特許第6806048号(P6806048)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806048
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】防眩性コーティング用硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20201221BHJP
   C08J 7/046 20200101ALI20201221BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20201221BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20201221BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20201221BHJP
   C09D 171/02 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   C08F290/06
   C08J7/046 ACFD
   B32B27/18 Z
   B32B27/30 A
   C09D4/00
   C09D171/02
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-511066(P2017-511066)
(86)(22)【出願日】2016年4月7日
(86)【国際出願番号】JP2016061438
(87)【国際公開番号】WO2016163478
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2019年4月2日
(31)【優先権主張番号】特願2015-78814(P2015-78814)
(32)【優先日】2015年4月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】原口 将幸
(72)【発明者】
【氏名】松山 元信
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−076029(JP,A)
【文献】 特開2005−126453(JP,A)
【文献】 特開2014−070165(JP,A)
【文献】 特開2011−053455(JP,A)
【文献】 特開2010−113220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
B32B 27/18
B32B 27/30
C08J 7/046
C09D 4/00
C09D 171/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、
(b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端に、ポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合をこの順に介して活性エネルギー線重合性基を有するパーフルオロポリエーテル0.1〜10質量部、
(c)1〜10μmの平均粒径を有する有機微粒子8〜30質量部、
(d)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤1〜20質量部、及び
(e)有機溶媒
を含む硬化性組成物。
【請求項2】
前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基が、−[OCF2]−及び−[OCF2CF2]−を繰り返し単位として有する基である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記ポリ(オキシアルキレン)基がポリ(オキシエチレン)基である、請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記成分(a)の多官能モノマーが、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記成分(c)の有機微粒子が真球状粒子である、請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記成分(c)の有機微粒子がポリメタクリル酸メチル粒子である、請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記成分(d)の重合開始剤がアルキルフェノン類である、請求項1乃至請求項6のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のうち何れか一項に記載の硬化性組成物より得られる硬化膜。
【請求項9】
フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、該ハードコート層が請求項8に記載の硬化膜からなる、ハードコートフィルム。
【請求項10】
フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、該ハードコート層が、請求項1乃至請求項7のうち何れか一項に記載の硬化性組成物をフィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、該塗膜に活性エネルギー線を照射し硬化する工程を含む方法により形成されてなる、ハードコートフィルム。
【請求項11】
前記ハードコート層が、前記有機微粒子の平均粒径に比して1倍〜10/7倍の厚さを有する、請求項9又は請求項10に記載のハードコートフィルム。
【請求項12】
前記ハードコート層が1〜20μmの膜厚を有する、請求項9乃至請求項11のうち何れ一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項13】
前記ハードコート層が3〜10μmの膜厚を有する、請求項12に記載のハードコートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ等の各種表示素子等の表面に適用されるハードコート層の形成材料として有用な硬化性組成物に関し、特に防眩性(アンチグレア機能)に優れるハードコート層を形成可能な硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピューター、携帯電話、携帯ゲーム機器、ATM等のフラットパネルディスプレイにタッチパネルが搭載された製品が非常に数多く商品化されている。特に、スマートフォンやタブレットPCの登場により、マルチタッチ機能を有する静電容量式タッチパネルが一気にその搭載数を伸ばしている。
【0003】
これらタッチパネルディスプレイ表面には、その画面への外部光の映り込みによる視認性の低下を防ぐために、表面に凹凸が形成された数μm程度のハードコート層を備える防眩性ハードコートフィルムを貼り合せる方法が用いられている。表面に凹凸を形成する手法としては、数μm程度の粒径を有する微粒子をハードコート層に含有する方法が一般的に用いられている。
【0004】
