(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803756
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】スケール本体を加工するための方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20201214BHJP
G01D 5/347 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
G01D5/245 110J
G01D5/347 110A
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-10832(P2017-10832)
(22)【出願日】2017年1月25日
(65)【公開番号】特開2017-134072(P2017-134072A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2019年9月24日
(31)【優先権主張番号】10 2016 201 088.3
(32)【優先日】2016年1月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】モーリッツ・シュヴァーベ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・シュペックバッハー
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ・ヴァイトマン
【審査官】
清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−127649(JP,A)
【文献】
特表2008−504964(JP,A)
【文献】
西独国特許出願公開第03004172(DE,A)
【文献】
西独国特許出願公開第02758014(DE,A)
【文献】
米国特許第04693649(US,A)
【文献】
特表2012−522974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置測定システムのスケール本体(1)を加工するための方法であって、前記スケール本体(1)が、第1表面(11)に測定目盛(3)を有し、前記スケール本体(1)が、第2表面(12)でキャリア本体(K)に固定するように適合されていて、前記スケール本体(1)の場合、このスケール本体(1)の側面の外縁部(15)が、前記第1表面(11)と前記第2表面(12)との間に延在し、前記第1表面(11)及び前記第2表面(12)が、前記側面の外縁部(15)の領域内で第1辺部(21)又は第2辺部(22)によって限定されていて、前記スケール本体(1)の加工時にこのスケール本体(1)の所定の外輪郭を形成するために、このスケール本体(1)の付随するそれぞれの表面(11,12)から張り出すそれぞれ1つの材料突出部(23,24)が、このスケール本体(1)の前記第1辺部(21)と前記第2辺部(22)とに形成される当該方法において、
前記第1表面(11)に対して垂直な前記第1辺部(21)の前記材料突出部(23)の寸法(h1)が、前記第2表面(12)に対して垂直な前記第2辺部(22)の前記材料突出部(24)の寸法(h2)よりも小さいように、前記スケール本体(1)が、一方では前記第1辺部(21)で、他方では前記第2辺部(22)で相違して加工されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記スケール本体(1)は、前記第1辺部(21)及び/又は前記第2辺部(22)で機械式に加工されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スケール本体(1)は、前記第1辺部(21)及び/又は前記第2辺部(22)でフライス切削加工、研磨又は鋸加工によって加工されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記スケール本体(1)は、前記第1辺部(21)及び/又は前記第2辺部(22)でレーザ放射によって加工されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1表面(11)に対して垂直な前記第1辺部(21)の材料突出部(23)の寸法(h1)が、20nm以下であるように、前記スケール本体(1)