特許第6805829号(P6805829)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6805829バリアフィルム及び導電性フィルム、並びに、製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805829
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】バリアフィルム及び導電性フィルム、並びに、製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20201214BHJP
   B32B 7/028 20190101ALI20201214BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20201214BHJP
   C08F 132/06 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   B32B27/00 A
   B32B7/028
   B32B7/025
   C08F132/06
【請求項の数】8
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2016-556482(P2016-556482)
(86)(22)【出願日】2015年10月9日
(86)【国際出願番号】JP2015078713
(87)【国際公開番号】WO2016067893
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2018年9月25日
(31)【優先権主張番号】特願2014-219381(P2014-219381)
(32)【優先日】2014年10月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】山田 聖
(72)【発明者】
【氏名】井伊 泰規
【審査官】 石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−010309(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/122932(WO,A1)
【文献】 特開2009−166325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08F 6/00−246/00、301/00
C08J 5/00−5/02、5/12−5/22
C08G 2/00−2/38、61/00−61/12
H01B 5/14、13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸樹脂フィルムと、
前記延伸樹脂フィルム上に設けられたバリア層とを備える、バリアフィルムであって、
前記延伸樹脂フィルムは、
結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなり、
150℃で1時間加熱した場合の熱寸法変化率の絶対値が、フィルム面内の任意の方向で、1%以下であり、
前記熱寸法変化率は、正方形に切り出した試料フィルムの、四辺それぞれの長さ及び2本の対角線の長さにおける熱寸法変化率の中で絶対値が最大になる値である、延伸樹脂フィルムである、
バリアフィルム
【請求項2】
伸樹脂フィルムと、
前記延伸樹脂フィルム上に設けられた導電性層とを備える、導電性フィルムであって、
前記延伸樹脂フィルムは、
結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなり、
150℃で1時間加熱した場合の熱寸法変化率の絶対値が、フィルム面内の任意の方向で、1%以下であり、
前記熱寸法変化率は、正方形に切り出した試料フィルムの、四辺それぞれの長さ及び2本の対角線の長さにおける熱寸法変化率の中で絶対値が最大になる値である、延伸樹脂フィルムである、
導電性フィルム
【請求項3】
伸樹脂フィルムの製造方法であって、
前記延伸樹脂フィルムは、
結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなり、
150℃で1時間加熱した場合の熱寸法変化率の絶対値が、フィルム面内の任意の方向で、1%以下であり、
前記熱寸法変化率は、正方形に切り出した試料フィルムの、四辺それぞれの長さ及び2本の対角線の長さにおける熱寸法変化率の中で絶対値が最大になる値である、延伸樹脂フィルムであり、
前記製造方法は、
結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる第1フィルムに延伸処理を施す工程と、
前記第1フィルムの少なくとも二辺を保持して緊張させた状態で、前記脂環式構造含有重合体のガラス転移温度以上、前記脂環式構造含有重合体の融点以下の温度にして、結晶化フィルムを得る工程と、
前記脂環式構造含有重合体のガラス転移温度以上、前記脂環式構造含有重合体の融点以下の温度で、前記結晶化フィルムを平坦に維持しながら、前記結晶化フィルムの緊張を連続的に又は段階的に緩和する工程と、を含む、延伸樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記結晶化フィルムを得る工程の前に、前記第1フィルムに延伸処理を施す工程を含む、請求項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記緩和する工程が、前記保持の間隔を狭めることを含み、前記保持の間隔を狭める程度は、結晶化フィルムの熱収縮率S(%)に対して、0.1S以上、1.2S以下である、請求項に記載の延伸樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記緩和する工程をテンター延伸機で行う、請求項に記載の延伸樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
伸樹脂フィルム上に、バリア層を形成する工程を含む、バリアフィルムの製造方法であって、
前記延伸樹脂フィルムは、
結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなり、
150℃で1時間加熱した場合の熱寸法変化率の絶対値が、フィルム面内の任意の方向で、1%以下であり、
前記熱寸法変化率は、正方形に切り出した試料フィルムの、四辺それぞれの長さ及び2本の対角線の長さにおける熱寸法変化率の中で絶対値が最大になる値である、延伸樹脂フィルムである、
バリアフィルムの製造方法
【請求項8】
伸樹脂フィルム上に、導電性層を形成する工程を含む、導電性フィルムの製造方法であって、
前記延伸樹脂フィルムは、
結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなり、
150℃で1時間加熱した場合の熱寸法変化率の絶対値が、フィルム面内の任意の方向で、1%以下であり、
前記熱寸法変化率は、正方形に切り出した試料フィルムの、四辺それぞれの長さ及び2本の対角線の長さにおける熱寸法変化率の中で絶対値が最大になる値である、延伸樹脂フィルムである、
導電性フィルムの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルム;前記樹脂フィルムを備えたバリアフィルム及び導電性フィルム;並びに、前記の樹脂フィルム、バリアフィルム及び導電性フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂のフィルムにおいて、当該フィルムを加熱することにより、脂環式構造含有重合体を結晶化する技術が知られている(特許文献1及び2参照)。このように結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなるフィルムは、通常、耐熱性に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002‐194067号公報
【特許文献2】特開2013‐010309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、結晶性を有さない脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなるフィルムは、当該フィルム同士の摩擦係数が高い傾向がある。そのため、このようなフィルムをロール状に巻き取る場合には、例えば当該フィルムにアンチブロッキングコートを施したり、当該フィルムにマスキングフィルムを貼り合わせたりすることで、フィルム同士のブロッキングを防ぐことが行われていた。ここで、フィルムのブロッキングとは、ある面で接触したフィルムが、その接触した面で付着して容易に剥がれなくなる現象をいう。
【0005】
これに対し、本発明者らの検討により、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなるフィルムは、通常、当該フィルム同士の摩擦係数を小さくできることが判明した。そこで、本発明者らは、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂を用いることにより、アンチブロッキングコート及びマスキングフィルム等の処理を施さなくてもブロッキングの発生を抑制できるフィルムの開発を試みた。
【0006】
さらに、フィルムには、ブロッキングに加え、ゲージバンド及びスクラッチが生じることがある。ここで、フィルムのゲージバンドとは、フィルムをロール状に巻き取った場合にフィルムロールの表面に形成される、周方向に延在する帯状の凹部又は凸部のことをいう。また、フィルムのスクラッチとは、フィルムをロール状に巻き取った場合に巻き重ねられたフィルム同士が擦れることによって生じる引っ掻き傷のことをいう。そこで、本発明者らは、前記のゲージバンド及びスクラッチの発生を抑制するために、フィルムにナーリング処理を行うことを試みた。
【0007】
ナーリング処理とは、フィルムに突起部を形成する処理のことを言う。ナーリング処理によって形成される突起部は、当該突起部の周囲のフィルム表面よりも突出して形成されている。そのため、突起部が形成された領域においては、フィルムの見かけ上の厚みが厚くなる。したがって、例えばフィルムの幅方向の端部近傍の領域にナーリング処理を施すことにより、ゲージバンド及びスクラッチの発生を抑制することが期待される。このようなナーリング処理は、例えば、レーザー光を用いることで行いうる。具体的には、レーザー光をフィルムに照射することにより、レーザー光を照射された地点において突起部を形成する。
【0008】
ところが、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなるフィルムは、レーザー光によるナーリング処理を行うと、フィルムが波打ち等の変形を生じ易いことが判明した。このようなフィルムの変形は、本発明者らの検討によれば、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂が高温環境下において大きい寸法変化(通常は、熱収縮)を生じやすいために生じたものと考えられる。すなわち、レーザー光を吸収したフィルムの温度が上昇することにより、当該温度が上昇した地点においてフィルムが大きな寸法変化を生じ、この寸法変化によってフィルムが変形したものと考えられる。具体例を挙げると、従来のフィルムに含まれる脂環式構造含有重合体のガラス転移温度(例えば、140℃〜150℃)を超える温度範囲においては、フィルムは1.5%〜4%程度と大きな寸法変化を生じて、変形することがあった。このような変形が生じたフィルムは、ロール状に巻き取ると、巻ムラを生じたり、フィルムにクラックを生じたりする可能性がある。
【0009】
本発明は前記のような課題に鑑みて創案されたもので、高温環境下での寸法安定性に優れる樹脂フィルム;前記樹脂フィルムを備えたバリアフィルム及び導電性フィルム;並びに、前記の樹脂フィルム、バリアフィルム及び導電性フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
〔1〕 結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなり、
150℃で1時間加熱した場合の熱寸法変化率の絶対値が、フィルム面内の任意の方向で、1%以下である、樹脂フィルム。
〔2〕 前記の脂環式構造含有重合体が、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物である、〔1〕記載の樹脂フィルム。
〔3〕 前記樹脂フィルムが、光学フィルムである、〔1〕又は〔2〕記載の樹脂フィルム。
〔4〕 〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の樹脂フィルムと、
前記樹脂フィルム上に設けられたバリア層とを備える、バリアフィルム。
〔5〕 〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の樹脂フィルムと、
前記樹脂フィルム上に設けられた導電性層とを備える、導電性フィルム。
〔6〕 〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の樹脂フィルムの製造方法であって、
結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる第1フィルムを、前記第1フィルムの少なくとも二辺を保持して緊張させた状態で、前記脂環式構造含有重合体のガラス転移温度以上、前記脂環式構造含有重合体の融点以下の温度にして、結晶化フィルムを得る工程と、
前記脂環式構造含有重合体のガラス転移温度以上、前記脂環式構造含有重合体の融点以下の温度で、前記結晶化フィルムを平坦に維持しながら、前記結晶化フィルムの緊張を緩和する工程と、を含む、樹脂フィルムの製造方法。
〔7〕 前記結晶化フィルムを得る工程の前に、前記第1フィルムに延伸処理を施す工程を含む、〔6〕に記載の製造方法。
〔8〕 〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の樹脂フィルム上に、バリア層を形成する工程を含む、バリアフィルムの製造方法。
〔9〕 〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の樹脂フィルム上に、導電性層を形成する工程を含む、導電性フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高温環境下での寸法安定性に優れる樹脂フィルム;前記樹脂フィルムを備えたバリアフィルム及び導電性フィルム;並びに、前記の樹脂フィルム、バリアフィルム及び導電性フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、保持装置の例を模式的に示す平面図である。
図2図2は、保持装置の例を模式的に示す平面図である。
図3図3は、樹脂フィルムの製造装置の例を模式的に示す正面図である。
図4図4は、樹脂フィルムの製造装置の例を模式的に示す平面図である。
図5図5は、リンク装置の一部分を模式的に示す平面図である。
図6図6は、リンク装置の一部分を模式的に示す平面図である。
図7図7は、樹脂フィルムにナーリング処理を施してナーリングフィルムを製造する様子の一例を模式的に示す正面図である。
図8図8は、ナーリングフィルムの一例を模式的に示す平面図である。
図9図9は、バリア層をCVD法により無機層として成膜しうる成膜装置の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0014】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。
【0015】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0016】
以下の説明において、長尺のフィルムの長手方向は、通常は製造ラインにおけるフィルム搬送方向と平行である。
【0017】
[1.樹脂フィルム]
