(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806110
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】水処理設備のメンテナンス支援装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20201221BHJP
C02F 1/00 20060101ALI20201221BHJP
G06Q 10/00 20120101ALI20201221BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
C02F1/00 Z
G06Q10/00 300
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-56457(P2018-56457)
(22)【出願日】2018年3月23日
(65)【公開番号】特開2019-168941(P2019-168941A)
(43)【公開日】2019年10月3日
【審査請求日】2019年2月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 徹
【審査官】
藤井 浩介
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5035493(JP,B2)
【文献】
特開2017−016239(JP,A)
【文献】
特開2013−242774(JP,A)
【文献】
特開2009−075884(JP,A)
【文献】
特開2008−310633(JP,A)
【文献】
特開2003−256730(JP,A)
【文献】
特開2002−352024(JP,A)
【文献】
特開2002−334189(JP,A)
【文献】
特開2004−287688(JP,A)
【文献】
特開2005−122541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 10/00−10/10
G06F 17/60
C02F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検頻度及び点検内容を含む、水処理設備を設置している顧客との契約情報を記憶する契約情報記憶部と、
前記水処理設備に対する複数種類の作業の各々について、使用する物品の情報を記憶する作業内容記憶部と、
前記水処理設備からリアルタイム又は定期的に収集された運転データに基づいて、該水処理設備に所定期間内に必要となるメンテナンス作業を予測するメンテナンス予測部と、
前記契約情報、前記水処理設備から通知された、異常が発生したことを示すアラームの内容及び前記メンテナンス予測部で予測された作業情報に基づいて、前記顧客の水処理設備に対して実施する作業を決定する作業決定部と、
前記作業内容記憶部の情報に基づいて、前記作業決定部が決定した作業に使用する物品を特定し、該物品の搬送手配を行う物品手配部と、
を備える水処理設備のメンテナンス支援装置。
【請求項2】
複数の作業者の各々について、保有するスキルの情報を記憶する作業者スキル記憶部と、
前記顧客の水処理設備に対する作業の担当者を選定する担当者選定部と、
をさらに備え、
前記作業内容記憶部は、複数種類の作業の各々について必要なスキルを記憶しており、
前記担当者選定部は、前記顧客の水処理設備に対して実施する作業に必要なスキルを保有する作業者を前記担当者として選定することを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理設備のメンテナンス支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の製造工場においては、製品の洗浄に、塩分等の不純物を除去した処理水(純水)が大量に使用される。一時的な製品生産規模の拡大に伴い、より大量の処理水が必要とされることがある。この課題を経済的に解決すべく、一時的に水処理設備を貸し出し、かつ水処理設備を構成する複数種のユニットの在庫を管理することで、同時に数多くの工場に効率良く水処理設備と水処理設備を構成する複数種のユニットの交換品とを提供する水処理設備提供システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
顧客の工場等に設置した水処理設備は、1年間のメンテナンス時期を事前に計画しておき、計画した時期になると定期メンテナンスとして、消耗品部材や老朽化した機器の交換、薬品補充等を行っていた。また、水処理設備に取り付けられたセンサからの運転信号やアラーム信号、顧客からの連絡を受けて、メンテナンスを行うこともあった。
【0004】
従来、メンテナンスの作業担当者が自ら、担当エリア内の工場に設置された水処理設備に対するメンテナンス作業の計画を立て、必要な物品(交換部材や補充薬品)の手配を行っていた。複数の工場を効率良く巡回し、メンテナンス作業を行うためには、各工場で実施する作業内容を把握し、物品の手配期間等を考慮して計画を立てる必要がある。作業担当者の能力によっては、メンテナンスを効率良く行えないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5035493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、メンテナンスに必要な作業者や物品の手配を行い、メンテナンス作業を支援する水処理設備のメンテナンス支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による水処理設備のメンテナンス支援装置は、点検頻度及び点検内容を含む、水処理設備を設置している顧客との契約情報を記憶する契約情報記憶部と、
