特許第6805964号(P6805964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6805964(メタ)アクリル酸エステル組成物、その(共)重合体および(共)重合体の製法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805964
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル酸エステル組成物、その(共)重合体および(共)重合体の製法
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/18 20060101AFI20201214BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20201214BHJP
   C08K 5/109 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C08F20/18
   C08L33/06
   C08K5/109
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-100886(P2017-100886)
(22)【出願日】2017年5月22日
(65)【公開番号】特開2017-226822(P2017-226822A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2020年1月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-118427(P2016-118427)
(32)【優先日】2016年6月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】後藤 晃宏
(72)【発明者】
【氏名】相澤 亮
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−246503(JP,A)
【文献】 特開昭63−027829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00
C08L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステル、および式(II)で表される炭酸エステルを含む、(メタ)アクリル酸エステル組成物。
【化1】
[式(I)中、Rは、水素またはメチル基を表し、Rは、アリール基を表す。]
【化2】
[式(II)中、Rは、アリール基を表し、Rは、t−ブチル基を表す。]
【請求項2】
前記式(II)で表される炭酸エステルが、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルに対し、0.001モル%以上10モル%以下含まれる、請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステル組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル酸エステル組成物を重合した(共)重合体。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル酸エステル組成物を重合する(共)重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステル組成物、および該組成物を重合した(共)重合体とその製法とに関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸エステルは、合成樹脂の原料として、幅広く利用されている。そのなかでも、芳香族アルコール由来の(メタ)アクリル酸エステルは、合成樹脂の吸湿性および耐熱性を改良できる単量体として、有用な化合物群である。
【0003】
芳香族アルコール由来の(メタ)アクリル酸エステルは、光や熱によって容易に重合することから、それらの製造時、精製時、変性時、保存時、輸送時などにおいては、種々の安定剤が添加されている。特許文献1には、重合防止剤として機能する炭酸ジフェニルを含む、(メタ)アクリル酸フェニル組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2015/064498
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らの検討により、炭酸ジフェニルの使用量を下げ、高温にさらした場合に、(メタ)アクリル酸フェニルの重合防止効果が低いことが分かった。そのため、特許文献1に記載の組成物は、(メタ)アクリル酸フェニルの意図しない重合を避けるためには、炭酸ジフェニルの含有量を増やす必要があり、その(メタ)アクリル酸フェニル組成物を重合すると、得られる合成樹脂の物性への影響が大きくなるといった問題を抱えていた。
【0006】
したがって、本発明の目的は、重合防止剤が少ない場合であっても、意図しない重合を防止することができ、合成樹脂の物性への影響が少ない芳香族アルコール由来の(メタ)アクリル酸エステル組成物、および該組成物を重合した(共)重合体とその製法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の炭酸エステルを用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]である。
[1]式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステル、および式(II)で表される
炭酸エステルを含む、(メタ)アクリル酸エステル組成物。
【0009】
【化1】
[式(I)中、Rは、水素またはメチル基を表し、Rは、アリール基を表す。]
【0010】
【化2】
[式(II)中、Rは、アリール基を表し、Rは、アルキル基を表す。]
【0011】
[2]前記式(II)で表される炭酸エステルが、式(I)で表される(メタ)アクリル
酸エステルに対し、0.001モル%以上10モル%以下含まれる、[1]に記載
