特許第6804956号(P6804956)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6804956
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20201214BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   G01N27/26 381C
   G01N27/416 353Z
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-238425(P2016-238425)
(22)【出願日】2016年12月8日
(65)【公開番号】特開2017-111135(P2017-111135A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年12月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-243582(P2015-243582)
(32)【優先日】2015年12月14日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(72)【発明者】
【氏名】宮村 和宏
(72)【発明者】
【氏名】中井 陽子
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−102240(JP,A)
【文献】 特開2015−206630(JP,A)
【文献】 特開平10−282036(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0147213(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定電極と比較電極とを具備する測定装置であり、前記測定電極と前記比較電極との間に生じる電位差に基づいて、サンプルの特性値を測定する測定装置において、
前記測定装置が前記サンプルの特性値を測定する測定状態と、測定を行っていない待機状態との2状態をとり得るものであり、
前記測定装置が前記待機状態において校正液又は内部液を連続的又は間欠的に補充することによって前記校正液又は前記内部液の結晶化を抑制する結晶化抑制機構をさらに具備し、
前記校正液と前記内部液とを独立して補充可能であることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記校正液が流れる校正液補充流路及び前記内部液が流れる内部液流路の内部が液体を含んだ状態であることを特徴とする請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記校正液が流れる校正液補充流路及び前記内部液が流れる内部液流路の全部又は一部がキャピラリー状であることを特徴とする請求項1又は2記載の測定装置。
【請求項4】
前記待機状態において、所定期間内に補充される前記校正液又は前記内部液の液量が、前記測定状態において前記所定期間で補充される前記校正液又は前記内部液の液量と比較して少ないことを特徴とする請求項1、2又は3記載の測定装置。
【請求項5】
前記待機状態において、所定期間で蒸発する水分量以上の量の前記校正液又は前記内部液が、前記所定期間で補充されることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の測定装置。
【請求項6】
前記待機状態において、少なくとも1日に1回は前記校正液又は前記内部液が所定の量補充されることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の測定装置。
【請求項7】
測定電極と比較電極とを具備する測定装置であり、前記測定電極と前記比較電極との間に生じる電位差に基づいて、サンプルの特性値を測定する測定装置において、前記測定装置が前記サンプルの特性値を測定する測定状態と、測定を行っていない待機状態との2状態をとり得るものであり、該測定装置に校正液又は比較電極に用いられる内部液を補充して、前記校正液又は前記内部液の結晶化を抑制する方法であって、
前記測定装置が、前記校正液と前記内部液とを独立して補充可能な補充機構を備え、
前記待機状態において、前記補充機構が前記校正液又は比較電極に用いられる内部液を前記測定装置に連続的又は間欠的に補充する工程を含むことを特徴とする前記校正液又は前記内部液の結晶化抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、pH測定装置等に用いられる測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガラス電極と比較電極によって容器に貯留したサンプルのpHを測定する測定装置においては、サンプルのpHを測定している測定状態や、pHが既知の校正液を用いて、ガラス電極と比較電極の間に生じる電位差と測定値との関係を修正する校正状態においては、比較電極に設けられた液絡部から比較電極の内部液が少しずつ流出し減少するので、これを補うために補充口から内部液を適宜補充することが知られている。(特許文献1)
