【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)頒布日 2017年7月9日(公開日:2017年7月11日〜15日) 刊行物 The 39th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society(EMBC’17)pp.3973−3976
【文献】
J CHEBIL, et al.,Classification of Heart Sound Signals Using Discrete Wavelet Analysis,International Journal of Soft Computing,米国,IEEE,2007年,2(1),pp.37-41
【文献】
V X AFONSO, et al.,ECG Beat Detection Using Filter Banks,IEEE Transactions on biomedical engineering,IEEE,1999年,46(2),pp.192-202
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のバンドパスフィルタを含むフィルタバンク分析により入力信号の特徴を抽出する信号特徴抽出装置であって、
Mは上記バンドパスフィルタの数であり、Lは上記バンドパスフィルタのインパルス応答長の最大値が2L+1となる整数であり、mは1以上M以下の各整数とし、kは-2L以上2L以下の各整数とし、z
kは|k|個の0を要素として持つ列ベクトルとし、
-x(n)=[x(n+L), …, x(n+1), x(n), x(n-1), …, x(n-L)]
Hは時刻nの入力信号系列を要素として持つ入力信号ベクトルとし、
-h
m=[h
m(-L), …, h
m(-1), h
m(0), h
m(+1), …, h
m(L)]
Hは第m番目のバンドパスフィルタのインパルス応答系列を要素として持つインパルス応答ベクトルとし、
k<0のときは、
【数25】
となり、k≧0のときは、
【数26】
となるインパルス応答系列
-h
m,kを用いて、次式で表される拡張インパルス応答行列H
eを生成する拡張インパルス応答行列生成部と、
【数27】
上記入力信号ベクトル
-x(n)および拡張インパルス応答行列H
eを用いて次式を計算して展開係数ベクトル^y(n)を求める展開係数計算部と、
【数28】
上記展開係数ベクトル^y(n)のうち上記拡張インパルス応答行列H
eの中心インパルス応答ベクトル
-h
m,0に対応する展開係数の少なくとも1つを出力信号として出力する信号出力部と、
を含む信号特徴抽出装置。
複数のバンドパスフィルタを含むフィルタバンク分析により入力信号の特徴を抽出する信号特徴抽出装置であって、
上付き添え字のHは転置を表し、Mは上記バンドパスフィルタの数であり、Lは上記バンドパスフィルタのインパルス応答長の最大値が2L+1となる値であり、mは1以上M以下の各整数とし、kは-2L以上2L以下の各整数とし、z
kは|k|個の0を要素として持つ列ベクトルとし、
-x(n)=[x(n+L), …, x(n+1), x(n), x(n-1), …, x(n-L)]
Hは時刻nの入力信号系列を要素として持つ入力信号ベクトルとし、
-h
m=[h
m(-L), …, h
m(-1), h
m(0), h
m(+1), …, h
m(L)]
Hは第m番目のバンドパスフィルタのインパルス応答系列を要素として持つインパルス応答ベクトルとし、
k<0のときは、
【数29】
となり、k≧0のときは、
【数30】
となるインパルス応答系列
-h
m,kを用いて生成した次式で表される拡張インパルス応答行列H
eから、
【数31】
予め定めた列ベクトルを抜き出した拡張インパルス応答行列H
cを生成する拡張インパルス応答行列生成部と、
上記入力信号ベクトル
-x(n)および上記拡張インパルス応答行列H
cを用いて次式を計算して展開係数ベクトル^y(n)を求める展開係数計算部と、
【数32】
上記展開係数ベクトル^y(n)のうち上記拡張インパルス応答行列H
cの中心インパルス応答ベクトル
-h
m,0に対応する展開係数の少なくとも1つを出力信号として出力する信号出力部と、
を含む信号特徴抽出装置。
複数のバンドパスフィルタを含むフィルタバンク分析により入力信号の特徴を抽出する信号特徴抽出方法であって、
Mは上記バンドパスフィルタの数であり、Lは上記バンドパスフィルタのインパルス応答長の最大値が2L+1となる整数であり、mは1以上M以下の各整数とし、kは-2L以上2L以下の各整数とし、z
