特許第6804945号(P6804945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6804945酸化亜鉛鉱の製造プラントにおける排ガスの処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804945
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】酸化亜鉛鉱の製造プラントにおける排ガスの処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/64 20060101AFI20201214BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20201214BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20201214BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   B01D53/64 100
   C22B1/00 601
   C22B1/02ZAB
   F27D17/00 104G
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-225422(P2016-225422)
(22)【出願日】2016年11月18日
(65)【公開番号】特開2018-79456(P2018-79456A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032177
【氏名又は名称】住友金属鉱山エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】高谷 悟
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 弘志
(72)【発明者】
【氏名】越野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】関川 努
(72)【発明者】
【氏名】阿部 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 正裕
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢司
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−124389(JP,A)
【文献】 特開2015−202474(JP,A)
【文献】 特開2006−328451(JP,A)
【文献】 特開2011−056500(JP,A)
【文献】 特開2012−011317(JP,A)
【文献】 特開2009−166012(JP,A)
【文献】 特開平07−308542(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/153046(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0120935(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34−53/85
C22B 1/00−61/00
F27D 17/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛鉱の製造プラントにおける排ガスの処理方法であって、
酸化亜鉛鉱の製造原料を還元焙焼して粗酸化亜鉛ダストを生成する処理にて排出される排ガスに、活性炭を吹き込み、原料の粗酸化亜鉛に含まれる水銀を該活性炭に吸着させて該粗酸化亜鉛ダストと共に回収し、
前記粗酸化亜鉛ダストと前記水銀を吸着させた活性炭とを含む回収物に対して湿式処理を施して粗酸化亜鉛ケーキを生成させ、
前記粗酸化亜鉛ケーキを焼成することにより該粗酸化亜鉛ケーキに含まれる水銀を揮発させたのち、その揮発させた水銀を含む排ガスに酸化剤を噴霧することによって該水銀を酸化す
排ガスの処理方法。
【請求項2】
前記酸化剤の噴霧により酸化させて得られた水銀のダストを前記排ガスから除去するとともに、さらに、該排ガスを水銀吸着剤が充填された充填塔に通過させる
請求項1に記載の排ガスの処理方法。
【請求項3】
前記酸化剤は、次亜塩素酸ソーダ水溶液又は過マンガン酸カリウム水溶液である
請求項1又は2に記載の排ガスの処理方法。
【請求項4】
前記水銀吸着剤は、粒子の最大長さが25mm以下であり、粒径が1mm以上の粒コークスの表面に、銅精鉱、亜鉛精鉱、及び鉛精鉱のいずれか1種以上が付着したものである
請求項2に記載の排ガスの処理方法。
【請求項5】
前記酸化亜鉛鉱の製造プラントは、
酸化亜鉛鉱の製造原料を還元焙焼して粗酸化亜鉛ダストを生成させる還元焙焼炉と、
前記還元焙焼炉の燃焼排ガスから粗酸化亜鉛ダストを回収する乾式電気集塵機と、
前記乾式電気集塵機の処理排ガスから粗酸化亜鉛ダストを回収するバグフィルターと、
前記乾式電気集塵機及び前記バグフィルターにて回収した粗酸化亜鉛ダストを湿式処理することにより粗酸化亜鉛ケーキを得る湿式処理設備と、
前記粗酸化亜鉛ケーキを焼成することにより酸化亜鉛焼鉱を製造する乾燥加熱炉と、
前記乾燥加熱炉の燃焼排ガスを洗浄液で洗浄するガス洗浄塔と、
直列に複数の湿式電気集塵機が配列されており、前記ガス洗浄塔の処理排ガスからダストを除去する湿式電気集塵機群と、を備える
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の排ガスの処理方法。
【請求項6】
さらに、水銀吸着剤が充填されており、前記湿式電気集塵機群からの処理排ガスを該水銀吸着剤に通過させる充填塔を備える
請求項5に記載の排ガスの処理方法。
【請求項7】
前記活性炭は、前記バグフィルターの上流側において前記乾式電気集塵機の処理排ガスに吹き込まれる
請求項5又は6に記載の排ガスの処理方法。
【請求項8】
前記酸化剤は、前記湿式電気集塵機群において、該酸化剤が噴霧された排ガスが少なくとも1基以上の湿式電気集塵機を通過する位置で、前記排ガスに噴霧される
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の排ガスの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスの処理方法に関するものであり、より詳しくは、酸化亜鉛鉱の製造プラントにおいて排出される排ガスの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛製錬所における亜鉛地金の原料として、粗酸化亜鉛等の亜鉛含有鉱から不純物を分離除去して得られる酸化亜鉛鉱が広く用いられている。