【0003】
例えば、サンプリング機構等によりサンプルを連続的に取り込んで、そのpHを測定する測定装置の場合には、比較電極の内部液が次々と流れてくるサンプルに液絡部を介して接触して拡散が起こり、比較電極の内部液が薄まってしまう、もしくは、液絡部から内部液が流出するので、測定状態においては連続的又は定期的に内部液を補充する必要がある。
【0004】
また、連続して正確な測定を続けるためには、測定開始時だけでなく、所定の期間毎に校正液を用いて測定値を校正する必要があるので、サンプルを連続して測定している間には校正液を定期的に送り込む必要がある。
【0005】
一方で、測定又は校正を行っていない待機状態においては、内部液は次回の測定開始時に補充すれば足りると考えられており、そもそも内部液量の変化を気にすることはなかった。
【0006】
また、例えば、微量のサンプルを取得してそのpHを連続的に測定する測定装置では特に、待機状態ではサンプルの流れが止まり流路内にサンプルが微量しか残っていないので、サンプルが常に流れている測定状態と比べて、待機状態では内部液の拡散は起こりにくいと考えられていた。
【0007】
これらの理由により、従来の連続測定型の測定装置では、待機状態において内部液を補充することは考えられていなかった。
【0008】
また、校正液についても、校正していない待機状態においては使用することがないので、待機状態において校正液を補充することは従来考えられていなかった。
【0009】
しかしながら、前述のような連続測定型の測定装置を所定時間以上待機状態に置いておくと、測定状態や校正状態において内部液や校正液を補充するために設けられた流路内で校正液や内部液の蒸発が起こり、これら内部液や校正液から結晶が析出して、流路が詰まってしまうという問題があることを本発明者は初めて見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−212174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、所定時間以上の待機状態におかれても内部液や校正液からの結晶析出による流路の詰まりを抑えることができる測定装置を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明に係る測定装置は、測定電極と比較電極とを具備する測定装置であり、前記測定電極と前記比較電極との間に生じる電位差に基づいて、サンプルの特性値を測定する測定装置において、前記サンプルの特性値を測定する測定状態と、測定を行っていない待機状態との2状態をとり得るものであり、前記校正液又は比較電極に用いられる内部液を補充する補充機構を具備し、前記補充機構が前記待機状態において前記校正液又は内部液を連続的又は間欠的に補充することを特徴とするものである。
【0013】
このような測定装置によれば、前記待機状態においても補充機構によって連続的又は間欠的に内部液又は校正液が補充されるので、内部液又は校正液が流路内に留まって結晶化することを抑え、流路の詰まりを抑えることができる。
【0014】
ところで、従来の測定装置では、液密ではあるけれども気密な空間ではない比較電極内の内部空間が液絡部において外気に触れる等の理由で待機状態においても内部液から水分蒸発が起こる可能性があった。
【0015】
そこで、前記校正液が流れる校正液補充流路及び前記内部液が流れる内部液流路が密閉されており、これら流路の内部が液体で満たされた状態であることを特徴とする測定装置であれば、待機状態においては、水分蒸発によって内部液や校正液が減少することはなく、内部液や校正液を補充する必要はない。
【0016】
しかし、本発明者は、流路が密閉されて、その内部が液体で満たされた測定装置であっても、所定時間以上待機状態におかれると、流路内の内部液や校正液から、水分蒸発に起因した結晶が析出して流路が詰まってしまうことを発見した。
【0017】
さらに、本発明者は後述する実験により、例えば流路の表面からも水分が蒸発することを確認している。
【0018】
このように、密閉された流路の表面から水分蒸発が起こると、測定装置が所定時間以上待機状態に置かれた場合には、流路内に留まった一部の校正液や内部液からの水分の蒸発が続いて、結晶が析出して流路が詰まる恐れがある。
【0019】
