(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被覆樹脂は、前記発光素子側に位置し、前記波長変換材料を含む第1被覆樹脂部と前記発光装置の光取り出し面側に位置し、前記光拡散材を含む第2被覆樹脂部とを含む請求項1〜13のいずれか1つに記載の発光装置。
前記被覆樹脂において、前記波長変換材料は、前記発光装置の光取り出し面側に比較して前記発光素子側に多く含まれている請求項1〜13のいずれか1つに記載の発光装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について適宜図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する発光装置は、技術思想を具体化するためのものであって、本発明を以下のものに限定しない。また、一つの実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。
さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、重複する詳細な説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0011】
[第1実施形態]
図1Aおよび
図1Bは、第1実施形態の発光装置の一例を示す概略構造図であり、
図1Aは上面図、
図1Bは
図1AのI−I線における断面図である。
図2は被覆樹脂と光拡散材と光散乱性粒子との温度変化における屈折率を示すイメージ図である。尚、光散乱性粒子については後述する第2実施形態に使用される。
【0012】
第1実施形態に係る発光装置100は、発光素子14と、被覆樹脂19と、光拡散材17と、を有する。
【0013】
発光素子14は、基体11の表面に設けられる一対の導体配線12に跨がるように、接続部材13を介してフリップチップ実装されている。導体配線12の大部分は絶縁部材15により覆われているが、導体配線12の上面のうち、発光素子14との電気的に接続される領域は、絶縁部材15から露出されている。発光素子14の下部(すなわち発光素子14と基体11の間)および発光素子14の側面には、アンダーフィル16が形成される。
【0014】
発光素子14の上部(光取り出し面側)には、光拡散材17を含有する被覆樹脂19が形成される。
【0015】
被覆樹脂19の屈折率は、25℃の時よりも100℃の時の方が低くなる。このため、被覆樹脂19と空気との屈折率差は、25℃の時よりも100℃の時の方が小さい。よって、25℃の時より100℃の時の方が、発光素子14から出射される光が被覆樹脂19と空気との界面で表面反射および全反射する光量が減少する。結果として、再度被覆樹脂19に戻り光拡散材17で散乱する光量が少なくなる。
【0016】
このため、配光特性の変化を抑制するためには25℃と100℃における被覆樹脂19の屈折率の差は小さいほど好ましい。しかし、本発明の実施例によれば、100℃における被覆樹脂19の屈折率が、25℃における被覆樹脂の屈折率より0.0075以上低い材料を選択しても温度変化における配光特性の変化を低減できる。
【0017】
被覆樹脂19には25℃における被覆樹脂19の屈折率と同じ又は高い屈折率の光拡散材17が含有される。また、光拡散材17の屈折率の温度係数は、被覆樹脂19の屈折率の温度係数より小さい材料を選択することで、被覆樹脂19と光拡散材17との屈折率差は、25℃の時よりも100℃の時の方が大きくなる。このため、25℃の時より100℃の時の方が発光素子14から出射される光が、被覆樹脂19と光拡散材17との界面で反射する割合が増加する。
【0018】
こうする事により、温度上昇に伴い、被覆樹脂19と空気との界面で表面反射および全反射する光量が減少するが、被覆樹脂19と光拡散材17との界面で反射する光量が増加するので、被覆樹脂19中での光散乱量を略一定に出来る。結果として温度が変化しても配光特性の変化を低減できる。
【0019】
ただし、25℃における光拡散材17と被覆樹脂19の屈折率差を大きくしすぎると、温度差による屈折率の相対変化が少なくなり、温度上昇に伴う光散乱量の増加率が少なくなる。従って25℃における光拡散材17の屈折率は、被覆樹脂19の屈折率より0〜0.15の範囲で同じ又は高い方が好ましく、より好ましくは0〜0.1の範囲であり、更に好ましくは0〜0.05の範囲である。
【0020】
また、25℃と100℃における被覆樹脂19の屈折率の差は特に限定されるものではないが、25℃における被覆樹脂19の屈折率よりも、100℃における被覆樹脂19の屈折率が0.0075〜0.075の範囲で低い方が好ましい。25℃と100℃における被覆樹脂19の屈折率の差をこの範囲にすることで光の散乱を制御しやすくなる。
【0021】
被覆樹脂19の屈折率については高いほど発光素子14との屈折率差が小さくなるため、発光素子14からの光取り出し効率が向上するので好ましい。従って25℃における被覆樹脂19の屈折率は特に限定されるものではないが、1.45以上であることが好ましく、より好ましくは1.5以上である。
【0022】
尚、光拡散材17の屈折率の温度係数が、被覆樹脂19の屈折率の温度係数より小さい場合には、25℃と100℃とにおける光拡散材17の屈折率の差が、25℃と100℃とにおける被覆樹脂19の屈折率の差より小さくなる。
【0023】
以上のとおり、第1実施形態に係る発光装置100によれば、被覆樹脂19に光拡散材17を含有することにより、被覆樹脂19の屈折率が温度により変化しても配光特性の温度依存性を低減出来る。
【0024】
[第2実施形態]
図3Aおよび
図3Bは、第2実施形態の発光装置の一例を示す概略構造図であり、
図3Aは上面図、
図3Bは
図3AのII−II線における断面図である。
図2は被覆樹脂と光拡散材と光散乱性粒子との温度変化における屈折率を示すイメージ図である。本実施形態では、被覆樹脂19に光拡散材17とは別に光散乱性粒子18が含有されている点で、第1実施形態にかかる発光装置100と相違する。その他を除いては第1実施形態に記載の構造と略同じである。
【0025】
第2実施形態に係る発光装置200は、発光素子14と、被覆樹脂19と、光拡散材17と、光散乱性粒子18と、を有する。
【0026】
発光素子14の上部(光取り出し面側)には、光拡散材17と光散乱性粒子18とを含有する被覆樹脂19が形成される。
【0027】
被覆樹脂19には100℃における被覆樹脂19の屈折率と同じ又は低い屈折率の光散乱性粒子18が含有される。光散乱性粒子18の屈折率の温度係数は、被覆樹脂19の屈折率の温度係数より小さいため、被覆樹脂19と光散乱性粒子18との屈折率差は、100℃の時よりも25℃の時の方が大きくなる。このため、100℃の時より25℃の時の方が発光素子14から出射される光が、被覆樹脂19と光散乱性粒子18との界面で散乱する。つまり、光散乱性粒子18を含有させることで、100℃の時より25℃の時の光の散乱性が高くなる。
【0028】
