(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施形態であるので、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明によって不当に限定されるものではなく、また、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須の構成要件ではない。
【0013】
上述したように、従来技術による圧電素子を用いたアクチュエータは、構造上負電源が必要になり、コストが大幅に増加してしまうという問題があった。また、従来の構成では、共通電極部に任意の電圧を印加することができないという問題もあった。さらに、従来では相対的に正電圧しか掛けない駆動としていたが、その場合、アクチュエータの特性を補正することができないという問題も存在した。
【0014】
ここで、圧電アクチュエータの構造例およびその動作について、以下に例を挙げて説明する。
図1は、圧電アクチュエータのフレーム構成の一例を示す図である。
図2は、
図1に例示するフレームに対する圧電素子の配置例を示す図である。
図3は、
図2に例示する圧電アクチュエータに対する配線例を示す図である。なお、ここで例示する圧電アクチュエータは、X軸およびY軸の2軸方向に光をスキャンするためのアクチュエータである。
【0015】
図1に示すように、圧電アクチュエータのフレーム構成は、シリコン基板上に形成された圧電アクチュエータのフレーム11にミラー1が取り付けられた構造を有する。フレーム11は、折り返し構造部12〜15と、X軸フレーム16および17とを備える。折り返し構造部12の左側はフレーム11との接続部であり、折り返し構造部13の左側はX軸フレーム16および17との接続部であり、折り返し構造部14の右側はX軸フレーム16および17との接続部であり、折り返し構造部15の右側はフレーム11との接続部である。なお、
図1では折り返し構造部12〜15での折り返しが1回の例を示したが、2回以上の折り返し構造であってもよい。折り返し構造部12〜15は、X軸フレーム16および17全体を捻る方向に回動させる。ミラー1はX軸フレーム16および17の回動中心に取り付けられており、レーザ光線等の光を照射して光をスキャンする。
図1においてスキャンのY軸方向は、ミラー1を通る上下方向の中心線に対して垂直、即ち左右の方向となる。X軸フレーム16および17もミラー1と接続されている。
図1においてスキャンのX軸方向は、ミラー1を通る左右方向の中心線に対して垂直、即ち上下の方向となる。したがって、
図1の場合は、紙面中上下方向がX軸となり、左右方向がY軸となる。
【0016】
図2に示すように、圧電アクチュエータ10は、
図1に示すフレーム11に対し、折り返し構造部12〜15の各々に駆動用の圧電素子22〜25と検知用の圧電素子32〜35とが設けられた構造を有する。また、X軸フレーム16および17の各々にも駆動用の圧電素子26および27と検知用の圧電素子36および37とが設けられている。
【0017】
図3に示すように、
図2に示す圧電アクチュエータ10に対しては、圧電素子22および24を共通で駆動するための配線SDA(Sub Drive Ach)と、圧電素子23および25を共通で駆動するための配線SDB(Sub Drive Bch)と、圧電素子26および27を共通で駆動するための配線MD(Main Drive)と、折り返し構造部12に接続された検知端子SSA1(Sub Sense Ach-1)と、折り返し構造部13に接続された検知端子SSB1(Sub Sense Bch-1)と、折り返し構造部14に接続された検知端子SSA2(Sub Sense Ach-2)と、折り返し構造部15に接続された検知端子SSB2(Sub Sense Bch-2)とが設けられている。
【0018】
また、
図4に、
図2に例示した各圧電素子とこれらの裏面に設けられる電極との組み合わせと各電極に接続される配線との例を示す。
