(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記周縁部は、周方向に沿って延びる向かい合う一対の堤部と、堤部に囲まれた溝部を有し、前記溝部は冷却ガス導入孔を有し、溝部を流れる冷却ガスで、前記フォーカスリン
グを冷却する、
請求項7に記載の静電チャック装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リフトピンが設けられた静電チャック装置には、載置台の表面にリフトピンが挿入される孔が設けられる。この孔のために、載置台の表面の温度分布が不均一になりやすい。載置台の表面温度は、板状試料のプラズマエッチングを行う際のエッチングレートに影響を与える。このため、前記孔によって生じる表面温度の不均一さが、均質なエッチングを妨げる可能性があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、載置台の表面温度の均一性を阻害することなく、板状試料を載置台から容易に離脱させる構造を有する、静電チャック装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の第一の態様として、以下の装置が提供される。
本発明は、上側に板状試料を載置する載置面を有する載置台部と、前記載置台部の下側に位置する静電吸着用電極と、前記載置台部を搭載するベース部と、前記載置台部の周囲を囲むフォーカスリングと、前記ベース部に対し前記フォーカスリングを上昇させるリフトピンと、を備える、静電チャック装置を提供する。
より具体的には、本発明の第一態様は、
板状試料を載置する載置面を有する載置台と、前記載置台の下側にあって前記搭載面とは逆面側に位置する静電吸着用電極と、前記載置台及び前記電極を少なくとも搭載するベース部と、前記載置台の周囲を囲む連続する又は2つ以上に分割されたフォーカスリングと、前記ベース部に対し前記フォーカスリングの全体又は少なくとも一部を上昇させる、上下方向に可動なリフトピンと、を備える静電チャック装置を提供する。
【0007】
第一態様の静電チャック装置において、前記フォーカスリングは、平面視で環形状を有し、互いに分割された可動部と固定部とを有し、前記可動部は、前記リフトピンの動きに応じて上昇又は下降し、前記固定部は、前記ベース部に固定されていることが好ましい。
第一態様の静電チャック装置において、前記互いに分割された可動部と固定部は、周方向に分割されることが好ましい。すなわち、前記可動部と固定部は、周方向にわたって、上下に重なる斜面が形成されるように分割されることが好ましい。
【0008】
第一態様の静電チャック装置において、前記可動部は、周方向端部に下側を向く第1の面を有し、前記固定部は、周方向端部に上側を向く第2の面を有し、前記第1の面と前記第2の面とが上下方向に対向することが好ましい。
【0009】
第一態様の静電チャック装置において、前記第1の面および前記第2の面は、これらの面と水平面が作る鋭角が、水平方向に対し45°以下の角度を有して、傾斜していることが好ましい。
【0010】
第一態様の静電チャック装置において、前記フォーカスリングは、前記リフトピンによる上昇に伴い、前記板状試料を搭載及び移動させる搭載面を有し、前記フォーカスリングの搭載面は、搭載する前は、前記板状試料を搭載する載置面の高さ以下の高さに位置することが好ましい。
【0011】
第一態様の静電チャック装置において、前記載置台は、前記載置台と一体化した、前記載置台の外周縁にわたって設けられた周縁部を有し、
前記周縁部の上面は、一対の堤部及びその間に形成されたガス流路を形成する溝部を有し、
前記フォーカスリングは、上下方向に互いに分割された上側部と下側部とを有し、前記上側部は、前記リフトピンにより上昇及び下降が可能であり、前記下側部は、前記周縁部に対して固定され、下側部の下側に位置するガス流路である前記溝部を覆うことが好ましい。
【0012】
第一態様の静電チャック装置において、前記フォーカスリングは、平面視で前記静電吸着用電極と重なる部分を有して配置され、前記静電吸着用電極により吸着されることが好ましい。
第一態様の静電チャック装置において、前記フォーカスリングは、上側部と、下側部とに、上下に分割されており、
上側部の上面は、環の中心に到る2つの直線によって、可動部と固定部とに、2つに分割されており、