こうする事により、配光角をより広げるために被覆樹脂19における光拡散材17の濃度を上げて100℃の時の光の散乱を高くする場合でも、25℃の時の光の散乱も高くすることができるので光の散乱が制御しやすくなる。
【0029】
つまり、温度上昇に伴い、被覆樹脂19と光拡散材17との界面で反射する光量が増加するが、被覆樹脂19と光散乱性粒子18との界面で反射する光量が減少するので、被覆樹脂19の屈折率が温度により変化しても配光特性の温度依存性を低減出来る。
【0030】
ただし、25℃における光拡散材17と被覆樹脂19の屈折率差を大きくしすぎると、温度差による屈折率の相対変化が少なくなり、温度上昇に伴う光散乱量の増加率が少なくなる。光散乱性粒子18を含有する場合には25℃における光拡散材17の屈折率は、特に限定されるわけではないが、被覆樹脂19の屈折率より0〜0.15の範囲で同じ又は高い方が好ましく、より好ましくは0〜0.1の範囲であり、更に好ましくは0〜0.05の範囲である。
【0031】
100℃における光散乱性粒子18と被覆樹脂19の屈折率差を大きくしすぎると、温度差による屈折率の相対変化が少なくなり、温度上昇に伴う光散乱量の減少率が少なくなる。従って100℃における光散乱性粒子18の屈折率は特に限定されるものではないが、100℃における被覆樹脂19の屈折率より0〜0.1の範囲で同じ又は低い方が好ましい。
【0032】
また、被覆樹脂19と空気との屈折率差は、25℃の時よりも100℃の時の方が屈折率差が小さい。このため、100℃における被覆樹脂19と光拡散材17との屈折率差が25℃における被覆樹脂19と光散乱性粒子18との屈折率差より大きい方が配光特性の温度変化を抑制できるので好ましい。
【0033】
尚、光散乱性粒子18の屈折率の温度係数が、被覆樹脂19の屈折率の温度係数より小さい場合には、25℃と100℃とにおける光散乱性粒子18の屈折率の差が、25℃と100℃とにおける被覆樹脂19の屈折率の差より小さくなる。
【0034】
以上のとおり、第2実施形態に係る発光装置200によれば、被覆樹脂19に光拡散材17と、光散乱性粒子18と、を含有することにより、被覆樹脂19の屈折率が温度により変化しても配光特性の温度依存性を低減出来る。
【0035】
尚、本明細書において、特に限定されない限り、屈折率の測定波長はD線(589nm)とする。また、特に限定されない限り、屈折率の差とは絶対値とする。
【0036】
屈折率は例えばアッベ屈折計で測定することができる。また部材の大きさ等によりアッベ屈折計で測定できない場合には、部材を特定し、その特定した部材と類似の部材の測定結果より屈折率を求めることができる。
【0037】
以下、上述した第1と第2実施形態に係る発光装置、及び以下に説明する第3〜第7実施形態における構成要素の好ましい形態について説明する。
(基体11)
基体は、発光素子が載置される部材である。基体はその表面に、発光素子に電力を供給するための導体配線を有している。
【0038】
基体の材料としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、BTレジン、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂やセラミックスなどが挙げられる。なかでも、低コストと、成型容易性の点から、樹脂を絶縁性材料に選択することが好ましい。あるいは、耐熱性及び耐光性に優れた発光装置とするためには、セラミックスを基体の材料として選択することが好ましい。
【0039】
セラミックスの材質としては、例えば、アルミナ、ムライト、フォルステライト、ガラスセラミックス、窒化物系(例えば、AlN)、炭化物系(例えば、SiC)等が挙げられる。なかでも、アルミナからなる又はアルミナを主成分とするセラミックスが好ましい。
また、基体11を構成する材料に樹脂を用いる場合は、ガラス繊維や、SiO
2、TiO
2、Al
2O
3等の無機フィラーを樹脂に混合し、機械的強度の向上、熱膨張率の低減、光反射率の向上等を図ることもできる。また、基体としては、一対の導体配線を絶縁分離できるものであればよく、金属部材に絶縁層を形成している、いわゆる金属基板を用いてもよい。
【0040】
(導体配線12)
導体配線は、発光素子の電極と電気的に接続され、外部からの電流(電力)を供給するための部材である。すなわち、外部から通電させるための電極またはその一部としての役割を担うものである。通常、正と負の少なくとも2つに離間して形成される。
【0041】
導体配線は、発光素子の載置面となる基体の、少なくとも上面に形成される。導体配線の材料は、基体として用いられる材料や製造方法等によって適宜選択することができる。例えば、基体11の材料としてセラミックを用いる場合は、導体配線の材料は、セラミックスシートの焼成温度にも耐え得る高融点を有する材料が好ましく、例えば、タングステン、モリブデンのような高融点の金属を用いるのが好ましい。さらに、その上に鍍金やスパッタリング、蒸着などにより、ニッケル、金、銀など他の金属材料にて被覆してもよい。
【0042】
また、基体の材料としてガラスエポキシ樹脂(エポキシ樹脂にガラス繊維が充填されるもの)を用いる場合は、導体配線の材料は、加工し易い材料が好ましく、例えば、銅を用いることができる。また、射出成型されたエポキシ樹脂を用いる場合には、導体配線の材料は、打ち抜き加工、エッチング加工、屈曲加工などの加工がし易く、かつ、比較的大きい機械的強度を有する部材が好ましく、例えば、銅を用いることができる。具体例としては、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン、鉄、ニッケル等の金属、または、鉄−ニッケル合金、りん青銅、鉄入り銅、モリブデン等の金属層やリードフレーム等が挙げられる。また、その表面を、さらに金属材料で被覆してもよい。この材料は特に限定されないが、例えば、銀のみ、あるいは、銀と、銅、金、アルミニウム、ロジウム等との合金、または、これら、銀や各合金を用いた多層膜とすることができる。また、金属材料の配置方法は、鍍金法の他にスパッタ法や蒸着法などを用いることができる。
【0043】
(接続部材13)
接続部材は、発光素子を基体または導体配線に固定するための部材である。接続部材は、絶縁性の樹脂や導電性の部材を用いることができる。フリップチップ実装の場合、接続部材は導電性の部材が用いられる。具体的にはAu含有合金、Ag含有合金、Pd含有合金、In含有合金、Pb−Pd含有合金、Au−Ga含有合金、Au−Sn含有合金、Sn含有合金、Sn−Cu含有合金、Sn−Cu−Ag含有合金、Au−Ge含有合金、Au−Si含有合金、Al含有合金、Cu−In含有合金、金属とフラックスの混合物等を挙げることができる。
【0044】
接続部材としては、液状、ペースト状、固体状(シート状、ブロック状、粉末状、ワイヤー状)のものを用いることができ、組成や基体の形状等に応じて、適宜選択することができる。また、これらの接続部材は、単一部材で形成してもよく、あるいは、数種のものを組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(絶縁部材15)
