(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1のエネルギーの放射線を被写体に照射させて放射線検出器により第1放射線画像を撮影し、かつ前記第1のエネルギーより大きい第2のエネルギーの放射線を前記被写体に照射させて前記放射線検出器により第2放射線画像を撮影するマンモグラフィ装置であって、ヨウ素を用いた造影剤が投与された状態の乳房を前記被写体として前記第1放射線画像及び前記第2放射線画像を撮影するマンモグラフィ装置と、
k吸収端の値が前記第1のエネルギー以上、かつ前記第2のエネルギー以下である元素を少なくとも1種類含むとともに、前記ヨウ素を用いた前記造影剤を含まない固形物を、前記造影剤を模擬した画像評価用パターンとして有する前記マンモグラフィ装置の評価用のファントムと、
を備えた放射線画像撮影システム。
第1のエネルギーの放射線を被写体に照射させて放射線検出器により第1放射線画像を撮影し、かつ前記第1のエネルギーより大きい第2のエネルギーの放射線を前記被写体に照射させて前記放射線検出器により第2放射線画像を撮影するマンモグラフィ装置であって、ヨウ素を用いた造影剤が投与された状態の乳房を前記被写体として前記第1放射線画像及び前記第2放射線画像を撮影するマンモグラフィ装置と、
原子番号が45から56までの間の元素を少なくとも1種類含むとともに、前記ヨウ素を用いた前記造影剤を含まない固形物を、前記造影剤を模擬した画像評価用パターンとして有する前記マンモグラフィ装置の評価用のファントムと、
を備えた放射線画像撮影システム。
前記画像評価用パターンは、コントラスト対ノイズ比を評価する画像評価用パターン、及び低コントラスト分解能を評価するための画像評価用パターンの少なくとも一方を含む、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の放射線画像撮影システム。
前記画像評価用パターンは、腫瘤を模擬した画像評価用パターン、微小石灰化を模擬した画像評価用パターン、及び線維構造を模擬した画像評価用パターンの少なくとも1つを含む、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の放射線画像撮影システム。
前記第1のエネルギーは、22keV以上、かつヨウ素のk吸収端の値未満であり、前記第2のエネルギーは、ヨウ素のk吸収端の値よりも大きく、49keV以下である、
請求項1から請求項6のいずれか1項記載の放射線画像撮影システム。
前記第1放射線画像及び前記第2放射線画像から前記造影剤が強調された第3放射線画像を生成し、前記マンモグラフィ装置が前記ファントムを被写体とした前記第1放射線画像及び前記第2放射線画像を撮影した場合、前記造影剤に替わり前記固形物が強調された前記第3放射線画像を生成する生成部をさらに備えた、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の放射線画像撮影システム。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は本発明を限定するものではない。
【0025】
まず、本実施形態の放射線画像撮影システムの全体の構成の一例について説明する。
図1には、本実施形態の放射線画像撮影システム1の全体の構成の一例を表す構成図を示す。
【0026】
本実施形態の放射線画像撮影システム1は、コンソール6を介して外部のシステム(例えば、RIS:Radiology Information System)から入力された指示(撮影オーダ)に基づいて、医師や放射線技師等のユーザの操作により放射線画像の撮影を行う機能を有している。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の放射線画像撮影システム1は、コンソール6、マンモグラフィ装置10、及びファントム50を備えている。
図2には、本実施形態のコンソール6及びマンモグラフィ装置10の構成の一例を表すブロック図を示す。
【0028】
本実施形態のコンソール6は、無線通信LAN(Local Area Network)等を介して外部システム等から取得した撮影オーダや各種情報等を用いて、マンモグラフィ装置10の制御を行う機能を有している。
【0029】
本実施形態のコンソール6は、一例として、サーバーコンピュータである。
図2に示すように、コンソール6は、制御部70、記憶部72、I/F(Interface)部74、表示部駆動部76、表示部78、操作入力検出部80、及び操作部82を備えている。制御部70、記憶部72、I/F部74、表示部駆動部76、及び操作入力検出部80はシステムバスやコントロールバス等のバス83を介して相互に各種情報の授受が可能に接続されている。
【0030】