本発明の樹脂フィルムは、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなるフィルムである。以下の説明において、前記の樹脂を「結晶性樹脂」ということがある。また、本発明の樹脂フィルムは、高温環境下での寸法安定性に優れる。具体的には、本発明の樹脂フィルムは、150℃で1時間加熱した場合の熱寸法変化率の絶対値が、フィルム面内の任意の方向で、所定値以下である。
【0018】
〔1.1.結晶性樹脂〕
結晶性樹脂は、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む。ここで、脂環式構造含有重合体とは、分子内に脂環式構造を有する重合体であって、環状オレフィンを単量体として用いた重合反応によって得られうる重合体又はその水素添加物をいう。また、脂環式構造含有重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0019】
脂環式構造含有重合体が有する脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が挙げられる。これらの中でも、熱安定性などの特性に優れる樹脂フィルムが得られ易いことから、シクロアルカン構造が好ましい。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数は、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数が上記範囲内にあることで、機械的強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
【0020】
脂環式構造含有重合体において、全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。脂環式構造含有重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合を前記のように多くすることにより、耐熱性を高めることができる。
また、脂環式構造含有重合体において、脂環式構造を有する構造単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択しうる。
【0021】
結晶性樹脂に含まれる脂環式構造含有重合体は、結晶性を有する。ここで、「結晶性を有する脂環式構造含有重合体」とは、融点Tmを有する〔すなわち、示差走査熱量計(DSC)で融点を観測することができる〕脂環式構造含有重合体をいう。脂環式構造含有重合体の融点Tmは、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上であり、好ましくは290℃以下である。このような融点Tmを有する脂環式構造含有重合体を用いることによって、成形性と耐熱性とのバランスに更に優れた樹脂フィルムを得ることができる。
【0022】
脂環式構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下である。このような重量平均分子量を有する脂環式構造含有重合体は、成形加工性と耐熱性とのバランスに優れる。
【0023】
脂環式構造含有重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下である。ここで、Mnは数平均分子量を表す。このような分子量分布を有する脂環式構造含有重合体は、成形加工性に優れる。
脂環式構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として測定しうる。
【0024】
脂環式構造含有重合体のガラス転移温度Tgは、特に限定されないが、通常は85℃以上、通常170℃以下である。
【0025】
前記の脂環式構造含有重合体としては、例えば、下記の重合体(α)〜重合体(δ)が挙げられる。これらの中でも、耐熱性に優れる樹脂フィルムが得られ易いことから、結晶性の脂環式構造含有重合体としては、重合体(β)が好ましい。
重合体(α):環状オレフィン単量体の開環重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(β):重合体(α)の水素添加物であって、結晶性を有するもの。
重合体(γ):環状オレフィン単量体の付加重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(δ):重合体(γ)の水素添加物等であって、結晶性を有するもの。
【0026】
具体的には、脂環式構造含有重合体としては、ジシクロペンタジエンの開環重合体であって結晶性を有するもの、及び、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物であって結晶性を有するものがより好ましく、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物であって結晶性を有するものが特に好ましい。ここで、ジシクロペンタジエンの開環重合体とは、全構造単位に対するジシクロペンタジエン由来の構造単位の割合が、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%の重合体をいう。
【0027】
以下、重合体(α)及び重合体(β)の製造方法を説明する。
重合体(α)及び重合体(β)の製造に用いうる環状オレフィン単量体は、炭素原子で形成された環構造を有し、該環中に炭素−炭素二重結合を有する化合物である。環状オレフィン単量体の例としては、ノルボルネン系単量体等が挙げられる。また、重合体(α)が共重合体である場合には、環状オレフィン単量体として、単環の環状オレフィンを用いてもよい。
【0028】
ノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を含む単量体である。ノルボルネン系単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:エチリデンノルボルネン)及びその誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)等の、2環式単量体;トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体等の、3環式単量体;7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン及びその誘導体等の、4環式単量体;などが挙げられる。
【0029】
前記の単量体において置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;プロパン−2−イリデン等のアルキリデン基;フェニル基等のアリール基;ヒドロキシ基;酸無水物基;カルボキシル基;メトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;などが挙げられる。また、前記の置換基は、1種類を単独で有していてもよく、2種類以上を任意の比率で有していてもよい。
【0030】
単環の環状オレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の環状モノオレフィン;シクロヘキサジエン、メチルシクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルシクロオクタジエン、フェニルシクロオクタジエン等の環状ジオレフィン;等が挙げられる。
【0031】
環状オレフィン単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。環状オレフィン単量体を2種以上用いる場合、重合体(α)は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
【0032】
環状オレフィン単量体には、エンド体及びエキソ体の立体異性体が存在するものがありうる。環状オレフィン単量体としては、エンド体及びエキソ体のいずれを用いてもよい。また、エンド体及びエキソ体のうち一方の異性体のみを単独で用いてもよく、エンド体及びエキソ体を任意の割合で含む異性体混合物を用いてもよい。中でも、脂環式構造含有重合体の結晶性が高まり、耐熱性により優れる樹脂フィルムが得られ易くなることから、一方の立体異性体の割合を高くすることが好ましい。例えば、エンド体又はエキソ体の割合が、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。また、合成が容易であることから、エンド体の割合が高いことが好ましい。
【0033】
重合体(α)及び重合体(β)は、通常、そのシンジオタクチック立体規則性の度合い(ラセモ・ダイアッドの割合)を高めることで、結晶性を高くすることができる。重合体(α)及び重合体(β)の立体規則性の程度を高くする観点から、重合体(α)及び重合体(β)の構造単位についてのラセモ・ダイアッドの割合は、好ましくは51%以上、より好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。
【0034】
ラセモ・ダイアッドの割合は、13C−NMRスペクトル分析により、測定しうる。具体的には、下記の方法により測定しうる。
オルトジクロロベンゼン−dを溶媒として、200℃で、inverse−gated decoupling法を適用して、重合体試料の13C−NMR測定を行う。この13C−NMR測定の結果から、オルトジクロロベンゼン−dの127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルの強度比に基づいて、重合体試料のラセモ・ダイアッドの割合を求めうる。
【0035】
重合体(α)の合成には、通常、開環重合触媒を用いる。開環重合触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。このような重合体(α)の合成用の開環重合触媒としては、環状オレフィン単量体を開環重合させ、シンジオタクチック立体規則性を有する開環重合体を生成させうるものが好ましい。好ましい開環重合触媒としては、下記式(1)で示される金属化合物を含むものが挙げられる。
【0036】
M(NR)X4−a(OR・L (1)
(式(1)において、
Mは、周期律表第6族の遷移金属原子からなる群より選択される金属原子を示し、
は、3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、又は、−CH(Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示す。)で表される基を示し、
は、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示し、
Xは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、及び、アルキルシリル基からなる群より選択される基を示し、
Lは、電子供与性の中性配位子を示し、
aは、0又は1の数を示し、
bは、0〜2の整数を示す。)
【0037】
式(1)において、Mは、周期律表第6族の遷移金属原子からなる群より選択される金属原子を示す。このMとしては、クロム、モリブデン及びタングステンが好ましく、モリブデン及びタングステンがより好ましく、タングステンが特に好ましい。
【0038】
式(1)において、Rは、3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、又は、−CHで表される基を示す。
の、3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基の炭素原子数は、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜15である。また、前記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;などが挙げられる。これらの置換基は、1種類を単独で有していてもよく、2種類以上を任意の比率で有していてもよい。さらに、Rにおいて、3位、4位及び5位の少なくとも2つの位置に存在する置換基が互いに結合し、環構造を形成していてもよい。
【0039】
3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基としては、例えば、無置換フェニル基;4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基等の一置換フェニル基;3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基等の二置換フェニル基;3,4,5−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリクロロフェニル基等の三置換フェニル基;2−ナフチル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−2−ナフチル基等の置換基を有していてもよい2−ナフチル基;等が挙げられる。
【0040】
の、−CHで表される基において、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示す。
の、置換基を有していてもよいアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である。このアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。さらに、前記置換基としては、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシル基;等が挙げられる。これらの置換基は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
の、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ベンジル基、ネオフィル基等が挙げられる。
【0041】
の、置換基を有していてもよいアリール基の炭素原子数は、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜15である。さらに、前記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;等が挙げられる。これらの置換基は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
の、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基等が挙げられる。
【0042】
これらの中でも、Rで表される基としては、炭素原子数が1〜20のアルキル基が好ましい。
【0043】
式(1)において、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示す。Rの、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基としては、それぞれ、Rの、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。
【0044】
式(1)において、Xは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、及び、アルキルシリル基からなる群より選択される基を示す。
Xのハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
Xの、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基としては、それぞれ、Rの、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。
Xのアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
式(1)で示される金属化合物が1分子中に2以上のXを有する場合、それらのXは、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。さらに、2以上のXが互いに結合し、環構造を形成していてもよい。