図4に示すように、駆動用の圧電素子22および24の裏面には共通の配線SDAGが接続された電極42および44が配置され、圧電素子23および25の裏面には共通の配線SDBGが接続された電極43および45が配置され、圧電素子26および27の裏面には共通の配線MDGが接続された電極46および47が配置される。また、検知用の圧電素子32の裏面には配線SSA1Gが接続された電極52が配置され、圧電素子33の裏面には配線SSB1Gが接続された電極53が配置され、圧電素子34の裏面には配線SSA2Gが接続された電極54が配置され、圧電素子35の裏面には配線SSB2Gが接続された電極55が配置され、圧電素子36および37の裏面には共通の配線MSGが接続された電極56および57が配置される。
【0019】
一般的に、圧電素子に分極時に掛けた電圧と同じ極性の電圧を掛けると、圧電素子に引っ張る力が発生する。例えば分極時にGND基準で+30Vを掛けたとすると、GND基準で正極性の電圧を掛けることで、圧電素子の全体が縮む方向に変形する。これにより、圧電素子に引っ張る力が発生する。また、圧電素子に力を掛けると微弱な電圧が発生する。この電圧により電荷がチャージされて、圧電素子と電極との間に電流が流れる。圧電素子22〜27および圧電素子32〜37では、これらの特性を利用して駆動と検知とが行われる。
【0020】
なお、
図1から
図4においては、圧電素子を一方の面のみに配置した場合を例示したが、配置配線や圧電素子の作成上の自由度を向上させるために両面に配置してもよい。また、これらの圧電素子や電極の形成はほぼ半導体プロセスに準じるものであるため、大量生産によりコストダウンを図ることが可能である。
【0021】
図5は、圧電アクチュエータ10のX軸方向の動作を説明する図であり、
図6は、圧電アクチュエータ10を横方向から見た図である。なお、X軸方向は少ない投入エネルギーでできるだけ大きな振幅を得るために共振で動作させるのが一般的であることから、
図5および
図6では共振周波数で圧電アクチュエータ10を動作させている。
図5に示すように、時刻t1では電極MD−MDG間の電圧がゼロとなっている。この時刻t1での圧電アクチュエータ10は、
図6に示すように、ミラー1の中心の左側で圧電素子の変位がゼロである。時刻t2では、圧電素子が中央に縮む方向に変形し、それによりミラー1の中心がやや左向きに傾く。時刻t3では、圧電素子の縮みが最大となり、その結果、ミラー1の中心が左向きに最大に傾く。このようにして圧電アクチュエータ10はX軸方向に動作する。
【0022】
図7は、圧電アクチュエータ10のY軸方向の動作を説明する図であり、
図8は、圧電アクチュエータ10を下方向から見た図である。なお、
図7において、実線は電極SDA−SDAG間の電圧波形を示し、破線は電極SDB−SDBG間の電圧波形を示している。これらの波形は位相が180度反転した鋸波である。時刻t0では、電極SDA−SDAG間の電圧が最大となり、電極SDB−SDBG間の電圧がゼロとなる。その際(時刻t0)のミラー1は、
図8に示すように、ミラー1を中心として右向きに最大に傾く。時刻t1では、電極SDA−SDAG間の電圧が最大電圧のおおよそ4分の1、電極SDB−SDBG間の電圧が最大電圧のおおよそ4分の3となり、ミラー1の傾きが最大傾斜と水平とのおおよそ中間となる。時刻t2では、電極SDA−SDAG間および電極SDB−SDBG間とも、電圧が最大電圧のおおよそ中間の電圧となり、ミラー1の傾きがおおよそ水平となる。時刻t3では、電極SDA−SDAG間の電圧が最大電圧のおおよそ4分の3、電極SDB−SDBG間の電圧が最大電圧のおおよそ4分の1となり、ミラー1の傾きが時刻t0における最大傾斜の逆向きの最大傾斜と水平とのおおよそ中間の傾きとなる。時刻t4では、電極SDA−SDAG間の電圧がゼロ、電極SDB−SDBG間の電圧が最大電圧となり、ミラー1の傾きが時刻t0における最大傾斜の逆向きの最大傾斜となる。時刻t5では、電極SDA−SDAG間の電圧が最大、電極SDB−SDBG間の電圧がゼロとなり、ミラー1が時刻t0と同様に右向きに最大に傾く。
【0023】
図9〜
図12も圧電アクチュエータ10のY軸方向の動作を説明する図であり、
図8の動作を立体的に見た場合の図である。
図9は、
図8における時刻t0およびt5の状態を示す図であり、電極SDA、即ちAchに属する圧電素子22および24が最大に縮んでいる場合を示している。