導体配線は、発光素子や他材料と電気的に接続する部分以外は絶縁部材で被覆されている事が好ましい。すなわち、基体上には、導体配線を絶縁被覆するためのレジストが配置されていても良く、絶縁部材はレジストとして機能させることができる。
【0046】
絶縁部材を配置させる場合には、導体配線の絶縁を行う目的だけでなく、以下に述べるアンダーフィル材料と同様な白色系のフィラーを含有させることにより、光の漏れや吸収を防いで、発光装置の光取り出し効率を上げることもできる。
絶縁部材の材料は、発光素子からの光の吸収が少ない材料であり、絶縁性であれば特に限定されない。例えば、エポキシ、シリコーン、変性シリコーン、ウレタン樹脂、オキセタン樹脂、アクリル、ポリカーボネイト、ポリイミド等を用いることができる。
【0047】
(発光素子14)
基体に搭載される発光素子は、特に限定されず、公知のものを利用できるが、本形態においては、発光素子として発光ダイオードを用いるのが好ましい。
発光素子は、任意の波長のものを選択することができる。例えば、青色、緑色の発光素子としては、窒化物系半導体(In
xAl
yGa
1−x−yN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)、GaPやZnSeを用いたものを用いることができる。また、赤色の発光素子としては、GaAlAs、AlInGaPなどを用いることができる。さらに、これ以外の材料からなる半導体発光素子を用いることもできる。用いる発光素子の組成や発光色、大きさや、個数などは目的に応じて適宜選択することができる。
【0048】
半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。同一面側に正負の電極を有するものであってもよいし、異なる面に正負の電極を有するものであってもよい。
【0049】
本実施形態の発光素子は、透光性の基板と、その基板の上に積層された半導体層を有する。この半導体層には、順にn型半導体層、活性層、p型半導体層が形成されており、n型半導体層にn型電極が形成されており、p型半導体層にp型電極が形成されている。
【0050】
発光素子の電極は、接続部材を介して基体の表面の導体配線にフリップチップ実装されており、電極の形成された面と対向する面、すなわち透光性基板の主面を光取り出し面とする。尚、電極の形成される面と対向する面が基体の表面にフェイスアップ実装される場合は、光取り出し面とは、電極の形成される面とする。
【0051】
発光素子は、正と負に絶縁分離された2つの導体配線に跨るように配置されており、導電性の接続部材によって電気的に接続され、機械的に固定されている。この発光素子の実装方法は、半田ペーストを用いた実装方法の他、例えばバンプを用いた実装方法とすることができる。また、発光素子としては発光素子が被覆樹脂等で封止された小型のパッケージ品を用いることも可能であり、特に形状や構造を限定する物では無い。
【0052】
尚、後述するように、波長変換材料を備えた発光装置とする場合には、その波長変換材料を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体が好適に挙げられる。
【0053】
(アンダーフィル16)
発光素子をフリップチップ実装する場合には、発光素子と基体の間にアンダーフィルが形成されていることが好ましい。アンダーフィルは、発光素子からの光を効率よく反射できるようにすることと、熱膨張率を発光素子に近づけることを目的として、フィラーを含有している。
【0054】
アンダーフィルの材料は、発光素子からの光の吸収が少ない材料であれば、特に限定されない。例えば、エポキシ、シリコーン、変性シリコーン、ウレタン樹脂、オキセタン樹脂、アクリル、ポリカーボネイト、ポリイミド等を用いることができる。
【0055】
アンダーフィルに含有するフィラーとしては、白色系のフィラーであれば、光がより反射され易くなり、光の取り出し効率の向上を図ることができる。また、フィラーとしては、無機化合物を用いるのが好ましい。ここでの白色とは、フィラー自体が透明であった場合でもフィラーの周りの材料と屈折率差がある場合に散乱で白色に見えるものも含む。
【0056】
ここで、フィラーの反射率は、発光素子のピーク波長の光に対して50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。このようにすれば、発光装置100の光の取り出し効率を向上させることができる。また、フィラーの粒径は、1nm以上10μm以下が好ましい。フィラーの粒径をこの範囲とすることで、アンダーフィルとしての樹脂流動性が良くなり、狭い隙間でも問題なく被覆することができる。なお、フィラーの粒径は、好ましくは、100nm以上5μm以下、さらに好ましくは200nm以上2μm以下である。また、フィラーの形状は、球形でも鱗片形状でもよい。
【0057】
なお、フィラーの粒径やアンダーフィルの材料を適宜選択および調整することにより、発光素子の側面が、アンダーフィルによって被覆されないようにすることが好ましい。これは発光素子の側面を光取り出し面として確保するためである。
【0058】
(被覆樹脂19)
被覆樹脂は、発光素子を外部環境から保護するとともに、発光素子から出力される光を光学的に制御するため、発光素子の光取り出し面側に配置させる部材である。被覆樹脂は発光素子を直接被覆してもよいし、直接被覆せず空気層等を介していてもよい。
【0059】
被覆樹脂の材料としては、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂あるいはそれらを混合させた樹脂などの材料を用いることができる。これらのうち、耐光性および成形のしやすさを考慮して、シリコーン樹脂を選択することが好ましい。特にガスバリア性が求められる場合は、フェニル系シリコーン樹脂が好ましい。
【0060】
被覆樹脂は、発光素子からの光を拡散させるための光拡散材を含有する。光拡散材を有することで、発光素子から出射された光が光拡散材によって全方位に拡散される。
【0061】
なお被覆樹脂には、光拡散材に加え、発光素子からの光を吸収して発光素子からの出力光とは異なる波長の光を発する蛍光体等の波長変換材料や、発光素子の発光色に対応させて、着色剤を含有させることもできる。
【0062】
被覆樹脂は、発光素子を被覆するように圧縮成型や射出成型によって形成することができる。その他、被覆樹脂の材料の粘度を調整して、発光素子の上に滴下もしくは描画して、材料自体の表面張力によって、凸形状を形成することができる。
【0063】
後者の形成方法による場合には、金型を必要とすることなく、より簡便な方法で被覆樹脂を形成することができる。また、このような形成方法による被覆樹脂の材料の粘度を調整する手段として、その材料本来の粘度の他、上述したような光拡散材、波長変換材料、着色剤を利用して所望の粘度に調整することもできる。
【0064】
(光拡散材)
光拡散材(光拡散材17、光散乱性粒子18)の材料としては、具体的には、SiO
2、Al
2O
3、Al(OH)
3、MgCO
3、TiO
2、ZrO
2、ZnO、Nb
2O
5、MgO、Mg(OH)
