特許第6805542号(P6805542)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805542
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】フィルムロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/00 20060101AFI20201214BHJP
   B29C 59/04 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   B29C59/00 Z
   B29C59/04 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-96372(P2016-96372)
(22)【出願日】2016年5月12日
(65)【公開番号】特開2017-202644(P2017-202644A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2019年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 祐哉
(72)【発明者】
【氏名】須田 和哉
【審査官】 菅原 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−091753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/00−59/18
B65H 18/00−18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ィルムロールの製造方法であって、
長尺の熱可塑性樹脂フィルムを調製する工程であって、前記フィルムは、
その幅方向の両端の凹凸構造領域に付与された凹凸構造を有し、
前記凹凸構造領域は、フィルム幅方向の端部より5%以下の領域に設けられ、
前記凹凸構造領域における凹凸構造面積の割合Rcが、
巻回後の巻中間部内の位置Pminにおいて最小の値Rcminをとり、
巻回後の巻芯部内の位置Pmaxにおいて最大の値Rcmaxをとり、
前記Rcmaxは1%以上であり、
前記巻芯部は、前記フィルムロール中の前記フィルム部分のうち、前記コア外表面からの距離DPが、前記コア外表面から前記フィルムロール外表面までの厚みDTに対して、DP≦0.1DTを満たす部分であり、
前記巻中間部は、前記フィルムロール中の前記フィルム部分のうち、前記距離DPが、前記厚みDTに対して、0.1DT<DP≦0.9DTを満たす部分である、調製工程;及び
前記フィルムをコアに巻回する、巻回工程
を含み、
前記巻回工程開始から前記巻回工程終了までの間の、前記フィルムに付加する引張張力の変動を、±5%以下とし、
前記凹凸構造領域は、前記フィルムの幅方向の端部において、その中に凹凸構造を有する、幅を有する領域であり、
前記凹凸構造面積の割合Rcは、前記凹凸構造領域内の、観察区域における、凹凸構造により占められる領域の割合であり、
前記観察区域は、凹凸構造領域を、前記フィルム幅方向と平行な帯状に区切る区域であって、
前記凹凸構造面積の割合Rcは、前記観察区域の面積を100%としたときにおける、前記観察区域内において前記凹凸構造により占められる領域の割合であり、
前記凹凸構造により占められる領域は、前記フィルムの厚みよりも1%以上凸である位置の面積、及び前記フィルムの厚みよりも1%以上凹である位置の面積の合計である、製造方法。
【請求項2】
前記フィルムロールにおいて、前記コア外表面から前記位置Pminまでの距離DPminが、DPmin≧0.5DTを満たす、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記フィルムロールにおいて、
前記フィルムの長さ方向の巻芯側端部から位置Pminまでの間に、前記割合Rcが漸減し、
前記フィルムの位置Pminから長手方向の巻外側端部からまでの間に、前記割合Rcが漸増する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムロール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学フィルム等のフィルムの製造に際しては、高い生産性を実現する観点から、フィルムを長尺フィルムとして製造し、これを円筒形のコアの外表面に巻回しフィルムロールとすることが一般的に行われている。
【0003】