【0003】
酸化亜鉛鉱を製造する原料としては、例えば、鉄鋼業における高炉や電気炉等の製鋼炉から発生する副産物であって、鉄成分以外に比較的多くの亜鉛が含まれている鉄鋼ダストがある。このような鉄鋼ダストを製造原料として用い、還元焙焼することによって、その鉄鋼ダストに含有される亜鉛を回収して酸化亜鉛鉱を製造する、酸化亜鉛鉱の製造プラントが稼働している。
【0004】
一般的に、鉄鋼ダストに対する還元焙焼処理は、還元焙焼用ロータリーキルン(以降、「RRK」と称することがある)による還元焙焼(所謂、ウェルツ法)により行われる。この方法により、還元焙焼された鉄鋼ダスト中に含まれる亜鉛が還元焙焼用のロータリーキルン内において還元揮発されることによって、粗酸化亜鉛ダストとして回収される。
【0005】
還元焙焼処理によって得られた粗酸化亜鉛ダストには、塩素、フッ素等の水溶性不純物が含有されている。そのため、続く湿式工程において水溶性不純物が除去される。
【0006】
具体的に、湿式工程では、粗酸化亜鉛ダストを処理液でレパルプ水洗することにより、塩素、フッ素等を処理液中に分離抽出する。そして、さらに固液分離処理を施すことによって、粗酸化亜鉛ダストから塩素、フッ素等を除去する。このような処理を経ることで、粗酸化亜鉛ケーキが得られる。
【0007】
次いで、湿式工程で得られた粗酸化亜鉛ケーキは、乾燥加熱工程において、乾燥加熱用のロータリーキルン(以降、「DRK」と称することがある)に装入される。そして、DRKにて焼成されることにより、酸化亜鉛鉱が製造される。
【0008】
ところで、日本国において、2013年10月に水銀排出の規制を強化する「水俣条約」が採択された。これを受けて、BAT(利用可能な裁量技術)による大気への水銀排出低減のため、2016年9月に「大気汚染防止法の一部を改正する法律」が成立した。この「大気汚染防止法の一部を改正する法律」は、2018年12月より施行される見込みとなっている。
【0009】
そこで、現状、さらなる大気への水銀排出量の低減は、社会から産業界への喫緊の要請となっており、特に重金属負荷の高い非鉄製錬業においては重要な課題となっている。
【0010】
そしてそのことは、上述したような、粗酸化亜鉛を還元焙焼用ロータリーキルンにて還元焙焼することにより粗酸化亜鉛に含有される亜鉛を回収して酸化亜鉛鉱を製造する、酸化亜鉛鉱の製造プラントにおいても例外では無い。
【0011】
従来、酸化亜鉛鉱の製造プラントにおいては、RRK及びDRKの排ガスに活性炭を噴霧することにより、排ガス中に含有される水銀をその活性炭に吸着させて除去していた。しかしながら、このような従来の方法では、水銀の除去効率が必ずしも十分とは言えず、排ガス中の水銀濃度を管理基準値以下に抑えるためには、水銀を含有した原料の処理制限が必要な場合もあった。
【0012】
また、例えば、特許文献1には、石炭焚きボイラからの排ガス中の水銀を除去する石炭焚きボイラの排ガス処理システム及びその運転方法が開示されている。また、特許文献2には、脱硝装置の後流側においてさらに残存する水銀を除去し、排ガス中の水銀濃度を極低濃度まで除去する排ガス中の水銀処理システムが開示されている。
【0013】
しかしながら、これらの開示技術は、処理対象物が石炭焚きボイラからの排ガスであり、既存の脱硝設備及び脱硫設備と組み合わせることにより最適化を図ったものであって、処理対象物が粗酸化亜鉛ダストを含んだロータリーキルンの排ガスであり、脱硝設備及び脱硫設備を備えない酸化亜鉛鉱の製造プラントには有効に適用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−166012号公報
【特許文献2】特開2012−011317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、設備コスト等を増大させることなく、酸化亜鉛鉱の製造プラントから排出される排ガスから、効率的にかつ確実に水銀を除去することができる排ガスの処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、酸化亜鉛鉱の製造原料を還元焙焼して粗酸化亜鉛を生成する処理にて排出される排ガスに、活性炭を吹き込み、原料の粗酸化亜鉛に含まれる水銀をその活性炭に吸着させて粗酸化亜鉛ダストと共に回収し、また、その回収物に基づいて得られた粗酸化亜鉛ケーキを焼成する処理で生じた排ガスに酸化剤を噴霧することによって水銀を酸化して除去することにより、効率的にかつ確実に水銀を除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
(1)本発明の第1の発明は、酸化亜鉛鉱の製造プラントにおける排ガスの処理方法であって、酸化亜鉛鉱の製造原料を還元焙焼して粗酸化亜鉛ダストを生成する処理にて排出される排ガスに、活性炭を吹き込み、原料の粗酸化亜鉛に含まれる水銀を該活性炭に吸着させて該粗酸化亜鉛ダストと共に回収し、前記粗酸化亜鉛ダストと前記水銀を吸着させた活性炭とを含む回収物に対して湿式処理を施して粗酸化亜鉛ケーキを生成させ、前記粗酸化亜鉛ケーキを焼成することにより該粗酸化亜鉛ケーキに含まれる水銀を揮発させたのち、その揮発させた水銀を含む排ガスに酸化剤を噴霧することによって該水銀を酸化して除去する、排ガスの処理方法である。
【0018】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記酸化剤の噴霧により酸化させた水銀を前記排ガスから除去するとともに、さらに、該排ガスを水銀吸着剤が充填された充填塔に通過させる、排ガスの処理方法である。
【0019】
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記酸化剤は、次亜塩素酸ソーダ水溶液又は過マンガン酸カリウム水溶液である、排ガスの処理方法である。
【0020】
(4)本発明の第4の発明は、第2の発明において、前記水銀吸着剤は、粒子の最大長さが25mm以下であり、粒径が1mm以上の粒コークスの表面に、銅精鉱、亜鉛精鉱、及び鉛精鉱のいずれか1種以上が付着したものである、排ガスの処理方法である。
【0021】
(5)本発明の第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記酸化亜鉛鉱の製造プラントは、酸化亜鉛鉱の製造原料を還元焙焼して粗酸化亜鉛ダストを生成させる還元焙焼炉と、前記還元焙焼炉の燃焼排ガスから粗酸化亜鉛ダストを回収する乾式電気集塵機と、前記乾式電気集塵機の処理排ガスから粗酸化亜鉛ダストを回収するバグフィルターと、前記乾式電気集塵機及び前記バグフィルターにて回収した粗酸化亜鉛ダストを湿式処理することにより粗酸化亜鉛ケーキを得る湿式処理設備と、前記粗酸化亜鉛ケーキを焼成することにより酸化亜鉛焼鉱を製造する乾燥加熱炉と、前記乾燥加熱炉の燃焼排ガスを洗浄液で洗浄するガス洗浄塔と、直列に複数の湿式電気集塵機が配列されており、前記ガス洗浄塔の処理排ガスからダストを除去する湿式電気集塵機群と、を備える、排ガスの処理方法である。
