(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2016−110383号公報の触覚伝達装置では、視覚情報表示部と触覚情報呈示部とが個別に配置されており、実際に触っている部分と対象物の画像を表示する部分とは異なるため、クロスモーダル効果による視覚的な質感の向上は得られない。
一方、特開2013−501992号公報および特開2004−145456号公報では、画像情報出力手段と触覚情報出力手段とを積層して、画像表示と重ねて触覚情報を出力することができるため、物体の凹凸形状による材質感をよりリアルに感じる効果を得ることができる。しかしながら、画像情報出力手段と触覚情報出力手段とが積層されて構成されるものであるため、触覚情報出力手段を簡単に差し換えることはできない。すなわち、呈示できる触覚情報が制限され、多種多様な触感に対応させるのは困難である。また、画像情報出力手段に表示される画像がユーザ自身の手の影になってしまい。実際に触っている箇所の画像が見えづらくなるという不具合がある。さらに、対象物が三次元物体である場合への応用は難しい。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、二次元および三次元の対象物について、よりリアルな物質感、あるいは触感が体感可能な視覚触覚統合呈示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の視覚触覚統合呈示装置は、ハーフミラーと、
ハーフミラーのミラー面側に配置された、対象物の視覚情報を呈示する視覚呈示体と、
ハーフミラーのミラー面を挟んで、視覚呈示体と対向して、ハーフミラーと視覚呈示体との間の光学距離と等しい光学距離に配置される、触覚情報を呈示する触覚呈示体とを備えた視覚触覚統合呈示装置である。
【0008】
本発明の視覚触覚統合呈示装置は、触覚呈示体を触っているユーザの手指を照明する手指照明具を備えていることが好ましい。
【0009】
上記手指照明具は、ミラー面と触覚呈示体との間に配置された、ミラー面および触覚呈示体の間にミラー面および触覚呈示体側への広がりが制限された照明光を照射することが好ましい。
【0010】
また、上記手指照明具は、異なる2方向から照明光を照射することが好ましい。
【0011】
手指照明具の照射光の波長は単色とすることが好ましい。
【0012】
本発明の視覚触覚統合呈示装置において、視覚呈示体は、対象物の画像を表示する画像担持体であってもよいし、三次元物体からなる対象物そのものであってもよい。視覚呈示体が画像担持体である場合、「対象物の虚像」とは、対象物の画像の虚像を意味する。なお、画像担持体によって表示される画像は、静止画であっても動画であってもよい。また、ディスプレイ等に表示された画像であってもよいし、紙などに描かれた画像であってもよい。
【0013】
なお、ミラー面と視覚呈示体との光学距離は、視覚呈示体が画像担持体である場合、その画像表示面からミラー面までの光学距離であり、視覚呈示体が三次元物体である場合、その視覚呈示体の最もミラー面側の点からミラー面までの光学距離である。
【0014】
本発明の視覚触覚統合呈示装置において、触覚呈示体は、表面にテクスチャ構造を有する平面体もしくは三次元物体であってもよい。
【0015】
なお、ミラー面と触覚呈示体との光学距離は、触覚呈示体が平面体である場合、ミラー面から触覚呈示体の面までの光学距離であり、触覚呈示体が三次元物体である場合、その触覚呈示体の最もミラー面側の点からミラー面までの光学距離である。
【0016】
本発明の視覚触覚統合呈示装置は、触覚呈示体が、人工皮膚感覚呈示デバイスを備えていてもよい。
皮膚感覚とは、皮膚にある受容器に基づく感覚の総称であり、触覚、圧覚、温覚、冷覚、痛覚を含む。人工皮膚感覚呈示デバイスとは、皮膚感覚を刺激する静電気、通電、振動、超音波、温度変化などを人工的に生じさせるデバイスである。
【0017】
本発明の視覚触覚統合呈示装置は、視覚呈示体としてディスプレイを備え、ディスプレイと人工皮膚感覚呈示デバイスとに接続され、ディスプレイに表示される画像の変化に連動して人工皮膚感覚呈示デバイスによる皮膚感覚呈示状態を変化させる情報処理部を備えていることが好ましい。
【0018】