ところで、静電容量式タッチパネルでは人間の指で触れることにより操作を行う。このため、操作を行う度にタッチパネルの表面に指紋が付着し、ディスプレイの画像の視認性が著しく損なわれたり、ディスプレイの外観が損なわれたりするという問題が発生している。指紋には汗由来の水分及び皮脂由来の油分が含まれており、それらの何れも付着しにくくするために、ディスプレイ表面のハードコート層には撥水性及び撥油性を付与することが強く望まれている。
しかし、静電容量式タッチパネルでは、人が毎日指で触れるため、初期の防汚性はかなりのレベルに達しているとしても、使用中に傷が入ることによりそれらの機能が低下する場合が多い。特に防眩性ハードコート層では、その表面に凹凸を有することから、引っ掛かりが発生しやすく、傷がつきやすい。そのため、使用過程での防汚性の耐久性が課題であった。
【0005】
これまで、防眩性及び耐擦傷性を有するハードコート層として、防汚性及び耐擦傷性をハードコート層表面に付与する成分として、分子内にポリ(オキシパーフルオロアルキレン)構造及び(メタ)アクリロイル基を有する表面改質剤、さらに防眩性をハードコート層に付与する成分として、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS)樹脂微粒子を用いた技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−257359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に具体的に記載された方法では、分子内にポリ(オキシパーフルオロアルキレン)構造及び(メタ)アクリロイル基を有する表面改質剤のフッ素含有量が低く、十分な防汚性及び耐擦傷性を得られないという課題があった。また、耐擦傷性を得ようとMS樹脂粒子の添加量を低減すると十分な防眩性が得られず、十分な防眩性が得られる程度にMS樹脂粒子を添加した場合には耐擦傷性が著しく低下するという課題があった。さらに、ハードコート層中における樹脂粒子の分散性が悪く、凝集物となり塗膜の外観を損なうことも課題であった。すなわち、防眩性に優れ、且つ高い耐擦傷性を発現するハードコート層が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)構造を含む分子鎖の両末端に、ポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合を介して、活性エネルギー線重合性基を有する化合物を、フッ素系表面改質剤として用い、さらにそれに有機微粒子を添加した硬化性組成物を採用することにより、優れた防眩性及び高い耐擦傷性を有するハードコート層を形成可能なことを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、第1観点として、
(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、
(b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端に、ポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合をこの順に介して、活性エネルギー線重合性基を有するパーフルオロポリエーテル0.1〜10質量部、
(c)1〜10μmの平均粒径を有する有機微粒子8〜30質量部、
(d)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤1〜20質量部、及び
(e)有機溶媒
を含む硬化性組成物に関する。
第2観点として、前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基が、−[OCF 2]−及び−[OCF 2CF 2]−を繰り返し単位として有する基である、第1観点に記載の硬化性組成物に関する。
第3観点として、前記ポリ(オキシアルキレン)基がポリ(オキシエチレン)基である、第1観点又は第2観点に記載の硬化性組成物に関する。
第4観点として、前記成分(a)の多官能モノマーが、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである、第1観点乃至第3観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物に関する。
第5観点として、前記成分(c)の有機微粒子が真球状粒子である、第1観点乃至第4観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物に関する。
第6観点として、前記成分(c)の有機微粒子がポリメタクリル酸メチル粒子である、
第1観点乃至第5観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物に関する。
第7観点として、前記成分(d)の重合開始剤がアルキルフェノン類である、第1観点乃至第6観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物に関する。
第8観点として、第1観点乃至第7観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物より得られる硬化膜に関する。
第9観点として、フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、該ハードコート層が第8観点に記載の硬化膜からなる、ハードコートフィルムに関する。
第10観点として、フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、該ハードコート層が、第1観点乃至第7観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物をフィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、該塗膜に活性エネルギー線を照射し硬化する工程を含む方法により形成されてなる、ハードコートフィルムに関する。
第11観点として、前記ハードコート層が、前記有機微粒子の平均粒径に比して1倍〜10/7倍の厚さを有する、第9観点又は第10観点に記載のハードコートフィルムに関する。
第12観点として、前記ハードコート層が1〜20μmの膜厚を有する、第9観点乃至第11観点のうち何れ一項に記載のハードコートフィルムに関する。
第13観点として、前記ハードコート層が3〜10μmの膜厚を有する、第12観点に記載のハードコートフィルムに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、厚さ1〜10μ程度の薄膜においても優れた耐擦傷性及び高い防眩性を有し外観にも優れる硬化膜及びハードコート層の形成に有用な硬化性組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、前記硬化性組成物より得られる硬化膜又はそれより形成されるハードコート層が表面に付与されたハードコートフィルムを提供することができ、防眩性、耐擦傷性及び外観に優れるハードコートフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、詳細には、
(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、