は、前記第1辺部(21)で加工されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1表面(11)に対して垂直な前記第1辺部(21)の材料突出部(23)の寸法(h1)が、10nm未満であるように、前記スケール本体(1)は、前記第1辺部(21)で加工されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2表面(12)に対して垂直な前記第2辺部(22)の材料突出部(24)の寸法(h2)が、10nm〜500nmであるように、前記スケール本体(1)は、前記第2辺部(22)で加工されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2表面(12)に対して垂直な前記第2辺部(22)の材料突出部(24)の寸法(h2)が、20nm〜100nmであるように、前記スケール本体(1)は、前記第2辺部(22)で加工されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1辺部(21)で形成された材料突出部(23)が、前記第1辺部(21)から第1表面(11)の内側の方向に500μm未満だけ、又は200μm未満だけ延在するように、前記スケール本体(1)は、前記第1辺部(21)で加工されることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2辺部(22)で形成された材料突出部(24)が、前記第2辺部(22)から第2表面(12)の内側の方向に2,000μm未満だけ、又は500μm未満だけ延在するように、前記スケール本体(1)は、前記第2辺部(22)で加工されることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
・測定目盛(3)が形成されている第1表面(11)と、
・スケール本体(1)をキャリア本体(K)に固定するために適合されている第2表面(12)と、
・前記スケール本体(1)の前記第1表面(11)と前記第2表面(12)との間に延在する側面の外延部(15)とを有するエンコーダのスケール本体であって、
前記スケール本体(1)の前記第1表面(11)と前記第2表面(12)とが、前記側面の外延部(15)の領域内で第1辺部(21)又は第2辺部(22)によって限定されていて、それぞれ1つの材料突出部(23,24)が、前記第1辺部(21)及び第2辺部(22)で付随する前記第1表面(11)又は前記第2表面(12)から張り出している当該スケール本体において、
前記スケール本体(1)の前記第2辺部(22)の材料突出部(24)が、前記第2表面(12)に対して垂直にこの第2表面(12)から張り出しているときの寸法(h2)よりも小さい寸法(h1)を有する前記スケール本体(1)の前記第1辺部(21)の材料突出部(23)が、前記第1表面(11)に対して垂直にこの第1表面(11)から張り出していることを特徴とするスケール本体。
【請求項12】
前記スケール本体(1)は、ガラスセラミックから成る基体(10)を有することを特徴とする請求項11に記載のスケール本体。
【請求項13】
前記第1表面(11)に対して垂直な前記スケール本体(1)の前記第1辺部(21)の前記材料突出部(23)の寸法(h1)は、20nm以下、又は10nm未満であることを特徴とする請求項11又は12に記載のスケール本体。
【請求項14】
前記第2表面(12)に対して垂直な前記スケール本体(1)の前記第2辺部(22)の前記材料突出部(24)の寸法(h2)は、10nm〜500nm、又は20nm〜100nmであることを特徴とする請求項11から13のいずれか1項に記載のスケール本体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載のエンコーダのスケール本体を加工するための方法及び請求項12に記載のこの方法によって加工されたスケール本体に関する。
【背景技術】
【0002】