2、SrO、In
2O
3、TaO
2、HfO、SeO、Y
2O
3、CaO、Na
2O、B
2O
3、SnO、ZrSiO
4などの酸化物、SiN、AlN、AlONなどの窒化物、MgF
2、CaF
2、NaF、LiF、Na
3AlF
6のようなフッ化物などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、各種を溶融混合させてガラス等として用いてもよい。あるいは、複数の層に分けてこれらを積層させるようにしてもよい。
【0065】
特にガラスとすることで屈折率を任意に制御する事が出来る。光拡散材の粒径としては0.01〜100umまで任意に選ぶ事が出来る。また、光拡散材の含有量は、それぞれ調整が必要で被覆樹脂の体積や光拡散材の粒径により一義的には決められない。
【0066】
[第3実施形態]
図4Aおよび
図4Bは、第3実施形態の発光装置の一例を示す概略構造図であり、
図4Aは上面図、
図4Bは
図4AのIII−III線における断面図である。本実施形態では、被覆樹脂19に光拡散材(光拡散材17、光散乱性粒子18)とは別に波長変換材料20が含有されている点で、第2実施形態にかかる発光装置200と相違する。
【0067】
すなわち、第3実施形態に係る発光装置300は、第1の光を発する発光素子14と、被覆樹脂19と、光拡散材17と、発光素子14が発する第1の光により励起されて第1の光より長波長の第2の光を発する波長変換材料20と、を有する。また、第3実施形態に係る発光装置300は、必要に応じて光散乱性粒子18を含んでいてもよい。
【0068】
発光装置300において、発光素子14の上部(光取り出し面側)には、光拡散材17と波長変換材料20を含有する被覆樹脂19が形成される。
【0069】
発光装置300は、例えば、白色LEDであり、例えば、発光素子14として青色LEDを含み、波長変換材料20として黄色蛍光体を含む。青色LEDと黄色蛍光体とを含む発光装置では、青色LEDが発する青色光と、青色LEDが発する青色光の一部により励起された波長変換材料20が発する黄色光との混色で白色光が得られる。
【0070】
このように、発光素子が発する第1の光と波長変換材料が発する第2の光の混合により所望の発光色を実現している発光装置では、第1の光と第2の光の混合される割合が変化すると発光色が変化する。一般に、波長変換材料の蛍光発光効率は、温度が上昇すると低下し、駆動等により発光装置の温度が上昇すると、波長変換材料の蛍光発光効率が低下する。青色LEDと黄色蛍光体とを含む発光装置では、発光装置の温度が上昇すると黄色光の光量が低下して、青色光と黄色光の光量比が変化して白色光の色度が青色側にシフトする(CIE色度座標のx値、y値が小さくなる)。
【0071】
第3実施形態の発光装置300においても、波長変換材料20の蛍光発光効率は、温度が上昇すると低下する。したがって、駆動等により発光装置300の温度が上昇すると、波長変換材料20の蛍光発光効率が低下する。
しかしながら、第3実施形態の発光装置300では、温度上昇による波長変換材料20の蛍光発光効率の低下を考慮して、被覆樹脂19の屈折率及び屈折率の温度変化率、光拡散材の屈折率及び含有量を設定することにより、発光素子が発する第1の光と波長変換材料が発する第2の光の光量割合(混合割合)が変化しにくいように構成している。
【0072】
具体的には、本発明者らは、以下の点に着目して、波長変換材料20の蛍光発光効率の低下した場合でも第1の光と第2の光の混合割合が変化しにくいように第3実施形態の発光装置300を構成した。
まず、波長変換材料20の蛍光発光効率が温度上昇により低下した場合に、波長変換材料20を励起する第1の光の割合が温度上昇により変化しにくいと、相対的に第1の光の割合が大きくなり、発光色が変化する。
この点に関し、光拡散材17による第1の光の光散乱量を大きくすることにより、波長変換材料20を励起する第1の光の割合が増加すると考えられる。すなわち、光拡散材17による第1の光の光散乱量を大きくすると、第1の光の波長変換材料20に照射される確率が大きくなり、波長変換材料20に吸収される割合が増えて、第2の光を増加させることが出来る。
そこで、第3実施形態の発光装置300では、温度が上昇するにしたがって、光拡散材17による第1の光の光散乱量が大きくなるようにして、波長変換材料20の蛍光発光効率の低下による発光色の変化を抑えている。
【0073】
以下、より具体的に説明する。
まず、
図2に示すように、被覆樹脂19を構成する樹脂は、温度が上昇すると屈折率が低下する(負の温度係数を有する)。
これに対して、光拡散材17として無機物を用いた場合、光拡散材17の屈折率の温度依存性は樹脂に比較すると小さく、ほぼ一定と見なすことができる。
また、被覆樹脂19中に含まれる光拡散材17による光散乱量は、光拡散材17の反射率が大きいほど大きくなり、光拡散材17の反射率は被覆樹脂19と光拡散材17の屈折率差が大きいほど大きくなる。
【0074】
以上の、
(a)被覆樹脂19の屈折率が負の温度依存性を有すること、
(b)無機物を用いた光拡散材17の屈折率は実質的に温度依存性がないこと、
(c)被覆樹脂に含まれた光拡散材17による光散乱量は、被覆樹脂19と光拡散材17の屈折率差が大きいほど大きくなること、
を考慮して、第3実施形態の発光装置300では、
光拡散材17の室温(25℃)における屈折率(第3屈折率n3)が被覆樹脂19の室温(25℃)における第1屈折率n1より高くなるように、被覆樹脂19の材料及び光拡散材17の材料を選択している。
このようにすると、温度が上昇するにしたがって、光拡散材17と被覆樹脂19との屈折率差が大きくなる。
これにより、温度が上昇するにしたがって、光拡散材17による第1の光の光散乱量が大きくなるようにでき、波長変換材料20の蛍光発光効率の低下による発光色の変化を抑えることが可能になる。
ここで、特に、後述する光拡散材17の含有量を考慮すると、光拡散材17の室温(25℃)における第3屈折率n3と被覆樹脂19の室温(25℃)における第1屈折率n1間の屈折率差は、0.01以上、0.1以下であることが好ましく、より好ましくは、0.02以上、0.08以下に設定する。
【0075】
第3実施形態の発光装置において、被覆樹脂19に対する光拡散材17の含有量は、被覆樹脂19の屈折率と屈折率の温度依存性、光拡散材17の屈折率を考慮して、温度変化に対する発光色の変化が小さくなるように設定される。
例えば、被覆樹脂19に対する光拡散材17の含有量を多くすると、温度上昇に伴う光拡散材17による第1の光の光散乱量の増加率が大きくなる。また、被覆樹脂19に対する光拡散材17の含有量を少なくすると、温度上昇に伴う光拡散材17による第1の光の光散乱量の増加率が小さくなる。
【0076】
したがって、被覆樹脂19と光拡散材17の屈折率差に基づく発光色の変化の抑制効果が比較的小さい場合には、被覆樹脂19に対する光拡散材17の含有量を多くすることにより、所望の発光色の変化の抑制効果を得ることが可能になる。
