【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究事業「低環境負荷型前周期遷移金属レドックスシステムの設計に基づく先導的物質変換テクノロジーの創出」に係る委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
HU, Y. et al.,Promotional effect of phosphorus doping on the activity of the Fe-N/C catalyst for the oxygen reduction reaction,Electrochimica Acta,2015年 2月10日,Vol.155,p.335-340,ISSN 0013-4686, 特に"ABSTRACT"欄, "2. Experimental"欄, Scheme 1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0037】
[ポリアニリンを含む触媒およびバインダーを用いた燃料電池]
本発明の燃料電池用触媒は、例えば、ポリアニリンを焼成して、炭化させることにより得られるものであり、優れた酸素還元反応活性を示す。
【0038】
本明細書中において「燃料電池」とは、固体高分子型燃料電池(PEFC)を意味する。PEFCの出力を向上させるためには、負極において、電解質膜、電極触媒、及び燃料(負極活物質)の三相界面、正極においては、電解質膜、電極触媒、及び酸素(正極活物質)の三相界面の面積を広くし、効率よく化学反応させる必要がある。
【0039】
このような要求に対し、本発明に用いるポリアニリンは含リン官能基を含み、アニリン骨格を有しているため、従来の電極触媒として使用される黒鉛と比べて官能基による結合距離が伸びるので、表面積が増大し、その分、酸素供給の効率が上がり触媒活性能を向上することができると考えられる。
【0040】
さらに、本発明に用いるポリアニリンにビピリジン化合物を加えることにより下記一般式(1h):
【0042】
で表される化合物同士が架橋した網目構造が形成され、表面積がより増大し、酸素供給の効率が上がると考えられ、そのことにより優れた触媒活性を示すと考えられる。
【0043】
また、本発明のバインダーは使用するポリアニリンが高いプロトン伝導性を示すのに加えて、導電性(電気伝導性)も持ち合わせているので燃料電池用バインダーとして好適に使用できる。この点は、現在燃料電池用バインダーとして広く使用されているナフィオンに導電性がなく、電気的に孤立した触媒粒子を生じる可能性があることと対照的であり、ナフィオンよりも有利な点である。
【0044】
尚、本発明のポリアニリンから構成されることを特徴とする触媒及びバインダーを用いた燃料電池は以下の条件でその調製を行うと好適である。
【0045】
(ポリアニリン)
本発明に使用されるポリアニリンは、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0046】
−(A
1)
k− (1)
で表されるポリアニリンを含み、ここで、
A
1は各々独立して置換もしくは非置換のアニリンモノマー残基であり、
A
1は各々独立してm個のホスホン酸残基R
pとn個の置換基Rとを有する。
【0047】
ホスホン酸残基R
pは、以下の式で表される。
【0049】
一般式(1a)中、R、M
1、M
2、m、n、kは上記と同じである。
【0050】
ホスホン酸残基中のM
1およびM
2は、水素原子、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選択されることが好ましい。但し、M
1およびM
2のうち少なくとも1つが水素原子であることが好ましい。
【0051】
ポリアニリンを触媒に用いる場合は必ずしもポリアニリンに高い導電性がある必要はなく、そのため、ホスホン酸残基に水素が存在することは必ずしも必要ではない。ポリアニリンをバインダーに用いる場合はポリアニリンに高い導電性があることが必要であるので、ホスホン酸残基が多く水素を有することが好ましい。
【0052】
本明細書において「アルカリ金属」は、周期律表の第1族に属する任意の原子をいう。アルカリ金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムなどが挙げられる。
【0053】
本明細書において「アルカリ土類金属」とは、周期律表の第2族に属する任意の原子をいう。アルカリ土類金属の具体例としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムなどが挙げられる。
【0054】
上記置換基Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、カルボン酸アルキルエステル基、ニトロ基およびシアノ基からなる群から選択される少なくとも1種である。これらのうち、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基などの電子供与性基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基が特に好ましい。
【0055】
ハロゲン原子の具体例としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0056】
なお、本明細書において「アルキル」とは、鎖状または環状の脂肪族炭化水素(アルカン)から水素原子が一つ失われて生ずる1価の基をいう。鎖状の場合は、一般にC
jH
2j+1−で表される(ここで、jは正の整数である)。鎖状のアルキルは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状のアルキルは、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造であってもよい。アルキルの炭素数は、任意の自然数であり得る。アルキルの炭素数は、1つの実施形態では1〜30であり、別の実施形態では1〜20である。さらに別の実施形態では、1〜10であり、さらにまた別の実施形態では、1〜5である。
【0057】
特に、上記置換基Rにおけるアルキル基については、アルキル基の炭素原子数が1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基およびペンタデシル基などが挙げられる。
【0058】
本明細書において、「アラルキル基」とは、アルキル基の水素原子の一部がアリール基で置換された構造を指す。
【0059】
本明細書において「アリール基」とは、芳香族炭化水素の環に結合する水素原子が1個離脱して生ずる基をいう。アリール基を構成する芳香族炭化水素の環の数は、1つであってもよく、2つ以上であっても良い。好ましくは、1〜3である。分子内芳香族炭化水素の環が複数存在する場合、それらの複数の環は縮合していてもよく、縮合していなくてもよい。具体的には、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ビフェニリルなどである。
【0060】
特に、上記一般式(1)のRにおけるアラルキル基を構成するアルキル基は、直鎖であっても良く、分岐状であっても良く、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数が1〜5であることが更に好ましい。アラルキル基を構成するアリール基は、置換基を有していてよい1〜4個のベンゼン環を備えるアリール基が好ましく、例えば、1または2以上の置換基を有しいてよいフェニル基、ビフェニル基、テルフェニル(ターフェニル)基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基およびフルオレニル基などが挙げられ、フェニル基、ビフェニル基およびナフチル基が更に好ましい。置換基としては、例えば、炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、炭素数7〜21のフェニルアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ハロゲン原子、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基およびスルホン基などが挙げられる。
【0061】
アラルキル基の全体の炭素原子数としては7〜34であることが好ましく、7〜15であることが特に好ましい。具体例としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、ナフチルブチル基、ナフチルペンチル基、アンスリルメチル基、アンスリルエチル基、アンスリルプロピル基、アンスリルブチル基、アンスリルペンチル基、ビフェニルメチル基、ビフェニルエチル基、ビフェニルプロピル基、ビフェニルブチル基およびビフェニルペンチル基などが挙げられる。
【0062】
本明細書において「アルコキシ」とは、上記アルキル基に酸素原子が結合した基をいう。すなわち、上記アルキル基をR
A−と表した場合にR
AO−で表される基をいう。鎖状のアルコキシは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状のアルコキシは、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造であってもよい。アルコキシの炭素数は、任意の自然数であり得る。1つの実施形態では1〜30であり、別の実施形態では1〜20である。
【0063】
中でも、上記置換基Rにおけるアルコキシ基としては、アルキル基部分が、直鎖であってもよく、分岐状であってもよく、炭素原子数が1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基およびペンタデシルオキシ基などが挙げられる。
【0064】
本明細書において「アルキルチオ」とは、上記アルキル基に硫黄原子が結合した基をいう。すなわち、上記アルキル基をR
A−と表した場合にR
AS−で表される基をいう。鎖状のアルキルチオは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状のアルキルチオは、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造であってもよい。アルキルチオの炭素数は、任意の自然数であり得る。1つの実施形態では1〜30であり、別の実施形態では1〜20である。
【0065】
上記置換基Rにおけるアルキルチオ基としては、アルキル基部分が、直鎖であってもよく、分岐状であってもよく、炭素原子数が1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、ウンデシルチオ基、ドデシルチオ基、トリデシルチオ基、テトラデシルチオ基およびペンタデシルチオ基などが挙げられる。
【0066】
本明細書において「アルキルアミノ」とは、上記アルキル基にアミノ基が結合した基をいう。すなわち、上記アルキル基をR
A−と表した場合にR
ANH−で表される基をいう。鎖状のアルキルアミノは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状のアルキルアミノは、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造であってもよい。アルキルアミノの炭素数は、任意の自然数であり得る。1つの実施形態では1〜30であり、別の実施形態では1〜20である。
【0067】
上記置換基Rにおけるアルキルアミノ基としては、アルキル基部分が、直鎖であってもよく、分岐状であってもよく、炭素原子数が1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、ウンデシルアミノ基、ドデシルアミノ基、トリデシルアミノ基、テトラデシルアミノ基およびペンタデシルアミノ基などが挙げられる。
【0068】
本明細書において「カルボン酸アルキルエステル」とは、上記アルキル基にカルボン酸基が結合した基をいう。すなわち、上記アルキル基をR
A−と表した場合に−COOR
Aで表される基をいう。鎖状のカルボン酸アルキルエステルは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状のカルボン酸アルキルエステルは、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造であってもよい。カルボン酸アルキルエステルの炭素数は、任意の自然数であり得る。1つの実施形態では1〜30であり、別の実施形態では1〜20である。
【0069】
上記置換基Rにおけるカルボン酸アルキルエステル基は、そのカルボン酸の炭素原子が一般式(1)のベンゼン環に結合する。すなわち、ベンゼン環をPhと記載すると、Ph−C(=O)−OR
Aの構造となる。このカルボン酸アルキルエステル基としては、アルキル基の炭素原子数が1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例としては、カルボン酸メチル基、カルボン酸エチル基、カルボン酸プロピル基、カルボン酸ブチル基、カルボン酸ペンチル基、カルボン酸ヘキシル基、カルボン酸ヘプチル基、カルボン酸オクチル基、カルボン酸ノニル基、カルボン酸デシル基、カルボン酸ウンデシル基、カルボン酸ドデシル基、カルボン酸トリデシル基、カルボン酸テトラデシル基およびカルボン酸ペンタデシル基などが挙げられる。
【0070】
上記一般式(1)のホスホン酸残基の数mは1〜4の整数であり、すなわち、1、2、3または4であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1〜2の整数である。置換基Rの数nは0〜3の整数であり、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0〜1の整数である。kは4〜3000の整数であり、好ましくは6〜2000の整数であり、より好ましくは8〜1200の整数である。
【0071】