本実施形態の制御部70は、コンソール6の全体の動作を制御する。本実施形態の制御部70は、CPU(Central Processing Unit)70A、ROM(Read Only Memory)70B、及びRAM(Random Access Memory)70Cを備える。ROM70Bには、CPU70Aで実行される、後述する画像評価処理プログラムを含む各種のプログラム等が予め記憶されている。RAM70Cは、各種データを一時的に記憶する。
【0031】
記憶部72には、マンモグラフィ装置10で撮影された放射線画像の画像データや、その他の各種情報等が記憶される。また、本実施形態の記憶部72には、詳細を後述するマンモグラフィ装置10の評価結果が記憶される。記憶部72の具体例としては、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等が挙げられる。I/F部74は、無線通信または有線通信により、マンモグラフィ装置10やRIS等の外部のシステムとの間で各種情報の通信を行う。
【0032】
表示部78は、各種情報を表示する。表示部駆動部76は、表示部78への各種情報の表示を制御する。操作部82は、放射線Rの曝射指示を含む放射線画像の撮影等に関する指示や各種情報等をユーザが入力するために用いられる。操作部82は特に限定されるものではなく、例えば、各種スイッチ、タッチパネル、タッチペン、及びマウス等が挙げられる。なお、操作部82と表示部78とを一体化してタッチパネルディスプレイとしてもよい。操作入力検出部80は、操作部82に対する操作状態を検出する。
【0033】
一方、本実施形態のマンモグラフィ装置10は、被検者の乳房を被写体とし、乳房に放射線R(X線)を照射して乳房の放射線画像を撮影する装置である。なお、マンモグラフィ装置10は、被検者が起立している状態(立位状態)のみならず、被検者が椅子(車椅子を含む)等に座った状態(座位状態)において、被検者の乳房を撮影する装置であってもよく、少なくとも被検者の乳房の放射線画像が撮影可能な装置であればよい。
【0034】
さらに、本実施形態のマンモグラフィ装置10は、被検者の乳房に造影剤が投与された状態で撮影を行う、いわゆる造影撮影を行う機能として、エネルギーサブトラクション撮影により造影撮影を行う、CEDM(Contrast Enhanced Digital Mammography)機能を有している。
【0035】
図2に示すように、本実施形態のマンモグラフィ装置10は、放射線検出器11、放射線源29を有する放射線照射部28、制御部60、記憶部62、I/F部64、及び操作パネル66を備える。放射線検出器11、放射線照射部28、制御部60、記憶部62、I/F部64、及び操作パネル66は、システムバスやコントロールバス等のバス69を介して相互に各種情報の授受が可能に接続されている。
【0036】
本実施形態の制御部60は、マンモグラフィ装置10の全体の動作を制御する。また、本実施形態の制御部60は、放射線画像の撮影を行う場合に、放射線検出器11及び放射線照射部28を制御する。本実施形態の制御部60は、CPU60A、ROM60B、及びRAM60Cを備える。ROM60Bには、CPU60Aで実行される、後述する撮影処理プログラムを含む各種のプログラム等が予め記憶されている。RAM60Cは、各種データを一時的に記憶する。
【0037】
記憶部62には、放射線検出器11により撮影された放射線画像の画像データや、その他の各種情報等が記憶される。記憶部62の具体例としては、HDDやSSD等が挙げられる。I/F部64は、無線通信または有線通信により、コンソール6との間で各種情報の通信を行う。操作パネル66は、例えば、マンモグラフィ装置10の撮影台16に複数のスイッチとして設けられている。なお、操作パネル66は、タッチパネルとして設けられてもよい。
【0038】
また、
図3には、本実施形態のマンモグラフィ装置10の全体の構成の一例を表す構成図を示す。以下では、放射線画像の撮影においてマンモグラフィ装置10に被検者が対面した場合の被検者に近い側(胸壁側)をマンモグラフィ装置10の装置前方側とし、被検者から離れた側をマンモグラフィ装置10の装置後方側として説明する。また、マンモグラフィ装置10に被検者が対面した場合の被検者の左右方向をマンモグラフィ装置10の装置左右方向として説明する。さらに、マンモグラフィ装置10に被検者が対面した場合の被検者の頭の方向を上側、かつ足の方向を下側とした上下方向として説明する。
【0039】
マンモグラフィ装置10は、
図3に示すように、装置前方側に設けられた側面視略C字状の撮影部12と、撮影部12を装置後方側から支える基台部14と、を備える。
【0040】