前記装置は、載置台と一体化する環状の周縁部を含み、前記周縁部は前記フォーカスリングを搭載しかつリフトピン挿通孔を有し、
前記周縁部の前記孔を挿通した前記リフトピンは、前記フォーカスリングの可動部と連結し、
フォーカスリングの上面は、リフト作業以外の時には、断面から見た時、載置台の載置面と同じ高さ又は低い位置にあることも好ましい。
第一態様の静電チャック装置において、前記周縁部は、周方向に沿って延びる向かい合う一対の堤部と、堤部に囲まれた溝部を有し、前記溝部は冷却ガス導入孔を有し、溝部を流れる冷却ガスで、前記フォーカスリングを冷却することも好ましい。
第一態様の静電チャック装置において、前記上側部の下面、及び前記下側部の上面の少なくとも片方は、溝部を有し、
下側部が冷却ガスを前記溝部に導入する冷却ガス導入孔を有し、導入された冷却ガスが前記フォーカスリングを冷却することも好ましい。
第一態様の静電チャック装置において、前記フォーカスリング上に、フォーカスリングと比べて外周が同じで内周が大きい、環状の突出部を有し、
突出部の上面の高さが、板状試料の上面の高さと略一致することも好ましい。
なお本発明において、これら好ましい特徴は、特に問題の無い限り、互いに組み合わせて使用することも可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、載置台の表面温度の均一性を阻害することなく、板状試料を載置台から容易に離脱させる構造を有する、静電チャック装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい例である、実施形態に係る静電チャック装置1について説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
また本発明は、これらの例のみに限定されることは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、位置、数、形状、交換、その他の変更が可能である。本発明は後述する説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
【0016】
図1は、本発明の好ましい一例を示す静電チャック装置1の断面図である。
図2Aと2Bは、静電チャック装置1の斜視図である。
図2Aの静電チャック装置1は、板状試料Wが載置板11に固定されている、定常状態にある。
図2Bの静電チャック装置1はシリコンウエハ等の板状試料Wを離脱させるためのリフト状態にある。これら図では、載置面より大きい板状試料Wが載置されている。なお、本明細書において静電チャック装置1の定常状態とは、前記装置に加工対象である板状試料Wを吸着した状態であり、搭載面31aが低い位置にある状態を意味する。一方で、静電チャック装置1のリフト状態とは、板状試料Wを次工程で行われる処理に移動するために、板状試料Wを持ち上げて、載置板11の載置面19から離間させた状態を意味する。
【0017】
静電チャック装置1は、平面視で円形状を有し板状試料Wを載置する載置面19と、載置面19を有する本体部2と、本体部2の載置面19を囲んで配置された環状のフォーカスリング30と、本体部2に対してフォーカスリング30を上昇させるリフトピン39と、を備える。また、本体部2は、載置面19を有する載置板11と、第1絶縁層14と、静電吸着用電極13と、接着層8と、第2絶縁層7と、ベース部(基材部)3と、をこの順で有する。なお、本明細書において、載置面19側を静電チャック装置1の上側とし、ベース部3側を静電チャック装置1の下側として、各構成の相対位置を説明する。しかしながら、実際の使用時の静電チャック装置1の姿勢は、この向きに限定されない。また、静電チャック装置1の上下方向に延びる中心軸に対する径方向を基準として、「外側(又は径方向外側)」および「内側(又は径方向内側)」とする。また、中心軸を中心とする周方向(中心軸の軸周り)を単に「周方向」とする。このようにして、各部の位置を説明する。
【0018】
(本体部)