フィルムを巻回しフィルムロールとする場合、フィルムの品質が、フィルムロールとすることにより損なわれないことが求められる。例えば、巻きずれによる傷の発生、巻取り開始部においてフィルム長さ方向の巻芯側端部(以下においてこれを単に「始端」という場合がある。また逆に、フィルム長さ方向の巻外側端部を「終端」という場合がある。)を固定するためのテープ等により生じる段差の転写、フィルムロールの座屈により発生する「ブツ」と呼ばれる不具合等の、各種の不具合が発生しないことが求められる。
【0004】
それらの不具合の発生を低減する手段の一つとして、フィルムの幅方向の端部の領域に、凹凸構造を付与することが知られている。かかる凹凸構造はナールとも呼ばれる。かかる凹凸構造を付与することにより、それ以外の領域におけるフィルムロール内部の面圧(フィルムの接触圧力)を低減し、不具合の発生を低減しうる(例えば特許文献1)。
【0005】
また、フィルムを巻回しフィルムロールとする際には、フィルムの長さ方向に巻き取り張力を付加した状態で巻回を行う。さらに、この巻き取り張力を巻き始めから巻き終わりまでの間に徐々に変更することが知られている。このように調整された張力は、テーパーテンションと呼ばれる。具体的には、巻き取り開始時の張力を高い張力とし、その後徐々に張力を弱めるテーパーテンションを付加することが知られている。このようなテーパーテンションを付加することにより、フィルムロール内部の面圧及び周方向の応力を調整し、座屈や巻きずれの発生を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−221620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フィルムにテーパーテンションを付加して巻回を行うと、フィルムに付加される張力がフィルムロールの巻芯近くの部分と巻外近くの部分とで異なるものとなるため、フィルムの幅方向の寸法及びフィルム中の残留応力が、フィルムロールの巻芯近くの部分と巻外近くの部分とで異なるものとなる。そのため、フィルムの寸法及び光学的性質が不均一になり、且つフィルムロールの巻き姿も不良となる。例えば、巻き取り開始時の張力を高い張力とし、その後徐々に張力を弱めるテーパーテンションを付加した場合、フィルムロールの側面(コアの軸に平行な方向から観察される面)の形状が凹型(コア近くが窪んだ形状)となる等の不具合が発生しうる。
【0008】
従って、本発明の目的は、巻きずれによる傷の発生、巻取り開始部における段差の転写、フィルムロールの座屈により発生するブツ等の不具合が抑制され、且つフィルムの寸法及び光学的性質が均一で、フィルムロールの巻き姿が良好な、フィルムロール及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記の課題を解決するべく検討した結果、テーパーテンションを付加するのに代えて、ナールとして付与する凹凸構造の形状を、巻き始めから巻き終わりまでの間に徐々に変化させることを着想し、これに基づいて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のとおりである。
【0010】
〔1〕 コア、及び前記コアに巻回された長尺の熱可塑性樹脂フィルムを含むフィルムロールであって、
前記フィルムは、その幅方向の両端の凹凸構造領域に付与された凹凸構造を有し、
前記凹凸構造領域は、フィルム幅方向の端部より5%以下の領域に設けられ、
前記凹凸構造領域における凹凸構造面積の割合Rcが、
巻中間部内の位置Pminにおいて最小の値Rcminをとり、
巻芯部内の位置Pmaxにおいて最大の値Rcmaxをとり、
前記Rcmaxは1%以上であり、
前記巻芯部は、前記フィルムロール中の前記フィルム部分のうち、前記コア外表面からの距離DPが、前記コア外表面から前記フィルムロール外表面までの厚みDTに対して、DP≦0.1DTを満たす部分であり、
前記巻中間部は、前記フィルムロール中の前記フィルム部分のうち、前記距離DPが、前記厚みDTに対して、0.1DT<DP≦0.9DTを満たす部分である、フィルムロール。
〔2〕 前記コア外表面から前記位置Pminまでの距離DPminが、DPmin≧0.5DTを満たす、〔1〕に記載のフィルムロール。
〔3〕 前記フィルムの長さ方向の巻芯側端部から位置Pminまでの間に、前記割合Rcが漸減し、
前記フィルムの位置Pminから長手方向の巻外側端部からまでの間に、前記割合Rcが漸増する、〔1〕又は〔2〕に記載のフィルムロール。
〔4〕 〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のフィルムロールの製造方法であって、
長尺の熱可塑性樹脂フィルムを調製する工程であって、前記フィルムは、
