特許第6803246号(P6803246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6803246シリコーン組成物、剥離紙及び剥離フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803246
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】シリコーン組成物、剥離紙及び剥離フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20201214BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20201214BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20201214BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20201214BHJP
   C09J 7/21 20180101ALI20201214BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20201214BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C08L83/07
   C08L83/05
   B32B27/00 101
   B32B27/00 L
   C09K3/00 R
   C09J7/21
   C09J7/30
   D21H27/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-11230(P2017-11230)
(22)【出願日】2017年1月25日
(65)【公開番号】特開2018-12827(P2018-12827A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2018年12月20日
(31)【優先権主張番号】特願2016-136570(P2016-136570)
(32)【優先日】2016年7月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】中山 健
【審査官】 中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−053107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00−101/14
C08K3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素原子に結合するアルケニル基を1分子中に2個以上有し、アリール基を1分子中に1個以上有する又は有さない、下記一般式(3)で表されるオルガノポリシロキサン
【化1】
(上記式(3)中、Rは互いに独立に脂肪族不飽和結合を有さない、置換又は非置換の一価炭化水素基、炭素数2〜12の、アルケニル基又は酸素原子を有してよいアルケニル基含有一価炭化水素基、又は水酸基であり、fは2以上の整数であり、gは1以上の整数であり、hは0以上の整数であり、kは0以上の整数であり、及び、30≦f+g+h+k≦20,000である)
(B1)ケイ素原子に結合する水素原子を1分子中に3個以上有し、かつアリール基を、ケイ素原子に結合する水素原子及びケイ素原子に結合する基の合計個数に対するアリール基の合計個数の割合(%)(以下、アリール基の割合という)が少なくとも8%となる個数で有する、オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(A)成分中のアルケニル基の個数に対する(B1)成分中のSiH基の個数の比が0.5〜10となる量、及び
(C)白金族金属系触媒 触媒量
を含有し、 [(B1)成分における前記アリール基の割合(%)]−[(A)成分におけるケイ素原子に結合する基の合計個数に対するアリール基の合計個数の割合(%)]≧8である、シリコーン組成物。
【請求項2】
さらに(B2)ケイ素原子に結合する水素原子を1分子中に3個以上有し、アリール基を有さないオルガノハイドロジェンポリシロキサンを、(B1)成分及び(B2)成分の合計100質量部に対して1〜80質量部の量で含有し、(A)成分中のアルケニル基の個数に対する(B1)成分及び(B2)成分中のSiH基の合計個数の比が0.5〜10である、請求項1記載のシリコーン組成物。
【請求項3】
(B1)成分が下記平均組成式(1)で表される、請求項1又は2に記載のシリコーン組成物
SiO(4−a−b)/2 (1)
(式中、Rは互いに独立に、水酸基、又は、置換又は非置換の、脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、Rの合計個数及びケイ素原子に結合する水素原子の個数の合計に対し8%以上となる数のRがアリール基またはアラルキル基であり、a及びbはゼロより大きい実数であり、a+b≦3である)。
【請求項4】
(B1)成分が下記式(2)で表される、請求項3に記載のシリコーン組成物。
【化2】
(式中、Rは上記の通りであり、cは0または1であり、dは1以上の整数であり、eは0以上の整数であり、2c+d≧3であり、及び、1≦d+e≦1,000である)
【請求項5】
(A)成分中のアルケニル基の個数に対する(B1)成分中のSiH基の個数比が、又は、(B2)成分を含む場合には(A)成分中のアルケニル基の個数に対する(B1)及び(B2)成分中のSiH基の合計個数の比が、1.5〜6である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
【請求項6】
溶剤を含まない、請求項1〜5のいずれか1項記載のシリコーン組成物。
【請求項7】
フィルム基材と、該フィルム基材の少なくとも1面に請求項1〜6のいずれか1項に記載のシリコーン組成物の硬化物からなる層とを有する、剥離フィルム。
【請求項8】
紙基材と、該紙基材の少なくとも1面に請求項1〜6のいずれか1項に記載のシリコーン組成物の硬化物からなる層とを有する、剥離紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材、特にポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム基材との密着性に優れる硬化物層を与えるシリコーン組成物、特には無溶剤型のシリコーン組成物、並びに該組成物の硬化皮膜を有する剥離紙及び剥離フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着材料に対する剥離特性(例えば、粘着材料からきれいに剥離できる性質)を基材に付与するために、紙やプラスチックなどのシート状基材の表面にシリコーン組成物の硬化物からなる皮膜を形成することが行われていた。基材表面にシリコーン組成物の硬化皮膜を形成する方法としては、例えば、特許文献1に、基材表面で、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを白金系触媒存在下で付加反応させて、剥離性皮膜を形成する方法が記載されている。