この点、本発明の測定装置によれば、流路内が液体を含んでいるので、待機状態において内部液又は校正液が連続的又は間欠的に補充されると、内部液や校正液が流路内を確実に移動して、流路の表面からの水分蒸発による局所的な濃度の上昇を抑えることができるので、校正液又は内部液の結晶化を抑えることができる。
【0020】
前記校正液補充流路及び前記内部液流路の全部又は一部がキャピラリー状であることを特徴とする測定装置であれば、流路の表面からの水分蒸発が流路内の校正液や内部液に与える影響が大きいので、校正液や内部液の結晶化による詰まりを抑える効果を顕著に発揮することができる。
【0021】
測定状態や校正状態において、供給や補充が必要な校正液や内部液の量に比べて、待機状態において、流路の表面等から蒸発する内部液や校正液の量は少ないので、待機状態において、補充される前記校正液又は内部液の液量が、前記測定状態又は校正状態において同じ時間幅で補充される前記校正液又は内部液の液量と比べて少ないことを特徴とするものであれば、校正液や内部液の使用量を適切な量に抑えることができる。
【0022】
前記待機状態において、所定期間で蒸発する水分量以上の量の前記校正液又は内部液が、前記所定期間で補充されることを特徴とする測定装置であれば、待機状態において、内部液や校正液の結晶の析出を抑えるために適切な量の校正液や内部液を補充することができる。
【0023】
前記待機状態において、少なくとも1日に1回は前記校正液又は前記内部液が所定の量補充されることを特徴とする測定装置であれば、校正液や内部液の結晶化を効果的に抑制して、流路の詰まりを抑えることができる。
【発明の効果】
【0024】
このような測定装置によれば、前記待機状態においても補充機構によって連続的又は間欠的に内部液又は校正液が補充されるので、内部液又は校正液が流路内に留まって結晶化することを抑え、流路の詰まりを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態における測定装置の全体模式図。
図2】同実施形態の比較電極を示す断面図。
図3】同実施形態における測定装置の動作決定に係るブロック図。
図4】他の実施形態における測定装置の全体模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0027】
本実施形態に係る測定装置100は、例えば半導体製造プロセス、例えば、配線工程の洗浄液、Cuメッキ液、配線等を加工するエッチング液、CMP(化学機械研磨)などに用いられる薬液等(以下「測定液」ともいう。)のpHを測定するために半導体製造装置に接続されて組み込まれるものである。
【0028】
この測定装置100は、図1に示すように、測定液が流れる本流路(図示しない)に接続されて、その一部をサンプリングするサンプリング機構1と、サンプリングした測定液のpHを測定するpH測定計2とを具備したものである。
【0029】
前記サンプリング機構1は、前記本流路に連通するサンプリング流路11と、該サンプリング流路11への測定サンプルである測定液の導入等を制御する流通制御機構12とを具備したものである。
【0030】
サンプリング流路11は、サンプリングされた測定液又は前記校正液が流れる流路であり、該測定液に対する耐蝕性を有した配管部材で形成されており、キャピラリー状をなす非常に細いものである。
ここでキャピラリー状とは、管の内径がおよそ5mm以下、より好ましくは3mm以下のものであり、かつ管の長さが前記内径のおよそ5倍以上のものである。
【0031】
前記流通制御機構12は、前記サンプリング流路11上に設けられたサンプリングポンプ121と、前記サンプリングポンプ121の動作を制御するサンプリング制御部とを具備したものである。
【0032】
サンプリング制御部は、この実施形態では、前記サンプリングポンプ121とは別に設けられた情報処理回路3がその役割を担う。この情報処理回路3は、CPUやメモリ、通信ポートなどから構成されたデジタル回路と、バッファーや増幅器などを具備するアナログ回路と、これらデジタル回路とアナログ回路とを仲立ちするADコンバータ、DAコンバータなどを具備したものである。そして、前記メモリに記憶させた所定のプログラムにしたがってCPUやその周辺機器が協働することにより、この情報処理回路3が前記サンプリング制御部としての機能を発揮する。
【0033】
そして、このサンプリング制御部からの指令信号によって、サンプリングポンプ121が稼動すると、前記本流路を流れる測定液の一部をサンプリング流路11に引き込み、サンプリングポンプ121が停止すると測定液サンプリングを停止するように構成してある。
【0034】
pH測定計2は、ここでは、いわゆるガラス電極法に基づいてpHを算出するものであり、ガラス電極21及び比較電極22と、これら各電極21、22の電位差に基づいてpHを算出するpH算出部とを具備している。
