(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0010】
〔第1の実施の形態〕
最初に、
図1に基づき、凹面回折格子を用いた一般的な分光器について説明する。この分光器では、基板900に形成されたスリット901から入射した入射光は、凹面回折格子902によって波長分散される。凹面回折格子902によって波長分散された光は、基板900に形成されたフォトディテクタアレイ903に入射し、フォトディテクタアレイ903において、波長分散された入射光のスペクトルが得られる。
【0011】
この構造の分光器では、測定可能な波長領域を決める要因の一つとして、フォトディテクタアレイ903を形成しているフォトディテクタの感度波長領域があるが、フォトディテクタの感度波長は、フォトディテクタを形成している材料によって定まる。一般的に使用されているSiのフォトダイオードでは、検出可能な波長領域は1100nmまでであるが、これよりも長い波長領域の測定を行うためには、InGaAs等の化合物半導体のフォトダイオードを用いる必要がある。化合物半導体のフォトダイオードは、単画素のものであれば比較的安価であるが、フォトダイオードアレイのようなアレイ素子は高価であるため、アレイ素子を用いた分光器は高価となる。このため、従来型の凹面回折格子を用いた場合、一般に普及可能な価格帯の分光器を作製することは困難であり、小型で安価な検出波長領域の広い分光器を得ることができなかった。
【0012】
(スペクトル測定器)
次に、第1の実施の形態におけるスペクトル測定器100について
図2に基づき説明する。
【0013】
図2に示されるように、本実施の形態におけるスペクトル測定器100は、第1の基板10と第2の基板20により形成されている。第1の基板10には、第1の基板10の一方の面から他方の面を貫通する光入射部11、光出射部12が設けられており、第1の基板10の一方の面には、光入射部11と光出射部12との間に、光反射格子30が設けられている。第2の基板20には、一方の面に、第1の凹面光反射部21と第2の凹面光反射部22が設けられている。光出射部12における第1の基板10の他方の面の側には、光検出素子50が設置されている。光検出素子50は、Si、Ge、InGaAs等により形成された単画素のフォトダイオードチップである。
【0014】
本実施の形態においては、光反射格子30には、可動格子駆動部となる可動格子駆動電源60が接続されており、可動格子駆動電源60及び光検出素子50は、制御部70が接続されている。制御部70は、格子制御部71、演算部72、記憶部73等を有している。
【0015】
図2における破線矢印は、光入射部11より入射した光の光路を示す。本実施の形態におけるスペクトル測定器では、光入射部11より入射した光は、第2の基板20の第1の凹面光反射部21において反射され、第1の基板10に形成された光反射格子30に入射し、光反射格子30において反射される。光反射格子30において反射された光は、第2の基板20の第2の凹面光反射部22において反射され、第1の基板10の光出射部12において集光され結像する。このように集光された光は、光検出素子50において検出される。
【0016】
尚、第1の基板10と第2の基板20は、第1の基板10の一方の面と第2の基板20の一方の面とを対向させた状態で、第1の基板10と第2の基板20の間に設けられたスペーサ40により固定されている。また、スペーサ40により固定する際には、第1の基板10と第2の基板20は、所望の位置となるように位置合わせがなされている。
【0017】
尚、以下に説明する光反射格子を備える構成であれば、
図2で示されるようなウェハレベルで作成されたスペクトル測定器に限定されない。また、第1の基板10に光入射部11と光出射部12を設けているが、第1の基板10とは別体のスリットとして別途設けてもよい。
【0018】
(光反射格子)
次に、本実施の形態における光反射格子30について
図3に基づき説明する。尚、
図3(a)は本実施の形態における光反射格子30を形成している格子の長手方向に沿った断面図であり、
図3(b)は格子の長手方向に垂直な短手方向における断面図である。本実施の形態においては、光反射格子30を形成している格子の短手方向をX方向、長手方向をY方向、X方向及びY方向に垂直な方向をZ方向とする。
【0019】
本実施の形態における説明では、複数の固定電極32a〜32lを代表して固定電極32とし、複数の可動格子33a〜33lを代表して可動格子33として説明する場合がある。また、本実施の形態においては、一例として、固定電極32a〜32l及び可動格子33a〜33lが、各々12本設けられている場合について説明するが、固定電極32a〜32l及び可動格子33a〜33lの数は、12本に限定されるものではない。
【0020】
本実施の形態における光反射格子30においては、基板31に凹部31aが形成されており、凹部31aの底面31bに複数の固定電極32a〜32lが形成されている。また、凹部31aの周囲の基板31の上面31cには、凹部31aを覆うように、複数の可動格子33a〜33lが形成されている。複数の固定電極32a〜32lと複数の可動格子33a〜33lとは、長手方向が同一であって、短手方向に並ぶように配列されている。
【0021】
また、
図3(a)に示すように、複数の可動格子33a〜33lは、長手方向の両端が、基板31の凹部31aの周囲の縁の上面31cにおいて支持されている。従って、可動格子は、両持ち梁形状となっている。本実施の形態においては、例えば、基板31に形成される凹部31aの深さDは、10μm〜100μmであり、固定電極32の長手方向における長さLは、100μm〜3mmである。また、固定電極32及び可動格子33の短手方向における幅Wは、1μm〜100μmであり、可動格子33の厚さtは、1μm〜10μmである。