【0022】
(6)本発明の第6の発明は、第5の発明において、さらに、水銀吸着剤が充填されており、前記湿式電気集塵機群からの処理排ガスを該水銀吸着剤に通過させる充填塔を備える、排ガスの処理方法である。
【0023】
(7)本発明の第7の発明は、第5又は第6の発明において、前記活性炭は、前記バグフィルターの上流側において前記乾式電気集塵機の処理排ガスに吹き込まれる、排ガスの処理方法である。
【0024】
(8)本発明の第8の発明は、第5乃至第7のいずれかの発明において、前記酸化剤は、前記湿式電気集塵機群において、該酸化剤が噴霧された排ガスが少なくとも1基以上の湿式電気集塵機を通過する位置で、前記排ガスに噴霧される、排ガスの処理方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、設備コスト等を増大させることなく、酸化亜鉛鉱の製造プラントから排出される排ガスから、効率的にかつ確実に水銀を除去することができる排ガスの処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】酸化亜鉛鉱の製造プロセスの一例を示すフロー図である。
図2】酸化亜鉛鉱の製造プラントの構成の概要を示す図であり、その製造プラントから排出される排ガスの処理方法について説明するための図である。
図3】粗酸化亜鉛の製造プラントから排出される排ガスの処理方法に関して、従来の方法(比較例1)について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で変更が可能である。また、本明細書にて、「X〜Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
【0028】
≪1.概要≫
本発明は、酸化亜鉛鉱の製造プラントにおける排ガスの処理方法である。酸化亜鉛鉱の製造プラントでは、鉄鋼業における高炉や電気炉等の製鋼炉から発生する鉄鋼ダスト等の粗酸化亜鉛を原料として用いて、その粗酸化亜鉛を還元焙焼し、粗酸化亜鉛に含まれる亜鉛を回収することによって酸化亜鉛鉱を製造する。
【0029】
本発明に係る排ガスの処理方法は、このような酸化亜鉛鉱の製造プラントから排出される排ガスの処理方法であって、その排ガスに含まれる水銀を効率的にかつ確実に除去する方法である。
【0030】
具体的に、この排ガスの処理方法においては、先ず、酸化亜鉛鉱の製造原料を還元焙焼して粗酸化亜鉛ダストを生成する処理にて排出される排ガスに、活性炭を吹き込み、原料の粗酸化亜鉛に含まれる水銀をその活性炭に吸着させて粗酸化亜鉛ダストと共に回収する。次に、粗酸化亜鉛ダストと水銀を吸着させた活性炭とを含む回収物に対して湿式処理を施して粗酸化亜鉛ケーキを生成させる。そして、得られた粗酸化亜鉛ケーキを焼成することによりその粗酸化亜鉛ケーキに含まれる水銀を揮発させたのち、その揮発させた水銀を含む排ガスに酸化剤を噴霧することによって水銀を酸化して除去する。
【0031】
また、この排ガスの処理方法においては、酸化剤の噴霧により酸化させた水銀を排ガスから除去するとともに、さらに、その排ガスを水銀吸着剤が充填された充填塔に通過させる処理を行うようにしてもよい。これにより、酸化剤の噴霧によっても酸化されずに残存した水銀、すなわち除去されずに排ガス中に残存した水銀を、水銀吸着剤に吸着させて除去することができ、排ガス中の水銀をより確実に除去することができる。
【0032】
このような本発明に係る排ガスの処理方法によれば、酸化亜鉛鉱の製造プラントから排出される排ガス中の水銀を80%以上の高い除去率で効果的に除去することができる。さらに、上述したように酸化剤の噴霧によっても酸化されずに残存した水銀を、水銀吸着剤に吸着させて除去する処理を併用することで、その水銀の除去率を85%以上とさらに向上させることができる。なお、水銀の除去率とは、酸化亜鉛鉱の製造プラントにおける全ての処理原料に含まれる水銀の重量に対して、当該排ガスの処理方法により回収除去できる水銀の重量の割合をいう。
【0033】
上述したように、本発明に係る排ガスの処理方法は、酸化亜鉛鉱の製造プラントにおける排ガスの処理方法であって、粗酸化亜鉛を原料として用いた酸化亜鉛鉱の製造プロセスと並行して行われるものである。以下では、先ず、酸化亜鉛鉱の製造プロセスについて、その製造プロセスを実行する製造プラントについても詳述しながら説明する。
【0034】
≪2.酸化亜鉛鉱の製造プロセス≫
図1は、酸化亜鉛鉱の製造プロセスの一例を示すフロー図である。図1に示すように、酸化亜鉛鉱の製造方法は、鉄鋼ダスト等の製造原料を還元焙焼して粗酸化亜鉛ダストを得る還元焙焼工程S10と、得られた粗酸化亜鉛ダストから不純物成分を分離除去して粗酸化亜鉛ケーキを得る湿式工程S20と、粗酸化亜鉛ケーキを乾燥加熱して酸化亜鉛鉱を得る乾燥加熱工程S30と、を有する。また、乾燥加熱工程S30で発生した燃焼排ガスを洗浄する排ガス洗浄工程S40を有する。
【0035】
[還元焙焼工程]
還元焙焼工程S10は、鉄鋼ダスト等の原料を還元焙焼することによって粗酸化亜鉛ダストを得る工程である。具体的に、還元焙焼工程S10における還元焙焼処理は、還元焙焼ロータリーキルン(以降、「RRK」と表記する)による焙焼法に基づいて行われる。以下、粗酸化亜鉛の原材料として鉄鋼ダストを用い、RRKによって還元焙焼を行う場合について説明する。
【0036】
還元焙焼処理においては、製造原料の鉄鋼ダストを、必要に応じて予め5mm〜10mm程度の大きさのペレットに成形し、石炭、コークス等の炭素質還元剤と、融点を上昇させて炉内での付着物生成を抑えるための石灰石等のカルシウム源と共に、RRKに連続的に装入する。RRKの炉内では、重油の燃焼と装入した炭素質還元剤の燃焼により、被処理物の最高温度が1100℃〜1200℃程度となるようにコントロールする。そして、このRRKの炉内において、鉄鋼ダストを還元焙焼することによって、その還元焙焼により揮発した金属亜鉛が炉内で再酸化されて粉状の酸化亜鉛となる。また、鉄鋼ダスト中に少量含まれる鉛については、酸化鉛として揮発する。なお、例えばハロゲンが鉄鋼ダスト中に多量に存在する場合、一部の金属亜鉛及び鉛はハロゲン化合物として揮発する。
【0037】
還元焙焼により生成した粉状の酸化亜鉛及び酸化鉛は、RRKからの排出ガス(燃焼排ガス)と共に乾式電気集塵機に導入され、その集塵機にて捕捉されて粗酸化亜鉛のダスト(粗酸化亜鉛ダスト)として回収される。なお、揮発せずに炉内に残った還元焙焼残渣は、還元された鉄分が多く含まれるため、還元鉄ペレットと称する製品としてキルン排出端より回収され、鉄鋼メーカー等にて使用される鉄原料として払い出される。
