(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0010】
(第一の実施形態)
図1、
図2は、本発明が実施される処理装置の一例である基板処理装置に用いられる縦型の処理炉29を示すものである。
【0011】
先ず、
図1により本発明が適用される基板処理装置の動作の概略を説明する。
【0012】
保持具としてのボート32に所定枚数の被処理体としてのウエハ31が移載されると、ボートエレベータ33によりボート32が上昇され、ボート32が処理炉29に挿入される。完全にボート32が装入された状態では、シールキャップ35により処理炉29が気密に閉塞される。気密に閉塞された処理炉29内では、選択された処理レシピに従い、ウエハ31が加熱されると共に処理ガスが処理炉29内に供給され、ガス排気管66から図示しない排気装置によって処理室2の雰囲気が排出されつつ、ウエハ31に処理がなされる。
【0013】
次に、
図1、
図2により処理炉29について説明する。
【0014】
加熱装置(第1加熱手段)であるヒータ42の内側に反応管1が設けられ、反応管1の下端には、例えばステンレス等によりマニホールド44が気密部材であるOリング46を介して連設され、マニホールド44の下端開口部(炉口部)は蓋体であるシールキャップ35により気密部材であるOリング18を介して気密に閉塞され、少なくとも、反応管1、マニホールド44及びシールキャップ35により処理室2を画成している。
【0015】
シールキャップ35にはボート支持台45を介してボート32が立設され、ボート支持台45はボート32を保持する保持体となっている。
【0016】
処理室2へは複数種類、ここでは2種類の処理ガスを供給する供給経路としての2本のガス供給管(第1ガス供給管47、第2ガス供給管48)が設けられている。
【0017】
第1ガス供給管47には上流から順に、液体原料ユニット71、貯留部51、液体の流量制御装置(流量制御手段)である第1マスフローコントローラ(以後、MFCともいう。)49、及び開閉弁であるバルブ52が設けられる。バルブ52の下流側には、キャリアガスを供給する第1キャリアガス供給管53が合流される。第1キャリアガス供給管53には上流から順に、キャリアガス源72、流量制御装置(流量制御手段)である第二MFC54、及び開閉弁であるバルブ55が設けられている。又、第1ガス供給管47の先端部には、反応管1の内壁に沿って下部から上部に亘り、第1ノズル56が設けられ、第1ノズル56の側面にはガスを供給する第1ガス供給孔57が設けられている。第1ガス供給孔57は、下部から上部に亘って等ピッチで設けられ、それぞれ同一の開口面積を有している。ここで、本実施形態の後述する気化器60は、第一MFC49と、後述するように液体原料を貯留する貯留タンク(貯留容器)200とを含む貯留部51と、後述する液体原料を加熱するヒータ215を有する。本実施形態の説明においては、第1ガス供給管47のうち、貯留部51よりも上流であって、液体原料供給ユニット71との間に設けられた配管を供給管47aとする。また、第1ガス供給管47のうち、貯留部51の下流側を供給管47bとする。
【0018】
ここで、第1ガス供給管47、第一MFC49、貯留部51、バルブ52、ノズル56をまとめて第一ガス供給部(第一ガス供給ライン)と呼ぶ。尚、キャリアガス供給管53、第二MFC54、バルブ55を第一ガス供給部に含めても良い。更には、液体原料ユニット71、キャリアガス源72を第一ガス供給部に含めても良い。この第一ガス供給ラインについては後述する。
【0019】
第2ガス供給管48には上流方向から順に、反応ガス源73、流量制御装置(流量制御手段)である第三MFC58、開閉弁であるバルブ59が設けられ、バルブ59の下流側にキャリアガスを供給する第2キャリアガス供給管61が合流されている。第2キャリアガス供給管61には上流から順に、キャリアガス源74、流量制御装置(流量制御手段)である第四MFC62、及び開閉弁であるバルブ63が設けられている。第2ガス供給管48の先端部には、第1ノズル56と平行に第2ノズル64が設けられ、第2ノズル64の側面にはガスを供給する供給孔である第2ガス供給孔65が設けられている。第2ガス供給孔65は、下部から上部に亘って等ピッチで設けられ、それぞれ同一の開口面積を有している。
【0020】
ここで、第2ガス供給管48、第三MFC58、バルブ59、ノズル64をまとめて第二ガス供給部と呼ぶ。尚、キャリアガス供給管61、第四MFC62、バルブ63を第二ガス供給部に含めても良い。更には、反応ガス源73、キャリアガス源74を第二ガス供給部に含めても良い。
【0021】
液体原料ユニット71から供給される液体原料は、第一MFC49、貯留部51、及びバルブ52を介し、第1キャリアガス供給管53と合流し、更に第1ノズル56を介して処理室2内に供給される。なお、処理室2内に供給される際は、気化器60にて気化された状態の液体原料が供給される。反応ガス源73から供給される反応ガスは、第三MFC58、バルブ59を介し、第2キャリアガス供給管61と合流し、更に第2ノズル64を介して処理室2に供給される。