【0045】
式(1)において、Lは、電子供与性の中性配位子を示す。
Lの電子供与性の中性配位子としては、例えば、周期律表第14族又は第15族の原子を含有する電子供与性化合物が挙げられる。その具体例としては、トリメチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジン等のアミン類;等が挙げられる。これらの中でも、エーテル類が好ましい。また、式(1)示される金属化合物が1分子中に2以上のLを有する場合、それらのLは、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。
【0046】
式(1)で示される金属化合物としては、フェニルイミド基を有するタングステン化合物が好ましい。即ち、式(1)において、Mがタングステン原子であり、且つ、Rがフェニル基である化合物が好ましい。さらに、その中でも、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体がより好ましい。
【0047】
式(1)で示される金属化合物の製造方法は、特に限定されない。例えば、特開平5−345817号公報に記載されるように、第6族遷移金属のオキシハロゲン化物;3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニルイソシアナート類又は一置換メチルイソシアナート類;電子供与性の中性配位子(L);並びに、必要に応じて、アルコール類、金属アルコキシド及び金属アリールオキシド;を混合することにより、式(1)で示される金属化合物を製造することができる。
【0048】
前記の製造方法では、式(1)で示される金属化合物は、通常、反応液に含まれた状態で得られる。金属化合物の製造後、前記の反応液をそのまま開環重合反応の触媒液として用いてもよい。また、結晶化等の精製処理により、金属化合物を反応液から単離及び精製した後、得られた金属化合物を開環重合反応に供してもよい。
【0049】
開環重合触媒は、式(1)で示される金属化合物を単独で用いてもよく、式(1)で示される金属化合物を他の成分と組み合わせて用いてもよい。例えば、式(1)で示される金属化合物と有機金属還元剤とを組み合わせて用いることで、重合活性を向上させることができる。
【0050】
有機金属還元剤としては、例えば、炭素原子数1〜20の炭化水素基を有する周期律表第1族、第2族、第12族、第13族又は14族の有機金属化合物が挙げられる。このような有機金属化合物としては、例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、フェニルリチウム等の有機リチウム;ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド等の有機マグネシウム;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛等の有機亜鉛;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムイソブトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジイソブトキシド等の有機アルミニウム;テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズ等の有機スズ;等が挙げられる。これらの中でも、有機アルミニウム又は有機スズが好ましい。また、有機金属還元剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0051】
開環重合反応は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒は、開環重合体及びその水素添加物を、所定の条件で溶解もしくは分散させることが可能であり、かつ、開環重合反応及び水素化反応を阻害しないものを用いうる。このような有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系脂肪族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系芳香族炭化水素類;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;これらを組み合わせた混合溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、有機溶媒としては、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、エーテル類が好ましい。また、有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0052】
開環重合反応は、例えば、環状オレフィン単量体と、式(1)で示される金属化合物と、必要に応じて有機金属還元剤とを混合することにより、開始させることができる。これらの成分を混合する順序は、特に限定されない。例えば、環状オレフィン単量体を含む溶液に、式(1)で示される金属化合物及び有機金属還元剤を含む溶液を混合してもよい。また、有機金属還元剤を含む溶液に、環状オレフィン単量体及び式(1)で示される金属化合物を含む溶液を混合してもよい。さらに、環状オレフィン単量体及び有機金属還元剤を含む溶液に、式(1)で示される金属化合物の溶液を混合してもよい。各成分を混合する際は、それぞれの成分の全量を一度に混合してもよいし、複数回に分けて混合してもよい。また、比較的に長い時間(例えば1分間以上)にわたって連続的に混合してもよい。
【0053】
開環重合反応の開始時における反応液中の環状オレフィン単量体の濃度は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、特に好ましくは3重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。環状オレフィン単量体の濃度を前記範囲の下限値以上にすることにより、生産性を高くできる。また、上限値以下にすることにより、開環重合反応後の反応液の粘度を低くできるので、その後の水素化反応を容易に行うことができる。
【0054】
開環重合反応に用いる式(1)で示される金属化合物の量は、「金属化合物:環状オレフィン単量体」のモル比が、所定の範囲の収まるように設定することが望ましい。具体的には、前記のモル比は、好ましくは1:100〜1:2,000,000、より好ましくは1:500〜1,000,000、特に好ましくは1:1,000〜1:500,000である。金属化合物の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、十分な重合活性を得ることができる。また、上限値以下にすることにより、反応後に金属化合物を容易に除去できる。
【0055】
有機金属還元剤の量は、式(1)で示される金属化合物1モルに対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.2モル以上、特に好ましくは0.5モル以上であり、好ましくは100モル以下、より好ましくは50モル以下、特に好ましくは20モル以下である。有機金属還元剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合活性を十分に高くできる。また、上限値以下にすることにより、副反応の発生を抑制することができる。
【0056】
重合体(α)の重合反応系は、活性調整剤を含んでいてもよい。活性調整剤を用いることで、開環重合触媒を安定化したり、開環重合反応の反応速度を調整したり、重合体の分子量分布を調整したりできる。
活性調整剤としては、官能基を有する有機化合物を用いうる。このような活性調整剤としては、例えば、含酸素化合物、含窒素化合物、含リン有機化合物等が挙げられる。
【0057】
含酸素化合物としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、フラン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エチルアセテート等のエステル類;等が挙げられる。
含窒素化合物としては、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、キヌクリジン、N,N−ジエチルアニリン等のアミン類;ピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2−t−ブチルピリジン等のピリジン類;等が挙げられる。
含リン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート等のホスフィン類;トリフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類;等が挙げられる。
【0058】
活性調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合体(α)の重合反応系における活性調整剤の量は、式(1)で示される金属化合物100モル%に対して、好ましくは0.01モル%〜100モル%である。
【0059】
重合体(α)の重合反応系は、重合体(α)の分子量を調整するために、分子量調整剤を含んでいてもよい。分子量調整剤としては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレート等の酸素含有ビニル化合物;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジエン;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン;等が挙げられる。
【0060】
分子量調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合体(α)を重合するための重合反応系における分子量調整剤の量は、目的とする分子量に応じて適切に決定しうる。分子量調整剤の具体的な量は、環状オレフィン単量体に対して、好ましくは0.1モル%〜50モル%の範囲である。
【0061】
重合温度は、好ましくは−78℃以上、より好ましくは−30℃以上であり、好ましくは+200℃以下、より好ましくは+180℃以下である。
重合時間は、反応規模に依存しうる。具体的な重合時間は、好ましくは1分間から1000時間の範囲である。
【0062】
上述した製造方法により、重合体(α)が得られる。この重合体(α)を水素化することにより、重合体(β)を製造することができる。
重合体(α)の水素化は、例えば、常法に従って水素化触媒の存在下で、重合体(α)を含む反応系内に水素を供給することによって行うことができる。この水素化反応において、反応条件を適切に設定すれば、通常、水素化反応により水素添加物のタクチシチーが変化することはない。
【0063】
水素化触媒としては、オレフィン化合物の水素化触媒として公知の均一系触媒及び不均一触媒を用いうる。
均一系触媒としては、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の、遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなる触媒;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の貴金属錯体触媒;等が挙げられる。
不均一触媒としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等の金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナ等の、前記金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に担持させてなる固体触媒が挙げられる。
水素化触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0064】
水素化反応は、通常、不活性有機溶媒中で行われる。不活性有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの脂環族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;等が挙げられる。不活性有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、不活性有機溶媒は、開環重合反応に用いた有機溶媒と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、開環重合反応の反応液に水素化触媒を混合して、水素化反応を行ってもよい。
【0065】
水素化反応の反応条件は、通常、用いる水素化触媒によっても異なる。
水素化反応の反応温度は、好ましくは−20℃以上、より好ましくは−10℃以上、特に好ましくは0℃以上であり、好ましくは+250℃以下、より好ましくは+220℃以下、特に好ましくは+200℃以下である。反応温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、反応速度を速くできる。また、上限値以下にすることにより、副反応の発生を抑制できる。
【0066】
水素圧力は、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.05MPa以上、特に好ましくは0.1MPa以上であり、好ましくは20MPa以下、より好ましくは15MPa以下、特に好ましくは10MPa以下である。水素圧力を前記範囲の下限値以上にすることにより、反応速度を速くできる。また、上限値以下にすることにより、高耐圧反応装置等の特別な装置が不要となり、設備コストを抑制できる。
【0067】
水素化反応の反応時間は、所望の水素添加率が達成される任意の時間に設定してもよく、好ましくは0.1時間〜10時間である。
水素化反応後は、通常、常法に従って、重合体(α)の水素添加物である重合体(β)を回収する。
【0068】
水素化反応における水素添加率(水素化された主鎖二重結合の割合)は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。水素添加率が高くなるほど、脂環式構造含有重合体の耐熱性を良好にできる。
ここで、重合体の水素添加率は、オルトジクロロベンゼン−dを溶媒として、145℃で、H−NMR測定により測定しうる。
【0069】
次に、重合体(γ)及び重合体(δ)の製造方法を説明する。
重合体(γ)及び(δ)の製造に用いる環状オレフィン単量体としては、重合体(α)及び重合体(β)の製造に用いうる環状オレフィン単量体として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。また、環状オレフィン単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0070】
重合体(γ)の製造においては、単量体として、環状オレフィン単量体に組み合わせて、環状オレフィン単量体と共重合可能な任意の単量体を用いうる。任意の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素原子数2〜20のα−オレフィン;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香環ビニル化合物;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン;等が挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0071】
環状オレフィン単量体と任意の単量体との量の割合は、重量比(環状オレフィン単量体:任意の単量体)で、好ましくは30:70〜99:1、より好ましくは50:50〜97:3、特に好ましくは70:30〜95:5である。
【0072】
