【実施例】
【0154】
製造例1:式1aで表されるホスホニウム系化合物の製造
メタノール(以下、「MeOH」と略す)/ジメチルホルムアミド(DMF)(重量比1:1)100gに2−ヒドロキシ−5−ニトロ−N−トリルベンズアミド(2−hydroxy−5−nitro−N−p−tolylbenzamide)27.2gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液(sodium methoxide solution)21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、サリチルアニリド(salicylanilide)21.3gを投入して溶かした。次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド(tetraphenylphosphonium bromide) 41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式1aの化合物68.4gを得た。NMRデータで下記式1aの化合物であることを確認した。
【0155】
【化21】
【0156】
1H NMR(300MHz,DMSO)δ13.84(s,1H)、11.85(s,1H)、10.43(s,1H)、8.72(d,J=3.3Hz,1H)、8.03−7.90(m,5H)、7.88−7.66(m,19H)、7.56(d,J=8.4Hz,2H)、7.49−7.32(m,3H)、7.22−7.06(m,3H)7.04−6.90(m,2H)、6.32(d,J=9.4Hz,1H)、2.26(s,3H)。
【0157】
式1aで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体は、
1H NMRスペクトルの積分値(integration)でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体の割合が1:1:1で維持されていることから、式1aで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0158】
製造例2:式1bで表されるホスホニウム系化合物の製造
1L丸底フラスコに、トリフェニルホスフィン 100gと4−ブロモフェノール 60g、NiBr23.7gを入れ、エチレングリコール 130gを入れた後、180℃で6時間反応させて、下記式1b’で表される構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩を得た。
【0159】
【化22】
【0160】
MeOH/DMF(重量比1:1)100gに2−ヒドロキシ−5−ニトロ−N−トリルベンズアミド27.2gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、サリチルアニリド21.3gを投入して溶かした。次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいた 式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式1bの化合物69.4gを得た。NMRデータで下記式1bの化合物であることを確認した。
【0161】
【化23】
【0162】
1H NMR(300MHz,DMSO)δ13.84(s,1H)、11.53(s,2H)、10.47(s,1H)、8.72(d,J=3.3Hz,1H)、8.02−7.32(m,27H)、7.20−7.06(m,5H)、6.97(ddd,J=11.3,6.5,2.3Hz,2H)、6.33(d,J=9.4Hz,1H)、2.26(s,3H)。
【0163】
式1bで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体は、
1H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体の割合が1:1:1で維持されていることから、式1bで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0164】
製造例3:式1cで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH/DMF(重量比1:1)100gに3−ヒドロキシ N−ナフチル 2−ナフタミド(3−hydroxy N−naphthyl 2−naphthamide)31.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、サリチルアニリド21.3gを投入して溶かした。次いで、MeOH50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド 41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した黄色の固体を回収し、式1cの化合物70.4gを得た。NMRデータで下記式1cの化合物であることを確認した。
【0165】
【化24】
【0166】
1H NMR(300MHz,DMSO)δ11.90(s,1H)、8.60−8.40(m,3H)、8.04−7.62(m,25H)、7.61−7.42(m,4H)、7.40−7.16(m,4H)、7.07(t,J=7.3Hz,3H)、6.87(d,J=8.2Hz,1H)、6.73(t,J=7.5Hz,1H)。
【0167】
式1cで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体は、
1H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体の割合が1:1:1で維持されていることから、式1cで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0168】
製造例4:式1d表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH/DMF(重量比1:1)100gに4’−ニトロサリチルアニリド(4’−nitrosalicylanilide)25.8gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、サリチルアニリド21.3gを投入して溶かした。次いで、MeOH50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド 41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した黄色の固体を回収し、式1dの化合物71.8gを得た。NMRデータで下記式1dの化合物であることを確認した。
【0169】
【化25】
【0170】
