(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
<多孔質炭素材料の製造方法>
本発明の多孔質炭素材料の製造方法は、植物バイオマスからヘミセルロース由来の糖を抽出する糖抽出工程と、前記糖を抽出して生じた固体残渣を回収する回収工程と、前記固体残渣を加熱炭化処理する加熱炭化処理工程と、を備える。
【0009】
[糖抽出工程]
本実施形態の多孔質炭素材料の製造方法は、まず、原料である植物バイオマスからヘミセルロース由来の糖を抽出する。ヘミセルロースは、植物細胞壁に含まれる、セルロースを除く多糖類の総称である。植物により異なるがヘミセルロースの含有量は10〜30%程度である。ヘミセルロースの主成分であるキシランは、付加価値の高い糖材料であるキシロオリゴ糖の材料である。
糖抽出工程により、付加価値の高い糖材料を抽出し、抽出した糖は食品、ペットや家畜の飼料として利用することができる。
また、加熱炭化処理の前にあらかじめ糖を抽出することにより、糖の抜け痕が多孔質構造を発達させ、より微細な細孔を有する多孔質炭素材料を製造できると考えられる。
植物を加圧熱水処理し、糖をあらかじめ抽出することにより、付加価値の高い糖成分を有効利用できる。さらに、水溶性の無機成分が溶出するため、不純物が少なく、かつロットによるばらつきを抑えた均質な多孔質炭素材料を製造することができる。また、灰になる成分が糖と一緒に抽出されると考えられる。
【0010】
糖抽出工程は、まず、原料の植物バイオマスを細片に粉砕する。原料として利用できる植物バイオマスは、例えば、竹、シイ等の広葉樹、スギ等の針葉樹、稲わら、麦わら、籾殻、ケナフ等の有機物など特に限定されない。本実施形態においては、竹害対策の観点から、植物バイオマスとして竹を用いることが好ましい。
【0011】
上記の植物バイオマスを乾式粉砕機や湿式破砕機、ジェットミル、ビーズミル等を用いて細かく粉砕する。粉砕後の細片の大きさは特に限定されないが、加圧熱水処理による糖抽出工程は、数cm以下が好ましく、400μm以下がより好ましく、50μm以下が特に好ましい。粒度を小さくするほど、加圧熱水処理による糖抽出速度や、その残渣を使った、加熱炭化処理速度、賦活処理速度も速く均質な多孔質炭素を製造できる。
【0012】
本実施形態において、糖抽出は加圧熱水処理により行うことが好ましい。
加圧熱水処理は、酸やアルカリ、酵素などの特殊な薬品を使用せず、水だけを使用する、安全かつ効率よく水溶性糖類を抽出できる方法である。加圧熱水処理を行うことで、植物原料と水だけを使用し、植物に含まれるヘミセルロースを分解させて、ヘミセルロース由来の水溶性糖類を抽出することができる。
【0013】
加圧熱水処理条件は、140℃以上230℃以下で行うことが好ましく、160℃以上220℃以下がより好ましく、180℃以上210℃以下が特に好ましい。
加圧熱水処理を上記下限値以上で行うことにより、ヘミセルロースの分解が進行し、ヘミセルロース構成糖の成分を効率よく抽出することができる。このとき、リグニンの一部も溶出する。また、加圧熱水処理を上記上限値以下で行うことにより、セルロースの分解等に起因する不純物の混入を抑制し、純度の高いヘミセルロース可溶化物を得ることができる。
上記特定の温度条件で加圧熱水処理を行い、ヘミセルロースと一部のリグニンを抽出することで、それらの除去痕が微細多孔構造を形成し、数nm以下の孔径のより微細な細孔を有する多孔質炭素材料を製造できる。また、加圧熱水処理により水溶性の無機成分が溶出して不純物が少なくかつロットによるばらつきを抑えた均質な多孔質炭素材料を製造することができる。
【0014】
加圧熱水処理時間は、処理温度、原料のサイズによって適宜調整すればよく、例えば、温度が高いほど、また、粒径が小さいほど短時間となる。また加圧熱水処理時間は、回分式、パーコレータ式、連続式など、処理方法によっても適宜調整すればよい。例えば、数百ミクロンの竹粒子を回分式で加圧熱水処理する場合、180℃で30分間〜40分間の処理時間とすればよい。パーコレータ式では同条件で1時間〜2時間の処理を行うことがあるが、パーコレータ式の方が収率と純度が高いのが一般的である。
【0015】