また、被覆樹脂19と光拡散材17の屈折率差に基づく発光色の変化の抑制効果が比較的大きい場合には、被覆樹脂19に対する光拡散材17の含有量を少なくすることにより、所望の発光色の変化の抑制効果を得ることが可能になる。
【0077】
例えば、後述する実施例1で示すように、被覆樹脂19として室温での屈折率が1.51のシリコーン樹脂を用い、光拡散材17として室温での屈折率が1.52のガラスフィラーを用い、樹脂100重量部に対してガラスフィラーを5重量部添加した場合、発光色の変化の抑制効果は得られているものの、室温での屈折率が1.56のガラスフィラーを用いた場合に比較すると、発光色変化の抑制効果は小さい。しかしながら、このような場合であっても、樹脂に対するガラスフィラーの添加量を増やすことによって、所望の発光色変化の抑制効果をえることができる。
【0078】
以上のように、第3実施形態の発光装置において、被覆樹脂19の屈折率と屈折率の温度依存性、光拡散材17の屈折率に基づく発光色変化の抑制効果を考慮して、被覆樹脂19に対する光拡散材17の含有量を調整することにより、温度変化に対して発光色が変化しにくい発光装置を提供することが可能になる。
また、他の要求特性を満足するために被覆樹脂19に対する光拡散材17の含有量を大きくできない場合には、被覆樹脂19に対する光拡散材17の含有量を少なく設定した上で、被覆樹脂19の屈折率と屈折率の温度依存性、光拡散材17の屈折率を適宜設定することにより、温度変化に対する発光色の変化が小さい発光装置を提供することが可能になる。
【0079】
光散乱性粒子を含む場合
第3実施形態の発光装置において、被覆樹脂19は光散乱性粒子18を含んでいてもよい。
しかしながら、光散乱性粒子18を含む場合には、さらに光散乱性粒子18と被覆樹脂19間の屈折率の関係を考慮して、光拡散材17の屈折率、被覆樹脂19の屈折率と屈折率の温度依存性、及び被覆樹脂19に対する光拡散材17の含有量を設定する必要がある。
【0080】
例えば、製造過程で被覆樹脂19を形成する際に必要なチクソ性を付与するために、シリカフィラーを含有させることがある。このシリカフィラーは、光拡散性を有する光散乱性粒子18である。
このシリカフィラーからなる光散乱性粒子18の屈折率は、1.46である。
例えば、被覆樹脂19として室温での屈折率が1.51のシリコーン樹脂を用い、屈折率が1.46の光散乱性粒子18を被覆樹脂19に含有させた場合、被覆樹脂19、光拡散材17及び光散乱性粒子18の各屈折率の関係は、
図2に示すようになる。
【0081】
図2に示す関係に基づいて、被覆樹脂19中に含まれる光散乱性粒子18による光散乱量に着目すると、温度が上昇するにしたがって、被覆樹脂19と光散乱性粒子18間の屈折率差は小さくなり、温度が上昇するにしたがって光散乱性粒子18による光拡散量は小さくなる。この傾向は、温度が上昇するにしたがって光拡散量が大きくなる光拡散材17による傾向とは逆であり、所望の温度範囲にわたって屈折率が被覆樹脂19より小さい光散乱性粒子18を被覆樹脂19中に含有させると、光拡散材17による発光色変化の抑制効果を打ち消すことになる。
【0082】
したがって、屈折率が被覆樹脂19より小さい光散乱性粒子18を被覆樹脂19中に含有させる場合は、温度上昇による波長変換材料20の蛍光発光効率低下に加えさらに、被覆樹脂19中に含まれる光散乱性粒子18による光散乱量の減少を補うように、光拡散材17と被覆樹脂19の各屈折率、被覆樹脂19の屈折率の温度依存性、及び被覆樹脂19中に含有させる光拡散材17の含有量を設定する必要がある。
【0083】
また、所望の温度範囲にわたって屈折率が被覆樹脂19より大きい光散乱性粒子18を被覆樹脂19中に含有させる場合は、温度が上昇するにしたがって、被覆樹脂19と光散乱性粒子18間の屈折率差は大きくなり、光拡散材17と同様、波長変換材料20の蛍光発光効率低下による発光色変化を抑制するように働く。したがって、この場合は、光散乱性粒子による発光色変化の抑制効果を考慮して、例えば、被覆樹脂19中の光散乱性粒子18の含有量を減らせば良い。
【0084】
第3実施形態の発光装置300において、被覆樹脂19を構成する樹脂材料は、光拡散材17との間で上述した関係を満足させることができる限り任意に選択できるが、例えば、被覆樹脂19を介して出射される光取り出し効率を考慮すると、室温における被覆樹脂19の屈折率(第1屈折率n1という。)は、1.48以上、1.60以下の範囲にあることが好ましい。また、被覆樹脂19の100℃における屈折率(第2屈折率n2という。)は、被覆樹脂19の室温における第1屈折率n1より低く、かつ第1屈折率n1と第2屈折率n2の屈折率差は、0.0075以上であることが好ましい。このような範囲の屈折率及び屈折率差を有する樹脂により被覆樹脂19を構成することにより、通常用いられる含有量の光拡散材17を含む被覆樹脂19により発光色変化を効果的に抑制することができる。ここで、通常用いられる光拡散材17含有量とは、樹脂100重量部に対して、光拡散材17含有量が2重量部〜15重量部の範囲であることをいい、好ましくは、光拡散材17含有量は、3重量部〜10重量部、より好ましくは、4重量部〜7重量部の範囲である。
【0085】
また、被覆樹脂19の100℃における第2屈折率n2は、被覆樹脂19の室温における第1屈折率n1より低く、かつ被覆樹脂19の第1屈折率n1と第2屈折率n2の屈折率差は、0.03以下であることが好ましい。被覆樹脂19の第1屈折率n1と第2屈折率n2の屈折率差が、0.03より大きいと、被覆樹脂19内の光拡散材17の含有量の変動(含有量のバラツキ)又は、被覆樹脂19内における光拡散材17の分布の変動(分布のバラツキ)に起因する光拡散量の変動が大きくなる。
【0086】
本明細書において、第1屈折率n1、第2屈折率n2、第3屈折率n3は、発光素子14のピーク波長における値である。第1屈折率n1、第2屈折率n2、第3屈折率n3は、発光素子14のピーク波長において直接測定することにより求めてもよいし、異なる波長において測定された2つの値に基づいて線形近似により求めてもよい。
【0087】
上記屈折率の条件を満足する樹脂は、例えば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂あるいはそれらを混合させた樹脂など、種々の樹脂から選択することができるが、好ましい樹脂としてフェニル系シリコーン樹脂が挙げられる。本明細書において、フェニル系シリコーン樹脂とはフェニル基を含むシリコーン樹脂のことをいい、一部にメチル基等のアルキル基を含んでいても良い。フェニル系シリコーン樹脂は、上記屈折率の関係を満足する範囲で容易に屈折率及び屈折率の温度依存性を設定できる。フェニル系シリコーン樹脂は、ガス透過性が、例えば、メチル系シリコーン樹脂等の他のシリコーン樹脂に比較すると低く、発光装置の被覆樹脂19として適している。
【0088】
また、光拡散材17は、ガラス粒子を含んでいることが好ましく、これにより、所望の屈折率の光拡散材を構成することができる。本明細書において、ガラスとは、非晶質の無機物のことをいい、部分的に析出した結晶を含んでいても良い。
