【実施例】
【0045】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、使用した試薬の略語並びに使用した装置及びその条件は、以下の通りである。
【0046】
DCT:Dicarboxyl Triptycene
DCTCl:Triptycene Dicarbonyl Chloride
DCTDNB:Dicarboxyl Triptycene Dinitrobenzoate
DCTDAB:Dicarboxyl Triptycene Diaminobenzoate
DCTDNBA:Dicarboxyl Triptycene Dinitrobenzamide
DCTDABA:Dicarboxyl Triptycene Diaminobenzamide
【0047】
<HPLC分析>
カラム:Inertsil ODS−3、5μm、4.6×250mm
オーブン:40℃、 検出波長:217nm、254nm、 流速:1.0mL/分
溶離液:
DCT:アセトニトリル/0.5%リン酸水溶液=50/50 サンプル注入量:10μL
DCTCl:アセトニトリル/0.5%リン酸水溶液=50/50 サンプル注入量:10μL
DCTDNB:アセトニトリル/0.5%リン酸水溶液=70/30 サンプル注入量:10μL
DCTDAB:アセトニトリル/0.5%リン酸水溶液=40/60 サンプル注入量:10μL
DCTDNBA:アセトニトリル/0.5%リン酸水溶液=70/30 サンプル注入量:10μL
DCTDABA:アセトニトリル/水=70/30 サンプル注入量:10μL
<
1H NMR分析>
装置:フーリエ変感型超伝導核磁気共鳴装置(FT−NMR)(INOVA−400(Varian社)400MHz
溶媒:DMSO−d6、CDCl
3
内標準物質:テトラメチルシラン(TMS)
<数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定>
装置:昭和電工(株)製、Showdex GPC−101
カラム:KD803およびKD805
カラム温度:50℃
溶出溶媒:DMF、流量:1.5ml/分
検量線:標準ポリスチレン
【0048】
[1]DCTDAB及びDCTDABAの合成
[合成例1−1:DCTDNBの合成]
窒素雰囲気下、DCT(14.0g)、N,N−ジメチルホルムアミド(1.4g)をクロロホルム(210g)に加え、ここに塩化チオニル(48.8g)を15分かけて滴下した後、還流条件下(61℃)で3.5時間撹拌した。HPLCで反応の終了を確認後、N,N−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、塩化チオニルを減圧留去し、DCTClの粗物を得た。
室温、窒素雰囲気下、DCTCl粗物をN,N−ジメチルホルムアミド(311g)に溶解し、ここに4−ニトロフェノール(12.6g)、トリエチルアミン(12.5g)、N,N−ジメチルホルムアミド(62.2g)の混合溶液を30分かけて滴下した後、室温にて16時間撹拌した。反応液に水(351g)を加え、30分撹拌後、析出物をろ過により回収し、水(150g)で2回、メタノール(150g)で2回洗浄した。ろ取物(29.9g)を50℃で減圧乾燥しDCTDNB粗物を21.5g得た。
次にこのDCTDNB粗物(20.5g)をテトラヒドロフラン(205g)に加え、50℃で1時間撹拌後ろ過し、ろ取物をテトラヒドロフラン(20g)で2回洗浄した。この操作を再度行い、得られたろ取物(22.5g)を50℃にて減圧乾燥し、DCTDNBの結晶を18.5g得た(収率;77.0%、HPLC面百値(保持時間;30.9min);99.5%)。
1HNMR分析結果より、該結晶がDCTDNBであることを確認した。
1HNMR(DMSO−d6、δppm):8.5(m、4H)、8.0(m,4H)、8.0(m,6H)、7.3(m,6H).
