特許第6803926号(P6803926)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6803926ヘッドルーム制御とEtherCATインターフェースを有するめっき電源
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803926
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】ヘッドルーム制御とEtherCATインターフェースを有するめっき電源
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/00 20060101AFI20201214BHJP
   G05F 1/56 20060101ALI20201214BHJP
   C25D 21/12 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C25D21/00 A
   G05F1/56 310C
   C25D21/12 J
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-560938(P2018-560938)
(86)(22)【出願日】2017年5月18日
(65)【公表番号】特表2019-521247(P2019-521247A)
(43)【公表日】2019年7月25日
(86)【国際出願番号】US2017033337
(87)【国際公開番号】WO2017205182
(87)【国際公開日】20171130
【審査請求日】2019年1月21日
(31)【優先権主張番号】15/163,097
(32)【優先日】2016年5月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】カミングズ, チャールズ エー.
(72)【発明者】
【氏名】ボージェソン, ミカエル アール.
【審査官】 菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第202595304(CN,U)
【文献】 欧州特許出願公開第02315497(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0035507(US,A1)
【文献】 特開平09−003699(JP,A)
【文献】 特開昭56−146898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気めっき装置の動作を制御する方法であって、
目標電気めっきプロセスから、出力電気制御信号の目標値および対応する持続時間の出力電気制御信号スケジュールを生成することと、
少なくとも2つのモードで、前記出力電気制御信号スケジュールに従ってDC電圧を生成するように、交流(AC)−直流(DC)電源ブロックを動作させることであって、
高動作モードにおいて、前記AC−DC電源ブロックが、電気めっきチャネルへの前記出力電気制御信号を直接供給し、
低動作モードにおいて、前記AC−DC電源ブロックが、ヘッドルーム電圧信号を供給して、低域制御トランジスタをバイアスし、低域制御トランジスタが、前記電気めっきチャネルへの前記出力電気制御信号を制御するポストレギュレータとして働くように、
前記AC−DC電源ブロックを動作させることと、
前記低動作モードから前記高動作モードへの遷移中の前記出力電気制御信号の急な変動を制御し、前記低域制御トランジスタの電力消費を最小限にするように、ヘッドルーム電圧を調整することと
を含む方法。
【請求項2】
1つ以上のセンサを使用して、前記電気めっきチャネルに出力される出力電気制御信号のフィードバックを供給することを、さらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記出力電気制御信号が、電圧信号である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記AC−DC電源ブロックを動作させることが、前記AC−DC電源ブロックの動作を制御するメッセージを、コンピュータからEtherCATインターフェースを介して通信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記メッセージが、前記出力電気制御信号が電圧であるか電流であるかを指定し、アナログ制御メッセージが、前記出力電気制御信号の目標値および前記対応する持続時間を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記AC−DC電源ブロックの動作を制御するメッセージを前記出力電気制御信号から電気的に分離するように、電気的分離回路を動作させることを、さらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
