特許第6805217号(P6805217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805217
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】導電性材料、成型品及び電子部品
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/14 20060101AFI20201214BHJP
   C22C 9/00 20060101ALI20201214BHJP
   C22C 9/06 20060101ALI20201214BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20201214BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20201214BHJP
   C25D 5/16 20060101ALI20201214BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20201214BHJP
   H01L 23/50 20060101ALI20201214BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20201214BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20201214BHJP
   C22C 38/08 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C25D5/14
   C22C9/00
   C22C9/06
   C22C21/00 A
   C22C21/00 E
   C22C38/00 302Z
   C25D5/16
   C25D7/00 G
   H01L23/50 H
   H01L23/30 R
   C22C38/08
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-196988(P2018-196988)
(22)【出願日】2018年10月18日
(65)【公開番号】特開2020-63493(P2020-63493A)
(43)【公開日】2020年4月23日
【審査請求日】2020年7月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康則
(72)【発明者】
【氏名】川村 高広
(72)【発明者】
【氏名】小林 良聡
(72)【発明者】
【氏名】相場 玲宏
【審査官】 ▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−055044(JP,A)
【文献】 国際公開第17/077903(WO,A1)
【文献】 国際公開第18/123708(WO,A1)
【文献】 特開2012−116126(JP,A)
【文献】 特開2004−339584(JP,A)
【文献】 特開2013−111881(JP,A)
【文献】 特開平10−265991(JP,A)
【文献】 特開平09−148508(JP,A)
【文献】 特開2010−236058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/12
C25D 5/16
C25D 7/00
H01L 23/28
H01L 23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に樹脂を成型する、または、表面を樹脂で封止する導電性材料であって、
前記表面が金属で構成され、下記(1)及び(2)の条件を満たす導電性材料。
(1)算術平均面粗さ高さSaが0.25〜0.4μm、
(2)山頂点の算術平均曲Spcが3.05万〜6万(1/mm)。
【請求項2】
前記表面の最大面粗さ高さSzが3.5〜6.5μmである請求項1に記載の導電性材料。
【請求項3】
前記導電性材料が基材と前記基材上に形成されためっき層とを含み、
前記表面が前記めっき層である請求項1または2に記載の導電性材料。
【請求項4】
前記基材が、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄及び鉄合金のいずれかで構成された請求項3に記載の導電性材料。
【請求項5】
前記めっき層が1種以上のめっき層で構成された請求項3または4に記載の導電性材料。
【請求項6】