その幅方向の両端の凹凸構造領域に付与された凹凸構造を有し、
前記凹凸構造領域は、フィルム幅方向の端部より5%以下の領域に設けられ、
前記凹凸構造領域における凹凸構造面積の割合Rcが、
巻回後の巻中間部内の位置Pminにおいて最小の値Rcminをとり、
巻回後の巻芯部内の位置Pmaxにおいて最大の値Rcmaxをとり、
前記Rcmaxは1%以上であり、
前記巻芯部は、前記フィルムロール中の前記フィルム部分のうち、前記コア外表面からの距離DPが、前記コア外表面から前記フィルムロール外表面までの厚みDTに対して、DP≦0.1DTを満たす部分であり、
前記巻中間部は、前記フィルムロール中の前記フィルム部分のうち、前記距離DPが、前記厚みDTに対して、0.1DT<DP≦0.9DTを満たす部分である、調製工程;及び
前記フィルムをコアに巻回する、巻回工程
を含む、製造方法。
〔5〕 前記巻回工程開始から前記巻回工程終了までの間の、前記フィルムに付加する引張張力の変動を、±5%以下とする、〔4〕に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフィルムロールは、巻きずれによる傷の発生、巻取り開始部における段差の転写、フィルムロールの座屈により発生するブツ等の不具合が抑制され、且つフィルムの寸法及び光学的性質が均一で、巻き姿が良好なフィルムロールである。また、本発明のフィルムロールの製造方法によれば、そのようなフィルムロールを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明のフィルムロールから、終端側のフィルムを一部巻き出した状態を概略的に示す斜視図である。
図2図2は、図1のフィルムロール10のフィルム100を平面上に展開した状態を概略的に示す上面図である。
図3図3は、図2のフィルム100の凹凸構造領域の断面を概略的に示す断面図である。
図4図4は、図1のフィルムロール10を概略的に示す側面図である。
図5図5は、フィルムロールのフィルム部分内における位置とRcとの関係の2つの例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態及び例示物を示して本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0014】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。長尺のフィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0015】
〔1.概要〕
本発明のフィルムロールは、コア、及び前記コアに巻回された長尺の熱可塑性樹脂フィルムを含む。
図1は、本発明のフィルムロールから、終端側のフィルムを一部巻き出した状態を概略的に示す斜視図である。図1において、フィルムロール10は、円筒形のコア11と、その外表面に巻回されたフィルム100とを含む。フィルム100は、その幅方向の両端に規定される、凹凸構造領域120R及び120L、及びその間の中央部領域110を含む。フィルム100の幅の広さは矢印A1で示される広さであり、一方凹凸構造領域120R及び120Lの幅の広さはそれぞれ矢印A2R及びA2Lで示される広さである。
【0016】
図2は、図1のフィルムロール10のフィルム100を平面上に展開した状態を概略的に示す上面図である。凹凸構造領域120R及び120Lは、図2に示す通りフィルム100の幅方向の端部から離隔した位置に設けてもよく、フィルム100の幅方向の縁に接した位置に設けてもよい。凹凸構造領域120R及び120Lは、フィルム幅方向の端部より5%以下の領域に設けられる。図2の例では、フィルム幅方向の端部から凹凸構造領域120R及び120Lの幅方向内側の端部までの距離は矢印A3R及びA3Lで示され、このA3R及びA3Lのそれぞれで示される長さが、矢印A1で示される長さ(フィルム100の幅の広さ)の5%以下となる。これにより、フィルム中央部領域は、フィルム100の幅の広さの90%以上の幅の広さを有することになる。
【0017】
フィルムの幅の広さに対する、両端の凹凸構造領域のそれぞれの幅の広さは、特に限定されず所望の効果が得られる広さに適宜調整しうる。フィルムの幅の広さ100%に対する凹凸構造領域の幅の広さは、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1.0%以上であり、一方好ましくは5.0%以下、より好ましくは4.0%以下であり、さらに好ましくは3.0%以下としうる。本発明のフィルムロールにおいて、凹凸構造領域の幅の広さは、通常フィルム面内において、始端から終点まで一定の値とされる。