【0038】
RRKからの燃焼排ガスが乾式電気集塵機に導入され、粗酸化亜鉛ダストが捕捉された後、その乾式電気集塵機からの処理排ガスはバグフィルターに導入され、そのバグフィルターにより捕捉された粗酸化亜鉛ダストも回収される。このとき、本実施の形態においては、乾式電気集塵機から排出される処理排ガスに活性炭を吹き込み、活性炭を吹き込んだ排ガスをバグフィルターに導入するようにする。詳しくは後述する。なお、バグフィルターにて処理された後の排ガスは、RRK排ガスとして、ファン等の排風機を経由して煙突から放出される。
【0039】
このようにして、還元焙焼工程S10における処理で得られる粗酸化亜鉛ダストには、一般的に、8質量%〜20質量%程度のハロゲン等の不純物(水溶性不純物)が含まれている。なお、還元焙焼工程S10における処理においては、例えば、得られる粗酸化亜鉛ダスト中のフッ素濃度が0.3%質量%未満となるように調整することが好ましい。
【0040】
[湿式工程]
湿式工程S20は、還元焙焼工程S10を経て回収された粗酸化亜鉛のダストから不純物成分を分離除去して粗酸化亜鉛ケーキを得る工程である。
【0041】
上述したように、還元焙焼して得られる粗酸化亜鉛ダスト中には、塩素、フッ素等のハロゲン系不純物成分が含まれている。そこで、その粗酸化亜鉛ダストに対して処理液を用いてレパルプ洗浄することによって、その処理液中に不純物成分を抽出分離する。そしてさらに、固液分離処理を行うことによって粗酸化亜鉛ダストから不純物成分を除去する。このような水洗浄法等の処理を経て、粗酸化亜鉛ダストは不純物成分が除去された粗酸化亜鉛ケーキとなる。
【0042】
より具体的に、湿式工程S20では、得られた粗酸化亜鉛ダストを工業用水等の処理液を用いてレパルプ洗浄する。また、このレパルプ洗浄においては、アルカリ溶液を使用する必要はない。このようなレパルプ洗浄によりスラリーとなった粗酸化亜鉛は、pH調整及び凝集処理を行い、その後1次脱水を行う。なお、pH調整においては、およそpHが6〜7程度の弱酸性溶液に調整し、これにより粗酸化亜鉛に含まれるカドミウムを処理液中に溶離させる。また、凝集処理においては、適宜凝集剤を利用して、沈降性を高める。この1次脱水の後、工業用水で希釈して、さらに2次脱水を行う。この2度の洗浄脱水により、得られる粗酸化亜鉛ケーキのハロゲン濃度としては、例えば、フッ素濃度が0.6質量%未満、塩素濃度が1.0質量%未満にまで低減される。
【0043】
フッ素等の不純物が処理液中に除去された状態において、固液分離処理を施すことにより、不純物が分配された処理液をスラリーから除去する。これにより、スラリー状の粗酸化亜鉛ダストが、粗酸化亜鉛を濃縮させた粗酸化亜鉛ケーキとなる。なお、固液分離のための脱水処理においては、シックナー等の重力沈降式スラリー濃縮装置や真空脱水機等の水分強制脱水装置を用いることができる。
【0044】
[乾燥加熱工程]
乾燥加熱工程S30は、湿式工程S20を経て得られた粗酸化亜鉛ケーキを乾燥加熱して酸化亜鉛鉱(粗酸化亜鉛焼鉱)を得る工程である。具体的に、乾燥加熱工程S30における乾燥加熱処理は、乾燥加熱ロータリーキルン(以降、「DRK」と表記する)等の乾燥加熱装置を用い、装置に装入させた粗酸化亜鉛ケーキを焼成することで行われる。この乾燥加熱工程S30における処理により、フッ素等のハロゲン濃度をさらに低減させた、高品位の酸化亜鉛鉱を製造することができる。
【0045】
乾燥加熱処理においては、DRK内の温度を例えば1100℃〜1150℃程度となるように維持管理して、装置内に装入した粗酸化亜鉛ケーキを焼成する。粗酸化亜鉛ケーキは、含水ケーキ状のまま、スクリューフィーダ等の定量装入装置によってDRKに投入される。そして、DRKに装入された粗酸化亜鉛ケーキは、長さ30m程度のDRKの内部の装入端側でペレット状に造粒され、次に乾燥され、加熱され、排出端側で焼成される。
【0046】
このような乾燥加熱処理を経ることにより、DRKから酸化亜鉛鉱が製造され排出される。排出される酸化亜鉛鉱としては、そのサイズは概ね1mm〜6mm程度であり、その一般的な組成は、亜鉛が60質量%〜70質量%程度、鉛が3質量%〜5質量%程度、塩素が0.5質量%〜1.5質量%程度、フッ素が0.6質量%以下程度の割合でそれぞれ含まれているものである。なお、各元素の含有量は、乾燥量基準である。
【0047】
なお、DRKで発生する排ガスは、ガス洗浄塔、湿式電気集塵機(以降、「ミストコットレル」と称する)に移送され、排ガス洗浄工程S40において排ガスの洗浄処理が行われる。
【0048】
[排ガス洗浄工程]
排ガス洗浄工程S40は、乾燥加熱工程S30にてDRKから発生した排ガス(燃焼排ガス)を洗浄する工程である。具体的に、排ガス洗浄工程S40においては、湿式のガス洗浄塔と湿式電気集塵機とを組み合わせた設備により行われる。
【0049】
このような洗浄処理により、排ガス中の固形分であるDRKダストが固気分離され、ダストケーキとして回収される。回収されたダストケーキは、乾燥加熱工程S30において用いられるDRK31に循環装入される。一方、洗浄処理によりダストを分離した排ガスは、DRK排ガスとしてファン等の排風機を経由して煙突から放出される。
【0050】
本実施の形態では、この排ガス洗浄工程S40において、排ガスに酸化剤を噴霧することによって、排ガス中に含まれる水銀を酸化させ除去する。また、より好ましくは、排ガス洗浄工程S40を経て放出される処理後の排ガスを水銀吸着剤が充填された充填塔に通過させ、酸化剤噴霧により酸化されずに排ガス中に残留した水銀を吸着除去する。このような方法により、放出される排ガス中に含まれる水銀を効率的にかつ確実に低減させることができる。詳しくは後述する。
【0051】
≪3.酸化亜鉛鉱の製造プラントにおける排ガスの処理方法≫
次に、酸化亜鉛鉱の製造プラントにおける排ガスの処理方法についてより詳細に説明する。図2は、酸化亜鉛鉱の製造プラントの構成の概要を示す図であり、図1を用いて説明した酸化亜鉛鉱の製造プロセスに沿って各種の処理設備が設けられている。
【0052】
具体的に、酸化亜鉛鉱の製造プラント1(以降、単に「製造プラント1」ともいう)は、酸化亜鉛鉱の製造原料である鉄鋼ダストを還元焙焼して粗酸化亜鉛を生成させる還元焙焼炉11と、還元焙焼炉11の燃焼排ガスから粗酸化亜鉛ダストを回収する乾式電気集塵機12と、乾式電気集塵機の処理排ガスから粗酸化亜鉛ダストを回収するバグフィルター13と、を備えている。
【0053】
また、製造プラント1は、乾式電気集塵機12及びバグフィルター13にて回収した粗酸化亜鉛ダストを湿式処理することにより粗酸化亜鉛ケーキを得る湿式処理設備21を備えている。
【0054】