【0003】
付加反応により硬化して皮膜を形成するシリコーン組成物としては、シリコーン組成物を有機溶剤に溶解させたタイプ、乳化剤を用いて水に分散させてエマルジョンにしたタイプ、及び、溶剤を含まない無溶剤型シリコーン組成物がある。溶剤タイプは人体や環境に対して有害であるという欠点を有し、エマルジョンタイプは水を除去するのに高いエネルギーを必要とする。さらに、多量の乳化剤が残存するため、得られる硬化皮膜は基材への密着性が低下し、また、粘着性材料を該硬化皮膜から成る剥離層に貼り付けた後に剥離すると粘着材料が有する接着強度(以下、残留接着強度という)が低下するという問題がある。そのため無溶剤型のシリコーン組成物が望まれている。
【0004】
しかし従来の無溶剤型シリコーン組成物は、紙基材には良好に密着するものの、ポリエステルフィルムやポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルムに対する密着性に乏しいという問題点があった。
【0005】
フィルム基材に対する無溶剤型シリコーン組成物の密着性を向上する方法として、例えば、シリコーン組成物にシランカップリング剤を配合する方法、組成物を塗工する基材の表面に易接着処理やプライマ処理を施す方法がある。しかしながら、シランカップリング剤を配合した無溶剤型シリコーン組成物は基材との密着性が不十分である。また、基材の表面処理をする方法は工程が増えるという不利がある。
【0006】
特許文献2には、シリコーン組成物にアルケニル基含有の低分子シロキサンを添加し、紫外線を照射した後に加熱して組成物を硬化させる方法が記載されており、これにより剥離特性に影響を与えることなく基材密着性を改良している。しかしこの方法は、加熱用乾燥機とともにUV照射装置が必要となる。
【0007】
特許文献3には少量の添加剤を用いることで基材に対する密着性を向上させる方法が記載されており、エポキシ基を有するオルガノポリシロキサンをシリコーン組成物に添加している。しかし、特許文献3の実施例には溶剤型シリコーン組成物の記載しかなく、また粘着材料を剥離層から剥がした後の残留接着強度についても言及していない。
【0008】
特許文献4には、RSiO3/2単位を有し分岐構造を有するベースポリマーを含む無溶剤型シリコーン組成物が記載され、該シリコーン組成物は得られる硬化皮膜と基材との密着性を向上すると記載されている。しかし、OPPフィルム(二軸延伸ポリプロピレンフィルム)への密着性は向上されているがポリエステル系のフィルム基材に対する密着性は十分でないという問題点がある。
【0009】
特許文献5は、アルケニル基及びシラノール基を有する液体ポリ有機シロキサンと、エポキシ基を有する加水分解性シランとの反応生成物を無溶剤型シリコーン組成物に添加することにより、得られる硬化皮膜の基材に対する密着性を改善すると記載している。しかし、実施例には、Q単位(SiO4/2)及びアルケニル基を含む特定のオルガノポリシロキサンに該反応生成物を用いた記載しかなく、さらに粘着材料を剥離層から剥がした後の残留接着強度についても言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭47−32072号公報
【特許文献2】特開2011−252142号公報
【特許文献3】特開2011−132532号公報
【特許文献4】特開平6−220327号公報
【特許文献5】特表2010−500462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の通り、フィルム基材に対する優れた密着性を有し、且つ、粘着性材料を硬化皮膜から剥離した後に、粘着材料に高い接着強度を残留させることができる硬化皮膜を与える無溶剤型シリコーン組成物はない。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、基材、特にプラスチックフィルム基材に対して密着性に優れ、更に、粘着材料を該硬化皮膜から剥離した後に粘着材料に高い接着強度を残留させることができる硬化皮膜を与える、無溶剤型シリコーン組成物を提供すること、および該硬化皮膜を備える剥離紙及び剥離フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行なった結果、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを含む付加反応型シリコーン組成物において、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとの間でアリール基の含有率の差を特定することにより、上記課題を達成できることを見出し、本発明を成すに至った。尚、本発明において、該アリール基とは、ケイ素原子に結合するアリール基及びケイ素原子に結合するアラルキル基が有するアリール基の少なくとも1つを意味する。ケイ素原子に結合するアラルキル基が有するアリール基とは、例えば、ベンジル基(フェニルメチル基)やフェネチル(フェニルエチル基)が有するフェニル基である。
【0014】
すなわち、本発明は
(A)ケイ素原子に結合するアルケニル基を1分子中に2個以上有し、アリール基を1分子中に1個以上有する又は有さない、下記一般式(3)で表されるオルガノポリシロキサン
(上記式(3)中、Rは互いに独立に脂肪族不飽和結合を有さない、置換又は非置換の一価炭化水素基、炭素数2〜12の、アルケニル基又は酸素原子を有してよいアルケニル基含有一価炭化水素基、又は水酸基であり、fは2以上の整数であり、gは1以上の整数であり、hは0以上の整数であり、kは0以上の整数であり、及び、30≦f+g+h+k≦20,000である)
(B1)ケイ素原子に結合する水素原子を1分子中に3個以上有し、かつアリール基を、ケイ素原子に結合する水素原子及びケイ素原子に結合する基の合計個数に対するアリール基の合計個数の割合(%)(以下、アリール基の割合という)が少なくとも8%となる個数で有する、オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(A)成分中のアルケニル基の個数に対する(B1)成分中のSiH基の個数の比が0.5〜10となる量、及び
(C)白金族金属系触媒 触媒量
を含有し、 [(B1)成分における前記アリール基の割合(%)]−[(A)成分におけるケイ素原子に結合する基の合計個数に対するアリール基の合計個数の割合(%)]≧8である、シリコーン組成物を提供する。