(b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端に、ポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合をこの順に介して、活性エネルギー線重合性基を有するパーフルオロポリエーテル0.1〜10質量部、
(c)1〜10μmの平均粒径を有する有機微粒子8〜30質量部、
(d)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤1〜20質量部、及び
(e)有機溶媒
を含む硬化性組成物に関する。
以下、まず上記(a)〜(e)の各成分について説明する。
【0012】
[(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー]
活性エネルギー線硬化性多官能モノマーとは、紫外線等の活性エネルギー線を照射することで重合反応が進行し、硬化するモノマーを指す。
本発明の硬化性組成物において好ましい(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマーとしては、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から選択されるモノマーである。
なお、本発明において(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方をいう。例えば(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸をいう。
【0013】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシプロパン、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ビス[4−(メタ)アクリロイルチオフェニル]スルフィド、ビス[2−(メタ)アクリロイルチオエチル]スルフィド、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
中でも好ましいものとして、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0014】
上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、1分子内にアクリロイル基又はメタクリロイル基を複数有し、ウレタン結合(−NHCOO−)を一つ以上有する化合物である。
例えば上記多官能ウレタン(メタ)アクリレートとしては、多官能イソシアネートとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとの反応により得られるもの、多官能イソシアネートとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとポリオールとの反応により得られるものなどが挙げられるが、本発明で使用可能な多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物はかかる例示のみに限定されるものではない。
【0015】
なお上記多官能イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
また上記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
そして上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のジオール類;これらジオール類とコハク酸、マレイン酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類又はジカルボン酸無水物類との反応生成物であるポリエステルポリオール;ポリエーテルポリオール;ポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0016】
本発明では、上記(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマーとして、上記多官能(メタ)アクリレート化合物及び上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から一種を単独で、或いは二種以上を組合せて使用することができる。得られる硬化物の耐擦傷性の観点から、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物を併用することが好ましい。また、上記多官能(メタ)アクリレート化合物として、5官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物及び4官能以下の多官能(メタ)アクリレート化合物を併用することが好ましい。
また、上記多官能(メタ)アクリレート化合物と上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物とを組み合わせて使用する場合、多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し、多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物20〜100質量部を使用することが好ましく、30〜70質量部を使用することがより好ましい。
さらに、上記多官能(メタ)アクリレート化合物において、上記5官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物と上記4官能以下の多官能(メタ)アクリレート化合物とを組み合わせて使用する場合、5官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し、4官能以下の多官能(メタ)アクリレート化合物10〜100質量部を使用することが好ましく、20〜60質量部を使用することがより好ましい。
また、多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物20〜100質量部かつ5官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し4官能以下の多官能(メタ)アクリレート化合物10〜100質量部にて使用すること、
多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物20〜100質量部かつ5官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し4官能以下の多官能(メタ)アクリレート化合物20〜60質量部にて使用すること、
多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物30〜70質量部かつ5官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し4官能以下の多官能(メタ)アクリレート化合物10〜100質量部にて使用すること、
多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物30〜70質量部かつ5官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し4官能以下の多官能(メタ)アクリレート化合物20〜60質量部にて使用することが好ましい。