さらに、製造プラント1は、湿式処理設備21にて精製した粗酸化亜鉛ケーキを焼成することにより酸化亜鉛焼鉱を製造する乾燥加熱炉31と、乾燥加熱炉31の燃焼排ガスを洗浄液で洗浄するガス洗浄塔32と、直列に複数の湿式電気集塵機33a,33bが配列されており、ガス洗浄塔32の処理排ガスからダストを除去する湿式電気集塵機群33と、を備えている。
【0055】
またさらに、製造プラント1は、湿式電気集塵機群33の下流側に、水銀吸着剤が充填されている充填塔を備えており、湿式電気集塵機群33からの処理排ガスをその水銀吸着剤に通過させる。
【0056】
本実施の形態に係る排ガスの処理方法は、上述した酸化亜鉛鉱の製造プラント1における水銀を含む排ガスの処理方法である。具体的に、この排ガスの処理方法は、酸化亜鉛鉱の製造原料を還元焙焼して粗酸化亜鉛ダストを生成する処理にて排出される排ガスに、活性炭を吹き込み、原料の粗酸化亜鉛に含まれる水銀をその活性炭に吸着させて粗酸化亜鉛ダストと共に回収し、粗酸化亜鉛ダストと水銀を吸着させた活性炭とを含む回収物に対して湿式処理を施して粗酸化亜鉛ケーキを生成させ、粗酸化亜鉛ケーキを焼成することにより水銀を揮発させたのち、その揮発させた水銀を含む排ガスに酸化剤を噴霧することによって水銀を酸化して除去する。酸化剤の噴霧により酸化させた水銀を排ガスから除去するとともに、さらに、好ましくは、その排ガスを水銀吸着剤が充填された充填塔に通過させる。
【0057】
<3−1.RRK排ガスの処理方法>
先ず、酸化亜鉛鉱の製造プラント1では、図2に示すように、酸化亜鉛鉱の製造原料である鉄鋼ダストを還元焙焼して粗酸化亜鉛ダストを生成する処理にて排出される排ガスに、活性炭を吹き込み、その原料の粗酸化亜鉛に含まれる水銀を活性炭に吸着させて粗酸化亜鉛ダストと共に回収する。
【0058】
[還元焙焼炉]
酸化亜鉛鉱の製造プラント1においては、上述したように、酸化亜鉛鉱の製造原料である鉄鋼ダストを還元焙焼する還元焙焼炉11が設けられている。還元焙焼炉11としては、還元焙焼ロータリーキルン(RRK)が挙げられ、長軸方向の全長が50m程度の炉であり、ロータリーキルンの排出端側からオイルバーナーによる加熱が行われ、装入端側から排ガスが排出される。
【0059】
RRK11内においては、鉄鋼ダストが炭素質還元剤と共にペレット状となって装入され、その炭素質還元剤の燃焼により発生する一酸化炭素の作用によって、鉄鋼ダスト中の亜鉛は亜鉛蒸気として還元揮発する。揮発した亜鉛蒸気は、約1000℃よりも低い温度に冷却されることにより速やかに酸化亜鉛へと形態を変え、粗酸化亜鉛ダストとなって燃焼排ガスと共にRRK11から排出される。一方で、鉄鋼ダストに含まれる鉄成分は、金属鉄としてRRK11内に残留し、クリンカーとして排出端側から排出される。なお、RRK11の排出端側でのクリンカーの温度は、1000℃〜1400℃程度になる。
【0060】
RRK11から排出される燃焼排ガスの温度は600℃〜700℃程度であり、ガス流量は25000Nm/h〜27000Nm/h程度である。また、燃焼排ガスの組成としては、例えば、COが16体積%、Oが3体積%、COが3体積%、HOが4体積%〜5体積%である。また、燃焼排ガスに含まれる粗酸化亜鉛ダストの濃度は、100g/Nm〜200g/Nm程度である。
【0061】
さて、RRK11においては、製造原料である鉄鋼ダスト中の水銀も水銀蒸気として揮発するが、水銀蒸気は酸化されにくく、その沸点は約360℃であるため、水銀蒸気のまま燃焼排ガスと共に排出される。本実施の形態においては、RRK11からの燃焼排ガス中に含まれる水銀蒸気を、粗酸化亜鉛ダスト共に回収する。
【0062】
[乾式電気集塵機]
乾式電気集塵機12は、RRK11の下流側に設けられており、RRK11から排出された燃焼排ガスが導入され、その燃焼排ガス中に含まれるRRKダストである粗酸化亜鉛ダストが回収される。この乾式電気集塵機12により、燃焼排ガス中に含まれる粗酸化亜鉛ダストの80%程度が回収される。
【0063】
乾式電気集塵機12においては、粗酸化亜鉛ダストの比抵抗値を制御してそのダストの捕集効率を上げるため、入口温度が260℃〜320℃になるように制御される。なお、RRK11から排出された燃焼排ガスは、急激に自然放冷されるが、さらに燃焼排ガスに外気を混入させることによって、乾式電気集塵機12の入口温度を制御する。
【0064】
ここで、RRK11から排出され燃焼排ガス中に含まれるようになった水銀蒸気は、冷却されることにより気体から液体に変わり、水銀ミストとなって乾式電気集塵機12に導入されることとなるが、金属状であることからミストが電荷を持つことは無く、基本的には乾式電気集塵機12では回収されない。
【0065】
[バグフィルター]
バグフィルター13は、乾式電気集塵機12の下流側に設けられており、その乾式電気集塵機12からの処理排ガスが導入される。このバグフィルター13においては、バグを構成する高分子繊維の耐熱性の観点から、入口温度が130℃〜180℃に制御される。
【0066】
上述したように、RRK11からの燃焼排ガス中の水銀蒸気は、水銀ミストとなって乾式電気集塵機12に導入されるが、その乾式電気集塵機12では実質的には回収されず、乾式電気集塵機12からの処理排ガスに残留して排出されることになる。そこで、乾式電気集塵機12からの処理排ガスをバグフィルター13に導入するにあたり、処理排ガスに活性炭を吹き込むようにし、その活性炭に処理排ガス中の水銀を吸着させるようにする。
【0067】
このように、乾式電気集塵機12からの処理排ガスをバグフィルター13に導入するにあたって活性炭を吹き込むようにすることで、排ガス中の水銀を効率的に活性炭に吸着させ、除去することができる。
【0068】
また、このようにバグフィルター13において、活性炭への吸着によって水銀を回収することにより、水銀が吸着した活性炭を粗酸化亜鉛ダストと共に回収することができる。これにより、RRK11からの排ガス(RKK排ガス)中に含まれる水銀の含有量を極めて低いレベルに減少させることができる。さらに、詳しくは後述するが、粗酸化亜鉛ダストと共に活性炭に吸着させた状態の水銀を回収して湿式処理設備21に導入することで、後段の乾燥加熱工程S30にて導入される新規の粗酸化亜鉛に含まれる水銀と併せて一括して排ガス洗浄工程S40にて処理することができ、排ガスの処理プロセス全体として極めて効率的な処理を行うことができる。
【0069】
さらに、このような方法によれば、RRK排ガス中の水銀を除去するために粗酸化亜鉛ダスト回収用のバグフィルター13を使用することができ、水銀を除去するための設備としては、活性炭貯留設備、活性炭吹き込み用のブロワーのみを新設すればよく、設備コストを増大させることなく、効率的な処理を行うことができる。
【0070】