一般式(1)のポリアニリンにおいて隣接するアニリンモノマー残基どうしは、パラ位置で結合している。すなわち、第1のアニリンモノマー残基に第2のアニリンモノマー残基が結合し、そして第2のアニリンモノマー残基に第3のアニリンモノマー残基が結合している場合、第1のアニリンモノマー残基と第3のアニリンモノマー残基は、第2のアニリンモノマー残基中のベンゼン環においてパラの位置関係にある。
【0072】
具体的には、上記一般式(1)は、例えば、以下の一般式(1a)で記載され得る。
【0074】
ただし、ポリアニリンについては、その骨格構造が上記一般式(1a)のような構造に限定されないことが知られている。そのため、本明細書中のポリアニリンの骨格構造は、一般式(1a)の基本構造に限定されるものではない。
【0075】
具体的には、一般的に、ポリアニリンは下記一般式(1b)の還元型単位のフェニレンジアミン骨格の繰り返し単位および
【0077】
下記一般式(1c)の酸化型単位のキノンジイミン骨格の繰り返し単位の2種類の骨格をとることが知られている。
【0079】
したがって、本明細書中のポリアニリン中のアニリン残基は、上記一般式(1b)または(1c)に示されるような骨格構造を有するものでもあり得る。
【0080】
そして、本明細書中のポリアニリンは、下記一般式(1d):
【0082】
の繰り返し単位を有する構造を有するものであり得る。
【0083】
一般式(1d)中、Rは上記定義と同じであり、M
1aは上記M
1と同じであり、M
2aは上記M
2と同じであり、M
1bは上記M
1と同じであり、M
2bは上記M
2と同じである。m
1およびm
2は上記mと同じであり、n
1およびn
2は上記nと同じである。
【0084】
また、国際公開WO2014/167818には、以下の4種類のポリアニリンが説明されている。
【0086】
本発明のポリアニリンも、これらの構造を取ることが可能である。
【0087】
また、本発明のポリアニリンは、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の繰り返し単位または成分を含んでいてもよい。例えば、下記一般式(1e):
【0089】
(式中、Rは上記定義と同じであり、M
1cおよびM
2cは各々独立して、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびアンモニウム基、ピリジニウム基よりなる群から選ばれた少なくとも1つである。m
3は0〜4の整数であり、n
3は0〜4の整数である。但し、m
3とn
3の和は4以下である。)
で表される繰り返し単位などを含むことができる。
【0090】
なお、ポリアニリンの構造を一般式で記載する場合、その両末端を省略することが一般的であるので、本明細書においても、原則として、ポリアニリンの構造を記載する際には両末端は省略する。しかしながら、例えば、上記一般式(1)に敢えて両末端基を記載すれば、以下の一般式(1f)となる。
【0091】
E
1−(A
1)
k−E
2 (1f)
ここで、E
1およびE
2はそれぞれ末端基である。通常は、一方が重合開始末端であって他方が重合終了末端である。
【0092】
ポリアニリンの末端の構造は、完全には解明されていない。アニリンモノマーの化学構造から単純に予想されるように、アニリンモノマーのアミン部分が別のアニリンモノマーのパラ位に結合するという反応が起こる場合であれば、ポリアニリンの一方の末端のアニリンモノマー残基においては、パラ位の水素がそのまま残存して末端を形成し、他方の末端のアニリンモノマー残基においては、アミノ基がそのまま残存して末端を形成すると考えられる。この場合、上記式(1)に敢えて両末端の水素(一方の末端のパラ位の水素および他方の末端のアミノ基の水素)を記載すると、以下の一般式(1g)で表される。
【0093】
[H−(A
1)
k−H] (1g)
他方、例えば、国際公開WO2014/167818には、アニリンの重合の初期段階においてフェナジン環構造を有するアニリンオリゴマーが生成し、そのオリゴマー残基がポリマーの重合開始側末端となることが説明されている。しかし、このように繰り返し単位におけるモノマー残基の構造と異なる構造が末端に存在する場合においても、そのポリアニリンの末端基の種類がポリアニリンの性能に与える影響は小さいので、末端基の構造は無視することができる。
【0094】
ポリアニリン中のモノマー残基(上記一般式(1)中の「A
1」、一般式(2)中の「A
2」)は、すべて同一であっても良く、複数種類であっても良い。すなわち、ホモポリマーであっても良く、コポリマーであっても良い。コポリマーであることが好ましい。また、コポリマーはブロックコポリマーであっても良く、ランダムコポリマーであっても良い。ランダムコポリマーにおいては、複数種類のモノマー残基が無秩序に並ぶ。なお、上述した国際公開WO2014/167818などに記載されているとおり、アニリンモノマーを酸化重合して得られるポリアニリンは、一定の規則的な繰り返し単位を有する構造となることが知られている。本発明の製造方法においても、そのような規則性を有するポリアニリンが生成され得ると考えられるものであり、そのような規則性を有するポリアニリンを本発明の製造方法の目的とするポリマーとして使用することができる。
【0095】
ポリアニリンが、少なくともホスホン酸基(−PO
3H
2)またはホスホン酸一水素塩基(−PO
3HM
8、ここでM
8は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択される)を有するモノマー残基を含む場合、ホスホン酸基またはホスホン酸一水素塩基は、その水素原子により、ポリアニリン主鎖の窒素に対してドーピングすることが可能である。
【0096】
なお、本明細書中においてホスホン酸一水素塩基とは、ホスホン酸一水素塩の構造を有する基を意味する。すなわち、ホスホン酸基の2つの水素のうち、1つの水素のみが金属原子等で置換されて塩となり、他方の水素がそのまま残っている基をいう。
【0097】
本発明に用いるポリアニリンは、好ましくは、自己ドーピング性を有する導電性ポリアニリンである。
【0098】
本発明に用いるポリアニリンにおいては、ホスホン酸残基をポリアニリン化合物に導入する量を適宜設計することができる。すなわち、触媒またはバインダーに必要とされる物性等を考慮して、所望の量を導入することができる。ポリアニリン中に存在するアニリンモノマー残基の数を100%として、例えば、導入率を10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上にできるように調整することが可能である。また、導入率を低めに抑制することが好ましい場合には、例えば、導入率を95%以下、90%以下、85%以下、75%以下、または70%以下にできるように調整することが可能である。
【0099】
ホスホン酸残基をポリアニリン化合物に導入する量を多くすれば、ホスホン酸残基の導入効果を高くすることができる。例えば、導電性の付与効果を高くすることができる。ホスホン酸残基をポリアニリン化合物に導入する量を調整する手段としては、ポリアニリンを合成する際の反応原料の組成、例えばホスファイトの量、ホスホン化剤の量などを調整することが好ましい。また、反応条件、例えば、反応温度や反応時間を調整することによって、ホスホン酸残基をポリアニリン化合物に導入する量を調整しても良い。
【0100】
本発明に用いるポリアニリンは、従来公知の方法で製造しても良い。例えば、国際公開WO2014/167818に記載されている方法などで製造することができる。
【0101】
また、本発明に用いるポリアニリンは、従来公知の方法とは異なる方法で製造しても良い。
【0102】
[含リンポリアニリンの新規製造方法]
本発明の製造方法においては、ポリアニリン化合物またはポリアニリン化合物を含むポリアニリン混合物をホスホン化することにより、含リンポリアニリンが製造される。
【0103】
(ポリアニリン化合物)
本明細書において、含リンポリアニリンの新規製造方法に関して「ポリアニリン化合物」とは、含リンポリアニリンを得るためのホスホン化反応を行うことができるポリアニリンを意味する。具体的には無置換のポリアニリンまたは置換ポリアニリンである。置換ポリアニリンは、そのベンゼン環およびアミノ基残基の窒素のうちの少なくとも1つに置換基を有するものをいう。ベンゼン環においては、アミノ基残基の窒素を1位として、2位、3位、5位および6位(すなわち、オルト位またはメタ位)のうちの1つから4つに置換基が存在することができる。
【0104】
本明細書において「ポリアニリン混合物」とは、2種類以上のポリアニリン化合物が混合された混合物をいう。
【0105】
アニリンモノマー化合物またはアニリンモノマー混合物を重合することにより、ポリアニリンが得られる。重合方法としては、アニリンモノマーからポリアニリンを得る重合方法として従来公知の任意の方法を採用することができる。
【0106】
本明細書において、「アニリンモノマー」または「アニリンモノマー化合物」とは、アニリンからポリアニリンを得る重合反応を行うことができるモノマーを意味する。具体的には、無置換のアニリン(C
6H
5NH
2)または置換アニリンあるいはそれらの塩である。置換アニリンは、そのベンゼン環およびアミノ基のうちの少なくとも1に置換基を有するものをいう。ベンゼン環においては、アミノ基を1位として、2位、3位、5位および6位(すなわち、オルト位またはメタ位)のうちの1つ〜4つに置換基が存在することができる。ただし、4位(パラ位)に置換基を有する置換アニリンは重合できないので、4位(パラ位)置換アニリンはアニリンモノマーに含まない。無置換もしくは置換アニリンの塩は、アミノ基の部分が塩になったものであって、その塩の部分が重合反応に支障をもたらさないものをいう。無置換もしくは置換アニリンの塩の例としては、例えば、アンモニウム塩が挙げられる。
【0107】
本明細書において「アニリンモノマー混合物」とは、2種類以上のアニリンモノマー化合物が混合された混合物をいう。
【0108】
本願発明の製造方法において原料として使用されるポリアニリン化合物は、アミノ基残基の窒素を1位として、1つのアニリンモノマー残基の1位(窒素)と、別のアニリンモノマー残基の4位とが結合した構造を有する。そのため、得られる含リンポリアニリン(導電性ポリアニリンおよび含リンポリアニリンエステル)も1つのアニリンモノマー残基の1位(窒素)と、別のアニリンモノマー残基の4位とが結合した構造を有する。そして得られる含リンポリアニリン(導電性ポリアニリンおよび含リンポリアニリンエステル)は、アミノ基残基の窒素を1位として、2位、3位、5位および6位(すなわち、オルト位またはメタ位)のうちの1つから4つに置換基が存在し得る構造となる。
【0109】
本明細書において、「含リンポリアニリン」とは、ポリアニリンであって、ホスホン酸残基を有するものをいう。
【0110】
本明細書において、「含リンポリアニリンエステル」とは、含リンポリアニリンであって、アルキルエステルまたはアラルキルエステルになっているホスホン酸残基を有するものをいう。
【0111】
本明細書において「残基」とは、反応材料が反応した後に残る基をいう。上記アミノ基残基とは、アニリンを重合した際に、アニリンのアミノ基から水素が脱離して生成したポリマー中に残った部分をいう。また、例えば、非置換アニリンモノマー残基とは、アニリンを重合した際に、1つの非置換アニリンモノマー分子が生成したポリマー中に残った部分、すなわち1つのベンゼン環および1つの窒素原子と水素からなる部分をいう。置換アニリンモノマー残基とは、アニリンを重合した際に、1つの置換アニリンモノマー分子が生成したポリマー中に残った部分、すなわち1つのベンゼン環および1つの窒素原子とを骨格としてさらに水素または置換基を含む部分をいう。なお、本明細書中においては、アニリンモノマー残基をアニリンユニットとも記載する。
【0112】
本発明の含リンポリアニリンの製造方法において、ホスホン化を行う際に原料となるポリマーとしては、下記一般式(2)で表されるポリアニリン化合物を使用する。
【0113】
−(A
2)
k− (2)
ここで、A
2は置換もしくは非置換アニリン残基であって、各A
2は、n個の置換基Rを有する。
【0114】
Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、カルボン酸アルキルエステル基、ニトロ基およびシアノ基からなる群から選択される少なくとも1種である。これらのうち、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基などの電子供与性基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基が特に好ましい。
【0115】
ハロゲン原子の具体例としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0116】
なお、本明細書において「アルキル」とは、鎖状または環状の脂肪族炭化水素(アルカン)から水素原子が一つ失われて生ずる1価の基をいう。鎖状の場合は、一般にC
jH
2j+1−で表される(ここで、jは正の整数である)。鎖状のアルキルは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状のアルキルは、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造であってもよい。アルキルの炭素数は、任意の自然数であり得る。アルキルの炭素数は、1つの実施形態では1〜30であり、別の実施形態では1〜20である。さらに別の実施形態では、1〜10であり、さらにまた別の実施形態では、1〜5である。
【0117】
特に、上記Rにおけるアルキル基については、アルキル基の炭素原子数が1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基およびペンタデシル基などが挙げられる。
【0118】
本明細書において、「アラルキル基」とは、アルキル基の水素原子の一部がアリール基で置換された構造を指す。
【0119】
本明細書において「アリール基」とは、芳香族炭化水素の環に結合する水素原子が1個離脱して生ずる基をいう。アリール基を構成する芳香族炭化水素の環の数は、1つであってもよく、2つ以上であっても良い。好ましくは、1〜3である。分子内芳香族炭化水素の環が複数存在する場合、それらの複数の環は縮合していてもよく、縮合していなくてもよい。具体的には、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ビフェニリルなどである。アリール基の炭素数は、6〜30であることが好ましく、6〜14であることがより好ましく、6〜10であることがさらに好ましい。