【0017】
[(b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端に、ポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合をこの順に介して、活性エネルギー線重合性基を有するパーフルオロポリエーテル]
本発明では、(b)成分として、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端に、ポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合をこの順に介して、活性エネルギー線重合性基を有するパーフルオロポリエーテル(以降、単に「(b)両末端に重合性基を有するパーフルオロポリエーテル」とも称する)を使用する。(b)成分は、本発明の硬化性組成物を適用するハードコート層における表面改質剤としての役割を果たす。
【0018】
上記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基におけるアルキレン基の炭素原子数は特に限定されないが、好ましくは炭素原子数1〜4であることが好ましい。すなわち、上記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基は、炭素原子数1〜4の2価のフッ化炭素基と酸素原子が交互に連結した構造を有する基を指し、オキシパーフルオロアルキレン基は炭素原子数1〜4の2価のフッ化炭素基と酸素原子が連結した構造を有する基を指す。具体的には、−[OCF2]−(オキシパーフルオロメチレン基)、−[OCF2CF2]−(オキシパーフルオロエチレン基)、−[OCF2CF2CF2]−(オキシパーフルオロプロパン−1,3−ジイル基)、−[OCF2C(CF3)F]−(オキシパーフルオロプロパン−1,2−ジイル基)等の基が挙げられる。
上記オキシパーフルオロアルキレン基は、一種を単独で使用してもよく、或いは二種以上を組み合わせて使用してもよく、その場合、複数種のオキシパーフルオロアルキレン基の結合はブロック結合及びランダム結合の何れであってもよい。
【0019】
これらの中でも、耐擦傷性が良好となる硬化膜が得られる観点から、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基として、−[OCF2]−(オキシパーフルオロメチレン基)と−[OCF2CF2]−(オキシパーフルオロエチレン基)の双方を繰り返し単位として有する基を用いることが好ましい。
中でも上記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基として、繰り返し単位:−[OCF2]−と−[OCF2CF2]−とが、モル比率で[繰り返し単位:−[OCF2]−]:[繰り返し単位:−[OCF2CF2]−]=2:1〜1:2となる割合で含む基であることが好ましく、およそ1:1となる割合で含む基であることがより好ましい。これら繰り返し単位の結合は、ブロック結合及びランダム結合の何れであってもよい。
上記オキシパーフルオロアルキレン基の繰り返し単位数は、その繰り返し単位数の総計として5〜30の範囲であることが好ましく、7〜21の範囲であることがより好ましい。
また、上記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基のゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)は、1,000〜5,000、好ましくは1,500〜2,000である。
【0020】
上記ポリ(オキシアルキレン)基におけるアルキレン基の炭素原子数は特に限定されないが、好ましくは炭素原子数1〜4であることが好ましい。すなわち、上記ポリ(オキシアルキレン)基は、炭素原子数1〜4のアルキレン基と酸素原子が交互に連結した構造を有する基を指し、オキシアルキレン基は炭素原子数1〜4の2価のアルキレン基と酸素原子が連結した構造を有する基を指す。上記アルキレン基としては、エチレン基、1−メチルエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。
上記オキシアルキレン基は、一種を単独で使用してもよく、或いは二種以上を組み合わせて使用してもよく、その場合、複数種のオキシアルキレン基の結合はブロック結合及びランダム結合の何れであってもよい。
中でも、上記ポリ(オキシアルキレン)基は、ポリ(オキシエチレン)基であることが好ましい。
上記ポリ(オキシアルキレン)基におけるオキシアルキレン基の繰り返し単位数は、例えば1〜15の範囲であり、例えば5〜12の範囲、例えば7〜12の範囲であることがより好ましい。
【0021】
上記ポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合をこの順に介して結合する活性エネルギー線重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、ウレタン(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0022】
上記活性エネルギー線重合性基は、(メタ)アクリロイル部分等の活性エネルギー線重合性部分を1つ有するものに限られず、2つ以上の活性エネルギー線重合性部分を有するものであってもよく、例えば、以下に示すA1〜A5の構造、及びこれらの構造中のアクリロイル基をメタクリロイル基に置換した構造が挙げられる。
【0023】
【化1】
【0024】
このような(b)両末端に重合性基を有するパーフルオロポリエーテルとして、工業的製造が容易であるという点から、以下に示す化合物及びこれらの化合物中のアクリロイル基をメタクリロイル基に置換した化合物を好ましい例として挙げることができる。なお、構造式中、Aは前記式[A1]〜式[A5]で表される構造のうちの1つを表し、PFPEは前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を表し、nはそれぞれ独立してオキシエチレン基の繰り返し単位数を表し、好ましくは1〜15の数を表し、より好ましくは5〜12の数を表し、さらに好ましくは7〜12の数を表す。
【化2】
【0025】
中でも、本発明の(b)両末端に重合性基を有するパーフルオロポリエーテルは、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端に、ポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合をこの順に介して、すなわち、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端にポリ(オキシアルキレン)基がそれぞれ結合し、該両端の各ポリ(オキシアルキレン)基にそれぞれウレタン結合が1つ結合し、そして該両端の各ウレタン結合に活性エネルギー線重合性基がそれぞれ結合したパーフルオロポリエーテルであることが好ましい。さらに、前記パーフルオロポリエーテルにおいて、活性エネルギー線重合性基が少なくとも2つ以上の活性エネルギー線重合性部分を有する基であるパーフルオロポリエーテルであることが好ましい。
