【文献】
Xin et al.,Combination of LPCVD and PECVD SiC in Fabricating Evanescent Waveguides,Proceedings of the 11th IEEE Annual International Conference on Nano/Micro Engineered and Molecular Systems (NEMS),米国,IEEE,2016年 4月17日,pp.1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
クラウド・モバイル環境の急速な普及により、情報通信量の増大が続いており、これに対応するための光ネットワークの高速大容量化を、低い消費電力で実現することが強く求められている。この実現に向けては、光通信デバイスの小型化、高機能化が重要となる。
【0003】
光デバイスを小型化、高機能化するためには、コアとクラッドとの比屈折率差Δの高い光導波路が不可欠となる。比屈折率差Δは、コアの屈折率をn
core、クラッドの屈折率をn
cladとしたとき、Δ=(n
core2−n
clad2)/2n
core2で表され、コアとクラッドの屈折率差を示す1つの指標である。
【0004】
比屈折率差Δを大きくすれば、シングルモード条件を満たすコア寸法が小さくなる。加えて、比屈折率差Δを大きくすれば、光閉じ込めが強くなるため、小さな曲げ半径の光導波路が得られ、結果として光デバイスの小型化が可能になる。このように、比屈折率差Δを大きくすることで、様々な機能の光デバイスを狭い領域に集積することができる。さらには、電子デバイスの中に光デバイスを組み入れることができるなど光電子融合して高機能デバイスが実現可能となる。また、デバイスの小型化により消費電力も低減できる。
【0005】
光通信ネットワーク向けの光デバイスは、これまでコアとクラッドとの比屈折率差が小さい光導波路である石英系光導波路をベースに開発され発展してきた。石英系コア材料の屈折率を高め、光導波路の比屈折率差を大きくすることで、少しずつ光デバイスの小型化も進んできている。しかし、石英系材料は、屈折率を大きく高めることはできないため、劇的に光デバイスを小型化することは困難である。
【0006】
これに対し、近年、コアの材料を高い屈折率を得られる酸窒化シリコン(SiON)とした光導波路が期待されている。SiONは、Nの添加量によりシリコン酸化膜の屈折率1.45からシリコン窒化膜の屈折率2.0の間で屈折率を選ぶことができる。このため、SiONからコアを構成することで、光導波路の設計自由度が高く、また比屈折率差Δが20%を超える光導波路が作製できるため、デバイスの大幅な小型化が可能となる。このSiONの優れた特徴から、SiONをコアとした光導波路ベースとした光デバイスの開発が盛んになっており、すでに使われはじめている(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、情報通信量の急速な増大が続くなか、光デバイスのさらなる小型化への要求は強く、SiONより高い屈折率を持ち、通信波長域で吸収などによる損失がない光導波路膜の開発が求められている。
【0009】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、コアとクラッドとの比屈折率差をより大きくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光導波路の製造方法は、基板の上に酸化シリコンからなる下部クラッド層が形成された状態とする第1工程と、下部クラッド層の上に、ECRプラズマCVD法によりSiCから構成されたコア形成層が形成された状態とする第2工程と、コア形成層の上にマスクパターンが形成された状態とする第3工程と、カーボンを含むガスおよびフッ素を含むガスを用いたドライエッチングにより、マスクパターンをマスクとしてコア形成層を選択的にエッチングして下部クラッド層の上にSiCから構成されたコアが形成された状態とする第4工程と、プラズマCVD法により下部クラッド層およびコアの上に酸化シリコンを堆積してコアを覆う上部クラッド層が下部クラッド層の上に形成された状態とする第5工程とを備える。
【0011】
第2工程では、シラン(SiH
4)とエチレン(C
2H
4)とからなる原料ガス、またはシラン(SiH
4)とエチレン(C
2H
4)と希ガスとからなる原料ガスのいずれかを用いたECRプラズマCVD法によりコア形成層を形成すればよい。