【0035】
前記ガラス電極21は、図1に示すように、内部に第1内部液211を貯留した第1ボディ212と、該第1ボディ212に設けられた応答ガラスと、前記第1内部液211に浸漬された第1内部極214とを具備したものである。
【0036】
第1ボディ212は、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)等の材質から形成された中空ブロック体状をなすものである。
【0037】
第1内部液211は、例えば、濃度が3.3MのKCl水溶液である。
【0038】
応答ガラスは、周知のように第1内部液211と測定対象である測定液との間に介在してそのpH差による電位を生じせしめるものであり、この実施形態では、この応答ガラスによって管体213を形成している。
【0039】
この応答ガラスによって形成された管体213は、第1ボディ212の一側面からその内部空間である第1内部空間を通って他側面に亘るように貫通させた前記サンプリング流路11と同様にキャピラリー状をなす非常に細いものである。
【0040】
この管体213の始端は、前記サンプリング流路11に接続されており、前記サンプリングポンプ121の稼動によって前記本流路から管体213の内部に測定液が導入されるようにしている。
【0041】
このようにして、管体213の外表面が前記第1内部空間に充填された第1内部液211に接触する一方で、該管体213の内部に測定液が導入されることによって、前述したように、第1内部液211と測定対象である測定液との間に応答ガラス(管体213)が介在するようにしている。
【0042】
なお、この実勢形態では、管体213の全部を応答ガラスで形成してあるが、第1内部液211に接触する一部だけを応答ガラスにしてもよい。
【0043】
第1内部極214は、例えば、銀/塩化銀から形成された棒状又は長板状をなすものであり、前記第1ボディ212の底壁を貫通するように取り付けられて、その一部が第1内部液211に浸かるようにしてある。
【0044】
前記比較電極22は、図2に示すように、内部に第2内部液221を貯留する第2ボディ222と、第2内部液221に浸漬してリファレンス電位を出力する第2内部極223と、液絡部224とを具備したものである。
【0045】
第2ボディ222は、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)等の材質から形成された中空ブロック体状をなすものであり、その内部空間である第2内部空間Sに、前記第2内部液221が充填されている。この第2内部液221は、例えば、濃度が3.3MのKCl水溶液である。
【0046】
この第2ボディ222には、前記第2内部空間Sの他に、測定液が導入される第1内部流路4が設けられている。第1内部流路4は、第2ボディ222の一側面から他側面に亘って貫通する貫通孔であり、その始端が、前記管体213の終端に連通されている。この構成により、測定液が前記管体213を通った後、この第1内部流路4に導入されるように構成してある。なお、この第1内部流路4は、前記管体213と同様に細径のキャピラリー形状に形成されている。
【0047】
前記本流路、サンプリング流路11、管体及び第1内部流路4の接続部はそれぞれ封止部材等によって密閉されており、前記サンプリング流路11、管体及び第1内部流路4の内部は、常にサンプルや校正液、又は洗浄液等の他の液体によって満たされた状態となっている。
【0048】
第2内部極223は、例えば、銀/塩化銀から形成された棒状又は長板状をなすものであり、前記第2ボディ222の底壁を貫通するように取り付けられて、その一部が第2内部液221に浸かるようにしてある。
【0049】
前記液絡部224は、第1内部流路4と、前記第2ボディに前記第2内部空間S及び前記第1内部流路4とは別に形成され、その端部が前記第1内部流路4に達するように外部から穿孔された第2内部流路5とが接触する部位に形成してある。
【0050】
具体的に説明すると、前記第2内部空間Sは、第2内部極223が挿入された領域よりも図2中上側、すなわち、底壁の反対側端部において、その内径が小径に形成されており、この小径部分の先端が前記第2ボディ222の外に向かって開口する部分において、前記液絡部224と前記第2内部空間Sの間を所定の距離だけ離間させる内部液迂回流路6によって前記第2内部流路5に接続されている。前記第2内部流路5内には板状の多孔質部材が配置されており、第2内部流路5内の第2内部液221が、この多孔質部材を介して前記第1内部流路4に接触するように液絡部224が形成されている。
【0051】
前記内部液迂回流路6は、例えば、オレフィン系エラストマー等を素材とする表面から水分が蒸発しにくい弾性チューブによって形成された、例えば、長さが300mmで、内径が1mm、外径が3mmのものである。