図11は、
図8における時刻t4の状態を示す図であり、電極SDB、即ちBchに属する圧電素子23および25が最大に縮んでいる場合を示している。
図10および
図12は、それぞれ
図9および
図11に詳細な説明を加えた図である。
図9〜
図12に示すように、ミラー1に光が入射されると、反射光がY軸方向(水平方向)にスキャンされるのが分かる。なお、光スキャナ等のシステムにこのような圧電アクチュエータを適用させる場合、Y軸方向に直線的にスキャンさせる、即ちラスタスキャン動作とするのが一般的である。
図9〜
図12はラスタスキャンで動作させている状況を説明している。この動作において印加される電圧の周波数は数十Hz程度である。一般的な画像或いは映像を扱う場合、60〜70Hzで動作させることが多い。
【0024】
上述した動作では、X軸が共振現象を利用してできるだけ少ないエネルギーで動作させるのに対し、Y軸は非共振で動作させる。そのため、Y軸方向における圧電素子の変位量が小さい。そこで、圧電アクチュエータ10に折り返し構造部12〜15ならびにX軸フレーム16および17を設け、複数の圧電素子22〜27を並列に動作させることで、Y軸方向の変位量を稼ぐようにしている。
【0025】
図13は、上述したような圧電アクチュエータ10を用いて2次元画像を描画する動作を示す図である。
図13に示すように、2次元の画像の描画では、時刻t0に走査領域の左上隅から始まり、時刻t10で走査領域の右下隅に到達することで、1画面の走査が終了する。
【0026】
なお、上述ではいわゆる片持ち梁と呼ばれる構造の圧電アクチュエータ10を例示したが、この構造に限定されるものではない。すなわち、以下の実施形態には、種々の構造による圧電アクチュエータを適用することが可能である。
【0027】
図14は、比較例としてのアクチュエータ駆動装置の概略構成例を示す図である。
図14に示すように、アクチュエータ駆動装置900は、波形生成部910と、アンプ921および923と、アクチュエータ930とを備える。波形生成部910からは、主走査用駆動電圧Mがアンプ921に出力され、副走査用駆動電圧Sがアンプ923に出力される。各々のアンプ921および923の電源には、0Vから必要な最大出力電圧までが得られるように、負電源Veeと、必要な最大出力電圧より高い電圧である正電源Vccとが用いられている。アクチュエータ930の駆動部には、アンプ921の出力M−AMP(主走査)と、アンプ923の出力S−AMP(副走査)とが接続される。アクチュエータ930の共通電極M−COMおよびS−COMは、GNDに接続されている。
【0028】
つづいて、実施形態1にかかるアクチュエータの駆動システムおよび駆動制御方法について、図面を用いて詳細に説明する。
図15は、実施形態1にかかる駆動システムの概略構成例を示すブロック図である。
図15に示すように、駆動システム100は、波形生成部110と、主走査駆動用アンプ121と、主走査共通電極駆動用アンプ(主走査バイアスアンプともいう)122と、副走査駆動用アンプ123と、副走査共通電極駆動用アンプ(副走査バイアスアンプともいう)124と、アクチュエータ130とを備える。アクチュエータ130は、たとえば圧電素子をその駆動部として有している。波形生成部110には電源Vl(低電圧源)が供給され、各アンプ121〜124には第1の電源電圧Vh(高電圧源)が供給される。実施形態1では、
図14に示した比較例とは異なり、全てのアンプ121〜124の低電圧源がGNDに接続されている。
【0029】
このような構成を備えた駆動システム100は、負電源を必要とせずに片電源での駆動が可能である。それにより、コストの増加を抑制することが可能となる。なお、実施形態1では、共通電極部と駆動電圧との最小電圧を、主走査(第1の方向)で同電位とし、副走査(第2の方向)で負電位とする。以下に、その詳細について図面を用いて説明する。
【0030】
図16は、駆動システム100における主走査および共通電極の駆動回路を示す回路図である。
