特許第6804094号(P6804094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6804094離型フィルムの剥離安定性の測定方法及び離型フィルム積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804094
(24)【登録日】2020年12月4日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】離型フィルムの剥離安定性の測定方法及び離型フィルム積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20201214BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   B32B27/36
   B32B27/00 L
   B32B27/00 101
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-518904(P2017-518904)
(86)(22)【出願日】2015年10月26日
(65)【公表番号】特表2017-531578(P2017-531578A)
(43)【公表日】2017年10月26日
(86)【国際出願番号】KR2015011340
(87)【国際公開番号】WO2016068559
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2017年4月7日
【審判番号】不服2018-16825(P2018-16825/J1)
【審判請求日】2018年12月18日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0147318
(32)【優先日】2014年10月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュン−ヒョン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−スン・キム
【合議体】
【審判長】 久保 克彦
【審判官】 井上 茂夫
【審判官】 佐々木 正章
(56)【参考文献】
【文献】 特開平1−301781(JP,A)
【文献】 実開平5−22537(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B27/36
B32B27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系粘着層及び前記粘着層の両面に軽剥離離型フィルム及び中剥離離型フィルムが貼り付けられた積層体を用意するステップ、
0.3m/minの剥離速度で前記軽剥離離型フィルムと前記粘着層の離型力を測定して軽剥離低速離型力を導き出すステップ、
0.3m/minの剥離速度で前記中剥離離型フィルムと前記粘着層の離型力を測定して中剥離低速離型力を導き出すステップ、
30m/minの剥離速度で前記軽剥離離型フィルムと前記粘着層の離型力を測定して軽剥離高速離型力を導き出すステップ、
30m/minの剥離速度で前記中剥離離型フィルムと前記粘着層の離型力を測定して中剥離高速離型力を導き出すステップ、
下記一般式1及び2により高速離型力バランス及び低速離型力バランスを測定するステップ、
前記軽剥離高速離型力及び前記軽剥離低速離型力を用いて下記一般式3により軽剥離速度変化率を測定するステップ、
前記中剥離高速離型力及び前記中剥離低速離型力を用いて下記一般式4により中剥離速度変化率を測定するステップ、及び
前記積層体の前記高速離型力バランスが1.5〜3.0であり、前記低速離型力バランスが1.5〜2.5であり、前記軽剥離速度変化率が100%〜300%であり、前記中剥離離型フィルムの中剥離速度変化率が200%〜400%であることを確認するステップ
を含み、
前記軽剥離離型フィルムの軽剥離低速離型力は10〜50gf/50mmであり、
前記中剥離離型フィルムの中剥離低速離型力は50〜200gf/50mmであり、
前記軽剥離離型フィルムの軽剥離高速離型力は10〜100gf/50mmであり、
前記中剥離離型フィルムの中剥離高速離型力は50〜200gf/50mmである、アクリル系粘着層及び前記粘着層の両面に軽剥離離型フィルム及び中剥離離型フィルムが貼り付けられた積層体の検査方法:
[一般式1]
高速離型力バランス=中剥離高速離型力/軽剥離高速離型力
[一般式2]
低速離型力バランス=中剥離低速離型力/軽剥離低速離型力
[一般式3]
軽剥離速度変化率(%)=(軽剥離高速離型力−軽剥離低速離型力)/軽剥離低速離型力×100
