22に対し、そのY軸駆動機構22の長手方向(Y軸方向)に沿ってスライド移動可能に保持されている。X軸駆動機構21がY軸駆動機構22の駆動力によってY軸方向に沿って移動することにより、造形ヘッド10はY軸方向に沿って移動することができる。
【0020】
本実施形態において、チャンバー3の底壁部3Dは、本体フレーム2に固定されている、装置上下方向(
図2及び
図3中の上下方向=Z軸方向)に延びるZ軸駆動機構23に対し、そのZ軸駆動機構23の長手方向(Z軸方向)に沿って移動可能に保持されている。チャンバー3の底壁部3Dは、Z軸駆動機構23の駆動力により、装置上下方向(Z軸方向)へ移動することができる。この底壁部3D上には、ステージ4が固定されているので、Z軸駆動機構23の駆動力によりステージ4及びこれに保持される造形プレート40をZ軸方向へ移動させることができる。
【0021】
チャンバー3の底壁部3Dの周縁部は、チャンバー3の両側壁部3C並びに前壁部3E及び後壁部の各内壁面に密着している。チャンバー3の底壁部3DがZ軸駆動機構23によりZ軸方向へ移動する際、底壁部3Dは、その周縁部を、チャンバー3の両側壁部3C並びに前壁部3E及び後壁部の各内壁面を摺動させながら移動する。これにより、チャンバー3内の遮蔽性が確保され、チャンバー3内の十分な断熱性が得られる。なお、チャンバー3内の十分な断熱性が得られるのであれば、チャンバー3の底壁部3Dの周縁部と、チャンバー3の両側壁部3C並びに前壁部3E及び後壁部の各内壁面との間に、多少の隙間があってもよい。このような隙間を形成することで、スムーズかつ高精度な底壁部3Dの移動を実現でき、ステージ4のスムーズかつ高精度な移動が実現される。
【0022】
また、本実施形態においては、チャンバー3の内部(処理空間)に、チャンバー3内を加熱する処理空間加熱手段としてのチャンバー用ヒータ7が設けられている。本実施形態においては、熱溶解積層法(FDM)で三次元造形物を造形するため、チャンバー3内の温度を目標温度に維持した状態で、造形処理を行うことが望ましい。そのため、本実施形態では、造形処理を開始する前に、予めチャンバー3内の温度を目標温度まで昇温させる予熱処理を行う。チャンバー用ヒータ7は、この予熱処理中には、チャンバー3内を目標温度まで昇温させるためにチャンバー3内を加熱するとともに、造形処理中には、チャンバー3内の温度を目標温度に維持するためにチャンバー3内を加熱する。チャンバー用ヒータ7の動作は、制御部100によって制御される。
【0023】
本実施形態においては、X軸駆動機構21、Y軸駆動機構22及びZ軸駆動機構23が、チャンバー3の外部に配置されている。よって、X軸駆動機構21、Y軸駆動機構22及びZ軸駆動機構23は、チャンバー3内の高温に曝されず、安定した駆動制御が実現される。なお、X軸駆動機構21及びY軸駆動機構22の全体がチャンバー3の外部に配置される構成に限らず、その一部又はその全体がチャンバー3の内部に配置される構成であってもよい。
【0024】
ここで、本実施形態におけるX軸駆動機構21及びY軸駆動機構22の駆動対象は造形ヘッド10であり、その造形ヘッド10の一部(射出ノズル11を含む造形ヘッド10の先端部分)がチャンバー3内に配置されている。本実施形態では、造形ヘッド10をX軸方向へ移動させてもチャンバー3の内部が外部から遮蔽される構成となっている。具体的には、チャンバー3の天井壁部においては、
図2及び
図3に示すように、Y軸方向に長尺な複数のX軸スライド断熱部材3AがX軸方向へ並べて配設された構成となっており、隣接するX軸スライド断熱部材3A間は互いにX軸方向へ相対的にスライド移動可能に構成されている。これにより、X軸駆動機構21により造形ヘッド10をX軸方向へ移動させても、これに応じて複数のX軸スライド断熱部材3AがそれぞれX軸方向へスライド移動し、チャンバー3内の処理空間上部は常にX軸スライド断熱部材3Aによって覆われる。
【0025】
同様に、チャンバーの天井壁部においては、
図2及び
図3に示すように、複数のY軸スライド断熱部材3BがY軸方向へ並べて配設された構成となっている。隣接するY軸スライド断熱部材3B間は互いにY軸方向へ相対的にスライド移動可能に構成されている。これにより、Y軸駆動機構22によりX軸駆動機構21上の造形ヘッド10をY軸方向へ移動させても、これに応じて複数のY軸スライド断熱部材3BがそれぞれY軸方向へスライド移動し、チャンバー3内の処理空間上部は常にY軸スライド断熱部材3Bによって覆われる。