加圧熱水処理の圧力は「処理温度における飽和水蒸気圧以上」であることが好ましい。その圧力は、一例を挙げると180℃で1.0MPa、200℃で1.55MPa以上となり、実際の処理では機械的な加圧や不活性ガスの充填などの方法で圧力容器内がこれを下回らないように調整する。
竹粉砕物と水の比率は、例えば重量濃度として0.1w/v%以上30w/v%以下が挙げられる。この比率は粒子径によって適宜調整すればよいが、30w/v%以下であると、スラリーの流動性が良好となる。パーコレータ式では閉じ込めた粉砕物に熱水を流し込み同量が流出するので濃度という概念は当てはまらず、リアクタ容積に対しての充填量となる。通常は膨張を考慮してリアクタ容量の約7割の原料粉体を充填すればよい。
【0016】
[回収工程]
糖抽出工程の後、抽出した糖成分と、前記糖を抽出して生じた固体残渣とを分離して回収する。分離する方法は特に限定されず、ろ過や遠心分離等、公知の方法を使用すればよい。
本実施形態により回収されるヘミセルロース由来の糖成分としては、アラビノース、グルコース、キシロース、フルクトース、キシロビオース、キシロトリオース、キシロテトラオース、キシロペンタノース、キシロヘキサノース等が挙げられる。これらのなかでも、キシロースからは付加価値の高い糖材料であるキシロオリゴ糖を製造できるため、植物バイオマス中の成分を有効に活用することができる。
【0017】
糖抽出工程により、カリウム、ナトリウム等の水溶性の無機成分が溶出し、無機成分の純度が高い固体残渣を得ることができる。そのため、同じ植物でも、産地、部位、年齢等により含有する無機成分のばらつきを低い量で均質化できる。これにより、加熱炭化処理した場合に、灰等の不純物が少ない均質化した多孔質炭素材料をロットによるばらつきを抑制して製造することができる。
【0018】
[加熱炭化処理工程]
回収工程で回収した固体残渣を、加熱炭化処理し、多孔質炭素材料を製造する。本実施形態においては、加熱炭化処理を500℃以上で行うことが好ましい。500℃以上で行うことにより、未炭化の有機物量を少なくできるため好ましい。加熱炭化温度が高いほど賦活後のBET比表面積が大きくなり、吸着させたい物質量が多くなると考えられる。加熱炭化処理の温度の上限値は特に限定されないが、一例を挙げると、1500℃以下、900℃以下、700℃以下が挙げられる。加熱炭化処理の温度が1500℃を超える場合、処理装置の耐熱性を向上させるために装置が高価となることから、処理温度は1500℃以下が好ましい。
【0019】
加熱炭化処理工程の時間は、装置によって適宜調整すればよく、例えば0.5時間以上5時間以下が好ましく、1時間以上2.5時間以下がより好ましく、1時間以上2時間以下が特に好ましい。
【0020】
本実施形態においては、ヘミセルロース由来の糖成分をあらかじめ除去していることにより、植物細胞壁中の組成比率が変動するため熱分解挙動が変化すると考えられる。このため、加熱炭素化温度や時間に対する収率や比表面積などの物性の依存性が、糖成分を除去しない場合とは異なる不純物の少ない多孔質材料を製造できると推察される。
【0021】
本実施形態においては、糖抽出工程を180℃以上210℃以下の温度で1時間以上2時間以下行い、加熱炭化処理工程を500℃以上で行うことがより好ましい。
糖抽出工程と加熱炭化処理工程を上記の条件の組み合わせで行うことにより、ヘミセルロース由来の糖成分を効率的に抽出し、かつ、電極材料にした場合に容量が大きい多孔質炭素材料を製造することができる。
【0022】
<多孔質活性炭材料の製造方法>
本発明の多孔質活性炭材料の製造方法は、植物バイオマスからヘミセルロース由来の糖を抽出する糖抽出工程と、前記糖を抽出して生じた固体残渣を回収する回収工程と、前記固体残渣を加熱炭化処理する加熱炭化処理工程と、前記加熱炭化処理によって得られた多孔質炭素材料を賦活する賦活工程と、を備える。
【0023】
本発明の多孔質活性炭材料の製造方法において、糖抽出工程と、回収工程と、加熱炭化処理工程に関する説明は、前記本発明の多孔質炭素材料の製造方法における糖抽出工程と、回収工程と、加熱炭化処理工程に関する説明と同様である。
【0024】
[賦活工程]
賦活方法は、特に限定されず、ガス賦活法や薬品賦活法を行えばよい。
ガス賦活法は、高温下で水蒸気、炭酸ガス、酸素などと接触反応させることにより活性炭を得る方法である。