【0022】
本実施の形態では、対応する固定電極32と可動格子33とが対向している。即ち、固定電極32a〜32lと、これに対応する可動格子33a〜33lとが対向している。具体的には、固定電極32aと可動格子33a、固定電極32bと可動格子33b、固定電極32cと可動格子33c、固定電極32dと可動格子33d、固定電極32eと可動格子33e、固定電極32fと可動格子33fとが対向している。また、固定電極32gと可動格子33g、固定電極32hと可動格子33h、固定電極32iと可動格子33i、固定電極32jと可動格子33j、固定電極32kと可動格子33k、固定電極32lと可動格子33lとが対向している。尚、固定電極32a〜32lと可動格子33a〜33lは、固定電極32a〜32lの一方の面と可動格子33a〜33lの一方の面とが各々対向している。
【0023】
基板31は、絶縁体またはSi等の半導体により形成されており、本実施の形態における光反射格子は、第1の基板10の一方の面に形成してもよく、また、第1の基板10とは別の基板に形成してもよい。本実施の形態における光反射格子を第1の基板10の一方の面に形成する場合には、第1の基板10を基板31にすることができるため、より一層の小型化及び低コスト化を図ることができ好ましい。尚、基板31が半導体により形成されている場合には、基板31の凹部31aの底面31bに絶縁膜を形成し、この絶縁膜の上に固定電極32a〜32lを形成する。基板31の上面31cに絶縁膜を形成し、この絶縁膜の上に、可動格子33a〜33lを形成する。更には、基板31の凹部31aにおいて露出している面全体に絶縁膜を形成してもよい。
【0024】
各々の固定電極32a〜32lは、導電性を有する金属材料、例えば、Al、Pt、Au等の各種半導体デバイスにおいて用いられている電極材料により形成されている。また、各々の可動格子33a〜33lは導電性を有する金属材料または半導体材料により形成されている。可動格子33a〜33lにおける一方の面と反対側の他方の面は、光を反射するための反射膜34が形成されている。反射膜34は金属膜からなり、分光する光の波長に応じて、Al、銀、金等により選択される。
【0025】
本実施の形態におけるスペクトル測定器は、固定電極32a〜32l及び可動格子33a〜33lには、可動格子駆動電源60が接続されており、対応する固定電極32a〜32lと可動格子33a〜33lとの間に、可動格子駆動電源60により電圧を印加する。
【0026】
固定電極と可動格子33との間の電位差が0Vの場合では、
図3(a)に示すように、可動格子33は変位することはなく、固定電極32と可動格子33との間は間隔D
1である。これに対し、固定電極32と可動格子33との間に所定の電圧、例えば、電位差が数十Vとなるように電圧を印加すると、
図4に示すように、固定電極32と可動格子33とが静電引力により引き合い、可動格子33は固定電極32の側に変位する。これにより、可動格子33は固定電極32に近づき、可動格子33と固定電極32との間は、間隔D
1よりも狭い間隔D
2となる。
【0027】
本実施の形態においては、固定電極32a〜32lと可動格子33a〜33lにおいて、電圧を印加する組み合わせや電圧を変えることにより、光反射格子を様々な格子パターンに変化させることができる。
【0028】
図3(b)は、固定電極32a〜32l及び可動格子33a〜33lに電圧が印加されていない場合、例えば、印加される電圧が0Vの場合を示す。この場合には、可動格子33a〜33lは変位しないため、可動格子33a〜33lの光入射面側に位置する反射膜34に入射した光は、偏向することなく正反射する。
【0029】
また、
図5(a)は、可動格子33を一つおきに電圧を印加した場合を示す。即ち、固定電極32bと可動格子33b、固定電極32dと可動格子33d、固定電極32fと可動格子33f、固定電極32hと可動格子33h、固定電極32jと可動格子33j、固定電極32lと可動格子33lとの間に所定の電圧を印加した場合を示す。この場合には、可動格子33は一つおき、即ち、可動格子33b、33d、33f、33h、33j、33lが下に変位した格子パターンとなる。
【0030】
図5(b)は、可動格子33を二つおきに電圧を印加した場合を示す。即ち、固定電極32aと可動格子33a、固定電極32bと可動格子33b、固定電極32eと可動格子33e、固定電極32fと可動格子33f、固定電極32iと可動格子33i、固定電極32jと可動格子33jの間に所定の電圧を印加した場合を示す。この場合には、可動格子33は二つおき、即ち、可動格子33a、33b、33e、33f、33i、33jが下に変位した格子パターンとなる。
【0031】
図6(a)は、固定電極32aと可動格子33a、固定電極32eと可動格子33e、固定電極32iと可動格子33iを除いた対応する固定電極と可動格子との間に電圧を印加した場合を示す。この場合には、可動格子33b、33c、33d、33f、33g、33h、33j、33k、33lが下に変位した格子パターンとなる。
【0032】
図6(b)は、固定電極32bと可動格子33b、固定電極32cと可動格子33c、固定電極32dと可動格子33d、固定電極32fと可動格子33f、固定電極32jと可動格子33j、固定電極32kと可動格子33kの間に所定の電圧を印加した場合を示す。この場合には、可動格子33b、33c、33d、33f、33j、33kが下に変位した格子パターンとなる。
