(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
<撹拌翼への澱物堆積>
しかしながら、近年の需要増大に基づいて、原料であるニッケルマットの装入量を増加させた場合、オートクレーブのメンテナンスが頻回に必要となる。具体的には、オートクレーブの撹拌翼に堆積した澱物を除去する作業のために、所定期間だけ生産の中断を余儀なくされる。この殿物は、塩基性硫酸ニッケル塩と未反応のニッケルマットを主成分とするものである。
【0008】
一般的に、オートクレーブは、上流から数えて1番目の区画室(第1室)の撹拌翼に堆積する澱物の量が顕著である。その場合、撹拌装置の回転軸は、直径方向に重量のアンバランスが生じて振動を増大させるので稼働の障害となる。これに対応するメンテナンスとして、澱物除去作業を、生産量に比例するような頻度で行うことが必要となる。この澱物除去作業は、その都度に加圧浸出反応を2日間以上停止して行われる。
【0009】
この澱物除去作業による生産の中断が、10日に1回位の頻度で繰り返される。その結果、オートクレーブのメンテナンスがボトルネックとなり、それだけでシステムの稼働率は2割も低下することになる。このように、オートクレーブの撹拌翼に堆積した澱物を除去する作業のために、システム全体の生産能力を低下させてしまうという問題があった。
【0010】
これに対し、オートクレーブの第1室において、特定の位置に高圧空気を吹き込むことにより、撹拌翼への澱物堆積を抑制する、という非公開の最新技術(以下、本件において「最新技術」という)が、本出願人によって確立されつつある。その最新技術による改善効果は、撹拌翼下端部と、上段翼と、に対してのみ、殿物堆積がわずかに発生するに止まる、という程に顕著である。その結果、殿物除去作業の頻度を100日に1回、もしくはそれ以下にまで軽減できる。
【0011】
<残された問題点>
しかしながら、最新技術を施しても、撹拌翼下端部と、上段翼と、に対して、わずかに澱物堆積が生じる。これに対応するための澱物除去作業が、毎年3回位の頻度で必要である、という問題が残されている。また、操業負荷を上昇させると、それに応じて澱物堆積が増加し、殿物除去作業の頻度を毎月1回位に増強させる必要が生じる。つまり、生産量に比例するような頻度でオートクレーブのメンテナンスが必要となる。このように、最新技術を施したとしても、わずかに生じる澱物堆積に対する除去作業の負担や、それに伴う稼働率の低下を併せて軽減するために、さらなる改善余地があった。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ニッケルマットを原料としてオートクレーブにより加圧浸出する粗硫酸ニッケル溶液の製造方法において、設備の増設や変更等による負担もなく、オートクレーブの撹拌翼に堆積する澱物の量を最小限にする方法を提供し、澱物除去作業の負担や、それに伴う稼働率の低下を併せて軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、本発明者らは、オートクレーブに投入するマットと硫黄との装入比率について鋭意検討した結果、特定の比率範囲で課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
本発明の一態様は、オートクレーブを用いてニッケルマット及び単体硫黄から粗硫酸ニッケル溶液を製造する方法であって、
ニッケルマットと単体硫黄とを含有するスラリーをオートクレーブに装入する原料装入工程(S10)と、
前記オートクレーブに装入されたスラリーを空気雰囲気下で撹拌翼により撹拌する撹拌工程(S20)と、
前記オートクレーブから加圧浸出する加圧浸出工程(S30)と、
を有し、
前記原料装入工程(S10)で前記オートクレーブへ装入される前記スラリーにおける硫黄とニッケルとの配合比率について、