【0052】
ところで、前述したように内部液は前記液絡部224からの流出や水分の蒸発によって減少するので、前記比較電極22には前記第2ボディ222の外側から前記第2内部空間Sに向かって穿孔された内部液補充口7が形成され、この内部液補充口7から補充機構8によって第2内部液221が補充されるように構成されている。
【0053】
前記補充機構8は、前記内部液を補充する内部液補充機構81と、前記校正液を補充する校正液補充機構82とを具備する。
【0054】
前記内部液補充機構81は、内部液補充流路811と、内部液の流れを制御する内部液流通機構812と、内部液を貯留しておく内部液貯留タンク813と、を具備するものである。
【0055】
前記内部液補充流路811は、前記内部液迂回流路6と、前記第2内部流路5とともに内部液流路9を形成するものであり、前記内部液補充流路811は、前記内部液補充口7と前記内部液貯留タンク813内に貯留された内部液とを接続するものである。
【0056】
前記内部液補充流路811は、前記内部液迂回流路6と同様に、例えば、オレフィン系エラストマー等を素材とする表面から水分が蒸発しにくい弾性チューブによって形成された、例えば、長さが300mmで、内径が1mm、外径が3mmのものである。
【0057】
前記内部液流通機構812は、前記内部液補充流路811上に設けられた内部液補充ポンプ812Pと内部液制御部とを具備したものである。
【0058】
前記内部液制御部は、この実施形態では、前記情報処理回路3がそのメモリに記憶させた所定のプログラムにしたがってCPUやその周辺機器が協働することにより、該内部液制御部としての機能を発揮する。
【0059】
前記内部液貯留タンク813から第2内部空間S及び前記内部液流路9を経由して、記液絡部224に達するまでの間の流路及び空間は、それぞれの接続部が封止部材等によって封止されて密閉されており、また内部液補充流路811を形成するチューブの先端が前記内部液貯留タンク813内の内部液に浸漬されていることで、前記内部液貯留タンク813から前記液絡部224までの間の流路及び空間は第2内部液221によって満たされている。
【0060】
前記校正液補充機構82は、校正液を貯留する校正液貯留部821と前記校正液を補充する校正液補充流路822と、校正液の流れを制御する校正液流通機構823とを具備する。
【0061】
前記校正液貯留部821は、第1校正液を貯留する第1校正液貯留タンク821Aと、第2校正液を貯留する第2校正液貯留タンク821Bとを具備するものである。
【0062】
前記第1校正液貯留タンク821Aには、例えば、pHが6.86になるように調整されたリン酸緩衝液が貯留されている。
【0063】
前記第2校正液貯留タンク821Bには、例えばpHが4.01になるように調整されたフタル酸緩衝液が貯留されている。
【0064】
前記校正液補充流路822は、例えば、オレフィン系エラストマー等を素材とする表面から水分が蒸発しにくい弾性チューブによって形成された、例えば、長さが300mmで、内径が1mm、外径が3mmのものである。
【0065】
前記校正液補充流路822は、前記サンプリング流路11と前記校正液貯留部821とを接続するものであり、前記サンプリング流路11と前記第1校正液貯留タンク821Aとを接続する第1校正液補充流路822Aと、前記サンプリング流路11と前記第2校正液貯留タンク821Bとを接続する第2校正液補充流路822Bとを具備するものである。
【0066】
前記校正液流通機構823は、校正液を前記サンプリング流路11に導入するための校正液補充ポンプ823Pと、流路切り替え部823Vと、校正液制御部と具備するものである。
【0067】
前記校正液補充ポンプ823Pは、前記サンプリングポンプ121が該校正液補充ポンプ823Pとしての機能を発揮する。
【0068】
前記流路切り替え部823Vは、前記サンプリング流路11と前記第1校正液補充流路822Aとの接点に設けられた第1バルブ823V1と、前記サンプリング流路11と前記第2校正液補充流路822Bとの接点に設けられた第2バルブ823V2とを具備するものである。
【0069】
前記校正液制御部は、この実施形態では、前記情報処理回路3がそのメモリに記憶させた所定のプログラムにしたがってCPUやその周辺機器が協働することにより、該校正液制御部としての機能を発揮する。
【0070】
前記情報処理回路は、また、例えば、ユーザー又は予め設定された測定プログラム等による測定開始信号、校正開始信号又は停止信号等の入力信号に基づいて前記測定装置100の動作を決定する動作決定部としての機能をも発揮する。