【0033】
ところで、光反射格子のある格子パターンにおいて、光が入射した光検出素子により得られた電圧Vと、波長λ1〜λnにおける光の強度Iλ1〜Iλnとの関係は、下記の(1)に示す式の関係にある。尚、光検出素子により得られた電圧Vは、光検出素子に入射した光の光量に対応している。また、a1〜anは係数であり、光反射格子の格子パターンにより異なる。
V=a1×Iλ1+a2×Iλ2+・・・・+an×Iλn・・・(1)
記憶部73には、光反射格子において、複数の格子パターンにおける各々の可動格子33の位置と、その格子パターンにおける係数a1〜anとの関係が記憶されている。即ち、複数の格子パターンにおいて、光検出素子50により検出される光量より得られる電圧と各々の波長における強度との関係が記憶されている。光反射格子を異なる格子パターンに変えるための制御は、制御部70における格子制御部71において行い、格子制御部71における制御に基づき、可動格子駆動電源60は、各々の固定電極32a〜32lと可動格子33a〜33lとの間に電圧を印加する。即ち、格子制御部71では、記憶部73に記憶されている格子パターンとなるように、可動格子駆動電源60により、所定の対応する固定電極32a〜32lと可動格子33a〜33lとの間に電圧を印加する制御を行う。
【0034】
本実施の形態においては、光反射格子を変化させてn個以上の異なる格子パターンにして、各々の格子パターンにおける光検出素子50により得られる電圧V1〜Vnを取得し、下記の数1に示す行列式に基づき逆演算を行う。これにより、波長λ1〜λnにおける光の強度Iλ1〜Iλnを算出することができる。尚、a11〜annは係数である。数1に示す行列式に基づく逆演算は、制御部70における演算部72において行う。
【0035】
【数1】
本実施の形態におけるスペクトル測定器では、逆演算により得られた波長λ1〜λnにおける光の強度Iλ1〜Iλnより、入射光の分光特性を得ることができる。
【0036】
以上の測定方法を
図7に示すフローチャートに基づき説明する。尚、この測定方法の制御は、制御部70において行われる。また、1〜n番目の格子パターンと数1に示される行列式の係数a11〜annとの関係は、予め測定または算出等されて記憶部73に記憶されているものとする。
【0037】
最初に、ステップ102(S102)に示すように、i=1に設定する。
【0038】
次に、ステップ104(S104)に示すように、光反射格子がi番目の格子パターンの状態となるように、格子制御部71による制御により、可動格子駆動電源60より可動格子33に電圧を印加する。
【0039】
次に、ステップ106(S106)に示すように、光反射格子がi番目の格子パターンの状態において、光検出素子50に入射した光量に対応した電圧Viを得る。検出された電圧Viは制御部70内において一時的に記憶させる。
【0040】
次に、ステップ108(S108)に示すように、現在のiの値に1を加えた値を新たなiの値とする。
【0041】
次に、ステップ110(S110)に示すように、iの値がnを超えているか否かが判断される。iの値がnを超えている場合には、ステップ112に移行する。iの値がnを超えていない場合には、ステップ104に移行し、ステップ104〜108を繰り返す。
【0042】
次に、ステップ112(S112)に示すように、記憶部73に記憶されている情報と、各々の格子パターンの状態において、光検出素子50により得られた電圧V1〜Vnに基づき、演算部72において、数1に示す行列式の逆演算を行う。これにより、波長λ1〜λnにおける光の強度Iλ1〜Iλnを得ることができ、入射光の分光特性を得ることができる。
【0043】
本実施の形態においては、可動格子33の数を増やすことにより、波長分解能を向上させることができる。また、格子パターンの状態の数をnよりも多く変化させて、光検出素子50により光量の検出を行ってもよい。この場合には、得られる光スペクトルの精度をより高めることができる。
【0044】
上記においては、光反射格子においてn個の異なる格子パターンの状態に変化させる場合について説明したが、本実施の形態は、同じ光反射格子の格子パターンの状態において変位量を変化させるものであってもよい。具体的には、一つおきに可動格子33を変位させた状態で、
図8(a)に示すように、変位している可動格子の変位量を大きくしたり、
図8(b)に示すように、変位している可動格子33の変位量を小さくして、光検出素子50により光量を測定してもよい。例えば、可動格子33の変位量をn段階で変化させて、光検出素子50により電圧V1〜Vnを得て、数1と同様であって係数の異なる行列式を用いて逆演算をすることにより、波長λ1〜λnにおける光の強度Iλ1〜Iλnを算出することができる。尚、
図8(c)は、固定電極32と可動格子33との間に、電圧が印加されていない状態を示す。
【0045】
また、本実施の形態におけるスペクトル測定器は、
図9に示すように、基板31の凹部31aの底面31bに設けられている複数の固定電極32a〜32lを一体の大きな共通電極となる固定電極32としてもよい。この場合においても、固定電極32の電位を一定とし、各々の可動格子33a〜33lに印加される電圧を変化させることにより、所望の光反射格子の格子パターンを得ることができる。尚、
図9(a)は、可動格子33が4段階で変位している状態を示す。具体的には、固定電極32と可動格子33a、33e、33iとの間に電圧V1を印加する。固定電極32と可動格子33b、33f、33jとの間に電圧V2を印加する。固定電極32と可動格子33c、33g、33kとの間に電圧V3を印加する。固定電極32と可動格子33d、33h、33lとの間に電圧V4を印加する。尚、V1>V2>V3>V4の関係にある。この状態の格子パターンを示す。また、