また、本発明は、該シリコーン組成物の硬化物からなる層を有する剥離紙又は剥離フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシリコーン組成物は、特には無溶剤型であり、基材、特にプラスチックフィルム基材に対し優れた密着性を有する硬化皮膜を与える。また該硬化皮膜からなる剥離層と粘着材料とを貼り付けた後、該粘着材料を該剥離層から剥離した後に、粘着材料に高い接着強度を残留させることができる。すなわち非粘着性に優れた硬化皮膜を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
尚、本発明において残留接着率とは、本発明の硬化皮膜からなる剥離層に貼りつける前の粘着材料が有する接着強度に対する、粘着材料を該剥離層からはがした後に粘着材料に残る接着強度の割合(%)を意味する。
【0017】
[(A)アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン]
(A)成分は、1分子中に2個以上のアルケニル基を有し、アリール基を1個以上有するまたは有さないオルガノポリシロキサンである。該アリール基とは、上記の通り、ケイ素原子に結合するアリール基及びケイ素原子に結合するアラルキル基が有するアリール基の少なくとも1つである。該オルガノポリシロキサンは、従来公知の付加反応硬化型シリコーン組成物に含まれるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンであればよい。
【0018】
該(A)成分は好ましくは下記一般式(3)で表される。該オルガノポリシロキサンは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は下記に制限されるものでない。
【化1】
【0019】
上記式(3)中、Rは互いに独立に、水酸基、脂肪族不飽和結合を有さない、置換又は非置換の一価炭化水素基、又は、炭素数2〜12の、アルケニル基又は酸素原子を有してよいアルケニル基含有一価炭化水素基である。該オルガノポリシロキサンは一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する。
【0020】
脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基としては、炭素数1〜10を有するのが好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等の、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、シクロヘキシル基等の、好ましくは炭素数5〜8のシクロアルキル基、フェニル基、及びトリル基等の、好ましくは炭素数6〜10のアリール基、ベンジル基等の、好ましくは炭素数7〜10のアラルキル基、又はこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルコキシシリル基、ポリオキシアルキレン基、エポキシ基、及びカルボキシル基等の置換基で置換したものが挙げられる。剥離性の観点から特にはアルキル基、及びアリール基が好ましい。更には、メチル基、エチル基、プロピル基、及びフェニル基がより好ましい。
【0021】
該オルガノポリシロキサンがケイ素原子に結合するアリール基又はケイ素原子に結合するアラルキル基の少なくとも1を有する場合、アリール基(アラルキル基が有するアリール基も含む)の含有量は、ケイ素原子に結合する基(より詳細には、上記式(3)においてRで示される基)の合計個数に対する該アリール基(アラルキル基が有するアリール基も含む)の個数の割合(%)が0.5〜50%であるのが好ましく、0.5〜40%が更に好ましい。アリール基の割合が上記上限値を超えると、得られる組成物の硬化性が低下する場合がある。
【0022】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、シクロヘキセニルエチル基等のシクロアルケニルアルキル基等が挙げられる。酸素原子を有してよいアルケニル基含有一価炭化水素基としては、例えばアクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基等のアクリロイルアルキル基及びメタクリロイルアルキル基が挙げられる。また、メチレン鎖にエーテル結合を含んでもよく、例えば−(CH−O−CH−CH=CH、−(CH−O−CH−CH=CHが挙げられる。中でも工業的観点からビニル基が好ましい。
【0023】
(A)オルガノポリシロキサンは1分子中に2個以上のアルケニル基を有する。好ましくは、該オルガノポリシロキサンは1分子中に2〜500個のアルケニル基を有し、より好ましくは2〜400個である。アルケニル基の個数が2個未満では、組成物を硬化した後に未架橋分子が残る可能性が高く、硬化性が低下する場合があり、500個を超えると重剥離化し、残留接着率が低下する場合がある。
【0024】
上記式(3)中、fは2以上、好ましくは2〜300の整数、gは1以上、好ましくは30〜20,000の整数、hは0以上、好ましくは0〜100の整数、kは0以上、好ましくは0〜100の整数であり、30≦f+g+h+k≦20,000であり、好ましくは50≦f+g+h+k≦15,000である。f+g+h+kが上記下限値未満では、得られる組成物の塗工性が低下する。また上記上限値を超えると組成物を基材表面に高速塗工する際に塗工機の塗工ロール部でミストが発生する場合がある。
【0025】
また(A)成分は、25℃における粘度50mPa・s〜10,000mPa・s、特に50mPa・s〜5,000mPa・sを有するのが好ましい。更に必要に応じて10,000mPa・s〜30%トルエン溶液での粘度50,000mPa・sを有するオルガノポリシロキサンを併用してもよい。複数のオルガノポリシロキサンを併用する場合、(A)成分の合計の粘度が10,000mPa・sを超えないのが好ましい。該値を超えると組成物の塗工性が低下するため好ましくない。なお、本発明において粘度は、回転粘度計により測定することができる(以下、同じ)。
【0026】
(A)オルガノポリシロキサンとしては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式において、Me、Vi、Phはそれぞれメチル基、ビニル基、フェニル基を表す。括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は下記に制限されるものでない。
【化2】
(30≦z1≦2,500)
【化3】
(30≦z2≦10,000)
(30≦z3≦19,000、2≦z4≦500)
【化5】
(30≦z5≦19,000、1≦z6≦498)
【化6】
(1≦z7≦19,000、1≦z8≦500、1≦z9≦498)
【化7】
(0≦z10≦1,000、0≦z11≦1,000、0≦z12≦1000、1≦z13≦100)
【化8】