の(メタ)アクリル酸エステル組成物。
[3]前記式(II)中、Rがt−ブチル基またはメチル基である、[1]または
[2]に記載の(メタ)アクリル酸エステル組成物。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸エステル組成物を重合した
(共)重合体。
[5][1]〜[3]のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸エステル組成物を重合する
(共)重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル組成物は、芳香族アルコール由来の(メタ)アクリル酸エステルの製造時、精製時、変性時、保存時、輸送時などに意図しない重合を防止することができ、従来の方法と比べて、より安定に取り扱うことができる。また、重合防止剤が少ない条件でも安定に取り扱うことができるため、該組成物を重合しても、合成樹脂の物性への影響が少ない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書中では、アクリル系単量体およびメタクリル系単量体を併せて(メタ)アクリル系単量体と記載する。(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリロイル基、および(メタ)アクリル酸エステル組成物などについても同様である。また、重合体および共重合体を併せて(共)重合体と記載する。
【0014】
〔式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステル〕
本発明の(メタ)アクリル酸エステル組成物、および該組成物を重合した(共)重合体において、原料として式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルが使用される。
【0015】
【化3】
【0016】
式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルにおいて、Rは水素またはメチル基を表し、Rはアリール基を表す。そのアリール基は置換基を有していてもよい。置換基を有していてもよいとは、任意の置換基を1つ以上有してもよいという意味であり、例えば、以下の結合、基および原子などを1つ以上有してもよいという意味である。エステル結合、アミド結合、エーテル結合、スルフィド結合、ジスルフィド結合、ウレタン結合、炭化水素基、ニトロ基、シアノ基、ケトン基、ホルミル基、アセタール基、チオアセタール基、スルホニル基、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子など。
【0017】
アリール基としては、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルの入手容易性の観点から、Rの炭素数は6〜30であることが好ましく、6〜20であることがより好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。Rとしては、より詳細には、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、およびフェナントリル基などを挙げることができる。そのなかでも、合成樹脂の吸湿性および耐熱性を改良できることから、Rがフェニル基、ビフェニル基、およびナフチル基の1種であることが好ましい。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニル、および(メタ)アクリル酸ナフチルなどが挙げられる。これらのなかでも、合成樹脂の耐熱性を改良できることから、(メタ)アクリル酸フェニル、アクリル酸2−ビフェニル、およびアクリル酸1−ナフチルの1種であることが好ましい。
【0018】
式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルとしては、市販されているものを使用することもでき、公知の方法などにより製造したものを使用することもできる。また、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
〔式(II)で表される炭酸エステル〕
本発明の(メタ)アクリル酸エステル組成物、および該組成物を重合した(共)重合体において、式(II)で表される炭酸エステルが含まれる。
【0020】
【化4】
【0021】
式(II)で表される炭酸エステルにおいて、Rは式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルの説明の欄において記載した通りである。Rは、アルキル基を表し、直鎖状でも、分岐状でも、あるいは環構造を含んでいてもよい。そのアルキル基は置換基を有していても良い。置換基を有していてもよいとは、任意の置換基を1つ以上有してもよいという意味であり、例えば、以下の結合、基および原子などを1つ以上有してもよいという意味である。エステル結合、アミド結合、エーテル結合、スルフィド結合、ジスルフィド結合、ウレタン結合、ニトロ基、シアノ基、ケトン基、ホルミル基、アセタール基、チオアセタール基、スルホニル基、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子など。
【0022】
アルキル基としては、式(II)で表される炭酸エステルの入手容易性の観点から、Rの炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜5であることがさらに好ましい。Rとしては、より詳細には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、およびペンチル基などを挙げることができる。そのなかでも、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルの重合が抑制できることから、Rがt−ブチル基またはメチル基であることが好ましい。具体的には、例えば、炭酸t−ブチルフェニル、炭酸ビフェニルt−ブチル、炭酸t−ブチルナフチル、炭酸メチルフェニル、炭酸ビフェニルメチル、および炭酸メチルナフチルなどが挙げられる。これらのなかでも、重合防止剤が少ない場合であっても、(メタ)アクリル酸エステルの意図しない重合を防止することができることから、炭酸t−ブチルフェニルまたは炭酸メチルフェニルであることが好ましい。