活性炭としては、水銀を吸着させることができるものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、クラレケミカル株式会社製のクラレコールPDX−A(登録商標)等が市販されており、好適に用いることができる。
【0071】
また、処理排ガスに対する活性炭の吹き込み量としては、例えば、10kg/h〜20kg/h程度とすることができる。
【0072】
吹き込まれた活性炭は、処理排ガスのガス流中で固気混合され、それにより排ガス中の水銀が活性炭に吸着していくが、さらに、吹き込まれた活性炭はバグフィルター13のバグの表面にも付着するため、処理排ガスがバグのろ過層を通過する際にも活性炭と接触するようになる。これにより、水銀をほぼ完全に吸着させることができる。
【0073】
なお、粗酸化亜鉛ダスト回収用のバグフィルター13の下流側に、別途、水銀回収用のバグフィルターを設置し、そのバグフィルター13を通過した後の排ガスに活性炭を吹き込むことによって水銀を吸着除去する方法も考えられる。しかしながら、バグフィルターの適正な通過風速を確保するためには、装置が大規模になってしまい、また別途バグフィルターを用意しなければならず、多大な設備コストを必要とする。さらに、活性炭にはダイオキシンも吸着されるため、水銀が吸着した活性炭の処理にも制限が生じる。
【0074】
<3−2.DRK排ガスの処理方法>
図2に示すように、乾式電気集塵機12にて回収された粗酸化亜鉛ダストと、バグフィルター13にて回収された、水銀を吸着させた活性炭とを含む回収物は、次に、不純物成分を除去するための湿式処理設備21に移送される。湿式処理設備21においては、移送された粗酸化亜鉛ダストと水銀を吸着させた活性炭とを含む回収物に対してレパルプ洗浄処理が施され、ハロゲン系の不純物成分が除去された粗酸化亜鉛ケーキが生成する。
【0075】
続いて、酸化亜鉛鉱の製造プラント1では、図2に示すように、湿式処理設備21にて得られた粗酸化亜鉛ケーキを乾燥加熱炉31に装入し、焼成処理を施す。
【0076】
[乾燥加熱炉]
酸化亜鉛鉱の製造プラント1においては、上述したように、得られた粗酸化亜鉛ケーキを乾燥加熱する乾燥加熱炉31が設けられている。乾燥加熱炉31としては、乾燥加熱ロータリーキルン(DRK)が挙げられ、長軸方向の全長が30m程度の炉であって、排出端側からオイルバーナーによる加熱が行われ、酸化亜鉛を製造する。一方で、その装入端側からは排ガスが排出される。
【0077】
DRK31内においては、湿式処理設備21を経て得られた粗酸化亜鉛ケーキが装入され、例えば焼成温度が900℃〜1200℃程度の範囲となるように維持管理されている。DRK31には、排出端側にオイルバーナーが設けられており、装入された粗酸化亜鉛ケーキは直火で加熱されるが、その焼成温度は、オイルバーナーへの供給オイル量によって調節することができる。
【0078】
ここで、乾燥加熱炉31においては、主原料としての還元焙焼後の粗酸化亜鉛ケーキのほか、二次原料として、例えば、製鉄所において発生した鉄鋼ダストを回転炉床炉等により製鉄所内でオンサイト処理することにより発生した粗酸化亜鉛ダストを併せて装入することがある。なお、そのような粗酸化亜鉛ダストは、購入して用いることができる。したがって、詳しくは後述するが、乾燥加熱炉31には、粗酸化亜鉛ケーキに含まれる水銀と、新規に装入する購入粗酸化亜鉛ダストに含まれる水銀とが導入される。
【0079】
酸化亜鉛鉱の製造プロセスにおいて、DRK31から排出される酸化亜鉛鉱の量、すなわち酸化亜鉛鉱の産出量としては、例えば、6t/h〜10t/h程度である。また、排出される酸化亜鉛鉱の温度を監視することによって、オイルバーナーのオイル(例えば重油)の使用量を、例えば400L/h〜700L/h程度の範囲で調整することができる。なお、排出される酸化亜鉛鉱の温度は、例えば放射温度計等を用いて、連続的に測定、監視することができる。
【0080】
さて、DRK31で発生した排ガス(燃焼排ガス)は、湿式のガス洗浄塔と、湿式電気集塵機(ミストコットレル)とを組み合わせた設備によって除塵される。なお、DRK31から排出される燃焼排ガスの流量は、例えば、20000Nm/h〜25000Nm/hである。
【0081】
DRK31に装入される粗酸化亜鉛ケーキ等は、約30mの炉内において、造粒、乾燥、加熱、焼成が順に行われるが、造粒及び乾燥の過程で飛散した装入物の粉塵、加熱及び焼成の過程で揮発した酸化物やハロゲン化物等がダストとなる。また、DRK31においては、粗酸化亜鉛ケーキと共に装入された水銀が吸着された活性炭から、水銀が揮発する。なお、DRK31内においては酸化反応が生じるため、加熱により揮発した水銀の形態は、主に酸化物等のダストであると推定されるが、活性炭の還元作用により水銀蒸気も混在していると推測される。
【0082】
本実施の形態においては、DRK31からの燃焼排ガス中に含まれる、主としてのダスト状の水銀を、後述するガス洗浄塔32とミストコットレル33とを含む洗浄処理設備において除去する。
【0083】
[ガス洗浄塔]
ガス洗浄塔32は、DRK31の下流側に設けられており、DRK31から排出された燃焼排ガスが導入され、洗浄液を用いて、排ガス中の固形分であるDRKダストを固気分離する洗浄処理を行う。なお、DRK31からの燃焼排ガスは、その煙道内において洗浄水によって予備洗浄され、その後に、ガス洗浄塔32に導入される。燃焼排ガスは、煙道内にて予備洗浄が行われることから、ガス洗浄塔32の入口部では280℃〜300℃程度にまで冷却されている。
【0084】
ガス洗浄塔32としては、特に限定されないが、内部に多段の多孔板が配置された洗浄塔を用いることができる。DRK31から発生した燃焼排ガス中のDRKダストのうち、その80%程度の割合が、DRK31の煙道内の予備洗浄や、ガス洗浄塔32での洗浄処理により回収される。なお、DRK31からの燃焼排ガスに含まれるダストの濃度は、30g/Nm〜40g/Nm程度である。
【0085】
[湿式電気集塵機群]
湿式電気集塵機群33は、直列に複数の湿式電気集塵機(ミストコットレル)33a,33bが配列して設けられ、ガス洗浄塔32の処理排ガスからダストを除去する。なお、図2においては、2基の湿式電気集塵機33a(No.1ミストコットレル),33b(No.2ミストコットレル)が直列に設けられている例を示しているが、これに限られず、3基、4基等の湿式電気集塵機が直列に設けられているものであってもよい。
【0086】
ミストコットレル33としては、多数のセルによって構成された集塵板と、その各セルの中央部に垂下された放電極と、集塵板に付着したダストを洗い流すように載置された洗浄装置とを含む、一般的な湿式電気集塵機を使用することができる。なお、ミストコットレル33においては、例えば、50kV以上の電圧で荷電される。
【0087】