本体部2は、上側から順に、載置板11と、第1絶縁層14と、静電吸着用電極13と、接着層8と、第2絶縁層7と、ベース部3と、が積層された構造を有する。また、本体部2は、接着層8、第2絶縁層7およびベース部3を貫通して、静電吸着用電極13に電圧を印加する給電用端子15を有する。載置板11は円板形状を有し、径方向中央側に位置する載置台11aと、本体部の周縁に位置し、かつ載置台11aに対し一段下側に下がった位置にあるフランジ形状の周縁部11bを有する。周縁部11bは、上側を向く面を有する。本例では、この上側を向く面として、段差面19aが設けられる。すなわち、本体部2の載置面19の周縁には、載置面19に対して一段下がった段差面19aが設けられている。段差面19aには、フォーカスリング30が搭載される。段差面19aには、段差があり、段差に囲まれた溝部40や溝部の底部40aが、好ましく設けられている。
また、載置板11の下側に位置する第1絶縁層14、静電吸着用電極13は、載置板11の下面側に、順に層状に形成される。ベース部3の上面3bは、平坦であり、ベース部3と静電吸着用電極13との間の隙間は、接着層8で満たされる。
【0019】
本体部2には、積層された基材や絶縁層や接着層等を厚さ方向に貫通する孔、具体的には、第1の冷却ガス導入孔18A、第2の冷却ガス導入孔18B、およびリフトピン挿通孔17が形成されている。第1の冷却ガス導入孔18Aは、載置面19において開口する。一方で、第2の冷却ガス導入孔18Bおよびリフトピン挿通孔17は、段差面19aにおいて開口する。
【0020】
静電吸着用電極13および第1絶縁層14は、第1の冷却ガス導入孔18A、第2の冷却ガス導入孔18Bおよびリフトピン挿通孔17を避けて、すなわちこれら孔に接触しないように、形成されている。すなわち、静電吸着用電極13および第1絶縁層14には、平面視で第1の冷却ガス導入孔18A、および第2の冷却ガス導入孔18Bとリフトピン挿入孔17が設けられている。
静電吸着用電極13および第1絶縁層14は、接着層8によって静電チャック装置の外周から遮断され、外部に露出していないことも好ましい。
【0021】
第1の冷却ガス導入孔18Aおよび第2の冷却ガス導入孔18Bには、必要に応じて選択されるHe等の冷却ガスが供給される。第1の冷却ガス導入孔18Aから導入された冷却ガスは、載置面19と板状試料Wの下面と間の隙間を流れ、板状試料Wを冷却する。一方で、第2の冷却ガス導入孔18Bに導入された冷却ガスは、段差面19aとフォーカスリング30の下面との間の隙間を流れ、フォーカスリングを冷却する。冷却に使用された、段差面19aとフォーカスリング30の下面との間の隙間を流れたガスは、必要に応じて適宜排出される。第2の冷却ガス導入孔を複数設け、この孔の何れかを、排出用に用いても良い。
【0022】
リフトピン挿通孔17には、リフトピン39が挿通される。リフトピン39の下端には、複数のリフトピン39を同期して上下動させるリフトピン駆動装置37が設けられている。リフトピン39は、リフトピン挿通孔17の内周部に沿って上下に移動可能である。ピン挿通孔28の内周部には筒状の碍子(図示略)が設けられ、リフトピン39と本体部2との絶縁を確保することが好ましい。
【0023】
(載置板)
載置板11は、上側に板状試料Wを載置する載置面19を有する載置台11aと、載置台11aの周縁に設けられた周縁部11bと、を有する。周縁部11bは、周方向1周に亘って載置板11の外周縁に形成されている。周縁部11bの上面は、載置面19に対して一段下がっており、フォーカスリング30が搭載される段差面19aである。
【0024】
載置台11aの載置面19には、直径が板状試料Wの厚さより小さい突起部45が複数個形成されている。静電チャック装置1は、複数の突起部45が板状試料Wを支える構成になっている。これにより、板状試料Wの下側に冷却ガスの流路を形成して、板状試料Wを冷却することができる。突起部45は、概ね円錐台形状を有している。なお、突起部45の形状は、円錐台形状に限定されることはない。また、突起部45の断面形状は、円形状に制限されず、矩形状、三角形状であってもよい。突起部45の高さは任意に選択可能であるが、冷却ガスの流動効率を高める目的で、6μm以上50μm以下に形成されていることが好ましく、6μm以上20μm以下に形成されていることがより好ましい。複数の突起部45は、互いに離隔して設けられている。複数の突起部45は、静電チャック装置1を平面視した場合、載置面19の全域にわたって設けられている。複数の突起部同士の間隔は、特に限定されない。
【0025】
周縁部11bの段差面19aには、周方向に沿って延びる、向かい合う一対の環状の堤部41と、一対の堤部41の間に形成された環状の溝部(ガス流路)40と、が設けられることが好ましい。フォーカスリング30は、一対の堤部41の上端面に搭載される。