kは|k|個の0を要素として持つ列ベクトルとし、
-x(n)=[x(n+L), …, x(n+1), x(n), x(n-1), …, x(n-L)]
Hは時刻nの入力信号系列を要素として持つ入力信号ベクトルとし、
-h
m=[h
m(-L), …, h
m(-1), h
m(0), h
m(+1), …, h
m(L)]
Hは第m番目のバンドパスフィルタのインパルス応答系列を要素として持つインパルス応答ベクトルとし、
拡張インパルス応答行列生成部が、k<0のときは、
【数34】
となり、k≧0のときは、
【数35】
となるインパルス応答系列
-h
m,kを用いて、次式で表される拡張インパルス応答行列H
eを生成する拡張インパルス応答行列生成ステップと、
【数36】
展開係数計算部が、上記入力信号ベクトル
-x(n)および拡張インパルス応答行列H
eを用いて次式を計算して展開係数ベクトル^y(n)を求める展開係数計算ステップと、
【数37】
信号出力部が、上記展開係数ベクトル^y(n)のうち上記拡張インパルス応答行列H
eの中心インパルス応答ベクトル
-h
m,0に対応する展開係数の少なくとも1つを出力信号として出力する信号出力ステップと、
を含む信号特徴抽出方法。
複数のバンドパスフィルタを含むフィルタバンク分析により入力信号の特徴を抽出する信号特徴抽出方法であって、
上付き添え字のHは転置を表し、Mは上記バンドパスフィルタの数であり、Lは上記バンドパスフィルタのインパルス応答長の最大値が2L+1となる値であり、mは1以上M以下の各整数とし、kは-2L以上2L以下の各整数とし、z
kは|k|個の0を要素として持つ列ベクトルとし、
-x(n)=[x(n+L), …, x(n+1), x(n), x(n-1), …, x(n-L)]
Hは時刻nの入力信号系列を要素として持つ入力信号ベクトルとし、
-h
m=[h
m(-L), …, h
m(-1), h
m(0), h
m(+1), …, h
m(L)]
Hは第m番目のバンドパスフィルタのインパルス応答系列を要素として持つインパルス応答ベクトルとし、
拡張インパルス応答行列生成部が、k<0のときは、
【数38】
となり、k≧0のときは、
【数39】
となるインパルス応答系列
-h
m,kを用いて生成した次式で表される拡張インパルス応答行列H
eから、
【数40】
予め定めた列ベクトルを抜き出した拡張インパルス応答行列H
cを生成する拡張インパルス応答行列生成ステップと、
展開係数計算部が、上記入力信号ベクトル
-x(n)および上記拡張インパルス応答行列H
cを用いて次式を計算して展開係数ベクトル^y(n)を求める展開係数計算ステップと、
【数41】
信号出力部が、上記展開係数ベクトル^y(n)のうち上記拡張インパルス応答行列H
cの中心インパルス応答ベクトル
-h
m,0に対応する展開係数の少なくとも1つを出力信号として出力する信号出力ステップと、
を含む信号特徴抽出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィルタバンク分析では、各バンドパスフィルタの帯域が重なりを持つため、隣接する複数のフィルタ出力に信号の特徴が漏れ出すことにより、分析結果が冗長となる場合がある。
図1の例であれば、バンドパスフィルタ2の出力信号y
2(n)のみが大きな出力値を取ることが期待されるが、実際には、隣接するバンドパスフィルタ1および3の出力信号y
1(n), y
3(n)にも入力信号x(n)の波形パターンが漏れ出し、フィルタバンク出力の分析が困難となることがある。
【0006】
この発明の目的は、フィルタバンク分析において、隣接するバンドパスフィルタ間および時間軸方向への出力信号の漏れ出しを低減し、分析対象となる入力信号の特徴パターンの多様性に柔軟に対応し得る信号特徴抽出技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、この発明の第一の態様の信号特徴抽出装置は、複数のバンドパスフィルタを含むフィルタバンク分析により入力信号の特徴を抽出する信号特徴抽出装置であって、Mはバンドパスフィルタの数であり、Lはバンドパスフィルタのインパルス応答長の最大値が2L+1となる整数であり、mは1以上M以下の各整数とし、kは-2L以上2L以下の各整数とし、z
kは|k|個の0を要素として持つ列ベクトルとし、
-x(n)=[x(n+L), …,x(n+1), x(n), x(n-1), …, x(n-L)]
Hは時刻nの入力信号系列を要素として持つ入力信号ベクトルとし、
-h