環状オレフィン単量体を2種以上用いる場合、及び、環状オレフィン単量体と任意の単量体を組み合わせて用いる場合は、重合体(γ)は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0073】
重合体(γ)の合成には、通常、付加重合触媒を用いる。このような付加重合触媒としては、例えば、バナジウム化合物及び有機アルミニウム化合物から形成されるバナジウム系触媒、チタン化合物及び有機アルミニウム化合物から形成されるチタン系触媒、ジルコニウム錯体及びアルミノオキサンから形成されるジルコニウム系触媒等が挙げられる。また、付加重合体触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0074】
付加重合触媒の量は、単量体1モルに対して、好ましくは0.000001モル以上、より好ましくは0.00001モル以上であり、好ましくは0.1モル以下、より好ましくは0.01モル以下である。
【0075】
環状オレフィン単量体の付加重合は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒としては、環状オレフィン単量体の開環重合に用いうる有機溶媒として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。また、有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0076】
重合体(γ)を製造するための重合における重合温度は、好ましくは−50℃以上、より好ましくは−30℃以上、特に好ましくは−20℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、特に好ましくは150℃以下である。また、重合時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上であり、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下である。
【0077】
上述した製造方法により、重合体(γ)が得られる。この重合体(γ)を水素化することにより、重合体(δ)を製造することができる。
重合体(γ)の水素化は、重合体(α)を水素化する方法として先に示したものと同様の方法により、行いうる。
【0078】
結晶性樹脂において、結晶性を有する脂環式構造含有重合体の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。結晶性を有する脂環式構造含有重合体の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、本発明の樹脂フィルムの耐熱性を高めることができる。
【0079】
結晶性樹脂に含まれる脂環式構造含有重合体は、本発明の樹脂フィルムを製造するよりも前においては、結晶化していなくてもよい。しかし、本発明の樹脂フィルムが製造された後においては、当該樹脂フィルムを形成する結晶性樹脂が含む脂環式構造含有重合体は、通常、結晶化していることにより、高い結晶化度を有することができる。具体的な結晶化度の範囲は所望の性能に応じて適宜選択しうるが、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上である。樹脂フィルムに含まれる脂環式構造含有重合体の結晶化度を前記範囲の下限値以上にすることにより、樹脂フィルムに高い耐熱性や耐薬品性を付与することができる。
樹脂フィルムに含まれる脂環式構造含有重合体の結晶化度は、X線回折法によって測定しうる。
【0080】
結晶性樹脂は、結晶性を有する脂環式構造含有重合体に加えて、任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤;石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリアルキレンワックス等のワックス;ソルビトール系化合物、有機リン酸の金属塩、有機カルボン酸の金属塩、カオリン及びタルク等の核剤;ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、アゾール系誘導体(例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、及びベンゾチアソール誘導体)、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ナフタル酸誘導体、及びイミダゾロン誘導体等の蛍光増白剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;タルク、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維等の無機充填材;着色剤;難燃剤;難燃助剤;帯電防止剤;可塑剤;近赤外線吸収剤;滑剤;フィラー、及び、軟質重合体等の、結晶性を有する脂環式構造含有重合体以外の任意の重合体;などが挙げられる。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0081】
〔1.2.樹脂フィルムの物性〕
本発明の樹脂フィルムは、上述した結晶性樹脂からなる。結晶性樹脂からなる従来のフィルムは、一般に、結晶性樹脂のガラス転移温度以上の高温環境下での寸法安定性に劣る傾向があった。しかし、本発明の樹脂フィルムは、結晶性樹脂からなるフィルムでありながら、当該結晶性樹脂のガラス転移温度以上の高温環境下での寸法安定性に優れる。具体的には、本発明の樹脂フィルムは、150℃で1時間加熱した場合の熱寸法変化率の絶対値が、フィルム面内の任意の方向で、通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である。また、本発明の樹脂フィルムは、通常、高温環境下において収縮するので、前記の熱寸法変化率は通常は負の値となる。
【0082】
樹脂フィルムの熱寸法変化率は、下記の方法により測定しうる。
室温23℃の環境下で、樹脂フィルムを150mm×150mmの大きさの正方形に切り出し、試料フィルムとする。この試料フィルムを、150℃のオーブン内で60分間加熱し、23℃(室温)まで冷却した後、試料フィルムの四辺の長さ及び2本の対角線の長さを測定する。
測定された四辺それぞれの長さを基に、下記式(I)に基づいて、試料フィルムの熱寸法変化率を算出する。式(I)において、Lは、加熱後の試料フィルムの辺の長さを示す。
熱寸法変化率(%)=[(L−150)/150]×100 (I)
また、測定された2本の対角線の長さを基に、下記式(II)に基づいて、試料フィルムの熱寸法変化率を算出する。式(II)において、Lは、加熱後の試料フィルムの対角線の長さを示す。
熱寸法変化率(%)=[(L−212.13)/212.13]×100 (II)
そして、得られた6つの熱寸法変化率の計算値の中で絶対値が最大になる値を、樹脂フィルムの熱寸法変化率として採用する。
【0083】
本発明の樹脂フィルムは、透明性に優れることが好ましい。具体的には、本発明の樹脂フィルムの全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは88%以上である。
樹脂フィルムの全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm〜700nmの範囲で測定しうる。
【0084】
本発明の樹脂フィルムは、ヘイズが小さいことが好ましい。具体的には、本発明の樹脂フィルムのヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
樹脂フィルムのヘイズは、当該樹脂フィルムを選択した任意の部位で50mm×50mmの正方形の薄膜サンプルに切り出し、その後、薄膜サンプルについて、ヘイズメーターを用いて測定しうる。
【0085】
本発明の樹脂フィルムは、用途に応じて、レターデーションを有していてもよい。例えば、本発明の樹脂フィルムを位相差フィルム、光学補償フィルム等の光学フィルムとして用いる場合には、樹脂フィルムはレターデーションを有することが好ましい。
【0086】
本発明の樹脂フィルムの厚みは所望の用途に応じて適宜選択しうるが、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、好ましくは1mm以下、より好ましくは500μm以下、特に好ましくは200μm以下である。樹脂フィルムの厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより、適度の強度を得ることができる。また、上限値以下にすることにより、長尺のフィルムを製造する場合の巻取りを可能にすることができる。
【0087】
本発明の樹脂フィルムは、任意の用途に用いうる。中でも、本発明の樹脂フィルムは、例えば、光学等方性フィルム及び位相差フィルム等の光学フィルム、電気電子用フィルム、バリアフィルム用の基材フィルム、並びに、導電性フィルム用の基材フィルムとして好適である。前記の光学フィルムとしては、例えば、液晶表示装置用の位相差フィルム、偏光板保護フィルム、有機EL表示装置の円偏光板用の位相差フィルム、等が挙げられる。電気電子用フィルムとしては、例えば、フレキシブル配線基板、フィルムコンデンサー用絶縁材料、などが挙げられる。バリアフィルムとしては、例えば、有機EL素子用の基板、封止フィルム、太陽電池の封止フィルム、などが挙げられる。導電性フィルムとしては、例えば、有機EL素子や太陽電池のフレキシブル電極、タッチパネル部材、などが挙げられる。
【0088】
[2.樹脂フィルムの製造方法]
本発明の樹脂フィルムは、例えば、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む結晶性樹脂からなる第1フィルムを、第1フィルムの少なくとも二辺を保持して緊張させた状態で、脂環式構造含有重合体のガラス転移温度Tg以上、脂環式構造含有重合体の融点Tm以下の温度にして、結晶化フィルムを得る工程(結晶化工程)と;脂環式構造含有重合体のガラス転移温度Tg以上、脂環式構造含有重合体の融点Tm以下の温度で、結晶化フィルムを平坦に維持しながら、結晶化フィルムの緊張を緩和する工程(緩和工程)と;を含む製造方法によって、製造しうる。この製造方法によれば、高温環境下において収縮しうる結晶性樹脂を用いて樹脂フィルムを製造する場合に、本発明の樹脂フィルムを容易に製造できる。
以下、この製造方法について説明する。
【0089】
〔2.1.原反フィルムの用意〕
前記の製造方法では、第1フィルムとしての、原反フィルムを用意する工程を行う。原反フィルムは、結晶性樹脂からなるフィルムである。この原反フィルムは、例えば、射出成形法、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、注型成形法、圧縮成形法等の樹脂成型法によって製造しうる。これらの中でも、厚みの制御が容易であることから、押出成形法によって原反フィルムを製造することが好ましい。
【0090】
押出成形法によって原反フィルムを製造する場合、その押出成形法における製造条件は、好ましくは下記の通りである。シリンダー温度(溶融樹脂温度)は、好ましくはTm以上、より好ましくは「Tm+20」℃以上であり、好ましくは「Tm+100」℃以下、より好ましくは「Tm+50」℃以下である。また、キャストロール温度は、好ましくは「Tg−50」℃以上であり、好ましくは「Tg+70」℃以下、より好ましくは「Tg+40」℃以下である。さらに、冷却ロール温度は、好ましくは「Tg−70」℃以上、より好ましくは「Tg−50」℃以上であり、好ましくは「Tg+60」℃以下、より好ましくは「Tg+30」℃以下である。このような条件で原反フィルムを製造することにより、厚さ1μm〜1mmの原反フィルムを容易に製造できる。ここで、「Tm」は脂環式構造含有重合体の融点を表し、「Tg」は脂環式構造含有重合体のガラス転移温度を表す。
【0091】
また、前記のようにして製造された原反フィルムは、そのまま結晶化工程に供給してもよく、例えば延伸処理等の任意の処理を施してから結晶化工程に供給してもよい。
【0092】
原反フィルムの延伸方法に格別な制限は無く、任意の延伸方法を用いうる。例えば、原反フィルムを長手方向に一軸延伸する方法(縦一軸延伸法)、原反フィルムを幅方向に一軸延伸する方法(横一軸延伸法)等の、一軸延伸法;原反フィルムを長手方向に延伸すると同時に幅方向に延伸する同時二軸延伸法、原反フィルムを長手方向及び幅方向の一方に延伸した後で他方に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法;原反フィルムを幅方向に平行でもなく垂直でもない斜め方向に延伸する方法(斜め延伸法);などが挙げられる。
【0093】
前記の縦一軸延伸法としては、例えば、ロール間の周速の差を利用した延伸方法などが挙げられる。
また、前記の横一軸延伸法としては、例えば、テンター延伸機を用いた延伸方法などが挙げられる。
さらに、前記の同時二軸延伸法としては、例えば、ガイドレールに沿って移動可能に設けられ且つ原反フィルムを固定しうる複数のクリップを備えたテンター延伸機を用いて、クリップの間隔を開いて原反フィルムを長手方向に延伸すると同時に、ガイドレールの広がり角度により原反フィルムを幅方向に延伸する延伸方法などが挙げられる。
また、前記の逐次二軸延伸法としては、例えば、ロール間の周速の差を利用して原反フィルムを長手方向に延伸した後で、その原反フィルムの両端部をクリップで把持してテンター延伸機により幅方向に延伸する延伸方法などが挙げられる。
さらに、前記の斜め延伸法としては、例えば、原反フィルムに対して長手方向又は幅方向に左右異なる速度の送り力、引張り力又は引取り力を付加しうるテンター延伸機を用いて原反フィルムを斜め方向に連続的に延伸する延伸方法などが挙げられる。
【0094】
原反フィルムを延伸する場合の延伸温度は、脂環式構造含有重合体のガラス転移温度Tgに対し、好ましくは「Tg−30」℃以上、より好ましくは「Tg−10」℃以上であり、好ましくは「Tg+60」℃以下、より好ましくは「Tg+50」℃以下である。このような温度範囲で延伸を行うことにより、原反フィルムに含まれる重合体分子を適切に配向させることができる。
【0095】
原反フィルムを延伸する場合の延伸倍率は、所望の光学特性、厚み、強度などにより適宜選択しうるが、通常は1.1倍以上、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.5倍以上であり、通常は20倍以下、好ましくは10倍以下、より好ましくは5倍以下である。ここで、例えば二軸延伸法のように異なる複数の方向に延伸を行う場合、延伸倍率は各延伸方向における延伸倍率の積で表される総延伸倍率のことである。延伸倍率を前記範囲の上限値以下にすることにより、フィルムが破断する可能性を小さくできるので、樹脂フィルムの製造を容易に行うことができる。
【0096】
前記のような延伸処理を原反フィルムに施すことにより、所望の特性を有する樹脂フィルムを得ることができる。さらに、原反フィルムに延伸処理を施すことにより、結晶化工程における大きな結晶粒の発生を抑制できるので、結晶粒に起因する白化を抑制でき、そのため樹脂フィルムの透明性を高めることができる。
【0097】
原反フィルムの厚みは、樹脂フィルムの厚みに応じて任意に設定しうるものであり、通常は5μm以上、好ましくは10μm以上であり、通常は1mm以下、好ましくは500μm以下である。
【0098】
〔2.2.結晶化工程〕
原反フィルムを用意した後で、原反フィルム中に含まれる脂環式構造含有重合体を結晶化させるために、結晶化工程を行う。結晶化工程では、原反フィルムの少なくとも二辺を保持して緊張させた状態で所定の温度範囲にすることで、脂環式構造含有重合体を結晶化させる結晶化処理を行う。
【0099】
原反フィルムを緊張させた状態とは、原反フィルムに張力がかかった状態をいう。ただし、この原反フィルムを緊張させた状態には、原反フィルムが実質的に延伸される状態を含まない。また、実質的に延伸されるとは、原反フィルムのいずれかの方向への延伸倍率が通常1.1倍以上になることをいう。
【0100】