前記スラリーに含有された含有硫黄モル比率(S/Ni)を、
(単体硫黄のモル数+ニッケルマット中のSモル数)/ニッケルマット中のNiモル数、
で定義し、
該含有硫黄モル比率(S/Ni)を
0.5以上0.65以下に設定した、
粗硫酸ニッケル溶液の製造方法である。
【0016】
また、本発明の一態様において、前記加圧浸出工程(S30)の後で、
一時的に残渣となった塩基性硫酸ニッケルのスラリーに対して硫酸を添加することによって塩基性硫酸ニッケル塩澱物を溶解する硫酸溶解工程(S40)、
をさらに有することが好ましい。
【0017】
また、本発明の一態様において、前記硫酸溶解工程(S40)では、pH≒1.5に調整するように硫酸を添加することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ニッケルマットを原料としてオートクレーブにより加圧浸出する粗硫酸ニッケル溶液の製造方法において、設備の増設や変更等による負担もなく、オートクレーブの撹拌翼に堆積する澱物の量を最小限にする方法を提供できる。その結果、澱物除去作業の負担や、それに伴う稼働率の低下を併せて軽減できる。よって、その工業的価値は極めて大きい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。以下、硫黄をS、ニッケルをNi、と略すこともある。
【0021】
図1は本方法の概略を説明するためのフローチャートである。
図1に示すように、本方法は、オートクレーブを用いてニッケルマット及び単体硫黄から粗硫酸ニッケル溶液を製造する方法である。本方法は、原料装入工程(S10)と、撹拌工程(S20)と、加圧浸出工程(S30)と、硫酸溶解工程(S40)と、ろ過工程(S50)と、を有する工程により粗硫酸ニッケル溶液を製造する。
【0022】
原料装入工程(S10)では、原料であるニッケルマットと単体硫黄とを含有するスラリーを、加圧反応容器であるオートクレーブに装入する。この原料装入工程(S10)におけるニッケルマットと単体硫黄との配合比率については、より詳細に後述する。撹拌工程(S20)では、オートクレーブに装入されたスラリーを所定の温度及び圧力の条件の空気雰囲気下で、撹拌翼により撹拌する。加圧浸出工程(S30)では、オートクレーブから加圧浸出することによって、大部分の粗硫酸ニッケル溶液を得る。なお、撹拌工程(S20)と、加圧浸出工程(S30)と、の各処理を区別しているのは、説明の便宜上に過ぎず、実際はオートクレーブ内で同時進行する。これら撹拌工程(S20)及び、加圧浸出工程(S30)において、空気を吹き込んで、化1、化2の反応式に示す反応を促進する。そのときpH≒5.5となる。
【0023】
化1:Ni+S+2O
2→NiSO
4
化2:Ni
3S
2+S+6O
2→3NiSO
4
【0024】
また、粗硫酸ニッケル溶液の製造工程において、オートクレーブ内で、スラリー中のニッケルマットに含まれるニッケルの全量が、粗硫酸ニッケル溶液になるわけではなく、一部は、塩基性硫酸ニッケルのスラリーとして一時的な残渣となる。硫酸溶解工程(S40)では、このような一時的に残渣となった塩基性硫酸ニッケルのスラリーに対し、硫酸を添加することによって、塩基性硫酸ニッケル塩澱物(黄緑色)を溶解する。このとき、pH≒1.5に調整することが好ましい。これらの結果、一時的に残渣となった塩基性硫酸ニッケルのスラリーからも、オートクレーブから排出された後に、酸溶解処理することによって、粗硫酸ニッケル溶液が得られる。
【0025】
さらに、硫酸溶解工程(S40)でも溶解しなかった未溶解物は、ろ過工程(S50)において、フィルタープレス等の固液分離装置により分離される。オートクレーブ内の加圧浸出工程(S30)までに得られた大部分の粗硫酸ニッケル溶液と、その段階における一時的な残渣から硫酸溶解工程(S40)及び、ろ過工程(S50)を経て得られた一部の粗硫酸ニッケル溶液と、を合計することにより、最終的に約120g−Ni/Lの粗硫酸ニッケル溶液が得られる。