(0≦z14≦500、0≦z15≦500、0≦z16≦500、0≦z17≦100、0≦z18≦500、0≦z19≦500、1≦z20≦100)
【0027】
[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
(B)成分はケイ素原子に結合する水素原子を一分子中に少なくとも3個有する、オルガノハイドロジェンポリシロキサンである。本発明のシリコーン組成物は、(B)成分として(B1)ケイ素原子に結合する水素原子を一分子中に少なくとも3個有し、且つ、アリール基を特定量にて有するオルガノハイドロジェンシロキサンを含有することを特徴とする。該アリール基とは、上記の通り、ケイ素原子に結合するアリール基及びケイ素原子に結合するアラルキル基が有するアリール基の少なくとも1つである。また、本発明のシリコーン組成物は該(B1)成分と併用して、(B2)ケイ素原子に結合する水素原子を一分子中に少なくとも3個有し、且つ、アリール基を有さないオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有してもよい。(B2)成分を含有する場合、その配合量は、(B1)成分及び(B2)成分の合計100質量部に対して1〜80質量部の量であり、好ましくは1〜70質量部の量であり、より好ましくは1〜50質量部であり、更に好ましくは1〜30質量部であり、更に好ましくは1〜20質量部である。
【0028】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中にあるSiH基と上記(A)成分中にあるアルケニル基とが付加反応して硬化し皮膜を形成する。(B)成分の配合量は、(A)成分中のアルケニル基の個数に対する(B)成分中のSiH基の個数の比が0.5〜10、好ましくは1〜8、更に好ましくは1.5〜6、特に好ましくは1.8〜6となる量、さらには2.0超〜5となる量である。上記個数比が上記下限値より小さいと基材との密着性が低下する。また上記上限値より大きいと、得られる硬化皮膜が重剥離化し(すなわち、粘着材料を硬化皮膜から剥離するのに強い力を要する)、剥離後に粘着材料に残留する接着強度が低下してしまう。(B2)成分を含有する場合には、(A)成分中のアルケニル基の個数に対する(B1)及び(B2)成分中のSiH基の合計個数の比が0.5〜10、好ましくは1〜8、更に好ましくは1.5〜6であればよいが、特に好ましくはこの場合においても(A)成分中のアルケニル基の個数に対する(B1)成分中のSiH基の合計個数の比が1.5以上、特に好ましくは1.8以上、更には2.0超であるのがよい。
【0029】
(B1)成分は、アリール基を、ケイ素原子に結合する基及びケイ素原子に結合する水素原子の合計個数に対するアリール基の個数の割合(%)(以下において、アリール基の割合という)が少なくとも8%となる量で有する。好ましくは9〜60%であり、さらに好ましくは10〜50%である。アリール基の割合が上記下限値未満では、基材に対する良好な密着性を得られる硬化皮膜に付与できない。該アリール基の個数には上記の通りアラルキル基が有するアリール基の個数も含まれる。ケイ素原子に結合する基とは、たとえば、水酸基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子等で置換されたアルキル基等である。より詳細には後述するRで示される基が挙げられる。
【0030】
本発明の組成物は(B1)成分におけるアリール基の割合(%)が(A)成分におけるケイ素原子に結合する基の合計個数に対するアリール基の合計個数の割合(%)に対して8%以上大きいことを特徴とする。すなわち、[(B1)成分における前記アリール基の割合(%)]−[(A)成分におけるケイ素原子に結合する基の合計個数に対するアリール基の合計個数の割合(%)]≧8である。好ましくは、その差が8.5以上であり、さらに好ましくは9以上であり、最も好ましくは10以上であるのがよい。差の上限は特に限定されないが、好ましくは50以下であり、さらに好ましくは40以下であり、より好ましくは30以下であり、最も好ましくは25以下である。これにより得られる硬化皮膜は基材に対する密着性が向上する。これは、(B1)成分が上記範囲で(A)成分よりもアリール基を多く有することにより、(B1)成分と(A)成分の相溶性が低くなり架橋反応とともに(B1)成分が基材近傍へ局在化するためと考えられる。特に(B1)成分を過剰量で使用することにより(B1)成分をより多く基材近傍へ局在化させることができ、これにより基材との密着性が向上する。これは(B1)成分中のSiH基が基材表面に存在する官能基と相互作用していると考えられる。特に基材がプラスチックフィルムの場合、(B1)成分中のアリール基と、プラスチック中の芳香環のπ電子同士が作用し、スタッキング効果により密着性を向上させる。