本発明の視覚触覚統合呈示装置は、ユーザの手指の位置を検知するセンサを備え、情報処理部が、センサにより取得された位置情報に基づいて、人工皮膚感覚呈示デバイスによる皮膚感覚呈示状態を制御するように構成されていることが好ましい。
【0019】
本発明の上記視覚触覚統合呈示装置は、視覚呈示体として情報端末を備えてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の視覚触覚統合呈示装置は、ハーフミラーと、ハーフミラーのミラー面側に配置された、対象物の視覚情報を呈示する視覚呈示体と、ハーフミラーのミラー面を挟んで、視覚呈示体と対向して、ハーフミラーと視覚呈示体との光学距離と等しい光学距離に配置される、触覚情報を呈示する触覚呈示体とを備えている。係る構成により、対象物の虚像を、触覚呈示体に一致させて表示することができるので、ユーザは対象物の虚像が表示された触覚呈示体を触りながら、虚像を視覚的に認識するため、視覚と触覚が同時に刺激されて、クロスモーダル効果を得て、対象物の質感をよりリアルに体感することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態の視覚触覚統合呈示装置の概略構成を斜視図であり、
図2は、本実施形態の視覚触覚統合呈示装置1の要部位置関係を示す側面図である。
【0023】
図1、
図2に示すように、本実施形態の視覚触覚統合呈示装置1(以下において、単に「統合呈示装置1」とする。)は、ハーフミラー20と、ハーフミラー20のミラー面22側に設けられた視覚呈示部40と、ハーフミラー20のミラー面22を挟んで、光学的に対称に位置する触覚呈示部50とを備えている。視覚呈示部40には、対象物の視覚情報を呈示する視覚呈示体30が配置されている。そして、触覚呈示部50には、ミラー面を挟んで視覚呈示体30と等しい光学距離に配置された触覚呈示体10が備えられており、統合呈示装置1は対象物の虚像を、触覚呈示体10に一致させて表示するように構成されている。ここで、ミラー面22は、入射された光の一部を反射し、一部を透過する面である。
【0024】
ここで、視覚呈示部40は、統合呈示装置1における視覚呈示体30を配置するための部位であり、同様に、触覚呈示部50は、統合呈示装置1において触覚呈示体10を配置するための部位である。
【0025】
本実施形態において、視覚呈示部40には、視覚呈示体30が載置される支持板41が備えられており、使用時にユーザが任意の視覚呈示体を支持板41に載置することができる。
【0026】
統合呈示装置1は、触覚呈示体10が載置される支持台5とその支持台5上にハーフミラー20および支持板41を所定の位置に支持する支持軸6を備えている。ハーフミラー20と支持板41は支持軸6に沿って上下に移動可能に構成されていることが好ましい。
【0027】
本発明において、視覚呈示体は、対象物の画像を表示することにより対象物の視覚情報を呈示する画像担持体であってもよいし、三次元物体である対象物そのものであってもよい。画像担持体は、その画像表示面に画像を表示するものであれば、特に制限はないが、例えば、一面に画像が描かれたシートなどの紙媒体であってもよいし、画像を表示するディスプレイであってもよい。ディスプレイとしてはフラットパネルディスプレイが適する。ディスプレイは、別体のコンピュータ本体に無線もしくは有線で接続され、コンピュータから受信した画像を表示するものであってもよいし、タブレット型コンピュータあるいはスマートフォンなどの携帯型情報端末のディスプレイであってもよい。
【0028】
本発明において、触覚呈示体は平面体であってもよいし、三次元物体であってもよい。表面の材質には、特に制限はなく、呈示させたい触覚に応じて、金属、木、プラスチック、布あるいはゴムなどを用いることができる。また、表面にテクスチャ構造を有していてもよい。ここで、平面体とは、シート状あるいは薄い板状の部材をいうものとする。なお、互いに異なる触覚情報を呈示する複数の触覚呈示体を用意しておき、視覚呈示体によりその視覚情報が呈示される対象物に応じて、ユーザが触覚呈示部に適宜選択して配置するようにしてもよい。
【0029】