図9(b)は、V1>V2>V3>V4の関係を維持したまま各々の電圧を高くした状態を示す。尚、
図9(c)は、固定電極32と可動格子33との間に、電圧が印加されていない状態を示す。
【0046】
また、本実施の形態におけるスペクトル測定器は、
図10に示すように、第1の基板10の一方の面に光検出素子50が設けられているものであってもよい。この場合には、第1の基板10には光出射部を設ける必要がない。光検出素子50は、光入射部11より入射した光が、第1の凹面光反射部21、光反射格子30、第2の凹面光反射部22を介し、集光される位置に設置される。この構造の光検出器では、第1の基板10の一方の面に光検出素子50を形成することができるため、より一層の小型化が可能となり、外側に光検出素子50を設ける場合と比べて、組み立て工程も簡素化することができ、製造コストも抑制することができる。尚、光検出素子50は、例えば、光検出素子がSiのフォトダイオードである場合には、Si基板またはSOI(Silicon on Insulator)基板を用いて、CMOSプロセスにより形成することができる。
【0047】
本実施の形態においては、光反射格子を形成している可動格子33を変位させた複数の格子パターンの状態の各々において、光検出素子50により光量を検出し、この検出された光量に基づき、各々の波長における強度を算出している。よって、光反射格子を回動させる必要がないため、分光器を小型で安価にすることができ、更には、光反射格子を回動させる駆動系がないため、信頼性を向上させることができる。
【0048】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、光反射格子を形成している可動格子を両持ちではなく、片持ちで支持している構造のものである。具体的には、
図11に示すように、基板131に支持固定部136が設けられており、支持固定部136に、各々の可動格子133a〜133lの一方の端部が支持されている。本実施の形態においては、可動格子133a〜133lを可動格子133と記載する場合がある。尚、
図11(a)は本実施の形態における光反射格子の正面図であり、
図11(b)は上面図であり、
図11(c)は側面図である。
【0049】
本実施の形態における光反射格子について、
図12に基づきより詳細に説明する。本実施の形態における光反射格子は、
図12に示されるように、基板131の一方の面に固定電極132が形成されている。また、可動格子133の一方の面には、可動格子電極135が形成されており、他方の面には、金属材料により反射膜134が形成されている。尚、
図11においては、便宜上、固定電極132、反射膜134、可動格子電極135は省略されている。
【0050】
基板131の一方の面に形成されている固定電極132と、可動格子133の一方の面に形成されている可動格子電極135とは対向しており、固定電極132及び可動格子電極135には、可動格子駆動電源60が接続されている。これにより、可動格子駆動電源60により、固定電極132と可動格子電極135との間に電圧を印加することができる。
【0051】
本実施の形態においては、可動格子駆動電源60により、固定電極132と可動格子電極135との間に所定の電圧を印加する。これにより、固定電極132と可動格子電極135との間に静電引力が働き、
図12(a)に示す状態から
図12(b)に示す状態に、可動格子電極135が形成されている可動格子133が、固定電極132が形成されている側に撓み変位する。
【0052】
また、本実施の形態における光反射格子は、
図13に示すように、電極で挟まれた圧電素子137が、可動格子133の他方の面に設けられた構造のものであってもよい。この場合には、基板131には固定電極132を形成しなくともよい。また、可動格子133自体を圧電材料により形成し、可動格子133の裏面に電極を設けた構造のものであってもよい。
【0053】
本実施の形態における光反射格子は、
図2または
図10に示されるスペクトル測定器において、第1の実施の形態における光反射格子に代えて用いることができる。尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0054】
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態におけるスペクトル測定器300について
図14に基づき説明する。
【0055】
図14に示されるように、本実施の形態におけるスペクトル測定器300は、第1の基板10と第2の基板20により形成されている。第1の基板10には、第1の基板10の一方の面から他方の面を貫通する光入射部11、光出射部12が設けられており、第1の基板10の一方の面には、光入射部11と光出射部12との間に、光反射格子330が設けられている。第2の基板20には、一方の面に、第1の凹面光反射部21と第2の凹面光反射部22が設けられている。光出射部12における第1の基板10の他方の面の側には、光検出素子50が設置されている。光検出素子50は、Si、Ge、InGaAs等により形成された単画素のフォトダイオードチップである。
【0056】
本実施の形態においては、光反射格子330には、可動梁駆動部となる可動梁駆動電源360が接続されており、可動梁駆動電源360及び光検出素子50は、制御部70が接続されている。制御部70は、格子制御部71、演算部72、記憶部73等を有している。
【0057】