【0120】
特に、上記一般式(2)の置換基Rにおけるアラルキル基を構成するアルキル基は、直鎖であっても良く、分岐状であっても良く、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数が1〜5であることが更に好ましい。アラルキル基を構成するアリール基は、置換基を有していてよい1〜4個のベンゼン環を備えるアリール基が好ましく、例えば、1または2以上の置換基を有しいてよいフェニル基、ビフェニル基、テルフェニル(ターフェニル)基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基およびフルオレニル基などが挙げられ、フェニル基、ビフェニル基およびナフチル基が更に好ましい。置換基としては、例えば、炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、炭素数7〜21のフェニルアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ハロゲン原子、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基およびスルホン基などが挙げられる。
【0121】
アラルキル基の全体の炭素原子数としては7〜34であることが好ましく、7〜15であることが特に好ましい。具体例としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、ナフチルブチル基、ナフチルペンチル基、アンスリルメチル基、アンスリルエチル基、アンスリルプロピル基、アンスリルブチル基、アンスリルペンチル基、ビフェニルメチル基、ビフェニルエチル基、ビフェニルプロピル基、ビフェニルブチル基およびビフェニルペンチル基などが挙げられる。
【0122】
本明細書において「アルコキシ」とは、上記アルキル基に酸素原子が結合した基をいう。すなわち、上記アルキル基をR
A−と表した場合にR
AO−で表される基をいう。鎖状のアルコキシは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状のアルコキシは、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造であってもよい。アルコキシの炭素数は、任意の自然数であり得る。1つの実施形態では1〜30であり、別の実施形態では1〜20である。
【0123】
中でも、上記一般式(2)の置換基Rにおけるアルコキシ基としては、アルキル基部分が、直鎖であってもよく、分岐状であってもよく、炭素原子数が1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基およびペンタデシルオキシ基などが挙げられる。
【0124】
本明細書において「アルキルチオ」とは、上記アルキル基に硫黄原子が結合した基をいう。すなわち、上記アルキル基をR
A−と表した場合にR
AS−で表される基をいう。鎖状のアルキルチオは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状のアルキルチオは、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造であってもよい。アルキルチオの炭素数は、任意の自然数であり得る。1つの実施形態では1〜30であり、別の実施形態では1〜20である。
【0125】
上記一般式(2)の置換基Rにおけるアルキルチオ基としては、アルキル基部分が、直鎖であってもよく、分岐状であってもよく、炭素原子数が1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、ウンデシルチオ基、ドデシルチオ基、トリデシルチオ基、テトラデシルチオ基およびペンタデシルチオ基などが挙げられる。
【0126】
本明細書において「アルキルアミノ」とは、上記アルキル基にアミノ基が結合した基をいう。すなわち、上記アルキル基をR
A−と表した場合にR
ANH−で表される基をいう。鎖状のアルキルアミノは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状のアルキルアミノは、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造であってもよい。アルキルアミノの炭素数は、任意の自然数であり得る。1つの実施形態では1〜30であり、別の実施形態では1〜20である。
【0127】
上記一般式(2)の置換基Rにおけるアルキルアミノ基としては、アルキル基部分が、直鎖であってもよく、分岐状であってもよく、炭素原子数が1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、ウンデシルアミノ基、ドデシルアミノ基、トリデシルアミノ基、テトラデシルアミノ基およびペンタデシルアミノ基などが挙げられる。
【0128】
本明細書において「カルボン酸アルキルエステル」とは、上記アルキル基にカルボン酸基が結合した基をいう。すなわち、上記アルキル基をR
A−と表した場合に−COOR
Aで表される基をいう。鎖状のカルボン酸アルキルエステルは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状のカルボン酸アルキルエステルは、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造であってもよい。カルボン酸アルキルエステルの炭素数は、任意の自然数であり得る。1つの実施形態では1〜30であり、別の実施形態では1〜20である。
【0129】
上記一般式(2)の置換基Rにおけるカルボン酸アルキルエステル基は、そのカルボン酸の炭素原子が一般式(2)のベンゼン環に結合する。すなわち、ベンゼン環をPhと記載すると、Ph−C(=O)−OR
Aの構造となる。このカルボン酸アルキルエステル基としては、アルキル基の炭素原子数が1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例としては、カルボン酸メチル基、カルボン酸エチル基、カルボン酸プロピル基、カルボン酸ブチル基、カルボン酸ペンチル基、カルボン酸ヘキシル基、カルボン酸ヘプチル基、カルボン酸オクチル基、カルボン酸ノニル基、カルボン酸デシル基、カルボン酸ウンデシル基、カルボン酸ドデシル基、カルボン酸トリデシル基、カルボン酸テトラデシル基およびカルボン酸ペンタデシル基などが挙げられる。
【0130】
上記一般式(2)中、nは0〜4の整数(すなわち、0、1、2、3または4)であり、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0〜1の整数である。kは4〜3000の整数であり、好ましくは6〜2000の整数であり、より好ましくは8〜1200の整数である。
【0131】
本明細書において「アルカリ金属」は、周期律表の第1族に属する任意の原子をいう。アルカリ金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムなどが挙げられる。
【0132】
本明細書において「アルカリ土類金属」とは、周期律表の第2族に属する任意の原子をいう。アルカリ土類金属の具体例としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムなどが挙げられる。
【0133】
一つの実施形態において、上記一般式(2)中のポリアニリン化合物における置換基Rはハロゲンである。ポリアニリンの置換基にハロゲンが存在すれば、後述する平尾反応を行うことができる。置換基Rとしてハロゲンを有するポリアニリンを使用する場合、置換基としてハロゲンが存在するアニリンモノマー残基の数は、任意に選択することができる。置換基としてハロゲンが存在するアニリンモノマー残基の比率は、ポリアニリン中に存在するアニリンモノマー残基の数を100%として、例えば、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上から選択することが可能である。あるいは、100%としてもよい。また、何らかの理由により、ハロゲンの含有量を制御することが所望される場合には、ハロゲンが存在するアニリンモノマー残基の数が抑制されるように設計することもできる。そのような場合には、例えば、その比率を95%以下、90%以下、85%以下、または80%以下に設計することが可能である。
【0134】
(その他のポリマー)
本発明の含リンポリアニリンの製造方法においては、上述した、置換または非置換のポリアニリン化合物をホスホン化の際のポリマーとして使用することが好ましい。しかし、必要に応じて、含リンポリアニリン製造の際の原料となるポリマー混合物には、上記置換または非置換のポリアニリン化合物以外のホスホン化可能なポリマー(以下、「他種ポリマー」)を、本発明の効果を妨げない程度の少量含んでいてもよい。すなわち、ホスホン酸を有さない置換もしくは非置換のポリアニリン化合物を必要に応じて、共重合させても良い。例えば、酸性の置換基を有さない置換もしくは非置換のポリアニリン化合物を少量用いても良いし、ホスホン酸以外の酸性の置換基(例えば、スルホン酸)を有する置換もしくは非置換のポリアニリン化合物を少量用いても良いし、あるいは、ホスホン酸基が直接ベンゼン環に結合せずに間接的に結合している置換もしくは非置換のポリアニリン化合物を少量用いても良い。
【0135】
ただし、上記他種ポリマーの使用量が多すぎると、本発明の利点が損なわれることになるので、他種ポリマーの使用量は多すぎないことが好ましい。他種ポリマーの使用量は、重合に使用される置換または非置換のポリアニリン化合物総量のうちの40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましく、10モル%以下であることがいっそう好ましく、5モル%以下であることがひときわ好ましく、3モル%以下であることが特に好ましく、1モル%以下であることが最も好ましい。
【0136】
[ホスホン化反応]
ポリアニリン化合物またはポリアニリン混合物をホスファイトと反応させてホスホン化を行うことにより、含リンポリアニリンが得られる。ホスホン化方法としては、ポリアニリン化合物にホスホン酸残基を導入し得る任意のホスホン化方法を採用することができる。ホスファイトとしては、ポリアニリン化合物またはポリアニリン混合物と反応し得る任意のホスファイトが使用可能である。
【0137】
好ましくは、酸化剤を用いてポリアニリン化合物またはポリアニリン混合物を酸化して下記一般式(3)または一般式(4)で表されるホスファイト化合物(好ましくはトリアルキルホスファイトまたはジアルキルホスファイト)と反応させて含リンポリアニリンを合成する方法を採用することができる。
【0140】
(ここで、M
3〜M
5は同じであってもよく、異なってもよく、それぞれ独立して炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素数6〜30のアリール基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択される。ただし、M
3〜M
5のうちの1つがアルカリ土類金属である場合には、2つのO
−に該アルカリ土類金属原子が結合していてM
3〜M
5の残りの2つのうちの1つが存在しない構造となる。)
一般式(4):
【0142】
(ここで、M
6およびM
7は同じであってもよく、それぞれ独立して炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素数6〜30のアリール基、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択される。ただし、M
6およびM
7のうちの一方がアルカリ土類金属である場合には、2つのO
−に該アルカリ土類金属原子が結合していてM
6およびM
7のうちの他方が存在しない構造となる。)
なお、一般式(3)において、M
3〜M
5のうちの1つだけが水素原子である化合物は、一般式(4)と互変異性体の関係となり、同一の化合物となる。本明細書中では、その化合物については一般式(4)の化合物として説明する。
【0143】
本明細書中において「ホスホン化」とは、ポリアニリン化合物またはポリアニリン混合物とホスファイトとを反応させて含リンポリアニリンを合成する反応を意味する。本明細書中において「ホスホン化剤」とは、酸化剤または平尾反応などに用いる触媒を意味する。本明細書中において「酸化」とは、酸化剤を用いてポリアニリン化合物またはポリアニリン混合物から水素原子を引き抜くことを意味する。本明細書中において「酸化剤」とは、そのような酸化反応を引き起こす試薬をいう。
【0144】
従って、酸化剤を用いた場合、ポリアニリン化合物から水素原子が失われる。そして脱水素化されたポリアニリン化合物が一般式(3)のホスファイト化合物(例えば、トリアルキルホスファイト)と反応する。
【0145】
(その他のホスホン化反応)
本発明のホスホン化反応においては、上述した、酸化剤を用いてポリアニリン化合物またはポリアニリン混合物と酸化により、一般式(3)で表されるホスファイトとの反応により含リンポリアニリンを合成する「求核付加によるホスホン化反応」を使用することが好ましい。しかし、必要に応じて、平尾反応によるホスホン化と呼ばれる方法を採用してもよい。
【0146】
本明細書中において「平尾反応によるホスホン化」とは、ポリアニリン化合物またはポリアニリン混合物と一般式(4)で表されるジアルキルホスファイトとのカップリングにより含リンポリアニリンを合成する反応を意味する。なお、本明細書において、「平尾反応」とは、パラジウム化合物などの触媒の存在下でベンゼン環にホスファイトを結合させる反応を言う。
【0147】
平尾反応の触媒としては、公知の任意の触媒が使用可能であり、好ましくはパラジウム化合物であり、より好ましくはPd(PPh
3)
4またはPd(OAc)