前記水処理設備に対する複数種類の作業の各々について、使用する物品の情報を記憶する作業内容記憶部と、前記契約情報に基づいて、前記顧客の水処理設備に対して実施する作業を決定する作業決定部と、前記作業内容記憶部の情報に基づいて、前記作業決定部が決定した作業に使用する物品を特定し、該物品の搬送手配を行う物品手配部と、を備えるものである。
【0008】
本発明の一態様では、前記作業決定部は、前記水処理設備からのアラームの内容に基づいて、該水処理設備に対して実施する作業を決定する。
【0009】
本発明の一態様では、前記水処理設備からの運転データに基づいて、該水処理設備に必要となる作業を予測するメンテナンス予測部をさらに備える。
【0010】
本発明の一態様では、複数の作業者の各々について、保有するスキルの情報を記憶する作業者スキル記憶部と、前記顧客の水処理設備に対する作業の担当者を選定する担当者選定部と、をさらに備え、前記作業内容記憶部は、複数種類の作業の各々について必要なスキルを記憶しており、前記担当者選定部は、前記顧客の水処理設備に対して実施する作業に必要なスキルを保有する作業者を前記担当者として選定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、メンテナンスに必要な作業者や物品の手配を行い、メンテナンス作業を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るメンテナンス支援システムの概略図である。
【
図2】同実施形態に係るメンテナンス支援装置のブロック構成図である。
【
図3】運転状況DBのデータ構造の例を示す図である。
【
図4】契約情報DBのデータ構造の例を示す図である。
【
図5】作業内容DBのデータ構造の例を示す図である。
【
図6】アラームDBのデータ構造の例を示す図である。
【
図7】作業者スキルDBのデータ構造の例を示す図である。
【
図8】物品在庫DBのデータ構造の例を示す図である。
【
図9】作業者スケジュールDBのデータ構造の例を示す図である。
【
図10】所在地情報DBのデータ構造の例を示す図である。
【
図11】同実施形態に係るメンテナンス支援装置の機能ブロック図である。
【
図12】同実施形態に係るメンテナンス支援方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0014】
図1に示すように、監視センタ内のメンテナンス支援装置1が、顧客の工場Fに設置された水処理設備から運転データをリアルタイム又は定期的に収集する。また、メンテナンス支援装置1は、水処理設備で何らかの異常等が発生した際に、アラーム信号を受信する。メンテナンス支援装置1は、運転データ、アラーム信号とその内容、顧客との契約内容等に基づいて、水処理設備に必要なメンテナンス作業を特定する。
【0015】
メンテナンス支援装置1は、特定したメンテナンス作業を実施するために必要なスキルを有し、工場Fへ派遣可能な作業者を選定する。メンテナンス支援装置1は、作業者を複数の工場Fへ派遣する場合、各工場Fでの予想作業時間、各工場Fの場所等を考慮して、複数の工場Fを巡回する巡回ルートを作成する。メンテナンス支援装置1は、作成した巡回ルート、各工場Fでの作業内容を、作業者が所有する端末T(スマートフォン、タブレット端末、PC等)に通知する。
【0016】
メンテナンス支援装置1は、特定したメンテナンス作業に必要な物品の在庫状況を確認し、メンテナンス作業の実施日に合わせて、作業者の手配を行うとともに、必要に応じて在庫センタSから顧客への物品の搬送を手配する。
【0017】
図2に示すように、顧客の工場F等に設置される水処理設備2は、制御部20、監視部21、通信部22、及び複数の水処理ユニット23を有する。水処理ユニット23は、水処理設備に用いられる機器であり、活性炭フィルタ、逆浸透膜モジュール、電気式脱イオン装置、非再生型イオン交換器、膜式濾過器、脱気膜、ポンプ、バルブ等である。各水処理ユニット23には固有のID(識別情報)が割り当てられている。
【0018】
監視部21は、水処理設備2に設けられた各種センサ(図示略)を用いて、処理水量や処理水の水質、薬品タンクの液位等を検出し、各水処理ユニット23の運転状況を監視する。制御部20は、各水処理ユニット23の運転データをその識別情報と対応付け、通信部22により、インターネット等のネットワークを介してメンテナンス支援装置1にリアルタイムに、又は定期的に通知する。
【0019】
メンテナンス支援装置1は、メンテナンス支援装置1の動作を統括的に制御する制御部としてのCPU(Central Processing Unit)10を有している。CPU10は、OS(Operating System)プログラムをベースとし、その上で、ミドルウェアやアプリケーションプログラムなどを実行する。CPU10には、バスを介して、記憶部11、通信部12、表示部13、入力部14等が接続されている。
【0020】
記憶部11は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク装置等を含む。ROMには、各種のプログラムが格納されており、これらのプログラムに従ってCPU10が各種処理を実行することでメンテナンス支援装置1の各機能が実現される。RAMは、CPU10がプログラムに基づいて処理を実行する際にデータを一時的に格納するワークメモリとして使用される。
【0021】
ハードディスク装置は、運転状況DB(データベース)、契約情報DB、作業内容DB、アラームDB、作業者スキルDB、物品在庫DB、作業者スケジュールDB、所在地情報DB等を有する。
【0022】
図3に示すように、運転状況DBには、各水処理ユニット23の運転データが格納されている。
【0023】
図4に示すように、契約情報DBには、定期メンテナンス計画や、定期点検の契約条件(点検頻度、点検内容等)が格納されている。
【0024】
図5に示すように、作業内容DBには、標準作業時間、使用する物品(交換する機器、補充する薬品等)、必要なスキル等が作業毎に登録されている。
【0025】
図6に示すように、アラームDBには、水処理設備2から通知されたアラームの内容や時刻等が記録されている。また、アラームDBには、作業によって判明したアラーム発生の原因も記録されている。