【0026】
本発明において(b)両末端に重合性基を有するパーフルオロポリエーテルは、前述の(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部の割合で使用することが望ましい。
【0027】
上記(b)両末端に重合性基を有するパーフルオロポリエーテルは、例えば、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基の両末端にポリ(オキシアルキレン)基を介してヒドロキシ基を有する化合物において、その両端のヒドロキシ基に対して2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートや1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等の重合性基を有するイソシアネート化合物をウレタン化反応させる方法、(メタ)アクリル酸クロリド又はクロロメチルスチレンを脱塩酸反応させる方法、(メタ)アクリル酸を脱水反応させる方法、無水イタコン酸をエステル化反応させる方法などにより得られる。
中でも、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基の両末端にポリ(オキシアルキレン)基を介してヒドロキシ基を有する化合物において、その両端のヒドロキシ基に対して、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートや1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等の重合性基を有するイソシアネート化合物をウレタン化反応させる方法、或いは、該ヒドロキシ基に対して(メタ)アクリル酸クロリド又はクロロメチルスチレンを脱塩酸反応させる方法が、反応が容易である点で特に好ましい。
【0028】
なお本発明の硬化性組成物には、(b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端に、ポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合をこの順に介して、活性エネルギー線重合性基を有するパーフルオロポリエーテルに加えて、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の一端にポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合をこの順に介して、活性エネルギー線重合性基を有し、且つその他端にポリ(オキシアルキレン)基を介してヒドロキシ基を有するパーフルオロポリエーテルや、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両端にポリ(オキシアルキレン)基を介してヒドロキシ基をするパーフルオロポリエーテル[活性エネルギー線重合性基を有していない化合物]が含まれていてもよい。
【0029】
[(c)1〜10μmの平均粒径を有する有機微粒子]
本発明の硬化性組成物において、1〜10μmの平均粒径を有する有機微粒子(以下、単に「(c)有機微粒子」とも称する)は、該硬化性組成物より形成されるハードコート層の表面を凹凸形状にして防眩性を付与する。
また有機微粒子は、その屈折率とハードコート層形成材料である硬化性組成物との屈折率との差を制御することで、ハードコート層のヘーズ値を制御する役割をも担うことができる。
【0030】
前記有機微粒子の形状は特に限定されないが、例えば、ビーズ状の略球形であってもよく、粉末等の不定形のものであってもよいが、略球形のものが好ましく、より好ましくは、アスペクト比が1.5以下の略球形の粒子であり、最も好ましくは真球状粒子である。
【0031】
前記有機微粒子としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル粒子(PMMA粒子)、シリコーン粒子、ポリスチレン粒子、ポリカーボネート粒子、アクリルスチレン粒子、ベンゾグアナミン粒子、メラミン粒子、ポリオレフィン粒子、ポリエステル粒子、ポリアミド粒子、ポリイミド粒子、ポリフッ化エチレン粒子等があげられる。これらの有機微粒子は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
なかでも、前記有機微粒子としてポリメタクリル酸メチル粒子を好適に用いることができる。
【0032】
本発明で使用する前記有機微粒子の平均粒径は1〜10μmの範囲であり、好ましくは3〜8μmの範囲であることが好ましい。ここで平均粒径(μm)とは、Mie理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定して得られる50%体積径(メジアン径)である。前記有機微粒子の平均粒径が上記数値範囲より大きくなると、ディスプレイの画像鮮明性が低下し、また上記数値範囲より小さいと、十分な防眩性が得られず、ギラツキも大きくなるという問題が生じやすくなる。なお前記有機微粒子は、その粒度分布については特に限定されないが、粒径の揃った単分散の微粒子であることが好ましい。
前記有機微粒子は、前記(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマーの硬化物との屈折率差が0〜0.20である屈折率を有してなる有機微粒子であることが好ましく、さらに前記屈折率差が0〜0.10であることが好ましい。
また、前記有機微粒子は、その平均粒径が、後述する本発明の硬化性組成物より得られる硬化膜の膜厚に対して、有機微粒子の平均粒径b/膜厚a=0.7〜1.0の範囲を満たすように選択することが好ましい。
【0033】
前記有機微粒子は、市販品を好適に用いることができ、例えば、テクポリマー(登録商標)MBXシリーズ、同SBXシリーズ、同MSXシリーズ、同SMXシリーズ、同SSXシリーズ、同BMXシリーズ、同ABXシリーズ、同ARXシリーズ、同AFXシリーズ、同MBシリーズ、同MBPシリーズ、同MB−Cシリーズ、同ACXシリーズ、同ACPシリーズ[以上、積水化成品工業(株)製];トスパール(登録商標)シリーズ[モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(同)製];エポスター(登録商標)シリーズ、同MAシリーズ、同STシリーズ、同MXシリーズ[以上、(株)日本触媒製];オプトビーズ(登録商標)シリーズ[日産化学工業(株)製];フロービーズシリーズ[住友精化(株)製];トレパール(登録商標)PPS、同PAI、同PES、同EP[以上、東レ(株)製];3M(登録商標)ダイニオンTFマイクロパウダーシリーズ[3M社製];ケミスノー(登録商標)MXシリーズ、同MZシリーズ、同MRシリーズ、同KMRシリーズ、同KSRシリーズ、同MPシリーズ、同SXシリーズ、同SGPシリーズ[以上、綜研化学(株)製];タフチック(登録商標)AR650シリーズ、同AR−750シリーズ、同FH−Sシリーズ、同A−20、同YKシリーズ、同ASFシリーズ、同HUシリーズ、同Fシリーズ、同Cシリーズ、同WSシリーズ[以上、東洋紡(株)製];アートパール(登録商標)GRシリーズ、同SEシリーズ、同Gシリーズ、同GSシリーズ、同Jシリーズ、同MFシリーズ、同BEシリーズ[以上、根上工業(株)製];信越シリコーン(登録商標)KMPシリーズ[信越化学工業(株)製]等を用いることができる。
