特許第6803138号(P6803138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三星エスディアイ株式会社の特許一覧

特許6803138ホスホニウム系化合物、それを含むエポキシ樹脂組成物、およびそれを用いて製造された半導体装置
<>
  • 特許6803138-ホスホニウム系化合物、それを含むエポキシ樹脂組成物、およびそれを用いて製造された半導体装置 図000077
  • 特許6803138-ホスホニウム系化合物、それを含むエポキシ樹脂組成物、およびそれを用いて製造された半導体装置 図000078
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803138
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】ホスホニウム系化合物、それを含むエポキシ樹脂組成物、およびそれを用いて製造された半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/54 20060101AFI20201214BHJP
   C07C 39/08 20060101ALI20201214BHJP
   C07C 39/15 20060101ALI20201214BHJP
   C07C 39/17 20060101ALI20201214BHJP
   C07C 49/83 20060101ALI20201214BHJP
   C07C 235/60 20060101ALI20201214BHJP
   C07C 235/64 20060101ALI20201214BHJP
   C07C 235/66 20060101ALI20201214BHJP
   C07C 259/10 20060101ALI20201214BHJP
   C07C 323/20 20060101ALI20201214BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20201214BHJP
   C08K 5/50 20060101ALI20201214BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20201214BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20201214BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C07F9/54CSP
   C07C39/08
   C07C39/15
   C07C39/17
   C07C49/83 A
   C07C235/60
   C07C235/64
   C07C235/66
   C07C259/10
   C07C323/20
   C08G59/68
   C08K5/50
   C08L63/00 C
   H01L23/30 R
【請求項の数】15
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2015-207460(P2015-207460)
(22)【出願日】2015年10月21日
(65)【公開番号】特開2016-84342(P2016-84342A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2018年9月12日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0143638
(32)【優先日】2014年10月22日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0058072
(32)【優先日】2015年4月24日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】金 民 兼
(72)【発明者】
【氏名】勸 冀 ▲かく▼
(72)【発明者】
【氏名】李 東 桓
(72)【発明者】
【氏名】鄭 主 泳
(72)【発明者】
【氏名】千 晉 敏
(72)【発明者】
【氏名】崔 振 佑
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−105171(JP,A)
【文献】 特開2002−179768(JP,A)
【文献】 特開2003−292584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/00−9/94
C07C 39/00−39/44
C07C 49/00−49/92
C07C 235/00−235/88
C07C 259/00−259/20
C07C 323/00−323/67
C08G 59/00−59/72
C08K 5/00−5/59
C08L 63/00−63/10
H01L 23/00−23/66
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1a〜式1oの少なくとも1つで表される、ホスホニウム系化合物。
【化3-1】

【化3-2】

【化3-3】
【請求項2】
下記式2a〜式2jの少なくとも1つで表される、ホスホニウム系化合物。
【化4-1】

【化4-2】
【請求項3】
下記式3のホスホニウム系カチオン含有化合物と下記式4のアニリド系アニオン含有化合物とが反応するステップを含む、請求項1に記載のホスホニウム系化合物の製造方法:
【化5】

(前記式3中、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、またはヘテロ原子を含む置換もしくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基であり、Yはハロゲンである)、
【化6】

(前記式4中、XおよびXは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換もしくは非置換の炭素数3〜10のシクロアルキレン基、または置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン基であり、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数3〜30のヘテロアリール基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のヘテロシクロアルキル基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、または炭素数1〜30のヘテロアルキル基であり、mは0〜5の整数であり、Mはアルカリ金属またはAgである)。
【請求項4】
下記式3のホスホニウム系カチオン含有化合物と下記式5のアニリド系アニオン含有化合物とが反応するステップを含む、請求項2に記載のホスホニウム系化合物の製造方法:
【化7】

(前記式3中、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、またはヘテロ原子を含む置換もしくは非置換の炭素数1〜30の炭化水素基であり、Yはハロゲンである)、
【化8】

(前記式5中、XおよびXは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換もしくは非置換の炭素数3〜10のシクロアルキレン基、または置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン基であり、Rは、水素、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数3〜30のヘテロアリール基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のヘテロシクロアルキル基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、または炭素数1〜30のヘテロアルキル基であり、nは1〜2の整数であり、Mはアルカリ金属またはAgである)。
【請求項5】
エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤および硬化触媒を含み、
前記硬化触媒は請求項1または2に記載のホスホニウム系化合物を含む、エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチルカテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線形脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、およびハロゲン化エポキシ樹脂からなる群より選択される一つ以上を含む、請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記硬化剤は、フェノール樹脂を含む、請求項5または6に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記硬化剤は、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、フェノールノボラック型フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、ナフトール型フェノール樹脂、テルペン型フェノール樹脂、多官能型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、ビスフェノールAとレゾールとで合成されたノボラック型フェノール樹脂、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、ジヒドロキシビフェニルを含む多価フェノール化合物、無水マレイン酸および無水フタル酸を含む酸無水物、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ならびにジアミノジフェニルスルホンからなる群より選択される一つ以上を含む、請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記硬化触媒は、前記エポキシ樹脂組成物中、0.01重量%〜5重量%で含まれる、請求項5〜8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
前記ホスホニウム系化合物は、前記硬化触媒中、10重量%〜100重量%で含まれる、請求項5〜9のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
前記エポキシ樹脂組成物は、下記数式2による貯蔵安定性が80%以上である、請求項5〜10のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【数1】
(前記数式2で、F1は25℃/50RH%で72時間経過後、EMMI−1−66によって175℃、70kgf/cmでトランスファーモールディングプレス(transfer molding press)を用いて測定された流動長さ(inch)で、F0は初期エポキシ樹脂組成物の流動長さ(inch)である)。
【請求項12】
変性シリコンオイルをさらに含む、請求項5〜11のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
前記変性シリコンオイルは、エポキシ官能基を有するシリコンオイル、アミン官能基を有するシリコンオイル、カルボキシル官能基を有するシリコンオイル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項12に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
前記変性シリコンオイルは、前記エポキシ樹脂組成物全体に対して0.05重量%〜1.5重量%の量で含まれる、請求項12または13に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項15】
請求項5〜14のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物により密封された半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホニウム系化合物、それを含むエポキシ樹脂組成物、およびそれを用いて製造された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(integrated circuit)、LSI(large scale integration)等の半導体素子を包装して半導体装置を得る方法として、エポキシ樹脂組成物を用いたトランスファー(transfer)成形が低コスト、大量生産に適しているという点から広く用いられている。エポキシ樹脂や、硬化剤であるフェノール樹脂の改良によって半導体装置の特性および信頼性の向上を図ることができる。
【0003】
このようなエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化触媒等を含む。硬化触媒としては、通常、イミダゾール系触媒、アミン系触媒、ホスフィン系触媒が用いられてきた。
【0004】