【0026】
溝部40には、リフトピン挿通孔17が開口しており、上下方向にリフトピン39がこの孔を通過する。また、溝部40には、第2の冷却ガス導入孔18Bが開口しており、第2の冷却ガス導入孔18Bを介して、冷却ガスが導入される。この構成により、溝部40に冷却ガスが流れ、溝部40がガス流路となる。溝部40に冷却ガスが流れることで、フォーカスリング30が冷却される。
【0027】
溝部40の深さは、溝部40内において、フォーカスリング30を冷却するための冷却ガスの流れを阻害しない程度であれば良い。前記深さは10μm〜50μmであることが好ましく、35μm〜40μmであることがより好ましく、13μm〜15μmであることがさらに好ましく、10μm〜12μmであることが最も好ましい。
【0028】
載置板11は、任意に選択される材料から形成でき、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al
2O
3−SiC)複合焼結体、酸化アルミニウム(Al
2O
3)焼結体、窒化アルミニウム(AlN)焼結体、及び酸化イットリウム(Y
2O
3)焼結体等から選択される、絶縁性のセラミックス焼結体からなることが好ましい。これらは、機械的な強度を有し、かつ腐食性ガスおよびそのプラズマに対する耐久性を有する。
【0029】
セラミックス焼結体中のセラミックス粒子の平均粒径は、10μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましい。載置板11の製造工程は、載置面19に設けられる突起部45の形成過程で行う、サンドブラスト加工等を含む。サンドブラスト工程は、載置面19の表面に研磨材を吹き付け、掘削する工程である。このため、突起部45の内部にクラックが残留することがある。
残留したクラックは、サンドブラスト工程の後に行われるバフ研磨によって、強制的に進行され、事前に除去される。
【0030】
クラックは、セラミック焼結体中のセラミック粒子の粒界に形成される。したがって、セラミック粒子の粒径が大きい場合には、バフ研磨を経ることで、粒界に沿って大きく角部が除去される。セラミック粒子の粒径が大きくなるほど、突起部45はより丸みを帯びた形状となる。後段において、説明するように、本実施形態の突起部45は、高さ方向に断面積の変化がないことが好ましい。このため、突起部45は丸みを帯びていないことが好ましい。セラミックス粒子の平均粒径は10μm以下(より好ましくは2μm以下)とすることで、高さ方向に沿った断面積の変化を抑制した突起部45を、載置面19に形成することができる。
【0031】
載置板11の厚さは任意に選択できるが、0.3mm以上かつ1.0mm以下であることが好ましい。載置板11の厚さが0.3mm以上であると、静電吸着用電極13に印加された電圧により載置板11の絶縁が破られ放電する可能性が無い。また、載置板11の厚さが0.3mm以上であると、加工時に破損し亀裂が発生する可能性が無い。一方、1.0mm以下であると、板状試料Wを所望の強さで十分に吸着固定することができる。なお、板状試料Wのサイズ(大きさ)よりも載置板11の載置面のサイズが小さく、板状試料Wのサイズよりもフォーカスリングの内周が作る円のサイズが小さい。
【0032】
(第1絶縁層)
第1絶縁層14は、絶縁性および耐電圧性を有する樹脂層である。第1絶縁層14の形成材料としては、例えばポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、及びエポキシ樹脂等を、挙げることができる。第1絶縁層14は、任意の方法で形成できるが、フィルム状またはシート状の形成材料を接着して形成することが好ましい。第1絶縁層14は、不図示の接着剤を介して載置板11の下面に接着されている。なお、第1絶縁層14と載置板11の間の線を、前記接着剤として考えても良い。
【0033】
(静電吸着用電極)
静電吸着用電極13は、載置板11の載置台11aおよび周縁部11bの下側に位置する。静電吸着用電極13は、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料Wを固定するための、静電チャック用電極として用いられる。その用途によって、その形状や、大きさが適宜調整される。例えば、静電吸着用電極13は、静電吸着用電極13が形成される階層に、所定のパターンを有する電極として設けられても良い。なお、静電吸着用電極13は、パターンを有しない、いわゆるベタ電極として設けられていても機能する。