【0031】
(B1)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは例えば、下記平均組成式(1)で表される。
SiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rは互いに独立に、水酸基、又は、置換又は非置換の、脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、Rの合計個数及びケイ素原子に結合する水素原子の個数の合計に対し8%以上となる数のRがアリール基であり、a及びbはゼロより大きい実数であり、a+b≦3である)
【0032】
一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、シクロヘキシル基等の好ましくは炭素数5〜8のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等の好ましくは炭素数6〜10のアリール基、ベンジル基等の好ましくは炭素数7〜10のアラルキル基、又はこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルコキシシリル基、ポリオキシアルキレン基、エポキシ基、カルボキシル基等で置換した炭素数1〜10の1価炭化水素基が挙げられる。Rの少なくとも1つはアリール基又はアラルキル基であり、好ましくはアリール基である。中でもRは、アルキル基、アリール基が好ましく、更にメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基がより好ましい。
【0033】
aは好ましくは0.1〜2の実数であり、bは好ましくは0.1〜3の実数であり、特には、0.5<a+b≦2.9を満たす数である。
【0034】
上記式(1)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、RHSiO2/2単位、HSiO3/2単位、及びR2HSiO1/2単位の少なくとも1種を有し、場合により更にR2SiO2/2単位、RSiO3/2単位、及びR3SiO1/2単位の少なくとも1種を含んでなるポリマー又はコポリマーが例示される。Rは上記した通りである。RHSiO2/2単位又はR2HSiO1/2単位を合計して1分子中に少なくとも3個、好ましくは少なくとも5個有するものが好ましい。また、SiO4/2単位を含有していてもよく、その量は本発明の効果が損なわれない範囲であればよい。
【0035】
なお、SiH基の含有量は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン1分子中に3〜1000個有し、より好ましくは5〜800個である。SiH基の個数が3個未満または1000個を超えると、硬化性が低下する場合や密着性が低下する場合がある。
【0036】
(B1)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの形状は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよく、またこれらの混合物であってもよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、好ましくは下記式(2)で示される。
【化9】
(式中、Rは上記の通りであり、cは0または1であり、dは1以上の整数であり、eは0以上の整数であり、2c+d≧3であり、及び、1≦d+e≦1,000である。括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は制限されない)
【0037】
dは好ましくは5〜1000の整数であり、eは好ましくは0〜1000の整数であり、c、d、及びeは好ましくは、5≦2c+d≦1000、及び5≦d+e≦1000を満たす数である。
【0038】
(B1)成分は25℃における粘度は0.001〜10Pa・s、特に0.005〜5Pa・sを有することが好ましい。粘度が低すぎると硬化性が低下する場合があり、高すぎると作業性が低下する場合がある。
【0039】
(B1)成分としては、例えば以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中のMe、Phはそれぞれメチル基、フェニル基を表す。括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は下記に制限されるものでない。
【化10】
(5≦z21≦1000、1≦z22≦500、6≦z21+z22≦1000)