前記めっき層は前記基材上に形成された第1めっき層を有し、前記第1めっき層が銅、銅合金、ニッケル及びニッケル合金のいずれかで構成された請求項5に記載の導電性材料。
【請求項7】
前記めっき層は前記第1めっき層上に形成された第2めっき層を有し、前記第2めっき層がパラジウム、パラジウム合金、金及び金合金のいずれかで構成された請求項6に記載の導電性材料。
【請求項8】
前記1種以上のめっき層で構成された前記めっき層の厚みの総和が1〜7μmである請求項5〜7のいずれか一項に記載の導電性材料。
【請求項9】
前記(1)及び(2)の条件を満たす表面を部分的に有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の導電性材料。
【請求項10】
前記表面に樹脂が成型された、または、前記表面が樹脂で封止された請求項1〜9のいずれか一項に記載の導電性材料を備えた成型品。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の導電性材料を備えた電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性材料、成型品及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属と樹脂との密着性の改善要望が増加している。例えば、リードフレーム、バズバーモジュール等のような金属製の電子部品を衝撃、温度、湿度等の要因から守るために、当該電子部品の表面を樹脂で固める樹脂成型、樹脂封止、または、モールド成型等を施すことがある。このような場合、使用中に樹脂が剥離しないように当該電子部品の金属表面と樹脂とが優れた密着力で密着されている必要がある。特に、車載向けについては過酷な環境下にあるエンジンルーム周りでの電子化が進むことで、より一層の密着性の向上が求められている。
【0003】
金属と樹脂との密着性の向上を図った公知技術として特許文献1〜3には、樹脂封止型半導体装置におけるリードフレームとモールド樹脂との密着性を高めるために、リードフレームのメッキ表面を粗化する技術が提案されている。
【0004】
また、最近の公知技術として特許文献4には、金属と樹脂との密着性の向上を図るために比表面積及び表層の酸化膜厚に着目した技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−29439号公報
【特許文献2】特開平10−27873号公報
【特許文献3】特開2006−93559号公報
【特許文献4】国際公開第2017/179447号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、高温高湿試験において例えばJEDEC−LEVEL1等をクリアすることが求められてきたが、近年では自動車の電子化等によって、さらに過酷な環境下、例えばヒートサイクル試験等において耐久性を有することが要求されており、従来の技術では必ずしも特性が十分とはいえない状況が散見されている。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、過酷な環境下においても優れた樹脂密着性を示す導電性材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、樹脂を成型するまたは樹脂で封止する表面を金属で構成し、当該表面を所定の形態に制御することで、当該課題を解決し得る導電性材料が得られることを見出した。
【0009】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一実施形態において、表面に樹脂を成型する、または、表面を樹脂で封止する導電性材料であって、
前記表面が金属で構成され、下記(1)及び(2)の条件を満たす導電性材料である。
(1)算術平均面粗さ高さSaが0.25〜0.4μm、
(2)山頂点の算術平均曲Spcが3.05万〜6万(1/mm)。
【0010】
本発明の導電性材料は更に別の一実施形態において、前記表面の最大面粗さ高さSzが3.5〜6.5μmである。
【0011】
本発明の導電性材料は更に別の一実施形態において、前記導電性材料が基材と前記基材上に形成されためっき層とを含み、前記表面が前記めっき層である。
【0012】
本発明の導電性材料は更に別の一実施形態において、前記基材が、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄及び鉄合金のいずれかで構成されている。
【0013】