光拡散材17に含有させるガラス粒子は、発光素子のピーク波長において1.50以上、1.65以下の屈折率を有していることが好ましく、1.52以上、1.60以下の屈折率を有していることがより好ましく、1.54以上、1.58以下の屈折率を有していることがよりいっそう好ましい。このような範囲の屈折率を有するガラス粒子を用いることにより、上記特定した範囲の屈折率及びその温度係数を有する被覆樹脂19と組み合わせて容易に波長変換材料20の蛍光発光効率の低下による発光色の変化を抑えることができる。
【0089】
また、発光素子のピーク波長において1.50以上、1.65以下の屈折率を有するガラス粒子としては、例えば、前述した、SiO
2、Al
2O
3、Al(OH)
3、MgCO
3、TiO
2、ZrO
2、ZnO、Nb
2O
5、MgO、Mg(OH)
2、SrO、In
2O
3、TaO
2、HfO、SeO、Y
2O
3、CaO、Na
2O、B
2O
3、SnO、ZrSiO
4などの酸化物、SiN、AlN、AlONなどの窒化物、MgF
2、CaF
2、NaF、LiF、Na
3AlF
6のようなフッ化物から選択される1以上の材料を、溶融混合して粉砕したガラス粒子が挙げられる。第3実施形態では、特に、SiO
2とAl
2O
3とを含むガラス粒子を用いることが好ましく、このガラス粒子は、SiO
2とAl
2O
3の配合比、及び/又は、さらに、B
2O
3,CaO,Na
2O,ZrO
2,SrO,F
2,MgO,ZnOからなる群から選択された少なくとも1つを含有させることにより、1.50以上、1.65以下の範囲で屈折率を任意に設定できる。
【0090】
以上のように、第3実施形態の発光装置では、波長変換材料20に加えて、被覆樹脂19中に25℃における被覆樹脂19よりも高屈折率な光拡散材17を含有している。これにより100℃時には被覆樹脂19と光拡散材17の屈折率差が大きくなり、被覆樹脂19内での光散乱量が増加する。例えば、発光素子14及び波長変換材料20としてそれぞれ青色LEDと黄色蛍光体とを含む発光装置では、発光素子14からの青色光が、波長変換材料20に当たる確率が増え、黄色光の光量が増加して、青色光と黄色光の割合を制御出来、温度による色度の変化を抑制する事ができる。
【0091】
発光色(色度)の変化は、例えば、温度変化に対するCIE色度座標のx値とy値のそれぞれの変化量により表すことができる。温度変化に対するCIE色度座標のx値とy値が小さいほど好ましく、25℃におけるCIE色度座標のx値と100℃におけるCIE色度座標のx値の差は、特に限定されるものではないが、0.01以下が好ましく、より好ましいのは0.005以下である。また、25℃におけるCIE色度座標のy値と100℃におけるCIE色度座標のy値の差は、特に限定されるものではないが、0.01以下が好ましく、より好ましいのは0.005以下である。
【0092】
また、上記好ましい色度の変化量の範囲において、25℃におけるCIE色度座標のx値を100℃におけるCIE色度座標のx値より小さくしてもよい。このようにすることで、視感度が高くなる方向に色度をシフトさせることができ、高温時の光束低下を抑制できる。
【0093】
尚、本明細書において、特に限定されない限り、CIE色度座標の値の差は絶対値とする。また、配光や色度の測定はJIS規格に準じた測光方法とする。
【0094】
尚、第3実施形態では、光散乱性粒子18を含有する例も示したが、光散乱性粒子18は必ずしも必要では無く、例えば、チクソ性を付与する等の目的で添加しても良い。
【0095】
(波長変換材料20)
波長変換材料20としては、例えば、窒化物系半導体を発光層とする発光素子からの光を吸収し、異なる波長の光に波長変換するものであればよい。蛍光物質は、例えば、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される、窒化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体等を用いることができる。より具体的には、下記(D1)〜(D3)にそれぞれ記載された中から選ばれる少なくともいずれか1以上であることが好ましい。
(D1)Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に賦活される以下の蛍光体。
アルカリ土類ハロゲンアパタイト、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン、アルカリ土類金属アルミン酸塩、アルカリ土類金属硫化物、アルカリ土類金属チオガレート、アルカリ土類金属窒化ケイ素、ゲルマン酸塩等の蛍光体
(D2)Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される以下の蛍光体。
希土類アルミン酸塩、希土類ケイ酸塩、アルカリ土類金属希土類ケイ酸塩等の蛍光体
(D3)Eu等のランタノイド系元素で主に賦活される、有機または有機錯体等の蛍光体
【0096】
中でも、前記(D2)のCe等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体であるYAG(Yttrium Aluminum Garnet)系蛍光体が好ましい。YAG系蛍光体は、次の(D21)〜(D24)などの組成式で表される。
(D21)Y
3Al
5O
12:Ce
(D22)(Y
0.8Gd
0.2)
3Al
5O
12:Ce
(D23)Y
3(Al
0.8Ga
0.2)
5O
12:Ce
(D24)(Y,Gd)
3(Al,Ga)
5O
12:Ce
【0097】
また、例えば、Yの一部または全部をTb、Lu等で置換してもよい。具体的には、Tb
3Al
5O
12:Ce、Lu
3Al
5O
12:Ce等でもよい。さらに、前記した蛍光体以外の蛍光体であって、同様の性能、作用、効果を有する蛍光体も使用することができる。
【0098】
このような蛍光体の粒径としては、例えば2.5〜30μm程度とすることが好ましい。
なお、本明細書で「粒径」とは、平均粒径のことを指すものとし、その値は、空気透過法を用いたF.S.S.S.No(Fisher−SubSieve−Sizers−No.)である。
【0099】
波長変換材料は、例えば、いわゆるナノクリスタル、量子ドットと称される発光物質でもよい。このような材料としては、半導体材料、例えば、II−VI族、III−V族、IV−VI族、I−III−VI族の半導体等のナノサイズの高分散粒子を挙げることができる。より具体的には、CdSe、コアシェル型のCdS
XSe
1−X/ZnS、GaP、InAs、InP、GaN、PbS、PbSe、Cu(In,Ga)S
2、Ag(In,Ga)S
2等のナノサイズの高分散粒子を挙げることができる。このような量子ドットは、例えば、粒径1〜100nm、好ましくは1〜20nm程度(原子が10〜50個程度)とすることができる。このような粒径の量子ドットを用いることにより、内部散乱を抑制することができ、波長変換領域での光の散乱を抑制することができる。
【0100】
[第4実施形態]
図5Aおよび
図5Bは、第1実施形態の発光装置の一例を示す概略構造図であり、
図5Aは上面図、