原反フィルムを保持する場合、適切な保持具によって原反フィルムを保持する。保持具は、原反フィルムの辺の全長を連続的に保持しうるものでもよく、間隔を空けて間欠的に保持しうるものでもよい。例えば、所定の間隔で配列された保持具によって原反フィルムの辺を間欠的に保持してもよい。
【0101】
結晶化工程において、原反フィルムは、当該原反フィルムの少なくとも二辺を保持されて緊張した状態にされる。これにより、保持された辺の間の領域において原反フィルムの熱収縮による変形が妨げられる。原反フィルムの広い面積において変形を妨げるためには、対向する二辺を含む辺を保持して、その保持された辺の間の領域を緊張した状態にすることが好ましい。例えば、矩形の枚葉の原反フィルムでは、対向する二辺(例えば、長辺同士、又は、短辺同士)を保持して前記二辺の間の領域を緊張した状態にすることで、その枚葉の原反フィルムの全面において変形を妨げることができる。また、長尺の原反フィルムでは、幅方向の端部にある二辺(即ち、長辺)を保持して前記二辺の間の領域を緊張した状態にすることで、その長尺の原反フィルムの全面において変形を妨げることができる。このように変形を妨げられた原反フィルムは、熱収縮によってフィルム内に応力が生じても、シワ等の変形の発生が抑制される。原反フィルムとして延伸処理を施された延伸フィルムを用いる場合は、延伸方向(二軸延伸の場合は延伸倍率が大きい方向)と直交する少なくとも二辺を保持することで変形の抑制がより確実なものとなる。
【0102】
結晶化工程における変形をより確実に抑制するためには、より多くの辺を保持することが好ましい。よって、例えば、枚葉の原反フィルムでは、その全ての辺を保持することが好ましい。具体例を挙げると、矩形の枚葉の原反フィルムでは、四辺を保持することが好ましい。
【0103】
原反フィルムの辺を保持しうる保持具としては、原反フィルムの辺以外の部分では原反フィルムと接触しないものが好ましい。このような保持具を用いることにより、より平滑性に優れる樹脂フィルムを得ることができる。
【0104】
また、保持具としては、保持具同士の相対的な位置を結晶化工程においては固定しうるものが好ましい。このような保持具は、結晶化工程において保持具同士の位置が相対的に移動しないので、結晶化工程における原反フィルムの実質的な延伸を抑制しやすい。
【0105】
好適な保持具としては、例えば、矩形の原反フィルム用の保持具として、型枠に所定間隔で設けられ原反フィルムの辺を把持しうるクリップ等の把持子が挙げられる。また、例えば、長尺の原反フィルムの幅方向の端部にある二辺を保持するための保持具としては、テンター延伸機に設けられ原反フィルムの辺を把持しうる把持子が挙げられる。
【0106】
長尺の原反フィルムを用いる場合、その原反フィルムの長手方向の端部にある辺(即ち、短辺)を保持してもよいが、前記の辺を保持する代わりに原反フィルムの結晶化処理を施される領域の長手方向の両側を保持してもよい。例えば、原反フィルムの結晶化処理を施される領域の長手方向の両側に、原反フィルムを熱収縮しないように保持して緊張させた状態にしうる保持装置を設けてもよい。このような保持装置としては、例えば、2つのロールの組み合わせ、押出機と引き取りロールとの組み合わせ、などが挙げられる。これらの組み合わせによって原反フィルムに搬送張力等の張力を加えることで、結晶化処理を施される領域において当該原反フィルムの熱収縮を抑制できる。そのため、前記の組み合わせを保持装置として用いれば、原反フィルムを長手方向に搬送しながら当該原反フィルムを保持できるので、樹脂フィルムの効率的な製造ができる。
【0107】
結晶化工程では、前記のように原反フィルムの少なくとも二辺を保持して緊張させた状態で、当該原反フィルムを、脂環式構造含有重合体のガラス転移温度Tg以上、脂環式構造含有重合体の融点Tm以下の温度にする。前記のような温度にされた原反フィルムにおいては、脂環式構造含有重合体の結晶化が進行する。そのため、この結晶化工程により、結晶化した脂環式構造含有重合体を含む結晶化フィルムが得られる。この際、結晶化フィルムの変形を妨げながら緊張した状態にしているので、結晶化フィルムの平滑性を損なうことなく、結晶化を進めることができる。
【0108】
結晶化工程における温度範囲は、前記のように、脂環式構造含有重合体のガラス転移温度Tg以上、脂環式構造含有重合体の融点Tm以下の温度範囲において任意に設定しうる。中でも、結晶化の速度が大きくなるような温度に設定することが好ましい。結晶化工程における原反フィルムの温度は、好ましくは「Tg+20」℃以上、より好ましくは「Tg+30」℃以上であり、好ましくは「Tm−20」℃以下、より好ましくは「Tm−40」℃以下である。結晶化工程における温度を前記範囲の上限以下にすることにより、樹脂フィルムの白濁を抑制できるので、光学フィルムとしての使用に適した樹脂フィルムが得られる。
【0109】
原反フィルムを前記のような温度にする場合、通常、原反フィルムの加熱を行う。この際に用いる加熱装置としては、加熱装置と原反フィルムとの接触が不要であることから、原反フィルムの雰囲気温度を上昇させうる加熱装置が好ましい。好適な加熱装置の具体例を挙げると、オーブン及び加熱炉が挙げられる。
【0110】
結晶化工程において、原反フィルムを前記の温度範囲に維持する処理時間は、好ましくは1秒以上、より好ましくは5秒以上であり、好ましくは30分以下、より好ましくは10分以下である。結晶化工程で、脂環式構造含有重合体の結晶化を十分に進行させることにより、樹脂フィルムの耐熱性を高めることができる。また、処理時間を前記範囲の上限以下にすることにより、樹脂フィルムの白濁を抑制できるので、光学フィルムとしての使用に適した樹脂フィルムが得られる。
【0111】
〔2.3.緩和工程〕
結晶化工程の後で、結晶化工程で得られた結晶化フィルムを熱収縮させ残留応力を除去するために、緩和工程を行う。緩和工程では、結晶化工程で得られた結晶化フィルムを平坦に維持しながら、所定の温度範囲で、前記結晶化フィルムの緊張を緩和する緩和処理を行う。
【0112】
結晶化フィルムの緊張を緩和する、とは、保持装置によって保持されて緊張した状態から結晶化フィルムを解放することをいい、結晶化フィルムが緊張していなければ結晶化フィルムが保持装置で保持されていてもよい。このように緊張が緩和されると、結晶化フィルムは熱収縮を生じうる状態となる。緩和工程では、結晶化フィルムに熱収縮を生じさせることによって、樹脂フィルムに加熱時において生じうる応力を解消している。そのため、本発明の樹脂フィルムの高温環境下での熱収縮を小さくできるので、高温環境下での寸法安定性に優れる樹脂フィルムが得られる。
【0113】
結晶化フィルムの緊張の緩和は、一時に行ってもよく、時間をかけて連続的又は段階的に行ってもよい。ただし、得られる樹脂フィルムの波打ち及びシワ等の変形の発生を抑制するためには、緊張の緩和は、連続的又は段階的に行うことが好ましい。
【0114】
前記の結晶化フィルムの緊張の緩和は、結晶化フィルムを平坦に維持しながら行う。ここで結晶化フィルムを平坦に維持する、とは、結晶化フィルムに波打ち及びシワといった変形を生じないように結晶化フィルムを平面形状に保つことをいう。これにより、得られる樹脂フィルムの波打ち及びシワ等の変形の発生を抑制できる。
【0115】
緩和処理の際の結晶化フィルムの処理温度は、脂環式構造含有重合体のガラス転移温度Tg以上、脂環式構造含有重合体の融点Tm以下の温度範囲において設定しうる。具体的な処理温度は、脂環式構造含有重合体の種類に応じて設定しうる。例えば、脂環式構造含有重合体としてジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物を用いる場合、好ましくは「Tg+20」℃以上、より好ましくは「Tg+30」℃以上であり、好ましくは「Tm−20」℃以下、より好ましくは「Tm−40」℃以下である。また、結晶化工程から冷却を経ずに引き続いて緩和工程を行う場合には、緩和工程における結晶化フィルムの処理温度は、結晶化工程での温度と同じであることが好ましい。これにより、緩和工程における結晶化フィルムの温度ムラを抑制したり、樹脂フィルムの生産性を高めたりできる。
【0116】
緩和工程において、結晶化フィルムを前記の温度範囲に維持する処理時間は、好ましくは1秒以上、より好ましくは5秒以上であり、好ましくは10分間以下である。処理時間を前記範囲の下限値以上にすることにより、本発明の樹脂フィルムの高温環境下での寸法安定性を効果的に高めることができる。また、上限値以下にすることにより、本発明の樹脂フィルムの高温環境下での寸法安定性を効果的に高めることができ、また、緩和工程における結晶化の進行による樹脂フィルムの白濁を抑制することができる。
【0117】
前記のような緩和工程において枚葉の結晶化フィルムに緩和処理を施す場合、例えば、その結晶化フィルムの四辺を保持しながら、保持部分の間隔を連続的又は段階的に狭める方法を採用しうる。この場合、結晶化フィルムの四辺において保持部分の間隔を同時に狭めてもよい。また、一部の辺において保持部分の間隔を狭めた後で、別の一部の辺の保持部分の間隔を狭めてもよい。さらに、一部の辺の保持部分の間隔を狭めないで維持してもよい。また、一部の辺の保持部分の間隔は連続的又は段階的に狭め、別の一部の辺の保持部分の間隔を一時に狭めてもよい。
【0118】
また、前記のような緩和工程において長尺の結晶化フィルムに緩和処理を施す場合、例えば、テンター延伸機を用いて、クリップを案内しうるガイドレールの間隔を結晶化フィルムの搬送方向において狭めたり、隣り合うクリップの間隔を狭めたりする方法が挙げられる。
【0119】
前記のように、結晶化フィルムを保持した状態で保持部分の間隔を狭めることで結晶化フィルムの緊張の緩和を行う場合、間隔を狭める程度は、結晶化工程において得られた結晶化フィルムに残留していた応力の大きさに応じて設定しうる。
例えば、原反フィルムとして延伸処理を施された延伸フィルムを用いる場合には、結晶化工程において得られた結晶化フィルムには大きな応力が残留する傾向がある。そのため、この結晶化フィルムの緊張を緩和するために間隔を狭める程度は、大きくすることが好ましい。また、例えば、原反フィルムとして延伸処理を施されていない未延伸フィルムを用いる場合には、結晶化工程において得られた結晶化フィルムには小さい応力が残留する傾向がある。そのため、この結晶化フィルムの緊張を緩和するために間隔を狭める程度は、小さくすることが好ましい。
【0120】
緩和工程において保持間隔を狭める程度は、緩和工程での結晶化フィルムの処理温度において結晶化フィルムに緊張を与えない状態での熱収縮率をS(%)とした場合に、通常0.1S以上、好ましくは0.5S以上、より好ましくは0.7S以上、また通常1.2S以下、好ましくは1.0S以下、より好ましくは0.95S以下である。また、例えば直交する2方向で熱収縮率Sが異なる場合のように、前記熱収縮率Sに異方性がある場合は、各々の方向について前記範囲内で保持間隔を狭める程度を定めうる。このような範囲にすることで、樹脂フィルムの残留応力を十分に除去し、かつ平坦性を維持させることができる。
【0121】
結晶化フィルムの熱収縮率Sは、下記の方法により測定しうる。
室温23℃の環境下で、結晶化フィルムを150mm×150mmの大きさの正方形に切り出し、試料フィルムとする。この試料フィルムを、緩和工程の処理温度と同じ温度に設定したオーブン内で60分間加熱し、23℃(室温)まで冷却した後、試料フィルムの熱収縮率Sを求めたい方向に平行な二辺の長さを測定する。
測定された二辺それぞれの長さを基に、下記式(III)に基づいて、試料フィルムの熱収縮率Sを算出する。式(III)において、Lは、加熱後の試料フィルムの測定した二辺の一方の辺の長さを示し、Lはもう一方の辺の長さを示す。
熱収縮率S(%)=[(300−L−L)/300]×100 (III)
【0122】
〔2.4.結晶化工程及び緩和工程の第一の例〕
以下、上述した結晶化工程及び緩和工程の第一の例について説明する。第一の例は、枚葉の原反フィルムを用いて枚葉の樹脂フィルムを製造する方法の例を示す。ただし、結晶化工程及び緩和工程は、この第一の例に限定されない。
【0123】
図1及び図2は、保持装置の例を模式的に示す平面図である。
図1に示すように、保持装置100は、枚葉の原反フィルム10を保持するための装置であって、型枠110と、型枠110に位置調整を可能に設けられた複数の保持具としてクリップ121、122、123及び124を備える。クリップ121、クリップ122、クリップ123及びクリップ124は、それぞれ、原反フィルム10の辺11、辺12、辺13及び辺14を把持しうるように設けられている。
【0124】
このような保持装置100を用いて結晶化工程を行う場合、保持装置100に、脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる原反フィルム10を取り付ける。具体的には、クリップ121〜124で原反フィルム10を把持することで、原反フィルム10の四辺11〜14を保持して緊張させた状態にする。そして、このように緊張した状態の原反フィルム10を、図示しないオーブンにより、原反フィルム10に含まれる脂環式構造含有重合体のガラス転移温度Tg以上、前記脂環式構造含有重合体の融点Tm以下の温度範囲に加熱する。
【0125】
これにより、原反フィルム10に含まれる脂環式構造含有重合体の結晶化が進行して、図2に示すように、結晶化フィルム20が得られる。この際、原反フィルム10の四辺11〜14が保持されて緊張した状態となっていたので、結晶化フィルム20には熱収縮による変形は生じない。そのため、通常は、結晶化フィルム20には、熱収縮を生じさせようとする応力が残留している。
【0126】
その後、前記のように製造された結晶化フィルム20には、緩和工程が行われる。前記の結晶化フィルム20は、結晶化工程が終わった時点においては、保持装置100のクリップ121、クリップ122、クリップ123及びクリップ124に、当該結晶化フィルム20の辺21、辺22、辺23及び辺24を保持されている。緩和工程では、この結晶化フィルム20を、引き続き脂環式構造含有重合体のガラス転移温度Tg以上、前記脂環式構造含有重合体の融点Tm以下の温度範囲に加熱した状態で、保持装置100のクリップ121〜124の間隔I121、I122、I123及びI124を狭める。これにより、結晶化フィルム20の熱収縮による寸法変化に追従するように、クリップ121〜124による結晶化フィルム20の保持部分の間隔は狭まる。そのため、結晶化フィルム20は、平坦に維持しながら緊張を緩和されて、枚葉の樹脂フィルムが得られる。
【0127】
こうして得られた樹脂フィルムでは、高温環境下における寸法変化の原因となり得るフィルム内の応力が解消されている。そのため、得られた樹脂フィルムにおいて、高温環境下での寸法安定性を向上させることができる。また、樹脂フィルムに含まれる脂環式構造含有重合体が結晶化されているので、この樹脂フィルムは、通常、耐熱性に優れる。
【0128】
〔2.5.結晶化工程及び緩和工程の第二の例〕
以下、上述した結晶化工程及び緩和工程の第二の例について説明する。第二の例は、長尺の原反フィルムを用いて長尺の樹脂フィルムを製造する方法の例を示す。ただし、結晶化工程及び緩和工程は、この第二の例に限定されない。
【0129】
図3は、樹脂フィルムの製造装置の例を模式的に示す正面図であり、図4は、樹脂フィルムの製造装置の例を模式的に示す平面図である。
図3及び図4に示すように、製造装置200は、保持装置としてのテンター延伸機300、搬送ロール410及び420、並びに、加熱装置としてのオーブン500を備える。
【0130】
図4に示すように、テンター延伸機300は、フィルム搬送路の左右両脇に設けられた無端状のリンク装置310及び320、前記のリンク装置310及び320を駆動するためのスプロケット330及び340を備える。また、前記のリンク装置310及び320は、それぞれ複数の保持具としてクリップ311及び321が設けられている。
【0131】
クリップ311及び321は、原反フィルム30の幅方向の端部の辺31及び32、結晶化フィルム40の幅方向の端部の辺41及び42、並びに、樹脂フィルム50の幅方向の端部の辺51及び52を把持することによって保持しうるように設けられている。また、これらのクリップ311及び321は、リンク装置310及び320の回転に伴って移動可能に設けられている。