図16に示すように、主走査駆動回路100Mは、デジタルアナログコンバータ(以下、DACという)111と、シャントレギュレータ112と、アンプ141と、バッファ142とを備える。シャントレギュレータ112は、高精度で基準電圧Vrefを発生させ、DAC111に入力する。DAC111の電源電圧はVl(V)である。基準電圧Vrefは抵抗R1およびR2で分圧され、電圧Vmo(V)が生成される。この電圧Vmoは、バッファ142でバッファリングされて出力MOFSとして出力されるが、その際、電圧Vmoに駆動側のアンプ141のゲインGmを乗じた電圧Vmo×Gmに等しい電圧となるように設定される。
【0031】
アンプ141の出力MDは、
図15の出力M−AMPに対応し、バッファ142の出力MOFSは、
図15の出力M−COMに対応している。
【0032】
ここでDAC111は、一般的にGNDレベルから基準電圧Vrefまで出力することが可能であるが、前述したように負電源を使わない場合、アンプ141の出力としてGNDレベルから基準電圧Vrefまでを出力することはできない。ただし、単電源(片電源)で使う場合には、GNDよりある程度高い電圧から出力可能である。そこで実施形態1では、
図17に示すように、DAC111の出力範囲をGNDよりある程度高い電圧Vofsから基準電圧Vrefとする。その場合、駆動用のアンプ141のゲインをGmdとすると、
図18に示すように、アンプ141の出力が電圧Vofs×Gmdから電圧Vref×Gmdまでとなり、最低電圧が共通電極部の電圧Vmo×Gmと等しくなる。これにより、負電源が無い場合でも、主走査について従来と同様の駆動が可能となる。
【0033】
図19は、駆動システム100における副走査および共通電極の駆動回路を示す回路図である。
図19に示すように、副走査駆動回路100Sは、DAC113および114と、シャントレギュレータ115と、アンプ143〜145とを備える。シャントレギュレータ115は、高精度で基準電圧Vrefを発生させ、DAC113および114にそれぞれ入力する。このシャントレギュレータ115は、主走査駆動回路100Mで用いているシャントレギュレータ112と共通とすることが可能である。DAC113および114の電源電圧はVl(V)である。上述したように、副走査は極性の異なる2系統の駆動が必要である。そこで、
図19に示す副走査駆動回路100Sでは、片方の駆動を出力SubDriveA(以下、SDAと記す)とし、もう一方の駆動を出力SubDriveB(以下、SDBと記す)としている。基準電圧Vrefは抵抗R3およびR4で分圧され、電圧Vso(V)が生成される。この電圧Vsoは、抵抗R3およびR4の接続点に接続されたアンプ145のゲインGsoで増加されて、出力SOFSとして出力される。なお、この出力SOFSを主走査駆動回路110Mの出力MOFSと等しい電圧にした場合、抵抗R3およびR4とアンプ145とを省略することが可能である。
【0034】
副走査駆動回路100Sにおいても、DAC113および114は、一般的にGNDレベルから基準電圧Vref(V)まで出力することが可能であるが、前述したようにアンプ143および144の出力としてGNDレベルから基準電圧Vrefまでを出力することはできない。ただし、単電源(片電源)で使う場合には、GNDよりある程度高い電圧から出力可能であるので、主走査駆動回路100Mと同様に、DAC113および114の出力範囲を電圧Vcomから基準電圧Vrefとする(DAC113は
図20参照、DAC114は
図21参照)。その際、駆動用のアンプ143〜145のゲインをGsdとすると、
図22に示すように、アンプ143の出力は電圧Vcom×Gsdから電圧Vref×Gsdまでとなり、また、
図23に示すように、アンプ144の出力も電圧Vcom×Gsdから電圧Vref×Gsdまでとなる。一方、共通電極駆動用のアンプ145の出力Vsoは、前述した通り抵抗R3およびR4とアンプ145のゲインGsoとで調整して、
図24に示すような出力SOFSとすることができる。これにより、負電源が無い場合でも、副走査について相対的に負電圧を印加した状態で駆動をすることができる。
【0035】
以上のように、実施形態1によれば、負電源を使用せずに相対的に共通電極部に負電圧を掛けることが可能となる。その結果、コストを大幅に増加させることなく片電源での駆動を可能とすることができる。
【0036】