【0049】
[実施例1−1:DCTDABの合成]
反応容器内に、合成例1−1で得たDCTDNB(6.1g)、5%Pd−C(STDタイプ、wet品、エヌ・イー ケムキャット(株)製、0.61g)、N,N−ジメチルホルムアミド(91.7g)を仕込み、反応容器内を水素置換した後、水素圧0.8MPaの条件下、室温にて21時間撹拌した。同じ操作をDCTDNB(6.1g)スケールで2度実施した。
反応完了をHPLCにて確認し、反応液を合一後、ろ過によって反応混合物からPd−Cを取り除き、このPd−CをN,N−ジメチルホルムアミド(37g)で2回洗浄し、洗浄に用いたN,N−ジメチルホルムアミドをろ液とともに回収した。このろ液に水(361.8g)を滴下後、析出物をろ過によって回収し、ろ取物を水(37g)で3回洗浄した。このろ取物(21.0g)を50℃にて減圧乾燥することでDCTDABろ物を15.9g得た。このDCTDABろ物をN,N−ジメチルホルムアミド(191g)に加え、50℃に昇温させて溶解させた後、5℃に冷却した。この後、イソプロピルアルコール(382g)を滴下し、1時間撹拌後、析出物をろ過によって回収し、イソプロピルアルコール(37g)で2回洗浄した。ろ取物(17.5g)を50℃にて減圧乾燥することでDCTDABの結晶を12.7g得た(収率;75.2%、HPLC面百値(保持時間;6.1min);99.3%)。
1HNMR分析結果より、該結晶がDCTDABであることを確認した。
1HNMR(DMSO−d6、δppm):8.0(m,6H)、7.3(m,4H )、7.2(m,6H)、6.8(m,4H)、5.3(s,4H).
【化30】
【0050】
[合成例1−2:DCTDNBAの合成]
窒素雰囲気下、DCT(16.2g)、N,N−ジメチルホルムアミド(1.6g)をクロロホルム(292g)に加え、ここに塩化チオニル(56.4g)を15分かけて滴下した後、還流条件下(61℃)で3.5時間撹拌した。HPLCで反応の終了を確認後、N,N−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、塩化チオニルを減圧留去し、DCTClの粗物を得た。
窒素雰囲気下、DCTCl粗物をテトラヒドロフラン(126g)に加え5℃に冷却後、ここに4−ニトロアニリン(14.4g)、トリエチルアミン(10.6g)、テトラヒドロフラン(143.8g)の混合溶液を30分かけて滴下した後、室温へ昇温し20時間撹拌した。反応液に水(539g)を加え、30分撹拌後、析出物をろ過により回収し、水(90g)で2回、メタノール(90g)で2回洗浄した。ろ取物(36.3g)を70℃で減圧乾燥しDCTDNBA粗物を25.0g得た。
次にこのDCTDNBA粗物(25.0g)をN,N−ジメチルホルムアミド(250g)に加え、80℃で溶解後、室温に冷却した。メタノール(750g)を滴下し、1時間撹拌後ろ過し、ろ取物をメタノール(54g)で3回洗浄した。得られたろ取物(29.4g)を70℃にて減圧乾燥し、DCTDNBAの結晶を21.6g得た(収率;77.8%、HPLC面百値(保持時間;20.7min);99.8%)。
1HNMR分析結果より、該結晶がDCTDNBAであることを確認した。
1HNMR(DMSO−d6、δppm):11.0(s、2H)、8.3(m、4H)、8.2(m,4H)、8.0(m,6H)、7.2(m,6H).
【0051】
[実施例1−2:DCTDABAの合成]
反応容器内に、合成例1−2で得たDCTDNBA(7.2g)、5%Pd−C(STDタイプ、wet品、エヌ・イー ケムキャット(株)製、0.61g)、N,N−ジメチルホルムアミド(72g)を仕込み、反応容器内を水素置換した後、水素圧0.8MPaの条件下、室温にて23時間撹拌した。同じ操作をDCTDNBA(7.2g)スケールで2度実施した。
反応完了をHPLCにて確認し、反応液を合一後、ろ過によって反応混合物からPd−Cを取り除くき、このPd−CをN,N−ジメチルホルムアミド(43g)で2回洗浄し、洗浄に用いたN,N−ジメチルホルムアミドをろ液とともに回収した。このろ液にヒドラジン1滴を添加後、水(1250g)を滴下した。析出物をろ過後、ろ取物を水(43g)で2回洗浄した。このろ取物を70℃にて減圧乾燥することでDCTDABAの結晶を18.6g得た(収率;96.1%、HPLC面百値(保持時間;4.5min);99.6%)。
1HNMR分析結果より、該結晶がDCTDABAであることを確認した。
1HNMR(DMSO−d6、δppm):9.8(s,2H)、8.0(m,6H )、7.5(m,4H)、7.1(m,6H)、6.6(m,4H)、5.0(s,4H).