【0012】
上記光導波路の製造方法において、第2工程では、重水素化シラン(SiD
4)と重水素化エチレン(C
2D
4)とからなる原料ガス、または重水素化シラン(SiD
4)と重水素化エチレン(C
2D
4)と希ガスとからなる原料ガスのいずれかを用いたECRプラズマCVD法によりコア形成層を形成す
る。
【0013】
上記光導波路の製造方法において、第2工程では、炭素を含む原料ガスの流量によってコア形成層の屈折率を制御することができる。
【0014】
上記光導波路の製造方法において、第4工程では、C
2F
6のガスおよびSF
6のガスを用いたドライエッチングによりコアを形成すればよい。
【0015】
本発明に係る光導波路は、基板の上に形成された酸化シリコンからなる下部クラッド層と、下部クラッド層の上に形成されたSiCから構成されたコアと、コアを覆って下部クラッド層の上に形成された酸化シリコンからなる上部クラッド層とを備える。
【0016】
上記光導波路において、コアと下部クラッド層の比屈折率差は、34〜38%とされている。また、コアは、重水
素を含んでいる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、コアをSiCから構成したので、コアとクラッドとの比屈折率差をより大きくすることができるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態における光導波路の製造方法ついて
図1を参照して説明する。
【0020】
まず、第1工程S101で、
図1の(a)に示すように、基板101の上に酸化シリコンからなる下部クラッド層102が形成された状態とする。例えば、単結晶シリコンからなる基板101の表面を熱酸化することで、厚さ3μm程度の下部クラッド層102を形成する。
【0021】
次に、第2工程S102で、
図1の(b)に示すように、下部クラッド層102の上に、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によりSiCから構成されたコア形成層103が形成された状態とする。例えば、シラン(SiH
4)とエチレン(C
2H
4)とからなる原料ガス用いたECRプラズマCVD法により、厚さ0.4μm程度にコア形成層103を形成すればよい。コア形成層103は、不純物などを除けば、SiCのみから構成されたものとなる。
【0022】
なお、コア形成層103を形成するための原料ガスは、シラン(SiH
4)とエチレン(C
2H
4)と希ガスとから構成してもよい。また、コア形成層103を形成するための原料ガスは、重水素化シラン(SiD
4)と重水素化エチレン(C
2D
4)とから構成してもよく、重水素化シラン(SiD
4)と重水素化エチレン(C
2D
4)と希ガスとから構成してもよい。
【0023】
次に、第3工程S103で、
図1の(c)に示すように、コア形成層103の上にマスクパターン104が形成された状態とする。例えば、公知のフォトリソグラフィ技術によりマスクパターン104を形成すればよい。
【0024】
次に、第4工程S104で、
図1の(d)に示すように、下部クラッド層102の上にSiCから構成されたコア105が形成された状態とする。ここでは、カーボンを含むガスおよびフッ素を含むガスを用いたドライエッチングにより、マスクパターン104をマスクとしてコア形成層103を選択的にエッチングすることで、コア105を形成する。例えば、C
2F
6のガスおよびSF
6のガスを用いたリアクティブイオンエッチングにより、コア形成層103を選択的にエッチングすることで、コア105を形成すればよい。前述したように、不純物などを除けば、SiCのみから構成されたコア形成層103を加工してコア105としているので、コア105も、不純物などを除けばSiCのみから構成されたものとなる。
【0025】
次に、第5工程S105で、
図1の(e)に示すように、プラズマCVD法により下部クラッド層102およびコア105の上に酸化シリコンを堆積し、コア105を覆う上部クラッド層106が下部クラッド層102の上に形成された状態とする。例えば、ECRプラズマCVD法により、酸化シリコンを堆積することで、上部クラッド層106を形成すればよい。
【0026】
上述した製造方法により製造された光導波路は、基板101の上に形成された酸化シリコンからなる下部クラッド層102と、下部クラッド層102の上に形成されたSiCから構成されたコア105と、コア105を覆って下部クラッド層102の上に形成された酸化シリコンからなる上部クラッド層106とを備えるものとなる。
