特許第6805382号(P6805382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6805382
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】電磁波シールド材
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20201214BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20201214BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20201214BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   H05K9/00 W
   B32B7/025
   B32B15/08 E
   H01B5/14 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-61292(P2020-61292)
(22)【出願日】2020年3月30日
【審査請求日】2020年7月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 悠貴友
【審査官】 五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−74458(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/157469(WO,A1)
【文献】 特開2019−176022(JP,A)
【文献】 国際公開第2019/230607(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 7/025
B32B 15/08
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔上に樹脂層が積層された構造を備える電磁波シールド材であって、銅箔表面の(100)配向度が30%以下であり、前記銅箔の厚みをtc(μm)、前記樹脂層の厚みをtp(μm)とした場合にtc/tp≦1.5の関係を満たす電磁波シールド材。
【請求項2】
前記銅箔の平均結晶粒径が0.5〜20μmである請求項1に記載の電磁波シールド材。
【請求項3】
最外層がいずれも樹脂層で構成されていることを含む請求項1又は2の電磁波シールド材。
【請求項4】
最外層の少なくとも一方が銅箔で構成されていることを含む請求項1又は2の電磁波シールド材。
【請求項5】
0.05≦tc/tpを満たす請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁波シールド材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題に対する関心が全世界的に高まっており、電気自動車やハイブリッド自動車といった二次電池を搭載した環境配慮型自動車の普及が進展している。これらの自動車においては、搭載した二次電池から発生する直流電流をインバータを介して交流電流に変換した後、必要な電力を交流モータに供給し、駆動力を得る方式を採用するものが多い。インバータのスイッチング動作等に起因して電磁波が発生する。電磁波は車載の音響機器や無線機器等の受信障害となることから、インバータ或いはインバータと共にバッテリーやモータ等を金属製ケース内に収容して、電磁波シールドするという対策が行われている(例えば、特開2003−285002号公報(特許文献1)参照)。
【0003】
自動車に限らず、通信機器、ディスプレイ及び医療機器を含め、多くの電気・電子機器からも電磁波が放射されている。電磁波は、精密機器の誤作動を引き起こす可能性があり、人体に対する影響も懸念される。このような電磁波を発生させる対象物から発生する電磁波を適切にシールドするための対策として、例えば、PET等の樹脂で構成された樹脂フィルムの表面にアルミニウムを真空蒸着したアルミ蒸着フィルムを用いて被覆する方法、或いは対象物に対して無電解メッキを行う方法などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−285002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電磁波シールドする対象物を無駄なく覆うためには、対象物が有する複雑な立体形状に合わせた形状追従性を有し、軽量化が可能な材料を用いて対象物を覆うことが望ましい。この点、上述のアルミ蒸着フィルムは安価であり市場に広く出回っているため入手し易く、アルミ蒸着フィルム自体を成形加工することで、対象物が有する複雑な立体形状に追従させることも可能である。
