【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例と比較例を共に示すが、これらは本発明をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
【0042】
<導電性材料の作製>
実施例1〜14、17〜21、従来例1、比較例1〜2として、表1に示すように基材の表面に表層めっきを形成した。また、実施例15〜16、従来例2として、表1に示すように基材表面に下地めっき及び表層めっきを形成し、導電性材料の試験片を作製した。各基材の面積は50mm×50mm、板厚は0.4mmとした。なお、表1に示す基材の種類は以下の通りである。
C11000:99.9%Cu
C10200:99.9%Cu
C19400:Cu−2.2%Fe−0.15%Zn−0.03%P
C70250:Cu−3%Ni−0.65%Si−0.15%Mg
A5052:Al−2.5Mg−0.4%Fe−0.25%Si−0.25%Cr−0.1%Cu−0.1%Mn−0.1%Zn
42アロイ:Fe−42%Ni
【0043】
各めっきを行う前の前処理条件としては、A5052以外の各基材については、水酸化ナトリウムが50g/Lのアルカリ脱脂浴にてカソード電解脱脂を5A/dm
2で60秒実施後、10%硫酸およびフッ化アンモニウム50g/Lの酸洗溶液にて30秒酸洗浄し、各めっき工程へ移行した。
【0044】
またA5052においては、前記のアルカリ脱脂浴にてカソード電解脱脂を5A/dm
2で10秒実施後、10%硫酸およびフッ化アンモニウム50g/Lの酸洗溶液にて10秒酸洗浄した後、水酸化ナトリウムを50g/L、酸化亜鉛を5g/L、塩化第二鉄を2g/L、ロッシェル塩を50g/Lをそれぞれ含有した亜鉛置換浴で、浴温25℃、処理時間10秒処理して亜鉛置換を実施し、もう一度前記の酸洗浄と亜鉛置換を繰り返して各めっき工程へ移行した。
【0045】
各めっき処理は、電気めっきにて、めっき浴の組成、めっき液の温度、電流密度及びめっき時間を調製することで行った。表2に実施例1〜5でそれぞれ用いた電気めっき条件を示す。めっき浴成分は、Niメタル分130g/L、ホウ酸25g/LでpH3.3であった。ここで、Niメタル分は、Ni塩としてスルファミン酸ニッケル四水和物及び塩化Niで構成されている。より具体的には、スルファミン酸ニッケル四水和物:Ni(NH
2SO
3)
2・4H
2O=294g/L(約300g/L)、Ni量で53.5g/L、塩化ニッケル六水和物:NiCl
2・6H
2O=約310g/L、Ni量で76.5g/Lである。
【0046】
実施例6〜14及び17〜20、従来例1、比較例1〜2の表層めっき、及び、実施例15〜16の下地めっき及び表層めっきは、上記実施例1〜5の表2で用いためっき条件に基づき、めっき浴の組成、めっき液の温度、電流密度及びめっき時間、さらに撹拌の程度をそれぞれ調整することで形成した。このとき、導電性材料の試験片の表面のSa、Spc、Szが所望の数値となるように、上記実施例1〜5の表2で用いためっき条件と後述の評価結果を参考にした。また、各めっき条件の調整は以下の知見に基づいて行った。
膜厚:膜厚が増加すると、結晶粒が膜厚方向に優先的に成長する(水平方向よりも膜厚方向への成長速度が速い)ため、Sa、Szは大きくなる。一方、Spcについては、結晶粒の成長により配向が強くなり、先端は鋭くなることから、大きくなる。
めっき液種類:めっき液中の塩素濃度、すなわち塩化Ni濃度を大きくすることで、結晶が尖りやすく、また表面の凹凸が大きく鋭くなるため、Sa、Sz、Spcがそれぞれ増大する。
めっき液温度:めっき浴の液温が高いと、結晶が等方的に成長し、結晶粒が大きくなりやすく、また先端も尖りやすくなるため、Sa、Sz、Spcはそれぞれ増加する。一方で、60℃を超えると結晶粒粗大化が進行し、極大値を55℃近辺でとってやがて低下する。
電流密度:電流密度が高くなると、核生成数が多くなるため、膜厚が薄い場合と厚い場合に分けて考えられる。概ね3μm前後で差があり、3μm以下であれば電流密度が高いとSa、Szは微細析出が優先となり小さくなる傾向にあり、また突起の数は多くなるが、微細析出が進むため曲率は小さくなる(つまり、Spcは大きくなる)傾向にある。一方で、膜厚が厚いとSa、Szは上記膜厚上昇と同じ要因で増加し、Spcについては結晶粒の成長により配向が強くなり、先端は鋭くなることから、大きくなる傾向にある。