【0034】
静電吸着用電極13は、第1絶縁層14に、静電吸着用電極13の形成材料である非磁性の金属箔を接着する、またはスパッタや蒸着により成膜することで、形成することもできる。他にも、静電吸着用電極13の形成材料である導電性材料と、有機物との複合材料を、スクリーン印刷等の塗工法を用いて塗布することにより、形成してもよい。また、静電吸着用電極13は、載置板11の内部に設置されていてもよい。
【0035】
静電吸着用電極13は、任意の材料から形成してよい。例えば、酸化アルミニウム−炭化タンタル(Al
2O
3−Ta
4C
5)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−タングステン(Al
2O
3−W)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al
2O
3−SiC)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タングステン(AlN−W)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タンタル(AlN−Ta)導電性複合焼結体、酸化イットリウム−モリブデン(Y
2O
3−Mo)導電性複合焼結体等の導電性セラミックス、あるいは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属などにより、形成することができる。また、静電吸着用電極13は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、炭素(C)により形成することもできる。
【0036】
静電吸着用電極13の厚さは、特に限定されるものではない。例えば、前記厚さは、0.1μm以上かつ50μm以下が好ましい。厚さが0.1μm以上であると、充分な導電性を確保することができる。一方、厚さが50μm以下であると、静電吸着用電極13と載置板11との間の熱膨張率差に起因して、静電吸着用電極13と載置板11との接合界面にクラックが入ることが無い。
【0037】
静電吸着用電極13は、平面視において第1絶縁層14と同じ大きさであってもよい。あるいは電極13は、平面視において、第1絶縁層14よりも小さい構成としてもよい。静電吸着用電極13をこのような構成とすることで、静電吸着用電極13の端部から装置外側に向けた斜め上方にも、第1絶縁層14が存在することになる。そのため、静電吸着用電極13の鉛直上方のみならず、静電吸着用電極13の斜め上方にも第1絶縁層14を設けることによる耐電圧の向上の効果を得ることができ、絶縁破壊を抑制することができる。
【0038】
(給電用端子)
給電用端子15は、静電吸着用電極13に直流電圧を印加するために設けられた棒状の端子である。給電用端子15の形成材料は、耐熱性に優れた導電性材料であれば特に制限されるものではない。例えば、金属材料や導電性有機材料を用いることができる。給電用端子15の電気伝導率は、10
4Ω・cm以下であることが好ましい。
【0039】
給電用端子15は、熱膨張係数が静電吸着用電極13に近似したものが好ましい。例えば、静電吸着用電極13を構成している導電性セラミックス、あるいは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、コバール合金等の金属材料が、好適に用いられる。給電用端子15は、絶縁性を有する碍子(図示略)に囲まれ、ベース部3に対して絶縁されていることが好ましい。
【0040】
(ベース部)
ベース部3は、静電吸着用電極13の載置板11側とは反対側(静電吸着用電極13の下方)に配置される。ベース部3には、載置台11aが搭載される。ベース部3は、載置板11を冷却して、所望の温度に調整する。ベース部3は、厚さのある円板状を呈している。ベース部3の形状は任意に選択でき、例えば、その内部に水を循環させる流路(図示略)が形成された、水冷ベース部等が好適に使用できる。
【0041】