【0023】
式(II)で表される炭酸エステルは、市販されているものを使用することもでき、公知の方法などにより製造したものを使用することもできる。また、式(II)で表される炭酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル組成物における式(II)で表される炭酸エステルの含有量は、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルに対して、0.001〜10モル%であることが好ましく、0.001〜5モル%であることがより好ましく、0.001〜1モル%であることがさらに好ましく、0.001〜0.5モル%であることが最も好ましい。式(II)で表される炭酸エステルの含有量を式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルに対して、0.001モル%以上とすることにより、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルの意図しない重合を抑制することができる。また、式(II)で表される炭酸エステルの含有量を、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルに対して、10モル%以下とすることにより、該組成物を重合しても、合成樹脂の物性への影響を抑制することができる。
【0025】
〔(メタ)アクリル酸エステル組成物〕
本発明の(メタ)アクリル酸エステル組成物は、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステル、および式(II)で表される炭酸エステルを含む。さらに、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステル成分以外の重合性成分も含んでいてもよい。その組成は、特に限定されないが、例えば、組成物中の重合性成分100質量%を基準として、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量は10〜100質量%であることが好ましく、30〜100質量%であることがより好ましく、50〜100質量%であることがさらに好ましい。式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量を10質量%以上とすることで、合成樹脂により高い耐熱性を持たせることができる。
【0026】
式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステル成分以外の重合性成分としては、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルと共重合が可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、ビニル系単量体が好ましく、共重合容易性および相溶性などの観点から、(メタ)アクリル系単量体がより好ましい。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸メチルなどが挙げられる。
【0027】
(メタ)アクリル系単量体は、市販されているものを使用することもでき、公知の方法などにより製造したものを使用することもできる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、(メタ)アクリロイル基を分子内に2つ以上有する(メタ)アクリル系単量体を併用してもよい。
【0028】
本発明の組成物中には、必要に応じて、以下の添加剤を配合することができる。重合開始剤、重合防止剤、酸化防止剤、消泡剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、樹脂、微粒子、チクソトロピック剤、カップリング剤、連鎖移動剤など。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。添加剤の使用量は、特に限定されず、適宜選択することができる。
【0029】
本発明の組成物の粘度が高いなどの場合には、必要に応じて、溶媒を用いて希釈することもできる。溶媒の種類は、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜25の有機化合物を用いることができ、適宜選択することができる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒でもよい。溶媒の使用量は、特に限定されず、適宜選択することができる。
【0030】
〔(共)重合体〕
本発明の(共)重合体は、上記説明した(メタ)アクリル酸エステル組成物を重合させることによって得られる。本発明の(共)重合体を製造する際は、公知の重合方法を用いることができる。重合系としては、熱重合と光重合が挙げられ、必要に応じて、適宜選択することができる。
【0031】
熱重合に用いられる開始剤としては、例えば、有機過酸化物およびアゾ化合物が挙げられる。有機過酸化物として、具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイドおよびジ−t−ブチルパーオキサイドなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。アゾ化合物として、具体的には、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)および2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
光重合に用いられる開始剤としては、具体的には、例えば、ベンゾフェノンおよびベンゾイルギ酸メチルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