本発明の導電性材料は更に別の一実施形態において、前記めっき層が1種以上のめっき層で構成されている。
【0014】
本発明の導電性材料は更に別の一実施形態において、前記めっき層は前記基材上に形成された第1めっき層を有し、前記第1めっき層が銅、銅合金、ニッケル及びニッケル合金のいずれかで構成されている。
【0015】
本発明の導電性材料は更に別の一実施形態において、前記めっき層は前記第1めっき層上に形成された第2めっき層を有し、前記第2めっき層がパラジウム、パラジウム合金、金及び金合金のいずれかで構成されている。
【0016】
本発明の導電性材料は更に別の一実施形態において、前記1種以上のめっき層で構成された前記めっき層の厚みの総和が1〜7μmである。
【0017】
本発明の導電性材料は更に別の一実施形態において、前記(1)及び(2)の条件を満たす表面を部分的に有する。
【0018】
本発明は更に別の一実施形態において、前記表面に樹脂が成型された、または、前記表面が樹脂で封止された本発明の導電性材料を備えた成型品である。
【0019】
本発明は更に別の一実施形態において、本発明の導電性材料を備えた電子部品である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、過酷な環境下においても優れた樹脂密着性を示す導電性材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態1に係る導電性材料の構成を示す断面模式図である。
図2】実施形態2に係る導電性材料の構成を示す断面模式図である。
図3】実施形態3に係る導電性材料の構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<導電性材料>
本発明の実施形態に係る導電性材料は、表面に樹脂を成型する、または、表面を樹脂で封止する導電性材料であって、表面が金属で構成され、下記(1)及び(2)の条件を満たす。
(1)算術平均面粗さ高さSaが0.25〜0.4μm、
(2)山頂点の算術平均曲Spcが3万〜6万(1/mm)。
【0023】
従来、金属と樹脂との密着性について、金属の線粗さ(Rz,Ra)を制御していたものの、より過酷な環境下で使用される電子部品での樹脂との密着性を制御するパラメータとしては不十分である。これに対し、詳細は後述するが、本発明では面における粗さとして、国際標準化機構ISO25178−2:2012に規定されるSa、Spcを導入することにより、従来よりも良好に樹脂との密着性を制御することができるようになった。
【0024】
本発明の実施形態に係る導電性材料は少なくとも表面が金属で構成されていればよいため、詳細は後述するが、1種類の金属材料で形成してもよく、基材と表面の金属層とに分けて形成してもよい。
【0025】
本発明の実施形態に係る導電性材料の表面の算術平均面粗さ高さSaは0.25〜0.4μmに制御されている。導電性材料の表面のSaが0.25μm未満であると表面の粗化不足によりアンカー効果が不十分となって、樹脂との密着性が低下する。導電性材料の表面のSaが0.4μm超であると、導電性材料の表面の粗化されて生じた先端部分が破断しやすくなる。導電性材料の表面のSaは、0.27〜0.38μmであるのが好ましく、0.3〜0.35μmであるのがより好ましい。
【0026】
本発明の実施形態に係る導電性材料の金属表面と樹脂とが密着するとき、樹脂の方が金属より熱膨張係数が大きいため、樹脂の熱膨張を金属アンカーによって抑制する必要がある。本発明では当該樹脂との熱膨張係数差の問題に対し、導電性材料の表面の山頂点の算術平均曲Spcが3万〜6万(1/mm)に制御されている。なお、Spcは、表面の山頂点の主曲率の平均の逆数を表す。つまり、山頂が鋭くなるほど、Spcは大きくなる。導電性材料の表面の山頂点の算術平均曲Spcが3万(1/mm)未満であると、当該アンカー効果が不十分となり、熱膨張係数差に負けて、樹脂との剥離が生じるおそれがある。また、導電性材料の表面のSpcは大きすぎると、先端が鋭くなりすぎて折れやすくなり、却って密着強度が低下するおそれが生じる場合がある。このような観点から、導電性材料の表面のSpcは、前記Saとの組合せで効果を発揮するため特に上限は設けないが、6万(1/mm)以下であるのが好ましい。また、導電性材料の表面のSpcは、3.4万〜5.5万(1/mm)であるのが好ましく、4万〜5.5万(1/mm)であるのがより好ましい。
【0027】