較正テーブルを調べて、前記EtherCATインターフェースで受信された前記メッセージから、前記出力電気制御信号を生成する電気回路の対応する動作点を取得することを、さらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記AC−DC電源ブロックが、複数の個別に動作可能な電源ユニットを含み、前記方法が、前記電源ユニット間の電気的相互作用を防止するダイオードを設けることを、さらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記高動作モードと前記低動作モードとの間の遷移を、それより下では前記AC−DC電源ブロックが非線形の動作を示す前記AC−DC電源ブロックの動作点で生じるように、選択することを、さらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
1つ以上のめっきサブシステムであって、前記1つ以上のめっきサブシステムの各々が、スケジュールに従って半導体を電気めっきするために使用されるめっきチャンバの個々のゾーンの電気めっき工程を駆動する制御された量の電気制御信号を生成する1つ以上のチャネルを含む、1つ以上のめっきサブシステムと、
EtherCATインターフェースを介して前記1つ以上のめっきサブシステムと結合されためっき制御コンピュータであって、前記スケジュールを供給するめっき制御コンピュータと、
各チャネルにめっき電位を供給する調整可能な出力を有する交流(AC)−直流(DC)電源ブロックと、
前記EtherCATインターフェースと前記AC−DC電源ブロックとの間の電気的インターフェースを提供して、前記EtherCATインターフェースから受信した前記スケジュールに従った前記AC−DC電源ブロックの動作を可能にする制御回路であって、1つ以上の電流センサ、1つ以上の電流スイッチング素子、および前記めっき制御コンピュータと前記EtherCATインターフェースとの間の電気的相互作用を防止するように配置された分離回路を含む制御回路と
を備える電気めっき制御装置であって、
前記1つ以上のめっきサブシステムが、前記AC−DC電源ブロックが第1の出力電気制御信号を直接供給している高動作モードと、前記AC−DC電源ブロックが低域制御トランジスタをバイアスし、前記低域制御トランジスタが、前記AC−DC電源ブロックに対するポストレギュレータとして働き、前記第1の出力電気制御信号よりも大きさが小さい第2の出力電気制御信号を供給する、低動作モードで動作可能である、電気めっき制御装置。
【請求項11】
前記めっき制御コンピュータが、較正テーブルを格納したメモリを含み、前記較正テーブルが、前記EtherCATインターフェースからのメッセージと前記制御回路の対応する動作設定値との間の変換のためのエントリを含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記AC−DC電源ブロックが、複数の個別に動作可能な電源ユニットを含み、前記装置が、動作中に前記電源ユニット間の電気的相互作用を防止する1つ以上のダイオードを、さらに含む、請求項10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明の分野は、シリコンウェハおよび類似の基板などの基板を電気めっきするための装置、ならびに基板電気めっき装置内の電極に電力を供給する電源およびコントローラである。
【背景技術】
【0002】
[0002]マイクロスケールの半導体および類似のデバイスを製造する際に、プロセス制御機器は、他の大多数の産業と比較してより厳しい要求を満たす必要がある。これは主に、マイクロ電子デバイスを首尾よく製造するために、プロセスパラメータを非常に厳密に制御しなければならないことに、起因する。例えば、ある用途においては、基板上にめっきされた金属層が基板の全領域にわたって均一な厚さを有することが、重要である。均一なめっきプロファイルまたは厚さを達成するためには、電気めっき装置内の電極を介して供給される電流を正確に制御する必要がある。
【0003】
[0003]半導体製造における電気めっき装置は、他のめっき産業において使用されているものと同様の制御システムを使用してきた。一般に、これらの制御システムは、プロセスパラメータを読み取ってフィードバックループを閉じるために、アナログ回路と、マイクロコントローラ、またはDSP(デジタルシグナルプロセッサ)との組み合わせを含み、システムが所望のめっきプロファイルを生成することを可能にする。これらの既知の制御システムは、様々な程度の成功を収めてきた。したがって、改良された制御システムおよび制御方法が必要とされている。
【0004】
[0004]各図面において、同一の参照番号は、同一の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】電気めっき装置の電気制御システムの一例のブロック図である。