本実施形態において、視覚呈示体30は、対象物の二次元画像を表示する画像担持体であり、以下の本実施形態の説明においては、視覚呈示体30を画像担持体30と言い換える。画像担持体30は、画像を表示する画像表示面32を有し、その画像表示面32が支持板41側となるように配置されている。支持板41は画像表示面32に表示される画像をミラー面22に映すことができる透明度を有するものであり、ガラスやアクリル等の可視光に透明な透明基板であることが好ましい。ガラスやアクリル板の表面の反射率は4%程度あり、画像表示面の明るさが板を介することにより低減されてしまうため、支持板41の両面42、44(
図2参照)は反射防止処理が施されていることが好ましい。支持板41の両面42、44の可視光(380〜780nm)に対する反射率は、例えば1%未満であることが好ましい。
【0030】
触覚呈示体10は、例えば、ゴム素材からなるシートである。また、支持台5上に備えられている以外に、プラスチックシート10A、ステンレス板10B、コルク板10C…など触感の異なる複数のシートを備えている。
【0031】
本実施形態においてハーフミラー20のミラー面22は、画像担持体30側の面にあり、触覚呈示体10の表面12、ミラー面22および画像表示面32は、画像表示面32とミラー面22との光学距離h
1と、ミラー面22と触覚呈示体10の表面12との光学距離h
2とが等しくなるように位置される。すなわち、ミラー面22の任意の点Oから、この任意の点Oを通ってミラー面22と垂直に交わる垂線の画像表示面32との交点Aまでの光学距離h
1と、同一垂線の触覚呈示体10の表面12との交点Bまでの光学距離h
2とが等しい。
【0032】
本例において、画像表示面32とミラー面22との光学距離h
1は、支持板41の厚みd
1と屈折率n
1との積n
1・d
1と、支持板41の下面44とミラー面22との距離L
1との和すなわち、h
1=n
1・d
1+L
1で表される。また、ミラー面22と触覚呈示体10の表面12との光学距離h
2は、ハーフミラー20の厚みd
2と屈折率n
2との積n
2・d
2と、ハーフミラー20の下面24と表面12との距離L
2との和、すなわち、h
2=n
2・d
2+L
2で表される。
【0033】
上記の光学距離h
1とh
2が等しくなるようにハーフミラー20の位置および画像表示面32の位置が調整されることにより、
図2に示すように、ユーザがハーフミラー20の上方(ミラー面22側)からハーフミラー20を通して触覚呈示体10を見たときに、画像担持体30の画像表示面32に表示された画像の虚像が、触覚呈示体10が配置されている位置に一致して表示される。ここで、一致して表示されるとは、虚像の像面が触覚呈示体10の表面12に位置していることをいう。なお、この触覚呈示体10の表面12は、ユーザが触り、触感を感じる面である。
【0034】
このとき、触覚呈示体10に画像が直接投影されているかのように見えるが、実際には、ユーザは、ミラー面22で反射された画像の鏡像を見ており、画像担持体30から触覚呈示体10に像が直接投影されているわけではない。ユーザは画像表示面32に表示されている画像の虚像を触覚呈示体10上に視認していることになる。したがって、画像担持体30は、対象物の鏡像画像を視覚情報として画像表示面32に表示する必要がある。
また、画像担持体30の画像表示面32の明るさは、ハーフミラー20により反射された鏡像(虚像)の明るさによって、触覚呈示体10自体の表面が視認されない程度の明るさとなるように調整することが好ましい。
なお、以下において、ユーザがハーフミラー20のミラー面側から触覚呈示体10を見る際の目の位置を観察部60と称する。
【0035】
ユーザは、画像担持体30が表示する画像(対象物の像)の虚像を触覚呈示体10の表面12に観察しつつ、その触覚呈示体10の表面12を手の指(手指)75で触ることにより、対象物を実際に触っているような感覚を得ることができる。視覚と触覚による相互作用により、視覚情報が触覚情報により補完され、ユーザは視覚のみの場合と比較して虚像をよりリアルに対象物を認識することができ、また、触覚情報が視覚情報により補完され、ユーザは触覚のみの場合と比較してよりリアルな触感を体感することができる。
【0036】
なお、対象物が金属製であれば、触覚呈示部50にステンレス板10Bを載置し、対象物がプラスチック製画像であれば、触覚呈示部50にプラスチックシート10Aを載置する等、対象物の画像から視覚的に得られる質感と、触覚呈示体10から触覚的に得られる質感を一致させることにより、ユーザはさらにリアルな物質感を体感することができる。