m=[h
m(-L), …, h
m(-1), h
m(0), h
m(+1), …, h
m(L)]
Hは第m番目のバンドパスフィルタのインパルス応答系列を要素として持つインパルス応答ベクトルとし、k<0のときは、
【0008】
【数1】
【0009】
となり、k≧0のときは、
【0010】
【数2】
【0011】
となるインパルス応答系列
-h
m,kを用いて、次式で表される拡張インパルス応答行列H
eを生成する拡張インパルス応答行列生成部と、
【0012】
【数3】
【0013】
入力信号ベクトル
-x(n)および拡張インパルス応答行列H
eを用いて次式を計算して展開係数ベクトル^y(n)を求める展開係数計算部と、
【0014】
【数4】
【0015】
展開係数ベクトル^y(n)のうち拡張インパルス応答行列H
eの中心インパルス応答ベクトル
-h
m,0に対応する展開係数の少なくとも1つを出力信号として出力する信号出力部と、を含む。
【0016】
この発明の第二の態様の信号特徴抽出装置は、複数のバンドパスフィルタを含むフィルタバンク分析により入力信号の特徴を抽出する信号特徴抽出装置であって、上付き添え字のHは転置を表し、Mはバンドパスフィルタの数であり、Lはバンドパスフィルタのインパルス応答長の最大値が2L+1となる値であり、mは1以上M以下の各整数とし、kは-2L以上2L以下の各整数とし、z
kは|k|個の0を要素として持つ列ベクトルとし、
-x(n)=[x(n+L), …,x(n+1), x(n), x(n-1), …, x(n-L)]
Hは時刻nの入力信号系列を要素として持つ入力信号ベクトルとし、
-h
m=[h
m(-L), …, h
m(-1), h
m(0), h
m(+1), …, h
m(L)]
Hは第m番目のバンドパスフィルタのインパルス応答系列を要素として持つインパルス応答ベクトルとし、k<0のときは、
【0017】
【数5】
【0018】
となり、k≧0のときは、
【0019】
【数6】
【0020】
となるインパルス応答系列
-h
m,kを用いて生成した次式で表される拡張インパルス応答行列H
eから、
【0021】
【数7】
【0022】
予め定めた列ベクトルを抜き出した拡張インパルス応答行列H
cを生成する拡張インパルス応答行列生成部と、
【0023】
入力信号ベクトル
-x(n)および拡張インパルス応答行列H
cを用いて次式を計算して展開係数ベクトル^y(n)を求める展開係数計算部と、
【0024】
【数8】
【0025】
展開係数ベクトル^y(n)のうち拡張インパルス応答行列H
cの中心インパルス応答ベクトル
-h
m,0に対応する展開係数の少なくとも1つを出力信号として出力する信号出力部と、を含む。
【発明の効果】
【0026】
この発明の信号特徴抽出技術によれば、フィルタバンク分析において、隣接するバンドパスフィルタ間および時間軸方向への出力信号の漏れ出しを低減し、分析対象となる入力信号の特徴パターンの多様性に柔軟に対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この明細書中で使用する記号「~」「^」「
−」等は、本来直後の文字の真上に記載されるべきものであるが、テキスト記法の制限により、当該文字の直前に記載する。数式中においては、これらの記号は本来の位置、すなわち文字の真上に記述している。
【0029】
従来のフィルタバンク分析に基づく信号特徴抽出方法の処理の流れを
図2に示す。従来のフィルタバンク分析では、ある時刻nを中心として切り出された分析対象の信号系列を要素として持つ入力信号ベクトル
-x(n)=[x(n+L), …, x(n+1), x(n), x(n-1), …, x(n-L)]
Hと、第m番目のバンドパスフィルタのインパルス応答系列を要素として持つインパルス応答ベクトル
-h
m=[h
m(-L), …, h
m(-1), h
m(0), h
m(+1), …, h
m(L)]
Hとを用いて、式(1)で表される積和演算か、あるいは、これと等価なフィルタ処理計算により第m番目のバンドパスフィルタの出力信号y
m(n)を算出する。
【0031】
ここで、・
H(上付き添え字のH)はベクトルまたは行列の転置を表し、それらの要素が複素数の場合は共役転置を表す。また、各バンドパスフィルタのインパルス応答長の最大値を2L+1とする。mは、1以上M以下の任意の整数である。Mは、バンドパスフィルタの総数である。バンドパスフィルタの番号mに応じてインパルス応答長は異なる場合があり、インパルス応答長が2L+1に満たないバンドパスフィルタに関するインパルス応答ベクトル