図2図1に示すシステムの追加の要素を示すブロック図である。
図3】電気めっき工程を制御する例示的な方法のフローチャートである。
図4】電気めっき工程を制御するための例示的な装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[0009]電気めっきは、電流または電圧信号を用いて、基板の表面上への金属または金属化合物の堆積を制御するプロセスである。電気めっきは、例えば集積回路の製造を含む多くの用途で使用されている。そのような用途では、高精度の金属堆積速度および形状寸法が望ましい。これは、特に半導体基板構成要素上のマイクロ電子構成要素がより小さくなり続けるので、電気めっき電流を正確に制御することを必要とする。
【0007】
[0010]電気めっき電流は、有利には、デジタル的に、すなわちプログラマブルコントローラを介して制御することができる。プログラム可能な出力が、めっき速度を最適化するために使用されてもよい。半導体製造機器を使用して、様々な製品を製造することができる。プログラマブルコントローラは、異なる製品を電気めっきするために機器が容易に使用されることを可能にする。いくつかの製造機器は、2つ以上のアノード、ウェハまたは基板に接続されたカソード、および任意選択で補助電極を有する。この機器では、プログラマブルコントローラは、複数のチャネルを同時に制御しなければならず、さらなる技術的課題を提示する。
【0008】
[0011]電気めっき機器はまた、好ましくは、出力電流の広いダイナミックレンジを正確に制御する能力を有する。電気めっきシステムは、電気めっきを効果的に制御するために、広範囲の出力電流を供給することが期待されることが多い。めっきプロセスに必要な電流は、例えばミリアンペアから数十アンペアまでの広い範囲にわたって変化する。
【0009】
[0012]図1に示すように、電気めっき装置10は、ユーザインターフェースコンピュータ12と、EtherCATインターフェース24およびイーサネットインターフェース22を有するめっき制御コンピュータ20とを含む。単一のめっき制御コンピュータが、EtherCATインターフェースを介して1つ以上のめっきサブシステム60と通信することができる。イーサネットインターフェースは、別のユーザインターフェースコンピュータへの通信など、それほどタイムクリティカルではない機器通信に使用される。各めっきサブシステムは、めっきチャンバ内の1つ以上のアノードを制御する。
【0010】
[0013]各めっきサブシステム60は、1つ以上のチャネル30を有し、各チャネル30は、めっきチャンバ70内のゾーンに接続されている。基板上の半径方向のめっき均一性を制御するために、複数のめっきチャンバゾーンが、使用されてもよい。簡潔にするために、めっきサブシステム60の構成要素は、本明細書ではPPS(めっき電源アセンブリ)と呼ばれる。図1は、3つの異なるPPS構成のサンプルを示す。第1のPPS構成は、4つのチャネルを示し、これらは、1つのめっきチャンバにつき2つのチャネルを使用して、2つのめっきチャンバ70をサポートするように接続されている。第2の例は、単一のめっきチャンバをサポートするための2つのチャネルを有するPPS構成を示す。第3のサンプルは、1つのめっきチャンバにつき3つのチャネルでめっきチャンバをサポートするための3つのチャネルを有するPPS構成を示す。
【0011】
[0014]各チャネルのめっき電位は、調整可能なDC出力を有するAC−DC電源ブロック32によって生成される。これらは、大電流での効率を良くするためにスイッチモード出力を使用する。通常、AC−DC電源ブロックは、0Vまでずっと動作することが困難であるため、低電流での動作が問題になる。
【0012】
[0015]制御盤40は、AC−DC電源ブロックとEtherCATインターフェースとの間をインターフェース接続する回路を含む。AC−DC電源ブロックを動作させることは、めっき制御コンピュータ20から、EtherCATインターフェースを介して、AC−DC電源ブロックの動作を制御するための制御メッセージを通信することを含むことができる。制御メッセージは、出力電気制御信号が電圧であるか電流であるかを指定するデジタル制御メッセージと、目標出力電気制御信号値および対応する持続時間を指定するアナログ制御メッセージとを含むことができる。
【0013】
[0016]図2は、1つのめっきチャネル30のブロック図を示す。制御盤は、1つより多いめっきチャネルのための構成要素を含んでもよい。制御盤上の要素は、以下であり得る。
【0014】
[0017][a]1つ以上の電流センサ。より広い範囲のめっき電流を達成するために、別々の高域電流センサ41および低域電流センサ42を設けてもよいが、単一の電流センサまたは2つより多い電流センサを使用してもよい。
【0015】
