【実施例1】
【0017】
本発明の実施例について
図1乃至3および
図5を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る真空処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【0018】
図1において、真空処理装置は、大きく分けて、円筒形の部分を有した容器である真空容器101と、この真空容器101の上方に配置されて真空容器101の内部に供給された処理用のガスに電界または磁界を供給して放電させてプラズマを生成させる放電部103と、真空容器101の下方でこれに連結されて配置され真空容器101内部を減圧するために排気するターボ分子ポンプ等の排気ポンプ102を含む排気部とを有する。また真空容器101はその外側面に処理対象の半導体ウエハ等の板状の試料がその内側を通って搬送される開口であるゲートを有し、このゲートを囲む外側壁面が、減圧された内部に配置された搬送用のロボットのアームに載せられてウエハが当該内部の空間を搬送される搬送室104を内部に有する別の真空容器である真空搬送容器と連結されている。
【0019】
真空容器101は、その内側にプラズマが形成されウエハがプラズマにより処理を施される処理室を有している。処理室は、上部に円筒形を有してプラズマが形成される放電室を有し、放電室の下方には円筒形の試料台105の周囲の空間であって放電室内部のガスやプラズマ等の粒子が流れて排気される排気用の空間を有している。
【0020】
また、図示しないガス源からの処理用のガスが導入される複数のガス導入孔が試料台105のウエハ載置面の上方の処理室の天井面に配置され、真空容器101の下面に接続された排気ポンプ102と処理室の内部との間を連通する排気口が試料台105の下方の処理室下部に配置されている。ガス導入孔からのガスの導入と排気ポンプ102によるガスの排出とのバランスにより処理室内部の圧力がプラズマの形成やこれによる処理に適した値の真空度に保たれている。
【0021】
真空容器101の放電室の上方及び外側の周囲に配置された放電部103は、形成した電界を伝播して放電室の上方から内部に導入する導波管とこの導波管の下部と放電室の外周とを囲んで配置されて放電室の内部に磁界を供給するソレノイドコイルを具備している。また、導波管は上下方向に延在する円筒形部と円筒形部の上端とその一端部が連結されて水平方向に延在する断面矩形状の矩形部とを有し、矩形部の他端側部にはマイクロ波の電界を発振して形成するマグネトロンが配置されている。
【0022】
円筒形部の下端には半径が大きくされた円筒形の室であって内部に伝播して導入されたマイクロ波の電界が特定のモードでその強度を大きくされる共振室が配置され、共振室の下面は放電室の上方で真空容器101の上部の蓋を構成する石英等マイクロ波の電界または磁界を透過させる誘電体製の円板の上面により構成されている。また、円板の下方にはこれと隙間を開けて配置され放電室の天井面を構成し電界または磁界を透過する誘電体製の円板であって上記ガス導入孔が配置されたシャワープレートが配置されている。
【0023】
このような真空処理装置においては、処理室内部の圧力と搬送室104内部の圧力とが略同一にされたことが検出されると、搬送室104内部に配置されて上記ゲートを開放または気密に封止するゲートバルブが解放され搬送室104と処理室内部とが連通された状態にされる。次に、搬送ロボットのアームが伸長してアーム上に載せられてウエハが処理室内部に搬入されて試料台105の上面の上方に突出した複数のピンの先端上に載せられて受け渡される。
【0024】
アームが収縮されて処理室から退出した後、複数のピンが下方に移動して試料台105の内部に先端部まで収納されるとウエハが試料台105の載置面上に接して載せられる。ゲートバルブにより処理室と搬送室104とが気密に区画される。この後、ウエハは試料台105上の載置面を構成する誘電体製の膜上面に載せられて静電気力により吸着されて保持される。この状態で、シャワープレートのガス導入孔から放電室内にガスが導入され、上記の通り、処理ガスの導入量と排気ポンプ102による排気量とのバランスにより、処理室の内部、特には放電室の内部の圧力がウエハの処理に適した真空度の値に調節される。
【0025】
放電部103から供給された電界及び磁界により、処理ガスが励起されてプラズマが放電室内部に形成される。試料台105の内部には金属製の円板状の部材が配置されて、所定の周波数の電力を供給する高周波電源と電気的に接続されており、プラズマの形成後に供給された高周波電力により試料台105上に吸着保持されたウエハ上面上方にバイアス電位が形成され、この電位とプラズマ内部の電位との差によりプラズマ中の荷電粒子がウエハ上面に誘引されてウエハの処理が開始される。
【0026】
試料台105の内部には、ウエハの処理均一性や安定性を高めるため、温調循環液の流路が設けられており、配管によりサーキュレータ129と接続されている。温調循環液はサーキュレータ129により所定の温度に温調され試料台105へ移送されてウエハの温調を行う。
【0027】