図14における破線矢印は、光入射部11より入射した光の光路を示す。本実施の形態におけるスペクトル測定器では、光入射部11より入射した光は、第2の基板20の第1の凹面光反射部21において反射され、第1の基板10に形成された光反射格子330に入射し、光反射格子330において反射される。光反射格子330において反射された光は、第2の基板20の第2の凹面光反射部22において反射され、第1の基板10の光出射部12において集光され結像する。このように集光された光は、光検出素子50において検出される。
【0058】
尚、第1の基板10と第2の基板20は、第1の基板10の一方の面と第2の基板20の一方の面とを対向させた状態で、第1の基板10と第2の基板20の間に設けられたスペーサ40により固定されている。また、スペーサ40により固定する際には、第1の基板10と第2の基板20は、所望の位置となるように位置合わせがなされている。
【0059】
尚、以下に説明する光反射格子を備える構成であれば、
図14で示されるようなウェハレベルで作成されたスペクトル測定器に限定されない。また、第1の基板10に光入射部11と光出射部12を設けているが、第1の基板10とは別体のスリットとして別途設けてもよい。
【0060】
(光反射格子)
次に、本実施の形態における光反射格子330について
図15に基づき説明する。尚、
図15(a)は本実施の形態における光反射格子330を形成している格子の長手方向に沿った断面図であり、
図15(b)は格子の長手方向に垂直な短手方向における断面図である。本実施の形態においては、光反射格子330を形成している格子の短手方向をX方向、長手方向をY方向、X方向及びY方向に垂直な方向をZ方向とする。
【0061】
本実施の形態における説明では、複数の固定電極32a〜32lを代表して固定電極32とし、複数の可動梁333a〜333lを代表して可動梁333とし、複数の格子336a〜336lを代表して格子336として説明する場合がある。また、本実施の形態においては、一例として、固定電極32a〜32l及び可動梁333a〜333lが、各々12本設けられている場合について説明するが、固定電極32a〜32l及び可動梁333a〜333lの数は、12本に限定されるものではない。
【0062】
本実施の形態における光反射格子330においては、基板31に凹部31aが形成されており、凹部31aの底面31bに複数の固定電極32a〜32lが形成されている。また、凹部31aの周囲の基板31の上面31cには、凹部31aを覆うように、複数の可動梁333a〜333lが形成されている。複数の固定電極32a〜32lと複数の可動梁333a〜333lとは、長手方向が同一であって、短手方向に並ぶように配列されている。
【0063】
また、
図15(a)に示すように、複数の可動梁333a〜333lは、長手方向の両端が、基板31の凹部31aの周囲の縁の上面31cにおいて支持されている。従って、可動梁は、両持ち梁形状となっている。本実施の形態においては、例えば、基板31に形成される凹部31aの深さは、10μm〜100μmであり、固定電極32の長手方向における長さは、100μm〜3mmである。また、固定電極32及び可動梁333の短手方向における幅Waは、1μm〜10μmであり、可動梁333の厚さは、1μm〜10μmである。
【0064】
本実施の形態では、対応する固定電極32と可動梁333とが対向している。即ち、固定電極32a〜32lと、これに対応する可動梁333a〜333lとが対向している。具体的には、固定電極32aと可動梁333a、固定電極32bと可動梁333b、固定電極32cと可動梁333c、固定電極32dと可動梁333d、固定電極32eと可動梁333e、固定電極32fと可動梁333fとが対向している。また、固定電極32gと可動梁333g、固定電極32hと可動梁333h、固定電極32iと可動梁333i、固定電極32jと可動梁333j、固定電極32kと可動梁333k、固定電極32lと可動梁333lとが対向している。尚、固定電極32a〜32lと可動梁333a〜333lは、固定電極32a〜32lの一方の面と可動梁333a〜333lの一方の面とが各々対向している。
【0065】
さらに、
図15(a)に示すように、可動梁333a〜333lの各々には、固定電極32a〜32lと対向する一方の面とは反対側の他方の面に、格子336a〜336lが設けられている。具体的には、可動梁333aには格子336a、可動梁333bには格子336b、可動梁333cには格子336c、可動梁333dには格子336d、可動梁333eには格子336e、可動梁333fには格子336fが設けられている。また、可動梁333gには格子336g、可動梁333hには格子336h、可動梁333iには格子336i、可動梁333jには格子336j、可動梁333kには格子336k、可動梁333lには格子336lが設けられている。本願においては、可動梁333a〜333lを可動部と記載し、格子336a〜336lを格子部と記載する場合がある。
【0066】
可動梁333と格子336とは連結部材335により固定されている。即ち、格子336a〜336lの一方の面と可動梁333a〜333lの他方の面とは、各々連結部材335により固定されている。連結部材335は可動梁333が変位しても格子336が固定電極32と平行に変位する位置に配置される。可動梁333及び格子336各々の重心点付近に配置されるのが好ましい。連結部材335の高さHは1μm〜30μmである。格子336の短手方向における幅は、可動梁333の幅Waと略同じ1μm〜10μmであり、格子336の厚さtaは、1μm〜10μmである。格子336の長手方向における長さLaは、100μm〜3mmである。但し、可動梁333が変位した際に、他の部位に干渉しないよう格子336の長手方向における長さと連結部材335の高さは決定される。特に連結部材335の高さは調整因子として使われる。