【化31】
【0052】
[2]ポリイミドの合成
[実施例2−1]
窒素置換したフラスコ内に、2,2’−ジ(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)2.478g(0.0077mol)及びDCTDAB 0.4511g(0.00085mol)を入れた。そこへN−メチル−2−ピロリドン(NMP) 9.47gを加え、撹拌してTFMB及びDCTDABが溶解したことを確認した。更に2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸−1,4:2,3−二無水物(TCA)0.9639g(0.0043mol)及びNMP 3.789gを加えた。そして、得られた混合物を窒素雰囲気下、90℃で4時間撹拌し、反応混合物を50℃まで冷却した後、更に1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA) 0.8432g(0.0043mol)及びNMP 5.684gを加え、そのまま一晩撹拌した。
その後、固形物濃度が8質量%となるようにNMPを用いて反応混合物を希釈し、希釈した反応混合物に無水酢酸 3.512g(0.0344mol)およびピリジン 2.04g(0.0258mol)を加えた後、窒素雰囲気下、90℃で4時間撹拌した。
次いで、得られた反応混合物を350gのメタノール中に滴下して30分間撹拌し、ろ過によって析出物を回収した。この操作を3回繰り返した。
最後に、得られたろ物を減圧下、150℃で8時間乾燥し、ポリイミド(I)を得た(3.26g 収率:73.6%)。
【0053】
[実施例2−2]
窒素置換したフラスコ内に、2,2’−ジ(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)1.838g(0.0057mol)及びDCTDAB 1.2904g(0.0025mol)を入れた。そこへN−メチル−2−ピロリドン(NMP) 9.703gを加え、撹拌してTFMB及びDCTDABが溶解したことを確認した。更に2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸−1,4:2,3−二無水物(TCA)0.919g(0.0041mol)及びNMP 3.881gを加えた。そして、得られた混合物を窒素雰囲気下、90℃で4時間撹拌し、反応混合物を50℃まで冷却した後、更に1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA) 0.804g(0.0041mol)及びNMP 5.822gを加え、そのまま一晩撹拌した。
その後、固形物濃度が8質量%となるようにNMPを用いて反応混合物を希釈し、希釈した反応混合物に無水酢酸 3.348g(0.0328mol)およびピリジン 1.946g(0.0246mol)を加えた後、窒素雰囲気下、90℃で4時間撹拌した。
次いで、得られた反応混合物を350gのメタノール中に滴下して30分間撹拌し、ろ過によって析出物を回収した。この操作を3回繰り返した。
最後に、得られたろ物を減圧下、150℃で8時間乾燥し、ポリイミド(II)を得た(3.12g 収率:68.4%)。
【0054】
[実施例2−3]
窒素置換したフラスコ内に、2,2’−ジ(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)2.882g(0.009mol)及びDCTDAB 0.5245g(0.001mol)を入れた。そこへN−メチル−2−ピロリドン(NMP)15.78gを加え、撹拌してTFMB及びDCTDABが溶解したことを確認した。更にビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物(BODA)1.251g(0.005mol)及びNMP 3.38gを加えた。そして、得られた混合物を窒素雰囲気下、90℃で4時間撹拌し、反応混合物を50℃まで冷却した後、更に1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA) 0.9805g(0.005mol)及びNMP 3.38gを加え、そのまま一晩撹拌した。