【0026】
また、本実施形態におけるZ軸駆動機構23の駆動対象は、チャンバー3の底壁部3Dあるいはステージ4(もしくは造形プレート40)である。本実施形態では、底壁部3Dあるいはステージ4をZ軸方向へ移動させてもチャンバー3の内部が外部から遮蔽される構成となっている。具体的には、チャンバー3の両側壁部3Cには、
図2及び
図3に示すように、Z軸駆動機構23と底壁部3Dとの連結部を貫通させるスライド孔3cがZ軸方向に延びるように形成されている。このスライド孔3cは、断熱材料からなる可撓性のシール部材3dによってシールされている。Z軸駆動機構23により底壁部3DをZ軸方向へ移動させる際、Z軸駆動機構23と底壁部3Dとの連結部は、可撓性のシール部材3dを弾性変形させながらスライド孔3cに沿ってZ軸方向へ移動する。よって、チャンバー3の両側壁部3Cに形成されたスライド孔3cは、常にシール部材3dによって覆われる。
【0027】
そのほか、本実施形態においては、チャンバー3の外部であって三次元造形装置1の内部の空間を冷却させるための装置内冷却装置8や、造形ヘッド10の射出ノズル11を清掃するためのノズル清掃部9などが設けられている。
【0028】
図4は、本実施形態の三次元造形装置1の制御ブロック図である。
本実施形態においては、造形ヘッド10のX軸方向位置を検知するX軸ポジション検知機構24が設けられている。X軸ポジション検知機構24の検知結果は、制御部100に送られる。制御部100は、その検知結果に基づいてX軸駆動機構21を制御して、造形ヘッド10を目標のX軸方向位置へ移動させる。
【0029】
また、本実施形態においては、X軸駆動機構21のY軸方向位置(造形ヘッド10のY軸方向位置)を検知するY軸ポジション検知機構25が設けられている。Y軸ポジション検知機構25の検知結果は、制御部100に送られる。制御部100は、その検知結果に基づいてY軸駆動機構22を制御することにより、X軸駆動機構21上の造形ヘッド10を目標のY軸方向位置へ移動させる。
【0030】
また、本実施形態においては、ステージ4上に保持される造形プレート40のZ軸方向位置を検知するZ軸ポジション検知機構26が設けられている。Z軸ポジション検知機構26の検知結果は、制御部100に送られる。制御部100は、その検知結果に基づいてZ軸駆動機構23を制御して、ステージ4上の造形プレート40を目標のZ軸方向位置へ移動させる。
【0031】
制御部100は、このようにして造形ヘッド10及びステージ4の移動制御を行うことにより、チャンバー3内における造形ヘッド10とステージ4上の造形プレート40との相対的な三次元位置を、目標の三次元位置に位置させることができる。
【0032】
図5は、本実施形態における予熱処理及び造形処理の流れを示すフローチャートである。
本実施形態において、制御部100は、ユーザーの指示操作等により造形をスタートすると、まず、チャンバー用ヒータ7、ヘッド加熱部12及びステージ加熱部5への通電をONにして、これらを稼働させる(S1)。また、制御部100は、Z軸駆動機構23を制御して、Z軸駆動機構23の駆動力によりステージ4を所定の待機位置(例えば最下点)から上昇させる(S2)。そして、ステージ4が上述した予熱用位置に到達したら(S3のYes)、Z軸駆動機構23の駆動を停止する(S4)。
【0033】
処理空間の温度が目標温度に達したら(S5のYes)、続いて、制御部100は、造形処理に移行する。本実施形態の三次元造形装置1により造形する三次元造形物の三次元形状データは、本三次元造形装置1に対して有線あるいは無線でデータ通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等の外部装置から入力される。制御部100は、入力された三次元形状データに基づき、上下方向に分解された多数の層状構造物のデータ(造形用のスライスデータ)を生成する。各層状構造物に対応するスライスデータは、本三次元造形装置1の造形ヘッド10から射出されるフィラメントによって形成される各層状構造物に対応しており、その層状構造物の厚みは、三次元造形装置1の能力に応じて適宜設定される。