【0067】
基板31は、絶縁体またはSi等の半導体により形成されており、本実施の形態における光反射格子は、第1の基板10の一方の面に形成してもよく、また、第1の基板10とは別の基板に形成してもよい。本実施の形態における光反射格子を第1の基板10の一方の面に形成する場合には、第1の基板10を基板31にすることができるため、より一層の小型化及び低コスト化を図ることができ好ましい。尚、基板31が半導体により形成されている場合には、基板31の凹部31aの底面31bに絶縁膜を形成し、この絶縁膜の上に固定電極32a〜32lを形成する。また、基板31の上面31cに絶縁膜を形成し、この絶縁膜の上に、可動梁333a〜333lを形成する。更には、基板31の凹部31aにおいて露出している面全体に絶縁膜を形成してもよい。
【0068】
各々の固定電極32a〜32lは、導電性を有する金属材料、例えば、Al、Pt、Au等の各種半導体デバイスにおいて用いられている電極材料により形成されている。また、各々の可動梁333a〜333lは導電性を有する金属材料または半導体材料により形成されている。格子336a〜336lの連結部材335との接続面となる一方の面とは反対の他方の面は、光を反射するための反射膜334が形成されている。反射膜334は金属膜からなり、分光する光の波長に応じて、Al、銀、金等により選択される。
【0069】
本実施の形態においては、固定電極32a〜32l及び可動梁333a〜333lには、可動梁駆動電源360が接続されており、対応する固定電極32a〜32lと可動梁333a〜333lとの間に、可動梁駆動電源360により電圧を印加することができる。
【0070】
固定電極32と可動梁333との間の電位差が0Vの場合では、
図15(a)に示すように、可動梁333は変位することはなく、固定電極32と可動梁333との間は間隔Da
1である。これに対し、固定電極32と可動梁333との間に所定の電圧、例えば、電位差が数十Vとなるように電圧を印加すると、
図16に示すように、固定電極32と可動梁333とが静電引力により引き合い、可動梁333は固定電極32の側に変位する。これにより、可動梁333は固定電極32に近づき、可動梁333と固定電極32との間は、間隔Da
1よりも狭い間隔Da
2となる。本実施の形態においては、固定電極32a〜32lと可動梁333a〜333lにおいて、電圧を印加する組み合わせや電圧を変えることにより、光反射格子を様々な格子パターンに変化させることができる。
【0071】
尚、
図15(b)は、固定電極32a〜32l及び可動梁333a〜333lに電圧が印加されていない場合、例えば、印加される電圧が0Vの場合を示す。この場合には、可動梁333a〜333lは変位しないため、可動梁333a〜333lの光入射面側に位置する反射膜334に入射した光は正反射する。
【0072】
また、
図17(a)は、可動梁333に一つおきに電圧を印加した場合を示す。即ち、固定電極32bと可動梁333b、固定電極32dと可動梁333d、固定電極32fと可動梁333f、固定電極32hと可動梁333h、固定電極32jと可動梁333j、固定電極32lと可動梁333lとの間に所定の電圧を印加した場合を示す。この場合には、可動梁333は一つおき、即ち、可動梁333b、333d、333f、333h、333j、333lが下に変位し、それに伴い格子336b、336d、336f、336h、336j、336lも同期して下に変位した格子パターンとなる。
【0073】
図17(b)は、可動梁333に二つおきに電圧を印加した場合を示す。即ち、固定電極32aと可動梁333a、固定電極32bと可動梁333b、固定電極32eと可動梁333e、固定電極32fと可動梁333f、固定電極32iと可動梁333i、固定電極32jと可動梁333jの間に所定の電圧を印加した場合を示す。この場合には、可動梁333は二つおき、即ち、可動梁333a、333b、333e、333f、333i、333jが下に変位し、それに伴い格子336a、336b、336e、336f、336i、336jも同期して下に変位した格子パターンとなる。
【0074】
図18(a)は、固定電極32aと可動梁333a、固定電極32eと可動梁333e、固定電極32iと可動梁333iを除いた対応する固定電極と可動梁との間に電圧を印加した場合を示す。この場合には、可動梁333b、333c、333d、333f、333g、333h、333j、333k、333lが下に変位する。これに伴い格子336b、336c、336d、336f、336g、336h、336j、336k、336lも同期して下に変位した格子パターンとなる。
【0075】
図18(b)は、固定電極32bと可動梁333b、固定電極32cと可動梁333c、固定電極32dと可動梁333d、固定電極32fと可動梁333f、固定電極32jと可動梁333j、固定電極32kと可動梁333kの間に電圧を印加した場合を示す。この場合には、可動梁333b、333c、333d、333f、333j、333kが下に変位し、それに伴い格子336b、336c、336d、336f、336j、336kも同期して下に変位した格子パターンとなる。
【0076】
ところで、光反射格子のある格子パターンにおいて、光が入射した光検出素子により得られた電圧Vと、波長λ1〜λnにおける光の強度Iλ1〜Iλnとの関係は、下記の(1)に示す式の関係にある。尚、光検出素子により得られた電圧Vは、光検出素子に入射した光の光量に対応している。また、a1〜anは係数であり、光反射格子の格子パターンにより異なる。