撮影部12は、被検者の乳房と接する平面状の撮影面24を有する撮影台16と、乳房を撮影台16の撮影面24との間に挟んで圧迫するための圧迫板20と、撮影台16及び圧迫板20を支持する保持部18と、を備える。なお、圧迫板20には、放射線Rを透過する部材が用いられる。また、撮影部12は、放射線源29を支持する支持部22と、放射線照射部28と、を備えており、支持部22は、保持部18から分離される。
【0041】
図3に示すように、本実施形態のマンモグラフィ装置10の放射線照射部28の内部には、乳房に対して放射線Rを照射する管球(本実施形態では一例としてタングステン)を備えた放射線源29が設けられている。また、放射線照射部28の内部には、放射線源29と撮影台16との間に、Rh(ロジウム)フィルタ42、及びCu(銅)フィルタ44が備えられている。なお、
図3では、Rhフィルタ42及びCuフィルタ44を一体化して図示しているが、各フィルタは、各々別個のフィルタとして設けられている。
【0042】
なお、マンモグラフィ装置10が備えるフィルタは、Rhフィルタ42及びCuフィルタ44に限定されない。例えば、Rhフィルタ42に替わり、またはRhフィルタ42に加えてMo(モリブデン)フィルタを備えていてもよい。また例えば、Al(アルミニウム)フィルタは、Rhフィルタ42に比べて放射線Rの減衰率が低いため、放射線源29を連続的に移動させた状態で各撮影位置での撮影時間(放射線Rの照射時間)が短い撮影を行うトモシンセシス撮影に適している。そのため、マンモグラフィ装置10がトモシンセシス撮影を行う機能を有する場合は、Alフィルタを備え、Alフィルタを用いてトモシンセシス撮影を行ってもよい。
【0043】
さらに、放射線照射部28の内部には、図示を省略した移動部が設けられており、放射線画像の撮影を行う場合に、照射する放射線Rのエネルギーに応じて、Rhフィルタ42またはCuフィルタ44を照射野内の位置に移動させる。
【0044】
一方、本実施形態の撮影部12には軸(図示省略)が設けられており、撮影部12が基台部14に対して回転することが可能である。この軸は、支持部22に対して固定されており、軸と支持部22とが一体となって回転する。撮影部12に設けられた軸及び保持部18にそれぞれギヤが設けられ、このギヤ同士の噛合状態及び非噛合状態を切替えることにより、保持部18と軸とが連結されて一体に回転する状態と、軸が保持部18と分離されて空転する状態とに切り替えることができる。なお、軸の動力の伝達及び非伝達の切り替えは、上記ギヤに限らず、種々の機械要素を用いることができる。
【0045】
保持部18は、撮影面24と放射線源29とを予め定められた間隔離して撮影台16と放射線源29とを支持する。また、保持部18は、支持アーム26を介して圧迫板20も保持しており、保持部18が支持アーム26をスライド移動することにより圧迫板20が移動し、圧迫板20と撮影面24との間隔が変化する。
【0046】
被検者の乳房が接する撮影面24は、放射線透過性や強度の観点から、例えば、カーボンで形成されている。撮影台16の内部には、乳房及び撮影面24を通過した放射線Rを検出する放射線検出器11が配置されている。放射線検出器11が検出した放射線Rに基づいて放射線画像が生成される。本実施形態の放射線検出器11の種類は、特に限定されず、例えば、放射線Rを光に変換し、変換した光を電荷に変換する間接変換方式の放射線検出器であってもよいし、放射線Rを直接電荷に変換する直接変換方式の放射線検出器であってもよい。本実施形態では、マンモグラフィ装置10の放射線検出器11から出力された放射線画像を表す画像データは、コンソール6に送信される。
【0047】
上述したように、本実施形態のマンモグラフィ装置10は、造影撮影を行う機能を有している。造影撮影に用いられる造影剤としては、k吸収端が33keVのヨードを用いた造影剤(以下、単に「造影剤」という)が一般的に用いられる。マンモグラフィ装置10は、造影剤が投与された乳房を被写体として、造影剤のk吸収端よりも低い第1のエネルギーの放射線Rを照射させて放射線検出器11により第1放射線画像を撮影し、また造影剤のk吸収端よりも高い第2のエネルギーの放射線Rを照射させて放射線検出器11により第2放射線画像を撮影する。
【0048】
なお、本実施形態のマンモグラフィ装置10において、第1のエネルギーの放射線Rを照射するとは、第1のエネルギーの管電圧を印加させて放射線源29から放射線Rを照射することをいい、同様に、第2のエネルギーの放射線Rを照射するとは、第2のエネルギーの管電圧を印加させて放射線源29から放射線Rを照射することをいう。
【0049】
具体的な第1のエネルギー及び第2のエネルギーは、造影剤のk吸収端に加え、さらにマンモグラフィ装置10の仕様、所望とする放射線画像の画質、及び被検者の被曝の観点等から定められ、一般的に、22keV〜49keVであることが好ましい。言い換えると、第1のエネルギーは、22keV以上、かつ造影剤のk吸収端の値未満であることが好ましい。また、第2のエネルギーは、造影剤のk吸収端の値よりも大きく、かつ49keV以下であることが好ましい。