その後、固形物濃度が8質量%となるようにNMPを用いて反応混合物を希釈し、希釈した反応混合物に無水酢酸 4.08g(0.04mol)およびピリジン 2.373g(0.03mol)を加えた後、窒素雰囲気下、100℃で4時間撹拌した。
次いで、得られた反応混合物を100gのメタノール中に滴下して30分間撹拌し、ろ過によって析出物を回収した。この操作を3回繰り返した。
最後に、得られたろ物を減圧下、150℃で8時間乾燥し、ポリイミド(III)を得た(4.91g 収率:87.0%)。
【0055】
[実施例2−4]
窒素置換したフラスコ内に、2,2’−ジ(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)8.64g(0.027mol)及びDCTDAB 1.573g(0.003mol)を入れた。そこへN−メチル−2−ピロリドン(NMP)52.99gを加え、撹拌してTFMB及びDCTDABが溶解したことを確認した。更にノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2”−ノルボルナン−5,5”,6,6”−テトラカルボン酸二無水物(CpODA)5.765g(0.015mol)及びNMP 11.35gを加えた。そして、得られた混合物を窒素雰囲気下、90℃で10分間撹拌し、更に1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA) 2.942g(0.015mol)及びNMP 11.35gを加え、その後、180℃で7時間撹拌した。
その後、室温にて、反応混合物を350gのメタノール中に滴下して30分間撹拌し、ろ過によって析出物を回収した。この操作を3回繰り返した。
最後に、得られたろ物を減圧下、150℃で8時間乾燥し、ポリイミド(IV)を得た(16.08g 収率:85.0%)。
【0056】
[実施例2−5]
窒素置換したフラスコ内に、2,2’−ジ(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)5.764g(0.018mol)及びDCTDAB 1.049g(0.002mol)を入れた。そこへγ−ブチロラクトン(GBL)31.57gを加え、撹拌してTFMB及びDCTDABが溶解したことを確認した。更にビシクロ[2,2,2]オクタン−2,3:5,6−テトラカルボン酸二無水物(BODAxx)2.5g(0.01mol)、γ−ブチロラクトン(GBL)6.84g、及び1−エチルピペリジン0.23gを加えた。そして、得られた混合物を窒素雰囲気下、140℃で3時間撹拌し、更に1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)1.9611g(0.01mol)、γ−ブチロラクトン(GBL)6.84g、1−エチルピペリジン0.23gを加え、その後、180℃で7時間撹拌した。
その後、室温にて、反応混合物を350gのメタノール中に滴下して30分間撹拌し、ろ過によって析出物を回収した。この操作を3回繰り返した。
最後に、得られたろ物を減圧下、150℃で8時間乾燥し、ポリイミド(V)を得た(9.696g 収率:86.0%)。
【0057】
[実施例2−6]
窒素注入/排出口を有しメカニカルスターラーが取り付けられた100mL三口反応フラスコ内に、2,2’−ジ(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)1.457g(0.00455mol)及びDCTDABA 1.019g(0.00195mol)を入れた。そこへγ−ブチロラクトン(GBL)13.13gを加え、撹拌してTFMB及びDCTDABAが溶解したことを確認した。
更に2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸−1,4:2,3−二無水物(TCA)0.7285g(0.00325mol)及びγ−ブチロラクトン(GBL)2.813gを加えた。そして、得られた混合物を窒素雰囲気下、90℃で7時間撹拌し、
反応混合物を50℃まで冷却した後、更に1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA) 0.637g(0.00325mol)及びGBL 2.813gを加え、そのまま窒素雰囲気下で一晩撹拌した。 その後、固形物濃度が10質量%となるようにGBLを用いて反応混合物を希釈し、希釈した反応混合物に無水酢酸 2.654g(0.026mol)およびピリジン 1.542g(0.0195mol)を加えた後、100℃で4時間撹拌した。