【0022】
処理室2は、ガスを排気するガス排気管66を介して排気装置(排気手段)である真空ポンプ68に接続され、真空排気される様になっている。尚、バルブ67は弁を開閉して処理室2の真空排気及び真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能となっている開閉弁である。
【0023】
シールキャップ35にはボート回転機構69が設けられ、ボート回転機構69は処理の均一性を向上する為にボート32を回転する様になっている。
【0024】
次に、
図3を用いて気化ユニットとしての気化器60を有する第一ガス供給ラインを説明するための図である。尚、
図3では、処理室2のウエハ31は省略している。また、
図1と同じものには同じ番号を付し、説明を省略する場合がある。
【0025】
気化器60は、貯留容器としての貯留タンク200と、エアバルブ205と、エアバルブ207と、貯留タンク200内(後述する貯留室210)の圧力を検出する圧力センサPとを含む貯留部51と、第一MFC49と、エアバルブ207と第一MFC49との間の配管と第一MFC49内部をパージするためのエアバルブAVを有する。貯留タンク200に貯留された液体原料を液体原料216と呼ぶ。ここで、エアバルブ207が閉の時、エアバルブ207とバルブ52との間に気化した液体原料216が残留する。残留した液体原料216は流れが止まり再液化をしてしまう。この再液化を防止するために不活性ガスを流し残留ガスのパージを行う。このパージガスを、加熱器により気化温度以上に加熱させることにより、液化防止効果を高めることができる。
【0026】
エアバルブ205の開閉により液体原料ユニット71から供給管47aを介して貯留部51を連通して原料が供給されるように構成されている。また、エアバルブ207の開閉により供給管47bを介して処理室2と貯留部51を連通して気化された原料が供給されるように構成されている。また、供給管47b内の気化された原料は、エアバルブV1を開、エアバルブV2,V3を閉にすると処理室2へ供給され、エアバルブV1を閉、エアバルブV2,V3を開にするとガス排気管66へ供給される。
【0027】
尚、気化された原料が残渣として供給管47b内に残ると、供給管47bの内壁に付着して堆積するとパーティクルとなってしまう。そこで、気化された原料が残渣として残らないように、真空ポンプ68により気化された原料を供給管47bから排気するようにしている。
【0028】
例えば、プロセスレシピの成膜ステップの終了後、又はプロセスレシピ終了後、バルブ52、バルブ55、エアバルブV1を閉、エアバルブV2,V3を開にして、真空ポンプにより供給管47b内の気化された原料を排気する。また、バルブ55を開にしてキャリアガス源72からキャリアガス(例えば、不活性ガス)を供給しつつ、エアバルブV1を閉、エアバルブV2,V3を開にして、真空ポンプ68により供給管47b内の気化された原料を排気してもよい。
【0029】
ハンドバルブH1、H2、H3は、液体原料ユニット71の交換を容易にするために設けられている。先ず、ハンドバルブH1、エアバルブV2を閉、ハンドバルブH2、H3、エアバルブV3を開にして真空ポンプ68により配管内の原料を除去する。配管内の原料が除去されると、ハンドバルブH2を閉にし、
図3に示す第1ガス供給ラインから切り離して、液体原料ユニット71の交換を行う。
【0030】
(貯留部)
続いて、
図4及び
図6を用いて貯留タンク200を有する気化器60の一部である貯留部51を説明する。
図4は、貯留部51の製法改善を行った貯留タンク200の断面構造である。
図11は、
図4及び
図6の貯留タンク200に設けられる蓋部203を上から視た図である。
【0031】
(第1実施形態)
貯留タンク200は液体または固体の原料を貯留する容器として用いられる。この貯留タンク200は、内部に液体又は固体の原料が貯留される貯留室210を構成する容器部221と、貯留室210で気化された原料を排出する流路224が設けられる蓋部203と、容器部221と蓋部203の間に貯留室210を密閉するように設けられるシール部(第1シール部)としてのシール部材222の外側に容器部221と蓋部203を接合する接合部223と、を有する。
【0032】
また、容器部221は、側部としての側壁201及び底部としての底壁202を有し、蓋部203は、蓋壁203aを少なくとも有する。側壁201、底壁202、蓋壁203aは、それぞれ貯留室210の内壁を構成する。側壁201は、例えば円筒状(筒状)に構成される。そして、蓋壁203a近傍(側壁201の上部)に側壁201bより径が小さくなるよう構成された側壁201aを有する。ここで、
図4において、側壁201aはα−β間の側壁201であり、側壁201bはβ−γ間の側壁201を指す。
【0033】