この場合、当該方法は、エンコーダのスケール本体の加工に関する。当該スケール本体は、付設された走査装置によって操作可能な測定目盛を第1表面に有し、この第1表面に面しない第2表面でキャリアに固定されるように構成されている。当該スケール本体の外縁部が、このスケール本体の第1表面と第2表面との間に延在する。この外縁部は、特に、第1表面と第2表面との間に周設されるように形成され得る。具体的には、例えば、このスケール本体の第1表面と第2表面とが、互いに平行に整合され得、この外縁部が、これらの表面に対して垂直に延在され得る。この場合、この第1表面と第2表面とがそれぞれ、第1辺部又は第2辺部でこのスケール本体の外縁部内に移行している。すなわち、この第1表面が、この第1辺部によって限定され、この第2表面が、この第2辺部によって限定される。このようなスケール本体の加工は、このスケール本体の所定の外輪郭を作製するために実行され、特に、このスケール本体の第1表面又は第2表面がこのスケール本体の第1辺部と第2辺部とで当該(周設されている)外縁部内に移行している、このスケール本体の第1辺部と第2辺部との加工も含む。
【0003】
例えば、欧州特許第1762828号明細書に記載されているように、高精度のエンコーダの場合には、スケール本体の辺部の加工が、幾つかの制約の下で実行される。このことは、例えば、半導体産業における精密テーブル及びプラットフォームの高精度の移動及び位置決め時のような、特に動的な用途におけるこのような測定システムの使用時に成立する。この場合、移動すべき物体を最小にすること、及び、位置測定システムのために提供される限定された構造空間が、一般に重要である。スケール本体の重量及び寸法を減少させるため、第1表面の寸法が、走査すべき走査目盛を収容するのに十分であるように、このスケール本体は形成される。このことは、当該測定目盛がこのスケール本体の外縁部まで延在することを意味する。その結果、当該測定目盛の精度が、このスケール本体の縁部の加工によって損傷され得る。
【0004】
当該スケール本体を例えばフレームとしてのキャリアに固定することを考慮すると、当該スケール本体は、可能な限り位置安定でなければならず、同時にその固定工程が、当該スケール本体に設けられている測定目盛に影響を及ぼしてはならないことが重要である。このため、例えば、欧州特許第1783463号明細書から、エンコーダのスケールを、このスケールとキャリアとの間にボンディングを施すことによってこのキャリアに固定することが既知である。この場合、当該ボンディングは、このスケールの、2次元格子内に分散して配置され、互いに離間した複数の表面領域で実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1762828号明細書
【特許文献2】欧州特許第1783463号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、スケール本体の第1表面にある測定目盛がこのスケール本体の縁部まで延在する位置測定システムでも使用可能である、冒頭で述べた種類の位置測定システムのスケール本体を加工するための方法を提供することにある。さらに、このスケール本体と敷設されたキャリアとの接合の品質が、当該縁部によって支援され得る。この場合、第2表面が、例えば、欧州特許第1783463号明細書に記載されているようにボンディングによって又は接着によってキャリアに接合するために適していなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この方法は、請求項1に記載の特徴を有する方法を提供することによって解決される。
【0008】
当該手段によれば、第1辺部の材料突出部よりも大きい第2辺部の材料突出部が形成されるように、一方ではスケール本体の(測定目盛を有する)第1表面に付設されたこの第1辺部と、他方ではこのスケール本体の(固定面として使用される)第2表面に付設されたこの第2辺部とが異なって加工される。
【0009】
本発明の解決手段は、スケール本体の辺部の加工時に、材料突出部が規則的に形成されるという認識に基づく。当該材料突出部は、第1辺部の場合はこのスケール本体の第1表面から張り出し、例えば、この第1表面に対して垂直にこの第1表面から張り出し、第2辺部の場合はこのスケール本体の第2表面から張り出し、例えば、この第2表面に対して垂直にこの第2表面から張り出す。
【0010】