【0026】
また、原料装入工程(S10)では、オートクレーブへ装入されるスラリーにおける硫黄とニッケルとの配合比率について、以下のように設定することによって、設備の増設や変更等による負担もなく、オートクレーブの撹拌翼に堆積する澱物の量を最小限にする方法を提供できる。その結果、澱物除去作業の負担や、それに伴う稼働率の低下を併せて軽減できるので、当然にコストダウンに寄与できる。
【0027】
まず、前記スラリーに含有された含有硫黄モル比率(S/Ni)を、つぎのように定義する。以下、含有硫黄モル比率(S/Ni)を、単に(S/Ni)又は、(S/Ni)比と略すこともある。
含有硫黄モル比率(S/Ni)
=(単体硫黄のモル数+ニッケルマット中のSモル数)/ニッケルマット中のNiモル数
【0028】
この含有硫黄モル比率(S/Ni)を0.7以下に設定することで好結果が得られた。さらに、この含有硫黄モル比率(S/Ni)について、下式の示す範囲に設定することが好ましい。
0.5≦(S/Ni)≦0.7
すなわち、含有硫黄モル比率(S/Ni)を0.5以上0.7以下に設定した。
【0029】
本発明の課題は、「オートクレーブの撹拌翼に堆積する澱物の量を最小限にする」ことにある。この課題を解決するために、原料装入工程(S10)で、オートクレーブへ装入されるスラリーにおける硫黄とニッケルとの配合比率について、含有硫黄モル比率(S/Ni)を0.5以上0.7以下に数値限定した。この数値限定には、明確な臨界的意義があり、この数値限定の内と外で有利な効果において量的に顕著な差異がある。それについて、以下に説明する。
【0030】
<原料スラリーの(S/Ni)比>
本発明では、(S/Ni)比について、0.7以下に限定したが、従来はそれより高い0.7〜0.9に調整されていた。従来の(S/Ni)比を0.9に上限設定していた理由は、つぎのとおりである。すなわち、(S/Ni)比が0.9より高い場合には、オートクレーブ内で反応が進行することに伴って、pHやORP(酸化還元電位、Oxidation-reduction Potential)が低下する。その結果、毒性の強いH
2Sや爆発し易いH
2が、発生するなどの危険性が高まる。したがって、このような危険を防止するため(S/Ni)比は0.9以下に設定されていた。これは、本発明で0.7以下に数値限定する以前の臨界的意義である。
【0031】
また、従来の(S/Ni)比を0.7に下限設定していた理由は、つぎのとおりである。すなわち、(S/Ni)比が0.7より少ない場合には、化学式で上述した化1、化2の進行に不利である。これらの化学反応を促進させるには、Sを多く添加することが一般的であり、Sが多い程に有利である。しかし、上述した危険防止のため(S/Ni)比が0.9を超えないようにすると共に、工程能力(添加量の変動)も勘案して、下限を0.7に設定していた。このことは、本発明で初めて0.7以下に数値限定したことに相反する。この点について、さらに説明する。
【0032】
<本発明に係る発見>
上述のとおり、スラリー中のニッケルマットのニッケル全量が粗硫酸ニッケル溶液にはならず、オートクレーブ中で澱物が生成する。従来、この澱物の成分について、つぎのように考えられていた。まず、澱物の成分は、黄緑色の塩基性硫酸ニッケル塩と、黒色の未反応ニッケルマットと、の混在するものである。また、ニッケルマット中のニッケル成分としての形態は、化1、化2に示す通り、Ni又はNi
3S
2が主要な形態である。そして、撹拌翼への堆積が問題となっている澱物も未反応のニッケルマット、すなわちNi又はNi
3S
2だと思われていた。しかし、この澱物をXRD分析したところ、これが間違いであるが判明した。
【0033】
図2は、本発明の根拠とする、澱物成分のXRD分析結果を示すグラフである。
図2のXRD分析結果が示すように、澱物成分は、主要な形態がNiS