本発明の実施形態に係る導電性材料の表面の最大面粗さ高さSz(ISO25178−2:2012)は3.5〜6.5μmであるのが好ましい。導電性材料の表面のSzが3.5μm未満であると表面の粗化不足によりアンカー効果が不十分となって、樹脂との密着性が低下する。導電性材料の表面のSzが6.5μm超であると、導電性材料の表面の高低間の隙間に樹脂が入り込みにくくなるおそれがある。導電性材料の表面のSaは、3.7〜6.0μmであるのが好ましく、4.5〜5.0μmであるのがより好ましい。
【0028】
本発明の実施形態に係る導電性材料は、表面が少なくとも金属であればよく、特に限定されないが、以下の3パターンの形態(実施形態1〜3)を含む。
【0029】
・導電性材料の構成に係る実施形態1
図1は、本発明の実施形態1に係る導電性材料10の構成を示す断面模式図である。導電性材料10は金属材料で構成されており、上記(1)及び(2)の条件を満たす表面11を有する。図1の点線枠12部分の拡大図が右図に示されている。なお図1の右図は導電性材料10の粗化表面の一例を示すものであり、このような形状の粗化表面に限定されるものではない。このような構成によれば、導電性材料を構成する材料が1種類の金属材料であるため、製造効率または製造コストが良好となる。導電性材料10の金属材料としては、例えば銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ニッケル、ニッケル合金、パラジウム、パラジウム合金、金及び金合金のいずれかで構成することができる。また、金属と樹脂とでは、樹脂の方が熱膨張係数が大きい。このとき、樹脂に密着する金属(導電性材料10の金属材料)の熱伝導率が高ければ、樹脂に籠っている熱を効率的に逃がすことができる。その結果、樹脂の熱膨張を抑えることができる。このような観点から、導電性材料10の金属材料の熱伝導率に比例する導電率は、10%IACS以上であることが好ましい。
【0030】
導電性材料10は、所定の金属材料を準備し、当該金属材料の表面に、エッチング処理、ブラスト処理、または、凹凸面を有する圧延ロールによる転写処理を施すことで、上記(1)及び(2)の条件を満たす表面11を形成することができる。エッチング処理としては、例えば、メック株式会社製 CZ8101(製品名)や三菱ガス化学株式会社製 CPE900(製品名)、さらにメック株式会社製 NR1870(製品名)など、各社より市販されているエッチング液を使用して所定の形状に制御することができる。なおエッチング方法としては、浸漬式、スプレー式、電解式など、さまざまな手法を採用することができる。
【0031】
・導電性材料の構成に係る実施形態2
図2は、本発明の実施形態2に係る導電性材料20の構成を示す断面模式図である。導電性材料20は、基材22と基材22上に形成されためっき層23とを含み、上記(1)及び(2)の条件を満たす表面21がめっき層23である。図2の点線枠24部分の拡大図が右図に示されている。なお図2の右図は導電性材料20の粗化表面の一例を示すものであり、このような形状の粗化表面に限定されるものではない。このような構成によれば、上記(1)及び(2)の条件を満たす表面をめっき層で制御することができ、当該表面(表層、すなわちめっき層)の厚みを容易に制御することができる。
【0032】
基材22は樹脂で構成されていてもよく、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄及び鉄合金のいずれかの金属で構成されていてもよい。また、基材22がめっき層23の金属と同種類の金属で構成されていてもよい。めっき層23は銅、銅合金、ニッケル及びニッケル合金のいずれかで構成されていてもよい。また、樹脂に間接的に密着する金属(導電性材料20の基材22)の熱伝導率が高ければ、樹脂に籠っている熱を効率的に逃がすことができる。その結果、樹脂の熱膨張を抑えることができる。このような観点から、導電性材料20の基材22の熱伝導率に比例する導電率は、10%IACS以上であることが好ましい。
【0033】
導電性材料20は、所定の材料で形成された基材22を準備し、当該基材22上に所定のめっき条件でめっき層23を形成する。このとき、めっき浴の組成、めっき温度、電流密度、めっき厚等のめっき条件を制御することで、上記(1)及び(2)の条件を満たす表面21を形成することができる。
【0034】
・導電性材料の構成に係る実施形態3