【0034】
本発明において(c)有機微粒子は、前述の(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部に対して、8〜30質量部、好ましくは8〜20質量部の割合で使用することが望ましい。
【0035】
[(d)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤]
本発明の硬化性組成物において好ましい活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤(以下、単に「(d)重合開始剤」とも称する)は、例えば、電子線、紫外線、X線等の活性エネルギー線により、特に紫外線照射によりラジカルを発生する重合開始剤である。
上記(d)重合開始剤としては、例えばベンゾイン類、アルキルフェノン類、チオキサントン類、アゾ類、アジド類、ジアゾ類、o−キノンジアジド類、アシルホスフィンオキシド類、オキシムエステル類、有機過酸化物、ベンゾフェノン類、ビスクマリン類、ビスイミダゾール類、チタノセン類、チオール類、ハロゲン化炭化水素類、トリクロロメチルトリアジン類、あるいはヨードニウム塩、スルホニウム塩などのオニウム塩類等が挙げられる。これらは一種単独で或いは二種以上を混合して用いてもよい。
中でも本発明では、透明性、表面硬化性、薄膜硬化性の観点から(d)重合開始剤として、アルキルフェノン類を使用することが好ましい。アルキルフェノン類を使用することにより、耐擦傷性がより向上した硬化膜を得ることができる。
【0036】
上記アルキルフェノン類としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシル=フェニル=ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン等のα−ヒドロキシアルキルフェノン類;2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン等のα−アミノアルキルフェノン類;2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン;フェニルグリオキシル酸メチルなどが挙げられる。
【0037】
本発明において(d)重合開始剤は、前述の(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部に対して、1〜20質量部、好ましくは2〜10質量部の割合で使用することが望ましい。
【0038】
[(e)溶媒]
本発明の硬化性組成物は、更に(e)溶媒を含み、すなわちワニス(膜形成材料)の形態とすることができる。
上記溶媒としては、前記(a)〜(d)成分を溶解・分散し、また後述する硬化膜(ハードコート層)形成にかかる塗工時の作業性や硬化前後の乾燥性等を考慮して適宜選択すればよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素類;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化物類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類又はエステルエーテル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;N−メチル−2−ピロリドン等の複素環式化合物類、並びにこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
【0039】
また、塗工後の乾燥時における前記微粒子の分散性を制御する目的で、高沸点の溶媒を使用することもできる。
このような溶媒としては、例えば、酢酸シクロヘキシル、プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチンレングリコールジアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシブタノール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコール=メチル=プロピル=エーテル等が挙げられる。
【0040】
これら(e)溶媒の使用量は特に限定されないが、例えば本発明の硬化性組成物における固形分濃度が1〜70質量%、好ましくは5〜50質量%となる濃度で使用する。ここで固形分濃度(不揮発分濃度とも称する)とは、本発明の硬化性組成物の前記(a)〜(e)成分(及び所望によりその他添加剤)の総質量(合計質量)に対する固形分(全成分から溶媒成分を除いたもの)の含有量を表す。
【0041】
[その他添加物]
また、本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて一般的に添加される添加剤、例えば、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤、界面活性剤、密着性付与剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、貯蔵安定剤、帯電防止剤、無機充填剤、顔料、染料等を適宜配合してよい。
また、硬化膜のヘーズ値を制御する目的で、酸化チタン等の無機微粒子を配合してもよい。
【0042】
<硬化膜>
本発明の硬化性組成物は、基材上に塗布(コーティング)して塗膜を形成し、該塗膜に活性エネルギー線を照射して重合(硬化)させることにより、硬化膜を形成できる。該硬化膜も本発明の対象である。また後述するハードコートフィルムにおけるハードコート層を該硬化膜からなるものとすることができる。
この場合の前記基材としては、例えば、各種樹脂(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレート等を挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよい。
【0043】
前記基材上への塗布方法は、キャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等を適宜選択し得、中でもロール・ツー・ロール(roll−to−roll)法に利用でき、また薄膜塗布性の観点から、凸版印刷法、特にグラビアコート法を用いることが望ましい。なお事前に孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて硬化性組成物を濾過した後、塗布に供することが好ましい。なお塗布する際、必要に応じて該硬化性組成物に溶剤をさらに添加してもよい。この場合の溶剤としては前述の[(e)溶媒]で挙げた種々の溶媒を挙げることができる。
基材上に硬化性組成物を塗布し塗膜を形成した後、必要に応じてホットプレート又はオーブン等で塗膜を予備乾燥して溶媒を除去する(溶媒除去工程)。この際の加熱乾燥の条件としては、例えば、40〜120℃で、30秒〜10分程度とすることが好ましい。