2(黒丸印)であるほか、Ni
3S
4(黒星印)の形態であることが突き止められた。すなわち、澱物成分は、従来の定説であったNi又はNi
3S
2でなく、NiS
2及びNi
3S
4であることが発見された。これらNiS
2及びNi
3S
4は、いずれもS成分が多い程、つまり(S/Ni)比が高い程に生じ易くなる。さらに、これら澱物成分の生成量と(S/Ni)比との相関関係は、NiS
2及びNi
3S
4の方がそれらの分子構造に含まれるSの数が多いだけ、従来定説のNi又はNi
3S
2よりも強い。
【0034】
<発明者らの推測>
上述した経験則に加えた、
図2のXRD分析結果に基づいて、本発明者らは、オートクレーブ内の澱物発生の現象について、以下にいう主反応及び副反応のうち、副反応が関連していることを推測した。オートクレーブ内では、Ni成分が硫酸化して硫酸ニッケルNiSO
4を生成する主反応と、Ni成分が硫化して硫化ニッケルNiS
2(
図2黒丸印)等を生成する副反応と、の2つの反応が起こり得る。
【0035】
粗硫酸ニッケル溶液の製造が目的であれば、硫酸ニッケルを生成する主反応を促進する一方で、殿物の主因と推定される硫化ニッケルを生成する副反応は抑制すべきである。一方、オートクレーブ内で発生する澱物の主成分は、硫黄リッチなNiS
2である。これらの条件の下で、(S/Ni)比を高めに設定した場合、すなわち、硫黄の配合比率が高い程、副反応が過剰に起こり易くなると考えられる。
【0036】
さらに、スラリーは、硫黄の配合比率が高い程に粘度が高くなり、オートクレーブの各槽(部屋)における流通状態が悪化して滞留するので、撹拌翼に澱物が堆積し易くなるものと考えられる。そうであるならば、対応策として(S/Ni)比を低下させることが有効であると推測した。この推測を以下のように検証した。
【0037】
<推測に対する検証>
硫酸溶解工程(S40)を経た液(スラリー)を5L採取して、ろ過(S50)した後、残渣を採取する。この残渣を洗浄後に乾燥させて計量し、採取した5Lとの比率から「スラリー濃度」を算出する。ここで、乾燥させた残渣を洗浄後に粉砕し、「Ni品位」をX線分析して得る。
【0038】
一方、加圧浸出工程(S30)の処理の後、マット抽出終液の流量、すなわち「マット抽出終液流量」を計測して得る。この「マット抽出終液流量」と、ろ過(S50)後に残渣の計量値から算出された「スラリー濃度」と、に基づいて、浸出されなかったNi量、すなわち「未浸出Ni量」を算出する。
【0039】
また、原料装入工程(S10)における装入原料中のNi量を、ここで「装入Ni量」と称する。これらの数値に基づいて、以下に定義する「浸出率」を算出する。
浸出率=(装入Ni量−未浸出Ni量)/装入Ni量
【0040】
参考までに、少なくとも、Ni=0でない条件の下で、実際の硫化ニッケルについて、ニッケルマット中のNi成分であるNi
3S
2と、澱物の主成分であるNiS
2(
図2黒丸印)と、の形態別に(S/Ni)比を確認すると、つぎのとおりである。
Ni
3S
2=0.67 < NiS
2=2.0 ※右へ行くほど硫黄リッチ。
【0041】
<本発明の特徴>
本発明者らが、原料スラリー中の(S/Ni)比を低下させる実験を繰り返したところ、(S/Ni)≦0.7の場合に、撹拌翼への澱物堆積がほとんど見られなくなったという現象に基づいて、本発明を完成したものとみなした。この実験結果が、本発明で(S/Ni)比を0.7以下に数値限定したことの臨界的意義である。
【0042】
<S不足への対策>
本発明の課題に対する主な解決手段は、原料スラリー中のS成分を低下させることである。そのため、S成分を過度に低下させた場合、澱物に含まれるNi成分は、減少したS成分に対して相対的に増加することになる。この場合、目的製品である粗硫酸ニッケル溶液になるはずのNi成分を澱物に含んだままで残渣のように処分される無駄が生じる。この無駄については、当然に避けることが望ましい。そのためには、硫酸溶解工程(S40)において、硫酸の添加量を増加させて補うことにより、S不足への対策とすれば良い。