前記動作決定部は、図3に示すように、前記入力信号に基づいて、測定状態、校正状態又は待機状態のそれぞれの状態に応じた信号のうちの1つの信号を出力信号として前記内部液制御部又は前記校正液制御部に出力する。
より具体的には、例えば、装置の電源が入れられてから前記測定開始信号又は校正開始信号が入力されるまでの間、前記動作決定部は待機状態に応じた出力信号を出力する。
例えば、前記測定開始信が入力された場合には、この入力信号が入力されてから予め設定された時間が経過するか、又は停止信号が入力されるまでの間、前記動作決定部は測定状態に応じた出力信号を出力する。
また、前回の入力信号が入力されてから予め設定された時間が経過するか、又は停止信号が入力された場合には、次に測定開始信号又は校正開始信号が入力されるまでの間、前記動作決定部は待機状態に応じた出力信号を出力する
同様に、例えば、前記校正開始信号が入力された場合には、この入力信号が入力されてから予め設定された時間が経過するか、又は停止信号が入力されるまでの間、校正状態に応じた出力信号を出力し、前回の入力信号が入力されてから予め設定された時間が経過するか、又は停止信号が入力された場合には、次に測定開始信号又は校正開始信号が入力されるまでの間、前記動作決定部は待機状態に応じた出力信号を出力する。
【0071】
前記内部液制御部は、前記動作決定部から出力された出力信号に基づいて、測定状態、校正状態又は待機状態のそれぞれの状態に応じた指令信号を前記内部液補充ポンプ812Pに対して出力するように構成されている。
【0072】
そして、この内部液制御部からの指令信号によって、内部液補充ポンプ812Pが稼動すると、前記内部液貯留タンク813から内部液が前記内部液補充流路811を経由して前記第2内部空間Sに送り込まれて補充されるように構成してある。
【0073】
また、前記校正液制御部は、前記動作決定部から出力された出力信号に基づいて、測定状態、校正状態又は待機状態のそれぞれの状態に応じた指令信号を前記校正液補充ポンプ823P、又は前記第1バルブ823V1及び前記第2バルブ823V2を具備する前記流路切り替え部823Vに対して出力するように構成されている。
【0074】
そして、この校正液制御部からの指令信号によって、第1バルブ823V1又は第2バルブ823V2が稼動して第1校正液補充流路822A又は第2校正液補充流路822Bが前記サンプリング流路11に接続した状態で、前記校正液補充ポンプ823Pが稼動すると、前記第1校正液貯留タンク821A又は前記第2校正液貯留タンク821Bから前記第1校正液又は前記第2校正液が前記第1校正液補充流路822A又は前記第2校正液補充流路822Bに引き込まれて補充され、余剰分は前記サンプリング流路11に流れ込むように構成してある。
【0075】
ここで、前記測定装置100の測定状態とは、前記流通制御機構12によってサンプリングされた測定液を前記サンプリング流路11内に流通させている状態と、前記pH算出部が前記第1内部極214と第2内部極223との電位差を測定し、その電位差に基づいて前記測定液のpHを算出している状態と、測定により消費される比較電極内部液であるKClを補充する状態と、サンプリング流路11の接続先を、例えば、図示しないバルブを操作するなどして洗浄液タンク(これも図示しない)に切り替え、内部の測定液等をパージしている状態とを含む一連の測定シーケンスが動いている状態である。
また、前記測定装置100の校正状態とは、前記校正液流通機構823によって第1校正液又は第2校正液をサンプリング流路11内に流通させている状態と、前記pH算出部が前記第1内部極214と第2内部極223との電位差を測定し、その電位差に基づいて前記第1校正液又は第2校正液のpHを算出している状態と、前記測定装置100の校正が行われている状態と、サンプリング流路11の接続先を、例えば、図示しないバルブを操作するなどして洗浄液タンク(これも図示しない)に切り替え、内部の第1校正液又は第2校正液をパージしている状態とを含む一連の校正シーケンスが動いている状態である。
さらに、前記測定装置100の待機状態とは、測定や校正を行っていない状態であり、例えば、電源は入っているが、測定や校正が行われず、測定装置が放置されているような状態を含むものであり、前記測定シーケンス及び校正シーケンスが終了して、前記サンプリング流路11内に充填された液体が流れていない状態のことをいう。
【0076】
前記第1校正液補充流路822A及び前記第2校正液補充流路822Bは、前記サンプリング流路11との接続部が前記第1バルブ823V1及び第2バルブ823V2によって密封されており、また第1校正液補充流路822A及び第2校正液補充流路822Bを形成するチューブの先端がそれぞれ第1校正液貯留タンク821A又は第2校正液貯留タンク821B内の各校正液に浸漬されていることで、これら第1校正液流路及び第2校正液流路は密閉され、これら流路の内部は、それぞれ第1校正液又は第2校正液によって常に満たされている。