【0037】
ハーフミラー20は、ミラー面22とミラー面22に対向する面24を備えており、ミラー面22と対向する面24が互いに平行に配置された部材である。ハーフミラー20は、ミラー面22に入射された光の少なくとも一部を反射し、一部を透過させるものであればよく統合呈示装置1における光学系の構成に応じて、ミラー面22の反射率は1%以上99%以下の範囲で適宜定めればよいが、4%以上85%以下の範囲とすることがより好ましい。
【0038】
ハーフミラー20のミラー面22と対向する面24は、反射防止面とされていることが好ましい。反射防止面の反射率は、観察部から視認されるミラー面に対向する面24での反射による像が、ミラー面22での反射による像に二重映りしない程度の反射率であればよく、例えばミラー面22の反射率の0.1倍未満とする。
【0039】
反射防止面は、可視域の光に対する反射率が1%未満とすることが好ましく、0.5%以下とすることがより好ましい。このような反射率1%未満となる反射防止面は、誘電多層膜の形成、あるいは微細凹凸構造層の形成などの公知の反射防止処理により得ることができる。
【0040】
なお、ミラー面22における反射率、およびミラー面に対向する面24における反射率は、必ずしも面全域に亘って均一でなくてもよい。
【0041】
図1に示した実施形態において、ハーフミラー20は、視覚呈示部40側にミラー面22を備えたものであるが、ミラー面22を触覚呈示部50側に備えていてもよい。この場合も、視覚呈示体30により呈示された画像の虚像が触覚呈示体10に一致するように両者の光学距離を調整すればよい。
【0042】
なお、本発明において、「光学距離が等しい」とは厳密に同一であることを要するものではなく、ユーザが触覚呈示体に触れる際に、ユーザが触れている面(触覚呈示体の表面)と、ユーザにより視覚的に認識される虚像の位置にズレを感じない程度に一致していればよい。したがって、触覚呈示体10に違和感なく鏡像が一致して表示されていれば、上述した画像表示面32とミラー面22との光学距離と、触覚呈示体10の表面12とミラー面22との光学距離は等しいと看做してよい。
【0043】
本発明の統合呈示装置によれば、触覚呈示体の自由度が高く、様々な対象物に対応させることが可能である。また、触覚呈示体に表示されているのは虚像であるため、ユーザの手指による影ができず、ユーザは高い臨場感を得ることができる。
【0044】
さらに、本実施形態の統合呈示装置1は、触覚呈示体10に接触するユーザの手指75を照明する手指照明具70を備えている。
【0045】
既述の通り、触覚呈示体10に表示される虚像にはユーザの手指による影は生じない。一方で、ユーザの手指に虚像が一部重なり、ユーザの手指に虚像の一部が表示される場合がある。手指照明具70によって、ユーザの手指に表示される虚像の輝度と比較して十分高い輝度で手指を照明することにより、手指に表示された虚像をユーザに視認できないようにすることができる。手指が照明されて明るくなることにより、虚像の輝度が相対的に低下し、ヒトの目に認知されなくなるからである。
このように手指照明具70を備えて手指を照らし、手指に表示されている虚像が見えず、ユーザ自身の手指が視認され状態とすることにより、触覚呈示体10を触る感覚がさらに増し、臨場感が向上する。
【0046】
手指照明具70は、ミラー面22および触覚呈示体10を照明することなく、ユーザの手指75を照明するように構成された照明具であることが好ましい。ここで、「ミラー面22および触覚呈示体10を照明することなく」とは、照明光の主光線がミラー面および触覚呈示体10に入射されないことを意味し、上記効果に影響のない範囲で照明光の一部がミラー面22あるいは触覚呈示体10に入射される場合までを排除するものではない。
【0047】
本実施形態における手指照明具70は、統合呈示装置1の高さ方向においてミラー面22と触覚呈示体10との間に配置されて、ミラー面22と触覚呈示体10との間に、ミラー面22側および触覚呈示体10側への広がりが制限された光を照射する。ここでは、支持台5に略平行に進行する光72を照射している。手指照明具70は、ユーザの手指を照明することができればよく、手指をユーザの前方から照明する、もしくは手指を側方から照明するように設けられていることが好ましい。