1H NMR(300MHz,DMSO)δ11.55(s,1H)、8.33−8.13(m,2H)、8.03−7.87(m,7H)、7.87−7.65(m,18H)、7.57−7.27(m,−4H)、7.22−7.03(m,2H)、6.94(d,J=8.2Hz,1H)、6.86−6.75(m,1H)、6.68(d,J=8.4Hz,1H)、6.46(t,J=7.4Hz,1H)。
【0171】
式1dで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体は、
1H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体の割合が1:1:1で維持されていることから、式1dで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0172】
製造例5:式1eで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH/DMF(重量比1:1)100gに4’−ニトロサリチルアニリド25.8gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、サリチルアニリド21.3gを投入して溶かした。次いで、MeOH50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した黄色の固体を回収し、式1eの化合物72.7gを得た。NMRデータで下記式1eの化合物であることを確認した。
【0173】
【化26】
【0174】
1H NMR(300MHz,DMSO)δ11.44(s,1H)、8.30−8.12(m,2H)、7.99−7.84(m,6H)、7.84−7.61(m,14H)、7.43(ddd,J=8.1,6.0,5.2Hz,3H)、7.39−7.29(m,3H)、7.25−7.15(m,1H)、7.11(dt,J=14.8,5.3Hz,3H)、6.94(d,J=8.2Hz,1H)、6.87−6.66(m,2H)、6.53(t,J=7.4Hz,1H)。
【0175】
式1eで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体は、
1H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMR スペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体の割合が1:1:1で維持されていることから、式1eで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0176】
製造例6:式1fで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH/DMF(重量比1:1)100gに2−ヒドロキシ−5−ニトロベンズアニリド25.8gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、サリチルアニリド21.3gを投入して溶かした。次いで、MeOH50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド 41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した黄色の固体を回収し、式1dの化合物67.9gを得た。NMRデータで下記式1fの化合物であることを確認した。
【0177】
【化27】
【0178】
1H NMR(300MHz,DMSO)δ13.94(s,1H)、11.86(s,1H)、10.42(s,1H)、8.73(d,J=3.3Hz,1H)、8.11−7.90(m,5H)、7.90−7.62(m,20H)、7.57−7.25(m,5H)、7.20−7.08(m,1H)、7.08−6.91(m,3H)、6.34(d,J=9.4Hz,1H)。
【0179】
式1fで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体は、
1H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMR スペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体の割合が1:1:1で維持されていることから、式1fで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0180】
製造例7:式1gで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH/DMF(重量比1:1)100gに2−ヒドロキシ−5−ニトロベンズアニリド25.8gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、サリチルアニリド21.3gを投入して溶かした。次いで、MeOH50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した黄色の固体を回収し、式1gの化合物68.8gを得た。NMRデータで下記式1gの化合物であることを確認した。
【0181】
【化28】
【0182】
1H NMR(300MHz,DMSO)δ13.94(s,1H)、10.70(s,1H)、8.73(d,J=3.3Hz,1H)、8.51(s,1H)、7.94(ddt,J=6.8,3.3、1.5Hz,4H)、7.88−7.62(m,18H)、7.58−7.45(m,3H)7.44−7.26(m,6H)、7.15(dq,J=4.6,1.4Hz,3H)、7.07−6.95(m,1H)、6.35(d,J=9.4Hz,1H)。
【0183】
式1gで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体は、
1H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMR スペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体の割合が1:1:1で維持されていることから、式1gで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0184】
製造例8:式1hで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH 50gにサリチルアミド 13.7gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液 21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、メタノール50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド 41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式1hの化合物41gを得た。NMRデータで下記式1hの化合物であることを確認した。