つぎに、実施形態2にかかるアクチュエータの駆動システムおよび駆動制御方法について、図面を用いて詳細に説明する。実施形態2では、実施形態1で例示した主走査駆動回路100M(
図16参照)の別形態を例示する。
図25は、実施形態2にかかる主走査駆動回路200Mの概略構成例を示す回路図である。
図25に示すように、主走査駆動回路200Mは、
図16に示す主走査駆動回路100Mと同様の構成において、抵抗R1およびR2がDAC211に置き換えられた構成を備える。このような構成を備えることで、実施形態2では、
図26に示すように、主走査側の共通電極の電圧を可変することができるため、相対的に負電圧で駆動することが可能となる。これにより、アクチュエータ130の特性変化を適切に補正することが可能となる。
【0037】
以上のように、実施形態2によれば、実施形態1にかかる駆動システム100において、主走査のバイアス電圧を適切に制御することが可能となる。その他の構成、動作および効果は、実施形態1と同様のため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0038】
つぎに、実施形態3にかかるアクチュエータの駆動システムおよび駆動制御方法について、図面を用いて詳細に説明する。実施形態3では、実施形態1で例示した副走査駆動回路100S(
図19参照)の別形態を例示する。
図27は、実施形態3にかかる副走査駆動回路300Sの概略構成例を示す回路図である。
図27に示すように、副走査駆動回路300Sは、
図19に示す副走査駆動回路100Sと同様の構成において、抵抗R3およびR4がDAC315に置き換えられた構成を備える。DAC315の出力は、
図28に示すように、電圧Vcomから基準電圧Vrefまでの任意の電圧とすることができる。このような構成を備えることで、実施形態3では、
図29に示すように、副走査側の共通電極の電圧を可変することができるため、相対的に負電圧で駆動することが可能となる。これにより、アクチュエータ130の特性変化を適切に補正することが可能となる。
【0039】
以上のように、実施形態3によれば、実施形態1にかかる駆動システム100において、副走査のバイアス電圧を適切に制御することが可能となる。その他の構成、動作および効果は、実施形態1と同様のため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0040】
つぎに、実施形態4にかかるアクチュエータの駆動システムおよび駆動制御方法について説明する。上述の実施形態3では、実施形態1をベースとして副走査側の共通電極の電圧を可変としたが、これに限られるものではない。そこで実施形態4では、実施形態2をベースとして主走査側および副走査側の両方の共通電極の電圧を可変とする。
【0041】
実施形態4にかかる駆動システムは、たとえば実施形態1で例示した駆動システム100に、実施形態2で例示した主走査駆動回路200Mと、実施形態3で例示した副走査駆動回路300Sとを組み込むことで実現することができる。このような構成を備えることで、アクチュエータ130の特性変化をさらに適切に補正することが可能となる。
【0042】
つぎに、実施形態5にかかるアクチュエータの駆動システムおよび駆動制御方法について、図面を用いて詳細に説明する。
図30は、実施形態5にかかる駆動システム500の概略構成例を示す回路図である。
図30に示すように、駆動システム500は、
図15に示す駆動システム100と同様の構成において、主走査駆動用アンプ121および主走査共通電極駆動用アンプ122に、副走査駆動用アンプ123および副走査共通電極駆動用アンプ124の電源電圧Vhとは異なる、専用の第2の電源電圧Vhmを供給するように構成されている。
【0043】
前述のように、主走査は共振で動作し、副走査は非共振で駆動するように構成されている。このため、副走査の駆動電圧は比較的高く、例えば50V程度必要になる。一方、主走査の駆動電圧は、例えば20Vから30V程度である。そこで、主走査用に専用の電源電圧Vhmを設けることで、主走査に一般的な部品を用いることができるため、コストダウンを図ることが可能となる。
【0044】