【化11】
(1≦z23≦998、1≦z24≦500、2≦z23+z24≦1000)

【化12】
(3≦z25≦1000、1≦z26≦400、1≦z27≦400、5≦z25+z26+z27≦1000)

【化13】
(3≦z28≦1000、2≦z29≦800、5≦z28+z29≦1000)

【化14】
(0≦z30≦100、0≦z31≦100、0≦z32≦100、0≦z33≦100、0≦z34≦100、0≦z35≦100、0≦z36≦100)
【化15】
(0≦z37≦100、0≦z38≦100、0≦z39≦100、0≦z40≦100、0≦z41≦100、0≦z42≦100、0≦z43≦100、0≦z44≦100、0≦z45≦100、0≦z46≦100、0≦z47≦100、0≦z48≦100)
【0040】
(B2)成分は、ケイ素原子に結合する水素原子を1分子中に3個以上含有し、アリール基を有さないオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。例えば、下記平均組成式(4)で表される。
SiO(4-j-k)/2 (4)
【0041】
上記式(4)中、Rは互いに独立に、置換又は非置換の、脂肪族不飽和結合を有さない一価の炭化水素基、または水酸基であり、但しアリール基及びアラルキル基ではない。一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、シクロヘキシル基等の好ましくは炭素数5〜8のシクロアルキル基、又はこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルコキシシリル基、ポリオキシアルキレン基、エポキシ基、カルボキシル基等で置換した炭素数1〜10の1価炭化水素基が挙げられる。その中でもアルキル基が好ましく、付加反応速度を向上させる観点から、メチル基であることが更に好ましい。
【0042】
上記式(4)中、jは、j>0、好ましくは0.1〜2.0の実数であり、kは、k>0、好ましくは0.1〜3の実数であり、0<j+k≦3、特に0.5<j+k≦2.9を満たす。
【0043】
(B2)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、また、それらの混合物であってもよい。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、RHSiO2/2単位、HSiO3/2単位、及びRHSiO1/2単位の少なくとも1種を有し、場合により更にRSiO2/2単位、RSiO3/2単位、及びRSiO1/2単位の少なくとも1種を含んでなるポリマー又はコポリマーが例示される。Rは上記の通りである。RHSiO2/2単位又はRHSiO1/2単位を合計して1分子中に少なくとも3個、好ましくは5〜300個有するものであることが好ましい。また、SiO4/2単位を含有していてもよく、その量は本発明の効果が損なわれない範囲であればよい。
【0044】
該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、SiH基を1分子中に3〜300個有し、より好ましくは5〜200個有する。SiH基の個数が3個未満または300個超であると、硬化性が低下する場合や、基材と硬化皮膜の密着性が低下する場合がある。
【0045】
(B2)成分は25℃における粘度0.001〜10Pa・s、特に0.005〜5Pa・sを有することが好ましい。粘度が低すぎると硬化性が低下する場合があり、高すぎると作業性が低下する場合がある。
【0046】
(B2)成分としては、例えば以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中のMeはメチル基を表す。括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は下記に制限されるものでない。
【化16】
(3≦z49≦300)
【化17】
(3≦z50≦300、1≦z51≦500)
【化18】
(1≦z52≦298、1≦53≦500)
【化19】
(0≦z54≦100、0≦z55≦100、0≦z56≦100、1≦z57≦49)