【0034】
造形処理では、まず、制御部100は、最下層(第一層)のスライスデータに従って、ステージ4上に保持されている造形プレート40の表面に最下層の層状構造物を作成する(S6)。具体的には、制御部100は、最下層(第一層)のスライスデータに基づき、X軸駆動機構21及びY軸駆動機構22を制御して、造形ヘッド10の射出ノズル11の先端を目標位置(X−Y平面上の目標位置)に順次移動させながら、射出ノズル11よりフィラメントの射出を行う。これにより、ステージ4上の造形プレート40の表面には、最下層(第一層)のスライスデータに従った層状構造物が形成される。なお、三次元造形物を構成しないサポート材も一緒に作成する場合があるが、ここでの説明は省略する。
【0035】
次に、制御部100は、Z軸駆動機構23を制御して、層状構造物の一層分に相当する距離だけステージ4を下降させ、そのステージ4上の造形プレート40を、次の層(第二層)の層状構造物を作成するための位置まで下降させ、位置決めする(S8)。その後、制御部100は、第二層のスライスデータに基づき、X軸駆動機構21及びY軸駆動機構22を制御して、造形ヘッド10の射出ノズル11の先端を目標位置に順次移動させながら、射出ノズル11よりフィラメントの射出を行う。これにより、ステージ4の造形プレート40上に形成されている最下層の層状構造物上に、第二層のスライスデータに従った層状構造物が形成される(S6)。
【0036】
このようにして、制御部100は、Z軸駆動機構23を制御して、ステージ4を順次下降させながら、下層から順に各層状構造物を積層させて造形する処理を繰り返す。そして、最上層の層状構造物の作成が終了したら(S7のYes)、入力された三次元形状データに従った三次元造形物が造形プレート40上に造形される。
【0037】
このようにして造形処理が終了したら、制御部100は、Z軸駆動機構23を制御して、ステージ4を所定の取出用位置(本実施形態では最下点)まで下降させる(S9)。この取出用位置は、チャンバー3の前壁部3Eに設けられている開閉扉3aを開けて、ステージ4上の三次元造形物をチャンバー3の外部へ取り出しやすい位置に設定される。
【0038】
造形処理終了直後は、まだ、チャンバー3内の処理空間が高温であるため、開閉扉3aを開けて処理空間内の三次元造形物をユーザーがすぐに取り出すことはできない。したがって、ユーザーは、処理空間内の温度が取り出し可能な温度まで低下してから、開閉扉3aを開けて処理空間内の三次元造形物を造形プレート40に固着した状態のまま取り出すことになる。制御部100は、処理空間内の温度が取り出し可能な温度まで低下するまで開閉扉3aをロック状態にする冷却期間を設け、処理空間内の温度が取り出し可能な温度まで低下した後に、開閉扉3aのロック状態を解除することが好ましい。
【0039】
ここで、本実施形態の三次元造形装置1で三次元造形物を造形する際、ヘッド加熱部12で加熱されて射出ノズル11から射出された軟化状態のフィラメント50は、チャンバー3内の造形プレート40上へ射出される。チャンバー3内は、チャンバー用ヒータ7等によって加熱されているが、チャンバー3内の温度はヘッド加熱部12におけるフィラメント50の軟化温度よりも低いため、造形プレート40上へ射出された軟化状態のフィラメントの温度は徐々に下がることになる。これにより、フィラメント50は、造形プレート40の表面に固着するとともに、層状構造物としての形状を維持できるように硬度が高まる。
【0040】
造形プレート40上に射出されたフィラメント50は、徐々に温度が下がる過程で、熱収縮を引き起こす。従来は、
図6に示すように、造形プレート40’が容易に変形しない高剛性部材で構成されていたため、これに固着した最下層の層状構造物は、その熱収縮によって内部応力が高まっていく。また、この最下層の上に積層される第二層以降の層状構造物も同様に熱収縮を引き起こすため、第二層以降の層状構造物の内部応力も高まり、これによって最下層の層状構造物の内部応力は更に高まっていく。このように高まっていく最下層の層状構造物の内部応力は、最下層の層状構造物を反り返らせ、最下層の層状構造物の端部を高剛性の造形プレート40’から引き離すような剥離力を発生させる。
【0041】