次いで、得られた反応混合物を250gのメタノール中に滴下して30分間撹拌し、ろ過によって析出物を回収した。この操作を3回繰り返した。
最後に、得られたろ物を減圧下、120℃で8時間乾燥し、ポリイミド(VI)を得た(3.53g 収率:92%)。
【0058】
[3]ポリイミド溶液(ワニス)の調製
[実施例3−1]
実施例2−1で得られたポリイミド(I)を、濃度が12質量%となるようにNMPに溶解させ、ポリイミド溶液(I)を得た。
[実施例3−2]
実施例2−1で得られたポリイミド(I)の代わりに、実施例2−2で得られたポリイミド(II)を用いた以外は、実施例3−1と同様の方法でポリイミド溶液(II)を得た。
[実施例3−3]
実施例2−1で得られたポリイミド(I)の代わりに、実施例2−3で得られたポリイミド(III)を用いた以外は、実施例3−1と同様の方法でポリイミド溶液(III)を得た。
[実施例3−4]
実施例2−1で得られたポリイミド(I)の代わりに、実施例2−4で得られたポリイミド(IV)を用いた以外は、実施例3−1と同様の方法でポリイミド溶液(IV)を得た。
[実施例3−5]
実施例2−5で得られたポリイミド(V)を、濃度が12質量%となるようにGBLに溶解させ、ポリイミド溶液(V)を得た。
[実施例3−6]
実施例2−6で得られたポリイミド(VI)を、濃度が12質量%となるようにGBLに溶解させ、ポリイミド溶液(VI)を得た。
【0059】
[4]ポリイミドの膜の作製
[実施例4−1]
まず、実施例3−1で得られたポリイミド溶液(I)を、5μmのフィルターを用いて加圧ろ過した。
その後、大気下で、ろ過したポリイミド溶液(I)をガラス基板上に塗布し、50℃で30分間、140℃で30分間、200℃で60分間、順次加熱し、ポリイミドの膜を得た。そして、得られたポリイミドの膜に四角形の切込みを入れて膜を剥がし、評価試料とした。
[実施例4−2]
実施例3−1で得られたポリイミド溶液(I)の代わりに、実施例3−2で得られたポリイミド溶液(II)を用いた以外は、実施例4−1と同様の手順・方法でポリイミドの膜を得た。そして、得られたポリイミドの膜に四角形の切込みを入れて膜を剥がし、評価試料とした。
[実施例4−3]
実施例3−1で得られたポリイミド溶液(I)の代わりに、実施例3−3で得られたポリイミド溶液(III)を用いた以外は、実施例4−1と同様の手順・方法でポリイミドの膜を得た。そして、得られたポリイミドの膜に四角形の切込みを入れて膜を剥がし、評価試料とした。
[実施例4−4]
実施例3−1で得られたポリイミド溶液(I)の代わりに、実施例3−4で得られたポリイミド溶液(IV)を用いた以外は、実施例4−1と同様の手順・方法でポリイミドの膜を得た。そして、得られたポリイミドの膜に四角形の切込みを入れて膜を剥がし、評価試料とした。
[実施例4−5]
実施例3−1で得られたポリイミド溶液(I)の代わりに、実施例3−5で得られたポリイミド溶液(V)を用いた以外は、実施例4−1と同様の手順・方法でポリイミドの膜を得た。そして、得られたポリイミドの膜に四角形の切込みを入れて膜を剥がし、評価試料とした。
[実施例4−6]
実施例3−6で得られたポリイミド溶液(VI)を、5μmのフィルターを用いて加圧ろ過した。
その後、ろ過したポリイミド溶液(VI)をガラス基板上に塗布し、大気下で、50℃で30分間、140℃で30分間、200℃で60分間、順次加熱し、透明のポリイミドの膜を得た。そして、得られたポリイミドの膜を機械的切断にて剥がし、評価試料とした。
【0060】
[5]ポリイミドの膜及び膜の評価
上述の手順にて作製した各膜(評価試料)の耐熱性及び光学特性、すなわち、50℃乃至200℃における線膨張係数(CTE)、5%重量減少温度(Td
5%)、光線透過率(T
400nm、T
550nm)及びCIE b
*値(黄色評価)、リタデーション(R
th、R
0)並びに複屈折(Δn)に関して、下記手順に従いそれぞれ評価した。結果を表1に示す。
1)線膨張係数(CTE)
<実施例4−1〜4−5 試料>