【0077】
pH算出部は、図1に示すように、前記第1内部極214と第2内部極223との電位差を測定し、その電位差に基づいて前記測定液のpHを算出するものであり、この実施形態では、前記情報処理回路3がそのメモリに記憶させた所定のプログラムにしたがってCPUやその周辺機器が協働することにより、該pH算出部としての機能を発揮する。
【0078】
次に、以上のように構成した測定装置100の動作の一例を簡単に説明する。
【0079】
前記内部液補充機構81により、内部液を補充する場合には、まず前記動作決定部が、例えば、測定開始信号等の入力信号に基づいて測定状態、校正状態又は待機状態のいずれか1つに応じた出力信号を前記内部液制御部に対して出力する。
その後、前記内部液制御部が前記内部液補充ポンプ821Pに指示して、前記内部液貯留タンク813から前記内部液補充流路811及び前記内部液補充口7を経由して、前記第2内部空間Sにそれぞれの状態に応じた補充頻度、補充量で内部液を補充する。
【0080】
このようにして、前記第2内部空間Sに内部液が補充されると、前記第2内部空間Sを満たした内部液が前記内部液迂回流路6及び前記第2内部流路5へと流れ、液絡部224へと達する。この時余剰の内部液は、液絡部224から前記サンプリング流路11へと流出する。
【0081】
また、校正液により測定値の校正を行う場合や、待機状態において前記校正液補充機構82により校正液を補充する場合には、まず前記動作決定部が、例えば、測定開始信号などの入力信号に基づいて、測定状態、校正状態又は待機状態のいずれか1つに応じた出力信号を前記校正液制御部に対して出力する。
その後、前記校正液制御部がそれぞれの状態に応じた補充頻度、補充量を指令信号によって指示する。この指令信号によって、前記第1バルブ823V1が稼動し、まず第1校正液貯留タンク821Aが前記第1校正液補充流路822Aによりサンプリング流路11に接続される、この状態で校正液制御部が校正液補充ポンプ823Pに指令を出して、第1校正液が第1校正液貯留タンク821Aから第1校正液補充流路822Aに引き込まれ、前記サンプリング流路11へと流れる。その後、前記校正液制御部が第1バルブ823V1を元の位置に戻すことで、第1校正液の引き込みを停止するとともに、第2バルブ823V2に指示を出して第2校正液貯留タンク821Bをサンプリング流路11に接続することで、第2校正液が第2校正液貯留タンク821Bから第2校正液補充流路822Bに引き込まれ、前記サンプリング流路11へと流れる。
【0082】
ここで、測定状態及び校正状態において、前記内部液補充機構81によって補充される内部液の補充頻度と補充量は、例えば、1時間に1回の頻度で、毎回50μlずつ補充されるというものである。
【0083】
一方で、前記測定及び校正を行わない待機状態において、前記補充機構8によって補充される校正液又は内部液の補充頻度及び補充量については、測定状態や校正状態に比べて少なくてもよいと思われるが、その適切な補充頻度と補充量について、調べるために本発明者は以下のような実験を行った。
【0084】
実験には、異なる素材からなる2種類の弾性チューブを使用した。長さを300mm、内径を1mm、外径を3mmとしたこれらのチューブ内に、3.3MのKCl水溶液を封入し、気温が55℃のオーブン内に置いて、チューブ内部の状態を観察した。
【0085】
その結果、実験を始めるときには300mmのチューブ内に隙間なく満たされていたKCl水溶液が、10日後にはチューブ内の250mm又は220mmの範囲にしか残っておらず、さらに、内部にKClの結晶が析出したチューブもあった。チューブは密閉されているため、KCl水溶液の水分がチューブの壁面を透過して蒸発したものと考えられる。
【0086】
さらに、表面からの水分蒸発を調べた上記の実験において、水分蒸発は起こったものの10日間結晶が析出しなかったオレフィン系エラストマー等を素材とする長さ300mmで内径1mm、外径が3mmの弾性チューブに、3.3MのKCl水溶液を封入し、気温が55℃のオーブン内に置いて、1日に1回の頻度で、毎回25μlの3.3MのKCl水溶液を補充しながら、チューブ内部の状態を観察したところ、さらに長期間KClの結晶化が抑制された。
【0087】
また、この長さ及び内径のチューブであれば、1日に1回の頻度で25μlの3.3MのKCl水溶液を補充すれば、前述の10日間チューブ内に残っていたKCl水溶液を新しい3.3MのKCl水溶液に全て入れ替えることができる。
【0088】
これらの理由から、この長さ及び内径のチューブであれば、1日に1回以上の頻度で、毎回25μl以上の3.3MのKCl水溶液を補充することで、室温であれば、待機状態が長期間続いた場合でも、KClの結晶は析出せず、チューブが詰まる可能性を低下させることができるということが分かる。