【化20】
(0≦z58≦100、0≦z59≦100、0≦z60≦100、0≦z61≦50、0≦z62≦100、0≦z63≦100、1≦z64≦50)
【0047】
[(C)白金族金属系触媒]
(C)成分は上記(A)成分と(B)成分との付加反応を促進するための触媒である。所謂ヒドロシリル化反応を促進する触媒であればよく、公知の触媒を使用することができる。白金族金属系触媒としては、例えば白金系、パラジウム系、ロジウム系、ルテニウム系等の触媒が挙げられ、これらの中で特に白金系触媒が好ましく用いられる。この白金系触媒としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液又はアルデヒド溶液、塩化白金酸の各種オレフィン又はビニルシロキサンとの錯体等が挙げられる。
【0048】
(C)成分の配合量は触媒量であればよい。触媒量とは(A)成分と(B)成分(すなわち(B1)成分及び任意の(B2)成分)との付加反応を促進する量である。良好な硬化皮膜を得るためには(A)成分及び(B)成分の合計質量に対して、白金族金属の質量換算として1〜5,000ppm、特に20〜1,000ppmの範囲とすることが好ましい。
【0049】
[その他の任意成分]
本発明のシリコーン組成物は、上記(A)〜(C)成分を上述した量で配合することによって得られる。(A)〜(C)成分以外に、その他の成分を必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。該その他の成分は、シリコーン剥離剤組成物に通常使用されるものであればよく、公知のものを通常の配合量で添加できる。例えば、ポットライフ延長剤として、各種有機窒素化合物、有機リン化合物、アセチレン系化合物、オキシム化合物、及び有機クロロ化合物などが挙げられる。
【0050】
より詳細には、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、フェニルブチノール等のアセチレン系アルコール、3−メチル−3−1−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−イン等のアセチレン系化合物、これらのアセチレン系化合物とアルコキシシラン又はシロキサンあるいはハイドロジェンシランとの反応物、テトラメチルビニルシロキサン環状体等のビニルシロキサン、ベンゾトリアゾール等の有機窒素化合物及びその他の有機リン化合物、オキシム化合物、及び有機クロム化合物等が挙げられる。これら化合物の配合量は、良好なポットライフが得られる量であればよい。一般に(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.05〜5質量部である。
【0051】
更に、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて、公知の酸化防止剤、顔料、安定剤、帯電防止剤、消泡剤、密着向上剤、増粘剤、溶剤、及びシリカ等の無機充填剤を配合することができる。
【0052】
シリコーン組成物の調製方法は特に制限されるものでないが、(A)、(B)成分及び任意成分を予め均一に混合した後、(C)成分を使用直前に添加する方法がポットライフの面で望ましい。
【0053】
本発明のシリコーン組成物を基材表面に塗工し、硬化することにより基材表面に硬化皮膜を形成する。これにより基材に剥離性(基材を粘着材料からきれいに剥離できる性質)を付与する。本発明のシリコーン組成物の硬化物からなる剥離層を有する基材と粘着材料とを貼り合せると、粘着材料の残留接着率を低下させることなく、該粘着材料を剥離層から剥がすことができる。基材表面にシリコーン組成物を塗工する工程は、従来公知の方法に従えばよい。例えば、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、キスコーター、グラビアコーター、ワイヤーバーコーターなどによる塗工、スクリーン塗工、浸漬塗工、キャスト塗工等の塗工方法を用いることができる。該方法により、紙及びフィルム等のシート状基材の片面又は両面上にシリコーン組成物を塗工する。塗工するシリコーン組成物の厚みは通常0.01〜100g/m2である。硬化条件は従来公知の方法に従えばよいが、通常50〜200℃で1〜120秒間である。基材の両面に剥離層を形成する場合は、基材の片面ずつに硬化皮膜を形成するのが好ましい。
【0054】
基材としては、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙、上質紙、クラフト紙、クレーコート紙など各種コート紙、ユポなど合成紙、ポリエチレンフィルム、CPPやOPPなどのポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)などポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸フィルム、ポリフェノールフィルム、及びポリカーボネートフィルムなどが挙げられる。また、これらの基材と硬化皮膜との密着性を向上させるために、予め基材表面にコロナ処理、エッチング処理、あるいはプラズマ処理を施してもよい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例において、部は質量部を示す。
【0056】
実施例及び比較例にて使用した各成分は以下の通りである。以下においてアリール基割合(%)とは、ケイ素原子に結合する水素原子及びケイ素原子に結合する基(以下においてVi基、Me基、及びPh基)の合計個数に対する、アリール基(以下においてPh基)の個数の割合である。また、括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は下記に制限されるものでない。
(A)成分
(A−1)
【化21】
アリール基割合:0%