-h
mは、一部の要素が零となる。この場合、式(1)の積和演算は、要素が零となる部分については省略してもよい。
【0032】
上述の従来技術において、隣接するバンドパスフィルタ間で出力に漏れ出しが生じる1つの理由として、一般に、隣接するバンドパスフィルタの通過帯域が互いに重なり合うように設計されることが挙げられる。この発明では、従来のフィルタバンクが式(1)に従ってバンドパスフィルタ毎に独立に出力信号を計算している点を漏れ出しが生じる理由の1つと捉え、相互のバンドパスフィルタの影響を考慮してフィルタバンクを構成する。
【0033】
例えば、
図1において、入力信号ベクトル
-x(n)を各フィルタバンクのインパルス応答ベクトル
-h
1,
-h
2,
-h
3の線形結合で表すことを考える。すなわち、式(2)を満たす関係を与える。
【0037】
である。
図1の例では、入力信号
-x(n)がインパルス応答
-h
2と等しい形状の波形パターンである場合、すなわち、
-x(n)=
-h
2である場合を考えているため、展開係数α
1, α
2, α
3は式(4)のように与えられるべきである。
【0039】
このような展開係数は、2L+1>3が満足されているとすると、式(5)の最小二乗解として与えられる。
【0041】
ここで、展開係数α
1, α
2, α
3が時刻nにおける出力信号に相当するものとし、式(6)のように割り当てることを考える。
【0043】
これにより、
図1の例においては、式(7)となり、隣接するバンドパスフィルタへの漏れ出しが防止される。
【0045】
一方で、従来のバンドパスフィルタの出力は式(8)で表され、式(6)とは異なる。
【0047】
この場合は、
図1の例においても、式(7)の結果は得られず、隣接するバンドパスフィルタへの漏れ出しが生じる。
【0048】
入力信号ベクトル
-x(n)は時間とともに変化する時系列であるから、1サンプルシフトされた入力信号ベクトル
-x(n+1)に対して得られる出力信号は、式(9)のようになる。
【0050】
入力信号ベクトル
-x(n+1)は、もはやインパルス応答ベクトル
-h
1,
-h
2,
-h
3のいずれとも時間軸を含めて一致しないにもかかわらず、出力信号y
1(n+1), y
2(n+1), y
3(n+1)は非零の値を取ることになる。すなわち時間軸方向への漏れ出しを防止できていないことになる。そこで、さらに、k=-2L, …, -1, 0, 1, …, 2Lに対して、k<0のときは式(10)となり、k≧0のときは式(11)となる時間シフトされたインパルス応答系列
-h
m,kを考える。
【0052】
ここで、z
kは、|k|個の0を要素として持つ列ベクトルである。これらのインパルス応答系列を複素数の系列として与え、実数部と虚数部の系列はヒルベルト変換により相互に変換できるか、あるいは近似的に同等な関係を有するものとする。これにより、式(3)のインパルス応答行列Hを、式(12)に示す(2L+1)×M(4L+1)の拡張インパルス応答行列H
eに拡張し、式(13)を満足する展開係数ベクトル
-y(n)から出力信号を得ることを考える。
【0054】
しかしながら、式(13)において、未知数である展開係数ベクトル
-y(n)の要素の数はM(4L+1)であり、方程式の数(2L+1)を上回るため、劣決定な不定問題となる。このため、式(6)と同様に最小二乗解を一意に得ることはできない。そこで、不定解のうち、L1ノルム||
-y(n)||
1の値が最小、あるいは十分に小さい値を取る解を、例えばlasso法などにより求め、以下のようなスパース解^y(n)を得る。
【0056】
なお、λは正則化パラメータと呼ばれる正の定数である。
【0057】
実際に出力信号として用いるのは、シフトされていない中心インパルス応答ベクトル
-h
1,0, …,
-h
m,0, …,
-h
M,0に対応する展開係数の値^y
1(n), …, ^y
m(n), …, ^y
M(n)のみであり、さらには、中心インパルス応答ベクトル
-h
1,0, …,
-h
m,0, …,
-h
M,0のうち関心のある特定のパターンを持つインパルス応答に対応した展開係数のみに限定される。例えば、入力信号ベクトル
-x(n)が中心インパルス応答ベクトル
-h
1,0, …,
-h
m,0, …,
-h
M,0のいずれかと一致しており、対応する展開係数が大きな値を取るように出力された場合、1サンプルシフトされた入力信号ベクトル
-x(n+1)に対する展開係数は、実際に出力されることのない中心インパルス応答ベクトル