2である。また、必要に応じて、平尾反応によるホスホン化は触媒失活防止のため、反応仕込み前に反応容器を真空加熱(以下、フレームドライと表記する)することが好ましい。平尾反応は、具体的には、国際公開WO2014/167818などに説明されている。
【0148】
(ホスファイトの量)
本発明の方法に用いるホスファイトの量は特に限定されない。ポリアニリン化合物の種類およびポリアニリン化合物に導入しようとするホスファイトの種類などを考慮して適宜設計することができる。例えば、ポリアニリン化合物が非置換のアニリンであれば、ベンゼン環の4か所にホスホン酸残基を導入できるので、導入できるホスホン酸残基の数はアニリンモノマー残基の数の4倍となる。そのうちの導入しようとするホスホン酸残基の数に応じて、適宜ホスファイトの量を決めることができる。多数のホスホン酸残基を導入しようとする場合には、多量のホスファイトを使えば良いし、少数のホスホン酸残基を導入しようとする場合には、少量のホスファイトを使えば良い。
【0149】
例えば、1つの実施形態においては、ホスファイトを、前記一般式(2)で表されるポリアニリン化合物に対して0.05当量以上、10当量以下使用する。必要に応じて、例えば、ホスファイトの量を、0.1当量以上、0.3当量以上、0.5当量以上、1当量以上、または2当量以上としてもよい。また例えば、ホスファイトの量を、9当量以下、8当量以下、7当量以下、6当量以下、または5当量以下としてもよい。
【0150】
なお、ここで、ホスファイトのポリアニリン化合物に対する当量は、ポリアニリン化合物中に存在するホスホン酸残基が導入され得る場所の総数の計算値(例えば、非置換ポリアニリンであればアニリンモノマー残基の数の4倍)に対するホスファイトのモル数として計算される。
【0151】
(ホスホン化剤の量)
本発明の方法に用いるホスホン化剤の量は特に限定されない。ポリアニリン化合物の種類およびポリアニリン化合物に導入しようとするホスホン酸残基の種類および量などを考慮して適宜設計することができる。例えば、ポリアニリン化合物が非置換のアニリンであれば、ベンゼン環の4か所にホスホン酸残基を導入できるので、導入できるホスホン酸残基の数はアニリンモノマー残基の数の4倍となる。そのうちの導入しようとするホスホン酸残基の数に応じて、適宜ホスホン化剤の量を決めることができる。多数のホスホン酸残基を導入しようとする場合には、多量のホスホン化剤を使えば良いし、少数のホスホン酸残基を導入しようとする場合には、少量のホスホン化剤を使えば良い。
【0152】
例えば、1つの実施形態においては、ホスホン化剤を、前記一般式(2)で表されるポリアニリン化合物に対して0.05当量以上、10当量以下使用する。必要に応じて、例えば、ホスホン化剤の量を、0.1当量以上、0.3当量以上、0.5当量以上、1当量以上、または2当量以上としてもよい。また例えば、ホスホン化剤の量を、9当量以下、8当量以下、7当量以下、6当量以下、または5当量以下としてもよい。
【0153】
なお、ここで、ホスホン化剤のポリアニリン化合物に対する当量は、ポリアニリン化合物中に存在するホスホン酸残基が導入され得る場所の総数の計算値(例えば、非置換ポリアニリンであればアニリンモノマー残基の数の4倍)に対するホスホン化剤のモル数として計算される。
【0154】
(ホスホン化率)
本発明の方法においては、ホスホン酸残基をポリアニリン化合物に導入する量を適宜設計することができる。すなわち、目的とする含リンポリアニリンに必要とされる物性等を考慮して、所望の量を導入することができる。含リンポリアニリン中に存在するアニリンモノマー残基の数を100%として、例えば、導入率を10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上にできるように調整することが可能である。あるいは、100%としてもよい。高い導電性が所望される場合には、より多くのホスホン酸残基が導入されるように設計することができる。また、何らかの理由により、ホスホン化率を制御することが所望される場合には、導入されるホスホン酸残基の数が抑制されるように設計することもできる。そのような場合には、例えば、導入率を95%以下、90%以下、85%以下、または80%以下にできるように調整することが可能である。
【0155】
ホスホン酸残基をポリアニリン化合物に導入する量を多くすれば、ホスホン酸残基の導入効果を高くすることができる。例えば、導電性の付与効果を高くすることができる。ホスホン酸残基をポリアニリン化合物に導入する量を調整する手段としては、上述したホスファイトの量またはホスホン化剤の量を調整することが好ましい。また、反応条件、例えば、反応温度や反応時間を調整することによって、ホスホン酸残基をポリアニリン化合物に導入する量を調整しても良い。
【0156】
(酸化剤)
本発明においてホスホン化反応に酸化剤を用いる場合、ポリアニリン化合物から水素原子が除去される。すなわち、酸化状態がエメラルディン塩基のポリアニリン化合物がペルニグラニリン塩または塩基に変換されることになる。そのため、ホスホン化反応は、この脱水素を引き起こすための酸化剤の存在下で行われる。酸化剤としては、ホスホン化において一般的に用いられている酸化剤が使用できる。具体例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ硫酸ナトリウム、過酸化水素、第二塩化鉄などが挙げられ、好ましく用いられるものとしてはペルオキソ二硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0157】
酸化剤の使用量は、酸化が進行し得る量である限り限定されない。ホスホン化するポリアニリン化合物の総量に対して、0.5当量以上であることが好ましく、0.7当量以上であることがより好ましく、1.0当量以上であることがさらに好ましく、1.5当量以上であることが最も好ましい。そして、必要に応じて、2.1当量以上、2.2当量以上、2.4当量以上、2.6当量以上、2.8当量以上または3.0当量以上とすることも可能である。また、ホスホン化するポリアニリン化合物に対して、10当量以下であることが好ましく、8当量以下であることがより好ましく、6当量以下であることがさらに好ましく、5当量以下であることが特に好ましく、4当量以下であることが最も好ましい。そして、必要に応じて、3.9当量以下、3.7当量以下、3.6当量以下、3.5当量以下、3.4当量以下、3.3当量以下、3.2当量以下、または3.1当量以下とすることも可能である。
【0158】
なお、ここで、酸化剤のポリアニリン化合物に対する当量は、ポリアニリン化合物中に存在するホスホン酸残基が導入され得る場所の総数の計算値(例えば、非置換ポリアニリンであればアニリンモノマー残基の数の4倍)に対する酸化剤のモル数として計算される。例えば、過硫酸塩などの、1モルの化合物が2モルの水素を引き抜くことができる酸化剤であれば、その酸化剤の0.5モルが1当量である。
【0159】
(塩基)
本発明の平尾反応によるホスホン化は塩基を用いて行ってもよい。
【0160】
塩基としてはトリエチルアミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、酸化プロピレン等が挙げられ、特にトリエチルアミン、炭酸セシウムが好ましい。
【0161】
(溶媒)
本発明のホスホン化の反応は、必要に応じて溶媒を用いて行ってもよい。好ましい溶媒としては水、アンモニア水、塩酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、アセトン、2−ブタノン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと表記する)等が挙げられる。水およびNMPが特に好ましい。
【0162】
(反応温度)
本発明の方法において、ホスホン化の反応温度は特に限定されない。好ましくは、20℃以上であり、より好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは40℃以上である。また、好ましくは、200℃以下であり、より好ましくは160℃以下であり、いっそう好ましくは130℃以下であり、さらに好ましくは、120℃以下である。反応温度が好ましい範囲内であれば、高い収率で含リンポリアニリンエステルを得ることができる。
【0163】
(反応時間)
本発明の方法において、ホスホン化の反応時間は特に限定されない。各々の条件において、反応するのに充分な時間を適宜選択すればよい。反応が充分に進行していれば、反応時間の違いが本願の効果に大きな影響を及ぼすことはない。
【0164】
反応時間は、好ましくは、1時間以上であり、より好ましくは、3時間以上であり、さらに好ましくは、6時間以上であり、いっそう好ましくは、9時間以上であり、特に好ましくは12時間以上であり、必要に応じて、15時間以上、18時間以上、21時間以上、または24時間以上とすることも可能である。また、好ましくは、7日間以下であり、より好ましくは、5日以下であり、さらに好ましくは、3日以下であり、いっそう好ましくは、2日以下であり、特に好ましくは36時間以下であり、必要に応じて、30時間以下、28時間以下または26時間以下とすることも可能である。
【0165】
[加水分解]
本発明の方法においてホスホン化により得られた含リンポリアニリンがエステルである場合、すなわち、ポリアニリン化合物に導入されたホスホン酸残基がエステルである場合には、必要に応じて、そのエステルを加水分解する工程を行うことができる。加水分解を行うことにより、例えば、プロトン伝導性及び導電性を有するポリアニリンを得ることができる。
【0166】
加水分解の方法としては、ホスホン酸エステルを加水分解する方法として公知の任意の方法を採用することができる。例えば、強酸で処理する方法、または強アルカリで処理することなどの方法により、加水分解を行うことができる。強酸としては、例えば、塩酸、硫酸などのプロトン酸、およびトリメチルシリルブロマイドなどのルイス酸などが挙げられる。強アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。ここで、ルイス酸を用いる場合は、例えば、ルイス酸と反応させた後、水と反応させる方法などが好ましく使用可能である。
【0167】
加水分解の反応温度、反応時間などの反応条件は所望の程度にまで加水分解が進行するように調整すればよく、特に限定されない。例えば、すべてのエステルを加水分解して高いプロトン伝導性及び導電性を達成したい場合には、より高い、反応温度、より長い反応時間などを採用することができる。
【0168】
例えば、加水分解の際の反応温度は、20℃以上であり、より好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは40℃以上である。また、好ましくは、200℃以下であり、より好ましくは160℃以下であり、いっそう好ましくは130℃以下であり、さらに好ましくは、120℃以下である。反応温度が好ましい範囲内であれば、高い収率で含リンポリアニリンエステルを得ることができる。
【0169】
また例えば、加水分解の反応時間は、好ましくは、1時間以上であり、より好ましくは、2時間以上であり、さらに好ましくは、3時間以上である。また、好ましくは、2日間以下であり、より好ましくは、1日間以下であり、さらに好ましくは、12時間以下であり、いっそう好ましくは、6時間以下である。
【0170】
[含リンポリアニリン]
本発明の含リンポリアニリンは、上記方法により製造される。
【0171】
本明細書において「含リンポリアニリン」は、ポリアニリン化合物をホスホン化することによって得られるものをいう。本発明の含リンポリアニリンは、ホスホン酸残基部分にエステル結合を有さない含リンポリアニリンであってもよく、ホスホン酸残基部分にエステル結合を有する含リンポリアニリンエステルであってもよい。ポリアニリン化合物にホスホン酸エステルが置換基として結合しているものを、本明細書中においてポリアニリンエステルという。含リンポリアニリンエステルは、特に、導電性ポリアニリンを製造するための中間体として有用である。
【0172】
ポリアニリンの重合度は任意に設定することが可能であり、例えば、4以上、6以上、または8以上とすることが可能であり、また、3,000以下、2,000以下または1,200以下とすることが可能である。あるいは、下記一般式(1)のkについて記載した重合度とすることが可能である。
【0173】
同様に、ポリアニリンの分子量は任意に設定することが可能である。例えば、下記一般式(1)のkについて記載した重合度に対応する分子量とすることが可能である。
【0174】
ポリアニリンの数平均分子量としては、例えば、400以上、600以上、または800以上とすることが可能であり、また、600,000以下、400,000以下、または240,000以下とすることが可能である。
【0175】
ポリアニリンの重量平均分子量としては、例えば、800以上、1,200以上、または1,600以上とすることが可能であり、また、1,200,000以下、800,000以下、または480,000以下とすることが可能である。
【0176】
本発明の含リンポリアニリンの製造方法によれば、重合度が高い含リンポリアニリンを容易に得ることが可能である。また、重合度が高い含リンポリアニリンエステルも容易に得ることが可能である。より具体的には、例えば、ホスホン化反応を行う原料として重合度の高いポリアニリン化合物を使用することにより、容易に重合度の高い含リンポリアニリンを得ることができる。
【0177】
上記新規製造方法で得られる含リンポリアニリンは、例えば、一般式(1)で表される:
−(A
1)
k− (1)
ここで、A
1はそれぞれ独立してアニリンモノマー残基である。kは重合度であって、任意の正の整数である。具体的には、例えば、4以上、10以上、100以上、500以上、1000以上または2000以上とすることが可能であり、また例えば、10,000以下、5,000以下、4,000以下または3,000以下とすることが可能である。一般式(1)のポリアニリンの分子量は、重合度に対応する量になる。なお、数平均分子量および重量平均分子量について、本明細書中のポリアニリンに関して上述した説明は一般式(1)のポリアニリンにも当てはまる。
【0178】