V=a1×Iλ1+a2×Iλ2+・・・・+an×Iλn・・・(1)
記憶部73には、光反射格子において、複数の格子パターンにおける各々の可動梁333の位置と、その格子パターンにおける係数a1〜anとの関係が記憶されている。即ち、複数の格子パターンにおいて、光検出素子50により検出される光量より得られる電圧と各々の波長における強度との関係が記憶されている。光反射格子を異なる格子パターンに変えるための制御は、制御部70における格子制御部71において行い、格子制御部71における制御に基づき、可動梁駆動電源360は、各々の固定電極32a〜32lと可動梁333a〜333lとの間に電圧を印加する。即ち、格子制御部71では、記憶部73に記憶されている格子パターンとなるように、可動梁駆動電源360により、所定の対応する固定電極32a〜32lと可動梁333a〜333lとの間に電圧を印加する制御を行う。
【0077】
本実施の形態においては、光反射格子を変化させてn個以上の異なる格子パターンにして、各々の格子パターンにおける光検出素子50により得られる電圧V1〜Vnを取得し、上述した数1に示す行列式に基づき逆演算を行う。これにより、波長λ1〜λnにおける光の強度Iλ1〜Iλnを算出することができる。尚、a11〜annは係数である。数1に示す行列式に基づく逆演算は、制御部70における演算部72において行う。
【0078】
本実施の形態におけるスペクトル測定器では、逆演算により得られた波長λ1〜λnにおける光の強度Iλ1〜Iλnより、入射光の分光特性を得ることができる。
【0079】
以上の測定方法を
図19に示すフローチャートに基づき説明する。尚、この測定方法の制御は、制御部70において行われる。また、1〜n番目の格子パターンと数1に示される行列式の係数a11〜annとの関係は、予め測定または算出等されて記憶部73に記憶されているものとする。
【0080】
最初に、ステップ202(S202)に示すように、i=1に設定する。
【0081】
次に、ステップ204(S204)に示すように、光反射格子がi番目の格子パターンの状態となるように、格子制御部71による制御により、可動梁駆動電源360より可動梁333に電圧を印加する。
【0082】
次に、ステップ206(S206)に示すように、光反射格子がi番目の格子パターンの状態において、光検出素子50に入射した光量に対応した電圧Viを得る。検出された電圧Viは制御部70内において一時的に記憶させる。
【0083】
次に、ステップ208(S208)に示すように、現在のiの値に1を加えた値を新たなiの値とする。
【0084】
次に、ステップ210(S210)に示すように、iの値がnを超えているか否かが判断される。iの値がnを超えている場合には、ステップ212に移行する。iの値がnを超えていない場合には、ステップ204に移行し、ステップ204〜208を繰り返す。
【0085】
次に、ステップ212(S212)に示すように、記憶部73に記憶されている情報と、各々の格子パターンの状態において、光検出素子50により得られた電圧V1〜Vnに基づき、演算部72において、数1に示す行列式の逆演算を行う。これにより、波長λ1〜λnにおける光の強度Iλ1〜Iλnを得ることができ、入射光の分光特性を得ることができる。
【0086】
本実施の形態においては、可動梁333の数を増やすことにより、波長分解能を向上させることができる。また、格子パターンの状態の数をnよりも多く変化させて、光検出素子50により光量の検出を行ってもよい。この場合には、得られる光スペクトルの精度をより高めることができる。
【0087】
上記においては、光反射格子においてn個の異なる格子パターンの状態に変化させる場合について説明したが、本実施の形態は、同じ光反射格子の格子パターンの状態において変位量を変化させるものであってもよい。具体的には、一つおきに可動梁333を変位させた状態で、
図20(a)に示すように、変位している可動梁333の変位量を大きくしたり、
図20(b)に示すように、変位している可動梁333の変位量を小さくして、光検出素子50により光量を測定してもよい。例えば、可動梁333の変位量をn段階で変化させて、光検出素子50により電圧V1〜Vnを得て、数1と同様であって係数の異なる行列式を用いて逆演算をすることにより、波長λ1〜λnにおける光の強度Iλ1〜Iλnを算出することができる。尚、
図20(c)は、固定電極32と可動梁333との間に、電圧が印加されていない状態を示す。
【0088】
また、本実施の形態におけるスペクトル測定器は、
図21に示すように、基板31の凹部31aの底面31bに設けられている複数の固定電極32a〜32lを一体の大きな共通電極となる固定電極32としてもよい。この場合においても、固定電極32の電位を一定とし、各々の可動梁333a〜333lに印加される電圧を変化させることにより、所望の光反射格子の格子パターンを得ることができる。尚、
図21(a)は、可動梁333が4段階で変位している状態を示す。具体的には、固定電極32と可動梁333a、333e、333iとの間に電圧Va1を印加する。固定電極32と可動梁333b、333f、333jとの間に電圧Va2を印加する。固定電極32と可動梁333c、333g、333kとの間に電圧Va3を印加する。固定電極32と可動梁333d、333h、333lとの間に電圧Va4を印加する。尚、Va1>Va2>Va3>Va4の関係にある。この状態の格子パターンを示す。また、