-h
1,1, …,
-h
m,1, …,
-h
M,1に対しては大きな値を取るが、実際に出力される中心インパルス応答ベクトル
-h
1,0, …,
-h
m,0, …,
-h
M,0に対しては小さな値を取るため、時間軸方向への漏れ出しも抑止できる。
【0058】
以下、この発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、図面中において同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【0059】
[第一実施形態]
第一実施形態の信号特徴抽出装置10は、
図3に示すように、信号入力部1、拡張インパルス応答行列生成部2、展開係数計算部3、および信号出力部4を含む。この信号特徴抽出装置10が
図4に示す各ステップの処理を行うことにより第一実施形態の信号特徴抽出方法が実現される。
【0060】
信号特徴抽出装置10は、例えば、中央演算処理装置(CPU: Central Processing Unit)、主記憶装置(RAM: Random Access Memory)などを有する公知または専用のコンピュータに特別なプログラムが読み込まれて構成された特別な装置である。信号特徴抽出装置10は、例えば、中央演算処理装置の制御のもとで各処理を実行する。信号特徴抽出装置10に入力されたデータや各処理で得られたデータは、例えば、主記憶装置に格納され、主記憶装置に格納されたデータは必要に応じて読み出されて他の処理に利用される。また、信号特徴抽出装置10の各処理部の少なくとも一部が集積回路等のハードウェアによって構成されていてもよい。
【0061】
図4を参照して、第一実施形態の信号特徴抽出方法の処理手続きを説明する。
【0062】
ステップS11において、信号入力部1は、分析対象の入力信号x(n)をベクトル化し、入力信号ベクトル
-x(n)=[x(n+L), …, x(n+1), x(n), x(n-1), …, x(n-L)]
Hを生成する。生成した入力信号ベクトル
-x(n)は展開係数計算部3へ送られる。
【0063】
ステップS12において、拡張インパルス応答行列生成部2は、m=1, …, M; k=-2L, …, -1, 0, 1, …, 2Lに対して、k<0のときは上記式(10)、k≧0のときは上記式(11)となるインパルス応答ベクトル
-h
m,kを生成し、上記式(12)となる(2L+1)×M(4L+1)の拡張インパルス応答行列H
eを生成する。生成した拡張インパルス応答行列H
eは展開係数計算部3へ送られる。なお、拡張インパルス応答行列H
eは各時刻nについて再利用が可能であるため、
図4に示すように、一回目のみ実行するように構成してもよい。
【0064】
ステップS13において、展開係数計算部3は、信号入力部1から入力信号ベクトル
-x(n)を、拡張インパルス応答行列生成部2から拡張インパルス応答行列H
eをそれぞれ受け取り、上記式(14)により展開係数ベクトル^y(n)を求める。求めた展開係数ベクトル^y(n)は信号出力部4へ送られる。
【0065】
ステップS14において、信号出力部4は、展開係数計算部3から展開係数ベクトル^y(n)を受け取り、展開係数ベクトル^y(n)のうち拡張インパルス応答行列H
eの中心インパルス応答ベクトル
-h
1,0, …,
-h
m,0, …,
-h
M,0に対応する展開係数^y
1(n), …, ^y
m(n), …, ^y
M(n)の少なくとも1つを出力信号として出力する。
【0066】
ステップS15において、次の時刻n+1の入力信号x(n+1)が存在するか否かを判定する。存在する場合には、ステップS16において時刻インデックスnに1を加算して、ステップS11〜S14の処理を再度実行する。存在しない場合には処理を終了する。
【0067】
[第二実施形態]
特定のバンドパスフィルタの出力信号のみに関心があり、その他のバンドパスフィルタの出力信号は陽に分析に利用しない場合においては、式(14)による最適化問題をそのまま解く代わりに、拡張インパルス応答行列H
eから分析において関心のある列ベクトルを主として抜き出した拡張インパルス応答行列H
cを用いて出力信号を生成してもよい。抜き出すべき列ベクトルの数が(2L+1)より少ない場合、式(6)と同様に、最小二乗法により拡張インパルス応答行列H
cについての展開係数ベクトル^y(n)を式(15)のように得ることができる。
【0069】
出力信号として用いるのは、展開係数ベクトル^y(n)の要素のうち、拡張インパルス応答行列H