図1に示すように、異なる2方向(前方と側方)にそれぞれ設置されていてもよい。
【0048】
手指照明具70からの出射光72は、支持台5に平行なシート状の光であることが好ましく、そのようなシート状の光はLED光源と、シリンドリカルレンズとを組み合わせて実現することができる。LED光源から出射された光をシリンドリカルレンズの作用により支持台5に略平行なシート状に広がる光として照射させることができる。
【0049】
手指照明具70に備えられる光源は、白色光源を用いてもよいが、単色とすることが好ましい。単色の光源としては、赤色もしくは緑色の光源が好ましく、例えば、650nm超〜700nmにピーク波長を有する赤色LED、もしくは500nm〜650nmにピーク波長を有する緑色LEDを用いることができる。赤色もしくは緑色により照明された手指は、ユーザに不快な感覚を生じさせることなく、かつ手指をはっきりと見せることが可能となるからである。
【0050】
図3は、第2の実施形態の統合呈示装置2の概略構成を示す斜視図であり、
図4はその側面図である。第1の実施形態の統合呈示装置1と同一の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。以下の図面において同様とする。
【0051】
第2の実施形態の統合呈示装置2は、第1の実施形態の統合呈示装置1においてさらに、視覚呈示部40に照明光を照射する照明部80を備えている。視覚呈示体が、表面に対象物の像が描かれた紙等の画像担持体、あるいは対象物自体である場合などであっても、視覚呈示体に照明光を照射することにより、その像をミラー面22に明るく映すことができる。本例では、視覚呈示部40に対し、上方から照明光を照射するように構成されているが、視覚呈示部40に対し、下方から照明光を照射するように構成されていてもよい。照明部80は、蛍光灯あるいは白色LED等により構成することができる。
【0052】
また、本実施形態の統合呈示装置2においては、視覚呈示部40に配置されている視覚呈示体が対象物35自体であり、触覚呈示部50に配置されている触覚呈示体15も同様に三次元物体である。
図3に示すように、支持板41上に配置された対象物35は、断面L字形状を有する三次元物体である。対して、触覚呈示部50に呈示された触覚呈示体15は直方体形状の三次元物体である。
【0053】
対象物(視覚呈示体)35および触覚呈示体15が共に三次元物体であるため、ここでは、その視覚呈示体35の最もミラー面22側の点からミラー面22までの光学距離と、触覚呈示体15の最もミラー面22側の点からミラー面22までの光学距離が等しくなるように、支持板41およびハーフミラー20の位置が調整されている。ここでは、対象物35の最もミラー面22側の点は支持板41の上面42にあり、触覚呈示体15の最もミラー面22側の点は触覚呈示体15の表面17にある。
【0054】
このように視覚呈示体が三次元物体である対象物35自体であるとき、観察部60において支持板41の下面44から視認される対象物35の虚像が、触覚呈示体15が配置されている位置に一致して観察される。すなわち、本統合呈示装置2は、視覚呈示体35の虚像を触覚呈示体15に一致させて表示する。
【0055】
本装置2によって、第1の実施形態の統合呈示装置1の場合と同様に、ユーザは、触覚呈示体15の表面17を手指(手の指)で触り、触覚呈示体15の表面17の触感を感じながら、触覚呈示体15に一致して表示される対象物35の虚像を見ることにより、対象物35を実際に触っているような感覚を得ることができる。
【0056】
図5は、本発明の第3の実施形態の視覚触覚統合呈示装置3の概略構成を示す側面図である。
第1および第2の実施形態の視覚触覚統合呈示装置1、2においては、触覚呈示体10を支持する支持台5を備えた構成について説明したが、本実施形態の視覚触覚統合呈示装置3は、支持台5を備えていない。支持台5を備える代わりに、既存の机に設置するための万力固定部8を支持軸6の底部に備えており、既存の机の天板7を万力で挟み固定することにより、統合呈示装置3を設置して使用することができる。
【0057】
また、本実施形態の統合呈示装置3においては、第1の実施形態の統合呈示装置1の視覚呈示部40に備えられている支持板41の代わりに、