[一般式4]
中剥離速度変化率(%)=(中剥離高速離型力−中剥離低速離型力)/中剥離低速離型力×100。
【請求項2】
前記積層体を用意するステップは、
前記積層体を20〜100℃で0.5〜720時間保管するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記軽剥離離型フィルム及び前記中剥離離型フィルムは、各々、離型層及び基材層の積層構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記離型層は、シリコーン系離型剤、メラミン系離型剤、ポリオレフィン系離型剤、エポキシ系離型剤、アクリル系離型剤、フッ素系離型剤、セルロース系離型剤、パラフィン系離型剤、エポキシ−メラミン系離型剤及びこれらの組み合わせからなる群より選択された一つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記基材層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリビニルアルコール(PVA)及びこれらの組み合わせからなる群より選択された一つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
求項1〜5のいずれか一項に記載の方法による検査に適合したものである、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
離型フィルムの剥離安定性を測定する方法及び離型フィルム積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
離型フィルムは、製品の取り扱い及び輸送を容易にし、容易に分離できるフィルムであって、様々な用途として活用されている。例えば、このような離型フィルムは、粘着フィルムのキャリアフィルムとして用いられることができる。この時、複数の離型フィルムを用いる場合、各々の離型力の差により粘着剤の浮き上がり現象が発生するか、または離型フィルムに粘着剤が転移するという問題が発生する。よって、粘着フィルムのキャリア用途として複数の離型フィルム間の離型力が均衡をなして粘着剤の浮き上がり現象が発生しない剥離安定性を有する離型フィルムを選別する検証手段が必要な現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一実現例は、信頼度及び正確性の高い離型フィルムの剥離安定性の測定方法を提供する。
【0004】
本発明の他の実現例は、前記離型フィルムの剥離安定性の測定方法により測定された剥離安定性に優れた離型フィルムを含む積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実現例において、粘着層及び前記粘着層の両面に軽剥離離型フィルム及び中剥離離型フィルムが貼り付けられた積層体を用意するステップ、約0.3〜約3.0m/minの剥離速度で前記軽剥離離型フィルムと前記粘着層の離型力を測定して軽剥離低速離型力を導き出すステップ、約0.3〜約3.0m/minの剥離速度で前記中剥離離型フィルムと前記粘着層の離型力を測定して中剥離低速離型力を導き出すステップ、約10〜約30m/minの剥離速度で前記軽剥離離型フィルムと前記粘着層の離型力を測定して軽剥離高速離型力を導き出すステップ、約10〜約30m/minの剥離速度で前記中剥離離型フィルムと前記粘着層の離型力を測定して中剥離高速離型力を導き出すステップ、及び下記一般式1及び2により高速離型力バランス及び低速離型力バランスを測定するステップを含む離型フィルムの剥離安定性の測定方法を提供する。
【0006】
[一般式1]
高速離型力バランス=中剥離高速離型力/軽剥離高速離型力
[一般式2]
低速離型力バランス=中剥離低速離型力/軽剥離低速離型力
【0007】
前記離型フィルムの剥離安定性の測定方法は、前記軽剥離高速離型力及び前記軽剥離低速離型力を用いて下記一般式3により軽剥離速度変化率を測定するステップ、及び前記中剥離高速離型力及び前記中剥離低速離型力を用いて下記一般式4により中剥離速度変化率を測定するステップをさらに含んでもよい。
【0008】
[一般式3]
軽剥離速度変化率(%)=(軽剥離高速離型力−軽剥離低速離型力)/軽剥離低速離型力×100
[一般式4]
中剥離速度変化率(%)=(中剥離高速離型力−中剥離低速離型力)/中剥離低速離型力×100
【0009】
前記積層体を用意するステップは、前記積層体を約20〜約100℃で約0.5〜約720時間保管するステップを含んでもよい。
【0010】