(A−2)
【化22】
アリール基割合:0%


(A−3)
【化23】
アリール基割合:5.2%


(A−4)
【化24】
アリール基割合:10.9%


(A−5)
【化25】
アリール基割合:29.0%
【0057】
(B)成分
(B1−1)
【化26】
アリール基割合:9.8%


(B1−2)
【化27】
アリール基割合:19.8%


(B1−3)
【化28】
アリール基割合:18.2%


(B1−4)
【化29】
アリール基割合:29.3%


(B1−5)
【化30】
アリール基割合:4.9%


(B2−1)
【化31】
アリール基割合:0%
【0058】
(C)触媒:白金−ビニルシロキサン錯体
【0059】
[比較例用成分 密着向上剤]
(D−1)
下記式で示されるオルガノポリシロキサン
【化32】
(Ep1は2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、Meはメチル基)
【0060】
(D−2)エポキシ基含有オルガノポリシロキサン
(CH32(OH)SiO1/2で表されるシラノール末端シロキサン単位20モル%、(CH3)(CH2=CH)SiO2/2で表されるメチルビニルシロキサン単位40モル%、及び(CH32SiO2/2で表されるジメチルシロキサン単位40モル%で構成されている25℃での粘度20mm2/sを有するオルガノポリシロキサン43質量%と、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン57質量%とをカリウムシリコネート存在下、100℃、1時間反応させてエポキシ基含有オルガノポリシロキサンを得た。
該オルガノポリシロキサンの25℃での粘度は0.6Pa・sであり、アルケニル基含有量は0.20モル/100gであり、平均重合度は20であり、全シロキサン単位の個数に対して、エポキシシクロヘキシル基を有するシロキサン単位の個数の割合は20%であった。
【0061】
(D−3)エポキシ基含有シロキサンオリゴマー
3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン99.98質量%と、水0.02質量%を塩酸存在下、100℃、5時間で部分加水分解縮合させてエポキシ基含有シロキサンオリゴマーを得た。
該シロキサンオリゴマーの25℃での粘度は0.01Pa・sであり、平均重合度は3であった。
【0062】
(E)ポットライフ延長剤:エチニルシクロヘキサノール
【0063】
<実施例1〜10、比較例1〜13>
上記(A)、(B)、及び(D)成分を、下記表1〜3に記載する配合比に従いフラスコに取り、さらに(E)成分0.3部を添加し、撹拌して溶解した。得られた混合物に(C)触媒を(A)成分及び(B)成分の合計に対して白金質量換算で100ppmになるよう添加し、撹拌混合することでシリコーン組成物を得た。このシリコーン組成物を用いて後述の方法で塗工品(剥離フィルム)を作製し、評価した。
【0064】
<評価>
[剥離力]
得られた組成物を、厚さ38μmのPETフィルムにバーコーターを用いて固形分で0.5g/m2塗布し、120℃の熱風式乾燥機中で40秒間加熱硬化して剥離層を形成した。該剥離層をFINAT法に準拠し、以下手順で評価した。
剥離剤層の表面に幅25mm粘着テープ(Tesa7475テープ、Tesa Tape.Inc製商品名)を貼り、70℃の乾燥機中20g/cm2の荷重をかけ20時間加熱処理した。30分ほど空冷した後、引張試験機を用いて180゜の角度、剥離速度0.3m/分でTesa7475テープを引張り、剥離させるのに要する力(gf/25mm)を測定した。結果を表1〜3に示す。
【0065】
[残留接着率]
上記剥離試験後のTesa7475テープをSUSステンレンス板に貼り合わせ、2kgのテープローラーで1往復圧着後、引張試験機を用いて180°の角度で0.3m/分で剥離し、剥離させるのに要する力F(N/25mm)を測定した。比較として未使用のTesa7475テープをSUS板に貼り付け、上記と同様にして、剥離させるのに要する力F(N/25mm)を測定した。剥離層を剥離した後のTesa7475テープには未使用のTesa7475テープと比較して何%の接着力が残っているか(残留接着率(%))を、式:F/F×100により計算した。結果を表1〜3に示す。
【0066】
[密着性]
上記と同様にして厚さ38μmのPETフィルムに剥離層を形成し、25℃、50%RHで保管した。1日、5日、30日保管後に夫々、剥離層を指で10回擦って脱落するか否かを目視により観察し、以下の基準で評価した。結果を表1〜3に示す。
A:30日後も脱落が見られない
B:1日後に脱落が見られないが、5日後には脱落した
C:剥離層形成直後に脱落した
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
上記表2及び3に記載の通り、比較例1〜9のシリコーン組成物は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのアリール基割合とアルケニル基含有オルガノポリシロキサンアリール基割合との差が、本発明の範囲を満たさない。当該シリコーン組成物から得られる硬化皮膜は、プラスチック基材に対する密着性に劣る。また、比較例11〜13のシリコーン組成物は従来の密着向上剤を含むが、アリール基の割合に差がないため、プラスチック基材に対する密着性に劣る。これに対し、上記表1に示す通り、本発明のシリコーン組成物から得られる硬化皮膜は、プラスチックフィルム基材に対し優れた密着性を有する。また該硬化皮膜からなる剥離層から粘着材料を剥離させるときには、高い接着強度を粘着材料残したまま剥離できる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のシリコーン組成物は無溶剤型の剥離剤として好適に機能する。該シリコーン組成物からなる硬化皮膜を紙基材及びプラスチック基材等の基材表面に形成することにより、これら基材と良好に密着して、剥離紙及び剥離フィルムを与える。