【0018】
凹凸構造領域における凹凸構造は、所定の形状単位が繰り返されるものであることが、凹凸構造面積の割合Rcの調整の観点から好ましい。例えば、図2に示す例では、凹凸構造は、4個のひし形が連結された形状単位121を一つの単位とし、これが、フィルム長さ方向に繰り返された形状である。
【0019】
〔2.凹凸構造面積の割合〕
本発明のフィルムロールにおいては、凹凸構造領域における凹凸構造面積の割合Rcが、フィルム面内において一定ではなく、特定の態様で、場所に応じて異なった値となる。具体的には、フィルムロールを、観察位置を巻芯側から巻外側へ移動して観察した際に、凹凸構造面積の割合Rcが特定の態様で増加及び減少する。したがって、フィルムを、観察位置を始端から終端へ移動して観察した際にも、凹凸構造面積の割合Rcが増加及び減少する。
【0020】
フィルムロールのある位置における凹凸構造面積の割合Rcは、凹凸構造領域内の、フィルム幅方向と平行な帯状の特定の観察区域における、凹凸構造により占められる領域の割合である。具体的には、図2の線130で示される観察位置における観察区域は、凹凸構造領域内であって、且つ線130に平行で始端側に特定の間隔で離隔した線130U及び線130に平行で終端側に特定の間隔で離隔した線130Dで囲まれた区域としうる。凹凸構造面積の割合Rcは、当該観察区域の面積を100%としたときにおける、当該観察区域内において凹凸構造により占められる領域の割合(%)で示される。観察位置130から、線130Uまでの距離及び線130Dまでの距離A5U及びA5Dは、割合Rcの観察位置による相違が有効に把握できる範囲に適宜調整しうるが、例えばいずれも500mmとしうる。
【0021】
凹凸構造が、この例における形状単位121のような形状単位の繰り返しにより形成される場合、個々の形状単位のフィルム長さ方向の寸法は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上、特に好ましくは1mm以上であり、好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下、特に好ましくは10mm以下である。また、形状単位のピッチ(図2の例では矢印A4で示される距離)は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、特に好ましくは1.5mm以上であり、好ましくは10mm以下、より好ましくは7mm以下、特に好ましくは5mm以下である。
【0022】
凹凸構造により占められる領域の面積の測定の具体的な方法を、図3を参照して説明する。図3は、図2のフィルム100の凹凸構造領域の断面を概略的に示す断面図である。図3においては、フィルム100は、その上面100Uのみにおいて凹凸構造を有する例を示している。
【0023】
図3において、フィルム100の厚みは矢印A8で示される。フィルム100の上面100Uと、上面100Uの上側の位置101Uとの距離、及びフィルム100の上面100Uと、上面100Uの下側の位置101Dとの距離は、それぞれ矢印A9U及びA9Dで示される。矢印A9U及びA9Dの長さはいずれもフィルム100の厚みの1%である。即ち、線101U及び101Dのそれぞれは、フィルム100の上面100Uからフィルム100の厚みの1%上側の位置、及びフィルム100の上面100Uからフィルム100の厚みの1%下側の位置を示している。
【0024】
本願において、凹凸構造により占められる領域は、フィルムの厚みよりも1%以上凸である位置の面積、及びフィルムの厚みよりも1%以上凹である位置の面積の合計である。図3の例では、フィルムの厚みよりも1%以上凸である位置は、フィルム100が位置101Uより上側に突出した位置であり、その範囲は矢印A6で示される。一方フィルムの厚みよりも1%以上凹である位置は、フィルム100が位置101Dより下側に窪んだ位置であり、その範囲は矢印A7で示される。矢印A6及びA7で示される範囲の面積の合計が、図3の例における凹凸構造により占められる領域の面積である。
【0025】
図3の例では、フィルム100の上面及び下面のうちの一方の面である、上面100Uのみに凹凸構造が形成されているが、本発明はこれに限られず、フィルムの両面に凹凸構造が形成されていてもよい。その場合、ある観察位置における凹凸構造面積の割合Rcは、当該観察位置におけるおもて面の凹凸構造面積の割合と裏面の凹凸構造面積の割合の和としうる。
【0026】
本発明のフィルムロールにおいて、凹凸構造領域における凹凸構造面積の割合Rcは、下記要件(1)〜(3)を満たす。