【0027】
ここで、上述したECRプラズマCVD法によるSiC膜(コア形成層)の形成について説明する。ECRプラズマCVD法では、
図2に示すECRプラズマCVD装置を用いる。この装置は、プラズマ生成室201、成膜室202、基板台203、磁気コイル204、導波管205、石英窓206、ガス導入管207、ガス導入管208を備える。
【0028】
この装置では、プラズマ生成室201の周囲に配置された磁気コイル204により、プラズマ生成室201内部の適当な領域にECR条件を満たす磁界(875ガウス)を発生させ、成膜室202内においてはプラズマ流211の形でイオンを引き出すための発散磁界を形成させる。
【0029】
まず、C
2H
4ガス、アルゴン(Ar)ガスを、ガス導入管207を通してプラズマ生成室201に導入し、2.45GHzのマイクロ波を導波管205より石英窓206を介してプラズマ生成室201に導入してプラズマを生成する。安定にプラズマが生成されたことが確認されたら、SiH
4ガスをガス導入管208により成膜室202の基板台203近傍に供給し、基板209の近傍でC
2H
4と反応させ基板209の表面にSiC膜を形成する。
【0030】
この成膜では、プラズマ流211中に発生する電界により加速されたイオンが、基板209の表面に入射し衝撃を与え、このエネルギーによりSiC膜の形成反応が促進され、緻密な高品質SiC膜が形成される。
【0031】
なおArは、プラズマを安定生成・維持する役割と、アルゴンイオンとして基板表面に入射し、SiC成膜反応促進と膜質向上させる役割を持つ。ArはSiC膜形成には直接関係しないため、SiC膜形成はArなしでも構わないが、Arを加えることでより緻密で高品質なSiC膜が形成できる。ArのかわりにKr,Xeなど異なる希ガスを用いても同様な効果が得られる。
【0032】
ここで、上述したECRプラズマCVD法で形成したSiC膜は、アセチレン、シランから発生する水素が含まれた状態となっている。また、このSiC膜は、原料ガスに添加したアルゴンを含んでいる。添加する希ガスとしてKr,Xeを用いれば、膜中にKr,Xeが含まれる。希ガスは先に述べたように、膜質をあげる効果を持つが、膜中にあっても光損失など光導波路作製には影響を与えない。このため、このように形成したSiC膜よりコアを形成すれば、コアには、アルゴン,クリプトン,キセノンの少なくとも1つの原子と、水素が含まれていることになる。
【0033】
基板台203には、図示していないがヒーターが埋め込まれ、成膜中の基板209の温度を、例えば200℃〜900℃程度に維持可能としている。作製する光導波路が配置される光素子の要求仕様や機能によって作製時の温度耐性が異なるため、光素子ごとに適切な基板温度を選択してSiCの成膜を行う。また、基板209の上に形成される膜の均一性を高めるため、基板台203を傾けて回転させる機構を備えている。
【0034】
図2に示すようなECRプラズマCVD装置は、プラズマ生成にECR条件を用いているため、0.01〜1Paの低ガス圧で安定に高密度プラズマを生成できる。ECRプラズマは、低ガス圧、高エネルギー電子の特徴から、他のプラズマに比較して、導入ガス分子の分解、励起、イオン化が著しく向上する。さらに、本装置において、イオンは、発散磁場の効果によって成膜室202内の基板台203に向かって低エネルギーで引き出され、このイオン衝撃によって基板表面での膜形成反応を促進でき、高品質膜が形成できる。
【0035】
SiC膜の形成では、0.1〜0.5Pa程度のガス圧で成膜するとECRプラズマCVD法の特徴がより引き出されて高品質膜が形成できる。なお、
図2を用いて説明したECRプラズマCVD装置構成の一例で、例えばプラズマ室とコイルとマイクロ波導入部からなるECRプラズマ源を分岐結合型に変更したECRプラズマCVD装置を用いても同様なSiC膜が形成できる。
【0036】
図3は、
図2に例示したECRプラズマCVD装置により形成したSiC膜の成膜速度と屈折率のマイクロ波パワー依存性を調べた結果を示している。SiH
4ガスの流量を10sccm、C
2H
4ガスの流量を10sccm、Arガスの流量を10sccmとし、基板温度は900℃としている。なお、sccmは流量の単位であり、0℃・1013hPaの流体が1分間に1cm
3流れることを示す。
【0037】