ベース部3を構成する材料としては、熱伝導性、導電性、加工性に優れた金属、またはこれらの金属を含む複合材であれば特に制限はなく、必要に応じて選択できる。例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銅(Cu)、銅合金、ステンレス鋼(SUS)、チタン等が好適に用いられる。ベース部3の少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理が施されているか、あるいはアルミナ等の絶縁膜が成膜されていることが好ましい。
【0042】
(第2絶縁層)
第2絶縁層7は、絶縁性および耐電圧性を有するフィルム状またはシート状の樹脂であることが好ましく、ベース部3と静電吸着用電極13との間に設けられている。本実施形態においては、第2絶縁層7は、不図示の接着剤を介してベース部3の上面に接着されている。第2絶縁層7は、上述した第1絶縁層14と同様の構成(形成材料、厚さ)とすることができる。なお第2絶縁層7とベース部3の間の線を前記接着剤として考えても良い。
【0043】
(接着層)
接着層8は、載置板11の下面とベース部3の上面との間に介在し、第1絶縁層14、静電吸着用電極13、第2絶縁層7の側面を覆って、本体部2の各層を一体化している。
また、接着層8は、熱応力の緩和作用を有する。
【0044】
接着層8は任意の材料で形成されることができ、例えば、シリコーン系樹脂組成物を加熱硬化した硬化体またはアクリル樹脂で形成されている。接着層8は、流動性ある樹脂組成物を載置板11とベース部3の間に充填した後に加熱硬化させることで形成することが好ましい。
【0045】
(フォーカスリング)
フォーカスリング30は、載置板11の周縁部11bの上を向く面に、本例では段差面19aに、搭載される。フォーカスリング30は、その下側に位置する段差面19aの溝部(ガス流路)40を覆う。
本実施形態において、静電吸着用電極13は、平面視でフォーカスリング30と重なる位置まで延びる。これにより、静電吸着用電極13は、フォーカスリングを静電吸着する。すなわち、フォーカスリング30は、載置板11の周縁部11bに静電吸着されている。
フォーカスリング30は、載置台11aの周囲を囲む。フォーカスリング30は、平面視で環形状を有する。フォーカスリング30の内径は、載置台11aの外径より若干大きい。
【0046】
フォーカスリング30は、プラズマエッチング等の処理工程において、板状試料Wと同一の温度になるように制御されることが好ましい。フォーカスリング30の材質は任意で選択されるが、例えば、酸化膜エッチングに用いられる場合、多結晶シリコンや、炭化ケイ素などの焼結体が好適に用いられる。
【0047】
図1に示すように、フォーカスリング30は、上下方向に互いに分割された、離間可能な、上側部31と下側部32とを有する。上側部31および下側部32は、それぞれ円環形状を有する。
【0048】
下側部32は、その下側に位置する段差面19aの溝部(ガス流路)40を覆う。溝部40に導入される冷却ガスは、下側部32を冷却するとともに、下側部32を介し上側部31を冷却する。下側部32は、静電吸着されることで本体部2に固定される。下側部32には、リフトピン39が挿通する挿通孔32h(図示略)が設けられている。下側部32は、リフトピン39が上下動した場合であっても、本体部2に固定された状態を維持する。
【0049】
上側部31は、下側部32の上側に位置している。上側部31は、静電吸着により、下側部32を介して本体部2に固定されている。上側部31の下面には、リフトピン39の上端面が固定されている。これにより、上側部31は、リフトピン39の上昇に伴い、下側部32から離間する。
なお、
図1に仮想線(二点鎖線)として示すように、上側部31と下側部32との間には、冷却ガスが流動する溝部(ガス流路)50が設けられることも好ましい。下側部32には、溝部50に対して開口し、上下方向に貫通する冷却ガス導入孔51が設けられていてもよい。冷却ガス導入孔51は、溝部40から、又は第2の冷却ガス導入孔から直接、冷却ガスを導入する。溝部50は、上側部31の下面に設けられていても、あるいは下側部32の上面に設けられていてもよい。両方に設けられていても良い。これらの場合は、上側部31と下側部32との間にも、冷却ガスが導入され、冷却ガスが上側部31を直接的に冷却する。
なお溝部50がある場合、溝部40を省略して、段差面19aを平面としても良い。この場合、第2の冷却ガス導入孔を溝部50と結合する。