また、レドックス反応を利用して、本組成物を重合させる場合には、具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物とp−トリルジエタノールアミンなどの芳香族アミンとの併用系などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
開始剤の使用量は、重合性成分100質量部に対して、0.001〜10質量部であることが好ましく、0.01〜5質量部であることがより好ましく、0.05〜3質量部であることがさらに好ましく、0.1〜2質量部であることが最も好ましい。開始剤の使用量を重合性成分100質量部に対して、0.001質量部以上とすることにより、組成物の重合性をより良好とすることができる。開始剤の使用量を重合性成分100質量部に対して、10質量部以下とすることにより、(共)重合体の物性および取り扱い性が良好となり、また、質量平均分子量が1000以上となる。
【0035】
本発明の(共)重合体の製造は、無溶媒(溶媒を用いない)で行うことができる。(共)重合体の粘度が高いなどの場合には、必要に応じて、溶媒を用いることもできる。溶媒の種類は、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜25の有機化合物を用いることができ、適宜選択することができる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒でもよい。溶媒の使用量は、特に限定されず、適宜選択することができる。
【0036】
重合の雰囲気は、特に限定されないが、酸素不存在雰囲気が好ましい。酸素はラジカルと容易に反応し、重合を阻害するためである。
【0037】
重合温度も特には限定されないが、0〜200℃とすることができ、25〜150℃が好ましい。重合温度を0℃以上とすることにより、組成物の重合性が良好となる。重合温度を200℃以下とすることにより、(共)重合体の着色を抑制することができる。
【0038】
本発明の(共)重合体は、上記説明した(メタ)アクリル酸エステル組成物を重合したものであって、質量平均分子量が1000〜500000であることが好ましい。質量平均分子量を1000以上とすることにより、(共)重合体の物性および取り扱い性が良好となる。質量平均分子量500000以下とすることにより、加工性が良好となる。なお、質量平均分子量は、後述するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析法により算出した値とする。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
【0040】
以下の実施例および比較例において、(メタ)アクリル酸フェニル、アクリル酸2−ビフェニル、アクリル酸1−ナフチル、炭酸メチルフェニル、炭酸i−プロピルフェニル、炭酸2−ビフェニルt−ブチル、および炭酸t−ブチル1−ナフチルは、三菱レイヨン株式会社(2017年4月1日から三菱ケミカル株式会社に会社名変更)にて製造または試作したものを使用した。炭酸t−ブチルフェニルは、シグマアルドリッチジャパン合同会社より購入し、精製をしたものを使用した。炭酸ジフェニルは、東京化成工業株式会社より購入し、精製をしたものを使用した。なお、純度はガスクロマトグラフィー分析法または液体クロマトグラフィー分析法により算出した。
【0041】
(共)重合体は、以下の方法により評価した。
(1)質量平均分子量(M)、数平均分子量(M)、および分子量分布(M/M
GPC分析法により算出した(標準ポリスチレン換算)。
(2)ガラス転移点(T
示差走査熱量測定(DSC)により窒素雰囲気下、毎分10℃の昇温速度の条件で測定した。なお、測定試料は、測定前に試料を150℃まで昇温した後に、冷却したものを使用した。
(3)熱安定性
示差熱−熱重量同時測定(TG−DTA)により乾燥空気雰囲気下または窒素雰囲気下、毎分10℃の昇温速度の条件で5%および10%重量減少の温度を測定した。なお、測定試料は、測定前に試料を150℃まで昇温した後に、冷却したものを使用した。
【0042】
[実施例1]
容量30mLのガラス製試験管にメタクリル酸フェニル5.000g(30.8ミリモル)および炭酸t−ブチルフェニル0.556g(2.86ミリモル、9.3モル%)を順次加え、均一溶液とした。試験管の上部を閉じた後、120℃のオイルバスで加熱した。加熱開始から内容物が重合して、固化するまでの時間を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
[実施例2〜4、参考例1、2][比較例1〜6]
表1に記載の化合物とそれらの使用量を変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。加熱開始から内容物が重合して、固化するまでの時間を表1にそれぞれ示す。
【0045】
[実施例7]
窒素導入管、攪拌機、コンデンサー、および温度計を備えた容量500mLのフラスコに炭酸t−ブチルフェニルを0.005モル%含むアクリル酸フェニル組成物20.000g、およびトルエン80gを加えて、均一溶液とした。この混合液に2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.044g(0.27ミリモル)を加え、撹拌下、80℃で反応を行った。反応開始から6時間後にトルエンを160g加え、重合後溶液を得た。得られた重合後溶液を激しく撹拌しているメタノール中に滴下させ、沈殿物を得た。得られた沈殿物を濾別し、室温下、24時間減圧乾燥して重合体(白色粉末)を得た。この重合体を用いた評価結果を表3に示す。
【0046】
[実施例8〜10]
表2に記載の化合物、ラジカル開始剤、重合溶媒、希釈溶媒、およびそれらの使用量を変更したこと以外は実施例7と同様にして、重合体を製造した。得られた重合体を用いた評価結果を表3にそれぞれ示す。
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】