しかし、電子機器が徐々に小型化、軽量化、高性能化される趨勢により、半導体の高集積化も毎年加速しており、また、半導体装置の表面実装化に対する要求も増えるにつれて従来のエポキシ樹脂組成物では解決できない問題が生じている。また、近年、半導体素子の包装に用いられる材料には生産性の向上を目的とした速硬化性と、物流・保管時のハンドリング性向上を目的とした保存安定性が求められている。
【0005】
これと関連して、特許文献1では、トリ置換ホスホニオフェノラートまたはその塩を用いたエポキシ樹脂硬化触媒を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4569076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、エポキシ樹脂の硬化を促進でき、モールディング時の流動性に優れ、高い硬化強度を示し、短い硬化時間でも硬化が可能な硬化触媒用化合物を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、低温でもエポキシ樹脂の硬化を促進できる硬化触媒用化合物を提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、所望の硬化温度に達した場合にのみ硬化を触媒し、所望の硬化温度以下の場合には硬化触媒の活性を示さない、貯蔵安定性の高い硬化触媒用化合物を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、前記エポキシ樹脂組成物を含む半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態は、ホスホニウム系化合物に関する。
【0012】
本発明の一実施形態において、本発明のホスホニウム系化合物は、下記式1で表される。
【0013】
【化1】
【0014】
(前記式1中、R、R、R、R、R、R、X、X、およびmは、下記の詳細な説明で定義した通りである)。
【0015】
他の実施形態において、本発明のホスホニウム系化合物は、下記式2で表される。
【0016】
【化2】
【0017】
(前記式2中、R、R、R、R、R、R、X、X、およびnは、下記の詳細な説明で定義した通りである)。
【0018】
前記R、R、R、およびRは炭素数6〜30のアリール基でもよい。
【0019】
、R、R、およびRが炭素数6〜30のアリール基である場合、前記R、R、R、およびRからなる群より選択される一つ以上はヒドロキシ基で置換されたものでもよい。
【0020】
前記ホスホニウム系化合物は、下記式1a〜式1oで表すことができる。
【0021】
【化3-1】
【0022】
【化3-2】
【0023】
【化3-3】
【0024】
前記ホスホニウム系化合物は、下記式2a〜式2jで表すことができる。
【0025】
【化4-1】
【0026】
【化4-2】
【0027】
本発明の他の実施形態は、ホスホニウム系化合物の製造方法に関する。
【0028】
一実施形態において、本発明のホスホニウム系化合物は、下記式3のホスホニウム系カチオン含有化合物と下記式4のアニリド系アニオン含有化合物とが反応するステップを含む製造方法によって製造されてもよい。
【0029】
【化5】
【0030】
(前記式3中、R、R、R、R、およびYは、下記の詳細な説明で定義した通りである)、
【0031】
【化6】
【0032】
(前記式4中、X、X、Y、R、R、m、およびMは、下記の詳細な説明で定義した通りである)。
【0033】
他の実施形態において、本発明のホスホニウム系化合物は、下記式3のホスホニウム系カチオン含有化合物と下記式5のアニリド系アニオン含有化合物とが反応するステップを含む製造方法によって製造されてもよい。
【0034】
【化7】
【0035】
(前記式5中、X、X、R、n、およびMは、下記の詳細な説明で定義した通りである)。
【0036】
本発明のまた他の実施形態は、エポキシ樹脂組成物に関する。
【0037】
前記エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤および硬化触媒を含み、前記硬化触媒は前記式1または式2で表されるホスホニウム系化合物を含んでもよい。
【0038】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチルカテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線形脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、およびハロゲン化エポキシ樹脂からなる群より選択される一つ以上を含んでもよい。
【0039】
前記硬化剤は、フェノール樹脂を含んでもよい。
【0040】
前記硬化剤は、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、フェノールノボラック型フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、ナフトール型フェノール樹脂、テルペン型フェノール樹脂、多官能型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、ビスフェノールAとレゾールで合成されたノボラック型フェノール樹脂、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、ジヒドロキシビフェニルを含む多価フェノール化合物、無水マレイン酸および無水フタル酸を含む酸無水物、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ならびにジアミノジフェニルスルホンからなる群より選択され一つ以上を含んでもよい。
【0041】
前記硬化触媒は、前記エポキシ樹脂組成物中、0.01重量%〜5重量%で含んでもよい。
【0042】
前記ホスホニウム系化合物は、前記硬化触媒中、10重量%〜100重量%で含んでもよい。
【0043】
前記エポキシ樹脂組成物は、下記数式2の貯蔵安定性が80%以上になり得る。
【0044】
【数1】
【0045】
(前記数式2で、F1は25℃/50RH%で72時間経過後、EMMI−1−66によって175℃、70kgf/cmでトランスファーモールディングプレス(transfer molding press)を用いて測定された流動長さ(inch)で、F0は初期エポキシ樹脂組成物の流動長さ(inch)である)。
【0046】
前記エポキシ樹脂組成物は、下記数式1の硬化収縮率が0.4%以下になり得る:
【0047】
【数2】
【0048】
(前記数式1で、Cはエポキシ樹脂組成物を175℃、70kgf/cmのトランスファーモールディングプレスして得た試片の長さ、Dは、前記試片を170℃〜180℃で4時間、後硬化し、冷却させた後に得た試片の長さである)。
【0049】
本発明のまた他の実施形態である半導体装置は、前記エポキシ樹脂組成物により密封されてもよい。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、エポキシ樹脂の硬化を促進でき、低温でもエポキシ樹脂の硬化を促進できる硬化触媒用化合物が提供される。
【0051】
本発明によれば、硬化触媒用化合物と、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物において、所定範囲の時間および温度条件でも粘度変化が低減され、低温硬化性と貯蔵安定性とが高いエポキシ樹脂組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の一実施形態である半導体素子の断面図である。
図2】本発明の他の実施形態である半導体素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本明細書において「置換または非置換の」の「置換」は、該当官能基中の一つ以上の水素原子が、水酸基、ハロゲン、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数3〜20のアルキルカルボニル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数13〜30のフェニルカルボニルアリ−ル基、炭素数12〜30のフェニルチオアリ−ル基、炭素数3〜30のヘテロアリール基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のヘテロシクロアルキル基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、炭素数1〜30のヘテロアルキル基で置換されたことを意味し、「ハロ」は、フッ素、塩素、ヨウ素または臭素を意味する。
【0054】
なお、本明細書において、炭素数のことを単に「C」と表す場合がある。例えば、C1〜C20は、炭素数1〜20を意味する。
【0055】
本明細書において「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を意味する。例えば、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、2−メチルプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デカヘキシル基等が挙げられる。
【0056】
本明細書において「芳香族炭化水素基」は、芳香族を有する炭化水素基を意味する。例えば、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ナフトール基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0057】
本明細書において「炭化水素基」は、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。例えば、炭素数1〜30の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デカヘキシル基、エチニル基等が挙げられる。本明細書において「アリール基」は、環状の置換基の全ての元素がp軌道を有し、p軌道が共役を形成する置換基を意味し、モノまたは縮合(すなわち、炭素原子の隣接した対を分けて持つ環)官能基を含み、「非置換のアリール基」は、C6〜C30のモノまたは縮合した(fused)多環(polycyclic)アリール基を意味し、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ナフトール基、アントラセニル基等を意味し得るが、これに制限されるのではない。
【0058】
本明細書において「ヘテロアリール基」は、C6〜C30のアリール基内に窒素、酸素、硫黄およびリンからなる群から選ばれる原子が1個〜3個含まれ、残りは炭素であることを意味し、例えば、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル、キノサリニル、アクリジニル、キナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ピラゾリル、インダゾリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、プリニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、フラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニルを意味し得るが、これに制限されるものではない。
【0059】
本明細書において「アリーレン基」は、上記アリ−ル基の水素原子を1個取り除いた形である2価の置換基を意味する。例えば、炭素数6〜30のアリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、フェニルカルボニルフェニレン基、フェニルチオフェニレン基、下記置換基等が挙げられる。
【0060】
【化8】
【0061】
本明細書において「アルキル基」としては、直鎖状または分岐状のアルキル基を意味する。例えば、炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、2−メチルプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、n−オクチル基、n−デカヘキシル基等が挙げられる。
【0062】
本明細書において「シクロアルキル基」は、環状のアルキル基を意味する。例えば、炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、n−シクロへキシル基等が挙げられる。
【0063】
本明細書において「アリ−ルアルキル基」は、アリ−ル基を置換基として有するアルキル基を意味する。
【0064】
本明細書において「アルキレン基」は、上記アルキル基の水素原子を1個取り除いた形である2価の置換基を意味する。例えば、炭素数1〜20のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
【0065】
本明細書において「ヘテロアルキル基」、「ヘテロシクロアルキル基」、「ヘテロアリール基」、「ヘテロシクロアルキレン基」、「ヘテロアリーレン基」において、「ヘテロ」は、窒素、酸素、硫黄またはリン原子を意味する。すなわち、上述の各置換基の水素原子の1つ以上が窒素、酸素、硫黄またはリン原子で置換された基を意味する。