[0018][b]高域電流センサ41を通って電流を送るための1つ以上の電流スイッチング素子43。電流スイッチング素子43は、スイッチング素子における低電力消費のためにトランジスタをしっかりとオンにするデジタル出力DO2pによって制御されるMOSFETであってもよい。
【0016】
[0019][c]低域電流センサ42を通って電流を送るための1つ以上の電流スイッチング素子44。これらは、アナログ出力と、トランジスタをAC−DC電源ブロック32と直列にする制御回路とによって制御することができる。このトランジスタは、リニア降圧レギュレータとして機能する。
【0017】
[0020][d]EtherCATデジタルおよびアナログ入出力回路45。めっき制御コンピュータ20で実行されるソフトウェアは、デジタル出力をオンにし、めっき電流または電圧の設定値を制御するようにアナログ出力を設定し、電流および電圧などのめっきプロセスセンサ測定値を報告および記録するためにデジタル入力およびアナログ入力をリードバックすることによって、めっきサブシステム60を制御する。
【0018】
[0021][e]分離回路46。この任意選択の回路は、電気めっき電力供給回路と他のインターフェースおよび制御回路との間の電気的相互作用を防止するために使用される。
【0019】
[0022][f]閉ループ制御を提供するためのオペアンプ回路47および48。回路47は、AC−DC電源ブロック32を制御する。回路48は、低域トランジスタ44を制御する。AC−DC電源ブロックは、通常、オン/オフ制御を有し、これは、デジタル出力DO1pを使用して、めっき制御コンピュータ20で実行されるソフトウェアによって制御することができる。
【0020】
[0023]装置10は、AC−DC電源ブロックがめっきチャンバ内で互いに接続されているときに、それらの間の相互作用を防止するために、ブロッキングダイオード33をさらに含むことができる。同時に、いくつかのゾーンでめっきし、異なるゾーンでめっき除去(de−plate)することが、時には望ましい。ゾーンがめっき除去されるように設計されている場合、ダイオード33は逆になり、AC−DC電源ブロックから来る電圧の極性は逆になる。
【0021】
[0024]システム動作例
【0022】
[0025]オペレータが、所望のまたは目標のめっきプロセスをユーザインターフェースコンピュータ12に入力する。これは、一般に、めっきシステムのチャネルによって使用されるべき所望のモード(電圧または電流など)、設定値(2.5アンペアなど)および持続時間(1分など)を含む。所望のプロセスは、めっき制御コンピュータ20に送られ、めっき制御コンピュータ20は、電気めっきを含む、機器の時間的制約のある電気めっき工程を制御する。
【0023】
[0026]半導体処理機器は、典型的にはロボットによって、基板をめっきチャンバ70に持ってきて、めっき溶液に浸す。めっき制御コンピュータのソフトウェアは、EtherCATコマンドを送信して、PPSのデジタルおよびアナログ出力をオンにして、所望の設定値を通信することによって、PPSを制御する。デジタル出力DOは、動作モード(電流または電圧)、範囲(例えば、高域または低域電流)、および電力供給状態(オンまたはオフ)を制御する。アナログ出力AOは、PPSが供給すべき所望の設定値電流または電圧を表す。めっき制御コンピュータ20は、各特定のチャネルに対する較正結果を考慮して、所望の設定値(例えば、アンペアでのめっき電流)を通信するために使用される、各チャネル、各PPSのモード、および範囲に対する較正テーブルを有する。記載された方法は、EtherCATインターフェース上で受信された制御メッセージから、出力電気制御信号を生成する電気回路のための対応する動作点を取得するために、較正テーブルを調べることを、含んでもよい。めっき制御コンピュータまたはめっきサブシステム60のいずれかに格納されている較正テーブルは、アンペアまたはボルトでのユーザプログラムされた設定値を、制御回路の対応する動作設定値に変換するために、使用される。この変換は、EtherCATインターフェースメッセージが、校正された設定値(例えばDACカウント)であるめっき制御コンピュータで行われてもよいし、EtherCATインターフェースメッセージが目標アンペアまたはボルトであるめっきサブシステムで行われてもよい。
【0024】
[0027]PPSが、複数の電流センサを有する場合、めっき制御コンピュータ20内で動作するソフトウェアは、所望の設定値およびAC−DC電源ブロックの最小動作範囲に基づいて、プロセスの各ステップにどの範囲を使用すべきかを決定する。例えば、高域を用いることが適切である場合には、高域センサ41を通って電流を送る制御が選択され、低域センサ42を通って電流を送る制御入力が、オフにされる。
【0025】