前記軽剥離離型フィルム及び前記中剥離離型フィルムは、各々、離型層及び基材層の積層構造を含んでもよい。
【0011】
前記離型層は、シリコーン系離型剤、メラミン系離型剤、ポリオレフィン系離型剤、エポキシ系離型剤、アクリル系離型剤、フッ素系離型剤、セルロース系離型剤、パラフィン系離型剤、エポキシ−メラミン系離型剤及びこれらの組み合わせからなる群より選択された少なくとも一つを含んでもよい。
【0012】
前記基材層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリビニルアルコール(PVA)及びこれらの組み合わせからなる群より選択された少なくとも一つを含んでもよい。
【0013】
前記粘着層は、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤及びこれらの組み合わせからなる群より選択された少なくとも一つを含んでもよい。
【0014】
本発明の他の実現例において、粘着層及び前記粘着層の両面に軽剥離離型フィルム及び中剥離離型フィルムを含み、前記離型フィルムの剥離安定性の測定方法により測定された高速離型力バランス及び低速離型力バランスが全て約1.5〜約5.0である積層体を提供する。
【0015】
前記積層体において、前記軽剥離離型フィルムの軽剥離速度変化率は約100%〜約300%であり、前記中剥離離型フィルムの中剥離速度変化率は約200%〜約400%であってもよい。
【0016】
前記積層体において、前記軽剥離離型フィルムの軽剥離低速離型力は約10〜約50gf/50mmであり、前記中剥離離型フィルムの中剥離低速離型力は約50〜約200gf/50mmであってもよい。
【0017】
前記積層体において、前記軽剥離離型フィルムの軽剥離高速離型力は約10〜約100gf/50mmであり、前記中剥離離型フィルムの中剥離高速離型力は約50〜約200gf/50mmであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
前記離型フィルムの剥離安定性の測定方法を通じて複数の離型フィルム間の剥離安定性が優れるか否かを判断するにおいて、効率性を確保し、信頼性及び正確性が高い結果を得ることができる。
【0019】
前記離型フィルムの剥離安定性の測定方法により測定された剥離安定性に優れた離型フィルムを含む積層体は、粘着フィルムのキャリア用途として好適な物性を有し、前記粘着フィルムを目標物品に適用時に不良率を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実現例による積層体の断面を概略的に示すものである。
図2】軽剥離離型フィルムの断面を概略的に示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は後述する実施例を参照すればより明らかになるものである、但し、本発明は以下にて開示される実施例に限定されるものではなく互いに異なる様々な形態に実現されることができ、本実施例は単に本発明の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであって、本発明は請求項の範疇によって定義されるのみである。明細書の全体にかけて、同一の参照符号は同一の構成要素を指し示す。
【0022】
離型フィルムの剥離安定性の測定方法
本発明の一実現例において、粘着層及び前記粘着層の両面に軽剥離離型フィルム及び中剥離離型フィルムが貼り付けられた積層体を用意するステップ、約0.3〜約3.0m/minの剥離速度で前記軽剥離離型フィルムと前記粘着層の離型力を測定して軽剥離低速離型力を導き出すステップ、約0.3〜約3.0m/minの剥離速度で前記中剥離離型フィルムと前記粘着層の離型力を測定して中剥離低速離型力を導き出すステップ、約10〜約30m/minの剥離速度で前記軽剥離離型フィルムと前記粘着層の離型力を測定して軽剥離高速離型力を導き出すステップ、約10〜約30m/minの剥離速度で前記中剥離離型フィルムと前記粘着層の離型力を測定して中剥離高速離型力を導き出すステップ、及び下記一般式1及び2により高速離型力バランス及び低速離型力バランスを測定するステップを含む離型フィルムの剥離安定性の測定方法を提供する。
【0023】
[一般式1]
高速離型力バランス=中剥離高速離型力/軽剥離高速離型力
[一般式2]
低速離型力バランス=中剥離低速離型力/軽剥離低速離型力
【0024】
一般に、離型フィルムは粘着フィルムの粘着層キャリア用途として用いられ、粘着層の両面に離型力が互いに異なる2個の離型フィルムが貼り付けられて流通及び輸送される。この場合、2個の離型フィルムが適切な離型力均衡性を満たさなければ粘着層の浮き上がり現象を防止することができない。