最下層の層状構造物と高剛性の造形プレート40’との固着力を超える剥離力が生じるほど最下層の層状構造物の内部応力が高まると、
図6に示すように、最下層の層状構造物が造形プレート40’から剥離してしまう。造形処理の途中で最下層の層状構造物が造形プレート40’から剥離してしまうと、形成済みの層状構造物の位置が造形プレート40’上で動いてしまい、その上に形成される新たな層状構造物との相対位置がずれて、造形処理を適切に継続できなくなる。
【0042】
造形処理中の剥離を抑制する方法としては、最下層の層状構造物と高剛性の造形プレート40’との固着力を高めることが考えられる。例えば、高剛性の造形プレート40’に層状構造物との化学的結合や機械的結合を改善する表膜をコーティングし、造形プレート40’と最下層の層状構造物との固着力を高める方法が挙げられる。しかしながら、固着力を高めるにも限界があるため、最下層の層状構造物の剥離力が大きい場合には、造形処理の途中で最下層の層状構造物が造形プレート40’から剥離する問題を解決することが難しい。
【0043】
なお、ここでは、熱収縮が発生する場合で説明したが、熱膨張が発生する場合でも同様である。例えば、チャンバー3内の温度バラつきによって、造形処理の途中で層状構造物が熱膨張することもあり、そのような熱膨張によっても剥離力が発生するおそれがある。
【0044】
図7は、本実施形態における造形プレート40を模式的に示す断面図である。
本実施形態の造形プレート40は、
図7に示すように、剛性層である剛性基板41とその剛性基板41上に形成された変形層42とから構成されている。この変形層42は、剛性基板41上に強固に固着されており、変形層42に固着する最下層の層状構造物の変形に追従して変形可能な特性を有する層である。本実施形態の変形層42は、このような特性を有することで、造形プレート40の変形層42上に形成された層状構造物が熱収縮を引き起こして変形層42に固着した最下層の層状構造物が反り返るように変形しても、
図8に示すように、その変形に追従して変形層42も変形する。その結果、変形層42と最下層の層状構造物との間に生じる剥離力は小さく抑えられ、造形処理の途中で最下層の層状構造物が造形プレート40から剥離するのを抑制できる。したがって、造形処理の途中で形成済みの層状構造物の位置が許容範囲を超えて造形プレート40上で動いてしまうようなことはなく、造形処理を適切に実施できる。
【0045】
このように造形プレート40の変形層42が最下層の層状構造物の変形に追従して変形してしまうと、造形処理中に最下層の層状構造物が変形してしまって、造形される三次元造形物の造形精度が低くなり得る。しかしながら、造形処理中に剥離が生じてしまうと、そもそも三次元造形物を造形すること事態ができないことと比較すると、造形精度が低くても三次元造形物を造形できることのメリットの方が大きい。
【0046】
また、造形プレート40の変形層42が最下層の層状構造物の変形に追従して変形する場合でも、変形層42の変形時にはその変形に抗する変形抵抗力が発生し、その変形抵抗力が最下層の層状構造物の変形を抑制する力となる。したがって、最下層の層状構造物の変形を十分に抑制できる変形抵抗力が発生するように変形層42の特性(硬度、柔軟性等)を調整することで、許容範囲の造形精度で三次元造形物を造形することが可能である。
【0047】
更に、本実施形態において、造形プレート40に固着した状態の三次元造形物は、造形処理を終了した後、チャンバー3内で取出可能な温度(例えば室温付近)まで冷却されてから、チャンバー3から取り出される。この冷却過程において、造形プレート40に固着する三次元造形物の最下層の層状構造物は、造形処理中よりも大きな熱収縮を引き起こす。そのため、より大きな剥離力が発生するため、従来の高剛性の造形プレート40では、その造形プレート40’に固着した三次元造形物が冷却される過程で、最下層の層状構造物が反り返って最下層の層状構造物が造形プレート40’から剥離してしまう。このような冷却過程で剥離が生じると、その後は三次元造形物の熱収縮による変形に抗する外力が全く作用しなくなるため、三次元造形物の変形が進行して、造形精度が悪化する。
【0048】