【0132】
リンク装置310及び320は、スプロケット330及び340で駆動されることにより、フィルム搬送路の両脇に設けられた図示しないガイドレールで規定される周回軌道に沿って、矢印A310及びA320で示すように回転できるように設けられている。よって、リンク装置310及び320に設けられたクリップ311及び321は、フィルム搬送路の両脇において所望の周回軌道に沿って移動できる構成を有している。
【0133】
さらに、クリップ311及び321は、適切な任意の機構により、オーブン500の入り口510近傍において原反フィルム30の二辺31及び32を保持し、その保持した状態を維持したままでリンク装置310及び320の回転に伴ってフィルム搬送方向に移動し、オーブン500の出口520近傍において樹脂フィルム50を放すように設けられている。
【0134】
さらに、このテンター延伸機300は、フィルム搬送方向におけるクリップ311及び321の間隔WMD並びに幅方向におけるクリップ311及び321の間隔WTDを任意に調整できる構成を有している。ここに示す例では、パンタグラフ式のリンク装置310及び320を用いることによって、前記のようなクリップ311及び321の間隔WMD及びWTDを調整可能にした例を示す。
【0135】
図5及び図6は、前記のリンク装置310の一部分を模式的に示す平面図である。
図5及び図6に示すように、リンク装置310は、連結された複数のリンクプレート312a〜312dを備える。この例に示すリンク装置310では、これら複数のリンクプレート312a〜312dを輪状に連結させることにより、リンク装置310の形状を無端状にしている。
【0136】
また、リンク装置310は、軸受けローラー313a及び313bを備える。これらの軸受けローラー313a及び313bは、図示しないガイドレールによって形成される溝内を通りうるように設けられている。したがって、ガイドレールの軌道を調整することにより、そのガイドレールに沿って回転するリンク装置310の周回軌道を調整することができ、ひいては当該リンク装置310に設けられたクリップ311の走行軌道を調整できる。そのため、このリンク装置310は、ガイドレールの軌道を調整することにより、フィルム搬送方向の任意の位置で、幅方向におけるクリップ311の位置を変化させられる構成を有している。そして、このように幅方向におけるクリップ311の位置を変化させることにより、幅方向におけるクリップ311及び321の間隔WTDを変化させることが可能である。
【0137】
さらに、図5及び図6に示す通り、リンク装置310の一単位は、(a)外側の軸受けローラー313a及び内側の軸受けローラー313bの両方の上に支点を持ち、さらに内側に延長し、その内側端にクリップ311を有するリンクプレート312a;(b)リンクプレート312aと軸受けローラー313b上において共通する支点を有し、別の軸受けローラー313a上のもう一点の支点に延長するリンクプレート312b;(c)リンクプレート312bの支点間の部分に支点を有し、そこから内側に延長し、内側端にクリップ311を有するリンクプレート312c;並びに、(d)リンクプレート312cの内側端及び外側端との間に支点を有し、そこから外側に延長し、隣接する単位のリンクプレート312a上に支点を有するリンクプレート312d;を備える。ここで、外側とはフィルム搬送路から遠い側を表し、内側とはフィルム搬送路に近い側を表す。このようなリンク装置310では、ガイドローラの溝の間隔D1及びD2に応じて、リンクピッチを収縮状態と伸展状態との間で変化させることができる。そのため、このリンク装置310は、ガイドローラの溝の間隔D1及びD2を調整することにより、フィルム搬送方向における任意の位置で、フィルム搬送方向におけるクリップ311同士の間隔WMDを変化させられる構成を有している。
【0138】
また、もう一方のリンク装置320は、フィルム搬送路に対してリンク装置310とは反対側に設けられていること以外は、前述したリンク装置310と同様の構成を有している。そのため、リンク装置320も、リンク装置310と同様の要領で、フィルム搬送方向におけるクリップ321同士の間隔WMD及び幅方向におけるクリップ321の位置が調整可能な構成を有している。
【0139】
図3及び図4に示すように、フィルム搬送方向においてテンター延伸機300の両側には、搬送ロール410及び420が設けられている。テンター延伸機300の上流側に設けられた搬送ロール410は原反フィルム30を搬送しうるように設けられたロールであり、テンター延伸機300の下流側に設けられた搬送ロール420は樹脂フィルム50を搬送しうるように設けられたロールである。これらの搬送ロール410及び420は、搬送のために原反フィルム30に所定の搬送張力を与えうるように設けられている。したがって、これらの搬送ロール410及び420は、テンター延伸機300(原反フィルム30の結晶化処理を施される領域に相当する。)の長手方向の両側において、原反フィルム30を熱収縮しないように保持して緊張させた状態にしうる保持装置として機能できる。
【0140】
また、図4に示すように、オーブン500は隔壁530を備え、この隔壁530によってオーブン500内の空間は、上流の結晶化室540及び下流の緩和室550に区画されている。
【0141】
このような製造装置200を用いて樹脂フィルム50を製造する場合、脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる長尺の原反フィルム30を、搬送ロール410を経由してテンター延伸機300に供給する。
【0142】
テンター延伸機300へ送られた原反フィルム30は、図4に示すように、オーブン500の入り口510の近傍においてクリップ311及び321に把持されることにより、二辺31及び32をクリップ311及び321によって保持される。クリップ311及び321に保持された原反フィルム30は、前記のクリップ311及び321による保持、並びに、搬送ロール410及び420による保持によって、緊張した状態にされる。そして、原反フィルム30は、このように緊張した状態のままで、原反フィルム30は入り口510を通ってオーブン500内の結晶化室540に搬送される。
【0143】
結晶化室540において、原反フィルム30は、当該原反フィルム30に含まれる脂環式構造含有重合体のガラス転移温度Tg以上、前記脂環式構造含有重合体の融点Tm以下の温度範囲に加熱されて、結晶化工程が行われる。これにより、原反フィルム30に含まれる脂環式構造含有重合体の結晶化が進行して、結晶化フィルム40が得られる。この際、原反フィルム30の二辺31及び32が保持されて緊張した状態となっており、さらに搬送ロール410及び420による保持によっても緊張した状態となっているので、結晶化フィルム40には熱収縮による変形は生じない。そのため、通常は、結晶化フィルム40には、熱収縮を生じさせようとする応力が残留している。
【0144】
その後、製造された結晶化フィルム40は、二辺41及び42をクリップ311及び321で保持されたままで、オーブン500の緩和室550に送られる。緩和室550では、結晶化フィルム40を、引き続き脂環式構造含有重合体のガラス転移温度Tg以上、前記脂環式構造含有重合体の融点Tm以下の温度範囲に加熱した状態で、フィルム搬送方向におけるクリップ311及び321の間隔WMD並びに幅方向におけるクリップ311及び321の間隔WTDを狭める。これにより、結晶化フィルム40の熱収縮による寸法変化に追従するように、クリップ311及び321による結晶化フィルム40の保持部分の間隔は狭まる。そのため、結晶化フィルム40は、平坦に維持しながら緊張を緩和されて、長尺の樹脂フィルム50が得られる。
【0145】
樹脂フィルム50は、出口520を通ってオーブン500の外へ送り出される。そして、樹脂フィルム50は、オーブン500の出口520の近傍においてクリップ311及び321から放され、搬送ロール420を経由して送り出され、回収される。
【0146】
こうして得られた樹脂フィルム50では、高温環境下における寸法変化の原因となり得るフィルム内の応力が解消されている。そのため、得られた樹脂フィルム50において、高温環境下での寸法安定性を向上させることができる。また、樹脂フィルム50に含まれる脂環式構造含有重合体が結晶化されているので、この樹脂フィルム50は、通常、耐熱性に優れる。
【0147】
〔2.6.任意の工程〕
本発明の樹脂フィルムの製造方法では、上述した結晶化工程及び緩和工程に組み合わせて、更に任意の工程を行ってもよい。
例えば、得られた樹脂フィルムに表面処理を行ってもよい。
【0148】
[3.ナーリングフィルム]
本発明の樹脂フィルムは、高温環境下での寸法安定性に優れる。そこで、このように優れた性質を活かして、本発明の樹脂フィルムには、レーザー光によってナーリング処理を施してもよい。このようにナーリング処理を施された樹脂フィルムを、以下、「ナーリングフィルム」と呼ぶことがある。
【0149】
図7は、樹脂フィルム50にナーリング処理を施してナーリングフィルム60を製造する様子の一例を模式的に示す正面図である。
図7に示すように、ナーリングフィルム60を製造する場合には、矢印A50で示すように樹脂フィルム50を長手方向に連続的に搬送しながら、レーザー光照射装置600から樹脂フィルム50にレーザー光610を断続的に照射する。レーザー光610が樹脂フィルム50の表面53に照射されると、その表面53のレーザー光610が照射された領域において局所的に熱溶融又はアブレーションを生じる。これにより、レーザー光610を照射された領域に突起部61を形成できるので、この突起部61を有するナーリングフィルム60が得られる。この際、樹脂フィルム50が高温環境下での寸法安定性に優れるので、ナーリングフィルム60の波打ち及びシワの発生を抑制することができる。
【0150】
ナーリング処理を行う場合のレーザー光610の1回当たりの照射時間は、好ましくは0.001ms以上、より好ましくは0.005ms以上、さらに好ましくは0.01ms以上であり、好ましくは0.5ms以下、より好ましくは0.3ms以下、さらに好ましくは0.1ms以下である。レーザー光610の照射時間をこの範囲とすることで、好適な大きさの突起部61を容易に形成できる。
【0151】
レーザー光610としては、例えば、ArFエキシマレーザー光、KrFエキシマレーザー光、XeClエキシマレーザー光、YAGレーザーの第3高調波若しくは第4高調波、YLF若しくはYVOの固体レーザーの第3高調波若しくは第4高調波、Ti:Sレーザー光、半導体レーザー光、ファイバーレーザー光、炭酸ガスレーザー光等を使用しうる。これらの中でも、高出力による生産性向上の観点から、炭酸ガスレーザー光が好ましい。
【0152】
レーザー光610の出力は、好ましくは1W以上、より好ましくは5W以上、さらに好ましくは15W以上であり、好ましくは30W以下、より好ましくは25W以下である。レーザー光610の出力を前記範囲の下限値以上にすることにより、レーザー光610の照射量が不足するのを防止して、突起部61を安定して形成することができる。また、レーザー光610の出力を前記範囲の上限値以下にすることにより、樹脂フィルム50に貫通孔が生じるのを防止でき、また、突起部61の意図しない拡大を抑制できる。
【0153】
レーザー光610の集光径(即ち、レーザー光610を照射する領域の1か所当たりの直径)は、突起部61の径に応じて設定しうる。通常、レーザー光610の集光径は、突起部61の径よりも小さく設定する。具体的な集光径は、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下である。
【0154】
前記のようなレーザー光610の照射によるナーリング処理によれば、厚みの薄い樹脂フィルム50においても、突起部61の形成時の樹脂フィルム50の破断を防止することができる。また、樹脂フィルム50を屈曲させても、突起部61で破断が生じ難い。これは、レーザー光で突起部61を形成するようにすれば、樹脂フィルム50に対し不要な押圧が加わらず、樹脂フィルム50に残留応力が残りにくいことに起因すると推察される。
また、レーザー光610の照射によるナーリング処理によれば、樹脂フィルム50に対し摩耗及び汚染を発生させることなく突起部61を形成できる。
【0155】
図8は、ナーリングフィルム60の一例を模式的に示す平面図である。
図8に示すように、通常、突起部61は、ナーリングフィルム60の幅方向の端部に形成する。したがって、ナーリングフィルム60は、当該ナーリングフィルム60の幅方向の両端部に、突起部61を形成された帯状の領域62及び63を有する。この領域62及び63の幅W62及びW63は、1.0mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、3.0mm以上が特に好ましく、また、12mm以下が好ましく、11mm以下がより好ましく、10mm以下が特に好ましい。突起部61を形成された領域62及び63の幅W62及びW63を前記範囲の下限値以上とすることにより、ナーリングフィルム60の巻きずれを安定して防止でき、また、上限値以下とすることにより、突起部61を有さない有効領域の大きさを広く確保して、製造コストを安価にできる。
【0156】
突起部61の平均高さは、ナーリングフィルムの厚みが約20μm以上の場合は、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、2.0μm以上が特に好ましく、また、5.0μm以下が好ましく、4.5μm以下がより好ましく、4.0μm以下が特に好ましい。ナーリングフィルムの厚みが20μmを下回る場合は、好ましくはナーリングフィルムの厚みの2.5%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上であり、好ましくは25%以下、より好ましくは22.5%以下、さらに好ましくは20%以下である。突起部61の平均高さを前記範囲の下限値以上とすることにより、樹脂フィルム50の巻きずれ、巻きこみ、厚みムラに起因する外観不良などを効果的に抑制でき、また、上限値以下とすることにより、クラックを安定して防止できる。
【0157】
突起部61の径は、好ましくは150μm以上、より好ましくは200μm以上、特に好ましくは250μm以上であり、好ましくは600μm以下、より好ましくは550μm以下、特に好ましくは500μm以下である。突起部61の径を前記範囲の下限値以上とすることにより、突起部61を形成した効果を安定して発揮することができ、また、上限値以下とすることにより、突起部61への局所的な応力集中を回避することができる。
【0158】
また、レーザー光610によるナーリング処理では、通常、突起部61の中央部に窪みが形成される。この窪みの深さは、ナーリングフィルムの厚みの2%以上が好ましく、4%以上がより好ましく、8%以上が特に好ましく、また、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、30%以下が特に好ましい。窪みの深さを前記の範囲にすることにより、突起部61を形成した効果を安定して発揮させることができるので、ナーリングフィルム60を巻き取ったロールの外観を良好にできる。
【0159】
ナーリングフィルム60の長手方向における突起部61の間隔は、3.0mm以上が好ましく、3.5mm以上がより好ましく、4.0mm以上が特に好ましく、また、7.0mm以下が好ましく、6.5mm以下がより好ましく、6.0mm以下が特に好ましい。長手方向における突起部61の間隔を前記範囲の下限値以上とすることにより、ナーリングフィルム60のブロッキングを安定して抑制でき、また、上限値以下とすることにより、突起部61への応力集中によるクラックを抑制できる。
【0160】
ナーリングフィルム60の幅方向における突起部61の間隔は、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、1.5mm以上が特に好ましく、また、6.0mm以下が好ましく、5.5mm以下がより好ましく、5.0mm以下が特に好ましい。幅方向における突起部61の間隔を前記範囲の下限値以上とすることにより、ナーリングフィルム60のブロッキングを安定して抑制でき、また、上限値以下とすることにより、突起部61への応力集中によるクラックを抑制できる。