図21(b)は、Va1>Va2>Va3>Va4の関係を維持したまま各々の電圧を高くした状態を示す。尚、
図21(c)は、固定電極32と可動梁333との間に、電圧が印加されていない状態を示す。
【0089】
また、本実施の形態におけるスペクトル測定器は、
図22に示すように、第1の基板10の一方の面に光検出素子50が設けられているものであってもよい。この場合には、第1の基板10には光出射部を設ける必要がない。光検出素子50は、光入射部11より入射した光が、第1の凹面光反射部21、光反射格子330、第2の凹面光反射部22を介し、集光される位置に設置される。この構造の光検出器では、第1の基板10の一方の面に光検出素子50を形成することができるため、より一層の小型化が可能となり、外側に光検出素子50を設ける場合と比べて、組み立て工程も簡素化することができ、製造コストも抑制することができる。尚、光検出素子50は、例えば、光検出素子がSiのフォトダイオードである場合には、Si基板またはSOI基板を用いて、CMOSプロセスにより形成することができる。
【0090】
本実施の形態においては、光反射格子を形成している可動梁333及び格子336を変位させた複数の格子パターンの状態の各々において、光検出素子50により光量を検出し、この検出された光量に基づき、各々の波長における強度を算出している。よって、光反射格子を回動させる必要がないため、分光器を小型で安価にすることができ、更には、光反射格子を回動させる駆動系がないため、信頼性を向上させることができる。
【0091】
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態について説明する。
【0092】
本実施の形態における光反射格子430について
図23に基づき説明する。尚、
図23は本実施の形態における光反射格子430を形成している格子の長手方向に沿った断面図である。本実施の形態においては、光反射格子430を形成している格子の短手方向をX方向、長手方向をY方向、X方向及びY方向に垂直な方向をZ方向とする。
【0093】
本実施の形態における光反射格子430は、
図23に示すように、格子336を変位させる駆動手段として圧電素子337を用いた光反射格子である。本実施の形態における光反射格子430においては、複数の可動梁333は、長手方向の両端が、基板31の凹部31aの周囲の縁の上面31cにおいて支持されており、可動梁333は、両持ち梁形状となっている。また、可動梁333の両側には圧電素子337が形成されている。
【0094】
各々の可動梁333は導電性を有する金属材料または半導体材料により形成されている。圧電素子337には薄膜PZT(lead zirconate titanate:チタン酸ジルコン酸鉛)等を用いることができる。薄膜PZT等は表裏両面に電極が形成されており、可動梁333を低抵抗にすることで可動梁333を片極の電極として利用することもできる。
【0095】
本実施の形態におけるスペクトル測定器は、圧電素子337には、可動梁駆動電源360が接続されており、駆動したい格子336に対応する圧電素子337へ可動梁駆動電源360により電圧を印加する。これにより可動梁333が変位に、これに伴い格子336が変位する。
【0096】
本実施の形態における光反射格子430は、第3の実施の形態における光反射格子330に代えて用いることができる。
【0097】
尚、上記以外の内容については、第3の実施の形態と同様である。
【0098】
〔第5の実施の形態〕
次に、第5の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態または第2の実施の形態におけるスペクトル測定器を用いたモバイル型の分析装置である。
【0099】
本実施の形態における分析装置であるモバイル型の分析装置200は、
図24に示されるように、光源211、スペクトル測定器100、駆動回路214、処理回路215、これらの動力源であるバッテリー216等が搭載されている。スペクトル測定器100は、第1の実施の形態におけるスペクトル測定器である。駆動回路214は、光源211、スペクトル測定器100を駆動し、処理回路215は、検出された信号の増幅・A/D変換・通信等を行う。尚、本実施の形態におけるモバイル型の分析装置は、スペクトル測定器100には、第2の実施の形態におけるスペクトル測定器を用いてもよい。この場合、光検出素子50をスペクトル測定器の出射光側に設ける。
【0100】
本実施の形態においては、光源211から出射された出射光221は被測定物230に照射され、被測定物230内における分子に衝突しながら拡散反射する。この拡散反射された光222はスペクトル測定器100に入射し、スペクトル測定器100に設けられた光検出素子50により検出される。これにより、本実施の形態におけるモバイル型の分析装置200では、被測定物230の分子構造に特徴的な波長スペクトルを得ることができる。
【0101】
本実施の形態においては、スペクトル測定器100には、第1の実施の形態または第2の実施の形態におけるスペクトル測定器を用いているため、分析装置200を小型で、安価にすることができ、分析装置200のモバイル性を向上させることができる。また、バッテリーを組み込まずに外部から電源を取るようにしてもかまわない。尚、本実施の形態における分析装置は、第3の実施の形態または第4の実施の形態におけるスペクトル測定器を用いてもよい。このような構成にすることでさらに小型化が図れ、装置重量も低減されるので、さらにモバイル性を向上させることができる。
【0102】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。