cに含まれ、なおかつ、場合によっては、それらのうちから分析の主対象としてさらに限定された中心インパルス応答ベクトル
-h
1,0, …,
-h
m,0, …,
-h
M,0に対応する展開係数のみである。
【0070】
分析対象の入力信号
-x(n)に雑音など拡張インパルス応答行列H
cの列ベクトルとは大きく形状の異なる波形パターンが混入している場合がある。その場合には、入力信号ベクトル
-x(n)に対し、拡張インパルス応答行列H
cと相関の低い成分を取り除くフィルタリング処理を適用して得られる入力信号ベクトル~x(n)に対して、式(16)のように展開係数ベクトル^y(n)を得てから、第一実施形態と同様に出力信号を得る。
【0072】
図5を参照して、第二実施形態の信号特徴抽出方法の処理手続きを説明する。
【0073】
ステップS21において、信号入力部1は、第一実施形態と同様に、分析対象の入力信号x(n)をベクトル化し、入力信号ベクトル
-x(n)を生成する。信号入力部1は、さらに、ステップS22において、入力信号ベクトル
-x(n)に拡張インパルス応答行列H
cと相関の低い成分を取り除くフィルタリング処理を適用し、入力信号ベクトル~x(n)を生成してもよい。信号入力部1がステップS22を実行するか否かは任意である。生成した入力信号ベクトル
-x(n)または~x(n)は展開係数計算部3へ送られる。
【0074】
ステップS23において、拡張インパルス応答行列生成部2は、第一実施形態と同様に、拡張インパルス応答行列H
eを生成する。さらに、拡張インパルス応答行列H
eから分析において関心のある列ベクトルを抜き出して拡張インパル応答行列H
cを生成する。抜き出すべき列ベクトルについては予め定めておくものとする。生成した拡張インパルス応答行列H
cは展開係数計算部3へ送られる。なお、拡張インパルス応答行列H
cは各時刻nについて再利用が可能であるため、
図5に示すように、一回目のみ実行するように構成してもよい。
【0075】
ステップS24において、展開係数計算部3は、信号入力部1から入力信号ベクトル
-x(n)または~x(n)を、拡張インパルス応答行列生成部2から拡張インパルス応答行列H
cをそれぞれ受け取り、入力信号ベクトル
-x(n)を受け取ったときは上記式(15)により、入力信号ベクトル~x(n)を受け取ったときは上記式(16)により、展開係数ベクトル^y(n)を求める。求めた展開係数ベクトル^y(n)は信号出力部4へ送られる。
【0076】
ステップS25において、信号出力部4は、第一実施形態と同様に、展開係数計算部3から展開係数ベクトル^y(n)を受け取り、展開係数ベクトル^y(n)のうち拡張インパルス応答行列H
cの中心インパルス応答ベクトル
-h
m,0に対応する展開係数の少なくとも1つを出力信号として出力する。
【0077】
ステップS26において、次の時刻n+1の入力信号x(n+1)が存在するか否かを判定する。存在する場合には、ステップS27において時刻インデックスnに1を加算して、ステップS21〜S25の処理を再度実行する。存在しない場合には処理を終了する。
【0078】
[変形例]
拡張インパルス応答行列H
e, H
cの各列ベクトルの複素共役となるベクトルを、拡張インパルス応答行列H
e, H
cに結合して分析してもよい。また、複素数の出力信号に対して、実数部と虚数部、あるいは、振幅成分と位相成分に分解し、それらの少なくともいずれかを出力する形態を取ってもよい。例えば、分析対象の信号がハイパスフィルタやローパスフィルタなどの前処理によって位相特性に歪が与えられて波形が変形したり、心電波形における個人差や症状の違いに起因する特徴パターンの変形を受けたりした場合において、それらの歪や変形の影響は、主に位相成分の違いとして抽出することが可能である。一方、振幅成分を観測することで、個別の事象に影響されない共通的な特徴抽出(例えば、心電波形におけるQRS波やT波の検出)を実現することができる。
【0079】
また、第一実施形態において、式(12)に示す(2L+1)×M(4L+1)の拡張インパルス応答行列H
eの全ての列ベクトルを用いて、式(14)を計算する代わりに、2L+1を下回らない範囲で、いくつかの列ベクトルを省略し、よりサイズの小さい行列を拡張インパルス応答行列として用いてもよい。
【0080】
さらに、第二実施形態において、式(15)や(16)において用いる逆行列
【0082】
の代わりに、δを正の実数、Iを単位行列として、
【0085】