(以下で外縁隆起部とも記される)このような突出部は、スケール本体の加工時にその縁部の領域内に生成されるマイクロクラックの結果として発生する。すなわち、当該スケール本体の加工時の、当該スケール本体の第1表面又は第2表面から張り出している突出部(外縁隆起部)の発生は、同時に、当該加工時に発生したマイクロクラックの数及び大きさの指標である。また、このようなマイクロクラックは、当該スケール本体の縁部の領域内の当該スケール本体に設けられている測定目盛の複数の歪みを伴う。この場合、これらの歪みが強い程、より多くのマイクロクラック及びより大きいマイクロクラックが、当該スケール本体の加工時に、特に第1辺部の領域内に、すなわち(測定目盛を有する)第1表面を限定する辺部の領域内に発生する。また、このことは、当該測定目盛がその縁側で歪む程、(当該マイクロクラックによって引き起こされる)当該スケール本体の加工時に発生する外縁隆起部がより大きいことを意味する。さらに、外縁隆起部の増大と共に、マイクロクラックの大きくなる有効範囲が観察される。すなわち、外縁隆起部の増大と共に、マイクロクラックが、当該スケール本体の辺部のより多くの部分にわたって当該付随する表面の中央の方向に拡大する。
【0011】
本発明によれば、これによって引き起こされる材料突出部(外縁隆起部)が、スケール本体の第1辺部の領域内で小さく保持される。これにより、第1辺部によって限定された当該スケール本体の第1表面に設けられている測定目盛の縁側の歪みが回避される。当該材料突出部(外縁隆起部)に比べて比較的より大きい材料突出部又は外縁隆起部が、この第1表面に面しないこのスケール本体の第2表面を限定する第2辺部で適切に許容又は調整され得る。(当該辺部の加工時に、基本的に、材料の突出又は縁部を減少させる材料の収縮の逆の効果が発生し得る。)すなわち、例えば(欧州特許第1783463号明細書に記載されているように)ボンディングによって、スケール本体をその第2表面にわたってキャリアに固定する場合に、特定のプレストレスを保証するため、材料を突出させることが適切に試みられる。また、これにより、当該スケール本体の縁部の領域内の結合力を損ない、それ故に当該結合部分の剥離を促進し得る毛管力が、当該スケール本体と付随するキャリアとの間に発生しないことが達成され得る。すなわち、オイル蒸気又は水分が、当該中間空間内に潜り込み、当該スケール本体を徐々に剪断し得る。
【0012】
したがって、結果として、本発明によれば、スケール本体の第1辺部とこのスケール本体の第2辺部とが相違して適切に加工される。その結果、可能な限り小さい材料突出部又は外縁隆起部が、この第1辺部で発生する一方で、所定の大きさの材料突出部又は外縁隆起部が、この第2辺部で許容される。
【0013】
当該スケール本体、特にこのスケール本体の外縁部並びに第1辺部及び第2辺部の加工は、例えば、鋸加工、研磨若しくはフライス切削加工によって又はレーザを用いた加工によって機械式に実行される。
【0014】
しかし、マイクロクラック及び外縁隆起部の発生に関しては、選択された加工方法だけで左右されるのではなくて、例えば、工具の送り、摺動又は切削速度のような加工パラメータにも左右される。さらに、例えば、工具部分の材料、研磨粒径及び研磨結合剤のような工具の特別な特性も重要になり得る。
【0015】
最も高くて20nmの材料突出部又は外縁隆起部、特に好ましくは10nm未満の材料突出部又は外縁隆起部が発生するように、スケール本体の加工が、第1辺部の領域内で有益に実行される。
【0016】
第1辺部から第1表面の内側の方向に測定された外縁隆起部−すなわちマイクロクラック−の有効範囲は、最も高くて500μmであり、特に好ましくは最も高くて200μmでなければならない。
【0017】
スケール本体の第2辺部では、すなわちキャリア本体を固定するために使用されるこのスケール本体の表面上では、外縁隆起部が、10nmと500nmとの間、特に好ましくは20nmと100nmとの間になければならない。そして、外縁隆起部、すなわち加工によって発生するマイクロクラックの有効範囲は、2,000μm、特に好ましくは500μmに限定されなければならない。
【0018】
この場合、第1辺部又は第2辺部を始点とする当該外縁隆起部の有効範囲は、第1表面又は第2表面の内側の方向の(すなわち、この第1辺部又はこの第2辺部の長手延在部分に対して直角で且つ付随するこの第1表面又はこの第2表面に沿った)表面領域の寸法を意味する。当該有効範囲内では、この第1表面又は第2表面の平坦度が、付随するこの第1辺部又は第2辺部と、これによって生成された材料突出部との加工の結果として損なわれている。この場合、この第1辺部又は第2辺部の加工によって損傷されなかったこの第1表面の領域又はこの第2表面の領域内にも、当該表面の凹凸度を示す、理想的に平坦な表面からの(偶然の)偏差が存在することに基づく。しかしながら、この第1辺部若しくは第2辺部又は当該それぞれの辺部の材料突出部と境を接している表面内では、損傷されなかった(内側の)領域内の表面の凹凸度よりも大きい平坦度の偏差が存在する。したがって、当該外縁隆起部の有効範囲は、表面の平坦度の偏差が(対応する辺部の加工に起因して)当該加工によって損傷されなかった表面領域内よりも大きい−この第1辺部又は第2辺部を始点とする−表面領域の有効範囲を示す。