【0050】
なお、本実施形態のマンモグラフィ装置10において、上記第1のエネルギーは、通常の(一般的な)撮影に用いられる放射線Rのエネルギーと同様である。マンモグラフィ装置10では、第1のエネルギーの放射線Rを照射させて撮影(以下、「第1の撮影」という)を行う場合、Rhフィルタ42を照射野内に配置する。Rhのk吸収端は23.2keVであるため、被写体に照射される放射線Rの線質は、23.2keV以上のエネルギー成分が抑制された線質となる。
【0051】
また、本実施形態のマンモグラフィ装置10では、上記第2のエネルギーを45keV〜49keVの範囲内のいずれかとしている。マンモグラフィ装置10では、第2のエネルギーの放射線Rを照射させて撮影(以下、「第2の撮影」という)を行う場合、Cuフィルタ44を照射野内に配置する。Cuのk吸収端は9.0keVと低いが厚さを適切にすることにより、被写体に照射される放射線Rの線質を、放射線Rの第1のエネルギー成分が抑制された線質とすることができる。
【0052】
第1の撮影により撮影された第1放射線画像及び第2の撮影により撮影された第2放射線画像は、コンソール6に出力され、コンソール6は、第1放射線画像及び第2放射線画像各々の画像データの差分から、造影剤の濃度分布を計算し、造影剤を画像化する。具体的には、本実施形態のコンソール6の制御部70は、第1放射線画像の画像データに、予め定められた第1の係数を乗算して得られた画像データを、第2放射線画像の画像データに、予め定められた第2の係数を乗算して得られた画像データから対応する画素毎に減算することにより、人体構造が抑制され、投与された造影剤が強調された差分画像の画像データを生成する。なお、制御部70が差分画像を生成する方法はこれに限定されず、公知の差分画像の生成方法を用いることが可能である。本実施形態のマンモグラフィ装置10により生成される差分画像が、本開示の第3放射線画像の一例である。
【0053】
一方、本実施形態のファントム50は、所望の画質評価項目に基づいて放射線画像の画質を評価することにより、マンモグラフィ装置10を評価するために用いられるものである。本実施形態のファントム50は、一例として、IEC(International Electrotechnical Commission)の手法、及びEUREF(European Reference Organization for Quality Assured Breast Screening and Diagnostic Services)の手法に適用される。具体的には、本実施形態のファントム50は、造影剤の画像の検出能を評価する機能を付加したものである。
図4には、本実施形態のファントム50の一例を、放射線源29側から見た平面図を示す。
【0054】
図4に示すように、本実施形態のファントム50は、造影剤の画像の検出能(以下、単に「造影剤の検出能」という)の評価に用いられる画像評価用パターン100及び画像評価用パターン102を有している。画像評価用パターン100及び画像評価用パターン102を含むことにより、本実施形態のファントム50による画質評価項目には、造影剤の検出能が含まれる。
【0055】
なお、詳細は後述するが、画像評価用パターン100は、画質評価項目の一つであるコントラスト対ノイズ比(CNR:Contrast to Noise Ratio)の評価にも用いられる。また、詳細は後述するが、画像評価用パターン102は、複数のディスク103を含み、画質評価項目の一つである低コントラスト分解能(LCD:Low contrast detectability)の評価にも用いられる。
【0056】
画像評価用パターン100及び画像評価用パターン102は、造影剤の検出能の評価に用いるため、PET(Poly Ethylene Terephthalate)やポリカーボネート等のプラスチック製の基板(以下、「プラスチック基板」という)上に、造影剤を模擬した、予め定められた大きさ、形状、及び密度の固形物として形成されている。なお、本実施形態において「固形物」とは、収納する容器の形状に応じてその形状が変化しないとみなせ、また、形状が経時変化しないとみなせるものである。
【0057】
本実施形態のファントム50は、放射線源29から照射される放射線Rの上述した第1のエネルギーから第2のエネルギーの範囲内にk吸収端が含まれる元素を少なくとも1種類含む固形物を、造影剤を模擬した画像評価用パターン100及び画像評価用パターン102として有する。
【0058】