図5Bは
図5AのIV−IV線における端面図である。
【0101】
第4実施形態に係る発光装置400において、被覆樹脂19がキャップ状となっており、発光素子14と被覆樹脂19が空気層21を介して分離している構造となる点で、第3実施形態にかかる発光装置300と相違する。
【0102】
第4実施形態の発光装置において、第3実施形態と同様にして、温度変化に対して発光色の変化が小さくなるように、光拡散材17の屈折率、被覆樹脂19の屈折率とその温度依存性、被覆樹脂19に対する光拡散材17の含有量を設定している。これにより、発光素子14と被覆樹脂19が空気層21を介して分離している構造の第4実施形態にかかる発光装置において、温度変化に対して発光色が変化しにくいようにできる。
【0103】
また、この様な構成とすることで、発光素子14から発せられる第1の光(例えば、青色光)の被覆樹脂19を通過する光路長を、全域でほぼ同一にすることが可能となる。結果として第1の光(青色光)で波長変換材料20を励起する割合も全域でほぼ同一になるため色ムラを抑制することが出来る。尚、第4実施形態では被覆樹脂19がドーム状となっているが、これに限った物では無く例えば平面状でも良い。
【0104】
[第5実施形態]
図6は、第5実施形態の発光装置500の一例を示す断面図である。
第5実施形態に係る発光装置500において、被覆樹脂19は、凸形状(例えば略半長球状または略円錐状)であり、その光軸(L)方向の高さAが被覆樹脂19の底面の幅Cよりも長くなるよう形成している点で、第2実施形態にかかる発光装置200と相違する。なお、発光素子14の中心を通る法線を光軸Lとする。
【0105】
この底面の幅Cより光軸(L)方向の長さが長い被覆樹脂19は、光散乱性粒子18を含有させてチクソ性を高くした樹脂を滴下することにより形成することができる。
【0106】
第5実施形態の発光装置は、被覆樹脂19の光軸(L)方向の長さを底面の幅Cより長くすることで、発光素子14から発した光が光拡散材17と、光散乱性粒子18で散乱され、発光装置500から発せられる光強度は、被覆樹脂19の見かけ面積比に略比例する。結果として、
図7に示すようなバットウイング型の配光特性を実現することができる。
【0107】
また、第5実施形態の発光装置において、被覆樹脂19は波長変換材料20を含んでいてもよい。第5実施形態の発光装置において、被覆樹脂19は波長変換材料20を含む場合、第3実施形態と同様にして、温度変化に対して発光色の変化が小さくなるように、光拡散材17の屈折率、被覆樹脂19の屈折率とその温度依存性、被覆樹脂19に対する光拡散材17の含有量を設定することにより、温度変化に対して発光色が変化しにくいようにできる。
さらに第5実施形態の発光装置において、光散乱性粒子18を含む場合には、光散乱性粒子18と被覆樹脂19間の屈折率の関係を考慮して、光拡散材17の屈折率、被覆樹脂19の屈折率と屈折率の温度依存性、及び被覆樹脂19に対する光拡散材17の含有量を設定することが好ましい。
【0108】
[第6実施形態]
図8は、第6実施形態の発光装置600の一例を示す断面図である。
第6実施形態の発光装置600において、基体11は、積層された複数のセラミックスグリーンシートを焼成して構成される点で、第3実施形態にかかる発光装置300と相違する。
【0109】
第6実施形態の発光装置において、第3実施形態と同様にして、温度変化に対して発光色の変化が小さくなるように、光拡散材17の屈折率、被覆樹脂19の屈折率とその温度依存性、被覆樹脂19に対する光拡散材17の含有量を設定している。これにより、第6実施形態にかかる発光装置において、温度変化に対して発光色が変化しにくいようにできる。
さらに第6実施形態の発光装置において、光散乱性粒子18を含む場合には、光散乱性粒子18と被覆樹脂19間の屈折率の関係を考慮して、光拡散材17の屈折率、被覆樹脂19の屈折率と屈折率の温度依存性、及び被覆樹脂19に対する光拡散材17の含有量を設定することが好ましい。
【0110】
基体11は、凹部を有している。凹部は、上面が開口し、側面と底面とを有する。凹部の底面には、電極としての導体配線12が露出するように配されており発光素子14とそれぞれ電気的に接続されている。また、凹部は、光拡散材17と、光散乱性粒子18とを含有する被覆樹脂19で封止されている。基体11の凹部内に発光素子14を配置することで外部からかかる応力から更に保護できる。
【0111】
以上の第1〜第6実施形態の発光装置では、波長変換材料20は、発光装置の光取り出し面側に比較して発光素子14側に多く含まれるように分布していてもよいし、発光装置の光取り出し面側に比較して発光素子14側が少なくなるように分布していてもよい。
また、以上の第1〜第6実施形態の発光装置では、光拡散材17は、発光装置の光取り出し面側に比較して発光素子14側に多く含まれるように分布していてもよいし、発光装置の光取り出し面側に比較して発光素子14側が少なくなるように分布していてもよい。
【0112】
[第7実施形態]
図9は、第7実施形態の発光装置700の一例を示す断面図である。
第7実施形態の発光装置700において、波長変換材料20を含有する被覆樹脂19aによって発光素子14が覆われている点と、前記波長変換材料20を含有する被覆樹脂19a(第1被覆樹脂部)より発光装置700の光取り出し面側(すなわち、外側)に光拡散材17と光散乱性粒子18とを含有する被覆樹脂19(第2被覆樹脂部)bが被覆樹脂19aとは別に(波長変換材料20を含む層と光拡散材17及び光散乱性粒子18とを含む層とに分離して)形成される点で、第6実施形態にかかる発光装置600と相違する。
尚、被覆樹脂19bは、必要に応じて光散乱性粒子18を含んでいてもよく、光拡散材17のみを含んでいても良い。
【0113】
つまり、被覆樹脂19は、2以上の複数層に分かれており、波長変換材料20が含有する被覆樹脂19aの層と発光素子14との距離が、光拡散材17が含有する被覆樹脂19bの層と発光素子14との距離より短い構成になる。
【0114】
ただし、光拡散材17と光散乱性粒子18との両方を含有する被覆樹脂19bが独立して形成されなくてもよい。つまり、少なくとも光拡散材17または光散乱性粒子18が発光素子14から離れた部分に多く分布していればよい。
【0115】
また、光拡散材17または光散乱性粒子18を含有する被覆樹脂19bを構成する樹脂材料と、波長変換材料20を含有する被覆樹脂19aを構成する樹脂材料は、同じ材料で形成されてもよいし、別の材料で形成されてもよい。
【0116】
以上の第7実施形態の発光装置において、温度変化に対して発光色の変化が小さくなるように、光拡散材17の屈折率、被覆樹脂19bの屈折率とその温度依存性、被覆樹脂19bに対する光拡散材17の含有量を設定している。これにより、第7実施形態にかかる発光装置において、温度変化に対して発光色が変化しにくいようにできる。
さらに第7実施形態の発光装置において、光散乱性粒子18を含む場合には、光散乱性粒子18と被覆樹脂19b間の屈折率の関係を考慮して、光拡散材17の屈折率、被覆樹脂19bの屈折率と屈折率の温度依存性、及び被覆樹脂19に対する光拡散材17の含有量を設定することが好ましい。