なお、従来例2は、特許文献3の実施例に基づき、以下の条件で導電性材料の試験片を作製した。具体的には、従来例2のNiめっきは、硫酸ニッケルを260g/L、塩化ニッケルを50g/L、ホウ酸を35g/L、pH4.5、浴温50℃、電流密度5A/dm
2、めっき時間200秒の条件で作製した。
さらに実施例15、16および従来例2に記載のAuめっきについては、シアン化金カリウムを20g/L、クエン酸カリウムを50g/L、pH5、浴温60℃、電流密度1A/dm
2で所定の膜厚になるようにめっき時間を調整し、またPdめっきにおいては、ジアンミンジクロロパラジウムをPd成分として20g/L、塩化アンモニウムを75g/L、pH9、浴温40℃、電流密度1.5A/dm
2で所定の膜厚になるようにめっき時間を調整して作製した。従来例2のめっき厚は1μmとした。
なお、めっき厚の確認については、任意の5点について蛍光X線膜厚計(日立ハイテク社製 SFT9500)を使用し、コリメータ径0.2mm、各膜厚測定時間30秒での平均値について算出した。
【0047】
実施例21については、実施例1と同じ条件で6μmのNiめっきを行った後、Niめっき厚を5μmとなるまで以下の条件にてエッチングした。
・エッチング条件
エッチング液:メック社製NR1870、エッチング液温:25℃、エッチング時間:30秒
【0048】
<評価>
・表面のSa、Spc、Sz
導電性材料の試験片の表面のSa、Spc、Szは、キーエンス社製レーザー顕微鏡(VK−X150)を使用し、観察倍率1000倍、スポット径φ0.8mm、測定面積100μm×100μmで測定した。5回の測定(N5)の平均値を算出し、導電性材料の試験片の表面のSa、Spc、Szの値とした。
【0049】
・シェア強度(初期)
導電性材料の試験片の表面に樹脂成型したものをサンプルとして、プリンカップモールド試験にてシェア強度を測定した。試験条件は、樹脂:日立化成社製GE−7470LA樹脂、プリンカップ底面の面積:10mm
2、樹脂成型時間:120秒、モールドキュア:175℃で8時間とし、10回のせん断力測定(N10)の平均値を算出し、シェア強度(初期)とした。シェアはデイジ社製 ボンドテスター(Series4000)にて、シェア速度100μm/秒にて測定した。評価基準は以下の通りとした。
◎:20kg以上
〇:15kg以上20kg未満
×:15kg未満
【0050】
・シェア強度(高温高湿試験)
また、上記のように作製したサンプルを、温度85℃、湿度85%の環境下で168時間放置した後、上記シェア強度を同様に測定した。評価基準は以下の通りとした。
◎:剥離無し
〇:剥離率20%未満
×:剥離率20%以上
当該剥離率は、超音波探傷による画像から、導電性材料の表面と樹脂とがどのような割合で剥離しているのかを計算して評価した。
【0051】
・シェア強度(ヒートサイクル試験)
さらに、上記のように作製したサンプルを、125℃で30分間保持した後、−40℃で30分間保持することを1サイクルとして、これを500サイクル連続で繰り返した。その後、上記シェア強度を同様に測定した。評価基準は以下の通りとした。
◎:剥離無し
〇:剥離率10%未満
△:剥離率10%以上20%未満
×:剥離率20%以上
当該剥離率は、超音波探傷による画像から、導電性材料の表面と樹脂とがどのような割合で剥離しているのかを計算して評価した。
上記試験条件及び評価結果を表1、2に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
実施例1〜21は、いずれも導電性材料の表面が下記(1)及び(2)の条件を満たしたため、初期、高温高湿試験のいずれのシェア強度も非常に良好であり、ヒートサイクル試験のシェア強度は評価基準が△、〇、◎のいずれかであり、過酷な環境下においても優れた樹脂密着性を示すことがわかった。
(1)算術平均面粗さ高さSaが0.25〜0.4μm、
(2)山頂点の算術平均曲Spcが3万〜6万(1/mm)
従来例1、2及び比較例1、2は、いずれも導電性材料の表面が上記(1)及び(2)の条件の少なくとも1つを満たさなかったため、少なくともヒートサイクル試験のシェア強度が不良であった。