【0043】
図3は、本発明の根拠とする、(S/Ni)モル比に対するNi浸出率の関係を示すグラフである。
図3に示すように、(S/Ni)比を0.54以上の設定にすると、Total-Ni浸出率が99.6%を上回って安定する。逆に(S/Ni)比を0.53以下の設定にすると、急激にTotal-Ni浸出率が99.6%を下回って悪化する。この実験結果も、本発明で(S/Ni)比を0.5以上に数値限定したことの臨界的意義である。
【0044】
Ni浸出率が低下した場合、オートクレーブ内での澱物生成が増加し、硫酸溶解工程(S40)でも溶けきれない澱物が発生し、ろ過工程で除去されNiロスとなる。したがって、撹拌翼への澱物堆積についてだけであれば、(S/Ni)比の下限について、特段の制限はないが、少なくとも(S/Ni)比が0.5を超える程度にすることが好ましい。しかし、撹拌翼への澱物堆積が問題にならないレベルであっても、澱物生成を特に考慮されていない配管において、澱物生成が増加すると、配管を閉塞するおそれもある。これらの事情に加えて、Ni浸出率を高く維持する必要性も考慮すると、(S/Ni)≧0.55であることが更に好ましい。
【0045】
以下、実施例および比較例によって、本発明をより詳細に説明する。本発明の実施例1〜4に係る粗硫酸ニッケル溶液の製造方法と、それに対する比較例1と、これらの全てにわたる共通の条件は、つぎの通りである。
原料スラリー濃度 : 180g/L
硫酸溶解工程(S40)後の流量で定義する生産量:30〜60L/min
【0046】
オートクレーブの仕様 :筒体の全長 8.1m
筒体の直径 2.7m
隔壁室数 4室
撹拌翼の配置 各室に装備
オートクレーブの運転条件: 圧力 1.5MPaG
温度 155℃
[実施例1]
【0047】
上述の共通条件の下に、生産量は硫酸溶解工程(S40)後の流量で40L/minだった。
原料スラリーの(S/Ni)比を0.5として操業した。
硫酸溶解工程(S40)における硫酸添加量は6053L/日だった。
その結果、1か月経過しても撹拌翼への澱物堆積は認められなかった。
なお、Total‐Ni浸出率は98.6%だった。また、配管閉塞は発生しなかった。
[実施例2]
【0048】
原料スラリーの(S/Ni)比を0.55として操業した以外は、実施例1と同様に操業した。
硫酸溶解工程(S40)における硫酸添加量は5231L/日だった。
その結果、1か月経過しても撹拌翼への澱物堆積は認められなかった。
なお、Total-Ni浸出率は99.6%だった。また、配管閉塞は発生しなかった。
[実施例3]
【0049】
原料スラリーの(S/Ni)比を0.65として操業した以外は、実施例1と同様に操業した。
硫酸溶解工程(S40)における硫酸添加量は4376L/日だった。
その結果、1か月経過しても撹拌翼への澱物堆積は認められなかった。
なお、Total-Ni浸出率は99.8%だった。また、配管閉塞は発生しなかった。
[実施例4]
【0050】
原料スラリーの(S/Ni)比を0.70として操業した以外は、実施例1と同様に操業した。
硫酸溶解工程(S40)における硫酸添加量は3956L/日だった。
その結果、1か月経過しても撹拌翼への澱物堆積は認められなかった。
なお、Total-Ni浸出率は99.8%だった。また、配管閉塞は発生しなかった。
[比較例1]
【0051】
原料スラリーの(S/Ni)比を0.85として操業した以外は、実施例1と同様に操業した。
硫酸溶解工程(S40)における硫酸添加量は2592L/日だった。
その結果、撹拌翼への澱物堆積が発生し、10日後には除去作業が必要となった。
なお、Total-Ni浸出率は99.8%だった。また、配管閉塞は発生しなかった。