図31は、実施形態5にかかる主走査駆動回路500Mの概略構成例を示す回路図である。
図31に示すように、主走査駆動回路500Mは、
図25に示す主走査駆動回路200Mと同様の構成において、低ドロップアウト(LDO)レギュレータ501をさらに備えた構成を備える。LDOレギュレータ501は、電源電圧Vh(高電圧源)を必要な電源電圧Vhmまで下げてアンプ141およびバッファ142に供給する。たとえばLDOレギュレータ501は、50Vの電源電圧Vhを20Vから30V程度の電源電圧Vhmに低下させ、この電源電圧Vhmをアンプ141およびバッファ142に供給する。その他の構成、動作および効果は、実施形態1と同様のため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0045】
つぎに、実施形態6について説明する。上述の実施形態で例示した駆動システムおよび駆動制御方法は、映像機器に採用することもできる。それにより、制御性に優れた高性能な映像機器を得ることができる。
【0046】
つぎに、実施形態7について説明する。上述の実施形態1〜5で例示した駆動システムは、光偏偏向器として作用することができる。そのため、これらの駆動システムは、プロジェクタ、ヘッドマウントディスプレイ、ヘッドアップディスプレイなどの画像投影装置や画像投影装置を搭載した移動体装置などに搭載することが可能である。以下に、上述の実施形態1〜5で例示した駆動システムを搭載した画像投影装置を、実施形態7として図面を用いて詳細に説明する。
【0047】
図32は、実施形態7にかかる画像投影装置の概略構成例を示す模式図である。
図32に示すように、画像投影装置1000は、赤色レーザ光源1001と、緑色レーザ光源1002と、青色レーザ光源1003と、コリメートレンズ1004と、光路合成手段1005と、2次元光偏向器1009と、LD駆動部1011と、光偏向器駆動部1012と、制御部1013と、記憶部1014とを備える。上述した実施形態1〜5にかかる駆動システムは、光偏向器駆動部1012に組み込まれる。
【0048】
コリメートレンズ1004および光路合成手段1005は、レーザ光源1001〜1003から出力されたレーザ光を2次元光偏向器1009の反射ミラー1100(
図33参照)へ入射させる光学系を構成する。赤色レーザ光源1001、緑色レーザ光源1002および青色レーザ光源1003のそれぞれから発せられた光は、コリメートレンズ1004によってそれぞれ平行光になって出射される。
図32に示す例では、赤色レーザ光源1001として波長642nm、緑色レーザ光源1002として波長520nm、青色レーザ光源1003として波長450nmの光源をそれぞれ用いた。
【0049】
コリメートレンズ1004でコリメートされたレーザ光は、光路合成手段1005に入射される。光路合成手段1005は、3本の光路を1つの光路に合成するものであり、ダイクロイックミラーなどの光路合成プリズムで構成されている。この光路合成手段1005は、光源の数に対応した数の反射面を有してよい。したがって、
図32に示す例では、光路合成手段1005は、3つの反射面1006、1007および1008を有する。
【0050】
反射面1006には、赤色の波長のレーザ光を反射し、緑色、青色の波長のレーザ光を透過するダイクロイック膜が形成されている。反射面1007には、緑色の波長のレーザ光を反射し、青色の波長のレーザ光を透過するダイクロイック膜が形成されている。反射1008は、青色の波長のレーザ光を反射する。このような反射面1006〜1008を備えることで、光路合成手段1005は3つの光路を1つの光路に合成する。
【0051】
合成されたレーザ光は、2次元光偏向器1009によってスクリーン1010を2次元に走査するように偏向される。スクリーン1010への画像の形成は、2次元光偏向器1009によるレーザ光の2次元光走査と、各レーザ光源1001〜1003の強度変調とによって行なわれる。このとき、各レーザ光源1001〜1003の強度変調信号は、LD駆動部1011から送られる。2次元光偏向器1009への動作信号は、光偏向器駆動部1012より送られる。画像を形成するためのLD駆動部1011および2次元光偏向器1009の制御は、制御部1013で行われる。記憶部1014には、2次元光偏向器1009を駆動するための初期データが格納されている。