【0006】
しかしながら、従来のアルミ蒸着フィルムはアルミニウム層の厚みが薄い上、フィルムの材質を構成するアルミニウムが銅等の他の材料に比べて電気伝導性が低く、遮蔽による電磁波シールド効果が低い。無電解メッキを行う手法は、立体成形性は良好な結果が得られるがコストが非常に高く、軽量化のためにメッキ材の厚みを薄くすると十分な電磁波シールド効果が期待できなくなる。
【0007】
銅箔上にフィルムを積層した銅箔樹脂複合体に用いられる銅箔は、電気伝導性が高く電磁波シールド効果も高い。しかしながら、銅箔樹脂複合体を絞り加工等によって成形すると、成形加工による複雑な応力を受けて樹脂及び銅箔が破断する場合がある。銅箔の破断を抑制するためには、銅箔樹脂複合体が備える銅箔の厚みを厚くする手法、或いは、銅箔の積層数を増やす手法等の対策が考えられるが、そのような対策を施すと重量が増し、軽量化が難しくなる。
【0008】
上記課題に鑑み、本開示は、立体成形性に優れ、且つ軽量化が可能な電磁波シールド材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施の形態に係る電磁波シールド材は、一側面において、銅箔上に樹脂層が積層された構造を少なくとも備える電磁波シールド材であって、銅箔表面の(100)配向度が30%以下であり、銅箔の厚みをtc(μm)、樹脂層の厚みをtp(μm)とした場合にtc/tp≦1.5の関係を満たす電磁波シールド材が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、立体成形性に優れ、且つ軽量化が可能な電磁波シールド材が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電磁波シールド材を構成する銅箔の短軸方向の割れの評価結果の例を示す説明図であり、図1(a)は幅方向に亀裂が連結した様子を示し、図1(b)は幅方向中心に亀裂が発生した様子を示し、図1(c)は、亀裂の連結がなく、幅方向の50%以上の長さの亀裂の発生もなく、幅方向中心に亀裂が発生していない様子を表す。図1(d)は、亀裂の連結の発生がなく、銅箔の幅方向の50%以上の長さの亀裂の発生もなく、幅方向中心からの亀裂も発生していない様子を表す。
図2】試験片の形状例を表す平面図である。
図3】比較例5〜8、実施例1−2、2−2、及び実施例5の電磁波シールド材のtc/tpと銅箔の伸びとの関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであってこの発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0013】
(電磁波シールド材)
本発明の実施の形態に係る電磁波シールド材は、銅箔上に樹脂層が積層された構造を少なくとも備える積層構造体である。銅箔上に樹脂層が配置され、その樹脂層の上に更に銅箔が配置されるように、銅箔と樹脂層とが交互に積層されることにより、電磁波の反射回数が増えて電磁波が減衰され、良好な電磁波のシールド効果が得られる。一方、銅箔及び樹脂層の積層枚数を多くしすぎると、重量が増して軽量化が困難になる。
【0014】
銅箔及び樹脂層の積層枚数を増加させる場合には、使用用途に応じて立体成形性と軽量性とをそれぞれ両立できるような範囲で、積層枚数が決定されることが好ましい。更に、銅箔の片面又は両面が、樹脂層と密着して積層されるような構造とすることが、銅箔の延性を向上させて電磁波シールド材の立体成形性を高める観点から好ましい。
【0015】
本発明の実施の形態に係る電磁波シールド材は、最外層がいずれも樹脂層で構成されるか、最外層の少なくとも一方が銅箔で構成されることが好ましい。最外層がいずれも樹脂層で構成される場合(例えば、「樹脂層/銅箔/樹脂層」)には、絞り加工等による立体成形時における銅箔の破断を抑制することができる。最外層の少なくとも一方が銅箔で構成される場合(例えば、「樹脂層/銅箔」)には、最外層に配置された銅箔によりアースを取ることができるため、電磁波のシールド効果が高まる。
【0016】
立体成形性及び軽量化の両立が可能な本実施形態に係る電磁波シールド材の積層構造の例としては、「樹脂層/銅箔」の2層構造、或いは、「樹脂層/銅箔/樹脂層」又は「銅箔/樹脂層/銅箔」の3層構造等が挙げられる。もちろん、用途によっては、よりシールド効果を高めるために、銅箔と樹脂層とを順次積層した4層構造以上を採用してもよい。
【0017】
本実施形態において「樹脂層」には、銅箔を介することなく複数の樹脂層を積層して構成したものも含まれるものとする。即ち、本実施形態では、銅箔を介さずに積層された複数の樹脂層は、一層の樹脂層として捉えるものとする。銅箔の表面に樹脂フィルムを密着させるために接着剤が配置されることもあるが、係る場合、接着剤も樹脂層の一部として捉えるものとする。
【0018】