TAインスツルメンツ社製 TMA Q400を用いて、膜を幅5mm、長さ16mmのサイズにカットし、まず10℃/minで昇温して50乃至300℃まで加熱(第一加熱)し、次いで10℃/minで降温して50℃まで冷却した後に、10℃/minで昇温して50乃至420℃まで加熱(第二加熱)した際の、第二加熱の50℃乃至200℃における線膨張係数(CTE[ppm/℃])の値を測定することで求めた。なお、第一加熱、冷却および第二加熱を通じて、荷重0.05Nを加えた。
<実施例4−6 試料>
各評価試料を幅5mm、長さ16mmのサイズにカットし、これをTAインスツルメンツ社製 TMA Q400を用いて、まず10℃/minで昇温して50乃至300℃まで加熱(第一加熱)し、次いで10℃/minで降温して30℃まで冷却した後に、10℃/minで昇温して30乃至410℃まで加熱(第二加熱)した際の、第二加熱の50℃乃至200℃、並びに200℃乃至250℃における線膨張係数(CTE[ppm/℃])の値を測定することで求めた。なお、第一加熱、冷却および第二加熱を通じて、荷重0.05Nを加えた。
2)5%重量減少温度(Td
5%)
<実施例4−1〜4−5 試料>
5%重量減少温度(Td
5%[℃])は、TAインスツルメンツ社製 TGA Q500を用い、窒素中、膜約5乃至10mgを50乃至800℃まで10℃/minで昇温して測定することで求めた。
<実施例4−6 試料>
5%重量減少温度(Td
5%[℃])は、TAインスツルメンツ社製 TGA Q500を用い、窒素中、膜約5乃至10mgを50乃至800℃まで10℃/minで昇温して測定することで求めた。なお、150℃における重量を重量減少0%とした。
3)光線透過率(透明性)(T
400nm、T
550nm)及びCIE b値(CIE b
*)
<実施例4−1〜4−5 試料>
波長400nm及び550nmの光線透過率(T
400nm、T
550nm[%])及びCIE b値(CIE b
*)は、日本電色工業(株)製 SA4000スペクトロメーターを用いて、室温にて、リファレンスを空気として、測定を行った。
<実施例4−6 試料>
波長400nm及び550nmの光線透過率(T
400nm、T
550nm[%])は、(株)島津製作所 紫外可視分光光度計 UV−Visible 3600を用い、室温にて、リファレンスを空気として、測定を行った。
CIE b値(CIE b
*)は、日本電色工業(株)製 SA4000スペクトロメーターを用いて、室温にて、リファレンスを空気として、測定を行った。
4)リタデーション(R
th、R
0)
厚さ方向リタデーション(R
th)及び面内リタデーション(R
0)を、王子計測機器(株)製、KOBURA 2100ADHを用いて、室温にて測定した。
なお、厚さ方向リタデーション(R
th)及び面内リタデーション(R
0)は以下の式にて算出される。
R
0=(Nx−Ny)×d=ΔNxy×d
R
th=[(Nx+Ny)/2−Nz]×d=[(ΔNxz×d)+(ΔNyz×d)/2
Nx、Ny:面内の直交する2つの屈折率(Nx>Ny、Nxを遅相軸、Nyを進相軸とも称する)
Nz:面に対して厚さ(垂直)方向(垂直)の屈折率
d:膜厚
ΔNxy:面内の2つの屈折率の差(Nx−Ny)(複屈折)
ΔNxz:面内の屈折率Nxと厚さ方向の屈折率Nzの差(複屈折)
ΔNyz:面内の屈折率Nyと厚さ方向の屈折率Nzの差(複屈折)
5)膜厚(d)
得られた膜の膜厚は、(株)テクロック製 シックネスゲージにて測定した。
6)複屈折(Δn)
前述の<4)リタデーション>により得られた厚さ方向リタデーション(R
th)の値を用い、以下の式にて算出した。
ΔN=[R
th/d(フィルム膜厚)]/1000
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示される通り、本発明のジアミンを用いて製造した膜(実施例4−1〜実施例4−5)は、非常に柔軟性であり、また特に波長550nmにおける透過率(T
550nm)がおよそ90%と高いという結果となった。また該膜の面内リタデーションR
0は2.2nm〜9.8nm、厚さ方向のリタデーションR
thに関しても440nm〜1022nmという低い値となった。
このように、本発明のジアミンを用いて製造した膜は、高い柔軟性と透明性、低いリタデーションという特性を有し、すなわちフレキシブルディスプレイ基板のベースフィルムとして必要な要件を満たすものであり、フレキシブルディスプレイ基板のベースフィルムとして特に好適に用いることができることが期待できる。