図5に示すように、画像担持体の一形態であるフラットパネルディスプレイ31(以下においてディスプレイ31という。)を、その画像表示面32が直接ハーフミラー20に対向するように保持する画像担持体ホルダー45を備えている。画像担持体ホルダー45は、
図5に示すように、少なくとも一辺に開口を有し、ディスプレイ31をその開口部からスライド挿入させて、その少なくとも対向する二端を下面から支えるものである。なお、画像担持体ホルダーとしては、画像担持体の少なくとも対向する二端を下面から支える枠部材などであってもよい。
【0058】
本実施形態においても、画像表示面32とミラー面22との光学距離h
31と、ミラー面22と触覚呈示体15の表面17との光学距離h
32とが等しくなるようにミラー面22、画像表示面32の位置が調整されている。
【0059】
本例において、画像表示面32とミラー面22との光学距離h
31は、画像表示面32とミラー面22との距離L
1、すなわちh
31=L
1であり、ミラー面22と触覚呈示体15の表面17との光学距離h
32は、ハーフミラー20の厚みd
2と屈折率n
2との積n
2・d
2と、ミラー面22と対向する面24と触覚呈示体15の表面17との距離L
2との和、すなわち、h
32=n
2・d
2+L
2で表される。
【0060】
上記の光学距離h
31とh
32が等しくなるようにハーフミラー20の位置および画像表示面32の位置が調整されることにより、観察部からは、画像担持体30の画像表示面32に表示された画像の鏡像(虚像)が触覚呈示体10の表面に一致して観察される。
【0061】
本実施形態の統合呈示装置3においては、さらに、ユーザの手指の位置を検知する位置検出センサ90を備えている。また、触覚呈示体10が、人工皮膚感覚呈示デバイス18を備えている。さらに、ディスプレイ31、位置検出センサ90および触覚呈示体10に接続された情報処理部100を備えている。
位置検出センサ90としては、公知のモーションキャプチャデバイスを適宜用いることができる。
【0062】
人工皮膚感覚呈示デバイス18とは、ヒトの皮膚にある受容器にもとづく感覚、具体的には、触覚、圧覚、温覚、冷覚および痛覚の少なくとも1つを刺激する信号を生じさせるデバイスである。触覚呈示体10の表面17のユーザが触れる部分に、静電気、通電、振動、超音波、温度変化などを生じさせることにより、皮膚感覚を刺激して、ユーザに、対象物をよりリアルに体感させることが可能となる。
【0063】
具体的な人工皮膚感覚呈示デバイス18としては、温度変化を生じさせるヒーターあるいはクーラー、振動を生じさせる圧電素子、静電素子、さらには超音波を発生する超音波発生素子などが挙げられ、これらを1つもしくは複数組み合わせて備える。
【0064】
なお、上記の触覚呈示体10の表面の状態を変化させる触覚呈示体10に備えられる人工皮膚感覚呈示デバイスの他に、触覚呈示体10の外部に配置される、さらなる人工皮膚感覚呈示デバイスを備えていてもよい。例えば、触覚呈示部50に位置するユーザの手指に、温風、冷風などを吹き付けるブロア、ユーザの手指表面に直接振動触覚を与える超音波振動子アレイなどが挙げられる。
【0065】
情報処理部100は、ディスプレイ31によって表示する画像表示と、人工皮膚感覚呈示デバイス18により呈示する触覚情報を連動させ、画像に応じた最適な触感を生じさせるように制御する制御装置である(
図6参照)。情報処理部100は、中央処理装置(CPU)、主記憶装置、補助記憶装置、入出力インターフェースおよび通信インターフェースなどの周知のハードウェア構成を備えたコンピュータに実装されている。コンピュータにはディスプレイ31および人工皮膚感覚呈示デバイス18を連動して制御するための所定のプログラムがインストールされており、このプログラムを実行することにより、画像表示と触覚情報を連動させる制御が実現される。情報処理部100は、ディスプレイ31を備えたタブレット型コンピュータなどの携帯型情報端末に実装されていてもよい。
【0066】
対象物が振動体である場合、人工皮膚感覚呈示デバイス18として振動板を備えていれば、情報処理部100の制御により、ディスプレイ31に振動体の画像(振動している振動体の動画)を表示すると共に、振動板を振動させて触覚呈示体10の表面を振動させることができる。これにより、触覚呈示体10を触るユーザに、あたかも振動体に触っているような錯覚を与えることができる。
【0067】