【0052】
つづいて、実施形態7における2次元光偏向器1009のより具体的な構成例を、以下に図面を用いて詳細に説明する。
図33は、実施形態7にかかる2次元光偏向器の概略構成例を示す模式図である。
【0053】
図33に示すように、2次元光偏向器1009は、レーザ光を反射させる反射ミラー1100を中心部に備える。反射ミラー1100は、一対のトーションバー1101で支持されている。トーションバー1101の端部は、それぞれ圧電カンチレバー1102の一端に支持されている。圧電カンチレバー1102の他端は、それぞれ可動枠1103に支持されている。可動枠1103は、複数の折り返し部を有して蛇行して形成された一対の梁部(蛇行状梁部)1104で支持されている。蛇行状梁部1104は、素子枠部材1105に支持されている。蛇行した各梁部には、独立の圧電部材1106aおよび1106bが設けられている。
【0054】
図33に示す構成では、圧電カンチレバー1102を駆動することで、反射ミラー1100を支持するトーションバー1101にねじれが発生し、それにより、反射ミラー1100がY軸周りに回転振動する。ここでは、圧電カンチレバー1102に対して正弦波による駆動を行い、反射ミラー1100の回転に機械的共振を利用する。
【0055】
一方、蛇行状梁部1104を駆動することで、可動枠1103がX軸周りに回転し、これに応じて反射ミラー1100もX軸周りに回転する。具体的には、蛇行状梁部1104の蛇行した各梁部に独立に設けられた圧電部材1106aおよび1106bの一つおきにのこぎり波による電圧印加を行う。ここでは、圧電部材1106a同士が同じ波形の電圧印加パターンであり、圧電部材1106b同士が同じ波形の電圧印加パターンである。電圧印加パターンの一例を
図34に示す。
図34では、縦軸が電圧値を示し、横軸が時間を示す。また、例えば実線が圧電部材1106a(もしくは1106b)の電圧印加パターンを示し、破線が圧電部材1106b(もしくは1106a)の電圧印加パターンを示す。
図34に例示するような電圧印加パターンによれば、蛇行状梁部1104の一つおきにのこぎり波の位相の調整が行われ、それにより、蛇行状梁部1104が回転駆動する。このような駆動により、均一性の高い光走査が可能になる。
【0056】
なお、
図32では、画像投影装置1000の一例としてプロジェクタ装置を示しているが、これに限らず、頭に装着するヘッドマウントディスプレイや、スクリーンとして拡散板やマイクロレンズアレイを使用し、フロントガラスなどの半透明板などを使って虚像を形成するヘッドアップディスプレイなどへ適用することができる。
図35に、ヘッドアップディスプレイの概略構成例を示す。
図35に示すように、ヘッドアップディスプレイ1200は、
図32に示す画像投影装置1000と同様の構成において、2次元光偏向器1009の先の光路上に、複数のマイクロレンズを含むマイクロレンズアレイ1215と、半透明板1216(例えばコンバイナやフロントガラス)とが配置された構成を備える。
図35に示す構成では、2次元光偏向器1009による第1軸および第2軸周りのレーザ光の偏向動作に伴い、マイクロレンズアレイ1215上に画像が形成される。そして、半透明板1216を介して画像が拡大された虚像1217を視点1218より視認することができる。この場合、マイクロレンズアレイ1215によりレーザ光が拡散されるため、スペックルノイズの低減された虚像1217となる。半透明板1216には、車両の窓ガラス等を使うことも可能である。
【0057】
このような構成を備えるヘッドアップディスプレイ1200は、例えば車両、航空機、船舶、ロボット等の移動体に搭載することができる。そこで、ヘッドアップディスプレイ1200と、ヘッドアップディスプレイ1200が搭載される移動体とを備える移動体装置を提供することができる。
【0058】
つぎに、実施形態8について説明する。実施形態8では、上述した実施形態にかかる駆動システムが実行する駆動制御方法の一例について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本説明では、実施形態1にかかる駆動システム100(