本実施形態によれば、このような冷却過程において最下層の層状構造物が変形しても、その変形に追従して造形プレート40の変形層42が変形する。このときも、変形層42の変形時にはその変形に抗する変形抵抗力が発生し、その変形抵抗力が最下層の層状構造物の変形を抑制する力となる。したがって、造形処理後の冷却過程時に三次元造形物が熱収縮によって変形することも、変形層42によって抑制でき、剥離による造形精度の悪化も抑制できる。
【0049】
変形層42は、最下層の層状構造物の変形に追従して変形可能であれば、変形の復元力が小さい又は無い塑性変形する層であってもよい。しかしながら、本実施形態では、変形層42として、変形の復元力が大きな弾性層を用いている。このような弾性層であれば、変形の復元力が最下層の層状構造物の変形に抗する変形抵抗力として継続的に作用するため、最下層の層状構造物の変形を抑制する効果が高い。したがって、より高い造形精度で三次元造形物を造形することが可能となる。
【0050】
造形プレート40の剛性基板41としては、変形層42が最下層の層状構造物の変形に追従して変形しても、実質的に変形することなく変形層42を支持できる硬度をもつものであればよい。ただし、本実施形態において、造形プレート40はチャンバー3内で高温に曝されるため、その剛性基板41としては、難燃性、耐熱性を有するものが好ましい。
【0051】
剛性基板41の材料としては、スチレン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂を用いることができる。難燃性の観点から、例えば、PVDF、ETFEなどのフッ素系樹脂や、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂等が好ましく、機械的強度(高弾性)や耐熱性の点から、特にポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂が好適である。
【0052】
また、剛性基板41の材料としては、熱伝導率や機械的強度の観点から、樹脂材料よりも金属材料がより好ましい。金属材料を用いる場合でも、実質的に変形することなく変形層42を支持できる硬度や耐熱性が有するものであれば、その種類は問わず、汎用性の高い、鉄やアルミニウム、ステンレス、真鋳、チタン、鋼、銅などが使用できるが、コストや機械的強度、熱伝導性、表面の加工性の観点より、ステンレスやアルミニウムが好ましい。
【0053】
また、造形プレート40の剛性基板41の表面には、粗面化処理等により凹凸を形成して接触面積の増大やアンカー効果による剛性基板41と変形層42との固着性の向上を測ってもよい。このような凹凸を形成する方法としては、メッキ、表面コーティング、プラズマ処理、表面改質、プライマー層の形成など、公知の粗面化処理が挙げられる。サンドブラスト、ショットブラスト、メッキ加工、研磨などでもよい。
【0054】
また、変形層42の材料としては、汎用の樹脂、エラストマー、ゴムなどの材料を使用することが可能だが、エラストマー材料やゴム材料を用いるのが良い。
エラストマー材料としては、熱可塑性エラストマーとして、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリジエン系、シリコーン変性ポリカーボネート系、フッ素系共重合体系等が挙げられる。また、熱硬化性として、ポリウレタン系、シリコーン変性エポキシ系、シリコーン変性アクリル系等が挙げられる。
また、ゴム材料としては、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ヒドリンゴム等が挙げられる。
これらの各種エラストマー、ゴムの中から、上述した変形層42としての所望の特性が得られる材料を適宜選択するが、本実施形態においては、変形層42の柔軟性(層状構造物の変形追従性)や金属材料で形成される剛性基板41との固着性の観点から、変形層42の材料としてはアクリルゴムが好ましい。
【0055】
本実施形態においては、造形プレート40がチャンバー3内で高温に曝されるため、その変形層42としては、そのような高温環境下で、上述した変形層42としての所望の特性が得られる材料を選択することが望ましい。この観点からすると、変形層42の材料としては、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどが好適であり、特に難燃性の面からシリコーンゴムがより好適である。