乾燥後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して、塗膜を硬化させる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線照射に用いる光源としては、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、UV−LED等が使用できる。
さらにその後、ポストベークを行うことにより、具体的にはホットプレート、オーブンなどを用いて加熱することにより重合を完結させてもよい。
なお、形成される硬化膜の厚さは、乾燥、硬化後において、通常0.01〜50μm、好ましくは0.05〜20μmである。
【0044】
<ハードコートフィルム>
本発明の硬化性組成物を用いて、フィルム基材の少なくとも一方の面(表面)にハードコート層を備えるハードコートフィルムを製造することができる。該ハードコートフィルムも本発明の対象であり、該ハードコートフィルムは、例えばタッチパネルや液晶ディスプレイ等の各種表示素子等の表面を保護するために好適に用いられる。
【0045】
本発明のハードコートフィルムにおけるハードコート層は、前述の本発明の硬化性組成物をフィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、該塗膜に紫外線等の活性エネルギー線を照射し該塗膜を硬化させる工程を含む方法により形成することができる。
【0046】
前記フィルム基材としては、前述の<硬化膜>で挙げた基材のうち、光学用途に使用可能な各種の透明な樹脂製フィルムが用いられる。好ましくは例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、トリアセチルセルロース等から選択される樹脂製フィルムが挙げられる。
また前記フィルム基材上への硬化性組成物の塗布方法(塗膜形成工程)及び塗膜への活性エネルギー線照射方法(硬化工程)は、前述の<硬化膜>に挙げた方法を用いることができる。また塗膜形成工程の後、必要に応じて該塗膜を乾燥し溶媒除去する工程を含むことができる。その場合、前述の<硬化膜>に挙げた塗膜の乾燥方法(溶媒除去工程)を用いることができる。
こうして得られたハードコート層は、前記有機微粒子の平均粒径に比して1倍〜10/7倍の厚さとなるように設定することが好ましい。例えば前記ハードコート層の厚さは、好ましくは1〜20μm、より好ましくは3〜10μmである。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
【0048】
(1)バーコート塗布
装置:(株)エスエムテー製 PM−9050MC
バー1:オーエスジーシステムプロダクツ(株)製 A−Bar OSP−30、最大ウエット膜厚30μm(ワイヤーバー#12相当)
バー2:オーエスジーシステムプロダクツ(株)製 A−Bar OSP−22、最大ウエット膜厚22μm(ワイヤーバー#9相当)
塗布速度:4m/分
(2)オーブン
装置:アドバンテック東洋(株)製 無塵乾燥器 DRC433FA
(3)UV硬化
装置:ヘレウス(株)製 CV−110QC−G
ランプ:ヘレウス(株)製 高圧水銀ランプH−bulb
(4)膜厚
装置:(株)ニコン製 デジタル測長機 デジマイクロ MH−15M + カウンタTC−101
(5)光沢度
装置:コニカミノルタ(株)製 光沢計 GM−268Plus
測定角度:60度
(6)擦傷試験
装置:新東科学(株)製 往復摩耗試験機 TRIBOGEAR TYPE:30S
走査速度:3,000mm/分
走査距離:50mm
(7)全光線透過率、ヘーズ
装置:日本電色工業(株)製 ヘーズメーター NDH5000
(8)接触角
装置:協和界面科学(株)製 DropMaster DM−501
測定温度:20℃
【0049】
また、略記号は以下の意味を表す。
PFPE1:両末端にポリ(オキシアルキレン)基(繰返し単位数8〜9)を介してヒドロキシ基を有するパーフルオロポリエーテル[ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 Fluorolink 5147X]
PFPE2:両末端にポリ(オキシアルキレン)基(繰返し単位数5〜6)を介してヒドロキシ基を有するパーフルオロポリエーテル[ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 Fluorolink 5158X]
PFPE3:両末端にヒドロキシ基を有するパーフルオロポリエーテル[ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 Fluorolink D]
BEI:1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート[昭和電工(株)製 カレンズ(登録商標)BEI]
DBTDL:ジラウリン酸ジブチル錫[東京化成工業(株)製]
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート混合物[日本化薬(株)製 KAYALAD(登録商標)DPHA]
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート混合物[新中村化学工業(株)製 NKエステル A−TMM−3LM−N]
UA:6官能 脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー[ダイセル・オルネクス(株)製
EBECRYL(登録商標)5129]
SM4:パーフルオロポリエーテル構造を有するUV反応型フッ素系表面改質剤[DIC(株)製 メガファック(登録商標)RS−75、有効成分40質量%MEK/MIBK溶液]
FP1:架橋ポリメタクリル酸メチル真球状粒子[積水化成品工業(株)製 テクポリマー(登録商標)SSX−105、平均粒子径5μm]
FP2:架橋ポリメタクリル酸メチル真球状粒子[積水化成品工業(株)製 テクポリマー(登録商標)SSX−103、平均粒子径3μm]
FP4:架橋シリコーン真球状粒子[モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ(同)製 トスパール(登録商標)120、平均粒子径2μm]
IP1:ルチル型酸化チタン粒子[テイカ(株)製 JR−600E、平均粒子径0.27μm]
I2959:2−ヒドロキシ−1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン[BASFジャパン(株)製 IRGACURE(登録商標)2959]
EPA:p−ジメチルアミノ安息香酸エチル[日本化薬(株)製 KAYACURE(登録商標)EPA]
PET:両面易接着処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム[東レ(株)製
ルミラー(登録商標)U403、厚み100μm]
PC:両面易接着処理ポリカーボネート(PC)フィルム[三菱ガス化学(株)製 ユーピロン(登録商標)・フィルム FE−2000、厚み100μm]
TAC:両面易接着処理セルローストリアセテート(TAC)フィルム[富士フイルム(株)製 フジタック(登録商標)TD80ULM、厚み80μm]
AcOPr:酢酸プロピル
MEK:メチルエチルケトン
MIBK:メチルイソブチルケトン
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0050】