(銅箔と樹脂層の厚みの比)
本実施形態に係る電磁波シールド材は、銅箔の厚みをtc(μm)、樹脂層の厚みをtp(μm)とした場合に、厚みの比がtc/tp≦1.5の関係を満たす。厚みの比tc/tp≦1.5となるように、各層の厚みが調整され、更に以下の特性を有する最適な銅箔材料を選択することによって、優れた立体成形性と軽量化を両立した電磁波シールドが得られる。
【0019】
厚みの比tc/tpが1.5を上回ると、樹脂層が銅箔を保持することによる銅箔の立体成形性向上の効果が十分に得られなくなる場合がある。この銅箔の立体成型性向上の観点から、厚みの比tc/tpは1.0以下とすることが好ましく、より好ましくは0.5以下であり、更に好ましくは0.35以下である。一方、厚みの比tc/tpが小さすぎても銅箔の割れが生じやすく、所望の電磁波シールド効果が得られない場合がある。そのため、電磁波シールド効果を発揮しながら、立体成形性と軽量性とを有意に両立させるためには、厚みの比tc/tpを0.05以上とすること好ましく、より好ましくは、0.1以上である。
【0020】
厚みの比tc/tpについて、例えば、銅箔及び樹脂層が複数層に積層された場合は、銅箔及び樹脂層それぞれのトータルの厚みによって評価される。例えば、銅箔両面が樹脂層で被覆され、最外層がいずれも樹脂層で構成される電磁波シールド材(樹脂層/銅箔/樹脂層)の場合、樹脂層の厚みtpは、銅箔の両面に配置された2層の樹脂層のトータルの厚みを意味し、銅箔の厚みtcは銅箔1層分の銅箔の厚みを意味する。
【0021】
(銅箔)
−配向度−
電磁波シールド材に用いられる銅箔としては、銅箔表面の(100)配向度が30%以下の銅箔が用いられる。(100)配向度の高い銅箔の場合、銅箔の一軸方向に引張応力が加わった際には、12種のすべり系のうち、(111)[10−1]、(111)[1−10]、(−111)[10−1]、(−111)[1−10]、(1−11)[10−1]、(1−11)[1−10]、(11−1)[10−1]、(11−1)[1−10]の合計8種のすべり系が活動する。このため、換言すれば、(100)配向度の高い銅箔はすべり系が一様になるため、粒界に歪みの集中が起こりやすく、割れが発生しやすくなると考えられる。
【0022】
本実施形態に係る銅箔によれば、銅箔表面の(100)配向度が30%以下と低い値に抑えられているため、長軸方向に引張応力を与えた場合に、すべり系がランダムになることから、引張応力の印加に伴う銅箔の割れ、特に引張方向(長軸方向)に垂直な短軸方向の割れを抑制することができる。その結果、立体成形性に優れた電磁波シールド材を提供することができる。
【0023】
銅箔表面の(100)配向度が30%を超えると、成形時に引張応力を加えた場合に、銅箔の粒界に歪みの集中が起こりやすくなり、銅箔の割れが発生しやすくなる。銅箔表面の(100)配向度は27%以下であることが好ましく、更に好ましくは15%以下であり、より更に好ましくは5.0%以下である
【0024】
本実施形態においては、銅箔表面(圧延面)における{100}<001>方位の面積率、即ち(100)配向度を以下のように評価する。試験片には、接着する前のCu箔を用いた。EBSDでは、1000μm×1000μmの範囲に対して3μmピッチで電子線照射し、結晶方位分布を測定する。そして、結晶方位密度関数解析を行って、{100}<001>方位から10°以内の方位差を持つ領域の面積を求め、この面積を全測定面積で除し、「Cube方位{001}<100>に配向する結晶の面積率」とする。また、上記の結晶方位の解析により測定した結晶粒の数をn、n個の結晶粒それぞれの結晶粒径をXとし、平均結晶粒径を(ΣX/n)で算出する。上記の測定方法に従い、Cube方位粒の平均結晶粒径と、Cube方位粒を含む全ての結晶粒の平均結晶粒径を算出する。
【0025】
−平均結晶粒径−
銅箔の結晶粒径を小さくすることにより、銅箔に引張応力が加わった際の粒界へのひずみの集中を緩和し、銅箔の割れを抑制することが可能となる。本実施形態では、平均結晶粒径が0.5〜20μmの銅箔を用いることが好ましい。好ましくは、平均結晶粒径が1.0〜18μmの銅箔を用いることが好ましく、更に好ましくは平均結晶粒径が1.0〜10μmの銅箔を用いることが好ましい。
【0026】
−厚み−
銅箔の厚みtcは、4〜100μmとすることが好ましく、更に好ましくは5〜50μmであり、より更に好ましくは8〜30μmであり、更には10〜20μmである。銅箔の厚みtcを上述の範囲とすることで、成形時の銅箔の破断を抑制しながら電磁波シールド材料の軽量化が可能となる。
【0027】
−材料−
銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔、メタライズによる銅箔等を好適に用いることができる。中でも特に、屈曲性及び立体成形性に優れる圧延銅箔を本実施形態に係る銅箔として用いることが好ましい。