貯留タンク200は、貯留タンク200に用いるブロック状の材料を削りだし製法で加工し、貯留タンク200の内面に接合部223を有さない構造である。また、容器部221と同様、蓋部203も同様の製法で製作を行い、蓋壁203a(貯留タンク200の内面)に接合面を有さない構造である。
【0034】
具体的には、蓋部203と容器部221を接合する際には、加重を行なうことにより密閉可能なシール部222を用いて密閉性を確保する。密閉の際に用いる加重方法は、複数のボルト等を用いて加重を行なう。接合部223は、固定部材(接合部材)を蓋部203と容器部221を貫通させるよう構成されている。複数のボルトはトルク管理等で均等な締め付けトルクで締めることが必要である。
【0035】
接合部223にボルト等の固定部材を取付ける為に、蓋部203と容器部221の両方に加工が必要であり、且つ、O−リング等のシール部222を蓋部203と容器部221の間に挟み込む必要がある。そこで、
図4に示すように、容器部221の製作の際に側壁201aの径を側壁201bの径よりも小さくすることにより、シール部222を蓋部203と容器部221の間に設け、シール部222の外側に接合部223を設けられるように貯留タンク200が製作される。これにより、接合部223は、液体または固体原料及び気化された原料とシール部222により非接触となるよう構成されている。
【0036】
側壁201、底壁202のうち、液体と接触する面では、液体の表面張力を最小化するために表面積を小さくすることが望ましい。それを実現するために、液体と接触する面に対して、例えば複合電解研磨を実施する。更に、液体の種類や性質に応じて、不働態化、ガラス化、フッ素処理等を行い、液体との反応を防止する。
【0037】
側壁201、底壁202、蓋壁203aで構成された貯留室210には、後述する原料供給管204から液体原料216が供給され、貯留室210は液体原料216を貯留する。また、貯留室210は、液体原料216がそのまま貯留される原料領域210bと、液体原料216が気化される気化領域210aを含む。
【0038】
また、蓋部203とフランジ部214は、同様に加重フランジ構造にすることができる。具体的には、フランジ部214は加重により蓋部203と接合することができ、密閉可能なシール部(第2シール部)としてのシール部212を用い、該シール部212の外側に接合部213を設けることにより、密閉性の確保が可能である。尚、フランジ部214を介し流路構築、センサ類取付け口構築にも加重を行ない、密閉可能なシール部212を用いて密閉性を確保することができる。
【0039】
これにより、接合部213は、液体または固体原料及び気化された原料とシール部212により非接触となるよう構成されている。
【0040】
図4によれば、蓋部203は、貯留室210で気化された原料が処理炉29へ流れる流路224を有し、該流路224は、フランジ部214を介して配管206に連通されている。
【0041】
処理炉29と連通する配管206は貯留室210内で気化されたガス状態の原料が流れるガス流路として構成される。配管206の下流側には供給管47bが接続される。配管206はフランジ部214に設けられる。フランジ部214に設けられる場合、蓋部203に設けられた流路224に配管206を連通させる。また、フランジ部214には第一のバルブであるエアバルブ207が設けられる。エアバルブ207を開閉することで、処理室2との間を連通させたり遮断させたりする。
【0042】
原料供給管204は液体原料を貯留室210に供給するための液体供給流路として構成される。原料供給管204は、一方はフランジ部214に設けられ、他方はフランジ部214を介して蓋部203に設けられる。蓋部203に設けられる場合、蓋部203に設けられた(蓋部203を刳り貫いて制作された)穴に原料供給管204を貫通させる。そして、原料供給管204の一端は供給管47aを介して液体原料ユニット71に接続され、他端は貯留室210に設けられる。原料供給管204にはフランジ部214を介してエアバルブ205が設けられる。エアバルブ205を開閉することで、第一MFC49や液体原料ユニット71との間を連通させたり遮断させたりする。
【0043】
側壁201の外周及び底壁202の外側にはヒータ215が設けられる。ヒータ215は貯留室210を加熱する。特にここでは、貯留室210に貯留された液体原料216を加熱し、気化させる。
【0044】
ここで、貯留部51は、容器部221と、蓋部203を含む貯留タンク200だけでなく、原料供給管204、エアバルブ207、エアバルブ205、接合部213、フランジ部214、接合部223、
図4には図示しない圧力センサPをまとめて貯留部51と呼ぶようにしてもよい。また、貯留部51には、ヒータ215、配管206、フランジ部214のいずれか、もしくはその組み合わせを加えても良い。
【0045】
図11は、蓋部203を上から見た図である。
図11には、