【0066】
本発明のホスホニウム系化合物は、ホスホニウム系カチオンと、ヒドロキシ基、アミド基を同時に含んでもよいアニオンを含み、下記式1で表すことができる。:
【0067】
【化9】
【0068】
式1中、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1〜C30の脂肪族炭化水素基、置換もしくは非置換のC6〜C30の芳香族炭化水素基、またはヘテロ原子を含む置換もしくは非置換のC1〜C30の炭化水素基であり、XおよびXは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換もしくは非置換の炭素数3〜10のシクロアルキレン基、または置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン基であり、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基、C1〜C20のアルキル基、C6〜C30のアリール基、C3〜C30のヘテロアリール基、C3〜C10のシクロアルキル基、C3〜C10のヘテロシクロアルキル基、C7〜C30のアリールアルキル基、またはC1〜C30のヘテロアルキル基であり、mは0〜5の整数である。
【0069】
好ましい実施形態において、式1のR、R、R、Rは、それぞれ独立して、C6〜C30のアリール基である。
【0070】
好ましい実施形態において、式1のR、R、RおよびRからなる群より選択される一つ以上はヒドロキシ基で置換される。より好ましい実施形態において、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、フェニル基またはヒドロキシフェニル基である。
【0071】
好ましい実施形態において、XおよびXは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリーレン基であり、より好ましくは、Xはフェニレン基、ナフチレン基またはニトロフェニレン基であり、Xはフェニレン基またはナフチレン基である。
【0072】
好ましい実施形態において、RおよびRは、それぞれ独立して、C6〜C30のアリール基であり、より好ましくは、フェニル基、ナフチル基またはニトロフェニル基である。
【0073】
好ましい実施形態において、mは0〜3であり、より好ましくはmは0または1である。
【0074】
好ましい実施形態において、式1のホスホニウム系化合物は、下記式1a〜式1oで表される化合物である。
【0075】
【化10-1】
【0076】
【化10-2】
【0077】
【化10-3】
【0078】
他の実施形態におけるホスホニウム系化合物は、ホスホニウム系カチオンと、ヒドロキシ基およびアミド基を同時に含むアニオンとを含み、下記式2で表される。
【0079】
【化11】
【0080】
式2中、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1〜C30の脂肪族炭化水素基、置換もしくは非置換のC6〜C30の芳香族炭化水素基、またはヘテロ原子を含む置換もしくは非置換のC1〜C30の炭化水素基であり、XおよびXは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換もしくは非置換の炭素数3〜10のシクロアルキレン基、または置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン基であり、Rは、水素、ヒドロキシ基、C1〜C20のアルキル基、C6〜C30のアリール基、C3〜C30のヘテロアリール基、C3〜C10のシクロアルキル基、C3〜C10のヘテロシクロアルキル基、C7〜C30のアリールアルキル基、またはC1〜C30のヘテロアルキル基であり、nは1〜2の整数である。
【0081】
好ましい実施形態において、式2のR、R、R、Rは、それぞれ独立して、C6〜C30のアリール基である。
【0082】
好ましい実施形態において、式2のR、R、RおよびRからなる群より選択される一つ以上はヒドロキシ基で置換される。より好ましい実施形態において、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、フェニル基またはヒドロキシフェニル基である。
【0083】
好ましい実施形態において、XおよびXは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリーレン基であり、より好ましくは、Xはフェニレン基またはナフチレン基であり、Xはフェニレン基、フェニルカルボニルフェニレン基、および下記式で表される置換基からなる群より選択される。
【0084】
【化12】
【0085】
好ましい実施形態において、Rは、C6〜C30のアリール基であり、より好ましくは、置換または非置換のフェニル基であり、さらに好ましくはフェニル基または炭素数1〜6のアルキル基で置換されたフェニル基であり、特に好ましくはフェニル基または2,6−ジイソプロピルフェニル基である。
【0086】
好ましい実施形態において、nは0〜3であり、より好ましくはnは0または1である。
【0087】
好ましい実施形態において、式2のホスホニウム系化合物は、下記式2a〜式2jで表される。
【0088】
【化13-1】
【0089】
【化13-2】
【0090】
ホスホニウム系化合物は、エポキシ樹脂、硬化剤、および無機充填剤からなる群より選択される一つ以上を含む組成物に添加されてもよく、当該組成物において、潜在性硬化触媒をさらに用いてもよい。
【0091】
組成物において、ホスホニウム系化合物より生成したホスフィン化合物が、エポキシ樹脂内のエポキシ基と反応して開環反応をし、開環反応後にエポキシ樹脂内の水酸基との反応によるエポキシ基の開環反応、活性化されたエポキシ樹脂の鎖末端とエポキシドとの反応等が生じる。このようにして、本発明のホスホニウム系化合物が硬化反応を触媒することになる。
【0092】
ホスホニウム系化合物は、エポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応を触媒すると同時に、低温硬化性と貯蔵安定性とが高く、エポキシ樹脂、硬化剤等を含む混合物(エポキシ樹脂組成物)において所定範囲の時間および温度条件でも粘度変化を低減できる。換言すれば、本発明のホスホニウム系化合物は、エポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応を触媒するだけでなく、所定範囲の時間および温度条件でも粘度変化を低減でき、低温硬化性と貯蔵安定性とが高い、ホスホニウム系化合物と、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物を提供することができる。
【0093】
すなわち、本発明によれば、ホスホニウム系化合物と、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物において、所定範囲の時間および温度条件でも粘度変化が低減され、低温硬化性と貯蔵安定性とが高いエポキシ樹脂組成物が提供される。高い貯蔵安定性は、本発明のホスホニウム系化合物が、所望の硬化温度に達した場合にのみ硬化を促進させ、所望の硬化温度以下の場合は硬化触媒の活性を示さない触媒作用を有するものであって、その結果、エポキシ樹脂組成物の粘度変化がなく、エポキシ樹脂組成物を長時間、貯蔵できることを可能とする。一般的に、硬化反応の進行は、エポキシ樹脂組成物が液体である場合、粘度の上昇、流動性の低下をもたらし、エポキシ樹脂組成物が固体である場合、粘性を発現させることができる。
【0094】
また、本発明によれば、硬化触媒用化合物、エポキシ樹脂、硬化剤等を含むエポキシ樹脂組成物において、所定範囲の時間および温度条件でのエポキシ樹脂組成物の粘度変化を低減するだけでなく、エポキシ樹脂組成物を高温で硬化反応させたときの流動性の低下による成形性の低下や、成形製品の機械的、電気的、または化学的特性の低下を低減することができる、貯蔵安定性の高い硬化触媒用化合物が提供される。
【0095】
ホスホニウム系化合物の製造方法
式1のホスホニウム系化合物は、下記式3のホスホニウム系カチオン含有化合物と下記式4のアニリド系アニオン含有化合物とを反応させることによる製造してもよい:
【0096】
【化14】
【0097】
(前記式3中、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1〜C30の脂肪族炭化水素基、置換もしくは非置換のC6〜C30の芳香族炭化水素基、またはヘテロ原子を含む置換もしくは非置換のC1〜C30の炭化水素基であり、Yはハロゲンである)、
【0098】
【化15】
【0099】
(前記式4中、XおよびXは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換もしくは非置換の炭素数3〜10のシクロアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン基であり、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基、C1〜C20のアルキル基、C6〜C30のアリール基、C3〜C30のヘテロアリール基、C3〜C10のシクロアルキル基、C3〜C10のヘテロシクロアルキル基、C7〜C30のアリールアルキル基、またはC1〜C30のヘテロアルキル基であり、mは0〜5の整数であり、Mはアルカリ金属またはAgである。)
式3において、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、好ましくはC6〜C30のアリール基である。好ましい実施形態においては、R、R、RおよびRからなる群より選択される一つ以上はヒドロキシ基で置換される。より好ましい実施形態において、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、フェニル基またはヒドロキシフェニル基である。
【0100】
式4において、XおよびXは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリーレン基であるのが好ましく、より好ましくは、Xはフェニレン基、ナフチレン基またはニトロフェニレン基であり、Xはフェニレン基またはナフチレン基である。好ましい実施形態において、RおよびRは、それぞれ独立して、C6〜C30のアリール基であり、より好ましくは、フェニル基、ナフチル基またはニトロフェニル基である。好ましい実施形態において、mは0〜3であり、より好ましくはmは0または1である。
【0101】
式2のホスホニウム系化合物は、前記式3のホスホニウム系カチオン含有化合物と下記式5のアニリド系アニオン含有化合物とを反応させることにより製造してもよい:
【0102】
【化16】
【0103】
(前記式5中、XおよびXは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換もしくは非置換の炭素数3〜10のシクロアルキレン基、または置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン基であり、Rは、水素、ヒドロキシ基、C1〜C20のアルキル基、C6〜C30のアリール基、C3〜C30のヘテロアリール基、C3〜C10のシクロアルキル基、C3〜C10のヘテロシクロアルキル基、C7〜C30のアリールアルキル基、またはC1〜C30のヘテロアルキル基であり、nは1〜2の整数であり、Mはアルカリ金属またはAgである。)
前記式3で、Yはハロゲンを表す。ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。前記式4および式5で、Mはアルカリ金属またはAgを表す。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム等である。
【0104】
式5において、XおよびXは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリーレン基であるのが好ましく、より好ましくは、Xはフェニレン基またはナフチレン基であり、Xはフェニレン基、フェニルカルボニルフェニレン基、および下記式で表される置換基:
【0105】
【化17】
【0106】
からなる群より選択される。好ましい実施形態において、Rは、C6〜C30のアリール基であり、より好ましくは、置換または非置換のフェニル基であり、さらに好ましくはフェニル基または炭素数1〜6のアルキル基で置換されたフェニル基であり、特に好ましくはフェニル基または2,6−ジイソプロピルフェニル基である。好ましい実施形態において、nは0〜3であり、より好ましくはnは0または1である。
【0107】
ホスホニウム系カチオン含有化合物は、溶媒の存在下に、ホスフィン系化合物と有機ハロゲンとを反応させて製造されてもよい。前記有機ハロゲンはハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリールまたはハロゲン化アラルキルでもよい。ホスフィン系化合物としては、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ジフェニルプロピルホスフィン、イソプロピルジフェニルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン等でもよいが、これに制限されるのではない。