【0185】
【化29】
【0186】
1H NMR δ8.00−7.94(4H、dt)、7.85−7.70(17H、m)、7.29(1H、dt)、6.82(1H、d)、6.72(1H、t)。
【0187】
製造例9:式1iで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH 50gにサリチルアミド 27.4gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液 21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、メタノール50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド 41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式1iの化合物50.8gを得た。NMRデータで下記式1iの化合物であることを確認した。
【0188】
【化30】
【0189】
1H NMR δ8.00−7.94(4H、dt)、7.85−7.70(18H、m)、7.33(2H、dt)、6.85(2H、d)、6.77(2H、t)。
【0190】
式1iで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアミドは
1H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:2の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアミドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウムとサリチルアミドとが1:2の割合で維持されていることから、式1iで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0191】
製造例10:式1jで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH 50gにサリチルアミド 21.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液 21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、メタノール50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式1jの化合物47gを得た。NMRデータで下記式1jの化合物であることを確認した。
【0192】
【化31】
【0193】
1H NMR δ7.87(3H、t)、7.85−7.66(15H、m)、7.38(2H、dd)、7.31(2H、dt)、7.18(1H、dt)、7.05−6.97(3H、m)、6.71(1H、d)、6.54(1H、t)。
【0194】
製造例11:式1kで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH 50gにサリチルアミド 42.6gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液 21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、メタノール50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式1kの化合物66gを得た。NMRデータで下記式1kの化合物であることを確認した。
【0195】
【化32】
【0196】
1H NMR δ7.95−7.87(5H、m)、7.82−7.66(16H、m)、7.43(2H、dd)、7.35(4H、t)、7.26(2H、t)、7.08−7.03(4H、m)、6.85(2H、dt)、6.67(2H、dt)。
【0197】
式1kで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアミドは
1H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:2の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアミドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウムとサリチルアミドとが1:2の割合で維持されていることから、式1kで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0198】
製造例12:式1lで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH 50gにサリチルヒドロキサム酸 15.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液 21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、メタノール50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式1lの化合物49gを得た。NMRデータで下記式1lの化合物であることを確認した。
【0199】
【化33】
【0200】
1H NMR δ7.87(3H、t)、7.77−7.73(6H、m)、7.69−7.65(6H、m)、7.59(1H、dd)、7.15(1H、dt)、7.06(2H、dd)、6.69−6.64(2H、m)、6.55(2H、dd)。
【0201】
製造例13:式1mで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH 50gにサリチルヒドロキサム酸 30.6gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液 21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、メタノール50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式1mの化合物60gを得た。NMRデータで下記式1mの化合物であることを確認した。
【0202】
【化34】
【0203】
1H NMR δ7.87(3H、t)、7.77−7.73(6H、m)、7.70−7.66(6H、m)、7.63(2H、dd)、7.18(2H、dt)、7.13(2H、dd)、6.75−6.69(4H、m)、 6.65(2H、dd)。
【0204】