【0025】
このような複数の離型フィルムが一つの粘着層に対して適切な離型力均衡性を満たすか否かを判断するために、前記離型フィルムの剥離安定性の測定方法は、粘着層及び前記粘着層の両面に軽剥離離型フィルム及び中剥離離型フィルムが貼り付けられた積層体を用意して、前記積層体に対する剥離安定性を測定することができる。
【0026】
図1は、前記積層体100の断面を概略的に示すものである。前記積層体100は軽剥離離型フィルム10、粘着層30及び中剥離離型フィルム20が順次積層された構造であり、前記軽剥離離型フィルム10及び前記中剥離離型フィルム20は前記粘着層30に対して互いに異なる離型力を有する。
【0027】
具体的には、前記軽剥離離型フィルム10は前記中剥離離型フィルム20に比べて前記粘着層30に対する離型力が低いものであり、二つの離型フィルムが適切な離型力バランス(balance)を有する場合に剥離安定性に優れる。
【0028】
前記離型フィルムの剥離安定性の測定方法は、前記軽剥離離型フィルム及び前記中剥離離型フィルムに対して低速離型力を導き出すステップを含むことができる。
【0029】
具体的には、前記測定方法は、約0.3〜約3.0m/minの剥離速度で前記軽剥離離型フィルムと前記粘着層の離型力を測定して軽剥離低速離型力を導き出すステップ、及び約0.3〜約3.0m/minの剥離速度で前記中剥離離型フィルムと前記粘着層の離型力を測定して中剥離低速離型力を導き出すステップを含むことができる。
【0030】
前記軽剥離離型フィルム及び中剥離離型フィルムの低速離型力は各々約0.3〜約3.0m/minの剥離速度で測定されることができ、具体的には約0.3〜約1.0m/minの剥離速度で測定されることができる。各離型フィルムの低速離型力が前記速度範囲の剥離速度で測定されることにより、実質的に製品化された時、離型フィルムの剥離安定性に対する信頼性及び正確性が確保されるという結果を得ることができる。
【0031】
また、前記離型フィルムの剥離安定性の測定方法は、前記軽剥離離型フィルム及び前記中剥離離型フィルムに対して高速離型力を導き出すステップを含むことができる。
【0032】
具体的には、前記測定方法は、約10〜約30m/minの剥離速度で前記軽剥離離型フィルムと前記粘着層の離型力を測定して軽剥離高速離型力を導き出すステップ、及び約10〜約30m/minの剥離速度で前記中剥離離型フィルムと前記粘着層の離型力を測定して中剥離高速離型力を導き出すステップを含むことができる。
【0033】
前記軽剥離離型フィルム及び中剥離離型フィルムの高速離型力は各々約10〜約30m/minの剥離速度で測定されることができ、具体的には約20〜約30m/minの剥離速度で測定されることができる。各離型フィルムの高速離型力が前記速度範囲の剥離速度で測定されることにより、実質的に製品化された時、離型フィルムの剥離安定性に対する信頼性及び正確性が確保されるという結果を得ることができる。
【0034】
前記離型フィルムの剥離安定性の測定方法は各離型フィルムに対して低速離型力及び高速離型力を全て導き出すステップを含み、前記一般式1及び2により高速離型力バランス及び低速離型力バランスを全て測定するステップを含むことができる。
【0035】
前記測定方法が高速離型力バランス及び低速離型力バランスを全て測定することにより、実際に製品に適用及び用いられる場合に実質的に信頼性及び正確性が高い結果を確保することができる。
【0036】
前記離型フィルムの剥離安定性の測定方法は、前記軽剥離高速離型力及び前記軽剥離低速離型力を用いて下記一般式3により軽剥離速度変化率を測定するステップ、及び前記中剥離高速離型力及び前記中剥離低速離型力を用いて下記一般式4により中剥離速度変化率を測定するステップをさらに含むことができる。
【0037】
[一般式3]
軽剥離速度変化率(%)=(軽剥離高速離型力−軽剥離低速離型力)/軽剥離低速離型力×100
[一般式4]
中剥離速度変化率(%)=(中剥離高速離型力−中剥離低速離型力)/中剥離低速離型力×100
【0038】
前記測定方法が前記一般式3及び4により速度変化率を測定するステップをさらに含むことにより、前記軽剥離離型フィルム及び前記中剥離離型フィルムの離型力バランスに対するさらに詳しくて正確な情報を得ることができ、離型フィルムの剥離安定性に対してさらに信頼することができ、より正確な結果を確保することができるという点で有利である。
【0039】
前記離型フィルムの剥離安定性の測定方法において、前記積層体を用意するステップは、前記積層体を約20℃〜約100℃で約0.5時間〜約720時間保管するステップを含むことができる。前記積層体を前記条件で保管することにより、低速離型力及び高速離型力の測定結果の信頼性を高めるという点で有利である。