【0108】
ホスホニウム系カチオン含有化合物とアニリド系アニオン含有化合物との反応は、メタノール、メチレンクロライド、アセトニトリル、N,N―ジメチルホルムアミド、トルエン等の有機溶媒の存在下で遂行されてもよい。具体例としては、ホスホニウム系カチオン含有化合物とアニリド系アニオン含有化合物とが、ホスホニウム系カチオン含有化合物:アニリド系アニオン含有化合物=1:1〜1:6のモル比で反応し得る。一具体例においては、ホスフィン系化合物と有機ハロゲンとを反応させてホスホニウム系カチオン含有化合物を製造し、追加的な分離工程なくアニリド系アニオン含有化合物を添加して反応させてもよい。
【0109】
アニオンと関連して、二つの分子が水素結合クラスターを形成してアニオンをなしているとき、流動性の側面において優れる。これは、二つの分子が水素結合クラスターをなしているときに、カチオンとのイオン結合がより強く形成され反応性が抑制されながら、弱い水素結合が早く切れてカチオン触媒部が反応に参与する速硬化性を有しているためであると推定される。
【0110】
エポキシ樹脂組成物
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のホスホニウム系化合物を含む。一実施形態としては、本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤、および硬化触媒からなる群より選択される一つ以上を含んでもよい。なお、「エポキシ樹脂組成物」を単に「組成物」と称する場合もある。
【0111】
エポキシ樹脂
エポキシ樹脂は、分子中に2個以上のエポキシ基を有するものが好ましい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチルカテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、直鎖状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等でもよく、それらは単独または2種以上混合して含んでもよい。また、例えば、エポキシ樹脂は、分子中に2個以上のエポキシ基および1個以上の水酸基を有するエポキシ樹脂でもよい。エポキシ樹脂は、固形のエポキシ樹脂、液状のエポキシ樹脂の一つ以上を含んでもよく、好ましくは、固形のエポキシ樹脂を用いることができる。例えば、市販品としては、NC−3000(日本化薬株式会社製)を用いることができる。
【0112】
一実施形態において、エポキシ樹脂は、下記式6で表されるビフェニル型エポキシ樹脂でもよい:
【0113】
【化18】
【0114】
(前記式6中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、aの平均値は0〜7である。)
エポキシ樹脂は、組成物中、固形分基準で、2重量%〜17重量%、例えば、3重量%〜15重量%、例えば、3重量%〜12重量%含んでもよい。前記範囲でエポキシ樹脂を含有する場合、組成物の硬化性が低下しないので好ましい。
【0115】
硬化剤
硬化剤は、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、フェノールノボラック型フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、ナフトール型フェノール樹脂、テルペン型フェノール樹脂、多官能型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、ビスフェノールAとレゾールで合成されたノボラック型フェノール樹脂、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、ジヒドロキシビフェニルを含む多価フェノール化合物、無水マレイン酸および無水フタル酸を含む酸無水物、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン等を挙げることができる。好ましくは、硬化剤は、1個以上の水酸基を有するフェノール樹脂を用いることができる。市販品としては、例えば、ザイロック型フェノール樹脂であるHE100C−10(Air Water)を用いることができる。
【0116】
一実施形態において、硬化剤は、下記式7で表されるザイロック型フェノール樹脂、下記式8で表されるフェノールアラルキル型フェノール樹脂を用いてもよい:
【0117】
【化19】
【0118】
(前記式7中、bの平均値は0〜7である。)
【0119】
【化20】
【0120】
(前記式8中、cの平均値は1〜7である。)
硬化剤は、エポキシ樹脂組成物中、固形分基準で、0.5重量%〜13重量%、例えば、1重量%〜10重量%、例えば、2重量%〜8重量%含んでもよい。前記範囲で硬化剤を含有する場合、組成物の硬化性が低下しないため好ましい。
【0121】
無機充填剤
エポキシ樹脂組成物は、無機充填剤をさらに含んでもよい。無機充填剤は、組成物の機械的物性の向上と低応力化とを高めることができる。無機充填剤の例としては、溶融シリカ、結晶性シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、マグネシア、クレー(clay)、タルク(talc)、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、酸化アンチモン、ガラス繊維中の一つ以上を含んでもよい。
【0122】
好ましくは、低応力化のためには、線膨張係数の低い溶融シリカを用いる。
【0123】
溶融シリカは、真比重が2.3以下の非結晶性シリカを意味するもので、結晶性シリカを溶融して作られたり、多様な原料から合成した非結晶性シリカも含まれる。
【0124】
溶融シリカの形状および粒径は、特に制限されないが、平均粒径(体積換算)5μm〜30μmの球状溶融シリカを50重量%〜99重量%、平均粒径(体積換算)0.001μm〜1μmの球状溶融シリカを1重量%〜50重量%を含む溶融シリカ混合物を充填剤全体に対して40重量%〜100重量%になるように含むことが良い。また、用途に合わせてその最大粒径(体積換算)を45μm、55μm、および75μm中のいずれか一つに調整して用いてもよい。前記球状溶融シリカには、導電性のカーボンがシリカの表面に異物として含まれる場合があるが、極性の異物の混入が少ない物質を選択することも重要である。
【0125】
無機充填剤の使用量は、成形性、低応力性、および高温強度等の要求物性によって異なる。具体例においては、無機充填剤は、エポキシ樹脂組成物中、固形分基準で、70重量%〜95重量%、例えば、75重量%〜92重量%で含んでもよい。前記範囲で無機充填剤を含有する場合、エポキシ樹脂組成物の難燃性、流動性および信頼性を確保できるため好ましい。
【0126】
硬化触媒
エポキシ樹脂組成物は、前記式1および式2で表される1種以上のホスホニウム系化合物を含む硬化触媒を含んでもよい。ホスホニウム系化合物は、エポキシ樹脂組成物中、固形分基準で、0.01重量%〜5重量%、例えば、0.02重量%〜1.5重量%、例えば、0.05重量%〜1.5重量%で含んでもよい。前記範囲でホスホニウム系化合物を含有する場合、硬化反応時間が遅延されずに、組成物の流動性を確保できるため好ましい。
【0127】
エポキシ樹脂組成物は、ホスホニウムを含まない非ホスホニウム系硬化触媒をさらに含んでもよい。非ホスホニウム系硬化触媒は、3級アミン、有機金属化合物、有機リン化合物、イミダゾール、およびホウ素化合物が使用可能である。3級アミンには、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、ジエチルアミノエタノール、トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノールとトリ−2−エチルヘキシル酸塩等がある。有機金属化合物には、クロミウムアセチルアセトネート、ジンクアセチルアセトネート、ニッケルアセチルアセトネート等がある。有機リン化合物には、トリス−4−メトキシホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、トリフェニルホスフィン−1,4−ベンゾキノン付加物等がある。イミダゾール類には、2−メチルイミダゾール、2―フェニルイミダゾール、2−アミノイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等がある。ホウ素化合物には、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、テトラフェニルボロン塩、トリフルオロボラン−n−ヘキシルアミン、トリフルオロボランモノエチルアミン、テトラフルオロボラントリエチルアミン、テトラフルオロボランアミン等がある。これ以外にも、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(1,5−diazabicyclo[4.3.0]non−5−ene:DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(1,8―diazabicyclo[5.4.0]undec−7−ene:DBU)およびフェノールノボラック樹脂塩等を用いてもよい。特に好ましい硬化触媒としては、有機リン化合物、ホウ素化合物、アミン系またはイミダゾール系硬化促進剤を単独若しくは混合して用いることを挙げられる。硬化触媒は、エポキシ樹脂または硬化剤と前反応して作られた付加物を用いることも可能である。
【0128】
全体硬化触媒中、本発明のホスホニウム系化合物は、固形分基準で、10重量%〜100重量%、例えば、60重量%〜100重量%で含んでもよく、前記範囲で、硬化反応時間が遅延されずに、組成物の流動性確保の効果が表れ得る。
【0129】
硬化触媒は、エポキシ樹脂組成物中、固形分基準で、0.01重量%〜5重量%、例えば、0.02重量%〜1.5重量%、例えば、0.05重量%〜1.5重量%で含んでもよい。前記範囲で、硬化反応時間が遅延されずに、組成物の流動性を確保できる。
【0130】
本発明の組成物は、組成物に含まれる通常の添加剤をさらに含んでもよい。具体例として、添加剤は、カップリング剤、離型剤、応力緩和剤、架橋促進剤、レベリング剤、着色剤からなる群より選択される一つ以上を含んでもよい。
【0131】
カップリング剤は、エポキシシラン、アミノシラン、メルカプトシラン、アルキルシランおよびアルコキシシランからなる群から選ばれる1種以上を用いてもよいが、これに制限されるのではない。例えば、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM―803(信越化学工業株式会社製))や、とメチルトリメトキシシラン(SZ−6070(Dowcorning chemical))等を用いることができる。カップリング剤は、エポキシ樹脂組成物中、固形分基準で、0.1重量%〜1重量%で含んでもよい。
【0132】
離型剤は、パラフィン系ワックス、エステル系ワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、天然脂肪酸および天然脂肪酸金属塩からなる群から選ばれる1種以上を用いてもよい。例えば、カルナバワックス等が用いられる。離型剤は、エポキシ樹脂組成物中、固形分基準で、0.1重量%〜1重量%で含んでもよい。
【0133】
応力緩和剤は、変性シリコンオイル、シリコンエラストマー、シリコンパウダーおよびシリコンレジンからなる群から選ばれる1種以上を用いてもよいが、これに制限されるのではない。応力緩和剤は、エポキシ樹脂組成物中、固形分基準で、0重量%〜6.5重量%、例えば、0重量%〜1重量%、例えば、0.1重量%〜1重量%で含有されることが好ましいが、選択的に含有してもよく、それら全てを含有してもよい。このとき、変成シリコンオイルとしては、耐熱性に優れたシリコン重合体が良く、エポキシ官能基を有するシリコンオイル、アミン官能基を有するシリコンオイル、およびカルボキシル官能基を有するシリコンオイル等を1種または2種以上混合して、エポキシ樹脂組成物全体に対して0.05重量%〜1.5重量%を用いてもよい。但し、シリコンオイルを1.5重量%以上超える場合には、表面汚染が発生しやすく、レジンブリード(bleed)が長くなる恐れがあり、0.05重量%未満で使用する時には、十分な低弾性率を得ることができなくなるという問題点があり得る。また、シリコンパウダーは、中心粒径が15μm以下であることが成形性低下の原因として作用しないため、特に好ましく、樹脂組成物全体に対して0重量%〜5重量%、例えば、0.1重量%〜5重量%で含んでもよい。
【0134】
添加剤は、エポキシ樹脂組成物中、固形分基準で、0.1重量%〜10重量%、例えば、0.1重量%〜3重量%で含んでもよい。
【0135】
エポキシ樹脂組成物は、低温でも硬化が可能であり、例えば、硬化開始温度は、90℃〜120℃でもよい。前記範囲で、低温でも硬化が十分に進行し、低温硬化の効果がある。
【0136】