換言すると、本実施形態のファントム50は、k吸収端が、第1のエネルギーの放射線Rを照射する第1の撮影に用いられるRhフィルタ42のk吸収端よりも大きく、第2の撮影における放射線Rのピークエネルギーよりも小さい元素を少なくとも1種類含む材料によって、造影剤を模擬する固形物として画像評価用パターン100及び画像評価用パターン102が形成される。
【0059】
この種の元素としては、k吸収端が23.2keVである原子番号が45のRhからk吸収端が37.4keVである原子番号が56のBa(バリウム)までの間の元素が挙げられる。これらの元素のうち、いずれの元素を用いるかについては、画像評価用パターン100及び画像評価用パターン102として所望の形状等に形成(加工)し易いものを適宜用いることが可能である。
【0060】
この種の元素を用いた固形物としては、例えば、k吸収端が29.2keVである原子番号が50のSnによるスズ箔や、Sn及びk吸収端が27.9keVである原子番号が49のIn(インジウム)によるITO(Indium Tin Oxide)膜が挙げられる。
【0061】
固形物をスズ箔とした場合、画像評価用パターン100及び画像評価用パターン102は、機械加工によりプラスチック基板上に形成することができる。例えば、画像評価用パターン100は、厚さが300μm、かつ一辺が3cmの矩形状に形成される。また例えば、画像評価用パターン102は、ディスク103が、厚さが50μm、かつ直径が2mmの円形状に形成される。
【0062】
一方、固形物をITO膜とした場合、画像評価用パターン100及び画像評価用パターン102は、蒸着、スパッタリング、及び微粒子塗布等の任意の方法によりプラスチック基板上に形成することができる。例えば、画像評価用パターン100は、厚さ500μm、かつ一辺が3cmの矩形状に形成される。また例えば、画像評価用パターン102は、ディスク103が、厚さが100μm、かつ直径が2mmの円形状に形成される。なお、画像評価用パターン100及び画像評価用パターン102としてのITO膜は、透明電極として用いられる場合と異なり透明性が不要であるため、製膜条件は比較的緩く、熱処理も不要である。そのため、ITO膜の厚膜化が容易であり、またプラスチック基板上への製膜が容易に行える。
【0063】
なお、画像評価用パターン100及び画像評価用パターン102の厚み、具体的には、放射線Rが入射する入射方向に対する厚みは、模擬する造影剤の濃度に応じて定められ、造影剤の濃度が高くなるほど、入射方向に対する厚みは厚くなる。
【0064】
さらに、本実施形態のファントム50は、その他の所望の画質評価項目について評価するための画像評価用パターンを有している。例えば、
図4に示すように、ファントム50は、ダイナミックレンジの評価に用いる画像評価用パターン104、線形性の評価に用いる画像評価用パターン106、及び空間分解能(SR:Spatial Resolution)の評価に用いる画像評価用パターン108を有している。
【0065】
なお、
図4に示したファントム50は、詳細は省略するがさらにその他の所望の画質評価項目として、例えば、胸壁欠損、システム感度不変性、幾何学的歪み、画像むら(システムアーチファクト)、及び画像均一性等についても評価が可能であり、各画像評価用パターンを有している。
【0066】
次に、本実施形態の放射線画像撮影システム1におけるマンモグラフィ装置10の評価を行う動作(以下「評価動作」という)について説明する。
図5には、本実施形態の放射線画像撮影システム1による、評価動作全体の流れの一例を表すフローチャートが示されている。
【0067】
まず、ステップS100でユーザは、マンモグラフィ装置10の撮影台16の撮影面24上の任意の位置に被写体となるファントム50を配置する。そして、次のステップS102でユーザは、圧迫板20をファントム50上に配置する。
【0068】
次のステップS104でユーザは、コンソール6の操作部82から放射線画像の撮影の開始を指示する。撮影の開始の指示(撮影開始指示)は、I/F部74を介してマンモグラフィ装置10に送信される。また、本実施形態の放射線画像撮影システム1では、撮影オーダも、コンソール6からI/F部74を介してマンモグラフィ装置10に送信される。
【0069】
次のステップS106でマンモグラフィ装置10は、
図6に一例を示した撮影処理を実行して、ファントム50の放射線画像を撮影する。このように、本実施形態のマンモグラフィ装置10は、コンソール6から放射線画像の撮影開始指示及び撮影オーダを受信すると、制御部60のCPU60AがROM60Bに記憶されている撮影処理プログラムを実行することにより、
図6に示した撮影処理を実行する。
【0070】
図6に示すように、ステップS150でマンモグラフィ装置10の制御部60は、放射線源29から第1のエネルギーの放射線Rを照射させ、次のステップS152で制御部60は、放射線検出器11により第1放射線画像を撮影させることにより第1の撮影を行う。なお、本実施形態では、撮影処理を開始した状態、少なくとも第1の撮影を行う場合は、Rhフィルタ42が照射野内に配置されている。