【0040】
図2は、前記軽剥離離型フィルム10の断面を概略的に示すものである。
【0041】
図1及び図2を参照すれば、前記軽剥離離型フィルム10は基材層11及び離型層12の積層構造を含むことができる。この時、前記積層体100は、前記粘着層30の一面に前記軽剥離離型フィルムの離型層12が貼り付けられたものであってもよい。
【0042】
前記離型層12は、具体的には、シリコーン系離型剤、メラミン系離型剤、ポリオレフィン系離型剤、エポキシ系離型剤、アクリル系離型剤、フッ素系離型剤、セルロース系離型剤、パラフィン系離型剤、エポキシ−メラミン系離型剤及びこれらの組み合わせからなる群より選択された少なくとも一つを含むことができる。
【0043】
前記中剥離離型フィルム20の場合、前記軽剥離離型フィルム10と同一の積層構造を有することができる。すなわち、前記中剥離離型フィルム20も基材層及び離型層の積層構造を含むことができ、この時、前記積層体100は前記軽剥離離型フィルムの離型層12が貼り付けられた一面と他の一面に前記中剥離離型フィルムの離型層が貼り付けられたものであってもよい。
【0044】
例えば、前記軽剥離離型フィルムの離型層及び前記中剥離離型フィルムの離型層は各々シリコーン系離型剤を含むことができる。この場合、前記離型フィルムの剥離安定性の測定方法により得られた結果が高い信頼性及び正確性を確保するのに有利である。
【0045】
また、前記軽剥離離型フィルムの基材層及び前記中剥離離型フィルムの基材層は、各々、紙、不織布、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリビニルアルコール(PVA)及びこれらの組み合わせからなる群より選択された少なくとも一つを含むことができる。例えば、前記軽剥離離型フィルムの基材層及び前記中剥離離型フィルムの基材層はポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレン(PE)を含むことができ、この場合に優れた耐熱性を有し、前記離型フィルムの剥離安定性の測定方法を通じて正確性及び信頼性が高い結果を得ることができる。
【0046】
前記離型フィルムを用いて輸送または流通できる粘着層は、具体的には、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤及びこれらの組み合わせからなる群より選択された少なくとも一つを含むことができ、これらに制限されるものではない。
【0047】
例えば、前記粘着層はアクリル系粘着剤を含むことができ、この場合、前記離型フィルムの剥離安定性の測定方法により剥離安定性に対する正確な結果を導き出すことができるという点で有利である。
【0048】
積層体
本発明の他の実現例は、粘着層及び前記粘着層の両面に軽剥離離型フィルム及び中剥離離型フィルムを含み、前記離型フィルムの剥離安定性の測定方法により測定された高速離型力バランス及び低速離型力バランスが全て約1.5〜約5.0である積層体を提供する。
【0049】
前記高速離型力バランス及び低速離型力バランスは全て約1.5〜約5.0であってもよく、具体的には約1.7〜約3.0であってもよい。前記高速離型力バランス及び低速離型力バランスがいずれも前記範囲を満たす場合に前記積層体の離型フィルムが優れた剥離安定性を実現することができ、前記軽剥離離型フィルムのみを除去する場合、前記粘着層が中剥離離型フィルムから剥離されず、粘着層が浮き上がるか、粘着剤が離型フィルムに転移するという問題を防止することができる。
【0050】
また、前記軽剥離離型フィルムの軽剥離速度変化率は約300%以下であってもよく、例えば、約100%〜約300%であってもよい。また、前記中剥離離型フィルムの中剥離速度変化率は200%以上であってもよく、例えば、約200%〜400%であってもよい。前記軽剥離速度変化率及び前記中剥離速度変化率は前記一般式3及び4を用いて導き出すことができる。
【0051】
前記軽剥離離型フィルム及び中剥離離型フィルムが前記範囲の高速離型力バランス及び低速離型力バランスを満たすと共に、前記範囲の軽剥離速度変化率及び前記範囲の中剥離速度変化率を示すことによって、前記積層体の離型フィルムが粘着層の浮き上がり現象または転移現象なしで優れた剥離安定性を確保することができる。
【0052】