【0019】
当該平面の凹凸度の対応する減少と同時に、マイクロクラックの数及び大きさが、スケール本体の第1辺部の対応する加工によって減少する。したがって、80nm未満の凹凸度(Rq値)が達成され得る。したがって、当該スケール本体の基体のためにガラスセラミックを使用する場合、この基体の表面が、その加工後も透明である。このことは、当該スケール本体の取り付けの品質を光学式に検査するために利用され得る。さらに、当該辺部の加工時の加工ストレスの減少が、当該スケール本体の直線度を改善する。
【0020】
この場合、スケール本体の第1表面又は第2表面は、必ず付随する第1辺部又は第2辺部を介して、当該第1表面又は第2表面に対してほぼ垂直に延在する側面の外縁部内に直接に移行する必要はない。詳しく言うと、まず、面取りされた斜面部が、第1辺部及び/又は第2辺部に接続し得る。当該斜面部自体が、側面の外縁部内に移行している。
【0021】
上記の種類の方法によって加工されたスケール本体は、請求項12に記載の特徴によって特徴付けられている。
【0022】
当該スケール本体のその他の構成は、請求項12に従属する請求項に記載されている。
【0023】
スケール本体での本発明の方法の使用は、例えば、辺部の品質を確認するために光学顕微鏡を使用する光学的な方法によって(特に、表面の凹凸度及び/又は透過度に基づいて)、又は、例えば白色光顕微鏡を使用して、外縁隆起部を測定することによって、又は、例えば材料の切除によるマイクロクラック分析を用いて、当該マイクロクラックを測定することによって、最終製品に対して様々な方式で検査され得る。
【0024】
本発明のその他の詳細及び利点は、図面に基づく複数の実施の形態の以下の説明で明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】測定目盛を有する第1表面と、この第1表面に面せず、スケール本体をキャリアに固定するために設けられている第2表面とを有する当該スケール本体の概略的な横断面を示す。この場合、複数の辺部が、この第1表面とこの第2表面とに相違して加工されている。
【
図1A】第1辺部の領域内の
図1によるスケール本体の拡大された部分を示す。
【
図1B】第2辺部の領域内の
図1によるスケール本体の拡大された部分を示す。
【
図2】
図1によるスケール本体の別の実施の形態の横断面を示す。
【
図2A】第1辺部の領域内の
図2によるスケール本体の拡大された部分を示す。
【
図2B】第2辺部の領域内の
図2によるスケール本体の拡大された部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、スケール本体1の横断面を示す。このスケール本体1は、広く延在する第1表面11に測定目盛3を有し、このスケール本体1は、この第1表面に面しない広い第2表面でキャリア本体Kに接合するように適合されている。当該2つの表面11,12は、平らに形成されていて、この実施の形態では互いにほぼ平行に延在する。
【0027】
スケール本体1の基体10が、好ましくはその熱膨張係数が限りなく零の近くにある材料、例えばガラスセラミック(ZERODUR(登録商標))から成る。スケール本体1は、例えば、長さ測定用の長尺スケールとして形成され得るか、又は2次元の位置測定用の測定板として形成され得る。したがって、当該測定目盛は、格子目盛でもよく、2次元の場合は、例えば交差格子でもよい。
【0028】
測定目盛3が、付設された走査装置によって、例えば、光学式に、磁気式に又は電磁誘導式に走査され得るように、この測定目盛3は形成されている。スケール本体1の重量及び必要スペースを減少させるため、このスケール本体1の測定目盛3が、スケール本体1の(周設されている)外縁部15に移行する第1表面11の辺部21まで延在する。スケール本体1のこの外縁部15は、このスケール本体1の第1表面11とこのスケール本体1の第2表面12との間に延在する。この外縁部15は、当該表面11,12に対してほぼ垂直に配向されている。この外縁部15は、スケール本体1の側面を包囲する。
【0029】