【0071】
ステップS150及びS152により、第1のエネルギーの放射線Rがファントム50に照射され、ファントム50を透過した放射線Rに応じて放射線検出器11によって生成された第1放射線画像を表す画像データがマンモグラフィ装置10からコンソール6に出力される。
【0072】
次のステップS154で制御部60は、Rhフィルタ42及びCuフィルタ44を移動させて、照射野内にCuフィルタ44を位置させる。また、制御部60は、放射線源29に印加される管電圧を、第1のエネルギーを照射させる場合の管電圧から、第2のエネルギーを照射させる場合の管電圧に高くする変更を行う。
【0073】
次のステップS156で制御部60は、放射線源29から第2のエネルギーの放射線Rを照射させ、次のステップS158で制御部60は、放射線検出器11により第2放射線画像を撮影させることにより第2の撮影を行った後、本撮影処理を終了する。ステップS156及びS158により、第2のエネルギーの放射線Rがファントム50に照射され、ファントム50を透過した放射線Rに応じて放射線検出器11によって生成された第2放射線画像を表す画像データがマンモグラフィ装置10からコンソール6に出力される。以下では、第1放射線画像及び第2放射線画像等、種々の放射線画像を総称する場合は、単に「放射線画像」という。
【0074】
撮影処理により撮影された放射線画像を表す画像データがマンモグラフィ装置10から入力されると、コンソール6は、入力された放射線画像を表す画像データを記憶部72に一旦、記憶させる。
【0075】
上述のようにステップS106のマンモグラフィ装置10における撮影処理が終了すると、次のステップS108でコンソール6の制御部70は、第1放射線画像及び第2放射線画像から差分画像を生成し、表示部78に表示させる。なお、ここで差分画像を生成する方法は、造影剤が投与された状態の乳房を被写体とした場合における、通常の造影撮影を行った場合に差分画像を生成する生成方法と同様である。本実施形態の制御部70が本開示の生成部の一例である。
【0076】
具体的には、まず、制御部70は、第1放射線画像を表す画像データ及び第2放射線画像を表す画像データを記憶部72から取得する。そして制御部70は、第1放射線画像を表す画像データに、予め定められた第1の係数を乗算して得られた画像データを、第2放射線画像を表す画像データに、予め定められた第2の係数を乗算して得られた画像データから対応する画素毎に減算することにより、差分画像の画像データを生成する。なお、制御部70が差分画像を生成する方法はこれに限定されず、公知の差分画像の生成方法を用いることが可能である。
【0077】
次のステップS110で制御部70は、生成した差分画像の評価を行う。差分画像の評価方法は特に限定されないが、画像評価用パターン100を用いたコントラスト対ノイズ比を評価する評価値CNRは、以下の下記(1)式により得られる。なお、下記(1)式では、画像評価用パターン100(100A)の画像の平均画素値をm
AL、標準偏差をσ
ALとし、画像評価用パターン100(100B)の画像の平均画素値をm
BG、標準偏差をσ
BGとしている。
【0079】
本実施形態の放射線画像撮影システム1は、制御部70が差分画像の画像データに基づいて上記(1)式により評価値CNRを導出する。
【0080】
また、画像評価用パターン102を用いた低コントラスト分解能を評価するLCDスコアは、ディスク103により差分画像に形成されたドットパターン(LCDパターン)により導出される。実施形態の差分画像には、画像評価用パターン102のディスク103により、白及び黒のLCDパターンが形成されている。制御部70は、ノイズが生じていない場合の理想的なLCDパターンを用い、差分画像のLCDパターンとの相互相関関数を導出することによりLCDスコアを数値化する。
【0081】
なお、本実施形態では、制御部70のROM70Bに記憶されている画像評価処理プログラムをCPU70Aが実行することにより、上記評価値CNRの導出及びLCDスコアが導出される。なお、画像評価処理プログラムをCPU70Aが実行することにより、制御部70Aが本開示の評価部の一例として機能する。
【0082】
また、本実施形態の放射線画像撮影システム1における画像評価用パターン100及び画像評価用パターン102による造影剤の検出能の評価は、差分画像を目視したユーザの視認結果(視認性)によって評価される。本実施形態のコンソール6には、視認結果による評価を表す情報がユーザによって入力される。
【0083】