[0028]制御盤上の回路は、AC−DC電源ブロックの制御ピンを駆動して、フィードバック信号を設定値信号に一致させるために、確立された技術(比例、積分および微分制御、すなわちPID制御など)を使用する。例えば、高域電流制御モードにおいてPID制御のI項を実施するために、回路47は、制御出力02i=kf(A0−FBi)を生成するように構成される。ここで、FBi=FB2i、高域電流センサ41からの高域電流フィードバック信号であり、A0は、めっき制御コンピュータ20からの設定値信号である。デジタル出力(DO)が、電流モードの代わりに電圧制御モードを使用すべきであることを知らせる場合、FBi=FB3i、フィードバック検知回路50からの電圧フィードバック信号FB3iである。回路47は、演算増幅器およびアナログマルチプレクサを使用して、所望の制御信号を生成することができる。第1および第2、または高域および低域電流センサは、それぞれ、高域および低域動作中に出力電気制御信号の大きさを示すフィードバック信号を生成することができる。
【0026】
[0029]回路47および48は、分離回路46のどちらの側に実装することもできる。最初の実装では、それらは、分離された側にあった。
【0027】
[0030]PPSが、AC−DC電源ブロックの最小動作範囲を下回る電流を有する電流モード、または低域電流制御回路がより正確なめっき結果を提供すると予想される電流モードを供給するように要求される場合、低域センサ42を通って電流を送るPPS制御信号が選択され、高域センサ41を通って電流を送る制御信号DO2pがオフにされる。
【0028】
[0031]このモードでは、2つの別々の制御ループが使用される。 1つのループが回路47にあり、これは、固定されたドレイン−ソース間電圧(「ヘッドルーム電圧」)を低域トランジスタ44に供給するように、AC−DC電源ブロックを制御する。このモードでは、回路47は、ヘッドルーム電圧検知回路49を使用して、出力02i=khrf(kHRnorm−HRi)制御信号をAC−DC電源ブロック32に供給する。kHRnorm=トランジスタの通常動作における所望のヘッドルーム電圧であり、HRi=測定されたヘッドルーム電圧である。
【0029】
[0032]回路48からの第2のループは、低域トランジスタ44を制御し、それは、AC−DC電源ブロックに対するポストレギュレータとして働き、その出力を、低い電流に対して最適化された電流センサに向ける。
【0030】
[0033]回路48は、制御のために十分に確立された制御技術を使用する。そのため、例えば、低域電流制御モードにおいてPID制御のI項を実施するために、01i=kf(A0−FBi)であり、ここで、FBi=FB1i、低域電流センサの読み取り値であり、A0は、めっき制御コンピュータ20からの設定値信号である。
【0031】
[0034]制御盤は、範囲間のシフト時の過渡事象を最小限に抑えるための回路を含む。めっきプロセス中に速度が変化する半導体めっきの場合、処理は通常、低いめっき電流で始まり、その後に、高いめっき電流にシフトする。AC−DC電源ブロックは、両方の範囲で電力を生成するが、低域トランジスタは、適切な動作のためにいくらかの電圧降下(「ヘッドルーム」)を必要とする。低域で動作している間、これにより、トランジスタは、AC−DC電源ブロックが所望の出力で正確に(または全く)動作できない場合でも、電流を所望の値に調節するように調整を行うことができる。AC−DC電源ブロックの調整速度は通常、低域トランジスタよりも遅いため、低域から高域にスイッチするときに、低域動作にとって望ましいヘッドルームが、AC−DC電源ブロックが、その後の高域ステップにとって望ましい電流よりも高い電流を生成するように、設定されることが、可能である。例えば、1オームの負荷と3ボルトのヘッドルームで、低域電流が2.0アンペア、高域電流が2.5アンペアの場合、必要なPPS出力電圧は、2x1=2Vである。3Vのヘッドルームを実現するためのAC−DC電源ブロックの出力は、2+3=5Vになる。この装置が直ちに高域にスイッチした場合、予想される電流は、5V/1オーム=5Aとなり、所望の2.5Aの設定値より高くなる。これは、AC−DC電源ブロックが、その出力を高域電流ステップに必要なレベルまで下げて調整するまで、所望の設定値を超える電流スパイクをもたらすであろう。
【0032】
[0035]多くの半導体電気めっきプロセスは、設定値より下の電流より、設定値より上の電流に対して、より敏感である。範囲遷移中に電流が所望の設定値を超える可能性を低減するために、高域および低域の電流制御のために別々の制御DACおよび回路が、使用されてもよい。また、低域モードのために所望のヘッドルームを選択するための回路が、設けられてもよい。通常のヘッドルーム設定値kHRnormは、低域トランジスタが出力を制御するためのより多くのマージンを提供する。高域モードに変化する直前に、より低いヘッドルーム設定値kHRminを選択することができる。これにより、AC−DC電源ブロックの出力が、最小のヘッドルームレベルまで減少する(低域トランジスタが負荷の変化に応じて出力を制御するためのマージンが、減少する)。この場合、PPSコントローラが、高域に変化するとき、システムが所望の設定値をオーバーシュートする可能性が低くなる。