要件(1):割合Rcは、巻中間部内の位置Pminにおいて最小の値Rcminをとる。
要件(2):割合Rcは、巻芯部内の位置Pmaxにおいて最大の値Rcmaxをとる。
要件(3):Rcmaxは1%以上である。
【0027】
本願において、フィルムロールの巻芯部、巻中間部及び巻外部は、以下の通り規定される。巻芯部は、フィルムロール中のフィルム部分のうち、コア外表面からの距離DPが、コア外表面からフィルムロール外表面までの厚みDTに対して、DP≦0.1DTを満たす部分である。巻中間部は、フィルムロール中のフィルム部分のうち、距離DPが、厚みDTに対して、0.1DT<DP≦0.9DTを満たす部分である。巻外部は、フィルムロール中のフィルム部分のうち、距離DPが、厚みDTに対して、0.9DT<DPを満たす部分である。
【0028】
巻芯部、巻中間部及び巻外部の位置を、図4を参照して説明する。図4は、図1のフィルムロール10を概略的に示す側面図である。図4において、フィルムロール10は、点11Cを中心とする円筒形であり、コア11と、その外側のフィルム部分とを備える。コア11の半径は矢印A11で示される。フィルムロール10の半径は矢印A14で示される。コア外表面11Sからフィルムロール外表面10Sまでの厚みDTは、矢印A12で示される。ここで、フィルムロール10内のある位置10Pの、コア外表面からの距離DPは、矢印A13で示される距離である。点10Pが巻芯部内にあるとき、DT、及び点10PにおけるDPは、DP≦0.1DTの関係を満たす。点10Pが巻中間部内にあるとき、DT、及び点10PにおけるDPは、0.1DT<DP≦0.9DTの関係を満たす。点10Pが巻外部内にあるとき、DT、及び点10PにおけるDPは、0.9DT<DPの関係を満たす。
【0029】
図5は、フィルムロールのフィルム部分内における位置とRcとの関係の2つの例を示すグラフである。図5においては、破線及び実線により、2つの例が示されている。図5において、横軸は、フィルムロールのフィルム部分内の位置を、DPとDTとの比の百分率で表したもの((DP/DT)×100(%))であり、一方縦軸は、当該位置におけるRcの値を示す。したがって、図5の横軸は、0%がフィルム始端に対応し、100%がフィルム終端に対応する。横軸の値が0%以上10%以下の領域(図中記号Aで示される)は巻芯部に対応し、横軸の値が10%超90%以下の領域(図中記号Bで示される)は巻中間部に対応し、横軸の値が90%超100%以下の領域(図中記号Cで示される)は巻外部に対応する。
【0030】
図5において破線及び実線により示される2つの例の両方において、Rcが最小値Rcminをとる位置は横軸50%の位置と90%の位置との間に存在し、この位置がPminに対応する。したがってPminが巻中間部内にある。したがってこれらの例はいずれも要件(1)を満たす。また、これらの例において、Rcが最大値Rcmaxをとる位置は横軸0%の位置であり、この位置がPmaxに対応する。したがってPmaxが巻芯部内にある。したがってこれらの例はいずれも要件(2)を満たす。さらに、これらの例において、Rcmaxの値は1%よりも大きい。したがってこれらの例はいずれも要件(3)を満たす。また、要件(1)及び(2)より、巻外部の全範囲におけるRcは、Rcmaxより小さく且つRcminより大きい値となる。
【0031】
フィルムロールが要件(1)〜(3)を満たすことにより、テーパーテンションを付加せず、巻取り開始から巻き取り終了までの間にフィルムに付加する張力を一定としても、テーパーテンションを付加した場合と同様に、座屈や巻きずれの発生を低減することができる。このような効果が得られる理由を、以下において具体的に説明する。
【0032】
フィルムに凹凸構造領域が存在すると、それを巻き取ったフィルムロールにおいては、凹凸構造領域における周長が、中央部領域に比べて長くなる。このようにフィルムロールにおいて周長に差がある状態でフィルムの巻き取りを行うと、周長が長い凹凸構造領域では、周長が短い中央部領域よりもフィルムを多く巻き取るため、巻取り張力は、中央部領域よりも凹凸構造領域において高くなる。したがって、フィルムロール内でフィルムに付加される面圧も、周長が長い凹凸構造領域においては、相対的に大きくなる。さらに、凹凸構造領域におけるRcが、フィルム面内において一定ではなく、フィルム長さ方向の場所に応じて異なった値である場合、そのような相対的に大きくなる張力及び面圧も、場所に応じて異なる値となり、Rcが高い程、凹凸構造領域における張力及び面圧が高くなる。したがって、巻取り張力を一定とした状態でRcを上昇及び下降させることにより、凹凸構造領域内のみにおいて、巻き取り張力を上昇及び下降させるのと同様の効果が得られることになる。そのため、フィルムロールが要件(1)〜(3)を満たす場合において、テーパーテンションを付加せず、巻取り開始から巻き取り終了までの間にフィルムに付加する張力を一定として巻き取りを行うと、凹凸構造領域内のみにおいて、テーパーテンションを付加した場合と同様の面圧の分布を得ることができ、その結果、テーパーテンションを付加した場合と同様に、座屈や巻きずれの発生を低減することができる。