【0056】
積層させる変形層42の硬度は、造形品質に影響をおよぼす。詳しくは、硬度が高すぎると、変形しにくくなって追従性に劣ることになる一方、硬度が低すぎると、三次元造形物の変形を許容しすぎてしまい、造形品質が悪化することになる。変形層42の硬度を測定する方法としては、マルテンス硬度、ビッカース硬度などの微小硬度計測を行う方法が挙げられる。この方法では、測定部位のバルク方向の浅い領域、つまり表面近傍の硬度しか測定していないので、変形層42全体としての変形性能を評価することは難しい。そのため、変形層42全体の変形性能が評価できるマイクロゴム硬度を測定する方法を用いるのが好ましい。マイクロゴム硬度は、市販のマイクロゴム硬度計を使用して測定することができる。具体的には、例えば高分子計器社製の「マイクロゴム硬度計MD−1」を使用して測定することができる。変形層42のマイクロゴム硬度は、23℃50%RHの環境下で10以上50以下が好ましく、15以上40以下が更に好ましい。
【0057】
本実施形態の造形プレート40は、剛性基板41と変形層42の二層構造となっているが、最下層の層状構造物の変形に追従した変形層42の変形を不可能にするような層でなければ、その他の必要な層を付加してもよい。
【0058】
また、本実施形態では、造形処理後に三次元造形物と一緒にチャンバー3から取り出される造形プレート40をステージ4上に保持し、その造形プレート40上に三次元造形物を造形する構成について説明したが、造形プレート40を用いずに三次元造形物をステージ4上に直接造形するものであってもよい。この場合、造形プレート40の変形層42と同様の変形層をステージ4の表面部に設けることで、同様に、ステージ4の変形層上に形成された層状構造物が熱収縮を引き起こして変形しても、その変形に追従してステージ4の変形層も変形する。これにより、造形処理の途中で形成済みの層状構造物の位置が許容範囲を超えて造形プレート40上で動いてしまうようなことはなく、造形処理を適切に実施できる。また、この場合も、ステージ4上の変形層の変形時に発生する変形に抗する変形抵抗力が最下層の層状構造物の変形を抑制する力となり、造形精度の低下を抑制できる。
【0059】
〔変形例〕
次に、上述した実施形態における一変形例について説明する。
上述した実施形態において、造形プレート40の変形層42と三次元造形物との固着力がより高められれば、変形層42の柔軟性を減らし(硬度を高くして)、変形層42が変形時に発生させる変形抵抗力を大きくして、より高い造形精度を実現できる。しかしながら、造形プレート40に固着された状態の三次元造形物が冷却された後には、造形プレート40を三次元造形物から分離させる必要が生じる場合がある。造形プレート40の変形層42と三次元造形物との固着力を単に高めると、造形プレート40を三次元造形物から分離させる際の分離性が悪化してしまう。したがって、造形プレート40の変形層42と三次元造形物との高い固着力が必要となる造形処理中あるいは造形処理後の冷却過程では、造形プレート40(変形層42)と三次元造形物との固着性を確保できる一方、冷却過程後では造形プレート40(変形層42)と三次元造形物との分離性を確保できる構成が望まれる。
【0060】
図9は、本変形例におけるステージ4の構成を示す説明図である。
図9に示すように、ステージ4は、上部プレート46と下部プレート47とを備える。
図9(a)は、上部プレート46と下部プレート47とを重ねた状態の説明図であり、
図9(b)は、上部プレート46と下部プレート47とを分離させた状態の説明図である。
なお、本変形例では、上述した実施形態の造形プレート40は用いずに、その造形プレート40に設けられていた変形層42と同様の変形層をステージ4の表面部に設け、そのステージ4の表面上に三次元造形物を造形するものである。なお、本変形例においても、造形プレート40上に三次元造形物を造形するようにしてもよい。
【0061】
上部プレート46は、複数の貫通穴46aが設けられた板状の部材であり、その上面部分は、上部プレート46上に形成される最下層の層状構造物の変形に追従して変形可能な変形層46bで構成される。下部プレート47は、貫通穴46aを貫通するように突き出し、上部プレート46に対する突き出し量が変更可能な複数の凸部47aを有する凸部形成部材47bが突起支持体47cの上面に固定された板状の部材である。