製造例14:式1nで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH 50gに3−ヒドロキシ−2−ナフタアニリド(3−hydroxy−2−naphthanilde)26.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液 21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、メタノール50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式1nの化合物49gを得た。NMRデータで下記式1nの化合物であることを確認した。
【0205】
【化35】
【0206】
1H NMR δ8.30(1H、S)、7.87(3H、t)、7.79−7.73(8H、m)、7.69−7.64(6H、m)、7.57(1H、d)、7.44(2H、dd)、7.33−7.27(3H、m)、7.11(1H、t)、7.06(2H、dd)、6.98(1H、t)、6.82(1H、t)、6.59(1H、s)。
【0207】
製造例15:式1oで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH 50gに3−ヒドロキシ−2−ナフタアニリド 26.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液 21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、メタノール50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式1oの化合物53gを得た。NMRデータで下記式1oの化合物であることを確認した。
【0208】
【化36】
【0209】
1H NMR δ8.30(1H、s)、8.00−7.94(4H、dt)、7.85−7.70(18H、m)、7.57(1H、d)、7.33−7.27(3H、m)、7.11(1H、t)、6.98(1H、t)、6.82(1H、t)、6.59(1H、s)。
【0210】
製造例16:式2aで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH 100gに サリチルアニリド 21.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液 21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、ピロカテコール 11.0gを投入して溶かし、次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式2aの化合物43.2gを得た。NMRデータで下記式2aの化合物であることを確認した。
【0211】
【化37】
【0212】
1H NMR (300MHz,DMSO) δ 14.69(s,3H),8.02−7.90(m,8H),7.87−7.62(m,37H),7.32−7.21(m,4H),7.05-6.89(m,4H),6.55(ddd,J=11.6,9.4,4.5Hz,8H),6.38(ddd,J=7.9,2.1,0.7Hz,3H),6.27(ddd,J=7.9,6.9,1.2Hz,2H)。
【0213】
式2aで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびジヒドロキシ化合物は、
1H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよびピロカテコールの割合が1:1:1で維持されていることから、式2aで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0214】
製造例17:式2bで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH100gにサリチルアニリド21.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン21.4gを投入して溶かし、次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド 41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式2bの化合物54.4gを得た。NMRデータで下記式2bの化合物であることを確認した。
【0215】
【化38】
【0216】
1H NMR(300MHz,DMSO)δ13.87(s,1H)、12.51(s,1H)、8.03−7.90(m,4H)、7.88−7.64(m,18H)、7.64−7.47(m,5H)、7.29(dd,J=10.9、5.3Hz,3H)、7.09(ddd,J=8.6,6.9,2.0Hz,1H)、6.99(dd,J=10.5,4.2Hz,1H)、6.59(dd,J=8.3,1.0Hz,1H)、6.44−6.34(m,1H)、6.31−6.19(m,2H)。
【0217】
式2bで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびジヒドロキシ化合物は、
1H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよびピロカテコールの割合が1:1:1で維持されていることから、式2bで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0218】
製造例18:式2cで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH100gにサリチルアニリド21.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、ピロカテコール11.0gを投入して溶かし、次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した白色の固体を回収し、式2cの化合物48.6gを得た。NMRデータで下記式2cの化合物であることを確認した。
【0219】
【化39】
【0220】
1H NMR(300MHz,DMSO)δ13.04(s,1H)、8.09−7.82(m,4H)、7.73(ddd,J=27.1,15.2,8.2Hz,12H)、7.31(tt,J=23.6,12.0Hz,4H)、7.18(dd,J=8.0,7.2Hz,1H)、7.00(dd,J=14.1,5.4Hz,3H)、6.79(d,J=8.3Hz,1H)、6.58(dd,J=18.6,9.4Hz,3H)、6.38(d,J=7.9Hz,1H)。
【0221】
式2cで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびジヒドロキシ化合物は、
1H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよびピロカテコールの割合が1:1:1で維持されていることから、式2cで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0222】