【0117】
[実施例1]
実施例1に係る発光装置について検討する。実施例1に係る発光装置は、第3実施形態に係る発光装置300の一例である。
図4Bは発光装置300の一例を示す断面図である。
図10は、実施例1の温度変化におけるCIE色度座標を示す図である。尚、実施例での屈折率の値は特に限定がない限り25℃における値とする。
【0118】
実施例1の構成としては、発光素子14にピーク波長が450nmの青色LEDを、波長変換材料20に緑色蛍光体(YAG)と赤色蛍光体(SCASN)を使用する。これにより相関色温度2700Kの白色光に制御した。また、被覆樹脂19に屈折率1.51(25℃、波長589nm)のシリコーン樹脂と、光散乱性粒子18(低屈折率)に屈折率1.46(25℃、波長589nm)のシリカフィラーとを有する。そして、光散乱性粒子18とは別に屈折率1.48(25℃、波長589nm)と、1.52(25℃、波長589nm)と、1.56(25℃、波長589nm)の3種類のガラスフィラーを被覆樹脂19にそれぞれ含有する場合と、ガラスフィラーを含有させない場合の計4種類で−40℃から130℃まで温度を変化(−40℃、0℃、25℃、60℃、105℃、130℃)させ、色度の変化を確認した。ここで、ガラスフィラーは、第3実施形態における光拡散材17に対応する。尚、シリコーン樹脂の波長450nm及び25℃における屈折率、シリカフィラーの波長450nm及び25℃における屈折率、ガラスフィラーの波長450nm及び25℃の屈折率は、例えば、589nm及び25℃における屈折率の測定値と486nm及び25℃における屈折率の測定値とに基づいて線形近似により求めることができるし、486nm及び25℃における屈折率の測定値と435nm及び25℃における屈折率の測定値とに基づいて線形近似により求めることもできる。それらの線形近似により算出された屈折率はいずれも以下のようになる。
ここで、以下に示した、ガラスフィラー1は屈折率1.48(25℃、波長589nm)のガラスフィラーであり、ガラスフィラー2は屈折率1.52(25℃、波長589nm)のガラスフィラーであり、ガラスフィラー3は屈折率1.56(25℃、波長589nm)のガラスフィラーである。
シリコーン樹脂の屈折率:1.52(波長450nm,25℃)
シリカフィラーの屈折率:1.47(波長450nm,25℃)
ガラスフィラー1の屈折率:1.49(25℃、波長450nm)
ガラスフィラー2の屈折率:1.53(25℃、波長450nm)
ガラスフィラー3の屈折率:1.57(25℃、波長450nm)
実施例1において、ガラスフィラーは、被覆樹脂19の樹脂成分100重量部に対して、5重量部含有させた。
【0119】
実施例1により、被覆樹脂19に、被覆樹脂19より屈折率の大きいガラスフィラー(光拡散材17)を含有させることにより、発光色の変化が小さくできることが確認された。
また、
図10に示すように、ガラスフィラーの含有量を被覆樹脂100重量部に対して5重量部とした場合、被覆樹脂19より屈折率の高い光拡散材において屈折率が大きくなるに従って色度変化が小さくなっていることが分かる。尚、光拡散材17の屈折率と光拡散材17の含有量は、被覆樹脂との屈折率差等に加えて、光散乱性粒子被覆樹脂19の体積や形状等に基づいて最適化される必要である。
【0120】
[実施例2]
実施例2に係る発光装置について検討する。実施例2に係る発光装置は、第3実施形態に係る発光装置300の一例である。
図4Bは発光装置300の一例を示す断面図である。
図11は実施例2の温度変化におけるCIE色度座標を示す図である。
【0121】
実施例2では、被覆樹脂19に含有させる光拡散材17の含有量を変更して、発光色抑制効果の含有量依存性を評価した。具体的には、屈折率が1.56のガラスフィラー(光拡散材17)の含有量を、被覆樹脂100重量部に対して、3重量部、5重量部、10重量部、15重量部とした4種類の発光装置を作製して−40℃から130℃まで温度を変化(−40℃、0℃、25℃、60℃、105℃、130℃)させ、色度の変化を確認した。
尚、上記光拡散材17に係る構成以外の発光装置の構成は、実施例1と同様である。
【0122】
実施例2より、光拡散材17の含有量が被覆樹脂100重量部に対して10重量部、15重量部の発光装置は、温度が低いときには青色成分が多く、温度が高くなるにしたがって青色成分が減少して黄色成分が多くなっている。一方、光拡散材17の含有量が被覆樹脂100重量部に対して3重量部の発光装置は、温度が低いときには黄色成分が多く、温度が高くなるにしたがって黄色成分が減少して青色成分が多くなっている。
このように、光拡散材17の含有量が被覆樹脂100重量部に対して10重量部、15重量部の発光装置と光拡散材17の含有量が被覆樹脂100重量部に対して3重量部の発光装置とでは、温度に対する色成分の変化の方向が異なっている。
また、光拡散材17の含有量が被覆樹脂100重量部に対して10重量部の発光装置は、青色成分及び黄色成分の変化量が、光拡散材17の含有量が被覆樹脂100重量部に対して15重量部の発光装置より小さくなっている。
このような結果となる理由は、光拡散材の含有量を大きくすると被覆樹脂19と光拡散材17の界面が増え光散乱量が増える為である。すなわち、高温時に散乱する青色光が波長変換材料20を過剰に励起して黄色成分が大きくなりすぎて、波長変換材料20の温度による蛍光効率の低下量を大きく上回るためである。これらのことから、色度変化量を抑制するためにはガラスフィラーの屈折率と被覆樹脂の屈折率差だけでは無く、添加量も制御する必要があることがわかる。
【0123】
[実施例3]
実施例3に係る発光装置について検討する。実施例3に係る発光装置は、第3実施形態に係る発光装置300の一例である。
図4Bは発光装置300の一例を示す断面図である。
図12Aは実施例3の温度変化におけるCIE色度座標を示す図である。
図12Bは、実施例3の温度変化における光束を示す図である。
【0124】
実施例3は、波長変換材料20として、黄緑色蛍光体(LAG蛍光体)と赤色蛍光体(SCASN)を使用して、ブレンド量を制御して相関色温度5000Kの白色光とする点で実施例1とは異なっている。また、実施例3では、屈折率1.56のガラスフィラーを被覆樹脂100重量部に対して5重量部含有させた発光装置とガラスフィラーを含有させない発光装置を作製して評価した。その他を除いては実施例1の発光装置と同様にした。この2種類の発光装置について、−40℃から130℃まで温度を変化(−40℃、0℃、25℃、60℃、105℃、130℃)させ、色度の変化と光束の変化を確認した。
【0125】
実施例3より白色光の相関色温度が2700Kから5000Kに変更しても、光拡散材17を添加することで、実施例1同様に色度の変化を抑制出来ることが確認された。また、光束の温度変化を観ると、光拡散材17を添加した方が高温時の光束低下が抑制出来ていることが判る。この大きな理由としては光拡散材17が無い場合には高温時に視感度の低い高色温度側にシフトするためと考えられる。