【0033】
[0036]低域モードにおいて、低域トランジスタは、AC−DC電源ブロックよりも変化により早く反応することができる。回路は、「設定値より下」の条件よりも「設定値より上」の条件により早く反応するように設計されてもよく、多くの場合これは、プロセスの観点からも望ましく、また低域トランジスタを電力消費限界による損傷から保護するためにも望ましい。さらに、ヘッドルームが閾値レベルを下回ると、制御回路の応答速度のI項(積分項)が、自動的に遅くなる。これにより、十分なヘッドルームがある場合は高速応答が可能になるが、ヘッドルームが不十分な場合は、AC−DC電源ブロックの応答に追従するために応答が遅くなる。
【0034】
[0037]これにより、低域制御回路でI項が蓄積するのを防ぎ、この機能がないと生じるであろうその後のオーバーシュートを防ぐことができる。
【0035】
[0038]利点の例
【0036】
[0039]記載されたアーキテクチャは、たとえその出力がその用途に必要とされる全範囲にわたって調整可能ではないとしても、低コストで、より容易に入手可能な市販のAC−DC電源ブロックの使用を可能にする。これにより、カスタムのAC−DC電源ブロックが不要になり、システムコストが削減される。
【0037】
[0040]リニアポストレギュレータとともにスイッチモードのAC−DC電源ブロックを使用すると、特性の好ましい組み合わせを持つシステムが生成される。大電流が必要な場合、スイッチモード設計により、高い効率が得られ、サイズ、コスト、および熱が削減される。低効率のリニアポストレギュレータは、低電流が必要な場合にのみ使用され、0Vまたは0A出力への調整と、この設計の選択されたヘッドルーム電圧内でのより速い応答時間を可能にする。
【0038】
[0041]低域制御トランジスタの上に既知のヘッドルーム電圧を維持することによって、低域制御トランジスタ内の電力消費が低減され、それによってトランジスタおよびヒートシンクをより小さくすることができる。これにより、システムサイズとコストが削減される。また、低い温度によりトランジスタの寿命が延び、信頼性が向上する。
【0039】
[0042]EtherCATプロトコルは、既知の時間遅延でデータが送受信されることを保証するため、断続的な遅延変動が発生する可能性のある他の通信プロトコルと比較した場合、タイミングの不確実性が減少する。これにより、より再現性のあるプロセス結果が得られる。
【0040】
[0043]EtherCATインターフェースはまた、大規模システム内での複数のPPSコントローラとの通信を非常に簡単にする。PPSコントローラ内の回路が、閉ループ制御を担当するので、ソフトウェアは、プロセス設定値とモードのシーケンスを制御するだけでよい。
【0041】
[0044]PPSコントローラが内部マイクロプロセッサを持たない実施形態では、開示された技術は、PPSコントローラとめっき制御コンピュータとの間の通信プロトコルの問題を除去する。これにより、ソフトウェア開発が簡素化され、ソフトウェアの複雑さが軽減され、開発時間が短縮され、信頼性が向上し、トラブルシューティング時間が短縮される。ソフトウェアの複雑さが軽減されるので、めっき制御コンピュータが、より多くのチャネルを制御することができるか、またはより低い性能のめっき制御コンピュータを利用することができ、システムコストが削減される。
【0042】
[0045]図3は、半導体基板を電気めっきする工程を制御する方法300の例示のフローチャートを示す。
【0043】
[0046]方法300は、302において、目標電気めっきプロセスから、目標出力電気制御信号値および対応する持続時間の出力電気制御信号スケジュールを生成することを含む。
【0044】
[0047]方法300は、304において、少なくとも2つのモードで、出力制御スケジュールに従ってDC電圧を生成するように、交流(AC)−直流(DC)電源ブロックを動作させることを含む。
【0045】
[0048]方法300は、高動作モードで、AC−DC電源ブロックが、電気めっきチャネルへの出力電気制御信号を直接供給し、低動作モードで、AC−DC電源ブロックが、低域制御トランジスタ段をバイアスするためのヘッドルーム電圧信号を供給し、低域制御トランジスタが、電気めっきチャネルへの出力電気制御信号を制御するためのポストレギュレータとして働くように、AC−DC電源ブロックの動作を制御すること306を含む。
【0046】
[0049]方法300は、308において、低動作モードから高動作モードへの遷移中における出力電気制御信号の急な変動を制御するためにヘッドルーム電圧を調整することを含む。ヘッドルーム電圧の選択的制御は、例えば、必要とされる高域電圧が、前の低域ステップ+通常のヘッドルームよりも小さい場合に、潜在的なオーバーシュートを低減するために、低動作モードから高動作モードへスイッチする前に瞬間的にヘッドルーム電圧を低減することであってもよい。