図3に示すように、成膜速度はマイクロ波パワーの増加とともに増加し、400Wで80nm/minの速度が得られている。コアをSiCから構成する場合、コアの厚さは400nm程度のため、この速度は実用上十分である。屈折率は、マイクロ波パワーによらず2.5程度が得られている。屈折率は、エリプソメータを用いて波長632.8nmで測定している。
【0038】
図4は、前述したECRプラズマCVD装置により形成したSiC膜の成膜速度と屈折率のC
2H
4ガス流量依存性を調べた結果を示している。成膜速度と屈折率は、C
2H
4の流量が増えるとともに増加しており、光導波路の設計および作製にとって重要なコア形成層の屈折率を、C
2H
4の流量によって2.6〜2.9の範囲で制御できることがわかる。従って、前述した光導波路の製造方法の第2工程においては、炭素を含む原料ガスの流量によってコア形成層の屈折率を制御することができる。
【0039】
このように堆積したSiCによるコア形成層をパターニングしてコアとし、下部クラッド層を屈折率1.45の酸化シリコンとすれば、コアと下部クラッド層の比屈折率差が、34から38%の光導波路を作製できる。この方法によれば、目的の光素子の機能により比屈折率差を選択して光導波路が作製できる。
【0040】
光素子は機能により作製時の温度耐性が異なる。すでに光素子が作製されている基板上に、更に光導波路を追加して作製する場合があることを考えると、実用上は低温でもSiC膜形成できることが重要となる。
【0041】
図5に、成膜温度を変えてECRプラズマCVD法で形成したSiC膜の赤外スペクトルを測定し、C−H/Si−CとSi−H/Si−Cの強度比の変化から膜質を評価した結果を示す。各原料ガスの供給条件は、C
2H
4は、15sccm、SiH
4は、10sccm、Arは、15sccmとして成膜している。
【0042】
成膜温度を下げていくと、C−Hボンド,Si−Hボンドの強度が大きくなっている。これは低温で成膜したSiC膜にH(水素)が多く含まれていることを示している。C−Hは大容量光通信の波長域(1.3〜1.6μm)に吸収を持つため、水素を多く含むSiC膜で光導波路を作ると光損失が高い。
【0043】
このため、処理温度を高くすることができない光素子に光導波路を集積して作製する場合には、ECRプラズマCVD法でのSiC膜形成に用いる原料ガスC
2H
4および原料ガスSiH
4を、水素を重水素化したC
2D
4とSiD
4に変更した。重水素Dのみを含む原料ガスを用いることで、低温形成SiC膜には、C−Dボンドのみが含まれることになり、このSiC膜を用いて作製したコアは、水素ではなく重水素が含まれる状態となる。この結果、コアにおける光吸収波長がシフトするため、光通信波長域において光損失のない光導波路が作製できる。
【0044】
Hの同位体であるDへの変更は、屈折率など他の膜特性にはほとんど影響はないため、光素子構造の設計変更なく同じ作製方法でSiCをコアとする低損失な光導波路を作製できる。C
2D
4とSiD
4ガスによるSiC形成は、低温時のときその効果は大きいが、高温成膜に用いても構わない。なお、低温成膜されたSiC膜を用いて作製した光導波路についても、導波路長が短い場合においては光導波路の吸収損失の影響は小さいので、C
2H
4とSiH
4ガスを用いたSiC膜を用いても構わない。重水素化した原料ガスで成膜したSiC膜中には、重水素に加えて膜質向上のため原料ガスに添加したアルゴン(希ガス)を含んでいるが、吸収などの光損失には影響を与えない。
【0045】
次に、上述した実施の形態における光導波路の適用例について説明する。この光導波路は、ゲルマニウム(Ge)受光器と集積させて光素子(光モジュール)とすることができる。この光モジュールについて、
図6を参照して説明する。この光モジュールは、まず、シリコン基板300と、シリコン基板300の上に形成されたSiO
2からなる下部クラッド層301と、下部クラッド層301の上の第1領域310に形成されたゲルマニウムフォトダイオード310aとを備える。また、光モジュールは、下部クラッド層301の上の第1領域310に連続する第2領域320に形成されたシリコンコア321を備える。
【0046】
また、光モジュールは、シリコンコア321を覆うSiO
2からなる保護膜302と、第2領域320の一部から第2領域320に連続する第3領域330にかけて形成されたSiCコア331とを備える。また、光モジュールは、ゲルマニウムフォトダイオード310a,シリコンコア321,およびSiCコア331の上に形成されたSiO
2からなる上部クラッド層303を備える。
【0047】