エポキシ樹脂組成物は、EMMI−1−66で175℃、70kgf/cmでトランスファーモールディングプレスによる流動長さが、好ましくは59−77inchである。前記範囲であれば、本発明のエポキシ樹脂組成物の用途として用いるのに好適である。なお、本明細書中、トランスファーモールディングプレスとして用いた機器は、Fujiwa sek社製TEP12−16EVである。
【0137】
エポキシ樹脂組成物は、ガラス転移温度が100℃〜130℃であるのが好ましく、120℃〜127℃であるのがより好ましい。前記範囲であれば、低温硬化の効果があり得る。
【0138】
エポキシ樹脂組成物は、下記数式1によって測定された硬化収縮率が、好ましくは0.4%以下、さらに好ましくは0.01%〜0.40%である。前記範囲であれば、硬化収縮率は低いため、本発明のエポキシ樹脂組成物の用途として用いるのに好適である。
【0139】
【数3】
【0140】
(前記式1で、Cはエポキシ樹脂組成物を175℃、70kgf/cmのトランスファーモールディングプレスして得た試片の長さ、Dは前記試片を170℃〜180℃で4時間、後硬化し、冷却させた後に得た試片の長さである)。
【0141】
硬化収縮率が前記範囲であれば、硬化収縮率が十分低いため、例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物の用途として用いるのに好適である。
【0142】
エポキシ樹脂組成物は、下記数式2による貯蔵安定性が80%以上になり得る:
【0143】
【数4】
【0144】
(前記数式2で、F1は25℃/50RH%で72時間経過後、EMMI−1−66によって175℃、70kgf/cmでトランスファーモールディングプレス(transfer molding press)を用いて測定された流動長さ(inch)で、F0は初期流動長さ(inch)である)。
【0145】
エポキシ樹脂組成物中、エポキシ樹脂は単独で用いられるか、硬化剤、硬化触媒、離型剤、カップリング剤、および応力緩和剤等の添加剤と、メルトマスターバッチ(melt master batch)のような前反応させて作られた付加化合物を含んでもよい。エポキシ樹脂組成物を製造する方法は、特に制限されないが、組成物に含まれる各構成成分をヘンセルミキサーや、レーディゲミキサーを用いて均一に混合した後、ロールミルやニーダーで90℃〜120℃で溶融混練し、冷却および粉砕過程を経て製造されてもよい。
【0146】
本発明のエポキシ樹脂組成物の用途は、半導体素子密封用途、接着フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、回路基板、ソルダーレジスト、アンダーフィル剤、ダイボンディング剤、部品補充樹脂用途等のエポキシ樹脂組成物が、必要とする広範囲な用途に適用することができるが、これに制限されるのではない。
【0147】
半導体素子の密封
本発明のエポキシ樹脂組成物は、半導体素子の密封用途に好適に用いることができ、エポキシ樹脂、硬化剤、ホスホニウム系化合物含有硬化触媒、無機充填剤、添加剤を用いてもよい。
【0148】
本発明の半導体素子は、前記エポキシ樹脂組成物を用いて密封されてもよい。
【0149】
図1は、本発明の一実施例の半導体素子の断面図である。図1を参照すると、本発明の一実施形態である半導体素子100は、配線基板10、配線基板10上に形成されたバンプ30、バンプ30上に形成された半導体チップ20を含み、配線基板10と半導体チップ20との間のギャップはエポキシ樹脂組成物40で封止されてもよく、エポキシ樹脂組成物は、本発明の実施例のエポキシ樹脂組成物でもよい。
【0150】
図2は、本発明の他の実施形態である半導体素子の断面図である。図2を参照すると、本発明の他の実施形態である半導体素子200は、配線基板10、配線基板10上に形成されたバンプ30、バンプ30上に形成された半導体チップ20を含み、配線基板10と半導体チップ20との間のギャップと、半導体チップ20の上部面全体とが、エポキシ樹脂組成物40で封止されてもよく、エポキシ樹脂組成物は、本発明の実施例の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を含んでもよい。
【0151】
図1図2で、配線基板、バンプ、半導体チップのそれぞれの大きさ、バンプの個数は任意で図示されたものであって、変更可能である。
【0152】
本発明の組成物を用いて半導体素子を密封する方法は、低圧トランスファー成形方法が最も一般的に用いることができる。しかし、インジェクション(injection)成形方法やキャスティング(casting)方法等の方法でも成形することができる。前記方法によって、銅リードフレーム、鉄リードフレーム、または前記リードフレームにニッケル、銅およびパラジウムからなる群から選ばれる1種以上の物質でプリプレーティングされたリードフレーム、または有機系ラミネートフレームの半導体素子を製造できる。
【0153】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳しく説明するが、実施例に基づいて本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0154】
製造例1:式1aで表されるホスホニウム系化合物の製造
メタノール(以下、「MeOH」と略す)/ジメチルホルムアミド(DMF)(重量比1:1)100gに2−ヒドロキシ−5−ニトロ−N−トリルベンズアミド(2−hydroxy−5−nitro−N−p−tolylbenzamide)27.2gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液(sodium methoxide solution)21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、サリチルアニリド(salicylanilide)21.3gを投入して溶かした。次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド(tetraphenylphosphonium bromide) 41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式1aの化合物68.4gを得た。NMRデータで下記式1aの化合物であることを確認した。
【0155】
【化21】
【0156】
H NMR(300MHz,DMSO)δ13.84(s,1H)、11.85(s,1H)、10.43(s,1H)、8.72(d,J=3.3Hz,1H)、8.03−7.90(m,5H)、7.88−7.66(m,19H)、7.56(d,J=8.4Hz,2H)、7.49−7.32(m,3H)、7.22−7.06(m,3H)7.04−6.90(m,2H)、6.32(d,J=9.4Hz,1H)、2.26(s,3H)。
【0157】
式1aで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体は、H NMRスペクトルの積分値(integration)でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体の割合が1:1:1で維持されていることから、式1aで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0158】
製造例2:式1bで表されるホスホニウム系化合物の製造
1L丸底フラスコに、トリフェニルホスフィン 100gと4−ブロモフェノール 60g、NiBr23.7gを入れ、エチレングリコール 130gを入れた後、180℃で6時間反応させて、下記式1b’で表される構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩を得た。
【0159】
【化22】
【0160】
MeOH/DMF(重量比1:1)100gに2−ヒドロキシ−5−ニトロ−N−トリルベンズアミド27.2gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、サリチルアニリド21.3gを投入して溶かした。次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいた 式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式1bの化合物69.4gを得た。NMRデータで下記式1bの化合物であることを確認した。
【0161】
【化23】
【0162】
H NMR(300MHz,DMSO)δ13.84(s,1H)、11.53(s,2H)、10.47(s,1H)、8.72(d,J=3.3Hz,1H)、8.02−7.32(m,27H)、7.20−7.06(m,5H)、6.97(ddd,J=11.3,6.5,2.3Hz,2H)、6.33(d,J=9.4Hz,1H)、2.26(s,3H)。
【0163】
式1bで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体は、H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体の割合が1:1:1で維持されていることから、式1bで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0164】
製造例3:式1cで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH/DMF(重量比1:1)100gに3−ヒドロキシ N−ナフチル 2−ナフタミド(3−hydroxy N−naphthyl 2−naphthamide)31.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、サリチルアニリド21.3gを投入して溶かした。次いで、MeOH50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド 41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した黄色の固体を回収し、式1cの化合物70.4gを得た。NMRデータで下記式1cの化合物であることを確認した。
【0165】
【化24】
【0166】
H NMR(300MHz,DMSO)δ11.90(s,1H)、8.60−8.40(m,3H)、8.04−7.62(m,25H)、7.61−7.42(m,4H)、7.40−7.16(m,4H)、7.07(t,J=7.3Hz,3H)、6.87(d,J=8.2Hz,1H)、6.73(t,J=7.5Hz,1H)。
【0167】
式1cで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体は、H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体の割合が1:1:1で維持されていることから、式1cで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0168】
製造例4:式1d表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH/DMF(重量比1:1)100gに4’−ニトロサリチルアニリド(4’−nitrosalicylanilide)25.8gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、サリチルアニリド21.3gを投入して溶かした。次いで、MeOH50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド 41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した黄色の固体を回収し、式1dの化合物71.8gを得た。NMRデータで下記式1dの化合物であることを確認した。
【0169】
【化25】
【0170】
H NMR(300MHz,DMSO)δ11.55(s,1H)、8.33−8.13(m,2H)、8.03−7.87(m,7H)、7.87−7.65(m,18H)、7.57−7.27(m,−4H)、7.22−7.03(m,2H)、6.94(d,J=8.2Hz,1H)、6.86−6.75(m,1H)、6.68(d,J=8.4Hz,1H)、6.46(t,J=7.4Hz,1H)。
【0171】
式1dで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体は、H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体の割合が1:1:1で維持されていることから、式1dで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0172】
製造例5:式1eで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH/DMF(重量比1:1)100gに4’−ニトロサリチルアニリド25.8gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、サリチルアニリド21.3gを投入して溶かした。次いで、MeOH50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した黄色の固体を回収し、式1eの化合物72.7gを得た。NMRデータで下記式1eの化合物であることを確認した。