薬品賦活法は、加熱炭化処理後の原料に公知の賦活薬品を含浸させ、不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、賦活薬品の脱水および酸化反応を生じさせて活性炭を得る方法である。賦活薬品としては、例えば、塩化亜鉛、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
賦活することで、活性炭を製造でき、電気化学セルの電極として植物成分を有効に活用することができる。
【0025】
<電極材料の製造方法>
本発明の電極材料の製造方法は、植物バイオマスからヘミセルロース由来の糖を抽出する糖抽出工程と、前記糖を抽出して生じた固体残渣を回収する回収工程と、前記固体残渣を加熱炭化処理する加熱炭化処理工程と、前記加熱炭化処理によって得られた多孔質炭素材料を賦活する賦活工程と、を備える。
【0026】
本発明の電極材料の製造方法において、糖抽出工程と、回収工程と、加熱炭化処理工程、賦活工程に関する説明は、前記本発明の多孔質活性炭材料の製造方法における糖抽出工程と、回収工程と、加熱炭化処理工程、賦活工程に関する説明と同様である。
【0027】
さらに、得られた多孔質活性炭材料と、導電助剤と、バインダーとを混合し、電極材料を製造することができる。
バインダーとしては、熱可塑性樹脂を用いることができる。
この熱可塑性樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVdFということがある。
)、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEということがある。)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;を挙げることができる。
導電助剤としては、グラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなど、使用する電解液に対して腐食がなく、導電性が高いものを挙げることができる。
【0028】
<多孔質炭素材料、多孔質活性炭材料、電極材料>
本発明の多孔質炭素材料の製造方法により製造される多孔質炭素材料は、数nm以下の孔径の微細な細孔を有している。また、BET法により算出される比表面積が20m
2/g以上、300m
2/g以上、加熱条件によっては600m
2/g以上である。
また、本発明の多孔質活性炭材料の製造方法により製造される多孔質活性炭材料は、数nm以下の孔径の微細な細孔を有している。また、BET法により算出される比表面積が1000m
2/g以上、加熱条件によっては2000m
2/g〜2800m
2/gである。この比表面積は、静電容量を向上できる観点から電気二重層キャパシタ電極用の炭素材料に適した値である。このため、本発明によれば、竹等の植物バイオマスを利用して電極材料として好適に用いることができる炭素材料を製造することができる。
【0029】
<電気化学セル>
図8は、本実施形態により製造した電極材料を用いた電気化学セルの一例の断面図である。電気化学セルとしては例えば、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ、二次電池、一次電池等を挙げることができる。
図8に示すように、電気化学セル3は、外装体10と、電解液25とともに外装体10内に収容された電極体20と、を主に備えている。
【0030】
外装体10は、平面視で円形状に形成されている。具体的に、外装体10は、有底筒状の正極缶11と、ガスケット12を介して正極缶11に組み付けられるとともに、正極缶11との間に収容空間Sを画成する有頂筒状の負極缶13と、を有している。収容空間Sには、電極体20および電解液25が収容される。図示の例において、正極缶11の内径は、負極缶13の外径よりも大きくなっている。正極缶11のうち、収容空間Sに面する部分の全体には、保護膜14が設けられている。保護膜14は、特に電気化学セル3が、正極缶11や負極缶13が電解液25と接触して腐食することにより電気化学セルの性能劣化を促進させることを防止する。特に電圧が高い正極缶11に保護膜14を設けることが好ましい。なお、正極缶11や負極缶13と電解液25との接触による腐食は、使用する材料の種類にもよるが、接触するだけで腐食が発生するおそれがある。加えて、充電電圧や充電電流が大きいほど、充電時間が長いほど腐食が大きくなる。そのため使用する材料や、充電可能な電気化学セルであるか、充電不可能な電気化学セルであるか、充電電圧や充電電流、充電時間などを考慮して保護膜14の有無や厚みを決定する。