例えば、下部クラッド層301は、層厚3μm程度に形成され、上部クラッド層303は、5μm程度に形成されている。また、シリコンコア321は、断面が幅400〜600nm,高さ200〜300nm程度に形成されている。SiCコア331は、断面が幅0.8μm、高さ0.4μm程度に形成されている。また、シリコンコア321による第2領域320のシリコン光導波路は、導波路長が200〜500nm程度とされている。
【0048】
ゲルマニウムフォトダイオード310aは、シリコンコア321に連続して形成されたp型の下部シリコンパターン311と、下部シリコンパターン311の上に形成されたi型のゲルマニウムパターン312と、ゲルマニウムパターン312の上に形成されたn型の上部シリコンパターン313とから構成されている。ゲルマニウムパターン312は厚さ1μm程度で、ゲルマニウムフォトダイオード310aは、平面視で10×50μm程度の矩形に形成されている。
【0049】
上述した光モジュールは、ゲルマニウムフォトダイオード310a、第2領域320におけるシリコンコア321からなるシリコン光導波路、第2領域320の途中から第3領域330にかけてのSiCコア331からなるSiC光導波路が、これらの順に接続した状態に、シリコン基板300の上にモノリシックに形成されている。SiC光導波路の終端は、SiCコア331の先端を100nm程度に細めたテーパ状になっている。
【0050】
保護膜302は、ゲルマニウムパターン312の形成に用いた選択成長マスクを薄層化することで形成されている。なお、図示していないが、上部クラッド層303および保護膜302を貫通し、下部シリコンパターン311に接続するコンタクト配線と、上部クラッド層303を貫通して上部シリコンパターン313に接続するコンタクト配線とを備える。
【0051】
この光モジュールでは、まず、SiCコア331による第3領域330のSiC光導波路を導波してきた光を、シリコンコア321がSiCコア331で覆われている領域において、SiCコア331の先端を細めることで、より高い屈折率のシリコンコア321よりなるシリコン光導波路へ移行させることができる。次いで、このシリコン光導波路を導波する光は、シリコンコア321に連続する下部シリコンパターン311の上の、さらに屈折率の高いゲルマニウムパターン312へ吸収させることができる。
【0052】
このように、SiC光導波路を導波してきた光を、ゲルマニウムフォトダイオード310aで光電変換させることができる。ここで、SiCコア331で覆われている領域のシリコンコア321についても、第3領域330の側に行くほど、平面視で先細りとすることで、より高い効率でSiC導波路とSi導波路を光結合させることができる。例えば、シリコンコア321の第3領域330側の先端の幅が、80nm程度となる先細り形状とすればよい。
【0053】
この光集積素子は、次に示すようにして作製すればよい。まず、よく知られたSOI(Silicon on Insulator)基板を用意し、この表面シリコン層を周知のリソグラフィとエッチングによってパターニングしてシリコンコア321を形成する。次に、シリコン上へのゲルマニウム選択成長技術を用い、シリコンコア321の上にゲルマニウムフォトダイオード310aを作製する。この後、前述したECRプラズマCVD法により形成したSiC膜をパターニングしてSiCコア331を形成してSiC光導波路とする。
【0054】
この光素子は、ゲルマニウムフォトダイオード310aを作製した後でSiC導波路を作製するため、ゲルマニウムフォトダイオード310aの特性を劣化させないために、SiC膜形成は低温の400℃以下で行うことが重要となる。従って低温でも光損失が小さく高品質のECRプラズマCVD法によりSiC膜を形成してSiCコア331とすることで、光素子作製が実現できるようになる。
【0055】
以上に説明したように、本発明によれば、コアをSiCから構成したので、コアとクラッドとの比屈折率差をより大きくすることができる。また、近年、デバイスの小型化高機能化のため、光導波路を発光素子や受光素子など様々なデバイスと一体集積することから、この光導波路膜の形成方法には、成膜中の温度などで他のデバイスに影響を与えることなく高品質膜が形成できる方法が求められている。これに対し、本発明によれば、ECRプラズマCVD法によりSiCから構成されたコア形成層を形成するようにしたので、集積されている他のデバイスに影響を与えることなく、SiCから構成されたコアによる光導波路が形成できる。
【0056】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。