隣接するアニリンモノマー残基どうしは、パラ位置で結合している。すなわち、第1のアニリンモノマー残基に第2のアニリンモノマー残基が結合し、そして第2のアニリンモノマー残基に第3のアニリンモノマー残基が結合している場合、第1のアニリンモノマー残基と第3のアニリンモノマー残基は、第2のアニリンモノマー残基中のベンゼン環においてパラの位置関係にある。
【0179】
また、新規製造方法で得られる含リンポリアニリンの一般式(1)のさらなる詳細については本発明の触媒に関する一般式(1)についての説明がそのまま該当する。
【0180】
本発明の1つの実施形態において、含リンポリアニリンは、自己ドーピング性を有する導電性ポリアニリンである。
【0181】
自己ドーピング性を有する導電性ポリアニリンにおいては、ホスホン酸残基に水素が存在することが必要である。含リンポリアニリン中の水素が存在するホスホン残基の数は、任意に選択することができる。水素が存在するホスホン残基の比率は、含リンポリアニリン中に存在するアニリンモノマー残基の数を100%として、例えば、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上から選択することが可能である。あるいは、100%としてもよい。また、何らかの理由により、水素の含有量を制御することが所望される場合には、水素が存在するホスホン酸残基の数が抑制されるように設計することもできる。そのような場合には、含リンポリアニリン中に存在するアニリンモノマー残基の数を100%として、例えば、その比率を95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、または70%以下に設計することが可能である。
【0182】
また、ホスホン酸残基の総数に対する水素が存在するホスホン酸残基の比率も任意に設計することができる。含リンポリアニリン中に存在するホスホン酸残基の数を100%として、水素が存在するホスホン酸残基の比率を、例えば、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上から選択することが可能である。あるいは、100%としてもよい。また、何らかの理由により、水素の含有量を制御することが所望される場合には、水素が存在するホスホン酸残基の数が抑制されるように設計することもできる。そのような場合には、含リンポリアニリン中に存在するホスホン酸残基の数を100%として、例えば、その比率を95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、または70%以下に設計することが可能である。
【0183】
(イオン交換)
導電性ポリアニリンは、ホスホン化を行う際に、水素が存在するホスホン酸残基が所望の量導入されるように反応材料を調節しても良い。例えば、所望の量の水素が存在するホスホン酸残基が所望の量導入されるようにホスファイト化合物の種類および量を選択することができる。
【0184】
また、本発明の方法により得られたポリアニリンには、必要に応じて、イオン交換を行ってドープの量を調節しても良い。イオン交換は酸性水溶液やイオン交換樹脂などにより行うことが出来る。
【0185】
すなわち、得られたポリアニリンのホスホン酸またはホスホン酸一水素塩の水素がポリマー全体として所望の量よりも少ない場合には、ホスホン酸に結合している金属イオンやピリジニウムイオンやアンモニウムイオンを水素イオンにイオン交換することにより、ドープの効果を大きくすることができる。
【0186】
また逆に、重合により得られたポリアニリンのホスホン酸またはホスホン酸一水素塩の水素がポリマー全体として所望の量よりも多すぎる場合には、ホスホン酸またはホスホン酸一水素塩の水素イオンを他のイオン(例えば、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン等)にイオン交換することにより、ドープの効果を小さくすることができる。
【0187】
イオン交換は、ポリアニリンを合成した後に行うことができる。上記精製の操作と同時に行うことも可能であり、精製の操作より前に行ってもよく、精製の操作の後に行ってもよい。例えば、ろ過により精製を行う際には、ろ過を行うカラムにイオン交換樹脂を充填しておけば、ろ過による精製と同時にイオン交換を行うことができる。
【0188】
イオン交換の方法としては、従来公知のイオン交換の方法が使用可能である。
【0189】
[含リンポリアニリンエステル]
本発明の1つの実施形態において、含リンポリアニリンは、エステル結合を有する含リンポリアニリンエステルである。含リンポリアニリンエステルは、特に、導電性ポリアニリンを製造するための中間体として有用である。
【0190】
含リンポリアニリンエステルは、その分子中の少なくとも1つのホスホン酸残基に1つまたは2つのエステル結合が存在する。すなわち、上記一般式(1)の各A
1に存在するホスホン酸残基R
p中のM
1およびM
2のうちの1つまたは両方が炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基または炭素数6〜30のアリール基から選択されて、エステル結合を形成する。M
1およびM
2のうち1つのみがエステルである構造について、本明細書中では、モノエステルという。M
1およびM
2の両方がエステルである構造について、本明細書中では、ジエステルという。
【0191】
含リンポリアニリンエステルは、エステルを有すること以外は、基本的に上述した含リンポリアニリンと同様であるので、上述した含リンポリアニリンについての説明は、基本的に含リンポリアニリンエステルにもあてはまる。
【0192】
導電性ポリアニリンを製造するための中間体としては、モノエステルおよびジエステルの両方を使用することができるが、ジエステルが合成の容易さなどの点で好ましい。エステルを形成する上記M
1およびM
2の種類としては、アルキルまたはアラルキルが好ましく、アルキルがより好ましい。具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基およびペンタデシル基などが挙げられる。エステルを形成する上記M
1およびM
2の種類としては、さらに好ましくは、炭素数が1〜6のアルキルであり、特に好ましくは、炭素数が1〜4のアルキルである。
【0193】
含リンポリアニリンエステル中のすべてのホスホン酸残基にジエステルが存在しない場合、すなわち、すべてのエステルがモノエステルである場合の1つの実施形態においては、少なくとも1つのホスホン酸残基がエチルエステル以外のエステルである。
【0194】
含リンポリアニリンエステルは、1つの好ましい実施形態においては、ポリアニリン化合物をホスホン化することによって得られる。例えば、ポリアニリン化合物にホスファイトを反応させることによって得られる。反応させるホスファイトとしては、具体的には、例えば、上記一般式(3)のホスファイトまたは一般式(4)のホスファイトが挙げられる。一般式(3)のホスファイトにおいて、M
3〜M
5のうちの少なくとも1つを炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、または炭素数6〜30のアリール基とすることにより、あるいは、一般式(4)のホスファイトにおいて、M
6〜M
7のうちの少なくとも1つを炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、または炭素数6〜30のアリール基とすることにより、得られる含リンポリアニリンにエステルを導入することができる。
【0195】
含リンポリアニリンエステルも、上述した一般式(1)で表すことができる:
−(A
1)
k− (1)
各A
1は各々独立してm個のホスホン酸残基R
pとn個の置換基Rとを有し、
ホスホン酸残基R
pは、以下の式で表される:
【0197】
ただし、含リンポリアニリンエステル中のk個のアニリンモノマー残基A
1のうちの少なくとも1つにエステル結合を有するホスホン酸残基が存在する。エステルが存在するホスホン残基の数は、任意に選択することができる。エステルが存在するホスホン残基の比率は、含リンポリアニリンエステル中に存在するアニリンモノマー残基の数を100%として、例えば、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上から選択することが可能である。あるいは、100%としてもよい。また、何らかの理由により、エステルの含有量を制御することが所望される場合には、エステルが存在するホスホン酸残基の数が抑制されるように設計することもできる。そのような場合には、例えば、その比率を95%以下、90%以下、85%以下、または80%以下に設計することが可能である。
【0198】
また、エステル結合を有するホスホン酸残基は、上述したとおりモノエステルであってもジエステルであってもよい。例えば、含リンポリアニリンエステル中のエステル結合を有するホスホン酸残基のすべてがモノエステルであってもよく、すべてがジエステルであってもよい。また、モノエステルのホスホン酸残基とジエステルのホスホン酸残基との両方が存在しても良い。モノエステルのホスホン酸残基とジエステルのホスホン酸残基との両方が存在する含リンポリアニリンエステルは、例えば、2種類以上のホスファイト化合物を使用することにより製造することができる。含リンポリアニリンエステル中のモノエステルのホスホン酸残基の数とジエステルのホスホン酸残基の数とは任意に選択することができる。例えば、モノエステルのホスホン酸残基の数とジエステルのホスホン酸残基の数の合計を100%として、ジエステルの数を10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上から選択することが可能である。また、モノエステルの数を10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上から選択することも可能である。
【0199】
(加水分解して得られるポリアニリン)
上記含リンポリアニリンエステルに対して、加水分解を行えば、エステル部分が分解されて、エステルを含まない含リンポリアニリンが得られる。このようにして得られた、エステルを含まない含リンポリアニリンは、プロトン伝導性及び導電性ポリマーとして有用である。
【0200】
(燃料)
本発明の燃料電池に反応ガスが供給されると、主に下記の電気化学反応が生じ直流電力が発生する。
負極:2H
2 → 4H
++4e
−
正極:O
2+4H
++4e
− → 2H
2O
なお、白金では、ほぼ100%、4電子還元が起こるが、他の触媒、例えば、ヘテロ原子ドープカーボン触媒では、O
2+2H
++2e
− → H
2O
2という2電子還元も同時に起こり得ることが知られている。
【0201】
負極側ではプロトンが生じる酸化反応が起こり、正極側では本発明の触媒を用いて酸素分子の還元反応が起こる。正極側の還元反応に必要なプロトン源として本発明に採用できる燃料としては、水素ガス、メタノール、エタノール、1−プロパノール、ジメチルエーテル、アンモニア等が挙げられるが、水素が好ましい。
【0202】
(バインダー)
本明細書においてバインダーとは、固体高分子形燃料電池において触媒を結着させて触媒層を形成するためのバインダーを意味する。固体高分子形燃料電池においては、プロトンがバインダーを通って触媒に接触する。従来のバインダーは主に固体電解質を用いて製造される。
【0203】
本発明の触媒を用いる燃料電池には、プロトン伝導性を有する従来のバインダーを使用することができる。そのようなバインダーとしては、PTFE(Polytetrafluoroethylene)、PVDF(Polyvinylidenefluoride)、ナフィオン系高分子、PA(Polyamide)系高分子、PI(Polyimide)系高分子、PVA(Polyvinylalcohol)系高分子、PAE(Polyaryleneether)系高分子及びポリアゾール系高分子などが挙げられ、これらは単独又は二つ以上の組合で用いることができる。
【0204】
また、本発明は、1つの実施形態において、ポリアニリンを用いた新規なバインダーを提供する。本発明で使用するポリアニリンを用いたバインダーは、ハロゲンを含まないので環境にやさしいといったメリットがある。また本発明のポリアニリンのバインダーは、プロトン伝導性に加えて、電気伝導性を有するものであり、バインダーに包まれて電極から孤立する触媒が生じて触媒利用率の低下を招くという現象を防ぐことができる。本発明のバインダーは、アノード電極層に用いてもよく、カソード電極層に用いてもよい。
【0205】
本発明の燃料電池は、本発明の触媒および従来のバインダーを用いて触媒層を形成してもよく、従来の触媒および本発明のバインダーを用いて触媒層を形成してもよく、本発明の触媒および本発明のバインダーを用いて触媒層を形成してもよい。
【0206】
(触媒)
本発明の触媒は、特定構造のポリアニリンを焼成することで目的の性能が得られる。本発明の触媒は、還元反応を触媒する機能を有する。本発明の触媒は、例えば、固体高分子形燃料電池の酸素還元反応を触媒として有用である。
【0207】
本発明の触媒においては、一つの実施形態において、ポリアニリンにビピリジン化合物または金属化合物を加えることにより、触媒活性が向上する。
【0208】
(触媒の製造方法)
含リンポリアニリンは、好ましくは、焼成を行って含リンポリアニリン焼成体として触媒を得ることができる。また、必要に応じて、ピピリジン化合物の添加工程、金属化合物の添加工程、粉砕工程、または酸浸漬工程などを行って触媒を製造することが好ましい。
【0209】
(ビピリジン化合物)
本明細書中において、ビピリジン化合物とは、ビピリジンおよび置換ビピリジンをいう。
【0210】