【0047】
[0050]図4は、半導体基板の電気めっきを制御するために使用され得る例示的な電気めっき制御装置400を示す。
【0048】
[0051]装置400は、1つ以上のめっきサブシステム(402)を含み、1つ以上のめっきサブシステムの各々が、スケジュールに従って半導体ウェハを電気めっきするために使用されるめっきチャンバの個々のゾーン(典型的にはアノード)の電気めっき工程を駆動する制御された量の電気制御信号を生成する1つ以上のチャネルを含む。いくつかの実施形態において、めっきサブシステム402は、上述のめっきサブシステム60と同様であってもよい。
【0049】
[0052]装置400は、EtherCATインターフェースを介して1つ以上のめっきサブシステムと結合されためっき制御コンピュータ404を含み、めっき制御コンピュータが、スケジュールを提供する。いくつかの実施形態において、めっき制御コンピュータ404は、上述のめっき制御コンピュータ20と同様であってもよい。
【0050】
[0053]装置400は、各チャネルにめっき電位を供給する調整可能な出力を有する交流(AC)−直流(DC)電源ブロック(406)を含む。いくつかの実施形態において、AC−DC電源ブロックは、本明細書に記載のAC−DC電源ブロック32と同様であってもよい。
【0051】
[0054]装置400は、EtherCATインターフェースとAC−DC電源ブロックとの間に電気的インターフェースを提供して、EtherCATインターフェースから受信したスケジュールに従ってAC−DC電源ブロックの動作を可能にする制御回路408を含み、制御回路は、1つ以上の電流センサ、1つ以上の電流スイッチング素子、およびめっき制御コンピュータとEtherCATインターフェースとの間の電気的相互作用を防止するために、すなわちそれらを互いに分離するために配置された分離回路を含む。いくつかの実施形態において、制御回路408は、本明細書に記載の制御盤40として具現化されてもよい。
【0052】
[0055]1つ以上のめっきサブシステムは、AC−DC電源ブロックが第1の出力電気制御信号を直接供給している高動作モードと、AC−DC電源ブロックが、AC−DC電源ブロックに対するポストレギュレータとして働き、第1の出力電気制御信号よりも大きさが小さい第2の出力電気制御信号を供給する低域制御トランジスタをバイアスする低動作モードで動作可能である。
【0053】
[0056]いくつかの実施形態において、電気めっき装置を制御する方法は、それぞれ高域および低域で線形可変電気出力信号を出力するために、高域回路および低域回路の一方を選択的に動作させる電気的スイッチを使用して、閾値を超える電圧を出力するときに線形動作を示し、閾値未満の電圧を出力するときに非線形動作を示す可変出力直流(DC)電源から線形可変電気出力信号を生成することを含む。高域では、DC電源の出力を直接使用することによって、線形可変電気出力信号が生成される。低域では、トランジスタへの一定のドレイン−ソース間電圧を維持するようにDC電源を制御して、そのトランジスタをDC電源のためのポストレギュレータとして使用することによって、線形可変電気出力信号が生成される。この方法は、出力電気制御信号の急な変動を制御するために、低域回路から高域回路にスイッチする前に瞬間的にこの一定値を減少させることを、さらに含むことができる。
【0054】
[0057]全範囲にわたって線形とは限らない可能性がある既製の電源ブロックを使用して電気めっき電流を正確かつ線形に制御するための様々な実施形態および技術が説明されてきた。いくつかの実施形態において、正確な制御は、少なくとも2つの動作モード、すなわちDC電源ブロックの線形動作範囲に対応する高モードと、可変線形低域出力電流を生成するためにトランジスタ回路を使用して、DC電源ブロックの出力が線形に調節される低モードとの間の電気的スイッチングを使用することによって、達成される。低モードと高モードとの間の遷移は、遷移中の電流変動を最小限に抑えるために、スイッチングの前に瞬間的にDC電源ブロック出力を調整することによって、慎重に制御することができる。高動作モードと低動作モードとの間の遷移は、それより下ではAC−DC電源ブロックが非線形の動作を示すAC−DC電源ブロックの動作点で生じるように選択され得る。高域および低域を有するシステムは、有利なことには、単一の範囲のみを有するシステムよりも、低い設定値におけるより良好な精度および応答を有する。
【0055】
[0058]AC−DC電源ブロックは、複数の個別に動作可能な電源ユニットを含むことができ、電源ユニット間の電気的相互作用を防止するためにダイオードを設けることができる。
図1
図2
図3
図4