具体的には、前記軽剥離離型フィルムの軽剥離低速離型力は約10〜約50gf/50mmであってもよく、前記中剥離離型フィルムの中剥離低速離型力は約50〜約200gf/50mmであってもよい。すなわち、前記軽剥離離型フィルム及び中剥離離型フィルムに対して約0.3〜約3.0m/minの剥離速度で測定した離型力が各々前記範囲を満たすことができる。前記軽剥離低速離型力及び前記中剥離低速離型力が前記範囲を満たすことによって、前記軽剥離離型フィルムが独りでに剥離される問題が発生せず、且つ、一定の力によって剥離させ易く、前記軽剥離離型フィルムのみを剥離する時、前記中剥離離型フィルムが粘着層に堅固に結合されて粘着層の浮き上がり現象の問題を防止することができる。
【0053】
また、前記軽剥離離型フィルムの軽剥離高速離型力は約10〜約100gf/50mmであってもよく、前記中剥離離型フィルムの中剥離高速離型力は約50〜約200gf/50mmであってもよい。すなわち、前記軽剥離離型フィルム及び中剥離離型フィルムに対して約10〜約30m/minの剥離速度で測定した離型力が各々前記範囲を満たすことができる。前記軽剥離高速離型力及び前記中剥離高速離型力が前記範囲を満たすことによって、前記軽剥離離型フィルムが独りでに剥離される問題が発生せず、且つ、一定の力によって剥離させ易く、前記軽剥離離型フィルムのみを剥離する時、前記中剥離離型フィルムが粘着層に堅固に結合されて粘着層の浮き上がり現象の問題を防止することができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。但し、下記に記載された実施例は本発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎず、これにより本発明が制限されるものではない。
【0055】
実施例1
アクリル系粘着層及び前記粘着層の両面に軽剥離離型フィルム及び中剥離離型フィルムが貼り付けられた積層体を用意した。前記軽剥離離型フィルム及び中剥離離型フィルムの各離型層及び基材層の成分及び含量は下記の表1に記載されたとおりである。次に、前記軽剥離離型フィルム及び中剥離離型フィルムに対し、0.3m/minの剥離速度で離型力を測定して軽剥離低速離型力(A)及び中剥離低速離型力(B)を測定した。次に、同一の積層体に対し、30m/minの剥離速度で離型力を測定して軽剥離高速離型力(C)及び中剥離高速離型力(D)を測定した。次に、B/A及びD/Cの値を計算して低速離型力バランス及び高速離型力バランスを測定した。また、(C−A)/A×100の式を用いて軽剥離速度変化率(%)を測定し、(D−B)/B×100の式を用いて中剥離速度変化率(%)を測定した。その結果は下記の表3に記載されたとおりである。
【0056】
【表1】
【0057】
実施例2
前記軽剥離離型フィルム及び中剥離離型フィルムの各離型層及び基材層の成分及び含量は下記の表2に記載されたとおりであり、それを除いては、前記実施例1と同様の方法により低速離型力バランス、高速離型力バランス、軽剥離速度変化率及び中剥離速度変化率を測定した。その結果は下記の表3に記載されたとおりである。
【0058】
【表2】
【0059】
前記実施例1及び2の離型フィルムの剥離安定性の測定方法により測定された低速離型力バランス、高速離型力バランス、軽剥離速度変化率及び中剥離速度変化率は下記の表3に記載されたとおりである。
【0060】
【表3】
【0061】
実施例1及び2は前記離型フィルムの剥離安定性の測定方法により剥離安定性を測定したものであり、表3の結果を参照する時、前記実施例1は、低速離型力バランス及び高速離型力バランスが全て1.5〜5.0の範囲を満たすものであるため、優れた剥離安定性を示すことが分かる。
【0062】
その反面、実施例2は、前記離型フィルムの剥離安定性の測定方法により剥離安定性を測定した結果、低速離型力バランスは1.5〜5.0の範囲を満たすが、高速離型力バランス値が1.0であって、両方とも1.5〜5.0の範囲を満たすことができず、剥離安定性が良くないことが分かる。
【0063】
また、前記実施例1は、軽剥離速度変化率が300%以下であり、中剥離速度変化率が200%以上のものであって、前記範囲の高速離型力バランス及び低速離型力バランスを満たすと共に、前記範囲の軽剥離速度変化率及び前記範囲の中剥離速度変化率を示すことにより、前記積層体の離型フィルムが粘着層の浮き上がり現象または転移現象なしで優れた剥離安定性を確保することが分かる。
【0064】
その反面、前記実施例2は、軽剥離速度変化率は300%以下であるが、中剥離速度変化率が200%未満のものであって、前記実施例1に比べて剥離安定性が良くないことが分かる。
【符号の説明】
【0065】
100 ・・・積層体
10 ・・・軽剥離離型フィルム
20 ・・・中剥離離型フィルム
30 ・・・粘着層
11 ・・・基材層
12 ・・・離型層
図1
図2