【0031】
ガスケット12は、環状とされ、正極缶11の周壁部11a内に嵌合されている。ガスケット12には、負極缶13の周壁部13aを保持する溝部12aが全周に亘って形成されている。負極缶13は、周壁部13aがガスケット12の溝部12a内に保持された状態で、正極缶11の周壁部11aをかしめることで、正極缶11に固定されている。
【0032】
電極体20は、外装体10の内形に合わせた円板状に形成されている。電極体20は、正極21と、負極22と、正極21と負極22との間に介在するセパレータ23と、を備えている。正極21は、保護膜14を介して、または保護膜14と正極21の間の導電性接着剤(図示しない)を介して正極缶11に積層されて、正極缶11と導通している。負極22は、負極缶13に直接積層、または負極缶13と負極22の間の導電性接着剤(図示しない)を介し、負極缶13と導通している。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
<実施例1>
[加圧熱水処理工程]
孟宗竹を粉砕して粒径150μmの粉末とし、得られた粉末を105℃で3時間乾燥し、乾燥粉末を得た。
得られた乾燥粉末5gと蒸留水45gとを密封容器(HU−100、三愛科学)に入れ、プログラム式乾燥機で下記条件1〜8それぞれの条件で加圧熱水処理した。
条件1;160℃、1時間
条件2;160℃、2時間
条件3;180℃、1時間
条件4;180℃、2時間
条件5;200℃、1時間
条件6;200℃、2時間
条件7;220℃、1時間
条件8;220℃、2時間
【0035】
[回収工程]
前記加圧熱水処理後、ろ過し、糖を含む液体と固体残渣とを回収した。
【0036】
{HPAE−PADによる分析}
前記回収工程で得られた液体を、電気化学検出器を用いた高速陰イオン交換クロマトグラフ(HPAE−PAD)で測定した。具体的な測定条件は下記の通りで、i)ii)iii)の溶液を表1のプログラムでグラジエントをかけ分析し、40分までのデータを示した。
・カラム:Carbopac PA−1
・溶液:i)脱イオン水、ii)0.1M NaOH溶液、iii)1M酢酸ナトリウム 0.1M NaOH溶液
・流速: 1.0mL/min
・測定時間:105min
【0037】
【表1】
【0038】
HPAE−PADによる分析結果を
図1に示す。
図1中、各ピーク番号が示す生成物は下記の通りである。
1:アラビノース
2:グルコース
3:キシロース
4:フルクトース
5:キシロビオース
6:キシロトリオース
7:キシロテトラオース
8:キシロペンタノース
9:キシロヘキサノース
【0039】
図1に示す結果から、加圧熱水処理工程を180℃で2時間行った場合(条件4)や、200℃で行った場合(条件5)は、多くの糖が検出された。孟宗竹中のヘミセルロースの加水分解反応が進行したことが確認できた。
220℃(条件7、8)では糖の溶出が少なくなったことから、有機酸、フルフラールへの変換が進行したと考えられる。
【0040】
図2は、糖生成物の収率と加圧熱水処理条件との関係を示すグラフである。
図2に示す通り、200℃で1時間、又は200℃で2時間の加圧熱水処理を行った場合に、糖生成物の収率が大きく向上した。
【0041】
[加熱炭化処理工程]
前記加圧熱水処理を条件5(200℃、1時間)行い、前記回収工程で得られた固体残渣を、窒素気流下(0.2L/min)で400℃、600℃、800℃でそれぞれ1時間加熱炭化した。
加熱温度を、400℃、600℃、800℃とした場合に得られた試料について、下記の方法で、N
2吸脱着等温線を測定した。
・N
2吸脱着等温線測定方法
試料(約10mg)を減圧下300℃×3時間の条件で加熱処理して吸着ガスを除去後、市販の装置(NOVA4200e, quantachrome製)により測定を行った。
その結果を
図3に示す。さらに、得られたN
2吸脱着等温線に基づき、BET法により比表面積を算出した。その結果を
図4に示す。