[合成例1]両末端にポリ(オキシアルキレン)基を介してアクリロイル基を有するパーフルオロポリエーテルSM1の製造
スクリュー管に、PFPE1 1.05g(0.5mmol)、BEI 0.26g(1.0mmol)、DBTDL 0.01g(0.02mmol)、及びMEK 1.30gを仕込んだ。この混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で24時間撹拌した。この反応混合物をMEK 3.93gで希釈して、目的化合物であるSM1の20質量%MEK溶液を得た。
【0051】
[合成例2]両末端にポリ(オキシアルキレン)基を介してアクリロイル基を有するパーフルオロポリエーテルSM2の製造
スクリュー管に、PFPE2 1.89g(1.0mmol)、BEI 0.52g(2.0mmol)、DBTDL 0.01g(0.02mmol)、及びMEK 2.41gを仕込んだ。この混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で24時間撹拌して、目的化合物であるSM2の50質量%MEK溶液を得た。
【0052】
[合成例3]両末端にアクリロイル基を有するパーフルオロポリエーテルSM3の製造
スクリュー管に、PFPE3 2.0g(1.0mmol)、BEI 0.52g(2.0mmol)、DBTDL 0.01g(0.02mmol)、及びMEK 2.52gを仕込んだ。この混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で24時間撹拌して、目的化合物であるSM3の50質量%MEK溶液を得た。
【0053】
[実施例1〜5、比較例1〜6]
表1の記載に従って以下の各成分を混合し、表1に記載の固形分濃度の硬化性組成物を調製した。なお、ここで固形分とは溶媒以外の成分を指す。また、表中、[部]とは[質量部]を表す。
(1)多官能モノマー:DPHA 50質量部、UA 30質量部、及びPETA 20質量部
(2)表面改質剤:表1に記載の表面改質剤を表1に記載の量(固形分又は有効成分換算)
(3)有機微粒子:表1に記載の有機微粒子を表1に記載の量
(4)重合開始剤:I2959 5質量部
(5)溶媒:PGME 表1に記載の量
この硬化性組成物を、A4サイズの両面易接着処理PETフィルム[東レ(株)製 ルミラー(登録商標)U403、厚み100μm]上に、表2に記載のバーを使用してバーコート塗布し塗膜を得た。この塗膜を120℃のオーブンで3分間乾燥させ溶媒を除去した。得られた膜を、窒素雰囲気下、露光量500mJ/cm2のUV光を照射し露光することで、表2に示した厚さのハードコート層(硬化膜)を有するハードコートフィルムを作製した。
【0054】
[実施例6〜
表1の記載に従って以下の各成分を混合し、固形分濃度40質量%の硬化性組成物を調製した。
(1)多官能モノマー:DPHA 50質量部、UA 30質量部、及びPETA 20質量部
(2)表面改質剤:SM1 1質量部(固形分換算)
(3)有機微粒子:表1に記載の有機微粒子を表1に記載の量
(4)無機微粒子:表1に記載の無機微粒子を表1に記載の量
(5)重合開始剤:I2959 5質量部
(6)重合促進剤:EPA 0.1質量部
(7)溶媒:表1に記載の溶媒を表1に記載の量
この硬化性組成物を、A4サイズの表2に記載のフィルム上に、バー1を使用してバーコート塗布し塗膜を得た。この塗膜を表2に記載の条件でオーブンで乾燥させ溶媒を除去した。得られた膜を、窒素雰囲気下、露光量500mJ/cm 2のUV光を照射し露光することで、表2に示した厚さのハードコート層(硬化膜)を有するハードコートフィルムを作製した。
【0055】
得られたハードコートフィルムの、外観、防眩性、耐擦傷性、全光線透過率、ヘーズ、並びに水及びオレイン酸の接触角を評価した。外観、防眩性、耐擦傷性、及び接触角の評価の手順を以下に示す。また、結果を表3に併せて示す。
[外観]
ハードコートフィルムの外観を目視で確認し、以下の基準に従い評価した。
A:ハードコート層全面に亘ってムラがない
C:ハードコート層全面に凝集物が析出し斑状のムラが目立つ
[防眩性]
得られたハードコートフィルムを光沢度Gs(60°)が11.8である黒色の台に乗せ、ハードコート層表面の光沢度Gs(60°)を測定し、以下の基準に従い評価した。なおハードコート層として実際の使用を想定した場合、少なくともBであることが求められ、Aであることが望ましい。
A:Gs(60°)≦120
B:120<Gs(60°)≦125
C:Gs(60°)>125
[耐擦傷性]
ハードコート層表面を、往復摩耗試験機に取り付けたスチールウール[ボンスター販売(株)製 ボンスター(登録商標)#0000(超極細)]で1kg/cm2の荷重を掛けて1,000往復擦り、その擦った部分に油性マーカー[ゼブラ(株)製 マッキー極細(青)、細側を使用]で線を描いた。続けて描いた線を不織布ワイパー[旭化成せんい(株)製 BEMCOT M−1]で拭き取り、傷の程度を目視で確認し以下の基準に従い評価した。なおハードコート層として実際の使用を想定した場合、少なくともBであることが求められ、Aであることが望ましい。
A:傷がつかず油性マーカーで描いた線がきれいに拭き取れる
B:かすかに傷がつくが油性マーカーで描いた線がきれいに拭き取れる
C:油性マーカーのインクが傷に入り込み拭き取れない
[接触角]
水又はオレイン酸1μLをハードコート層表面に付着させ、その5秒後の接触角θを5点で測定し、その平均値を接触角値とした。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
表1乃至表3に示すように、ハードコート層における表面改質剤として両末端にポリ(オキシアルキレン)基を介してアクリロイル基を有するパーフルオロポリエーテルSM1及びSM2を用い、且つ有機微粒子を配合した実施例1乃至実施例の硬化性組成物を用いて作製した各ハードコートフィルムは、膜厚4〜6μmにて耐擦傷性に優れ、ムラのない外観を得ることができた。また防眩性についても、後述する比較例と比べて、実際の使用を考慮した場合の基準を全て満足するものであった。
【0060】
一方、有機微粒子の添加量を本発明において定める数値範囲未満とした比較例1及び比較例2、並びに有機微粒子を未添加とした比較例6においては、所望の防眩性を得られなかった。
またハードコート層の表面改質剤として、両末端にポリ(オキシアルキレン)基を介してアクリロイル基を有するパーフルオロポリエーテルに替えて、両末端にポリ(オキシアルキレン)基を介さずにアクリロイル基を有するパーフルオロポリエーテルSM3を用いた比較例3は、実施例に比べて耐擦傷性に劣り、またハードコート層全面に凝集物が析出して斑状のムラが目立つ外観を呈した。
さらに、表面改質剤としてパーフルオロポリエーテル構造を有するUV反応型フッ素系表面改質剤SM4を用いた比較例4及び比較例5は、耐擦傷性に大きく劣る結果となった。
【0061】
以上、実施例の結果に示すように、表面改質剤として用いるパーフルオロポリエーテルの末端の構造がわずかに異なるだけで、ハードコート層の耐擦傷性並びに外観において満足な結果を得ることが困難であり、また、有機微粒子の添加量を所定範囲外とすると防眩性を得ることができず、本発明の硬化性組成物のみがこうした性能をすべて満足するハードコートフィルムを得ることができる。