【0028】
電磁波のシールド性能を高めるためには、純度が高い銅箔を使用することが好ましい。例えば純度99.0質量%以上、より好ましくは99.5質量%以上、更に好ましくは99.8質量%以上の銅箔を使用することができる。
【0029】
銅箔中に合金元素を添加して、銅合金箔とすることにより、同じ厚みの純銅箔よりも伸び性を向上させてより立体成形性を高めることができる。例えば、JIS−H3100(C1100)に規格されるタフピッチ鋼(TPC)、JIS−H100(C1020)に規格される無酸素銅(OFC)にAg等の添加元素を追加し、平均結晶粒径を15μm以下、更には3μm以下に制御した圧延銅箔を好適に利用することができる。
【0030】
以下に限定されるものではないが、例えば、99.0質量%以上のCu、残部不可避的不純物からなる銅箔であって、P、Ag、Sb、Sn、Ni、Be、Zn、InおよびMgをそれぞれ単独または2種以上含有し、半軟化温度が160〜300℃の圧延銅箔が本実施形態に係る銅箔に好適に使用できる。半軟化温度が適正な範囲に調整された圧延銅箔が本実施形態に係る銅箔として用いられることにより、長期間、立体成形性を良好に維持することができる。
【0031】
ここで「半軟化温度」は、銅箔を非酸化性雰囲気にて所定温度で30分間焼鈍した後に、引張試験を行い、熱処理条件に対する強度(引張強さ)を求めることにより測定する。焼鈍後の強度が圧延上がり(焼鈍前)の強度と完全に軟化(400℃で30分間焼鈍)した状態の強度との中間の値となる焼鈍温度を半軟化温度とする。
【0032】
このような銅箔は、銅インゴットに所定の元素を添加して溶解、鋳造した後、熱間圧延し、冷間圧延と焼鈍を行い、冷間圧延時の初期に再結晶焼鈍を行うとともに最終冷間圧延前の結晶粒径を5〜30μmとするような処理を行うことで製造することができる。
【0033】
(樹脂層)
樹脂層は、銅箔と比較して一般的に延性が高い。各銅箔の表面を樹脂層でサポートすることにより、絶縁性を向上させるとともに、銅箔の延性を向上させ、電磁波シールド材の立体成形性を向上させることができる。樹脂層を構成する材料としては加工性の観点から合成樹脂が好ましい。樹脂層を構成する材料としてはフィルム状の材料を使用することができる。
【0034】
樹脂層としては、入手のしやすさや加工性の観点から、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、及びPBT(ポリブチレンテレフタレート)等のポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリアセタール、フッ素樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ABS樹脂、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレンブタジエンゴム等が使用できる。
【0035】
樹脂層として、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系、アミド系などのエラストマーとすることもできる。これらの中では熱圧着による銅箔との接着が容易なポリイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリウレタンなどを樹脂層として好適に用いることができる。本発明に係るシールド材に使用する樹脂層は、すべて同一の樹脂材料で構成されもよいし、層毎に異なる樹脂材料を使用してもよい。
【0036】
電磁波シールド材には、樹脂層と銅箔との接着性を向上させるために樹脂層と銅箔との間に接着剤層を更に配置してもよい。接着剤層としては、ポリウレタン系樹脂、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、レゾルシノール樹脂系、エポキシ樹脂系、構造用アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂等の任意の接着剤から選択できる。中でも、熱着による銅箔との接着が容易なポリウレタン樹脂を接着剤層として用いることが好ましい。
【0037】
樹脂層表面には、銅箔との密着性促進などを目的とした各種の表面処理が行われてもよい。例えば、樹脂層と銅箔との貼合わせ面にプライマーコートやコロナ処理を行うことで樹脂層と銅箔との密着性を高めることができる。
【0038】
−厚み−
樹脂層の厚みtpは特に制限されないが、立体成形性を高める観点から、樹脂層の厚みtpは5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることが更により好ましく、30μm以上であることが更により好ましい。但し、樹脂層の厚みtpが過度に大きいと強度が高くなりすぎて圧空成形及び絞り加工が難しくなることから、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。