図3は、本発明の実施形態3に係る導電性材料30の構成を示す断面模式図である。導電性材料30は、基材32と2種のめっき層(第1めっき層33、第2めっき層34)とで構成されている。第1めっき層33は基材32上に形成され、第2めっき層34は第1めっき層33上に形成されており、上記(1)及び(2)の条件を満たす表面31が第2めっき層34である。図3の点線枠35部分の拡大図が右図に示されている。なお図3の右図は導電性材料30の粗化表面の一例を示すものであり、このような形状の粗化表面に限定されるものではない。このような構成によれば、上記(1)及び(2)の条件を満たす表面をめっき層で制御することができ、当該表面(表層、すなわちめっき層)の厚みを容易に制御することができる。また、複層のめっき層を良好なコスト及び効率で製造することができる。
【0035】
基材32は樹脂で構成されていてもよく、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄及び鉄合金のいずれかの金属で構成されていてもよい。また、基材32が第1めっき層33の金属と同種類の金属で構成されていてもよい。第1めっき層33は銅、銅合金、ニッケル及びニッケル合金のいずれかで構成されていてもよい。第2めっき層はパラジウム、パラジウム合金、金及び金合金のいずれかで構成されていてもよい。導電性材料30が例えばリードフレームの場合、第2めっき層の表面(導電性材料30の最表面)をこのように貴金属めっきにすることによって、半田付け性を高め、且つ、低接触抵抗を実現できる。また、樹脂に間接的に密着する金属(導電性材料30の基材32)の熱伝導率が高ければ、樹脂に籠っている熱を効率的に逃がすことができる。その結果、樹脂の熱膨張を抑えることができる。このような観点から、導電性材料30の基材32の熱伝導率に比例する導電率は、10%IACS以上であることが好ましい。
【0036】
導電性材料30は、所定の材料で形成された基材32を準備し、当該基材32上に所定のめっき条件で第1めっき層33を形成し、続いて第2めっき層34を形成する。このとき、めっき浴の組成、めっき温度、電流密度、めっき厚等のめっき条件を制御することで、上記(1)及び(2)の条件を満たす表面31を形成することができる。例えば、めっき浴の組成、めっき温度、電流密度、めっき厚等のめっき条件を制御することで上記(1)及び(2)の条件を満たす第1めっき層33を形成し、このような第1めっき層33上に薄い第2めっき層34を形成する。これにより、第2めっき層34の表面プロフィールは、第1めっき層33の表面プロフィールと略等しくなる。このようにして、上記(1)及び(2)の条件を満たす表面31を形成してもよい。
【0037】
めっき層は、実施形態2または3のように1層または2層で形成してもよく、3層または4層以上で形成してもよい。また、実施形態1〜3の導電性材料10、20、30の最表面は、上記(1)及び(2)の条件を満たしている限り、リン酸エステル系の処理液等による処理を行うことで、めっきの酸化防止剤に係る機能を付与してもよい。また必要に応じて、めっきのピンホールによる腐食を抑制するための封孔処理を付与してもよい。
【0038】
本発明の実施形態に係る導電性材料は、1種以上のめっき層で構成されためっき層の厚みの総和が1〜7μmであるのが好ましい。めっき層の厚みの総和が1μm未満であると、表面の粗化の形状を十分に形成できず、また基材成分の拡散が進行しやすくなるおそれがある。めっき層の厚みの総和が7μm超であると、プレス加工時や曲げ加工時に導電性材料のめっき層にクラックが生じやすくなるおそれがある。
【0039】
本発明の実施形態に係る導電性材料は、上記(1)及び(2)の条件を満たす表面を部分的に有してもよい。導電性材料の表面全体が上記(1)及び(2)の条件を満たす場合に対し、当該表面が部分的に設けられていることで、樹脂の密着が不要な部分については容易に樹脂を除去することができる。一例として、当該表面が部分的に設けられていることで、目的箇所から漏れた樹脂(バリ)を容易に除去することができる。また、上記(1)及び(2)の条件を満たすような粗化形状を有する表面は、ワイヤボンディング性が悪化するという特性を有するため、当該表面を部分的に設けることによって、ワイヤボンディング性の悪化を抑制できる。当該部分的に設けられた表面は、ストライプ状であってもよく、スポット状、さらにはリング状などであってもよい。
【0040】
<導電性材料の用途>