図15参照)を引用して説明するが、他の実施形態にかかる駆動システム(たとえば
図30に示す駆動システム500)に対しても、同様に適用可能である。
【0059】
図36は、実施形態8にかかる駆動制御方法の一例を示すフローチャートである。
図36に示すように、本動作では、まず、波形生成部110がデバイス固有の感度値(係数やオフセットなどで表されたデバイス個体差補正用のパラメータ)を不図示のメモリから読み出す(ステップS101)。
【0060】
つぎに、波形生成部110が、ステップS101で読み出した感度値を用いて主走査駆動波形Mを生成し、この主走査駆動波形Mを主走査駆動用アンプ121へ出力する(ステップS102)。出力された主走査駆動波形Mは主走査駆動用アンプ121で増幅され(ステップS103)、その後、主走査駆動用アンプ121からアクチュエータ130へ、主走査駆動波形Mに基づく出力M−AMPとして出力される(ステップS104)。
【0061】
また、波形生成部110は、ステップS101で読み出した感度値を用いて主走査バイアス駆動波形B−BIASを生成し、この主走査バイアス駆動波形B−BIASを主走査バイアスアンプ122へ出力する(ステップS105)。出力された主走査バイアス駆動波形B−BIASは主走査バイアスアンプ122で増幅され(ステップS106)、その後、主走査バイアスアンプ122からアクチュエータ130へ、主走査バイアス駆動波形B−BIASに基づく出力M−COMとして出力される(ステップS107)。
【0062】
また、波形生成部110が、ステップS101で読み出した感度値を用いて副走査駆動波形Sを生成し、この副走査駆動波形Sを副走査駆動用アンプ123へ出力する(ステップS108)。出力された副走査駆動波形Sは副走査駆動用アンプ123で増幅され(ステップS109)、その後、副走査駆動用アンプ123からアクチュエータ130へ、副走査駆動波形Sに基づく出力S−AMPとして出力される(ステップS110)。
【0063】
また、波形生成部110は、ステップS101で読み出した感度値を用いて副走査バイアス駆動波形S−BIASを生成し、この副走査バイアス駆動波形S−BIASを副走査バイアスアンプ124へ出力する(ステップS111)。出力された副走査バイアス駆動波形S−BIASは副走査バイアスアンプ124で増幅され(ステップS112)、その後、副走査バイアスアンプ124からアクチュエータ130へ、副走査バイアス駆動波形S−BIASに基づく出力S−COMとして出力される(ステップS113)。
【0064】
以上のように、主走査駆動波形Mに基づく出力M−AMP、主走査バイアス駆動波形B−BIASに基づく出力M−COM、副走査駆動波形Sに基づく出力S−AMP、および、副走査バイアス駆動波形S−BIASに基づく出力S−COMがアクチュエータ130にそれぞれ入力されることで、アクチュエータ130が駆動する(ステップS114)。その後、アクチュエータ130の駆動が終了次第、本動作が終了する。
【0065】
以上のように動作することで、上述した実施形態において説明したように、負電源を使用せずに相対的に共通電極部に負電圧を掛けることが可能となる。その結果、コストを大幅に増加させることなく片電源での駆動を可能とすることができる。その他の構成、動作および効果は、上述した実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0066】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例で説明したものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0067】
上記実施形態の駆動システムは、アクチュエータを駆動させることにより動作する装置であれば適用可能であり、例えば、反射面を有したアクチュエータを駆動させることにより、レーザ光源から照射されたレーザ光を対象方向に光走査し、対象方向からの反射光により対象方向に存在する物体を認識する物体認識装置に適用可能である。物体認識装置は、例えば、レーザレーダ、レーザ3次元計測装置、生体認証装置等である。