【0039】
このように、本発明の実施の形態に係る電磁波シールド材によれば、銅箔表面の(100)配向度と銅箔と樹脂層との厚みの比(tc/tp)を適正にし、銅箔表面上に樹脂層を配置することにより、立体成形性に優れ、且つ軽量化が可能な電磁波シールド材が提供できる。
【実施例】
【0040】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらは本発明及びその利点をよりよく
理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0041】
(実施例1−1〜1−2、比較例1)
表1に示すように、平均結晶粒径及び(100)配向度の異なる銅箔の両面をポリウレタン系の接着剤を用いてPETフィルムで接着して得られた「樹脂層/銅箔/樹脂層」の積層構造を有する電磁波シールド材を、図2に示すようなダンベル状の試験片に加工した。引張試験機により、JIS−Z2241:2011に従い、銅箔の圧延方向と平行な方向(試験片の長軸方向)に引張試験を行った。表1に示される、同一の積層構成、樹脂種類及び樹脂厚みを有する各種材料に対して、マイクロスコープにて外観を動画で撮影しながら引張試験を行った。
【0042】
銅箔の割れの評価に際しては、図1(a)の破線で囲われている部分を参照して、銅箔の幅方向に発生した亀裂が連結している。このような幅方向に連結した亀裂が生じている銅箔を「×」と評価する。図1(b)に示すように、亀裂の連結の発生はないものの、銅箔の幅方向の50%以上の長さの亀裂が発生し、且つ幅方向中心から亀裂が発生しているもの(図1(b)の破線で囲まれた部分)が生じている銅箔を「△」、亀裂の連結の発生がなく、銅箔の幅方向の50%以上の長さの亀裂の発生もないが、幅方向中心から発生している亀裂(図1(c)の破線で囲まれた部分)を含む銅箔を「〇」、図1(d)に示すように、亀裂の連結の発生がなく、銅箔の幅方向の50%以上の長さの亀裂の発生もなく、幅方向中心からの亀裂の発生もない銅箔を「◎」として評価した。
【0043】
銅箔の割れの評価に際しては、試験片を表1の「測定時の伸び」(%)(JIS−Z2241:2011に規定される)に伸ばしたときの、銅箔の割れの状態を評価した。例えば、実施例1−1の材料の銅箔は60%伸ばされたときの割れの状態が「◎」で、比較例1−1の材料の銅箔は60%伸ばされたときの割れの状態が「×」であった。
【0044】
測定時の伸びは、引張試験機により、JIS−Z2241:2011に従い、銅箔の圧延方向と平行な方向(試験片の長軸方向)に引張試験を行った場合の試験前後の試験片の伸び率を示す。
【0045】
銅箔の(100)配向度は、まず、図2に示すようなダンベル形状に成形した試験片に対し、EBSDを用いて、この結晶方位分布の測定結果から、結晶方位密度関数解析を行い、{100}<001>方位から5°以内の方位差を持つ領域の面積を求め、この面積を全測定面積で除したものを銅箔の(100)配向度とした。平均結晶粒径が10μm以下の場合には、50μm×50μmの範囲に対して0.2μmピッチで電子線照射し、結晶方位分布を測定した。平均結晶粒径が10μmを超え30μm以下の場合には、50μm×50μmの範囲に対して1μmピッチで電子線照射し、結晶方位分布を測定した。平均結晶粒径が30を超える場合には、1000μm×1000μmの範囲に対して3μmピッチで電子線照射し、結晶方位分布を測定した。
【0046】
銅箔の平均結晶粒径(ΣX/n)は、(100)配向度測定時の結晶方位密度関数解析により測定した結晶粒の数をn、n個の結晶粒それぞれの結晶粒径をXとし、Cube方位粒の平均結晶粒径と、Cube方位粒を含む全ての結晶粒の平均結晶粒径を算出した。各測定結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示すように、銅箔表面の(100)配向度が低いほど銅箔の割れが抑制されることが分かった。より具体的には、銅箔表面の(100)配向度が30%以下である場合に、銅箔の幅方向に連結された亀裂の発生は見られず、銅箔の割れが抑制できていた。一方、銅箔表面の(100)配向度が高い比較例1−1では、幅方向に連結された亀裂の発生がみられた。
【0049】
(実施例2−1〜2−2、比較例2)
表2に示すように、平均結晶粒径及び(100)配向度の異なる銅箔の両面をPETフィルムで接着して得られた「樹脂層/銅箔/樹脂層」の積層構造を有する電磁波シールド材を、実施例1と同様の条件で引張試験を行い、銅箔の割れを確認した。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