【0033】
一方、凹凸構造領域がフィルム幅方向の端部より5%以下の領域に設けられていることから、フィルムの幅方向の大きな部分を占める中央部領域では、凹凸構造領域における張力及び面圧の変動の影響をほとんど受けないため、フィルム巻取り時に付加された張力に応じた面圧がそのまま付加されることになる。したがって、テーパーテンションを付加せず、巻取り開始から巻き取り終了までの間にフィルムに付加する張力を一定として巻き取りを行うと、テーパーテンションの付加に伴う不具合(フィルムの寸法及び光学的性質の不均一、及びフィルムロールの側面の形状の変形)を回避することができる。そのため、本発明のフィルムロールは、巻きずれによる傷の発生、巻取り開始部における段差の転写、フィルムロールの座屈により発生するブツ等の不具合が抑制されながら、且つフィルムの寸法及び光学的性質が均一で、フィルムロールの巻き姿が良好なフィルムロールとしうるという、極めて優れた効果を有する。
【0034】
本発明のフィルムロールにおいては、コア外表面から位置Pminまでの距離DPminが、DPmin≧0.5DTを満たすことが好ましい。即ち、Rcが最小となる位置は、フィルムロールのフィルム部分の厚み方向中央部よりも巻外側にあることが好ましい。図5の2つの例ではいずれも、位置Pminは、DPとDTとの比の百分率((DP/DT)×100(%))が50%以上である位置にあるため、当該要件を満たしている。かかる要件を満たすことにより、座屈や巻きずれの発生をより良好に低減することができる。
【0035】
本発明のフィルムロールにおいては、フィルムの長さ方向の巻芯側端部から位置Pminまでの間に、凹凸構造面積の割合Rcが漸減し、フィルムの位置Pminから長手方向の巻外側端部からまでの間に、凹凸構造面積の割合Rcが漸増することが好ましい。図5の例では、横軸が0%からPminまでの間においてRcが漸減し、Pminから100%までの間においてRcが漸増しているため、当該要件を満たしている。ここでいう漸減とは、増加に転じないことをいい、漸増とは、減少に転じないことをいい、従って漸増及び漸減は、例えば図5における実線の例の通り段階的であっても、点線の例の通り連続的であってもよい。かかる要件を満たすことにより、座屈や巻きずれの発生をより良好に低減することができる。これに対して、例えばフィルムの長さ方向の巻芯側端部から位置Pminまでの間に凹凸構造面積の割合Rcが漸減せず、一部において増加に転じている場合には、フィルムの座屈や巻ずれの発生が十分に低減できない場合がある。
【0036】
本発明のフィルムロールにおいて、Rcmaxの値は、1%以上である限りにおいて特に限定されず、所望の効果を発現するよう適宜調整しうる。
【0037】
本発明のフィルムロールにおいて、Rcminの値は、Rcmaxより小さい値である限りにおいて特に限定されず、所望の効果を発現するよう適宜調整しうる。
【0038】
〔3.フィルムロールの製造方法〕
本発明のフィルムロールは、前記フィルムを調製する調製工程、及び前記フィルムをコアに巻回する巻回工程を含む製造方法により製造しうる。
【0039】
フィルムの調製に際し、凹凸構造付与前のフィルムに凹凸構造を付与する方法は、特に限定されず、ナール形成のための既知の方法を採用しうる。かかる方法の例としては、レーザーを用いた凹凸構造付与方法、及びエンボスロールを用いた凹凸構造付与方法が挙げられる。レーザーを用いた凹凸構造付与方法では、連続的に搬送されるフィルムの凹凸構造領域内の表面に、レーザーにより特定のパターンを描画する。それにより、フィルムの表面を部分的にレーザーで加熱し、かかる加熱によりフィルムの表面を変形させることができ、その結果、特定のパターンを有する凹凸構造を形成しうる。エンボスロールを用いた凹凸構造付与方法では、周面に特定のパターンの凹凸構造を有するエンボスロールを用意し、連続的に搬送されるフィルムの凹凸構造領域内の表面に、当該エンボスロールの凹凸構造を転写し、それにより、特定のパターンを有する凹凸構造を形成しうる。
【0040】
凹凸構造の付与に際し、凹凸構造面積の割合Rcは、フィルムを巻回しフィルムロールにした後に、前記要件(1)〜(3)及びその他の任意の要件を満たすよう調節しうる。Rcの調節方法としては、凹凸構造付与方法に応じて適切な方法を適宜選択しうる。例えば、レーザーを用いた凹凸構造付与方法において、Rcの調節は、