製造例19:式2dで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH100gにサリチルアニリド21.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン21.4gを投入して溶かし、次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成したアイボリー色の固体を回収し、式2dの化合物60.9gを得た。NMRデータで下記式2dの化合物であることを確認した。
【0223】
【化40】
【0224】
1H NMR(300MHz,DMSO)δ12.84(s,2H)、8.00−7.44(m,22H)、7.28(dddd,J=10.2,9.6,8.7,5.4Hz,6H)、7.09−6.94(m,3H)、6.76(dd,J=8.3,0.9Hz,1H)、6.64−6.52(m,1H)、6.31(dt,J=5.7,2.2Hz,2H)。
【0225】
式2dで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよびサリチルアニリド誘導体は、
1H NMR スペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMR スペクトルの積分値結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよび2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンの割合が1:1:1で維持されていることから、式2dで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0226】
製造例20:式2eで表されるホスホニウム系化合物の製造
クロロベンゼン300gに2,6−ジイソプロピルアニリン10.6gとサリチル酸8.3gを入れ、PCl
34.1gを投入して、還流させながら3時間反応させた。反応溶液が熱い状態でフィルターでろ過した後、常温まで冷却し、エタノール/水で再結晶して2e’の化合物を得た。
【0227】
【化41】
【0228】
MeOH100gに2e’29.7gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、2,2’−ビフェノール18.6gを投入して溶かし、次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成したアイボリー色の固体を回収し、式2eの化合物66.2gを得た。NMRデータで下記式2eの化合物であることを確認した。
【0229】
【化42】
【0230】
1H NMR(300MHz,DMSO)δ10.90(s,2H)、8.08−7.82(m,4H)、7.82−7.58(m,11H)、7.33(ddd,J=16.5,10.4,7.7Hz,4H)、7.24−7.14(m,4H)、7.12−6.96(m,4H)、6.92(d,J=7.7Hz,1H)、6.85−6.68(m,5H)、3.07(qd,J=13.6,6.9Hz,2H)、1.13(d,J=6.9Hz,12H)。
【0231】
式2eで表される化合物において、アニオン部である2e’および2,2’−ビフェノールは、
1H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上2e’が反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、2e’および2,2’−ビフェノールの割合が1:1:1で維持されていることから、式2eで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0232】
製造例21:式2fで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH/DMF(重量比1:1)100gに3−ヒドロキシ 2−ナフタニリド26.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン21.4gを投入して溶かした。次いで、MeOH50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した黄色の固体を回収し、式2fの化合物70.7gを得た。NMRデータで下記式2fの化合物であることを確認した。
【0233】
【化43】
【0234】
1H NMR(300MHz,DMSO)δ8.36(s,1H)、7.97(ddd,J=7.4,5.5,1.9Hz,4H)、7.77(tdd,J=8.5,7.3,2.6Hz,17H)、7.67−7.46(m,6H)7.42−7.27(m,3H)、7.25−7.15(m,2H)、7.08(dd,J=8.3,2.2Hz,1H)、7.01(t,J=7.4Hz,1H)、6.93(t,J=6.9Hz,1H)、6.82−6.72(m,2H)。
【0235】
式2fで表される化合物において、アニオン部である3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドおよび3,4−ジヒドロキシベンゾフェノンは、
1H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れ、2当量以上の3,4−ジヒドロキシベンゾフェノンが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドおよび3,4−ジヒドロキシベンゾフェノンの割合が1:1:1で維持されていることから、式2fで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0236】
製造例22:式2gで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH100gに3−ヒドロキシ 2−ナフタニリド26.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン21.4gを投入して溶かした。次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成したアイボリー色の固体を回収し、式2gの化合物66.9gを得た。NMRデータで下記式2gの化合物であることを確認した。
【0237】
【化44】
【0238】
1H NMR(300MHz,DMSO)δ8.46(s,1H)、8.01−7.89(m,4H)、7.86−7.67(m,18H)、7.66−7.53(m,3H)、7.53−7.38(m,3H)、7.33(t,J=7.9Hz,2H)、7.29−7.19(m,2H)、7.12−6.93(m,4H)、6.83(d,J=8.3Hz,1H)。
【0239】
式2gで表される化合物において、アニオン部である3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドおよび3,4−ジヒドロキシベンゾフェノンは、