【0062】
本変形例のZ軸駆動機構23は、上部プレート46を上下方向へ移動させる上部プレート駆動機構23aと、下部プレート47を上下方向に移動させる下部プレート駆動機構23bとを備える。
図9(a)に示すように、上部プレート46と下部プレート47とを重ねた状態で、上部プレート駆動機構23aと下部プレート駆動機構23bとに同じ駆動を入力することで上部プレート46と下部プレート47とを一体的に上下方向に移動させることができる。
図9(a)に示す状態では、凸部形成部材47bの凸部47aが貫通穴46aを貫通し、凸部47aの先端が上部プレート46の上面よりも上方に突き出している。
【0063】
図9(a)に示す状態から下部プレート駆動機構23bのみを駆動し、下部プレート47を下方に移動させると、
図9(b)に示すように下部プレート47が上部プレート46から分離する。このように下部プレート駆動機構23bと上部プレート駆動機構23aとに異なる駆動を入力することで、上部プレート46と下部プレート47との相対的な位置が変化する。これにより、下部プレート47が備える凸部形成部材47bの凸部47aの上部プレート46に対する突き出し量を変更することができる。
【0064】
本変形例の三次元造形装置では、造形処理時には上部プレート46と下部プレート47とを重ねて、凸部47aの先端が上部プレート46の上面よりも上方に突き出している上体で上部プレート46と下部プレート47とを一体的に上下方向に移動させる。また、造形処理後、三次元造形物をチャンバー3から取り出すまでに、
図9(b)に示すように、上部プレート46と下部プレート47とを分離させる。これにより、ステージ4と三次元造形物との造形処理時や冷却過程時の固着性と、冷却過程後の分離性とを両立する。
【0065】
造形処理時においては、凸部47aにおける上部プレート46の上面よりも上方に突き出している部分と三次元造形物の底面部分とを局所的に嵌合させることができ、ステージ4からの造形物の剥離を防止するアンカー効果を得ることができる。これにより、造形処理時の固着性を向上させることができる。また、凸部47aが三次元造形物の底面部分に刺さるように三次元造形物が造形されることで、凸部47aの表面と三次元造形物とが固着し、三次元造形物とステージ4側との固着面積が増加する。さらに、上部プレート46の貫通穴46aや貫通穴46aと凸部47aとの隙間に造形材料が入り込んで硬化することで、三次元造形物とステージ4との固着面積が増加する。このように固着面積が増加することとアンカー効果とによって、造形処理時の固着性が向上される。
【0066】
造形処理が終了し、チャンバー3から取出可能な温度まで冷却された後には、上部プレート46と下部プレート47とを相対的に上下方向に移動させ、三次元造形物に対して上下方向(Z軸方向)の力を与えることによって、ステージ4を構成する上部プレート46と下部プレート47とから三次元造形物を分離させる。具体的には、上部プレート46に対して下部プレート47を下方に移動させることで、三次元造形物は凸部47aとの固着面によって下方に引っ張られるが、三次元造形物の底面部は上部プレート46の上面に接触している。このため、三次元造形物は凸部47aに追従することができず、三次元造形物と凸部47aとの固着面が剥がれる。これにより、三次元造形物と下部プレート47とを容易に分離させることができる。
【0067】
この状態では、上部プレート46と三次元造形物とは固着状態になっているが、凸部47aの対応箇所での接触がなくなっていることから、冷却過程前の状態に比べてその固着力が大きく低下しており、分離性が確保される。しかも、この状態においては、三次元造形物の底面全体とステージ4の表面とが全面で接触している状態と比べても、その固着力は低いものとなっているため、より高い分離性が確保される。
【0068】
また、上部プレート46に対して下部プレート47を下方に移動させる前後のいずれかのタイミングで、上部プレート46に対して下部プレート47を造形処理時よりも上方に移動させてもよい。この移動により、三次元造形物は凸部47aによって上方に押し上げられ、三次元造形物と上部プレート46との固着面が剥がれる。冷却過程後に、このように三次元造形物と上部プレート46との固着面を剥がしてから、三次元造形物と下部プレート47とを分離させると、三次元造形物とステージ4との間の固着面がなくなり、高い分離性が得られる。