【0089】
そこで、本実施形態では、前記補充機構8によって補充される校正液又は内部液の補充頻度と補充量は、1日に1回の頻度で、毎回50μlとした。
【0090】
このような構成の測定装置100によれば、前記サンプリング流路11や内部液流路9をより細くしても、内部液等の水分蒸発による結晶化によって詰まりを防止するができるので、使用するサンプルや校正液、内部液等の量を減らすことができる。
【0091】
キャピラリー状に形成された前記サンプリング流路11や内部液流路9が密閉され、内部が液体で満たされているので、校正液や内部液が補充されると各流路内を校正液や内部液が大きく移動するので、校正液や内部液が流路内の一箇所に留まることによる局所的な濃度の上昇を抑えることができ、効果的に結晶化を抑えることができる。
【0092】
測定状態や校正状態に比べて、待機状態においては、補充される校正液又は内部液の量が少ないので、待機状態においては、測定状態や校正状態における校正液又は内部液の補充頻度よりも少ない補充頻度で校正液又は内部液を補充、校正液及び内部液の使用量を適切な量に抑えることができる。
【0093】
1日に1回の頻度で、チューブ表面からの水分蒸発量以上の量である毎回50μlずつの校正液又は内部液が補充されるものであれば、サンプリング流路や内部液流路内に校正液や内部液が留まることなく、結晶化が起こる前に各流路内の校正液や内部液を新しいものに入れ替えることができるので、校正液や内部液の結晶化による流路の詰まりを抑制することができる。
【0094】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0095】
例えば、前記測定装置は、図1に示したものの他、例えば図4に示すようなものとしても良い。
【0096】
前記測定装置は、測定電極と比較電極とを具備していればよく、測定電極はガラス電極に限られない。
前記測定装置により測定されるサンプルの特性値は、pHに限らず、酸化還元電位、イオン濃度、導電率等でも良い。
【0097】
前記校正液は、pHが6.86になるように調整されたリン酸緩衝液と、pHが4.01になるように調整されたフタル酸緩衝液とに限らず、例えばシュウ酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液等の、pHが既知の1つ又は複数の他の緩衝液等を使用してもよい。
【0098】
また前記校正液は、pHが既知のものに限らず、前記特性値が既知のものであれば良く、例えば、pH測定用の校正液に限らず、イオン電極や導電率電極やORP電極等で用いる校正液でもかまわない。
【0099】
前記内部液は、3.3MKCl水溶液に限らず他の濃度のKCl水溶液でもよいし、硝酸アンモニウムや酢酸リチウムのような陽イオンと陰イオンの水溶液中での移動速度が同じである他の成分を溶解した水溶液等でもよい。
【0100】
前記校正液補充流路及び前記内部液流路を形成する弾性チューブは、オレフィン系エラストマー等を素材とする弾性チューブに限らず、フッ素等他の素材からなる弾性チューブでも良い。
【0101】
また、前記校正液補充流路及び前記内部液流路を形成する壁体は、弾性チューブに限らず、その内部に校正液又は内部液が流れる流路を形成するものであれば良い。
【0102】
前記校正液補充流路及び前記内部液流路の長さや内径については、長さ300mmで内径が1mm、外径が3mmのものに限らず、より長いものとしても、より短いものとしても、また、内径がより細いものであっても、より太いものであっても良い。
【0103】
待機状態における前記校正液又は内部液の補充頻度及び補充量については、前記校正液補充流路及び前記内部液流路の長さや内径に依存するため、本実施形態における最適な補充頻度は1日に1回、毎回50μlを補充するというものであるが、この補充頻度及び補充量に限らず、前記校正液補充流路及び内部液流路からの所定期間における前記校正液又は内部液からの水分の蒸発量を越える量の校正液又は内部液を前記所定期間で補充するものであれば良く、例えば、複数日に一度の補充頻度としても良いし、1日に複数回補充しても良い、また微量の校正液又は内部液を絶え間なく流すものとしてもよい。
【0104】
前記測定装置は、半導体製造プロセスに限らず、他のさまざまな分野への応用が可能である。
【0105】
その他、本発明は、前記図示例に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0106】
測定装置・・・100
測定電極・・・21
比較電極・・・22
補充機構・・・8
サンプリング流路・・・11
校正液補充流路・・・822
内部液流路・・・9
図1
図2
図3
図4