1H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れ、2当量以上の3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドおよび3,4−ジヒドロキシベンゾフェノンの割合が1:1:1で維持されていることから、式2gで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0240】
製造例23:式2hで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH/DMF(重量比1:1)100gに3−ヒドロキシ 2−ナフタニリド26.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、4,4’−フルオレン−9−イリデンビスフェノール(4,4’−Fluoren−9−ylidenebisphenol) 35.0gを投入して溶かした。次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した黄色の固体を回収し、式2hの化合物74.5gを得た。NMRデータで下記式2hの化合物であることを確認した。
【0241】
【化45】
【0242】
1H NMR(300MHz,DMSO)δ8.39(s,1H)、7.91(ddd,J=14.3,6.9,2.6Hz,6H)、7.83−7.63(m,16H)、7.45(d,J=8.6Hz,1H)、7.41−7.20(m,10H)、7.03(dd,J=13.8,7.1Hz,2H)、6.95−6.83(m,8H)、6.62(d,J=8.7Hz,4H)。
【0243】
式2hで表される化合物において、アニオン部である3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドおよび4,4’−フルオレン−9−イリデンビスフェノールは、
1H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上の3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドおよび4,4’−フルオレン−9−イリデンビスフェノールの割合が1:1:1で維持されていることから、式2hで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0244】
製造例24:式2iで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH/DMF(重量比1:1)100gにサリチルアニリド21.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド21.8gを投入して溶かした。次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいたテトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した黄色の固体を回収し、式2iの化合物77.9gを得た。NMRデータで下記式2iの化合物であることを確認した。
【0245】
【化46】
【0246】
1H NMR(300MHz,DMSO)δ15.17(s,1H)、8.02−7.91(m,4H)、7.87−7.61(m,18H)、7.30−7.20(m,2H)、7.19−7.07(m,4H)、7.00−6.87(m,2H)、6.80−6.68(m,4H)6.41(dd,J=8.4,1.0Hz,1H)、6.17(ddd,J=7.9,6.9,1.2Hz,1H)。
【0247】
式2iで表される化合物において、アニオン部であるサリチルアニリドおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドは、
1H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上のサリチルアニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウム、サリチルアニリドおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドの割合が1:1:1で維持されていることから、式2iで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0248】
製造例25:式2jで表されるホスホニウム系化合物の製造
MeOH/DMF(重量比1:1)100gに3−ヒドロキシ 2−ナフタニリド26.3gを入れ、25重量%のナトリウムメトキシド溶液21.6gを投入して常温で30分間反応させて完全に溶かした後、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド21.8gを投入して溶かした。次いで、メタノール50gに、予め溶かしておいた式1b’の構造のフェノールが置換されたホスホニウムブロミド塩 43.5gを徐々に投入してさらに1時間反応させた後、生成した黄色の固体を回収し、式2jの化合物76.6gを得た。NMRデータで下記式2jの化合物であることを確認した。
【0249】
【化47】
【0250】
1H NMR(300MHz,DMSO)δ8.42(s,1H)、7.98−7.85(m,3H)、7.73(dtd,J=12.5,8.3,2.5Hz,14H)、7.46(d,J=8.4Hz,1H)、7.40−7.19(m,5H)、7.04(t,J=7.4Hz,2H)、6.95(dd,J=8.8,3.0Hz,3H)。
式2jで表される化合物において、アニオン部である3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドは、
1H NMRスペクトルの積分値でホスホニウムと1:1:1の割合で表れている。よって、2当量以上の3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドが反応に用いられても、生成物NMRスペクトルの積分結果において、ホスホニウムと3−ヒドロキシ 2−ナフタニリドおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドの割合が1:1:1で維持されていることから、式2jで表された構造が安定した形態であると判断できる。
【0251】
実施例および比較例で用いた成分の具体的な仕様は次の通りである。
【0252】
(A)エポキシ樹脂
ビフェニル型エポキシ樹脂であるNC−3000(日本化薬株式会社製)を用いた。
【0253】
(B)硬化剤
ザイロック型フェノール樹脂であるHE100C−10(Air Water)を用いた。
【0254】
(C)硬化触媒