本発明の実施形態に係る導電性材料の用途は特に限定しないが、樹脂との良好な密着性が必要な電子部品の材料として用いることができ、特に、衝撃、温度、湿度等の要因から守るために表面を樹脂で固める樹脂成型、樹脂封止、または、モールド成型等を施す電子部品の材料として用いることができる。当該電子部品としては例えば、リードフレーム、バズバーモジュール等のような金属製の電子部品が挙げられる。本発明の実施形態に係る導電性材料は、このような表面に樹脂成型、樹脂封止、または、モールド成型が施された成型品としても、導電性材料の表面と樹脂との密着性が非常に良好であるため、例えば車載向けのエンジンルーム周りという過酷な環境下で使用される電子部品の材料として用いた場合でも、良好な耐久性が期待できる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例と比較例を共に示すが、これらは本発明をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
【0042】
<導電性材料の作製>
実施例1〜14、17〜21、従来例1、比較例1〜2として、表1に示すように基材の表面に表層めっきを形成した。また、実施例15〜16、従来例2として、表1に示すように基材表面に下地めっき及び表層めっきを形成し、導電性材料の試験片を作製した。各基材の面積は50mm×50mm、板厚は0.4mmとした。なお、表1に示す基材の種類は以下の通りである。
C11000:99.9%Cu
C10200:99.9%Cu
C19400:Cu−2.2%Fe−0.15%Zn−0.03%P
C70250:Cu−3%Ni−0.65%Si−0.15%Mg
A5052:Al−2.5Mg−0.4%Fe−0.25%Si−0.25%Cr−0.1%Cu−0.1%Mn−0.1%Zn
42アロイ:Fe−42%Ni
【0043】
各めっきを行う前の前処理条件としては、A5052以外の各基材については、水酸化ナトリウムが50g/Lのアルカリ脱脂浴にてカソード電解脱脂を5A/dm2で60秒実施後、10%硫酸およびフッ化アンモニウム50g/Lの酸洗溶液にて30秒酸洗浄し、各めっき工程へ移行した。
【0044】
またA5052においては、前記のアルカリ脱脂浴にてカソード電解脱脂を5A/dm2で10秒実施後、10%硫酸およびフッ化アンモニウム50g/Lの酸洗溶液にて10秒酸洗浄した後、水酸化ナトリウムを50g/L、酸化亜鉛を5g/L、塩化第二鉄を2g/L、ロッシェル塩を50g/Lをそれぞれ含有した亜鉛置換浴で、浴温25℃、処理時間10秒処理して亜鉛置換を実施し、もう一度前記の酸洗浄と亜鉛置換を繰り返して各めっき工程へ移行した。
【0045】
各めっき処理は、電気めっきにて、めっき浴の組成、めっき液の温度、電流密度及びめっき時間を調製することで行った。表2に実施例1〜5でそれぞれ用いた電気めっき条件を示す。めっき浴成分は、Niメタル分130g/L、ホウ酸25g/LでpH3.3であった。ここで、Niメタル分は、Ni塩としてスルファミン酸ニッケル四水和物及び塩化Niで構成されている。より具体的には、スルファミン酸ニッケル四水和物:Ni(NH2SO32・4H2O=294g/L(約300g/L)、Ni量で53.5g/L、塩化ニッケル六水和物:NiCl2・6H2O=約310g/L、Ni量で76.5g/Lである。
【0046】
実施例6〜14及び17〜20、従来例1、比較例1〜2の表層めっき、及び、実施例15〜16の下地めっき及び表層めっきは、上記実施例1〜5の表2で用いためっき条件に基づき、めっき浴の組成、めっき液の温度、電流密度及びめっき時間、さらに撹拌の程度をそれぞれ調整することで形成した。このとき、導電性材料の試験片の表面のSa、Spc、Szが所望の数値となるように、上記実施例1〜5の表2で用いためっき条件と後述の評価結果を参考にした。また、各めっき条件の調整は以下の知見に基づいて行った。
膜厚:膜厚が増加すると、結晶粒が膜厚方向に優先的に成長する(水平方向よりも膜厚方向への成長速度が速い)ため、Sa、Szは大きくなる。一方、Spcについては、結晶粒の成長により配向が強くなり、先端は鋭くなることから、大きくなる。
めっき液種類:めっき液中の塩素濃度、すなわち塩化Ni濃度を大きくすることで、結晶が尖りやすく、また表面の凹凸が大きく鋭くなるため、Sa、Sz、Spcがそれぞれ増大する。
めっき液温度:めっき浴の液温が高いと、結晶が等方的に成長し、結晶粒が大きくなりやすく、また先端も尖りやすくなるため、Sa、Sz、Spcはそれぞれ増加する。一方で、60℃を超えると結晶粒粗大化が進行し、極大値を55℃近辺でとってやがて低下する。
電流密度:電流密度が高くなると、核生成数が多くなるため、膜厚が薄い場合と厚い場合に分けて考えられる。概ね3μm前後で差があり、3μm以下であれば電流密度が高いとSa、Szは微細析出が優先となり小さくなる傾向にあり、また突起の数は多くなるが、微細析出が進むため曲率は小さくなる(つまり、Spcは大きくなる)傾向にある。一方で、膜厚が厚いとSa、Szは上記膜厚上昇と同じ要因で増加し、Spcについては結晶粒の成長により配向が強くなり、先端は鋭くなることから、大きくなる傾向にある。