加熱炭化処理した試料の窒素吸着等温線を測定したところ、
図3に示すとおり、IUPAC分類におけるI型等温線であった。I型はマイクロポア(2nm以下の細孔)の存在の可能性を示している。
図4に示すとおり、加熱炭化温度の増大に伴い、BET比表面積が増え、20〜600m
2/g程度の多孔質炭素を作製できた。
【0042】
[賦活処理工程]
400℃、600℃、800℃でそれぞれ加熱炭化した試料:KOH=1:3の割合で混合し、窒素気流下(0.2L/min)で800℃1時間賦活した。
その後蒸留水に分散させて煮沸後、ろ過して洗浄し、活性炭を得た。
【0043】
得られた活性炭は同様にBET法により比表面積を算出した。結果を
図5、
図6に示す。これらの試料も、IUPAC分類におけるI型等温線であった。I型はマイクロポア(2nm以下の細孔)の存在の可能性を示している。加熱炭化温度600℃でBET比表面積が2337m
2/gの活性炭を製造できた。
【0044】
集電極と対極を白金板、参照極をAg/AgCl電極、電解液を1mol/Lの硫酸水溶液とする三極セルとし、サイクリックボルタンメトリー(スキャン速度:1mV/秒)を測定した。結果を
図7に示す。
糖を抽出した残渣の炭化温度を400℃、600℃、800℃でそれぞれ加熱し、その後800℃で1時間賦活した活性炭は、すべて長方形に近い形であり、囲う面積も大きく、十分な静電容量を有していることが確認できた。800℃で炭化した活性炭は、若干容量が小さかった。これは
図6に示すBET比表面積値と同じ傾向であった。
【0045】
<実施例2>
[加圧熱水処理工程]
孟宗竹を粉砕して粒径150μmの粉末とし、得られた粉末を105℃で3時間乾燥し、乾燥粉末を得た。
得られた乾燥粉末5gと蒸留水45gとを密封容器(HU−100、三愛科学)に入れ、プログラム式乾燥機により、200℃で1時間加圧熱水処理し、糖を抽出した。
糖を抽出した後の固体残渣を窒素気流下(0.2L/min)で600℃1時間加熱炭化し、多孔質炭素を得た。
多孔質炭素:KOH=1:3の割合で混合し、窒素気流下(0.2L/min)で800℃1時間賦活し、多孔質活性炭材料を得た。
この多孔質活性炭材料のBET比表面積は2337m
2/gであった。
多孔質活性炭材料:PTFE=9:1の割合で混合し、圧延した後、外径φ5.6mm、厚み0.8mmの活性炭電極を得た。
2つの多孔質活性炭電極をセパレータで対向するよう配置し、プロピレンカーボネートに四フッ化ホウ酸テトラエチルアンモニウムを1mol/L溶かした電解液を用い、
図8に示したコイン型電気二重層キャパシタを作成した。
【0046】
<比較例1>
孟宗竹を粉砕(糖は未抽出)し、粉砕後の粉末を窒素気流下(0.2L/min)で400℃1時間加熱炭化し、多孔質炭素を得た。
多孔質炭素:KOH=1:3の割合で混合し、窒素気流下(0.2L/min)で800℃1時間賦活し、多孔質活性炭材料を得た。
この多孔質活性炭材料のBET比表面積は2740m
2/gであった。
多孔質活性炭材料:PTFE=9:1の割合で混合し、圧延した後、外径φ5.6mm、厚み0.8mmの活性炭電極を得た。
2つの多孔質活性炭電極をセパレータで対向するよう配置し、プロピレンカーボネートに四フッ化ホウ酸テトラエチルアンモニウムを1mol/L溶かした電解液を用い、
図8に示したコイン型電気二重層キャパシタを作成した。
【0047】
<比較例2>
BET比表面積が2280m
2/gである市販の活性炭を用いた。
多孔質活性炭材料:PTFE=9:1の割合で混合し、圧延した後、外径φ5.6mm、厚み0.8mmの活性炭電極を得た。
2つの多孔質活性炭電極をセパレータで対向するよう配置し、プロピレンカーボネートに四フッ化ホウ酸テトラエチルアンモニウムを1mol/L溶かした電解液を用い、
図8に示したコイン型電気二重層キャパシタを作成した。
【0048】
実施例2、比較例1、比較例2の3種類の電気二重層キャパシタを、充電1.8V、放電0.1mAとし、充電電圧の80%から40%になるまでの放電時間から容量(F)を計算し、2つの活性炭電極体積で除算した。結果を
図9に示す。
図9において、「1」は実施例2、「2」は比較例1、「3」は比較例2を示す。
実施例2の多孔質活性炭素材料は、比較例1の活性炭や、比較例2の市販の活性炭と同等、又はそれ以上の容量を有していた。