人工皮膚感覚呈示デバイス18として、特開2013−501992号公報に記載のトポロジ表示ユニット、あるいは特開2004−145456号公報に記載の触覚情報出力手段などを適用してもよい。また、その他、水平振動アレイ、垂直振動アレイ、凹凸回転体、超音波振動子、ヒーター、ペルチエ素子(冷却素子)あるいは電極アレイなどを適用することもできる。これらを適用すれば、対象物に応じて触覚呈示体10の表面形状を変化させることができる。
【0068】
また、情報処理部100は、位置検出センサ90により検出されたユーザの手指の位置情報に応じてディスプレイ31における画像表示および人工皮膚感覚呈示デバイス18による皮膚感覚呈示状態の一方、もしくは両方を制御する。
【0069】
本実施形態のように、視覚情報と触覚情報を連動させることにより、ユーザはさらにリアルな臨場感を体感することができる。
【0070】
本発明の統合呈示装置においては、スピーカーを備えてもよく、画像表示に連動させて音を発生させるようにしてもよい。スピーカーとしては、視覚呈示体の一形態であるタブレット型コンピュータあるいはスマートフォンなどに内蔵のスピーカーを用いてもよい。
視覚情報、触覚情報に加え、聴覚情報を連動させて呈示することで、視覚、触覚および聴覚が同時に刺激されて、クロスモーダル効果によりユーザに高い臨場感を与えることができる。
【0071】
上記各実施形態の視覚触覚統合呈示装置においては、対象物の像が表示される画像表示面、ミラー面および触覚呈示体の表面の位置関係は、互いに平行な構成であるが、これらは平行でなくても構わない。
図7は、本発明の視覚触覚統合呈示装置における画像表示面、ミラー面および触覚呈示体の表面の配置の他の例を示す模式図である。
【0072】
図7においては、画像表示面32と触覚呈示体10の表面12とがミラー面22に対して光学的に対称に配置されている。すなわち、画像表示面32と触覚呈示体10の表面12との対応する位置同士のミラー面22に対する光学距離が等しくなるように配置されている。画像表示面32の所定位置と対応する触覚呈示体の表面12の位置とは、ミラー面22の任意の点O
1に垂直な1本の垂線K
1が画像表示面32と交わる点A
1に対して、その垂線K
1が触覚呈示体10の表面12と交わる位置B
1である。ミラー面22の他の任意の点O
2に垂直な垂線K
2が画像表示面32と交わる点A
2に対応する触覚呈示体10の表面12の位置は、その垂線K
2が触覚呈示体10の表面12と交わる点B
2である。画像表示面32と触覚呈示体10の表面12との対応する位置同士のミラー面22に対する光学距離が等しい関係にあるとき、A
1O
1の光学距離=B
1O
1の光学距離、A
2O
2の光学距離=B
2O
2の光学距離、である。
【0073】
画像表示面32とミラー面22との光学距離、および触覚呈示体10の表面12とミラー面22との光学距離がその物理的距離と等しい場合には、
図7に示すように、画像表示面32、触覚呈示体10の表面12およびミラー面22上の線を延長すると、3つ延長線は一点Pで交わる。そして、3つの延長線はこの点Pを頂点とした二等辺三角形の等しい二辺61、62とその二辺61、62によりなされる角を等分する中線63を構成するものとなる。
【0074】
上記の構成の場合にも観察部60から視覚呈示体30の画像表示面32に表示された画像の虚像が、触覚呈示体10の表面12の位置に一致して見え、第1〜第3の実施形態の統合呈示装置と同様の効果を得ることができる。
【0075】
本発明の視覚触覚統合呈示装置は、
図8に示すようなインターネットに接続して遠隔地と通信可能なシステムに適用することができる。
例えば、視覚触覚統合呈示装置1において、視覚呈示体として情報端末38を備え、この情報端末38によりインターネットによる通信が可能なシステム101を構成することもできる。情報端末38は視覚呈示体として統合呈示装置1の視覚呈示部40の支持板41上に配置される。この情報端末38の無線もしくは有線の通信機能によりインターネットに接続して、インターネット上の他の情報端末39からの画像情報、音声情報等を受信することができる。他の情報端末39で取得された対象物の画像を情報端末38で再現し、その虚像を触覚呈示体10に一致させて表示することにより、ユーザは、遠隔地に存在する対象物をあたかも実際に触っているように感じることができる。