・レーザーにより描画する凹凸構造のパターンを変更する
・レーザーの出力を調節する
・レーザーの走査速度を調節する
・レーザーの焦点距離を調節する
・レーザーの描画の線幅を調節する
・レーザーのビームプロファイル(トップハット、ガウシアン等)を変更する
・レーザーの周波数を変更する
・レーザーの連続出力/パルス出力の別を変更する、及び/又はパルス幅を変更する
等の様々な調節方法のいずれか、又はこれらの組み合わせにより行いうる。
【0041】
レーザーにより描画する凹凸構造のパターンの変更は、具体的には、パターンを構成する構成単位の線の太さ、長さ、本数、構成単位の大きさ、構成単位の密度等の各種要素の変更のいずれか、又はこれらの組み合わせにより行いうる。構成単位の密度の変更は、例えば、構成単位間の距離を変更することにより行いうる。より具体的には、図2に示す例では、4個のひし形が連結された形状単位121間のピッチ(矢印A4で示す距離)を広げることによりRcを減少させることができ、一方当該ピッチを狭めることによりRcを増加させることができる。
【0042】
また例えば、エンボスロールを用いた凹凸構造付与方法では、凹凸構造付与の工程の途中で、エンボスロールを交換する方法、一の凹凸構造領域に用いるエンボスロールの数を変更する方法(例えば、2つのエンボスロールで重ねて凹凸構造を付与することにより、1つのエンボスロールを用いた場合よりRcを増加させうる)のいずれか、又はこれらの組み合わせによる調節を行いうる。
【0043】
調製したフィルムの巻回は、一般的なフィルムの巻回方法により行いうる。本発明では特に、巻回工程開始から巻回工程終了までの間の、フィルムに付加する引張張力を一定の値とすることが好ましい。具体的には、引張張力の変動を、好ましくは±5%以下、より好ましくは±2%以下、さらに好ましくは±1%以下としうる。かかる一定の引張張力での巻き取りを行うことにより、フィルムロール中のフィルムの寸法及び光学的性質の不均一、及びフィルムロールの側面の形状の変形といった不具合を回避することができる。
【0044】
〔4.フィルムの材質等〕
本発明のフィルムロールを構成するフィルムの材料は、特に限定されず、各種の熱可塑性樹脂を採用しうる。特に本発明によればフィルムの寸法及び光学的性質を均一に保つことができるので、そのような品質の管理が求められる光学フィルムとして用いられる材料が好ましい。
【0045】
フィルムは、単層のフィルムであってもよく、複数の層を有する複層フィルムであってもよい。フィルムはまた、延伸フィルムであってもよく、延伸されていないフィルムであってもよい。
【0046】
〔5.フィルムの用途〕
本発明のフィルムロールは、フィルムロールの状態で保存、運搬、取引等のハンドリングを行うことができる。本発明のフィルムロールから巻き出したフィルムは、広範な長途に用いることができ、中でも、光学フィルムとして用いることが好ましい。光学フィルムの具体例としては、位相差フィルム、偏光板保護フィルム、光学補償フィルム、などが挙げられる。
【符号の説明】
【0047】
10:フィルムロール
11:コア
11C:フィルムロールの中心点
10P:フィルムロール内のある位置
10S:フィルムロール外表面
11S:コア外表面
100:フィルム
100U:フィルム上面
101D:上面100Uの下側の位置
101U:上面100Uの上側の位置
110:中央部領域
120L:凹凸構造領域
120R:凹凸構造領域
121:形状単位
130:観察位置を示す線
130D:線130に平行で終端側に特定の間隔で離隔した線
130U:線130に平行で始端側に特定の間隔で離隔した線
A1:フィルムの幅の広さ
A2L:凹凸構造領域の幅の広さ
A2R:凹凸構造領域の幅の広さ
A3L:フィルム幅方向の端部から凹凸構造領域の幅方向内側の端部までの距離
A3R:フィルム幅方向の端部から凹凸構造領域の幅方向内側の端部までの距離
A4:ピッチ
A5D:観察位置130から、線130Dまでの距離
A5U:観察位置130から、線130Uまでの距離
A6:フィルムの厚みよりも1%以上凸である位置の範囲
A7:フィルムの厚みよりも1%以上凹である位置の範囲
A8:フィルムの厚み
A9D:フィルムの上面と、下側の位置101Dとの距離
A9U:フィルムの上面と、上側の位置101Uとの距離
A11:コアの半径
A12:コア外表面11Sからフィルムロール外表面10Sまでの厚み
A13:フィルムロール内のある位置の、コア外表面からの距離
A14:フィルムロールの半径
図1
図2
図3
図4
図5