本発明の触媒に好ましく使用できるビピリジン化合物としては、1−(4−ピリジル)ピペラジン、2−(4−ピペリジニル)ピリジン、2,2−ビピリジル、2,3−ビピリジル、2,4−ビピリジル、4,4−ビピリジル、1−(4−ピリジル)ピリジニウムクロライド、1−(4−ピリジル)ピリジニウムヒドロクロライド、1−(4−ピリジル)ピリジニウム−n―ヒドレート、6−ブロモ−2,2−ビピリジン、5−ブロモ−2,3−ビピリジン、5−ブロモ−2,4−ビピリジン、4,4−ジブロモ−2,2−ビピリジン、6,6−ジブロモ−2,2−ビピリジン、2,2−ジピリジル−N,N−ジオキシド、6,6−ジアミノ−2,2−ビピリジン、4,4−ジメチル−2,2−ビピリジル、5,5−ジメチル−2,2−ビピリジル、4,4−ビス(クロロメチル)−2,2−ビピリジン、2,2−ビピリジン−3,3−ジカルボン酸、2,2−ビピリジン−4,4−ジカルボン酸、2,2−ビピリジン−5,5−ジカルボン酸、4,4−ジエチル−2,2−ビピリジル、4,4−ジノニル−2,2−ジピリジル、2,6−ビス(2−ピリジル)−4(1H)−ピリドン、2,2:6,2−ターピリジン、4−クロロ−2,2:6,2−ターピリジン、4−ブロモ−2,2:6,2−ターピリジン、4−ヒドロキシ−2,2:6,2−ターピリジン、トリメチル−2,2:6,2−ターピリジン−4,4,4−トリカルボキシレート、4,4,4−トリエチル−2,2:6,2−ターピリジン、4−(4−ブロモフェニル)−2,2:6,2−ターピリジン、5−フェニル−2,2−ビピリジン、5−フェニル−2,3−ビピリジン、5−フェニル−2,4−ビピリジン、5−(4−クロロフェニル)−2,2−ビピリジン、5−(4−クロロフェニル)−2,3−ビピリジン、5−(4−クロロフェニル)−2,4−ビピリジン、5−(4−ブロモフェニル)−2,3−ビピリジン、5−(4−ブロモフェニル)−2,4−ビピリジンなどが挙げられる。
【0211】
(触媒金属)
また、1つの実施形態において、本発明の含リンポリアニリンに触媒金属を含む金属化合物を添加することができる。金属化合物を添加することは、触媒活性の効果を高めることからより好ましい。
【0212】
添加する金属化合物中の金属としては公知の遷移金属元素のものを使用することができる。例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウムといった第4族元素、バナジウム、ニオブ、タンタルといった第5族元素、クロム、モリブデン、タングステンといった第6族元素、マンガン、テクネチウム、レニウムといった第7族元素、鉄、コバルト、ニッケルといった鉄族元素、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウムといった白金族元素、銅、銀、金といった銅族元素、亜鉛、カドミウム、水銀といった第12族元素から少なくとも1つを選択することができる。
【0213】
本発明では、安価で容易に触媒活性能を備えた還元触媒を提供することから、上記のうち、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛といった非貴金属の元素を用いることが好ましく、鉄、コバルト、ニッケルといった鉄族元素がより好ましい。
【0214】
本発明の含リンポリアニリンと上記触媒金属を含む金属化合物とを混合して、その混合物の焼成を行えば、金属元素が窒素、酸素及びリンと配位して錯体が形成されるため、酸素還元特性により優れた還元触媒を作成することができる。使用する金属化合物は特に限定されないが、固体もしくは液体の金属、金属ハロゲン化物、次亜ハロゲン酸金属塩、ハロゲン酸金属塩、過ハロゲン酸金属塩、金属酸化物、金属過酸化物、亜硝酸金属塩、硝酸金属塩、炭酸金属塩、ペルオキソ炭酸金属塩、カルボン酸金属塩、亜硫酸金属塩、金属硫化物、硫酸金属塩、過硫酸金属塩、チオ硫酸金属塩、次亜リン酸金属塩、亜リン酸金属塩、リン酸金属塩、金属水酸化物、無機金属錯体、有機金属錯体、金属有機化合物から少なくとも1つを選択することができる。なお、本明細書中では、上記固体もしくは液体の金属、すなわち金属単体のものも金属化合物という。
【0215】
これらのうち、取り扱いが容易であること、および水又は有機溶媒への分散性、溶解性の面から、金属ハロゲン化物、次亜ハロゲン酸金属塩、ハロゲン酸金属塩、過ハロゲン酸金属塩、亜硝酸金属塩、硝酸金属塩、炭酸金属塩、カルボン酸金属塩、金属硫化物、亜硫酸金属塩、硫酸金属塩、過硫酸金属塩、チオ硫酸金属塩、次亜リン酸金属塩、亜リン酸金属塩、リン酸金属塩、金属水酸化物、有機金属錯体が好ましい。
【0216】
好ましい金属化合物の具体例としては、以下が挙げられる:
塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、硫化鉄(II)、硫化鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、シュウ酸鉄(II)、シュウ酸鉄(III)、リン酸鉄(II)、リン酸鉄(III)、フェロセン、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、四酸化三鉄、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、酢酸鉄(II)、酢酸鉄(III)、乳酸鉄(II)、乳酸鉄(III)、鉄(II)アセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート等の鉄化合物;
塩化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、硫化ニッケル(II)、硫酸ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、シュウ酸ニッケル(II)、リン酸ニッケル(II)、ニッケロセン、酸化ニッケル(II)、水酸化ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、乳酸ニッケル(II)、ニッケル(II)アセチルアセトナート等のニッケル化合物;
塩化クロム(II) 、塩化クロム(III)、臭化クロム(II)、臭化クロム(III)、硫化クロム(III)、硫酸クロム(III)、硝酸クロム(III)、シュウ酸クロム(III)、リン酸クロム(III)、酸化クロム(II)、酸化クロム(III)、酸化クロム(IV)、酸化クロム(VI)、水酸化クロム(III)、酢酸クロム(II)、酢酸クロム(III)、乳酸クロム(III)等のクロム化合物;
塩化コバルト(II)、塩化コバルト(III)、臭化コバルト(II)、臭化コバルト(III)、硫化コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、硫酸コバルト(III)、硝酸コバルト(II)、硝酸コバルト(III)、シュウ酸コバルト(II)、リン酸コバルト(II)、コバルトセン、酸化コバルト(II)、酸化コバルト(III)、四酸化三コバルト、水酸化コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、乳酸コバルト(II)、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等のコバルト化合物;
塩化バナジウム(II)、塩化バナジウム(III)、塩化バナジウム(IV)、臭化バナジウム(II)、臭化バナジウム(III)、臭化バナジウム(IV)、硫化バナジウム(III)、硫酸バナジウム(IV)、シュウ酸バナジウム(IV)、バナジウムメタロセン、酸化バナジウム(V)、酢酸バナジウム、クエン酸バナジウム、バナジウム(IV)アセチルアセトナート等のバナジウム化合物;
塩化マンガン(II)、臭化マンガン(II)、硫化マンガン(II)、硫酸マンガン(II)、硝酸マンガン(II)、シュウ酸マンガン(II)、水酸化マンガン(II)、酢酸マンガン(II)、乳酸マンガン(II)、マンガン(II)アセチルアセトナート、マンガン(III)アセチルアセトナート等のマンガン化合物。
【0217】
これらの化合物の中でも、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、酢酸鉄(II)、酢酸鉄(III)、塩化ニッケル(II)、硫酸ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、水酸化ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、塩化コバルト(II)、塩化コバルト(III)、硫酸コバルト(II)、硫酸コバルト(III)、硝酸コバルト(II)、硝酸コバルト(III)、水酸化コバルト(II)、酢酸コバルト(II)がより好ましく、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、酢酸鉄(II)、酢酸鉄(III)、塩化ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、塩化コバルト(II)、塩化コバルト(III)、酢酸コバルト(II)がさらに好ましい。
【0218】
上記金属化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0219】
(酸浸漬)
1つの実施形態においては、本発明の含リンポリアニリンを酸溶液で処理してもよい。本発明の含リンポリアニリンに、酸溶液での処理を行えば、触媒活性の効果をさらに高めた還元触媒を得ることが期待できるためより好ましい。
以下、酸浸漬とは酸溶液による処理を行う工程を示す。
【0220】
上記の処理方法については特に限定されないが、具体的には、含リンポリアニリンを酸溶液に一定の時間浸すことにより酸浸漬を行うことができる。酸浸漬時に撹拌を行ってよく行わなくてもよく、撹拌を行う場合には手で軽く振り混ぜてもよく、強く振り混ぜてもよく、回転子を使ってもよく、撹拌棒を使ってもよく、また、撹拌の代わりの動作として、酸溶液を加熱し還流を行う動作、酸溶液に超音波照射を行う動作、酸溶液にマイクロ波照射を行う動作を行ってもよい。
【0221】
酸浸漬を行う際の温度については特に限定されるものではなく、溶液の融点以上沸点以下の温度範囲内にて任意で酸浸漬を行うことができる。触媒活性を高めるために高温で酸浸漬を行ってもよく、また、低温で酸浸漬を行っても触媒活性を高めることができる。上記温度の範囲内であれば一定の温度にて酸浸漬を行ってもよく、酸浸漬の最中に加熱及び冷却を行ってもよい。
【0222】
酸の濃度については特に限定されないが、取り扱いが容易であることと、含リンポリアニリンの分解を抑制するために希釈された酸を用いるのが好ましい。具体的には、20mol/L以下、10mol/L以下、5mol/L以下、または1mol/L以下の濃度のものを使用することができ、また0.0001mol/L以上、0.0005mol/L以上、0.001mol/L以上、0.005mol/L以上、0.01mol/L以上、または0.05mol/L以上の濃度のものを使用することができ、10mol/L以下、5mol/L以下、または1mol/L以下、あるいは0.001mol/L以上、0.005mol/L以上、0.01mol/L以上、または0.05mol/L以上が好ましく、5mol/L以下、または1mol/L以下、あるいは0.01mol/L以上、または0.05mol/L以上がより好ましい。
【0223】
酸溶液として使用する酸の種類については特に限定されず、公知の無機酸及びカルボン酸、イオン交換樹脂を使用することができる。具体的には、塩酸、亜硝酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、チオ硫酸、次亜リン酸、亜リン酸、リン酸などの無機酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのカルボン酸、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂などのイオン交換樹脂を使用することができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用して用いてもよい。
【0224】
酸溶液として使用する溶媒の種類については特に限定されないが、水、プロトン性有機溶媒、非プロトン性有機溶媒を使用することができる。プロトン性有機溶媒としてメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどを選択することができ、非プロトン性有機溶媒として、アセトン、エチルメチルケトン、アセチルアセトン、2,5−ヘキサンジオン、ジアセチル、テトラヒドロフラン、1,4−ヘキサンジオール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどを選択することができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0225】
酸浸漬を行う時間は特に限定されるものではなく、10分以上、30分以上、1時間以上、2時間以上、4時間以上、または6時間以上とすることができる。また、必要に応じて、10時間以下、8時間以下、6時間以下、4時間以下、2時間以下、または1時間以下であってもよい。
【0226】
酸浸漬を行う前後に、水による洗浄を行ってもよい。水による含リンポリアニリンの洗浄方法は上述の処理方法、温度、時間にて行うことができる。水による洗浄を行わなくても高い触媒活性の還元触媒を得ることができるが、水による洗浄を行うことで含リンポリアニリン表面に残った余分な酸やイオン成分を除去することができるため好ましい。洗浄に用いる水は特に限定されないが、上述の理由から脱イオン水を用いることが洗浄効果が高いため好ましい。水による洗浄は、酸浸漬を行った後に行うのが好ましい。
【0227】
上記酸溶液及び水の両液体は、酸浸漬及び洗浄終了後に公知の方法で除去することができる。具体的な方法として、濾紙を敷いたブフナー漏斗を用い吸引濾過法により除去する方法、真空乾燥により除去する方法、液体を静置して上澄みを除去する方法などを用いることができる。酸浸漬及び水による洗浄を行う回数は特に制限されず、必要に応じて酸浸漬及び洗浄終了後に液体を除去する動作を省略してもよい。
上記の方法により液体を除去した後に、必要に応じて、含リンポリアニリンの乾燥を行うことができる。乾燥には公知の方法を使用することができ、具体的には、液体の沸点前後の温度環境に晒す方法、密閉容器中にいれ真空状態にして乾燥させる方法及びこれらを組み合わせる方法がある。また、液体を除去した後に焼成を行うことによっても乾燥を行うことができる。
【0228】
(焼成)
本発明の触媒を製造する際に、ポリアニリンを焼成する方法としては、従来公知の任意の方法を採用することができる。また、本発明の触媒にビピリジン化合物または金属化合物を含有させる場合には、その化合物を焼成前に添加することが好ましい。