表2に示すように、銅箔表面の(100)配向度が30%以下である場合に、銅箔の幅方向に連結された亀裂の発生は見られず、銅箔の割れが抑制できていた。一方、銅箔表面の(100)配向度が高い比較例2では、幅方向に連結された亀裂の発生がみられた。また、表1及び表2の結果から、銅箔の厚みをtc(μm)、樹脂層の厚みをtp(μm)とした場合にtc/tpが小さいほど、銅箔の割れが抑制されることが分かった。
【0052】
(実施例3−1〜3−2、比較例3)
表3に示すように、平均結晶粒径及び(100)配向度の異なる銅箔上にPETフィルムで接着して得られた「銅箔/樹脂層」の積層構造を有する電磁波シールド材を、実施例1と同様の条件で引張試験を行い、銅箔の割れを確認した。結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
表2および表3から、電磁波シールド材の最外層がいずれも樹脂層で構成されている場合に、銅箔の割れが抑制されることが分かった。
【0055】
(実施例4−1〜4−2、比較例4)
表4に示すように、平均結晶粒径及び(100)配向度の異なる銅箔上にPI(ポリイミド)フィルムを接合して得られる「樹脂層/銅箔/樹脂層」の積層構造を有する電磁波シールド材を準備する。これらのシールド材を実施例1と同様の条件で引張試験を行い、銅箔の割れを確認する。銅箔単体に比べて、銅箔樹脂複合体の立体成型性が良い理由は、伸び特性に優れる樹脂が銅箔を保持しながら変形することで、銅箔に発生するくびれを抑制するためである。すると、表2において、PIをPETに代えて使用した場合、PIもPETと同様に伸び特性に優れるため、表4に示されるように表2と同様の結果が得られると考えられる。
【0056】
【表4】
【0057】
(実施例5、比較例5〜9)
比較例5〜6において、厚さ100μmのPETフィルムと、厚さ17μmの銅箔とを表5に示される積層構造で接合して電磁波シールド材を得た。また、比較例7〜8において、厚さ50μmのPETフィルムと、厚さ17μmの銅箔とを表5に示される積層構造で接合して電磁波シールド材を得た。これら比較例5〜8の電磁波シールド材を、実施例1と同様の条件で引張試験を行い、評価「×」の割れが生じる銅箔の伸びを確認した。その結果を表5に示す。
【0058】
図3は、比較例5〜8の電磁波シールド材のtc/tpと銅箔の伸びとの関係を表す図である。(100)配向度が87.6%の銅箔の場合、図3の破線より上側の領域(伸び率)では評価「×」の割れが発生し、下側の領域では評価「△」、「○」、「◎」のいずれかの割れが発生する。この破線に示されるように、tc/tpが大きくなるにつれて銅箔の伸びは緩やかに減少していくことが分かった。これは、樹脂層の厚みが銅箔の厚みに比べて薄くなるほど、変形時の樹脂による銅箔の保持力が弱くなる結果、銅箔に割れが生じやすくなると考えられる。
【0059】
図3には(100)配向度が26.5%の銅箔を用いた実施例1−2(割れ「〇」)および2−2(割れ「△」)のデータもプロットしてある。上記破線の傾向が、(100)配向度が異なる銅箔においても同様であるとし、(100)配向度が低下すると割れが抑制されたこと(表1〜3)および実施例1−2と2−2のデータを考慮すると、(100)配向度が26.5%の銅箔の場合、図3の2点鎖線よりも下側の領域(伸び率)では評価「△」、「○」、「◎」のいずれかの結果が得られると考えられる。
【0060】
次に、実施例1−1〜1−2、2−1〜2−2で用いた銅箔(厚さ12μm)を厚さ4μmのPETフィルムを接合して得られた「樹脂層/銅箔/樹脂層」の積層構造を有する電磁波シールド材(実施例5)と、同様の銅箔及びPETフィルムを接合して得られた「樹脂層/銅箔/樹脂層/銅箔」の積層構造を有する電磁波シールド材(比較例9)とを準備する。
【0061】
これらのシールド材を実施例1と同様の条件で引張試験を行い、銅箔の割れを確認する。実施例5および比較例の9の銅箔の(100)配向度は26.5%であることから、これらの割れの程度は図3の2点鎖線から得られる。20%の伸びを与えたときの比較例9及び実施例5の割れの状態を表5に示す。
【0062】
【表5】
【0063】
表5に示すように、銅箔表面の(100)配向度が30%以下であって、厚さの比tc/tp≦1.5の関係を満たす実施例5では、銅箔の幅方向に連結された亀裂の発生が確認できない一方で、tc/tp≦1.5の関係を満さない比較例9では幅方向に連結された亀裂の発生がみられる。
【要約】
【課題】立体成形性に優れ、且つ軽量化が可能な電磁波シールド材を提供する。
【解決手段】銅箔上に樹脂層が積層された構造を備える電磁波シールド材であって、銅箔表面の(100)配向度が30%以下であり、銅箔の厚みをtc(μm)、樹脂層の厚みをtp(μm)とした場合にtc/tp≦1.5の関係を満たす電磁波シールド材である。
【選択図】図1
図1
図2
図3