【0173】
【化26】
【0174】
H NMR(300MHz,DMSO)δ11.44(s,1H)、8.30−8.12(m,2H)、7.99−7.84(m,6H)、7.84−7.61(m,14H)、7.43(ddd,J=8.1,6.0,5.2Hz,3H)、7.39−7.29(m,3H)、7.25−7.15(m,1H)、7.11(dt,J=14.8,5.3Hz,3H)、6.94(d,J=8.2Hz,1H)、6.87−6.66(m,2H)、6.53(t,J=7.4Hz,1H)。
【0175】
式1eで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体は、H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMR スペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体の割合が1:1:1で維持されていることから、式1eで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0176】
製造例6:式1fで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH/DMF(重量比1:1)100gに2−ヒドロキシ−5−ニトロベンズアニリド25.8gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、サリチルアニリド21.3gを投入して溶かした。次いで、MeOH50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド 41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した黄色の固体を回収し、式1dの化合物67.9gを得た。NMRデータで下記式1fの化合物であることを確認した。
【0177】
【化27】
【0178】
H NMR(300MHz,DMSO)δ13.94(s,1H)、11.86(s,1H)、10.42(s,1H)、8.73(d,J=3.3Hz,1H)、8.11−7.90(m,5H)、7.90−7.62(m,20H)、7.57−7.25(m,5H)、7.20−7.08(m,1H)、7.08−6.91(m,3H)、6.34(d,J=9.4Hz,1H)。
【0179】
式1fで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体は、H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMR スペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体の割合が1:1:1で維持されていることから、式1fで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0180】
製造例7:式1gで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH/DMF(重量比1:1)100gに2−ヒドロキシ−5−ニトロベンズアニリド25.8gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、サリチルアニリド21.3gを投入して溶かした。次いで、MeOH50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した黄色の固体を回収し、式1gの化合物68.8gを得た。NMRデータで下記式1gの化合物であることを確認した。
【0181】
【化28】
【0182】
H NMR(300MHz,DMSO)δ13.94(s,1H)、10.70(s,1H)、8.73(d,J=3.3Hz,1H)、8.51(s,1H)、7.94(ddt,J=6.8,3.3、1.5Hz,4H)、7.88−7.62(m,18H)、7.58−7.45(m,3H)7.44−7.26(m,6H)、7.15(dq,J=4.6,1.4Hz,3H)、7.07−6.95(m,1H)、6.35(d,J=9.4Hz,1H)。
【0183】
式1gで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体は、H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMR スペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体の割合が1:1:1で維持されていることから、式1gで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0184】
製造例8:式1hで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH 50gにサリチルアミド 13.7gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液 21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、メタノール50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド 41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式1hの化合物41gを得た。NMRデータで下記式1hの化合物であることを確認した。
【0185】
【化29】
【0186】
H NMR δ8.00−7.94(4H、dt)、7.85−7.70(17H、m)、7.29(1H、dt)、6.82(1H、d)、6.72(1H、t)。
【0187】
製造例9:式1iで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH 50gにサリチルアミド 27.4gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液 21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、メタノール50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド 41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式1iの化合物50.8gを得た。NMRデータで下記式1iの化合物であることを確認した。
【0188】
【化30】
【0189】
H NMR δ8.00−7.94(4H、dt)、7.85−7.70(18H、m)、7.33(2H、dt)、6.85(2H、d)、6.77(2H、t)。
【0190】
式1iで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアミドはH NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:2の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアミドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウムとサリチルアミドとが1:2の割合で維持されていることから、式1iで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0191】
製造例10:式1jで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH 50gにサリチルアミド 21.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液 21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、メタノール50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式1jの化合物47gを得た。NMRデータで下記式1jの化合物であることを確認した。
【0192】
【化31】
【0193】
H NMR δ7.87(3H、t)、7.85−7.66(15H、m)、7.38(2H、dd)、7.31(2H、dt)、7.18(1H、dt)、7.05−6.97(3H、m)、6.71(1H、d)、6.54(1H、t)。
【0194】
製造例11:式1kで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH 50gにサリチルアミド 42.6gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液 21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、メタノール50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式1kの化合物66gを得た。NMRデータで下記式1kの化合物であることを確認した。
【0195】
【化32】
【0196】
H NMR δ7.95−7.87(5H、m)、7.82−7.66(16H、m)、7.43(2H、dd)、7.35(4H、t)、7.26(2H、t)、7.08−7.03(4H、m)、6.85(2H、dt)、6.67(2H、dt)。
【0197】
式1kで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアミドはH NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:2の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアミドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウムとサリチルアミドとが1:2の割合で維持されていることから、式1kで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0198】
製造例12:式1lで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH 50gにサリチルヒドロキサム酸 15.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液 21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、メタノール50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式1lの化合物49gを得た。NMRデータで下記式1lの化合物であることを確認した。
【0199】
【化33】
【0200】
H NMR δ7.87(3H、t)、7.77−7.73(6H、m)、7.69−7.65(6H、m)、7.59(1H、dd)、7.15(1H、dt)、7.06(2H、dd)、6.69−6.64(2H、m)、6.55(2H、dd)。
【0201】
製造例13:式1mで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH 50gにサリチルヒドロキサム酸 30.6gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液 21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、メタノール50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式1mの化合物60gを得た。NMRデータで下記式1mの化合物であることを確認した。
【0202】
【化34】
【0203】
H NMR δ7.87(3H、t)、7.77−7.73(6H、m)、7.70−7.66(6H、m)、7.63(2H、dd)、7.18(2H、dt)、7.13(2H、dd)、6.75−6.69(4H、m)、 6.65(2H、dd)。
【0204】
製造例14:式1nで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH 50gに3−ヒドロキシ−2−ナフタアニリド(3−hydroxy−2−naphthanilde)26.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液 21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、メタノール50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式1nの化合物49gを得た。NMRデータで下記式1nの化合物であることを確認した。
【0205】
【化35】
【0206】
H NMR δ8.30(1H、S)、7.87(3H、t)、7.79−7.73(8H、m)、7.69−7.64(6H、m)、7.57(1H、d)、7.44(2H、dd)、7.33−7.27(3H、m)、7.11(1H、t)、7.06(2H、dd)、6.98(1H、t)、6.82(1H、t)、6.59(1H、s)。