【0050】
上側部31は、上側を向く搭載面31aを有する。搭載面31aは、板状試料Wの下面と対向する。搭載面31aは、板状試料Wをリフトしない時には、載置台11aの載置面19の高さ以下の高さ、すなわち載置面19よりも低い高さ、に位置する。なお、ここで載置面19の高さとは、断面から見た時、載置面19において、板状試料Wが搭載される高さを意味する。すなわち、本実施形態において、載置面19の高さは、突起部45の頂点の高さを意味する。なおこれら高さは、断面から見た時のベース部の底面からの距離としてとらえても良い。搭載面31aは、リフトピン39による上昇に伴い、板状試料Wを搭載する。
搭載面31aの表面粗さRaは、0.05μm以下とすることが好ましい。これにより、搭載面31aと板状試料Wとの接触が滑らかとなり、搭載面31aの摩耗が進みにくくなり摩耗に起因するパーティクルの発生を抑制できる。
【0051】
なお、
図1に仮想線(二点鎖線)として示すように、搭載面31aの径方向外側において、周方向に延びる突出部31cが更に設けられていてもよい。突出部31cは、板状試料Wを径方向外側から囲む。突出部31cの上面の高さは、板状試料Wの上面の高さと略一致する。突出部31cが設けられていることで、平面視で板状試料Wの内側と外側とで、プラズマに対する電気的な環境の一致性が高まる。これにより、板状試料Wとその外側とでプラズマ処理の差や偏りをより生じにくくすることができ、エッチングの均質性を高めることができる。突出部31cの形状は任意に選択できるが、環形であることが好ましい。突出部31cはフォーカスリング上に配置され、フォーカスリングと比べて外径が同じで内径が大きいことも好ましい。
【0052】
図2Aに示すように、フォーカスリング30の上側部31は、平面視で環形状である。またフォーカスリング30の上側部31は、周方向に互いに分割された可動部33と、固定部34と、を好ましく有する。図ではフォーカスリング30の上側部は2つに分割されており、可動部と固定部は1つずつである。必要に応じて、2つ以上に分割されても良い。
図2Bに示すように、可動部33は、リフトピン39の上昇に伴い上昇する。この動作により、可動部33は、板状試料を持ち上げることができる。また、可動部33の下面には、下側部32の上面に設けられた位置決めピン38に嵌合する図示略の位置決め孔が設けられている。位置決めピン38および位置決め孔(図示略)が設けられることにより、リフトピン39とともに可動部33を下降させた際に、可動部33がずれることなく下側部32に位置決めされる。
一方で、固定部34は、下側部32に対して(すなわち、ベース部3側に対して)固定されている。従って固定部34は、リフトピン39が上下運動しても下側部32から離間しない。
【0053】
可動部33は、一部が径方向に開口することで、可動部の両端の間に開口部33bを有し、平面視でC字形状を構成する。また、固定部34は、可動部33が移動しない時には、平面視で、可動部33の開口部33b内に位置する。
図2Aに示すように、静電チャック装置1の定常状態において、可動部33および固定部34は、周方向に連なって閉環を構成する。また、
図2Bに示すように静電チャック装置1がリフト状態ある時は、可動部33のみが上昇して、可動部33の開口部33bが開放される。
リフト状態において開口部33bには、板状試料Wを移送するための移送爪(図示略)を、径方向外側から挿入することができる。
【0054】
可動部33は、一対の周方向端部に、それぞれ下側を向く傾斜面である、第1の面33aを有する。搭載面31aにある、前記一対の周方向端部の端線は、本例では、環形状の中心を通る直線上にあるが、本発明はこれに限定されない。
一方、固定部34は、一対の周方向端部に、それぞれ上側を向く傾斜面である、第2の面34aを有する。定常状態において、第1の面33aと第2の面34aとは、平面視で互いに重なり合う。第1の面33aと第2の面34aとは、静電チャック装置1の定常状態で、上下方向に5mm以下の隙間を介して対向する。隙間の下限は任意に選択でき、0.01mm等としても良い。また、第1の面33aと第2の面34aとは、定常状態で、隙間の間隔がないように、接触していてもよい。定常状態において、第1の面33aと第2の面34aとは、互いの斜めの面によって上下方向に互いに重なる。この構造により、可動部33と固定部34と接触部、あるいはこれら部の間の隙間は、上下方向に対し、斜めに向かって延びた状態となる。これにより、侵入にかかる経路を長くすることができ、可動部33と固定部34との間の隙間へのプラズマの侵入を抑制できる。したがって、隙間において可動部33および固定部34が侵食されて隙間が広がることを抑制でき、長寿命の静電チャック装置1を提供できる。なお、第1の面33aおよび第2の面34aの、水平方向に対する傾斜角(鋭角)は、45°以下とすることが好ましい。これにより、可動部33と固定部34との間の隙間へのプラズマ侵入をより効果的に抑制できる。