(C1)〜(C25)として、それぞれ製造例1〜25で製造したホスホニウム系化合物を用いた。(すなわち、C1:式1aの化合物、C2:式1bの化合物、C3:式1cの化合物、C4:式1dの化合物、C5:式1eの化合物、C6:式1fの化合物、C7:式1gの化合物、C8:式1hの化合物、C9:式1iの化合物、C10:式1jの化合物、C11:式1kの化合物、C12:式1lの化合物、C13:式1mの化合物、C14:式1nの化合物、C15:式1oの化合物、C16:式2aの化合物、C17:式2bの化合物、C18:式2cの化合物、C19:式2dの化合物、C20:式2eの化合物、C21:式2fの化合物、C22:式2gの化合物、C23:式2hの化合物、C24:式2iの化合物、C25:式2jの化合物、である。)
(C26)トリフェニルホスフィン(Triphenyl phosphine)を用いた。
【0255】
(C27)トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加生成物とを用いた。
【0256】
(D)無機充填剤:平均粒径(体積換算)18μmの球状溶融シリカと平均粒径(体積換算)0.5μmの球状溶融シリカの9:1(重量比)混合物を用いた。
【0257】
(E)カップリング剤
(e1)メルカプトプロピルトリメトキシシランであるKBM―803(信越化学工業株式会社製)と(e2)メチルトリメトキシシランであるSZ−6070(Dowcorning chemical)とを混合して用いた。
【0258】
(F)添加剤
(f1)離型剤としてカルナバワックス、および(f2)着色剤としてカーボンブラックMA−600(三菱化学株式会社製)を用いた。
【0259】
実施例および比較例
各成分を下記表1〜表3の組成(単位:重量部)によって各成分を評量した後、ヘンセルミキサーを用いて均一に混合し粉末状態の1次組成物を製造した。その後、連続ニーダーを用いて、95℃で溶融混練した後、冷却および粉砕して半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0260】
【表1】
【0261】
【表2】
【0262】
【表3】
【0263】
実施例と比較例とで製造したエポキシ樹脂組成物について、以下の測定方法によって物性を評価し、結果を表4〜6に記載した。
【0264】
(1)流動性(inch):EMMI−1−66に準じて、評価用金型を用いて、175℃、70kgf/cm
2でトランスファーモールディングプレス(transfer molding press)を用いて、流動長さを測定した。測定値が高いほど、流動性に優れる。なお、トランスファーモールディングプレスは Fujiwa sek社製TEP12−16EVを用いて行った。以下の実施例でも同様の機器を用いた。
【0265】
(2)硬化収縮率(%):屈曲強度試片の作製用ASTM金型を用いて、175℃、70kgf/cm
2でトランスファーモールディングプレス(transfer molding press)を用いて成形試片(125×12.6×6.4mm)を得た。得た試片を170℃〜180℃のオーブンに入れて、4時間、後硬化(PMC:post molding cure)させてから冷却した後、25℃での試験片の長さをノギスで測定した。硬化収縮率は次のような数式1で計算した。
【0266】
【数5】
【0267】
(前記数式1で、Cはエポキシ樹脂組成物を175℃、70kgf/cm
2のトランスファーモールディングプレスして得た試片の長さ、Dは前記試片を170℃〜180℃で4時間、後硬化し、冷却させた後に得た試片の長さである)。
【0268】
(3)ガラス転移温度(℃):熱機械分析装置(Thermomechanical Analyzer、TMA)を用いて測定した。このとき、TMAは25℃で1分当り10℃ずつ温度を上昇させて300℃まで測定する条件で設定した。
【0269】
(4)吸湿率(%):実施例と比較例とで製造したエポキシ樹脂組成物を金型温度170℃〜180℃、型締圧力70kgf/cm
2、移送圧力1000psi、移送速度0.5cm/s〜1cm/s、硬化時間120秒という条件で成形し、直径50mm、厚さ1.0mmのディスク形態の硬化試片を得た。得た試片を170℃〜180℃のオーブンに入れて、4時間、後硬化(PMC:post molding cure)させた直後、85℃、85%RH条件下で168時間放置させた後、吸湿による重量変化を測定して次の数式2によって吸湿率を計算した。
【0270】
【数6】
【0271】
(5)付着力(kgf):銅金属素子を付着測定用金型に合う規格で準備し、準備した試験片に、実施例と比較例とで製造した樹脂組成物を金型温度170℃〜180℃、型締圧力70kgf/cm
2、移送圧力1000psi、移送速度0.5cm/s〜1cm/s、硬化時間120秒という条件で成形して硬化試片を得た。得た試片を170℃〜180℃のオーブンに入れて、4時間、後硬化(PMC:post molding cure)させた。このとき、試片に入れたエポキシ樹脂組成物の面積は40±1mm
2であり、付着力測定は各測定工程当り12個の試片に対してUTM(Universal Testing Machine)を用いて測定した後、平均値を計算した。
【0272】
(6)硬化度(shore−D):銅金属素子を含む横24mm、縦24mm、厚さ1mmのeTQFP(exposed Thin Quad Flat Package)パッケージ用金型が装着されたMPS(Multi Plunger System)成形器を用いて、175℃で40秒、50秒、60秒、70秒、80秒、および90秒間、評価対象のエポキシ樹脂組成物を硬化させた後、金型上のパッケージに直接、Shore−D型硬度計で硬化時間による硬化物の硬度を測定した。値が高いほど、硬化度に優れる。
【0273】
(7)貯蔵安定性:エポキシ樹脂組成物を25℃/50%RHに設定された恒温恒湿器に1週間保存し、24時間間隔で(1)の流動性測定の方法により流動長さを測定し、製造直後の流動長さに対する百分率(%)を求めた。この百分率の数値が大きいほど、貯蔵安定性が良好なことを表す。
【0274】
【表4】
【0275】
【表5】
【0276】
【表6】
【0277】
実施例1〜実施例25は、比較例1、2と比較すると、高い流動性を表し、硬化時間別に硬化度を比較すると、短い硬化時間でもより高い硬化度を表していることを確認できる。また、貯蔵安定性の場合、72hr後の結果でも、流動性の差異が小さいことを確認できる。
【0278】
その反面、本発明のホスホニウム系化合物を含まない比較例の組成物は、貯蔵安定性が低く、硬化収縮率は高く、流動性は低く、パッケージに使用する際の本発明の効果を具現できないことを確認した。
【0279】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に製造することができ、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明の技術的事項や必須的特徴を変更せずに他の具体的な形態で実施できるということを理解できる。そのため、以上で記述した実施例は全ての面において例示的ものであり、限定的ではないことを理解しなければならない。