処理が終了したことが検出されプラズマが消火されてウエハの静電気力による吸着が解除された後、複数のピンが試料台105の内部から上方に移動してウエハを試料台105の上面上方に持ち上げて離間させる。この状態で、ゲートバルブがゲートを開放して搬送ロボットがアーム先端部を処理室内部のウエハ下方に進入させてその上面に載せて受け取って保持する。この後、アームの収縮の動作により処理室から搬送室104内部にウエハが搬出される。
【0028】
次に、温調循環液の配管の構成について
図2、
図3及び
図5を用いて詳細に説明する。
【0029】
図2は、
図1に示す真空処理装置における温調循環液配管の構成を拡大して示す図である。
図3は、
図2に示す温調循環液配管の継手部分の軸断面図である。
【0030】
図2において、温調循環液配管には、断熱性を高めるため、トランスファーチューブ106が用いられている。トランスファーチューブ106には真空断熱のための真空ポンプ107が接続されている。温調循環液は、サーキュレータ129で所望の温度に温調され、トランスファーチューブ106を通じて試料台105へ移送される。
【0031】
図3において、符号108は温調循環液流路であり、真空断熱配管継手109の雄側内管110及び雌側内管111により形成されている。なお、いずれの内管が試料台側でもよい。
【0032】
雄側内管110の外側には雄側外管112が、雌側内管111の外側には雌側外管113が設けられており、各々の間に雄側真空断熱空間114及び雌側真空断熱空間115が形成されている。
【0033】
真空断熱配管継手109には雄側締結フランジ116及び雌側締結フランジ117が設けられており、フランジ固定ボルト118で締結され、真空断熱空間シール用Oリング119によってシールされている。雄側締結フランジ116に設けられ真空断熱空間シール用Oリング119が取り付けられる溝部をシール部と呼ぶ。なお、シール部は雌側締結フランジに設けることもできる。
【0034】
雄側締結フランジ116からは、継手部断熱内管120を雄側外管112より管径を小さくして突出させてその先端に雄側内管継手121を設けている。
【0035】
また、雌側締結フランジ117からは、前述の突出させた継手部断熱内管120の外径より内径を大きく且つ雌側外管113の内径より外径を小さくして継手部断熱外管122を凹入させてその先端に雌側内管継手123を設け、雄側内管継手121、温調循環液流路シール用Oリング124とともに温調循環液流路シールを行っている。雄側内管継手121に設けられ温調循環液流路シール用Oリング124が取り付けられる溝部をシール部と呼ぶ。なお、シール部は雌側内管継手に設けることもできる。
【0036】
継手部断熱内管120と継手部断熱外管122の間には、継手間真空断熱空間125が形成されており、継手部断熱外管連通孔126及び継手部断熱内管連通孔127を通して雄側真空断熱空間114及び雌側真空断熱空間115と連通している。前記真空断熱空間は、真空排気配管128で真空ポンプ107に接続されており、前記連通孔126及び127を通して、継手間にわたって真空断熱空間の排気を行っている。
【0037】
図5は、
図3に示す温調循環液配管の継手部分が接続される前の状態を示す軸断面図である。雄側締結フランジ116、真空断熱空間シール用Oリング119、継手部断熱内管120、雄側内管継手121、温調循環液流路シール用Oリング124、継手部断熱内管連通孔127等は、雄側継手に配置されている。一方、雌側締結フランジ117、継手部断熱外管122、雌側内管継手123、継手部断熱外管連通孔126等は、雌側継手に配置されている。なお、真空断熱空間シール用Oリング119及び温調循環液流路シール用Oリング124の少なくとも一方を雌側継手に配置することもできる。
【0038】
本実施例の構成によれば、温調循環液の流路となる内管を真空断熱空間に納めて外部に露出しないため、断熱性の向上及び液漏れ防止が可能となる。
【0039】
また、温調循環液と真空断熱排気の継手が一体となっているので、真空断熱用の排気接続継手のための空間を余分に必要とせず、省スペース化が可能となる。また、温調循環液と真空断熱排気の接続の着脱が同時に行えるため着脱作業が容易であり、着脱作業の効率が向上する。
【0040】
さらに、真空断熱空間を連通させる孔を雄雌継手の断熱管に設けることで、断熱管の断面積が減少し、流体流路となる内管から配管外部までの熱抵抗が増大し、断熱管壁を薄くするのと等価な断熱性向上作用が生じる。
【0041】
さらにまた、断熱管に連通孔を設けることで、連通孔のために余分なスペースを必要としないので、継手全体のサイズを大型化することなく、真空断熱排気の接続機能を追加することができる。
【0042】
以上本実施例によれば、真空断熱配管継手の断熱性能を確保可能な真空処理装置を提供することができる。更に、液漏れ防止、省スペース、着脱作業容易化の少なくとも一つを実現可能な真空処理装置を提供することができる。
【0043】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。