【0207】
製造例15:式1oで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH 50gに3−ヒドロキシ−2−ナフタアニリド 26.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液 21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、メタノール50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式1oの化合物53gを得た。NMRデータで下記式1oの化合物であることを確認した。
【0208】
【化36】
【0209】
H NMR δ8.30(1H、s)、8.00−7.94(4H、dt)、7.85−7.70(18H、m)、7.57(1H、d)、7.33−7.27(3H、m)、7.11(1H、t)、6.98(1H、t)、6.82(1H、t)、6.59(1H、s)。
【0210】
製造例16:式2aで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH 100gに サリチルアニリド 21.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液 21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、ピロカテコール 11.0gを投入して溶かし、次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式2aの化合物43.2gを得た。NMRデータで下記式2aの化合物であることを確認した。
【0211】
【化37】
【0212】
H NMR (300MHz,DMSO) δ 14.69(s,3H),8.02−7.90(m,8H),7.87−7.62(m,37H),7.32−7.21(m,4H),7.05-6.89(m,4H),6.55(ddd,J=11.6,9.4,4.5Hz,8H),6.38(ddd,J=7.9,2.1,0.7Hz,3H),6.27(ddd,J=7.9,6.9,1.2Hz,2H)。
【0213】
式2aで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびジヒドロキシ化合物は、H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよびピロカテコールの割合が1:1:1で維持されていることから、式2aで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0214】
製造例17:式2bで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH100gにサリチルアニリド21.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン21.4gを投入して溶かし、次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド 41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式2bの化合物54.4gを得た。NMRデータで下記式2bの化合物であることを確認した。
【0215】
【化38】
【0216】
H NMR(300MHz,DMSO)δ13.87(s,1H)、12.51(s,1H)、8.03−7.90(m,4H)、7.88−7.64(m,18H)、7.64−7.47(m,5H)、7.29(dd,J=10.9、5.3Hz,3H)、7.09(ddd,J=8.6,6.9,2.0Hz,1H)、6.99(dd,J=10.5,4.2Hz,1H)、6.59(dd,J=8.3,1.0Hz,1H)、6.44−6.34(m,1H)、6.31−6.19(m,2H)。
【0217】
式2bで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびジヒドロキシ化合物は、H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよびピロカテコールの割合が1:1:1で維持されていることから、式2bで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0218】
製造例18:式2cで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH100gにサリチルアニリド21.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、ピロカテコール11.0gを投入して溶かし、次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式2cの化合物48.6gを得た。NMRデータで下記式2cの化合物であることを確認した。
【0219】
【化39】
【0220】
H NMR(300MHz,DMSO)δ13.04(s,1H)、8.09−7.82(m,4H)、7.73(ddd,J=27.1,15.2,8.2Hz,12H)、7.31(tt,J=23.6,12.0Hz,4H)、7.18(dd,J=8.0,7.2Hz,1H)、7.00(dd,J=14.1,5.4Hz,3H)、6.79(d,J=8.3Hz,1H)、6.58(dd,J=18.6,9.4Hz,3H)、6.38(d,J=7.9Hz,1H)。
【0221】
式2cで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびジヒドロキシ化合物は、H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよびピロカテコールの割合が1:1:1で維持されていることから、式2cで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0222】
製造例19:式2dで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH100gにサリチルアニリド21.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン21.4gを投入して溶かし、次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成したアイボリー色の固体を回収し、式2dの化合物60.9gを得た。NMRデータで下記式2dの化合物であることを確認した。
【0223】
【化40】
【0224】
H NMR(300MHz,DMSO)δ12.84(s,2H)、8.00−7.44(m,22H)、7.28(dddd,J=10.2,9.6,8.7,5.4Hz,6H)、7.09−6.94(m,3H)、6.76(dd,J=8.3,0.9Hz,1H)、6.64−6.52(m,1H)、6.31(dt,J=5.7,2.2Hz,2H)。
【0225】
式2dで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体は、H NMR スペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMR スペクトルの積分値結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよび2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンの割合が1:1:1で維持されていることから、式2dで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0226】
製造例20:式2eで表されるホスホニウム系化合物の製造
クロロベンゼン300gに2,6−ジイソプロピルアニリン10.6gとサリチル酸8.3gを入れ、PCl4.1gを投入して、還流させながら3時間反応させた。反応溶液が熱い状態でフィルターでろ過した後、常温まで冷却し、エタノール/水で再結晶して2e’の化合物を得た。
【0227】
【化41】
【0228】
MeOH100gに2e’29.7gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、2,2’−ビフェノール18.6gを投入して溶かし、次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成したアイボリー色の固体を回収し、式2eの化合物66.2gを得た。NMRデータで下記式2eの化合物であることを確認した。
【0229】
【化42】
【0230】
H NMR(300MHz,DMSO)δ10.90(s,2H)、8.08−7.82(m,4H)、7.82−7.58(m,11H)、7.33(ddd,J=16.5,10.4,7.7Hz,4H)、7.24−7.14(m,4H)、7.12−6.96(m,4H)、6.92(d,J=7.7Hz,1H)、6.85−6.68(m,5H)、3.07(qd,J=13.6,6.9Hz,2H)、1.13(d,J=6.9Hz,12H)。
【0231】
式2eで表される化合物において、アニオン部である2e’および2,2’−ビフェノールは、H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上2e’が反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、2e’および2,2’−ビフェノールの割合が1:1:1で維持されていることから、式2eで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0232】
製造例21:式2fで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH/DMF(重量比1:1)100gに3−ヒドロキシ 2−ナフタニリド26.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン21.4gを投入して溶かした。次いで、MeOH50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した黄色の固体を回収し、式2fの化合物70.7gを得た。NMRデータで下記式2fの化合物であることを確認した。
【0233】
【化43】
【0234】
H NMR(300MHz,DMSO)δ8.36(s,1H)、7.97(ddd,J=7.4,5.5,1.9Hz,4H)、7.77(tdd,J=8.5,7.3,2.6Hz,17H)、7.67−7.46(m,6H)7.42−7.27(m,3H)、7.25−7.15(m,2H)、7.08(dd,J=8.3,2.2Hz,1H)、7.01(t,J=7.4Hz,1H)、6.93(t,J=6.9Hz,1H)、6.82−6.72(m,2H)。
【0235】
式2fで表される化合物において、アニオン部である3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドおよび3,4−ジヒドロキシベンゾフェノンは、H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れ、2当量以上の3,4−ジヒドロキシベンゾフェノンが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドおよび3,4−ジヒドロキシベンゾフェノンの割合が1:1:1で維持されていることから、式2fで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0236】
製造例22:式2gで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH100gに3−ヒドロキシ 2−ナフタニリド26.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン21.4gを投入して溶かした。次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成したアイボリー色の固体を回収し、式2gの化合物66.9gを得た。NMRデータで下記式2gの化合物であることを確認した。
【0237】
【化44】
【0238】
H NMR(300MHz,DMSO)δ8.46(s,1H)、8.01−7.89(m,4H)、7.86−7.67(m,18H)、7.66−7.53(m,3H)、7.53−7.38(m,3H)、7.33(t,J=7.9Hz,2H)、7.29−7.19(m,2H)、7.12−6.93(m,4H)、6.83(d,J=8.3Hz,1H)。
【0239】
式2gで表される化合物において、アニオン部である3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドおよび3,4−ジヒドロキシベンゾフェノンは、H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れ、2当量以上の3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドおよび3,4−ジヒドロキシベンゾフェノンの割合が1:1:1で維持されていることから、式2gで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0240】