本実施の形態に係る排ガスの処理方法においては、湿式電気集塵機群33のうち、上流側に位置するミストコットレル33aからの処理排ガスに、酸化剤を含む水溶液を噴霧し、ミスト状となって排ガス中に含まれている水銀を酸化する。これにより、排ガス中の水銀を酸化物やハロゲン化物等の形態として、ダストにすることができる。
【0088】
ここで、DRK31での乾燥加熱処理により揮発した水銀蒸気は、その後、冷却することによって液化して水銀ミストとなるが、水銀ミストの状態である場合、その一部は、ガス洗浄塔での湿式処理により除去可能であるが十分ではなく、また、ミストコットレルでは除去することはできない。
【0089】
そこで、本実施の形態においては、ガス洗浄塔32を経て、さらに湿式電気集塵機群33における上流側に位置するミストコットレル33aにてDRKダストのほとんどが除去され尽くした状態において、ミストコットレル33aからの処理排ガスに酸化剤を噴霧する。このようにすることで、処理排ガス中の水銀は、下流側に位置するミストコットレル33bにてダストとして効率的にかつ確実に回収することができ、DRK排ガスから有効に除去することができる。
【0090】
酸化剤としては、特に限定されないが、次亜塩素酸ソーダ水溶液、過マンガン酸カリウム水溶液等を好適に用いることができる。
【0091】
また、酸化剤の噴霧位置としては、湿式電気集塵機群33において、その酸化剤が噴霧された排ガスが少なくとも1基以上の湿式電気集塵機を通過する位置で、その処理排ガスに噴霧されるようにする。
【0092】
このような処理により、ミストコットレル33bから排出された洗浄液を固液分離することによって、選択的に水銀濃縮物を回収することができ、酸化亜鉛鉱の製造プラント外に払出すことができる。
【0093】
なお、本実施の形態においては、湿式電気集塵機群33において酸化剤を噴霧し、処理排ガス中の水銀を酸化させることによって濃縮回収する例を示しているが、他の実施形態として、酸化剤による水銀の酸化処理を行わず、湿式電気集塵機群33から排出される処理排ガスを後述する充填塔34に通過させ、その充填塔34に充填された水銀吸着剤による吸着除去処理のみを行うようにしてもよい。
【0094】
[充填塔]
充填塔34は、湿式電気集塵機群33の下流側に設けられており、水銀吸着剤が充填されている。この充填塔34においては、湿式電気集塵機群33から排出された処理排ガスが導入され、湿式電気集塵機群33における処理によっても回収されずにその排ガス中に残存した水銀を、水銀吸着剤に吸着させて除去する。
【0095】
充填塔34としては、処理排ガスを効果的に通過させることができるものであれば特に限定されず、多孔板、スリット板、金網等によって充填物、すなわち水銀吸着剤を保持する形態のものを用いることができ、一般的な多段式の充填塔を用いることができる。
【0096】
(水銀吸着剤について)
ここで、水銀吸着剤としては、特に制限されないが、例えば、粒子の最大長さが25mm以下であり、粒径が1mm以上の粒コークス等の炭素化合物の表面に、銅精鉱、亜鉛精鉱、鉛精鉱等から選択される1種以上の硫化物を付着させたものを好適に用いることができる。なお、「粒子の最大長さ」とは、球状では無い形状における粒子の最大幅のことをいう。
【0097】
より具体的に、水銀吸着剤の一例として、例えば、粒径が0.1mm〜1mmの硫化物と、粒径が5mm〜15mmの炭素化合物と、界面活性剤とを含有し、その界面活性剤が0.1質量%〜1質量%の割合で含まれているものを用いることができる。
【0098】
このような水銀吸着剤によれば、特定の粒径を有する硫化物と炭素化合物とが、良好な密着性で以って密着し、また、炭素化合物に対して偏りなく均一に分散して硫化物が担持されるため、水銀の吸着除去の性能を高めることができる。また、ポットライフが向上して、長期に亘って安定的に水銀を吸着除去することができる。また、この水銀吸着剤によれば、硫化物と炭素化合物と高い密着性で以って密着しているため、充填塔に重金属吸着剤を充填する際にも、担体である炭素化合物から硫化物が剥離してしまうようなことを防ぐことができ、充填密度や充填量を増やすことができる。これにより、設備規模を大きくすることなく、高い吸着性能を有する吸着装置を構成することができる。
【0099】
また、水銀吸着剤の他の一例として、例えば、ポリオレフィンに、粒径が0.1mm〜1mmの硫化物と、粒径が1mm〜5mmの炭素化合物とが分散保持されてなるものを用いることができる。この水銀吸着剤は、粒径の大きな炭素化合物からなる担体に、吸着剤である硫化物が担持されているような単純な構造ではなく、それぞれ特定の粒径を有する硫化物と炭素化合物とが、いわゆる結着剤として作用するポリオレフィンに、分散し保持された構造となっている。なお、「分散保持」されている状態とは、ポリオレフィン中に、硫化物と炭素化合物とが浮遊している状態ではなく、それぞれの化合物粒子が分散しながらも互いに接触した状態で、ポリオレフィンにより結着されている状態をいう。
【0100】
このような重金属吸着剤によれば、個々の細かな粒径を有する硫化物と炭素化合物とが、分散して構成されているため、その粒子と粒子との間隙により微細孔が形成されて、多孔質性が向上した構造となっている。これにより、その微細孔を介して水銀が効率的に吸着するようになり、水銀の吸着除去の性能を高めることができる。また、このような構造であることにより、ポットライフを向上させることができる。また、この水銀吸着剤によれば、特定の粒径を有する硫化物と炭素化合物とがポリオレフィンにより保持されていることにより、その強度を高めることができる。これにより、充填塔に重金属吸着剤を充填する際にも、充填密度や充填量を増やすことができ、設備規模を大きくすることなく、高い吸着性能を有する吸着装置を構成することができる。
【0101】
なお、上記例示した水銀吸着剤において、硫化物としては、特に、硫化鉛、硫化銅、硫化錫が好適に用いられる。これらの硫化物は、例えば非鉄製錬の酸性排ガス中に含まれるSO、SO等の酸により分解されにくいという性質を有する。また、硫化銅は、水に溶解されにくい。したがって、これらの硫化物により重金属吸着剤を構成することにより、より優れた強度を有するものとなり、また吸着能力を向上させることができる。
【0102】
また、例えば、硫化鉛や硫化銅を吸着剤としたとき、重金属を含む排ガスを接触させることにより、下記の反応式のように、水銀と硫化物との酸化還元電位の差により、水銀がPbやCuと置換して硫化水銀となる反応が生じて、これにより水銀を吸着除去する。
Hg+PbS → HgS+Pb
Hg+CuS → HgS+Cu
【0103】
(水銀吸着剤を充填した充填塔を用いた処理)
上述したように、この充填塔34には、湿式電気集塵機群33からの処理排ガスを通過させることによって、その処理排ガス中に残留した水銀を効率的に回収することができ、その充填塔34を経て煙突から放出されるDRK排ガス中の水銀濃度を極めて低いレベルにすることができる。