上記のように構成することにより、この発明の信号特徴抽出技術によれば、フィルタバンク分析におけるバンドパスフィルタ間、あるいは、時間軸方向の出力信号の漏れ出しが低減されるため、信号毎の特徴の違いがより明瞭に表れる出力信号を得ることができ、信号の分類や判別において有用である。
【0086】
この発明のポイントを整理すると、以下のようになる。従来のバンドパスフィルタ毎に独立してフィルタリング処理をしていたフィルタバンク分析による信号特徴抽出方法では、バンドパスフィルタ間、および、時間軸方向に冗長性があるため、信号の漏れ出しが発生する場合がある。これを防止するため、この発明では、バンドパスフィルタのインパルス応答で構成されるオーバーコンプリートな基底群によって、信号ベクトルをスパースな展開係数により表現する。これにより、特定の特徴を持つ主要なバンドパスフィルタの出力のみが大きな値を取り、他のバンドパスフィルタへの漏れ出しが低減される結果を得ることができる。このスパースな展開係数を得ることは、各バンドパスフィルタ相互の冗長性を排除することに相当している。
【0087】
また、一般にスパースな展開係数は計算コストが高い場合が多いため、あらかじめ、分析の上で関心のない雑音成分の影響を排除できる場合には、雑音成分を除去するフィルタリング処理を分析対象の信号に適用することで信号の特徴空間を狭め、より少ない基底群のもとで展開係数を得ることができる。基底群の数を分析対象の信号ベクトルのサンプル数よりも小さくできれば、最小二乗法などの簡易な計算アルゴリズムを適用することができる。
【0088】
この発明で分析対象とする入力信号は、音響信号または心臓の拍動、脈、呼吸をはじめとする、任意の周期性を有する生理現象と関連を持つ生体信号(例えば、心電図、脈波、呼吸曲線)とする。これらの分析対象となる入力信号は、ほぼ同じ大きさと形状を持つ局在した波形パターンが、ほぼ周期的な時間間隔で繰り返される。また、心電波形におけるQRS波やT波のように複数の波形パターンが出現したり、ノイズが混入して観測される場合もある。本発明は、このような信号において、注目する波形パターンの出現と同期して大きな値(ピーク値)を出力することで、これらの信号の特徴の抽出に寄与する。なお、本発明では、生体信号の計測手法については問わないこととする。心臓の拍動を例に挙げると、心臓の拍動に伴う電気活動を計測する手法である心電図を対象としても良いし、心臓の拍動に伴う皮膚の振動を加速度計で計測するSeismocardiography(SCG)やBallistocardiography(BCG)を対象としても良い。以上に記載のない生体信号についても、上記特性を有するものであれば分析対象に含めても良い。
【0089】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計の変更等があっても、この発明に含まれることはいうまでもない。実施の形態において説明した各種の処理は、記載の順に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。
【0090】
[プログラム、記録媒体]
上記実施形態で説明した各装置における各種の処理機能をコンピュータによって実現する場合、各装置が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記各装置における各種の処理機能がコンピュータ上で実現される。
【0091】
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよい。
【0092】
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD-ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
【0093】
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の記録媒体に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。また、サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。なお、本形態におけるプログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
【0094】
また、この形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、本装置を構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。