次のステップS112で制御部70は、上記ステップS110による差分画像の評価結果を、表示部78に表示させる。また、本実施形態のコンソール6は、評価結果を記憶部72に記憶させる。本実施形態の放射線画像撮影システム1では、ステップS112終了することにより、評価動作が終了する。
【0085】
本実施形態では、放射線画像撮影システム1が備えるファントム50が第1実施形態のファントム50(
図4参照)と異なる他は、構成及び動作が同様であるため、詳細な説明を省略し、本実施形態のファントム50について説明する。
【0086】
第1実施形態のファントム50は、上述したように、造影剤の画像の検出能を評価する機能を付加したものである。一方、本実施形態のファントム50は、造影剤の画像の検出能を目視評価する機能を付加したものである。
図7には、本実施形態のファントム50の一例を、放射線源29側から見た平面図を示す。
【0087】
図4に示すように、本実施形態のファントム50は、造影剤の検出能の評価に用いられる画像評価用パターン200、画像評価用パターン202、及び画像評価用パターン204を有している。画像評価用パターン200、画像評価用パターン202、及び画像評価用パターン204を含むことにより、本実施形態のファントム50による画質評価項目には、造影剤の検出能が含まれる。
【0088】
画像評価用パターン200は、画質評価項目の一つである線維構造(fiber)の検出能の評価にも用いられる。そのため画像評価用パターン200は、線維構造を模擬したサイズが異なる複数のテストオブジェクトを含んでいる。本実施形態では、造影剤の検出能の評価に用いるため、一例として画像評価用パターン200は、硫酸バリウムの粉を練り込んだ樹脂を成型によって所望のサイズの線維構造を模擬した形状の固形物に成型することにより作成される。なお、樹脂に練り込む硫酸バリウムの量(硫酸バリウムの含有率)は、模擬する造影剤の濃度に応じて定められ、造影剤の濃度が高くなるほど、硫酸バリウムの含有率は高くなる。
【0089】
また、画像評価用パターン202は、画質評価項目の一つである微小石灰化(calc)の検出能の評価にも用いられる。そのため画像評価用パターン202は、微小石灰化を模擬したサイズが異なる複数のテストオブジェクトを含んでいる。本実施形態では、造影剤の検出能の評価に用いるため、一例として画像評価用パターン202は、硫酸バリウムの粉を練り込んだ樹脂を成型によって所望のサイズの微小石灰化を模擬した形状の固形物に成型することにより作成される。
【0090】
また、画像評価用パターン204は、画質評価項目の一つである腫瘤(mass)の検出能の評価にも用いられる。そのため画像評価用パターン204は、腫瘤を模擬したサイズが異なる複数のテストオブジェクトを含んでいる。本実施形態では、造影剤の検出能の評価に用いるため、一例として画像評価用パターン204は、硫酸バリウムの粉を所望のサイズの腫瘤を模擬した形状の固形物に成型して焼結することにより作成される。
【0091】
画像評価用パターン200、画像評価用パターン202、及び画像評価用パターン204は、圧迫された乳房を模擬したワックス内に内蔵されている。
【0092】
本実施形態のファントム50を用いたマンモグラフィ装置10の評価動作全体の流れは、第1実施形態の評価動作全体(
図5参照)の流れと同様になる。なお、評価動作全体の流れにおけるステップS110の差分画像の評価は、画像評価用パターン200、画像評価用パターン202、及び画像評価用パターン204に応じた評価を行うことはいうまでもない。
【0093】
具体的には、本実施形態のファントム50を用いた場合の造影剤の検出能の評価は、差分画像を目視したユーザの視認結果(視認性)によって評価される。また、線維構造、腫瘤、及び微小石灰化の検出能の評価についても差分画像を目視したユーザの視認結果(視認性)によって評価される。
【0094】
なお、本実施形態では、画像評価用パターン200、画像評価用パターン202、及び画像評価用パターン204の各々を造影剤の検出能の評価に用いる形態について説明したが、いずれか1つ以上の画像評価用パターンが造影剤の検出能の評価に用いられる形態であればよい。例えば、画像評価用パターン202を微小石灰化の検出能及び造影剤の検出能の評価に用いるものとして、画像評価用パターン200及び画像評価用パターン204は各々線維構造の検出能及び腫瘤の検出能の評価のみに用いるものとしてもよい。
【0095】
以上説明したように、上記各実施形態の放射線画像撮影システム1は、第1のエネルギーの放射線Rを被写体に照射させて放射線検出器11により第1放射線画像を撮影し、かつ第1のエネルギーより大きい第2のエネルギーの放射線Rを被写体に照射させて放射線検出器11により第2放射線画像を撮影するマンモグラフィ装置10であって、ヨウ素を用いた造影剤が投与された状態の乳房を被写体として第1放射線画像及び第2放射線画像を撮影するマンモグラフィ装置10を備える。また、放射線画像撮影システム1は、k吸収端の値が第1のエネルギー以上、かつ第2のエネルギー以下である元素を少なくとも1種類含む固形物を、造影剤を模擬した画像評価用パターンとして有するマンモグラフィ装置10の評価用のファントム50を備える。