【0069】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
ステージ4等の載置台の表面上又は載置台に保持される造形プレート40等の載置板上に、加熱されたフィラメント50等の造形材料を冷却して固化させる層状構造物を積層して、三次元造形物を造形する三次元造形装置1において、前記載置台の表面部又は前記載置板は、前記層状構造物の変形に追従して変形可能な変形層42,46bを有することを特徴とする。
本態様によれば、造形処理の途中に、形成済みの層状構造物が熱膨張や熱収縮を引き起こしても、その層状構造物が固着する載置台の表面部又は載置板に設けられた変形層が、熱膨張や熱収縮による層状構造物の変形に追従して変形する。したがって、層状構造物が熱膨張や熱収縮を引き起こして変形しても、層状構造物と載置台の表面や載置板の板面との間に発生する剥離力を小さく抑えることができ、層状構造物が載置台や載置板から剥離するのを抑制できる。
【0070】
(態様B)
前記態様Aにおいて、前記変形層は、前記変形に対する復元力を発揮する弾性層であることを特徴とする。
これによれば、変形の復元力が層状構造物の変形に抗する変形抵抗力として継続的に作用するため、層状構造物の変形を抑制する高い効果が得られる。これにより、より高い造形精度の三次元造形物を造形することが可能となる。
【0071】
(態様C)
前記態様Bにおいて、前記弾性層は、アクリルゴムで形成されていることを特徴とする。
これによれば、層状構造物の変形を抑制する高い効果が得られる。また、当該変形層を金属材料の上に接着して形成する場合には当該金属材料との高い接着力が得やすい。
【0072】
(態様D)
前記態様Bにおいて、前記弾性層は、シリコーンゴムで形成されていることを特徴とする。
これによれば、層状構造物の変形を抑制する高い効果が得られる。また、耐熱性の高い弾性層が得られる。
【0073】
(態様E)
前記態様A〜Dのいずれかの態様において、前記載置台の表面層又は前記載置板は、前記層状構造物が積層される側とは反対側で前記変形層を保持し、該変形層よりも変形しにくい剛性層を有することを特徴とする。
これによれば、層状構造物の変形を抑制する高い効果が得られ、より高い造形精度の三次元造形物を造形することができる。
【0074】
(態様F)
前記態様Eにおいて、前記剛性層は、金属で形成されていることを特徴とする。
これによれば、剛性層に必要な高い剛性が得やすく、また耐久性の高い剛性層が得られる。
【0075】
(態様G)
前記態様A〜Fのいずれかの態様において、加熱されたフィラメント等の造形材料を排出する造形ヘッド10等の造形材料排出部と、前記載置台及び前記造形材料排出部が配置される処理空間を内部に備えたチャンバー3と、前記チャンバー内の処理空間を加熱するチャンバー用ヒータ7等の処理空間加熱手段と、前記載置台と前記造形材料排出部とを相対移動させながら前記層状構造物を形成して積層する動作を制御する制御部100等の造形制御手段とを有することを特徴とする。
これによれば、形成済みの層状構造物が熱膨張や熱収縮を引き起こしやすい熱溶解積層法(FDM)でも、層状構造物が載置台や載置板から剥離するのを抑制できる。
【0076】
(態様H)
ステージ4等の載置台に保持される造形プレート40等の造形物載置板上に、加熱されたフィラメント等の造形材料を冷却して固化させる層状構造物を積層して、三次元造形物を造形する三次元造形装置1の造形物載置板であって、前記層状構造物の変形に追従して変形可能な変形層42を有することを特徴とする。
本態様によれば、造形処理の途中に、形成済みの層状構造物が熱膨張や熱収縮を引き起こしても、その層状構造物が固着する造形物載置板に設けられた変形層が、熱膨張や熱収縮による層状構造物の変形に追従して変形する。したがって、層状構造物が熱膨張や熱収縮を引き起こして変形しても、層状構造物と造形物載置板の板面との間に発生する剥離力を小さく抑えることができ、層状構造物が造形物載置板から剥離するのを抑制できる。