【0161】
[4.バリアフィルム]
本発明の樹脂フィルムは、前記のように、高温環境下での寸法安定性に優れる。そのため、無機層の形成工程などのような高温プロセスを含む成膜工程を実施した場合に、良好な成膜が可能である。具体的には、高温プロセスにおいて搬送される樹脂フィルムの挙動を安定させたり、高温環境による樹脂フィルムへの熱ダメージを抑制したりできるので、平坦かつ均一な層を形成することができる。
【0162】
そこで、このように優れた性質を活かして、本発明の樹脂フィルムをバリアフィルムの基材フィルムとして用いてもよい。このバリアフィルムは、本発明の樹脂フィルムと、この樹脂フィルム上に直接又は間接的に設けられたバリア層とを備える複層構造のフィルムである。通常、樹脂フィルムはバリア層との密着性に優れるので、バリア層は、樹脂フィルムの表面に直接に設けることができるが、必要に応じて平坦化層などの下地層を介して設けてもよい。
【0163】
バリア層の材料としては、例えば、無機材料を用いうる。このような無機材料の例としては、金属酸化物、金属窒化物、金属酸化窒化物、及びこれらの混合物を含む材料が挙げられる。金属酸化物、金属窒化物、及び金属酸化窒化物を構成する金属の例としては、珪素、アルミニウムが挙げられ、特に珪素が好ましい。より具体的には、金属酸化物、金属窒化物、及び金属酸化窒化物の組成の例としては、それぞれSiOx(1.5<x<1.9)、SiNy(1.2<y<1.5)、及びSiOxNy(1<x<2および0<y<1)で表される組成が挙げられる。このような材料を用いることにより、透明性及びバリア性に優れたバリアフィルムが得られる。
【0164】
バリア層の厚みは、好ましくは3nm以上、より好ましくは10nm以上であり、好ましくは2000nm以下、より好ましくは1000nm以下である。
バリア層の水蒸気透過率は、その上限が、0.1g/m・day以下であることが好ましく、0.01g/m・day以下であることがより好ましい。
【0165】
バリアフィルムは、本発明の樹脂フィルム上にバリア層を形成する工程を含む製造方法によって製造しうる。バリア層の形成方法は、特に限定されず、例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト蒸着法、アーク放電プラズマ蒸着法、熱CVD法、プラズマCVD法等の成膜方法により形成しうる。アーク放電プラズマ法では、適度なエネルギーを有する蒸発粒子が生成され、高密度のバリア層を形成することができる。また、複数種類の成分を同時に蒸着又はスパッタリングすることで、これら複数の成分を含むバリア層を形成することができる。
【0166】
前記のようなバリアフィルムの製造方法の具体例を、それを行う装置の例を参照して説明する。図9は、バリア層をCVD法により無機層として成膜しうる成膜装置の一例を模式的に示す断面図である。
図9に示すように、成膜装置700は、フィルム巻き取り式のプラズマCVD装置であり、長尺の樹脂フィルム50のロール体701から繰り出される樹脂フィルム50に、CVD法にてバリア層を連続的に成膜してバリアフィルム70を得て、このバリアフィルム70をロール体702として巻き取る一連の操作を行う。
【0167】
成膜装置700は、ガイドロール711、キャンロール712、及びガイドロール713を有し、これにより、繰り出された樹脂フィルム50を矢印A1で示される向きに導き、製造工程に供することができる。ガイドロール711、キャンロール712、及びガイドロール713の位置及びこれらが樹脂フィルム50に賦与する張力を適宜調整することにより、樹脂フィルム50は、キャンロール712により導かれる間、キャンロール712に密着した状態とされる。
【0168】
キャンロール712は、矢印A2で示す方向に回転し、その上の樹脂フィルム50は、反応管721に近づいた状態で搬送される。その際、電源723から電極722に電力を印加し、一方、キャンロール712を適切な接地手段(不図示)により接地し、かつガス導入口724から矢印A3の方向にバリア層の材料のガスを導入する。これにより、樹脂フィルム50の面上にバリア層を連続的に形成することができる。かかる一連の操作は、真空槽790で囲繞された空間内で行なわれる。真空槽790内の圧力は、真空排気装置730を操作することにより減圧し、CVD法に適した圧力に調整しうる。
【0169】
このような工程を高出力で実施した場合、仮に樹脂フィルム50が高温環境下での寸法安定性に劣ると、キャンロール212からの樹脂フィルム50の浮きが発生したり、樹脂フィルム50の変形が生じたりしやすいので、良好なバリア層の連続的な形成が困難となる可能性がある。しかし、本発明の樹脂フィルム50は、高温環境下での寸法安定性に優れるので、前記のような浮きが発生し難い。そのため、本発明の樹脂フィルム50を用いれば、平坦かつ均一なバリア層を連続的に形成できるので、バリアフィルム70の効率の良い製造が可能である。また、本発明の樹脂フィルム50は耐熱性に優れるので、樹脂フィルム50への熱ダメージを抑制できる。そのため、水蒸気透過率の小さいバリアフィルム70を容易に製造できる。
【0170】
また、前記のバリアフィルムは、樹脂フィルム及びバリア層に組み合わせて任意の層を備えうる。このような任意の層の例としては、帯電防止層、ハードコート層、及び汚染防止層等が挙げられる。これらの任意の層は、例えば、バリア層上に任意の層の材料を塗布し硬化させる方法、又は、熱圧着により貼付する方法などの方法により設けうる。
【0171】
[5.導電性フィルム]
本発明の樹脂フィルムは、前記のように、高温環境下での寸法安定性に優れるので、無機層の形成工程などのような高温プロセスを含む成膜工程を実施した場合に、良好な成膜が可能である。
そこで、このように優れた性質を活かして、本発明の樹脂フィルムを導電性フィルムの基材フィルムとして用いてもよい。この導電性フィルムは、本発明の樹脂フィルムと、この樹脂フィルム上に直接又は間接的に設けられた導電性層とを備える複層構造のフィルムである。通常、樹脂フィルムは導電性層との密着性に優れるので、導電性層は、樹脂フィルムの表面に直接に設けることができるが、必要に応じて平坦化層などの下地層を介して設けてもよい。
【0172】
導電性層の材料としては、例えば、導電性の無機材料を用いうる。中でも、透明な導電性層を実現しうる材料を用いることが好ましい。このような無機材料の例としては、ITO(インジウム錫オキサイド)、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、ZnO(酸化亜鉛)、IWO(インジウムタングステンオキサイド)、ITiO(インジウムチタニウムオキサイド)、AZO(アルミニウム亜鉛オキサイド)、GZO(ガリウム亜鉛オキサイド)、XZO(亜鉛系特殊酸化物)、IGZO(インジウムガリウム亜鉛オキサイド)などが挙げられる。
【0173】
導電性層の厚みは、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上であり、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下である。
【0174】
導電性層を形成することにより、得られる導電性フィルムに電極としての機能を付与しうる。このような導電性フィルムの導電性層側の面の表面抵抗率は、使用する目的に応じて適宜選択しうるが、通常は1000Ω/sq以下、好ましくは100Ω/sq以下である。
【0175】
導電性フィルムは、本発明の樹脂フィルム上に導電性層を形成する工程を含む製造方法によって製造しうる。導電性層の形成方法は、特に限定されず、例えば、スパッタリング法、蒸着法等の成膜方法により形成しうる。上述したように、本発明の樹脂フィルムは高温環境下での寸法安定性及び耐熱性に優れるので、高出力での成膜を行うことができ、そのため平坦で導電性に優れた導電性層を迅速に成膜できる。
【0176】
また、前記の導電性フィルムは、樹脂フィルム及び導電性層に組み合わせて、光学機能層やバリア層など任意の層を備えうる。
【実施例】
【0177】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。さらに、以下の説明において、「sccm」は気体の流量の単位であり、1分間当たりに流れる気体の量を、その気体が25℃、1atmである場合の体積(cm)で示す。
【0178】
[評価方法]
〔重量平均分子量及び数平均分子量の測定方法〕
重合体の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム(東ソー社製「HLC−8320」)を用いて、ポリスチレン換算値として測定した。測定の際、カラムとしてはHタイプカラム(東ソー社製)を用い、溶媒としてはテトラヒドロフランを用いた。また、測定時の温度は、40℃であった。
【0179】
〔ガラス転移温度Tgおよび融点Tmの測定方法〕
窒素雰囲気下で300℃に加熱した試料を液体窒素で急冷し、示差操作熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温して試料のガラス転移温度Tgおよび融点Tmをそれぞれ求めた。
【0180】
〔重合体の水素添加率の測定方法〕
重合体の水素添加率は、オルトジクロロベンゼン−dを溶媒として、145℃で、H−NMR測定により測定した。
【0181】
〔重合体のラセモ・ダイアッドの割合の測定方法〕
オルトジクロロベンゼン−dを溶媒として、200℃で、inverse−gated decoupling法を適用して、重合体の13C−NMR測定を行った。この13C−NMR測定の結果から、オルトジクロロベンゼン−dの127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルとの強度比に基づいて、重合体のラセモ・ダイアッドの割合を求めた。
【0182】
〔フィルムの全光線透過率の測定方法〕
フィルムの全光線透過率は、紫外・可視分光計(JASCO社製「V−550」)を用いて、波長400nm〜700nmの範囲で測定した。
【0183】
〔フィルムのヘイズの測定方法〕
フィルムを選択した任意の部位で50mm×50mmの正方形の薄膜サンプルに切り出した。その後、薄膜サンプルについて、ヘイズメーター(日本電色工業社製「NDH5000」)を用いてヘイズを測定した。
【0184】
〔フィルムの熱寸法変化率の測定方法〕
室温23℃の環境下で、フィルムを150mm×150mmの大きさの正方形に切り出し、試料フィルムとした。この試料フィルムを、150℃のオーブン内で60分間加熱し、23℃(室温)まで冷却した後、試料フィルムの四辺の長さ及び2本の対角線の長さを測定した。
【0185】
測定された四辺それぞれの長さを基に、下記式(I)に基づいて、試料フィルムの熱寸法変化率を算出した。式(I)において、Lは、加熱後の試料フィルムの辺の長さを示す。
熱寸法変化率(%)=[(L−150)/150]×100 (I)
【0186】
また、測定された2本の対角線の長さを基に、下記式(II)に基づいて、試料フィルムの熱寸法変化率を算出した。式(II)において、Lは、加熱後の試料フィルムの対角線の長さを示す。
熱寸法変化率(%)=[(L−212.13)/212.13]×100 (II)
【0187】
そして、得られた6つの熱寸法変化率の計算値の中で絶対値が最大となる値を、フィルムの熱寸法変化率として採用した。
【0188】
〔結晶化フィルムの熱収縮率Sの測定方法〕
室温23℃の環境下で、結晶化フィルムを150mm×150mmの大きさの正方形に切り出し、試料フィルムとした。この試料フィルムを、緩和工程の処理温度と同じ温度に設定したオーブン内で60分間加熱し、23℃(室温)まで冷却した後、試料フィルムの熱収縮率Sを求めたい方向に平行な二辺の長さを測定した。
測定された二辺それぞれの長さを基に、下記式(III)に基づいて、試料フィルムの熱収縮率Sを算出した。式(III)において、Lは、加熱後の試料フィルムの測定した二辺の一方の辺の長さを示し、Lはもう一方の辺の長さを示す。
熱収縮率S(%)=[(300−L−L)/300]×100 (III)
【0189】
〔フィルムのレーザー加工性の評価方法〕
フィルムを30mm×30mmの大きさの正方形に切り出して、試料フィルムを得た。この試料フィルムの中央20mm×20mmの領域に、レーザー光を照射して、複数の突起部を形成した。この際、レーザー光の照射装置としては、COレーザー光照射装置(キーエンス社製「MLZ9510」、レーザー波長10.6μm)を用いた。また、レーザー光の照射強度は、20Wにした。さらに、一回当たりのレーザー光の照射時間、及び、レーザー光が試料フィルムに当たる範囲の大きさは、直径200μmの点状の突起が得られるように調整した。
このようにして、試料フィルムに、縦方向及び横方向の各々で4mm間隔で6列、合計36個の点状の突起部を形成した。
【0190】
次いで、試料フィルムのレーザー光を照射した側の面を上にして、試料フィルムを平らなステージ上に置いた。この試料フィルムの上に、厚さ1.2mm、縦50mm×横50mmの大きさのガラス板を置いた。この状態で、形成された各々の突起部での試料フィルムの厚み(即ち、ステージから突起部の最頂部までの高さ)を、超深度顕微鏡(キーエンス社製「VK−9500」)を用いて測定した。こうして得られた測定値の最大値と最小値の差を求め、この差をレーザー光の照射によるフィルムの変形量として得た。
この変化量は、レーザー光を吸収したフィルムに発生する熱によってフィルムが局所的に収縮した場合に、当該フィルムの屈曲により平坦性がどの程度失われるかを表す。したがって、前記の変化量が小さいほど、フィルムのレーザー加工性が優れていることを示す。
【0191】
[製造例1.ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物の製造]
金属製の耐圧反応器を、充分に乾燥した後、窒素置換した。この金属製耐圧反応器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の濃度70%シクロヘキサン溶液42.8部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、及び1−ヘキセン1.9部を加え、53℃に加温した。
【0192】
テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエンに溶解した溶液に、濃度19%のジエチルアルミニウムエトキシド/n−ヘキサン溶液0.061部を加えて10分間攪拌して、触媒溶液を調製した。
この触媒溶液を耐圧反応器に加えて、開環重合反応を開始した。その後、53℃を保ちながら4時間反応させて、ジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液を得た。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、8,750および28,100であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
【0193】
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部に、停止剤として1,2−エタンジオール0.037部を加えて、60℃に加温し、1時間攪拌して重合反応を停止させた。ここに、ハイドロタルサイト様化合物(協和化学工業社製「キョーワード(登録商標)2000」)を1部加えて、60℃に加温し、1時間攪拌した。その後、濾過助剤(昭和化学工業社製「ラヂオライト(登録商標)#1500」)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(ADVANTEC東洋社製「TCP−HX」)を用いて吸着剤と溶液を濾別した。
【0194】