【0096】
また、ファントム50について言い換えると、上記各実施形態の放射線画像撮影システム1は、原子番号が45から56までの間の元素を少なくとも1種類含む固形物を、造影剤を模擬した画像評価用パターンとして有するマンモグラフィ装置10の評価用のファントム50を備える。
【0097】
このように上記各実施形態のファントム50は、ヨウ素のk吸収端に基づいた元素を含む固形物を、造影剤を模擬した画像評価用パターンとして有する。例えば、従来の技術のように、液体の造影剤を注入したファントムを用いて、マンモグラフィ装置10による造影撮影の機能の評価を行う場合、ファントム内の所望の位置に準備した液体の造影剤を注入した後、ファントムを被写体として放射線画像を撮影し、その後に注入した造影剤を廃棄するという手順を有する場合がある。この場合、ファントム内に注入する造影剤の量がばらつくことがある。また、複数の手間がかかる手順を有するため、ユーザが煩わしく感じる場合がある。
【0098】
これに対して、本実施形態のファントム50は上述のように、造影剤を模擬した画像評価用パターンが固形物であり、また、ファントム内に内蔵したままとすることができるため、マンモグラフィ装置10による造影撮影の機能の評価の利便性を向上することができる。
【0099】
また、本実施形態のファントム50は、造影撮影の機能の評価と異なる画質評価項目の評価に用いる画像評価用パターンに、造影撮影の機能の評価を付加することができるため、1つのファントム50で、より複数の画質評価項目を評価することができる。
【0100】
なお、ファントム50に含まれる造影剤を模擬した画像評価用パターンである固形物に含まれる元素及び製造方法は、上記各実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることはいうまでもない。
【0101】
例えば、
図8に示したファントム50のように、ファントム302の上(放射線源29側)に、硫酸バリウムの粉を練り込んだ樹脂を成型したシート300を配置したものであってもよい。なお、
図8は、放射線Rの入射方向と交差する方向からみた側面図を示している。
図8に示したファントム50では、シート300における放射線Rの入射方向に対する厚みを、造影剤の濃度に応じた複数の厚み(厚みL1、L2、及びL3)としている。
【0102】
また、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を実行することにより実行した撮影処理や画質評価処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(field-programmable gate array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、撮影処理や画質評価処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0103】
また、上記各実施形態では、マンモグラフィ装置10の制御部60及びコンソール6の制御部70に格納される各種プログラムは、予め制御部60及び制御部70のROM(60B、70B)に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。撮影処理プログラム及び画像表示処理プログラムは、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD−ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、撮影処理プログラム及び画像評価処理プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0104】
その他、上記各実施形態で説明した放射線画像撮影システム1、コンソール6、マンモグラフィ装置10、及びファントム50等の構成及び動作等は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることはいうまでもない。また、上記各実施形態を適宜組み合わせてもよいこともいうまでもない。
【0105】
2017年7月27日出願の日本国特許出願2017−145849号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0106】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に取り込まれる。