なお、従来例2は、特許文献3の実施例に基づき、以下の条件で導電性材料の試験片を作製した。具体的には、従来例2のNiめっきは、硫酸ニッケルを260g/L、塩化ニッケルを50g/L、ホウ酸を35g/L、pH4.5、浴温50℃、電流密度5A/dm2、めっき時間200秒の条件で作製した。
さらに実施例15、16および従来例2に記載のAuめっきについては、シアン化金カリウムを20g/L、クエン酸カリウムを50g/L、pH5、浴温60℃、電流密度1A/dm2で所定の膜厚になるようにめっき時間を調整し、またPdめっきにおいては、ジアンミンジクロロパラジウムをPd成分として20g/L、塩化アンモニウムを75g/L、pH9、浴温40℃、電流密度1.5A/dm2で所定の膜厚になるようにめっき時間を調整して作製した。従来例2のめっき厚は1μmとした。
なお、めっき厚の確認については、任意の5点について蛍光X線膜厚計(日立ハイテク社製 SFT9500)を使用し、コリメータ径0.2mm、各膜厚測定時間30秒での平均値について算出した。
【0047】
実施例21については、実施例1と同じ条件で6μmのNiめっきを行った後、Niめっき厚を5μmとなるまで以下の条件にてエッチングした。
・エッチング条件
エッチング液:メック社製NR1870、エッチング液温:25℃、エッチング時間:30秒
【0048】
<評価>
・表面のSa、Spc、Sz
導電性材料の試験片の表面のSa、Spc、Szは、キーエンス社製レーザー顕微鏡(VK−X150)を使用し、観察倍率1000倍、スポット径φ0.8mm、測定面積100μm×100μmで測定した。5回の測定(N5)の平均値を算出し、導電性材料の試験片の表面のSa、Spc、Szの値とした。
【0049】
・シェア強度(初期)
導電性材料の試験片の表面に樹脂成型したものをサンプルとして、プリンカップモールド試験にてシェア強度を測定した。試験条件は、樹脂:日立化成社製GE−7470LA樹脂、プリンカップ底面の面積:10mm2、樹脂成型時間:120秒、モールドキュア:175℃で8時間とし、10回のせん断力測定(N10)の平均値を算出し、シェア強度(初期)とした。シェアはデイジ社製 ボンドテスター(Series4000)にて、シェア速度100μm/秒にて測定した。評価基準は以下の通りとした。
◎:20kg以上
〇:15kg以上20kg未満
×:15kg未満
【0050】
・シェア強度(高温高湿試験)
また、上記のように作製したサンプルを、温度85℃、湿度85%の環境下で168時間放置した後、上記シェア強度を同様に測定した。評価基準は以下の通りとした。
◎:剥離無し
〇:剥離率20%未満
×:剥離率20%以上
当該剥離率は、超音波探傷による画像から、導電性材料の表面と樹脂とがどのような割合で剥離しているのかを計算して評価した。
【0051】
・シェア強度(ヒートサイクル試験)
さらに、上記のように作製したサンプルを、125℃で30分間保持した後、−40℃で30分間保持することを1サイクルとして、これを500サイクル連続で繰り返した。その後、上記シェア強度を同様に測定した。評価基準は以下の通りとした。
◎:剥離無し
〇:剥離率10%未満
△:剥離率10%以上20%未満
×:剥離率20%以上
当該剥離率は、超音波探傷による画像から、導電性材料の表面と樹脂とがどのような割合で剥離しているのかを計算して評価した。
上記試験条件及び評価結果を表1、2に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
実施例1〜21は、いずれも導電性材料の表面が下記(1)及び(2)の条件を満たしたため、初期、高温高湿試験のいずれのシェア強度も非常に良好であり、ヒートサイクル試験のシェア強度は評価基準が△、〇、◎のいずれかであり、過酷な環境下においても優れた樹脂密着性を示すことがわかった。
(1)算術平均面粗さ高さSaが0.25〜0.4μm、
(2)山頂点の算術平均曲Spcが3万〜6万(1/mm)
従来例1、2及び比較例1、2は、いずれも導電性材料の表面が上記(1)及び(2)の条件の少なくとも1つを満たさなかったため、少なくともヒートサイクル試験のシェア強度が不良であった。
【符号の説明】
【0055】
10、20、30 導電性材料
11、21、31 表面
12、24、35 点線枠
22、32 基材
23 めっき層
33 第1めっき層
34 第2めっき層
図1
図2
図3