【0229】
本発明のポリアニリンを焼成する際の雰囲気は、非酸化雰囲気が好ましく、特にアルゴン雰囲気が好ましい。焼成の温度は、600〜1200℃が好ましく、700〜1100℃がより好ましい。酸浸漬を行う含リンポリアニリンは焼成前であってもよく、一回以上の焼成を行った含リンポリアニリン焼成体であってもよい。
【0230】
焼成を行う時間は特に限定されるものではなく、30秒以上、1分以上、3分以上、5分以上、10分以上、30分以上、1時間以上、2時間以上、4時間以上、または6時間以上とすることができる。また、必要に応じて、10時間以下、8時間以下、6時間以下、4時間以下、2時間以下、1時間以下、または30分以下であってもよい。焼成の時間が長すぎると焼成体の回収量が少なくなって、焼成体の回収が困難になる場合がある。
【0231】
1つの好ましい実施形態によれば、含リンポリアニリンが一定の炭化度になるまで焼成を行うことが好ましく、そのような状態になるまでの時間を焼成時間として設定することが好ましい。例えば、好ましい実施形態においては、熱分解によりポリアニリンの重量がある程度減少するまで焼成を行うことができる。ポリアニリンの重量減少率は適宜選択することができる。例えば、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上から選択することが可能である。また、重量減少率を95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、または70%以下に設計することが可能である。例えば、一つの好ましい実施形態においては、900℃で5分間焼成した場合と同程度に熱分解するまで焼成を行うことができる。
【0232】
ここで、重量減少率は、(重量減少率)=(分子)÷(分母)×100の式に基づいて計算する。分子と分母は以下のとおりである。
(分子):重量減少量
(分母):焼成前のポリアニリンと添加物(金属塩やビピリジン化合物)の重量合計(但し、溶媒は除く)。
(重量減少率(%))=
(1−(焼成後の焼成体の重量)/(焼成前のポリアニリンと添加物(金属塩やビピリジン化合物)の重量合計(但し、溶媒は除く)))×100
焼成を行う装置は特に限定されない。加熱の際にある程度密閉できる装置が好ましい。ある程度密閉できれば、その内部を好ましい雰囲気(例えば、非酸化雰囲気)に維持しやすいので好ましい。従来公知のオーブンなどを使用することができる。例えば、電気炉などが使用可能である。ただし、電気炉内で熱分解反応が起こることにより、装置内の圧力が急激に増大する場合があり得るため、そのような場合に圧力が解放できる装置が好ましい。例えば、密閉された反応器に吸気口と排気口を取り付けて、その吸気口と排気口から非酸化雰囲気を維持するためのガス(例えば、アルゴンガス)をフローさせて内部の非酸化雰囲気を維持しながら、圧力増大の際にはその吸気口または排気口から圧力を逃がすことができる装置が好ましい。
【0233】
(粉砕)
含リンポリアニリン及び含リンポリアニリン焼成体は酸浸漬を行う際に前処理及び後処理を行ってもよく、また行わなくてもよい。前処理及び後処理の方法としては特に限定されないが、含リンポリアニリン及び含リンポリアニリン焼成体を粉砕することが挙げられる。粉砕方法は、具体的に、乳鉢に含リンポリアニリン及び含リンポリアニリン焼成体を入れ乳棒ですり潰すことで粉砕を行う方法、ねじ口試験管に入れて丸底ガラス棒ですり潰すことで粉砕を行う方法、ボールミル、ジェットミル、気流粉砕機など粉砕機に入れて粉砕を行う方法などを使用することができる。
【0234】
粉砕による前処理及び後処理を行わなくとも、本発明の還元触媒は高い酸素還元活性を示すが、粉砕による前処理及び後処理を行うことで、含リンポリアニリン及び含リンポリアニリン焼成体の粒径が小さくなり表面積が向上することから、酸浸漬による触媒活性の効果をより高めることができるためより好ましい。
【0235】
本発明の含リンポリアニリンから酸素還元活性の高い還元触媒を得るために行う工程として、ビピリジン化合物の添加、触媒金属の添加、酸浸漬、焼成、粉砕の各工程の実施形態を挙げた。これら工程は必要に応じて少なくとも1つ以上行えばよく、また、ビピリジン化合物の添加、触媒金属の添加、酸浸漬、水による洗浄の各工程から少なくとも2つ以上を選択して同時に行ってもよい。これら工程の順番は特に限定されないが、工程の最終段階に焼成工程及び粉砕工程を選択することで、より酸素還元活性の高い還元触媒を得ることができるためより好ましい。また、焼成の工程は2回以上行ってもよく、この場合は、金属化合物又はビピリジン化合物を添加する段階は、1回目の焼成工程の前の段階で行うのが好ましい。また、焼成の工程を2回以上行う場合においても、工程の最終段階に焼成工程を行うことが好ましく、その後必要に応じて粉砕工程を行うことがより好ましい。さらに好ましい工程としては、最後の焼成工程の後に粉砕工程を行うことである。
【0236】
具体的な工程の順番としては、
1.粉砕工程→ビピリジン化合物の添加工程→焼成工程
2.酸浸漬工程→金属化合物とビピリジン化合物の添加工程→焼成工程
3.金属化合物の添加工程→焼成工程
4.金属化合物の添加工程→焼成工程→酸浸漬工程→焼成工程→粉砕工程、
5.酸浸漬と金属化合物の添加の工程→焼成工程→粉砕工程
などが挙げられる。
【0237】
以上のようにして製造した本発明にかかる触媒は、酸素還元特性を有し、白金等の触媒金属を使用せずに燃料電池用正極触媒として使用することができる。また、本発明にかかるバインダーは、ポリアニリンが優れたプロトン伝導性を示すので燃料電池用材料として使用することができる。さらに本発明のバインダーは、導電性(電気伝導性)も持ち合わせているので、燃料電池用バインダーとして好適に使用できる。
【0238】
(電池の製造方法)
本発明の触媒を用いた電池の製造方法は特に限定されない。PEFCの製造方法として従来公知の各種方法が使用可能である。例えば、触媒をバインダーと混合して電極層を形成し、これを正極または負極として用いて、電池の他の部材と組み合わせて電池を形成することができる。
【0239】
電極層の形成の際には、例えば、ナフィオン等のバインダーおよび必要に応じて溶媒を用いてバインダー液を調製しておき、そのバインダー液に、上述した方法で調製した触媒を添加して触媒インクを調製し、この触媒インクを基材の上に塗布して乾燥させるなどの方法が可能である。
【0240】
本発明のバインダーを用いて触媒層を形成する場合、その触媒としては、従来公知の触媒を使用することができる。
【0241】
本発明のバインダーを正極触媒層に用いる場合、触媒は、例えば、触媒金属および触媒担体から構成される粒子からなる酸素還元触媒である。触媒金属としては例えば、白金、金、銅、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、レニウム、およびこれらのうちの2種類以上の合金が使用可能である。触媒担体としては、例えば炭素(例えば、カーボンブラック)等が使用可能である。
【0242】
本発明のバインダーを負極触媒層に用いる場合、触媒は、例えば、触媒金属および触媒担体から構成される粒子からなる、水素のイオン化を促進する触媒である。触媒金属としては例えば、白金、金、銅、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、レニウム、およびこれらのうちの2種類以上の合金が使用可能である。触媒担体としては、例えば炭素(例えば、カーボンブラック)等が使用可能である。
【実施例】
【0243】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定される訳ではない。
【0244】
[電気化学測定]
(装置)
以下の実施例で試料の焼成に用いた電気炉はFULL−TECH製FT−01Xである。酸素還元反応の活性評価に関するデータは、電圧制御装置を用いて作用電極の電位を変化させ、電流変化を記録することできるビー・エー・エス製電気化学アナライザーALS608E型および酸素還元反応の電極活性を解析する回転リングディスク電極装置RRDE−3Aを用いて測定した。
【0245】
(電極)
電解液には酸素飽和させた0.1Mリン酸水溶液を、参照電極には銀/塩化銀(3M NaCl)電極を、対極には白金電極を、作用電極にはグラッシーカーボンディスク電極(外径12mmのうち、電極部の直径3mmまたは4mm)を用いた。
【0246】
(ナフィオンバインダー液の調製)
触媒インクの調製に用いたナフィオンバインダー液は、以下の手順で調製した。まず、5wt%ナフィオン分散液(シグマアルドリッチ製、527084−25ML)595μL(ナフィオン相当量:27.5mg)に体積比15/16の脱イオン水/イソプロパノール混合液を加えてナフィオンバインダー液を25mL調製した。
【0247】
(触媒インクの調製)
各実施例においてそれぞれ記載しているとおりに触媒インクを調製した。なお、触媒インクの調製に使用したディスク電極としては、前もって研磨用アルミナ(直径0.05μm)で十分に研磨し、脱イオン水でよく濯いでおいたディスク電極を用いた。
【0248】
(測定方法)
回転リングディスク電極装置によって本ディスク電極を1600rpmで回転させながら、電気化学アナライザーを用いて5mV/sの速度で負方向に電位掃引を行い、作用電極に流れる電流値を記録した。なお、還元電流は負方向にとってある。また、比較データとして、ディスク電極に触媒インクを塗布せずに測定したデータをブランクとして各図に示した。
【0249】
(合成例1)
(ポリ(2−メトキシアニリン−5−ホスホン酸)(以下、PMAPと表記する)の合成)
PMAPは国際公開WO2014/167818を参考に、下記スキームに従って合成した。
【0250】
【化5】
【0251】
(1A)化合物(6)の合成
フラスコ内を乾燥後、窒素雰囲気下において4−ブロモ−2−ニトロアニソール804mg(3.47mmol)、Na
2CO
3405mg(3.82mmol)、Pd(OAc)
278mg(0.35mmol)、ジエチルホスファイト0.9mL(6.99mmol)、キシレン3mLを入れた。混合物を120℃で24時間撹拌し、室温に冷却後、固形物をセライトでろ別し、濾滓をCH
2Cl
2で洗浄した。得られたろ液と濾滓の洗浄液を混合し、溶媒留去した後、カラムクロマトグラフィーで精製し、807mgの黄色液体を得た。その後、残留しているジエチルホスファイトを留去するためクーゲルロール蒸留(100℃/133Pa×30分)を行い、黄色液体の目的化合物の4−メトキシ−3−ニトロフェニルホスホン酸ジエチル689mg(2.38mmol,収率69%)を得た。
【0252】
(1B)化合物(7)の合成
フラスコ内を乾燥後、窒素雰囲気下において4−メトキシ−3−ニトロフェニルホスホン酸ジエチル1.14g(3.9mmol)、メタノール5mLを加え、5%Pd−C88mg(C中Pdを5wt%含有)を加えた後、室温で攪拌し、系内を水素雰囲気下にした。4.5時間後、さらに5%Pd−Cを加えて2時間室温で撹拌し、反応を終了させた。得られた反応混合物をセライトを用いてろ別し、ろ液を溶媒留去したところ、830mgの茶色液体3−アミノ−4−メトキシフェニルホスホン酸ジエチルを得た。次に、35%塩酸5mL(60mmol)を加え、90℃を15時間保持し、反応を終了させた。得られた反応混合物の溶媒を留去し、固形物を133Paの減圧下、室温で乾燥し、672mg(2.80mmol,2−step収率72%)の目的化合物の3−アミノ−4−メトキシフェニルホスホン酸塩酸塩の固体を得た。これ以上の精製はせずにそのまま次の反応に用いた。
【0253】
(1C)化合物(8)の合成
フラスコに3−アミノ−4−メトキシフェニルホスホン酸塩酸塩150mg(0.63mmol)、水1.48mLを入れ、1M−NH
3水溶液2.96mL(2.96mmol)を加え、3℃まで冷却後、1.25M−(NH
4)
2S
2O
8水溶液0.74mL(0.93mmol)を30分間で滴下した。得られた混合物をさらに3℃で24時間撹拌し、反応を終了させた。得られた反応物をアセトン50mLに加え固体を析出させ、さらに室温で30分攪拌した。桐山ろうとで固体をろ別し、メタノール数mLで洗浄した。得られた固形物を133Paの減圧下、40℃で乾燥し、目的化合物の緑色固体184mgを得た。
【0254】
(PMAPをバインダーとして用いた例)
(実施例1)
PMAPをナフィオンの代わりにバインダーとして使用可能かどうかを調べるため、市販の白金担持炭素を触媒として酸素還元反応の活性評価を行った。まず、合成例1で合成したPMAP1.1mgを5.6Mピリジン水溶液48μLに懸濁させ、脱イオン水を加えてPMAP/ピリジンバインダー液を1mL調製した。ここでピリジンは、PMAPをよく分散させるために、PMAPのモノマー単位に対して0.5当量添加された。調製したバインダー液から40μLを取り、これをPt/C(C中Ptを10wt%含有、以下、Pt/C(10wt%)と表記する)粉末2.4mg、およびイソプロパノール50μLと混合し、その後、脱イオン水を加えて1mLとした。得られた混合物に3.5時間超音波照射を行うことによって、触媒インクを調製した。次に、触媒インクから3μLを取り、これをディスク電極に塗布して自然乾燥させて測定サンプルを作製し、その後、酸素還元反応の活性評価を行った。なお、Pt/C(10wt%)およびPMAPの担持量は、それぞれ51μg/cm
2および2μg/cm
2であった。
【0255】
(比較例1)
ナフィオンバインダー液40μLを取り、これをPt/C(10wt%)粉末2.4mgおよびイソプロパノール50μLと混合し、その後、脱イオン水を加えて1mLとした。得られた混合物に3.5時間超音波照射を行うことによって、触媒インクを調製した。次に、触媒インクから1.5μLを取り、これをディスク電極に塗布して自然乾燥させて測定サンプルを作製し、その後、酸素還元反応の活性評価を行った。なお、Pt/C(10wt%)およびナフィオンの担持量は、それぞれ51μg/cm
2および1μg/cm
2であった。
【0256】
[各バインダーの酸素還元反応活性評価]
酸素還元反応活性評価を「電気化学測定」に記載した測定方法により行った。その結果を
図1に記す。測定の結果、PMAPはナフィオンと同等のバインダー性能を示すことがわかった。
【0257】