【0026】
図7に示すように、作業者スキルDBには、メンテナンス作業を行う作業者の氏名、担当エリア、所有するスキル等が登録されている。
【0027】
図8に示すように、物品在庫DBには、各物品の在庫状況が登録されている。
【0028】
図9に示すように、作業者スケジュールDBには、メンテナンス作業を行う作業者毎のスケジュールが登録されている。
【0029】
図10に示すように、所在地情報DBには、顧客の工場の所在地(住所)が登録されている。
【0030】
メンテナンス支援装置1の通信部12は、インターネット等を介して、水処理設備2の通信部22や作業者の端末Tと通信を行う。
【0031】
表示部13は、例えば液晶ディスプレイであり、各種画面を表示する。入力部14は、管理者から各種の操作を受け付けるものであり、キーボードやマウス等である。
【0032】
CPU10が記憶部11に格納されているメンテナンス支援プログラムを実行することで、
図11に示すように、点検契約抽出部102、メンテナンス予測部104、アラーム内容抽出部106、優先度判定部108、作業決定部110、物品手配部112、担当者選定部114、巡回ルート作成部116、通知部118、更新部120等が実現される。各部の処理を
図12に示すフローチャートに沿って説明する。
図12に示すフローチャートは、本実施形態に係るメンテナンス支援方法を説明するものである。
【0033】
点検契約抽出部102が、契約情報DB内の契約内容を確認し、契約により予め決められている、近日中に実施すべきメンテナンス作業、及び作業を行う工場を抽出する(ステップS1)。
【0034】
メンテナンス予測部104が、運転状況DB内の運転データに基づいて、近日中に必要となるメンテナンス作業を予測する(ステップS2)。例えば、処理水質の変動に基づいて膜洗浄/膜交換が必要になると予測する。あるいはまた、薬品タンク内の液位の変動に基づいて、薬品補充が必要になると予測する。
【0035】
アラーム内容抽出部106が、アラームDBから、未対応のアラームの内容を抽出する(ステップS3)。
【0036】
優先度判定部108が、アラームの内容に基づいて、巡回する工場の優先度を判定する(ステップS4)。例えば、水処理が停止した等の重大なアラームを通知している工場の優先度が高く設定される。また、契約による定期メンテナンスを行う工場よりも緊急度や重要度の高いアラームを発している工場の優先度が高く設定されるようにすることも可能である。(この場合、警報コードに関連付けて予め緊急度や重要度を設定しておく。)
【0037】
作業決定部110が、作業員を派遣する工場毎に、実施するメンテナンス作業を決定する(ステップS5)。例えば、実施するメンテナンス作業は、契約により決められているものである。また、アラームDBに登録されている過去のアラーム内容及びその要因から、今回対処するアラームの要因を推定し、実施する作業を決定する。
【0038】
物品手配部112が、作業内容DBを参照し、ステップS5で決定した作業に必要な物品を抽出、特定する(ステップS6)。物品手配部112は、物品在庫DBを参照し、作業に必要な物品の在庫を確認し、搬送の手配を行う(ステップS7)。
【0039】
担当者選定部114が、作業内容DBを参照し、ステップS5で決定した作業に必要なスキルを抽出する。担当者選定部114は、作業者スキルDB及び作業者スケジュールDBを参照し、抽出したスキルを持ち、作業を行う工場が担当エリア内であり、かつスケジュールが空いている作業者を、派遣する担当者として選定する(ステップS8)。派遣可能な作業者が複数いる場合は、所有スキルが少ない作業者を選定してもよいし、同じ工場へ過去に行ったことがある作業者を選定してもよい。
【0040】
所有スキルが少ない作業者を選定することで、経験を積ませることができる。また、所有スキルの多い作業者を残しておくことで、その後に緊急度の高いアラームが発生した場合に、当該担当者を迅速に派遣し、対応することが可能となる。
【0041】
巡回ルート作成部116が、作業内容DBを参照し、各工場で実施する作業の標準作業時間から、各工場での作業所要時間を算出する(ステップS9)。
【0042】
巡回ルート作成部116が、所在地情報DBを参照し、各工場の所在地から、移動距離(移動時間)が最短となる巡回ルートを作成する(ステップS10)。巡回ルート作成部116は、ステップS4で判定した優先度の高い工場が優先度の低い工場よりも先になるように巡回ルートを作成する。巡回ルート作成部116は、道路の渋滞情報や鉄道運行情報などの交通情報をウェブ等から入手し、交通情報を考慮して巡回ルートを作成してもよい。
【0043】
通知部118が、巡回ルート、各工場の訪問日時、各工場での作業内容等を、作業者の端末Tに通知する(ステップS11)。
【0044】
作業完了後、作業結果が登録される(ステップS12)。例えば、アラームの原因がアラームDBに登録される。また、作業者が新たなスキルを習得した場合、更新部120が作業者スキルDBの所有スキルを更新する。例えば、所定の研修を受講した場合や、所定の作業を所定回数実施した場合などに、新たなスキルを習得したと判定される。
【0045】
作業結果の登録は、作業者が端末Tを用いて行ってもよいし、作業者が提出した報告書に基づいて、入力部14から入力してもよい。作業者が端末Tを用いて登録する場合、自身が対応したアラームの原因のみ登録できる。また、所有スキルの更新は、端末Tからは行えないようにしてある。
【0046】
このように、本実施形態に係るメンテナンス支援装置1によれば、各工場で実施する作業を特定し、必要な物品の在庫確認・手配を行うことができる。そのため、訪問先の工場で物品が足りなくなるという状況の発生を防止し、メンテナンスを効率良く行うことができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 メンテナンス支援装置
2 水処理設備