所定の外輪郭を作製するため、スケール本体1が、例えば、フライス切削加工、研磨若しくは鋸加工によって又はレーザを用いた材料除去によって機械式に加工される。主に、スケール本体1の第2表面12が第2辺部22で外縁部15内に移行するこのスケール本体1のこの第2辺部22とは違う加工が、第1表面11がこのスケール本体1の第1辺部21でこのスケール本体1の外縁部15内に移行するこのスケール本体1の第1辺部21で実行されるように、当該加工は実行される。
【0030】
第1辺部21と第2辺部22との領域内の加工の結果が、
図1A及び1B内に拡大して示されている。
【0031】
材料突出部又は外縁隆起部23が、当該加工によって第1辺部21の領域内に形成されている。この材料突出部又は外縁隆起部23の(第1表面11に対して垂直な寸法として規定された)高さh1が、最大で20nmに、好ましくは10nm未満に限定されている。この材料突出部又は外縁隆起部23の(第1辺部21から第1表面11の内側の方向のこの材料突出部又は外縁隆起部23の寸法として規定された)有効範囲r1は、最も高くて500μmでなければならず、特に好ましくは200μm未満でなければならない。
【0032】
第1辺部21が、測定目盛3を有するスケール本体1の第1表面11を限定するので、これによって、スケール本体1の外縁部15まで延在する測定目盛3を歪ませ得るマイクロクラックの数及び大きさが減少される。
【0033】
スケール本体1を第2表面12にわたってキャリア本体Kに固定する場合にプレストレスを発生させるため、当該辺部22の領域内の材料突出部又は外縁隆起部24が、スケール本体1の対向する第2表面12に必ず要求される。この場合には、材料突出部又は外縁隆起部24の(第2表面12に対して垂直な材料突出部又は外縁隆起部24の寸法として規定された)高さh2が、10nmと500nmとの間、好ましくは20nmと100nmとの間に存在しなければならない。そして、この材料突出部又は外縁隆起部の(第2辺部22から第2表面12の内側の方向のこの材料突出部又は外縁隆起部の寸法として規定された)有効範囲r2は、2,000μmに、好ましくは500μmに限定されなければならない。
【0034】
図2、2A及び2Bには、
図1、1A及び1Bによる配置の別の実施の形態が示されている。この場合、当該相違点は、
図2、2A及び2Bによれば、第1表面11又は第2表面12が、付随する第1辺部21又は第2辺部22で側面の外縁部15に直接に移行していないことにある。より正確に言うと、まず、面取りされた斜面部13又は14がそれぞれ、第1辺部21又は第2辺部22に接続している。さらに、当該斜面部13又は14自体が、(当該それぞれの辺部21,22に接しない当該斜面部13又は14の端部によって)側面の外縁部15内に移行している。すなわち、
図2、2A及び2Bによるスケール本体1の第1辺部21又は第2辺部22はそれぞれ、当該付随する第1表面又は第2表面とそこを始点として斜めに延在する1つの斜面部13,14との間に存在する。同様に、この斜面部13又は14はそれぞれ、側面の外縁部15内に移行している。
【0035】
したがって、ここで示されたスケール本体1の第1表面11の第1辺部21は、この第1表面11を限定する辺部であり、この第1表面11の加工時に、マイクロクラックが、当該第1表面11に設けられている測定目盛3の領域内に発生し得る。
【0036】
また、上記の第2表面12の領域内の第2辺部22は、この第2表面12を限定する辺部であり、この第2表面12の加工時に、この第2表面12から(この表面に対してほぼ垂直に)張り出している材料突出部又は外縁隆起部が形成される。その結果、スケール本体1をその第2表面12によってキャリア本体K上に装着する場合に、まず、この第2表面12が、第2辺部22の材料突出部又は外縁隆起部24によってこのキャリア本体Kの面する表面に接触する。
【0037】
この場合、スケール本体1のそれぞれの片部21,22の加工が、スケール本体1の側面の外縁部15及び/又は第1表面11若しくは第2表面12の境を接する領域の加工と一緒に実行される。さらに、上記の材料突出部又は外縁隆起部を形成するため、スケール本体1のそれぞれの辺部21,22が、当該それぞれの辺部21又は22に適切に、特別に適合されるようにさらに加工されてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 スケール本体
3 測定目盛
10 基体
11 第1表面
12 第2表面
13 斜面部
14 斜面部
15 外縁部
21 第1辺部
22 第2辺部
23 材料突出部
24 材料突出部
K キャリア本体