なお平面視での、固定部34の表面積と、可動部33の表面積との比率、すなわち分割された搭載面の面積の比率は任意で選択できるが、例えば、1:1.5〜1:15、1:1.5〜1:5、又は、1:1.5〜1:3、などが、例として挙げられる。
【0055】
なお、本実施形態において、第1の面33aおよび第2の面34aは、一定の勾配を有する傾斜面であるが、このような形態のみに限定されない。例えば、第1の面33aと第2の面34aとは、階段状に延び上下方向に対向する段差面の一部であってもよい。また、第1の面33aと第2の面34aは、周方向に沿って勾配が変化する傾斜面であってもよい。
本実施形態のフォーカスリング30は、互いに別部材の上側部31と下側部32とを有する構成や、下側部32を有さない構成も採用可能である。
同様にフォーカスリング30は、固定部34を有さない構成も採用可能である。すなわち、フォーカスリング30は、閉じた円環状の可動部がリフトピンとともに上昇し、板状試料Wを持ち上げる構成としてもよい。具体的には、閉じる円環状の可動部は、
図2Aにおける固定部34を可動部33と一体化し、一体化した上側部31を可動部としたものであっても良い。あるいは、前記一体化した上側部31と、下側部32とを、更に一体化してこれを可動部としたものであっても良い。固定部34と下側部32を一体化してもよい。
【0056】
以上に説明したように、本発明の構造は優れた効果を提供する。
本実施形態の静電チャック装置1によれば、載置台11aの周囲を囲むフォーカスリング30の少なくとも一部を上昇させる。このことで、板状試料Wを載置台11aの載置面19から離脱させることができる。したがって、載置台11aを貫通するリフトピンが不要となる。
その結果、載置面19に開口し、載置面19内の温度的な特異点となりやすいリフトピン挿通孔を設ける必要がなく、載置面19の面内の温度の均一性を高めることができる。
【0057】
本実施形態の静電チャック装置1によれば、円環状のフォーカスリング30により、平面視で円形状の板状試料Wの周縁を支持することができる。したがって、板状試料Wを支持するための接触面積を広く確保して、板状試料に加わる負荷を軽減できる上に、板状試料Wの摩耗によるパーティクル発生も抑制できる。
さらに、本実施形態の静電チャック装置1は、リフト状態においてフォーカスリング30が板状試料Wの周縁で接触する。したがって、例えば、板状試料Wがシリコンウエハであり、シリコンデバイス製造に静電チャック装置1を用いる場合等において、リフト状態でデバイス領域に負荷が加わることがなく、信頼性の高い製造工程を構築できる。
【0058】
本実施形態の静電チャック装置1によれば、フォーカスリング30は、平面視で環形状であり、周方向に互いに分割された可動部33と固定部34とを好ましく有する。このような構成により、可動部33は、その両端に挟まれた、径方向に開口する開口部33bを有する。したがって、可動部33は、リフト状態で、開口部33bを開放して、開口部33bから移送爪部(図示略)を径方向外側から挿入できる。
【0059】
また、本実施形態の静電チャック装置1によれば、フォーカスリング30は、その下側に設けられたガス流路としての溝部40を覆う。より具体的には、フォーカスリング30は、上側部31と下側部32とを有し、下側部32の下側には、溝部40が好ましく設けられる。また、静電チャック装置1の変形例として、上側部31と下側部32との間に、溝部50が設けられていてもよい。このような構成により、フォーカスリング30を冷却ガスにより効果的に冷却し、板状試料Wの外周部の温度を安定化することができ、板状試料Wの面内におけるエッチング特性を均一化することができる。
【0060】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。