製造例23:式2hで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH/DMF(重量比1:1)100gに3−ヒドロキシ 2−ナフタニリド26.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、4,4’−フルオレン−9−イリデンビスフェノール(4,4’−Fluoren−9−ylidenebisphenol) 35.0gを投入して溶かした。次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した黄色の固体を回収し、式2hの化合物74.5gを得た。NMRデータで下記式2hの化合物であることを確認した。
【0241】
【化45】
【0242】
H NMR(300MHz,DMSO)δ8.39(s,1H)、7.91(ddd,J=14.3,6.9,2.6Hz,6H)、7.83−7.63(m,16H)、7.45(d,J=8.6Hz,1H)、7.41−7.20(m,10H)、7.03(dd,J=13.8,7.1Hz,2H)、6.95−6.83(m,8H)、6.62(d,J=8.7Hz,4H)。
【0243】
式2hで表される化合物において、アニオン部である3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドおよび4,4’−フルオレン−9−イリデンビスフェノールは、H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上の3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドおよび4,4’−フルオレン−9−イリデンビスフェノールの割合が1:1:1で維持されていることから、式2hで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0244】
製造例24:式2iで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH/DMF(重量比1:1)100gにサリチルアニリド21.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド21.8gを投入して溶かした。次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した黄色の固体を回収し、式2iの化合物77.9gを得た。NMRデータで下記式2iの化合物であることを確認した。
【0245】
【化46】
【0246】
H NMR(300MHz,DMSO)δ15.17(s,1H)、8.02−7.91(m,4H)、7.87−7.61(m,18H)、7.30−7.20(m,2H)、7.19−7.07(m,4H)、7.00−6.87(m,2H)、6.80−6.68(m,4H)6.41(dd,J=8.4,1.0Hz,1H)、6.17(ddd,J=7.9,6.9,1.2Hz,1H)。
【0247】
式2iで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドは、H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドの割合が1:1:1で維持されていることから、式2iで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0248】
製造例25:式2jで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH/DMF(重量比1:1)100gに3−ヒドロキシ 2−ナフタニリド26.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド21.8gを投入して溶かした。次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した黄色の固体を回収し、式2jの化合物76.6gを得た。NMRデータで下記式2jの化合物であることを確認した。
【0249】
【化47】
【0250】
H NMR(300MHz,DMSO)δ8.42(s,1H)、7.98−7.85(m,3H)、7.73(dtd,J=12.5,8.3,2.5Hz,14H)、7.46(d,J=8.4Hz,1H)、7.40−7.19(m,5H)、7.04(t,J=7.4Hz,2H)、6.95(dd,J=8.8,3.0Hz,3H)。
式2jで表される化合物において、アニオン部である3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドは、H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上の3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウムと3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドの割合が1:1:1で維持されていることから、式2jで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0251】
実施例および比較例で用いた成分の具体的な仕様は次の通りである。
【0252】
(A)エポキシ樹脂
ビフェニル型エポキシ樹脂であるNC−3000(日本化薬株式会社製)を用いた。
【0253】
(B)硬化剤
ザイロック型フェノール樹脂であるHE100C−10(Air Water)を用いた。
【0254】
(C)硬化触媒
(C1)〜(C25)として、それぞれ製造例1〜25で製造したホスホニウム系化合物を用いた。(すなわち、C1:式1aの化合物、C2:式1bの化合物、C3:式1cの化合物、C4:式1dの化合物、C5:式1eの化合物、C6:式1fの化合物、C7:式1gの化合物、C8:式1hの化合物、C9:式1iの化合物、C10:式1jの化合物、C11:式1kの化合物、C12:式1lの化合物、C13:式1mの化合物、C14:式1nの化合物、C15:式1oの化合物、C16:式2aの化合物、C17:式2bの化合物、C18:式2cの化合物、C19:式2dの化合物、C20:式2eの化合物、C21:式2fの化合物、C22:式2gの化合物、C23:式2hの化合物、C24:式2iの化合物、C25:式2jの化合物、である。)
(C26)トリフェニルホスフィン(Triphenyl phosphine)を用いた。
【0255】
(C27)トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加生成物とを用いた。
【0256】
(D)無機充填剤:平均粒径(体積換算)18μmの球状溶融シリカと平均粒径(体積換算)0.5μmの球状溶融シリカの9:1(重量比)混合物を用いた。
【0257】
(E)カップリング剤
(e1)メルカプトプロピルトリメトキシシランであるKBM―803(信越化学工業株式会社製)と(e2)メチルトリメトキシシランであるSZ−6070(Dowcorning chemical)とを混合して用いた。
【0258】
(F)添加剤
(f1)離型剤としてカルナバワックス、および(f2)着色剤としてカーボンブラックMA−600(三菱化学株式会社製)を用いた。
【0259】
実施例および比較例
各成分を下記表1〜表3の組成(単位:重量部)によって各成分を評量した後、ヘンセルミキサーを用いて均一に混合し粉末状態の1次組成物を製造した。その後、連続ニーダーを用いて、95℃で溶融混練した後、冷却および粉砕して半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0260】
【表1】
【0261】
【表2】
【0262】
【表3】
【0263】
実施例と比較例とで製造したエポキシ樹脂組成物について、以下の測定方法によって物性を評価し、結果を表4〜6に記載した。
【0264】
(1)流動性(inch):EMMI−1−66に準じて、評価用金型を用いて、175℃、70kgf/cmでトランスファーモールディングプレス(transfer molding press)を用いて、流動長さを測定した。測定値が高いほど、流動性に優れる。なお、トランスファーモールディングプレスは Fujiwa sek社製TEP12−16EVを用いて行った。以下の実施例でも同様の機器を用いた。
【0265】
(2)硬化収縮率(%):屈曲強度試片の作製用ASTM金型を用いて、175℃、70kgf/cmでトランスファーモールディングプレス(transfer molding press)を用いて成形試片(125×12.6×6.4mm)を得た。得た試片を170℃〜180℃のオーブンに入れて、4時間、後硬化(PMC:post molding cure)させてから冷却した後、25℃での試験片の長さをノギスで測定した。硬化収縮率は次のような数式1で計算した。
【0266】
【数5】
【0267】
(前記数式1で、Cはエポキシ樹脂組成物を175℃、70kgf/cmのトランスファーモールディングプレスして得た試片の長さ、Dは前記試片を170℃〜180℃で4時間、後硬化し、冷却させた後に得た試片の長さである)。
【0268】
(3)ガラス転移温度(℃):熱機械分析装置(Thermomechanical Analyzer、TMA)を用いて測定した。このとき、TMAは25℃で1分当り10℃ずつ温度を上昇させて300℃まで測定する条件で設定した。
【0269】
(4)吸湿率(%):実施例と比較例とで製造したエポキシ樹脂組成物を金型温度170℃〜180℃、型締圧力70kgf/cm、移送圧力1000psi、移送速度0.5cm/s〜1cm/s、硬化時間120秒という条件で成形し、直径50mm、厚さ1.0mmのディスク形態の硬化試片を得た。得た試片を170℃〜180℃のオーブンに入れて、4時間、後硬化(PMC:post molding cure)させた直後、85℃、85%RH条件下で168時間放置させた後、吸湿による重量変化を測定して次の数式2によって吸湿率を計算した。
【0270】
【数6】
【0271】
(5)付着力(kgf):銅金属素子を付着測定用金型に合う規格で準備し、準備した試験片に、実施例と比較例とで製造した樹脂組成物を金型温度170℃〜180℃、型締圧力70kgf/cm、移送圧力1000psi、移送速度0.5cm/s〜1cm/s、硬化時間120秒という条件で成形して硬化試片を得た。得た試片を170℃〜180℃のオーブンに入れて、4時間、後硬化(PMC:post molding cure)させた。このとき、試片に入れたエポキシ樹脂組成物の面積は40±1mmであり、付着力測定は各測定工程当り12個の試片に対してUTM(Universal Testing Machine)を用いて測定した後、平均値を計算した。
【0272】
(6)硬化度(shore−D):銅金属素子を含む横24mm、縦24mm、厚さ1mmのeTQFP(exposed Thin Quad Flat Package)パッケージ用金型が装着されたMPS(Multi Plunger System)成形器を用いて、175℃で40秒、50秒、60秒、70秒、80秒、および90秒間、評価対象のエポキシ樹脂組成物を硬化させた後、金型上のパッケージに直接、Shore−D型硬度計で硬化時間による硬化物の硬度を測定した。値が高いほど、硬化度に優れる。
【0273】
(7)貯蔵安定性:エポキシ樹脂組成物を25℃/50%RHに設定された恒温恒湿器に1週間保存し、24時間間隔で(1)の流動性測定の方法により流動長さを測定し、製造直後の流動長さに対する百分率(%)を求めた。この百分率の数値が大きいほど、貯蔵安定性が良好なことを表す。
【0274】
【表4】
【0275】
【表5】
【0276】
【表6】
【0277】
実施例1〜実施例25は、比較例1、2と比較すると、高い流動性を表し、硬化時間別に硬化度を比較すると、短い硬化時間でもより高い硬化度を表していることを確認できる。また、貯蔵安定性の場合、72hr後の結果でも、流動性の差異が小さいことを確認できる。
【0278】
その反面、本発明のホスホニウム系化合物を含まない比較例の組成物は、貯蔵安定性が低く、硬化収縮率は高く、流動性は低く、パッケージに使用する際の本発明の効果を具現できないことを確認した。
【0279】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に製造することができ、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明の技術的事項や必須的特徴を変更せずに他の具体的な形態で実施できるということを理解できる。そのため、以上で記述した実施例は全ての面において例示的ものであり、限定的ではないことを理解しなければならない。
【符号の説明】
【0280】
10:配線基板、
20:半導体チップ、
30:バンプ、
40:エポキシ樹脂組成物、
100:本発明の一実施例の半導体素子、
200:本発明の別の実施例の半導体素子。
図1
図2