(PMAP焼成体を触媒として用いた例)
(実施例2)
[PMAP焼成体の合成]
ムライトるつぼ(5mL)に合成例1で合成したPMAP20.0mgを入れて蓋をし、電気炉に入れてアルゴン気流下で焼成を行った。アルゴンガスフロー開始の5分後から100℃/minの速度で昇温を行い、700℃、800℃あるいは900℃に達してから5分間保持した。その後、加熱を止めて電気炉を冷まし、光沢のある灰色固体をそれぞれ11.8mg、10.2mg、5.7mg得た。以下、これらの試料をそれぞれPMAP700、PMAP800およびPMAP900と略記する。
【0258】
[PMAP焼成体の酸素還元反応活性評価]
上記の方法で合成したPMAP焼成体(PMAP700、PMAP800、PMAP900)について、酸素還元反応の活性評価を行った。酸素還元反応活性を「電気化学測定」に記載した測定方法により測定した。その結果を
図2に記す。
【0259】
測定の結果、Pt/Cほどではないが、いずれの試料においても酸素還元活性が認められた。試料の焼成温度が増大するにつれて、酸素還元開始電位が正方向にシフトし、酸素還元活性が向上することがわかった。なお、比較データとして、比較例1で得られたPt/Cのデータも示した。
【0260】
(PMAP/4,4’−ビピリジル焼成体を触媒として用いた例)
(実施例3)
[PMAP/4,4’−ビピリジル焼成体の合成]
合成例1で合成したPMAP20.0mgおよび4,4’−ビピリジル1.9mg(PMAPのモノマー単位に対して0.5当量)を加えたムライトるつぼ(5mL)にN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100μLを加えた。固形物をガラス棒でよくつぶしながら撹拌し、蓋をして電気炉に入れ、アルゴン気流下で焼成を行った。ガスフロー開始の5分後から2分間で135℃まで昇温し、5分間保持した。その後、2分間で210℃まで昇温し、3分間保持した。その後、100℃/minの速度で900℃まで昇温し、5分間保持した。最後に、加熱を止めて電気炉を冷まし、黒色固体4.0mgを得た。以下、ここで得られた試料をPMAP/bpy/DMF/900と略記する。
【0261】
[PMAP/4,4’−ビピリジル焼成体の酸素還元反応活性評価]
上記の方法で合成したPMAP/4,4’−ビピリジル焼成体(PMAP/bpy/DMF/900)について、酸素還元反応の活性評価を行った。酸素還元反応活性評価を「電気化学測定」に記載した測定方法により行った。その結果を
図3に記す。
【0262】
測定の結果、Pt/Cほどではないが、酸素還元活性が認められた。実施例2で得られたPMAP900のデータと比較すると、酸素還元開始電位が正方向にシフトしており、4,4’−ビピリジルの添加によって酸素還元活性が向上することがわかった。なお、比較データとして、比較例1で得られたPt/Cのデータも示した。
【0263】
(ポリアニリン(以下、PANIと表記する)焼成体を触媒として用いた例)
(比較例2)
[PANI焼成体の合成]
PANI(シグマアルドリッチ製、530689−10G、Mw:〜65,000)を使用し、Catal. Lett.2012,142,1244−1250.の焼成方法を参考にして合成を行った。PANI200.0mgを加えたムライトるつぼ(5mL)に脱イオン水1.2mLを加えてよく撹拌し、蓋をして電気炉に入れ、アルゴン気流下で焼成を行った。ガスフロー開始の5分後から1分間で95℃まで昇温し、5分間保持した。その後、1分間で130℃まで昇温し、5分間保持した。その後、100℃/minの速度で900℃まで昇温し、5分間保持した。最後に、加熱を止めて電気炉を冷まし、黒色固体99.1mgを得た。以下、ここで得られた試料をPANI/H
2O/900と略記する。
【0264】
[PANI焼成体の酸素還元反応活性評価]
比較例として、上記の方法で合成したPANI焼成体(PANI/H
2O/900)について、酸素還元反応の活性評価を行った。酸素還元反応活性評価を「電気化学測定」に記載した測定方法により行った。その結果を
図4に記す。
【0265】
測定の結果、Pt/Cほどではないが、酸素還元活性が認められた。実施例2で得られたPMAP900のデータと比較すると、酸素還元開始電位がやや負方向にシフトしており、PMAP900の方がやや高い酸素還元活性を有していることがわかった。なお、比較データとして、比較例1で得られたPt/Cのデータも示した。
【0266】
(合成例2)
ポリ(アミノフェニルホスホン酸ジエチル)
ChemiStation Personal Synthesizer PPV(EYELA社製)用容器(φ34)に回転子を入れ、ポリアニリン1.81g(5.0mmol(アニリン4量体基準)、SIGMA−ALDRICH:ポリアニリン(エメラルディン塩基)重量平均分子量約10000)を加えた。続いて、容器内にNMP100mLを加えて、撹拌した。その後、5分間超音波を照射した。そこへ、過硫酸アンモニウム1.71g(7.5mmol)を加えて、室温で30分間撹拌した。30分後、脱イオン水900μL(50mmol)を添加し、次いで、亜リン酸トリエチル26.0mL(155mmol)を添加した。この混合物を、ChemiStation Personal Synthesizer PPV(EYELA社製)を用いて60℃に昇温し、撹拌を続けた。装置には還流管を取り付けておき、昇温して撹拌する際には、取り付けられた還流管を用いて空冷した。昇温してから1時間後、脱イオン水1000mLが入っているコニカルビーカーの中へ反応溶液を注いだ。その後、吸引濾過により黒緑色の固体を得た。続いて、脱ドープを行うため、0.15mol/Lアンモニア水400mLが入っているコニカルビーカーに得られた固体を入れ、撹拌し、超音波照射を10分間行った。その後、吸引濾過により黒青色の固体を得た。次に、脱イオン水400mLが入っているコニカルビーカーに脱ドープ後の固体を入れ、撹拌し、超音波照射を10分間行った。その後、吸引濾過により黒青色の固体を得た。また、得られた固体をコニカルビーカーに移し、そこへジエチルエーテルを200mL注ぎ、撹拌し、吸引濾過を行うことで黒青色の固体を得た。得られた固体を終夜、加熱下(40℃)で真空乾燥した。固体の収量は2.49gであった。
【0267】
(ポリアニリンホスホン酸ジエチル(以下、PANI−PDEと表記する)の合成)
(合成例3)
ChemiStation Personal Synthesizer PPS−CTRL1(EYELA社製)用容器(φ34)に回転子を入れ、ホスホン化ポリアニリン214.5mg(0.34mmol(アニリン4量体基準)、合成例2で合成したもの)を加えた。続いて、容器内にNMP20mLを加え、撹拌した。その後、5分間超音波を照射した。そこへ、過硫酸アンモニウム119.8mg(0.53mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。30分後、脱イオン水63μL(3.5mmol)を添加し、次いで、亜リン酸トリエチル1.82mL(10.9mmol)を添加した。混合物を、ChemiStation Personal Synthesizer PPS−CTRL1(EYELA社製)を用いて60℃に昇温し、撹拌を続けた。装置には還流管を取り付けておき、昇温して撹拌する際には、取り付けられた還流管を用いて空冷した。昇温してから1時間後、反応溶液を200mLのナスフラスコへ脱イオン水で洗い込みながら移した。その後、蒸留器具を組み立て、減圧下で加熱し、溶媒を留去した。溶媒を留去する際、アルカリトラップを使用した。大部分の溶媒を留去した後、トルエンを約40mL加え、超音波を5分間照射した。その後、再び減圧下で加熱して、溶媒を留去した。続いて、ナスフラスコ内の固体に脱イオン水を加え、吸引濾過を行って黒緑色の固体を得た。続いて、脱ドープを行うため、0.15mol/Lアンモニア水200mLが入っているコニカルビーカーに得られた固体を入れ、撹拌し、超音波照射を10分間行った。その後、吸引濾過により黒色の固体を得た。次に、脱イオン水200mLが入っているコニカルビーカーに脱ドープ後の固体を入れ、撹拌し、超音波照射を10分間行った。その後、吸引濾過により黒色の固体を得た。また、得られた固体をジエチルエーテル約200mLで洗浄した。得られた固体を終夜、加熱下(40℃)で真空乾燥した。得られた固体の収量は104.6mgであった。
【0268】
(ポリアニリンホスホン酸(以下、PANI−PAと表記する)の合成)
(合成例4)
ChemiStation Personal Synthesizer PPS−CTRL1(EYELA社製)用容器(φ24)に回転子を入れ、フレームドライを行った。反応容器内を窒素で置換し、ホスホン化ポリアニリン200mg(0.33mmol(アニリン4量体基準)、合成例2で合成したもの)を加えた。そこへ、アセトニトリル20mL(超脱水)とトリメチルシリルブロマイド2.2mL(16.8mmol)を添加した。混合物を、ChemiStation Personal Synthesizer PPS−CTRL1(EYELA社製)を用いて、90℃に昇温し、撹拌して、反応させた。コニカルビーカーに脱イオン水300mLを注いでおき、反応開始から3時間半後、そこへ反応溶液を脱イオン水で洗い込みながら加えた。その後、アルカリトラップを使用して、吸引濾過により黒色固体を得た。得られた固体を終夜、加熱下(40℃)で真空乾燥した。固体の収量は117.2mgであった。
【0269】
(PMAP/FeCl
3焼成体およびPMAP焼成体を触媒として用いた例)
(実施例4)
[PMAP/FeCl
3焼成体およびPMAP焼成体の合成]
ムライトるつぼ(5mL)に合成例1で得られたPMAP20.0mgおよびFeCl
3/DMF溶液(0.489M,102μL)を加えてよく撹拌して蓋をし、電気炉に入れてアルゴン気流下で焼成を行った。アルゴンガスフロー開始の5分後から2分間で130℃まで昇温し、5分間保持した。その後、2分間で180℃まで昇温し、5分間保持した。その後、100℃/minの速度で昇温を行い、900℃に達してから5分間保持した。その後、加熱を止めて電気炉を冷まし、灰色固体を11.0mg得た。以下、ここで得られた試料をPMAP/FeCl
3/900と略記する。また、FeCl
3/DMF溶液の代わりにDMF(102μL)を用いて同様の操作を行い、黒色固体を7.3mg得た。以下、ここで得られた試料をPMAP/900と略記する。
【0270】
(PANI−PDE/FeCl
3焼成体およびPANI−PDE焼成体を触媒として用いた例)
(実施例5)
[PANI−PDE/FeCl
3焼成体およびPANI−PDE焼成体の合成]
ムライトるつぼ(5mL)に合成例3で得られたPANI−PDE20.0mgおよびFeCl
3/DMF溶液(0.489M,129μL)を用いたこと以外は実施例4と同様の手順にて焼成を行い、灰色固体を11.6mg得た。以下、ここで得られた試料をPANI−PDE/FeCl
3/900と略記する。また、FeCl
3/DMF溶液の代わりにDMF(129μL)を用いて同様の操作を行い、黒色固体を4.1mg得た。以下、ここで得られた試料をPANI−PDE/900と略記する。
【0271】
(PANI−PA/FeCl
3焼成体およびPANI−PA焼成体を触媒として用いた例)
(実施例6)
[PANI−PA/FeCl
3焼成体およびPANI−PA焼成体の合成]
ムライトるつぼ(5mL)に合成例4で得られたPANI−PA20.0mgおよびFeCl
3/DMF溶液(0.489M,157μL)を用いたこと以外は実施例4と同様の手順にて焼成を行い、灰色固体を14.3mg得た。以下、ここで得られた試料をPANI−PA/FeCl
3/900と略記する。また、FeCl
3/DMF溶液の代わりにDMF(157μL)を用いて同様の操作を行い、黒色固体を8.5mg得た。以下、ここで得られた試料をPANI−PA/900と略記する。
【0272】
[実施例4〜6の各焼成体の酸素還元反応活性評価]
上記の方法で合成した実施例4〜6の各焼成体について、酸素還元反応の活性評価を行った。酸素還元反応活性評価は「電気化学測定」に記載した測定方法により行った。その結果をそれぞれ
図5〜7に記す。
【0273】
測定の結果、Pt/Cほどではないが、いずれの試料においても酸素還元活性が認められた。FeCl
3を加えると酸素還元開始電位が正方向にシフトし、酸素還元活性の向上がみられた。なお、比較データとして、実施例1で得られたブランクおよびPt/Cのデータも示した。
【0274】
(実施例7)
[PMAP/FeCl
3焼成体の酸浸漬・再焼成処理した焼成体]
PMAP/FeCl
3/900(20.0mg、実施例4で焼成したもの)を加えたねじ口試験管(マルエム、N−16)に0.5M希硫酸(2.0mL)を加え、80℃で2時間還流した。室温まで放冷した後、パスツールピペットを用いて上澄みを除去した。そこに脱イオン水(約2mL)を加えて1分間超音波照射して静置した。その後、再び上澄みを除去し、洗浄を行った。この洗浄操作を繰り返して合計4回行った後、水気がなくなるまで100℃で乾燥を行い、灰色固体を11.7mg得た。以下、ここで得られた試料をPMAP/FeCl
3/900/酸浸漬と略記する。PMAP/FeCl
3/900/酸浸漬(5.2mg)をムライトるつぼ(5mL)に入れて、ふたをして電気炉に入れた。アルゴンガスフロー開始の5分後から100℃/minの速度で昇温を行い、900℃に達してから5分間保持した。その後、加熱を止めて電気炉を冷まし、灰色固体を2.2mg得た。以下、ここで得られた試料をPMAP/FeCl
3/900/酸浸漬/再焼成と略す。得られた固体をねじ口試験管(マルエム、N−16)に移し、丸底ガラス棒で入念にすり潰した。
【0275】
[PMAP/FeCl
3焼成体の酸浸漬・再焼成処理した焼成体の酸素還元反応活性評価]
上記の方法で合成したPMAP/FeCl
3焼成体の酸浸漬・再焼成処理した焼成体について、酸素還元反応の活性評価を行った。酸素還元反応活性評価を「電気化学測定」に記載した測定方法により行った。その結果を
図8に記す。
【0276】
測定の結果、Pt/Cと同等の酸素還元活性が認められた。酸浸漬後再焼成すると酸素還元開始電位が正方向にシフトし、酸素還元活性が向上することがわかった。なお、比較データとして、実施例1で得られたブランクおよびPt/Cのデータも示した。