【0104】
このように、ガス洗浄塔32及び湿式電気集塵機群33での処理によっても、DRK31からの燃焼排ガス中の水銀を有効に回収除去することができるが、より好ましく、さらに水銀吸着剤を充填した充填塔34に通過させる処理を行うことにより、より確実に水銀を回収除去することができる。
【0105】
例えば、粒子の最大長さが25mm以下であり、粒径が1mm以上の粒コークス等の炭素化合物の表面に、銅精鉱、亜鉛精鉱、鉛精鉱等から選択される1種以上の硫化物を付着させた水銀吸着剤に吸着させた後の水銀は、その水銀吸着剤を水洗することによって脱離させることができ、選択的に水銀濃縮物を回収して、酸化亜鉛鉱の製造プラント外に払い出すことができる。
【0106】
なお、湿式電気集塵機群33を経て排出される処理排ガス中の水銀濃度は、極めて低濃度であることから、この充填塔34に充填させて使用する水銀吸着剤は1年以上の長期に亘って使用することができる。また、定期的に水銀吸着剤中の水銀濃度を分析して、例えば濃度5重量%を閾値として、その濃度を超えた場合に水銀吸着剤を交換すればよい。
【実施例】
【0107】
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0108】
[実施例1]
酸化亜鉛鉱の産出量が6t/h〜10t/hである酸化亜鉛鉱の製造プラントから排出される排ガスに対し、排ガス中の水銀を除去する処理を行った。具体的には、図2に示す製造プラント1を用いて、排ガスの処理方法を実行した。
【0109】
具体的には、酸化亜鉛鉱の製造原料である鉄鋼ダストをRRK11に装入し、被処理物の最高温度が1100℃〜1200℃程度となるようにコントロールして還元焙焼することによって粗酸化亜鉛を生成させるとともに、そのRRK11から排出された燃焼排ガスを乾式電気集塵機12及びバグフィルター13に導入した。このとき、バグフィルター13に処理排ガスを導入するに際して、排ガスに対して活性炭を吹き込んだ。活性炭としては、クラレケミカル株式会社製のクラレコールPDX−A(登録商標)を用いた。
【0110】
その後、乾式電気集塵機12及びバグフィルター13から、粗酸化亜鉛ダストと、水銀を吸着させた活性炭とを併せて回収した。
【0111】
次に、粗酸化亜鉛ダストと水銀を吸着させた活性炭とを含む回収物を湿式処理設備21に装入し、その回収物に対して、ハロゲン系不純物成分を除去するために洗浄液を用いて湿式処理を施した。これにより、粗酸化亜鉛ダストがケーキ状となった。
【0112】
次に、得られた粗酸化亜鉛ケーキをDRK31に装入し、1100℃〜1150℃の温度条件で焼成することにより酸化亜鉛を製造した。一方で、DRK31からの燃焼排ガスを、ガス洗浄塔32に導入して洗浄し、続いて、ガス洗浄塔32からの処理排ガスを、2基のミストコットレル33a,33bが直列に配列した湿式電気集塵機群33に導入した。このとき、上流側に位置するミストコットレル33aから排出された処理排ガスに酸化剤水溶液(2体積%の次亜塩素酸ソーダ水溶液)を用いて4L/分の流量で噴霧し、酸化剤が噴霧された排ガスを下流側に位置するミストコットレル33bに導入した。この処理により、ミストコットレル33bからは、水銀のダストが生成した。
【0113】
以上のような排ガスの処理方法を経て回収されたDRK排ガスについて、その排ガス中の水銀濃度を測定したところ、100μg/Nmであった。水銀除去率としては、80%であった。
【0114】
[実施例2]
実施例2では、実施例1と同様にして排ガスの処理方法を実行したのち、さらに、ミストコットレル33bから排出された処理排ガスを、水銀吸着剤が充填された充填塔34に通過させる処理を行った。
【0115】
充填塔34に充填させる水銀吸着剤としては、粒子の最大長さが25mm以下であり、粒径1mm以上の粒コークスの表面に銅精鉱を付着させたものを用いた。また、充填塔34としては、塔内流速が0.20m/秒〜0.25m/秒となるようなものを用い、その充填塔に吸着層高さが1500mmとなるように水銀吸着剤を充填した。
【0116】
以上のような排ガスの処理方法を経て回収されたDRK排ガスについて、その排ガス中の水銀濃度を測定したところ、10μg/Nmであった。水銀除去率としては、88%であった。
【0117】
[参考例1]
参考例1として、実施例1と同様にしてDRK31にて焼成を行った後、得られたDRK31からの燃焼排ガスを、ガス洗浄塔32及び湿式電気集塵機群33に導入した。このとき、湿式電気集塵機群33の上流側に位置するミストコットレル33aから排出された処理排ガスには、酸化剤水溶液を噴霧させなかった。つまり、排ガス中の水銀を酸化して除去する処理を行わなかった。
【0118】
一方で、湿式電気集塵機群33の下流側に位置するミストコットレル33bから排出された処理排ガスに対し、水銀吸着剤が充填された充填塔34に通過させる処理を行った。
【0119】
充填塔34に充填させる水銀吸着剤としては、粒子の最大長さが25mm以下であり、粒径1mm以上の粒コークスの表面に銅精鉱を付着させたものを用いた。また、充填塔34としては、塔内流速が0.20m/秒〜0.25m/秒となるようなものを用い、その充填塔に吸着層高さが1500mmとなるように水銀吸着剤を充填した。
【0120】
以上のような排ガスの処理方法を経て回収されたDRK排ガスについて、その排ガス中の水銀濃度を測定したところ、100μg/Nmであった。水銀除去率としては、80%であった。
【0121】
[比較例1]
酸化亜鉛鉱の産出量が6t/h〜10t/hである酸化亜鉛鉱の製造プラントから排出される排ガスに対し、排ガス中の水銀を除去する処理を行った。具体的には、図3に示す製造プラント100を用いて、排ガスの処理方法を実行した。
【0122】
この比較例1の処理方法においては、実施例1とは異なり、DRKからの燃焼排ガスをガス洗浄塔に導入するとともに、そのガス洗浄塔の洗浄水に活性炭を混合することにより、その活性炭に燃焼排ガス中の水銀を吸着させ除去する処理を行った。なお、活性炭の混合量は10kg/h〜20kg/h程度とし、また、活性炭としてはクラレケミカル株式会社製のクラレコールPDX−A(登録商標)を用いた。
【0123】
以上のような排ガスの処理方法を経て回収されたDRK排ガスについて、その排ガス中の水銀濃度を測定したところ、400μg/Nmであった。水銀除去率としては、53%であった。
【符号の説明】
【0124】
1 酸化亜鉛鉱の製造プラント
11 還元焙焼炉(RRK)
12 乾式電気集塵機
13 バグフィルター
21 湿式処理設備
31 乾燥加熱炉(DRK)
32 ガス洗浄塔
33 湿式電気集塵機群(ミストコットレル)
33a,33b ミストコットレル
34 充填塔
図1
図2
図3