濾過後のジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部(重合体量30部)に、シクロヘキサン100部を加え、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加して、水素圧6MPa、180℃で4時間水素化反応を行なった。これにより、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物を含む反応液が得られた。この反応液は、水素添加物が析出してスラリー溶液となっていた。
【0195】
前記の反応液に含まれる水素添加物と溶液とを、遠心分離器を用いて分離し、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物28.5部を得た。この水素添加物の水素添加率は99%以上、ガラス転移温度Tgは93℃、融点(Tm)は262℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。
【0196】
[製造例2.未延伸フィルムの製造]
製造例1で得たジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン;BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)1.1部を混合して、フィルムの材料となる樹脂を得た。
【0197】
前記の樹脂を、内径3mmΦのダイ穴を4つ備えた二軸押出機(東芝機械社製「TEM−37B」)に投入した。前記の二軸押出機によって、樹脂を熱溶融押出成形によりストランド状の成形体に成形した。この成形体をストランドカッターにて細断して、樹脂のペレットを得た。前記の二軸押出機の運転条件を、以下に示す。
・バレル設定温度:270℃〜280℃
・ダイ設定温度:250℃
・スクリュー回転数:145rpm
・フィーダー回転数:50rpm
【0198】
引き続き、得られたペレットを、Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機に供給した。このフィルム成形機を用いて、前記の樹脂からなる長尺の未延伸フィルム(厚み150μm、幅120mm)を、2m/分の速度でロールに巻き取る方法にて製造した。前記のフィルム成形機の運転条件を、以下に示す。
・バレル温度設定:280℃〜290℃
・ダイ温度:270℃
・スクリュー回転数:30rpm
得られた未延伸フィルムのヘイズを測定したところ、0.3%であった。
【0199】
[実施例1]
〔1−1.延伸工程〕
製造例2で得た長尺の未延伸フィルムを、任意の部位で90mm×90mmの正方形に切り出した。この切り出しは、切り出された未延伸フィルムの正方形の辺が長尺の未延伸フィルムの長手方向又は幅方向に平行になるように行った。そして、切り出された未延伸フィルムを、小型延伸機(東洋精機製作所社製「EX10―Bタイプ」)に設置した。この小型延伸機は、フィルムの四辺を把持しうる複数のクリップを備え、このクリップを移動させることによってフィルムを延伸できる構造を有している。この小型延伸機を用いて、未延伸フィルムを、長尺の未延伸フィルムの長手方向に対応する縦方向へ延伸倍率2倍で延伸し、その後、長尺の未延伸フィルムの幅方向に対応する横方向へ延伸倍率2倍で延伸して、原反フィルムとして延伸フィルムを得た。小型延伸機の運転条件を、以下に示す。
・延伸速度:10000mm/min
・延伸温度:100℃
【0200】
〔1−2.結晶化工程〕
原反フィルムの四辺を固定しうるSUS製の枠を用意した。この枠に前記の原反フィルムの四辺を保持させることで、原反フィルムを緊張した状態にした。そして、この原反フィルムに、200℃で30秒間、オーブン内で加熱処理を行うことにより、原反フィルムに含まれるジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物を結晶化させる結晶化工程を行って、結晶化フィルムを得た。
得られた結晶化フィルムのヘイズを測定したところ、ヘイズは0.4%であった。また、温度200℃での熱収縮率Sを前述の方法で測定したところ、結晶化フィルムの縦方向は3.2%、横方向は4.1%であった。
【0201】
〔1−3.緩和工程〕
こうして得た結晶化フィルムの四辺を前記の小型延伸装置のクリップに把持させることにより、結晶化フィルムを小型延伸機に取り付けた。そして、温度200℃において、結晶化フィルムを平坦に維持しながら結晶化フィルムの緊張を緩和する緩和工程を行って、樹脂フィルムを得た。この緩和工程では、小型延伸装置のクリップを結晶化フィルムの面内方向に移動させることで、クリップ間距離を縮小させることにより、結晶化フィルムの緊張を緩和させた。また、前記のクリップ間距離は、30秒間をかけて、結晶化フィルムの縦方向に3.0%、結晶化フィルムの横方向に4.0%縮小させた。
こうして得た樹脂フィルムの熱寸法変化率、及び、レーザー光の照射によるフィルムの変形量を、前述した方法によって測定した。
【0202】
〔1−4.バリアフィルムの製造工程〕
樹脂フィルムの片面にCVD法でバリア層を形成しうる成膜装置を用意した。この成膜装置は、図9に示した成膜装置と同様に、当該装置内を搬送されるフィルムの表面に所望のバリア層を形成しうるフィルム巻き取り式のプラズマCVD装置である。ただし、ここで使用する成膜装置は、枚葉の樹脂フィルムにバリア層を形成するため、キャリアフィルムに固定された樹脂フィルムにバリア層を形成しうる構造を有している。具体的には、用意された成膜装置は、当該装置内を連続的に搬送される長尺のキャリアフィルム上に樹脂フィルムを固定した場合に、その樹脂フィルムの表面に所望のバリア層を形成しうる構造を有している。また、キャリアフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。
【0203】
得られた樹脂フィルムを、100mm×100mmの大きさの正方形に切り出した。切り出した樹脂フィルムをキャリアフィルムにポリイミドテープで固定した。そして、このキャリアフィルムを前記の成膜装置に供給し、樹脂フィルムの片面にバリア層を形成した。この際の成膜条件は、テトラメチルシラン(TMS)流量10sccm、酸素(O)流量100sccm、出力0.8kW、全圧5Pa、フィルム搬送速度0.5m/minとし、RFプラズマ放電により成膜を行った。
【0204】
その結果、SiOxからなる厚さ300nmのバリア層が、樹脂フィルムの片面に形成されて、バリア層及び樹脂フィルムを備えるバリアフィルムが得られた。
こうして得られたバリアフィルムについて、下記の方法で、成膜適正、カール量及び密着性を評価した。
【0205】
(バリア層の成膜適正の評価方法)
得られたバリアフィルムの面状を観察し、下記の評価基準に従って、製膜適性を評価した。
良・・・フィルム面が平坦又は単純なカールのみで、シワ及び波打ちなどの変形がない。
不良・・・フィルム面にシワ及び波打ちなどの変形を生じている。
【0206】
(バリアフィルムのカール量の評価方法)
得られたバリアフィルムを平らなステージ上に、バリア層側を下にして置いた。ステージから浮き上がったバリアフィルムの4隅の角の、ステージからの高さを測定した。測定された高さの測定値の平均を、カール量とした。
【0207】
(バリア層と樹脂フィルムとの密着性の評価方法)
得られたバリアフィルムについて、JIS K5400に準じて、1mm角100個の碁盤目試験を行い、セロハンテープ(JIS Z1522に規定されるもの)によりバリア層の剥離状態を確認した。この際、バリア層側に貼り付けたセロハンテープを剥離した時に、バリア層が樹脂フィルムから剥がれなかった碁盤目の数を数えた。バリア層が樹脂フィルムから剥がれなかった碁盤目の数が多いほど、バリア層と樹脂フィルムとの密着性に優れることを示す。
【0208】
〔1−5.導電性フィルムの製造工程〕
樹脂フィルムの片面にスパッタ法で導電性層を形成しうる成膜装置を用意した。この成膜装置は、当該装置内を連続的に搬送される長尺のキャリアフィルム上に固定された樹脂フィルムの表面に、所望の導電性層を形成しうるフィルム巻き取り式のマグネトロンスパッタリング装置である。また、キャリアフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。
【0209】
得られた樹脂フィルムを、100mm×100mmの大きさの正方形に切り出した。切り出した樹脂フィルムをキャリアにポリイミドテープで固定した。そして、このキャリアフィルムを成膜装置に供給し、樹脂フィルムの片面に導電性層を形成した。この際、スパッタリングのターゲットとしては、In−SnOセラミックターゲットを用いた。また、成膜条件は、アルゴン(Ar)流量150sccm、酸素(O)流量10sccm、出力4.0kw、真空度0.3Pa、フィルム搬送速度0.5m/minとした。
【0210】
その結果、ITOからなる厚さ100nmの透明な導電性層が、樹脂フィルムの片面に形成されて、導電性層及び樹脂フィルムを備える導電性フィルムが得られた。
こうして得られた導電性フィルムについて、下記の方法で、成膜適正、カール量及び密着性を評価した。
【0211】
(導電性層の成膜適正の評価方法)
得られた導電性フィルムの面状を観察し、下記の評価基準に従って、製膜適性を評価した。
良・・・フィルム面が平坦又は単純なカールのみで、シワ及び波打ちなどの変形がない。
不良・・・フィルム面にシワ及び波打ちなどの変形を生じている。
【0212】
(導電性フィルムのカール量の評価方法)
得られた導電性フィルムを平らなステージ上に、導電性層側を下にして置いた。ステージから浮き上がった導電性フィルムの4隅の角の、ステージからの高さを測定した。測定された高さの測定値の平均を、カール量とした。
【0213】
(導電性層と樹脂フィルムとの密着性の評価方法)
得られた導電性フィルムについて、JIS K5400に準じて、1mm角100個の碁盤目試験を行い、セロハンテープ(JIS Z1522に規定されるもの)により導電性層の剥離状態を確認した。この際、導電性層側に貼り付けたセロハンテープを剥離した時に、導電性層が樹脂フィルムから剥がれなかった碁盤目の数を数えた。導電性層が樹脂フィルムから剥がれなかった碁盤目の数が多いほど、導電性層と樹脂フィルムとの密着性に優れることを示す。
【0214】
[実施例2]
前記の工程〔1−3.緩和工程〕において、クリップ間距離の縮小を、180秒間かけて行った。以上の事項以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0215】
[実施例3]
前記の工程〔1−3.緩和工程〕において、結晶化フィルムの縦方向にクリップ間距離を縮小させなかった。すなわち、緩和工程における結晶化フィルムの縦方向でのチャック間距離の縮小率を、0.0%に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0216】
[実施例4]
前記の工程〔1−3.緩和工程〕において、クリップ間距離を縮小させる際の温度を170℃に変更し、クリップ間距離の縮小を60秒間かけて行い、更に結晶化フィルムのクリップ間距離の縮小率を縦方向2.5%及び横方向3.5%に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0217】
[実施例5]
前記の工程〔1−2.結晶化工程〕において、原反フィルムとして工程〔1−1.延伸工程〕で製造した延伸フィルムの代わりに、延伸される前の未延伸フィルムを用いた。また、前記工程〔1−2.結晶化工程〕において、加熱温度を220℃に変更した。さらに、前記工程〔1−3.緩和工程〕において、クリップ間距離の縮小率を、結晶化フィルムの縦方向及び横方向それぞれで1.0%に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0218】
[比較例1]
前記工程〔1−3.緩和工程〕を行わずに、結晶化フィルムをそのまま樹脂フィルムとして用いた。以上の事項以外は実施例1と同様の操作を行った。
比較例1では、レーザー加工性の評価のために樹脂フィルムにレーザー光を照射したときに、レーザー光で樹脂フィルムが局所的に加熱されたことで樹脂フィルムがうねり、大きな変形を生じた。
また、比較例1では、バリアフィルム及び導電性フィルムに大きなカールが生じてフィルムが丸まったため、カール量の評価を行えなかった。
【0219】
[比較例2]
前記の工程〔1−3.緩和工程〕において、結晶化フィルムのクリップ間距離の縮小率を縦方向4.5%及び横方向6.0%に変更して、結晶化フィルムの緊張の過剰な緩和を行った。以上の事項以外は実施例1と同様の操作を行った。
比較例2では、工程〔1−3.緩和工程〕においてクリップ間距離を縮めすぎたため、緊張を緩和される際に結晶化フィルムを平坦に維持できず、得られた樹脂フィルムに波打ち形状の変形が生じた。そのため、バリアフィルム及び導電性フィルムの製造が行えなかった。
【0220】
[比較例3]
前記の工程〔1−3.緩和工程〕において、結晶化フィルムのクリップ間距離の縮小率を縦方向1.5%及び横方向2.0%に変更して、結晶化フィルムの緊張の緩和を不十分に行った。以上の事項以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0221】
[比較例4]
前記の工程〔1−3.緩和工程〕において、クリップ間距離を縮小させる際の温度を110℃に変更し、また、クリップ間距離の縮小を180秒間かけて行った。以上の事項以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0222】
[結果]
上述した実施例及び比較例の構成を表1に示し、その結果を表2に示す。下記の表において、略称の意味は、以下の通りである。
「縮小率」:緩和工程において、結晶化フィルムを取り付けた小型延伸装置のクリップ間距離を縮小させた比率。クリップを移動させる前のクリップ間距離を100%とする。
「透過率」:全光線透過率。
「フィルム変形量」:樹脂フィルムのレーザー加工性を評価するために測定された、レーザー光の照射によるフィルムの変形量。
【0223】
【表1】
【0224】
【表2】
【0225】
[検討]
前記の実施例1〜5で測定した熱寸法変化率の絶対値は、多数の方向で測定した熱寸法変化率の絶対値の内の最大値である。そのため、この熱寸法変化率の絶対値が十分に小さいことが分かれば、その樹脂フィルムの熱寸法変化率の絶対値が任意の方向で小さいことが確認できる。ここで、実施例1〜5の樹脂フィルムは、熱寸法変化率の絶対値が小さい。よって、実施例1〜5の樹脂フィルムが、高温環境下での寸法安定性に優れることが分かる。
また、実施例1〜5の樹脂フィルムは、バリア層を形成するための基材フィルムとして用いることにより良好なバリアフィルムが得られること、及び、導電性層を形成するための基材フィルムとして用いることにより良好な導電性フィルムが得られることが確認された。
【符号の説明】
【0226】
10 原反フィルム
11、12、13及び14 原反フィルムの辺
20 結晶化フィルム
21、22、23及び24 結晶化フィルムの辺
30 原反フィルム
31及び32 原反フィルムの辺
40 結晶化フィルム
41及び42 結晶化フィルムの辺
50 樹脂フィルム
51及び52 樹脂フィルムの辺
53 樹脂フィルムの表面
60 ナーリングフィルム
61 突起部
62及び63 突起部を形成された領域
70 バリアフィルム
100 保持装置
110 型枠
121、122、123及び124 クリップ
200 樹脂フィルムの製造装置
300 テンター延伸機
310及び320 リンク装置
311及び321 クリップ
312a〜312d リンクプレート
313a及び313b 軸受けローラー
330及び340 スプロケット
410及び420 搬送ロール
500 オーブン
510 オーブンの入り口
520 オーブンの出口
530 オーブンの隔壁
540 結晶化室
550 緩和室
600 レーザー光照射装置
610 レーザー光
700 成膜装置
701 樹脂フィルムのロール体
702 バリアフィルムのロール体
711 ガイドロール
712 キャンロール
713 ガイドロール
721 反応管
722 電極
723 電源
724 ガス導入口
730 真空排気装置
790 真空槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9