図4では図示されていない圧力センサPが図示されている。圧力センサPは、貯留タンク200内の圧力を検出するように構成されている。また、蓋部203の周囲には、複数の接合部223が均等に設けられている。本実施形態では、接合部223が12箇所設けられているが、この数字には限定されない。また、フランジ部214の四隅にはそれぞれ接合部213が設けられており、エアバルブ205またはエアバルブ207を蓋部203に加重フランジ構造で固定することができる。
【0046】
(第2実施形態)
図6は、原料を気化する気化器60の一部である貯留部51の製法改善を更に行った貯留タンク200の断面構造である。ここでは、第1実施形態と同じ要素は同じ番号を付し、説明を省略し、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0047】
第2の実施形態における貯留タンク200は、内部に液体又は固体の原料が貯留される貯留室210を構成する容器部221と、貯留室210で気化された原料を排出する流路224が設けられる蓋部203と、容器部221と蓋部203の間に貯留室210を密閉するように設けられるシール部222の外側に容器部221と蓋部203を接合する接合部223と、を有する。
【0048】
また、容器部221は、側壁201及び底壁202を有し、蓋部203は、蓋壁203aを少なくとも有する。側壁201、底壁202、蓋壁203aは、それぞれ貯留室210の内壁を構成する。側壁201は、例えば円筒状(筒状)に構成される。側壁201は、径が等しい筒状構造である側壁201aと、底壁202に向かうほど径が小さくなるよう構成された側壁201bを有する。
図6において、側壁201aはα−β間の側壁201であり、側壁201bはβ−γ間の側壁201を指す。
【0049】
第2実施形態では、側壁201aと側壁201bは段差のない連続した構造である。側壁201bは底壁202に向かうほど径が小さくなる構造であり、そこでは液体の表面張力の影響を最小とする曲率となるよう構成される。
【0050】
側壁201aと側壁201bは段差のない連続した構造である。側壁201bは底壁202に向かうほど径が小さくなる構造であり、そこでは液体の表面張力の影響を最小とする曲率となるよう構成される。ここで、第1実施形態と同様に、液体と接触する面では、液体の表面張力を最小化するために表面積を小さくすることが望ましい。更に、液体の種類や性質に応じて、不働態化、ガラス化、フッ素処理等を行い、液体との反応を防止するよう構成してもよい。
【0051】
貯留タンク200は、貯留タンク200に用いる板状材料に金型を用いて絞り出し製法で製造し、第1実施形態と同様に貯留タンク200の内面に接合部223を有さない構造であり、特に、底壁202を擂鉢形状が構成されている。また、底壁202が、擂り鉢形状なので、原料の液体あるいは固体の残量が必ず貯留タンク200内で決められた領域に集まる構造である。また、容器部221の頂部221a、221bは、シール部222の外側で溶接接合加工が施されている(溶接部223a)。
【0052】
また、蓋部203は、第1実施形態と同様に削り出し製法等で製作されており、蓋壁203a(貯留タンク200の内面)に接合面(例えば、溶接部223a)を有さない構造となっている。これにより、接合部223は、液体または固体原料及び気化された原料とシール部222により非接触となるよう構成されている。更に、その溶接部223aの外側に接合部223が設けられている。
【0053】
例えば、ボルト223bとナット223cにより、蓋部203と容器部221の頂部221bが固定されることで、加重が加わりO−リング等であるシール部222により貯留室210を密閉することができる。接合部223は、固定部材(ボルト223b)を蓋部203と容器部221bを貫通させるよう構成されている。複数のボルトはトルク管理等で均等なトルクで締めつけられている。ボルト223bとナット223cは、後述する。
【0054】
尚、蓋部203に設けられている原料供給管204、エアバルブ205、配管206、エアバルブ207、シール部212、フランジ部214に関しては、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。また、
図11に示す上から見た図も同様である。
【0055】
(第3実施形態)
第3実施形態は、第1実施形態又は第2実施形態に示す貯留部51に液面レベル(高さ)を検出するセンサLを設けた形態である。
図7に第3実施形態を第2実施形態における貯留部51の貯留タンク200に適用した一例を示す。尚、実施形態2と同じ構成には同じ番号を付し、説明を省略する。
【0056】
原料を気化する気化器の内部に取付けられている液面レベルを検出するセンサの一般的な構造では、フロートが上下することで液面検知が可能であるが、フロートと軸の接触による擦れ等によって塵埃を発生させる要因となっていた。第3実施形態によれば、フロート等の駆動物を有しないので塵埃を発生させることは無い。
【0057】
(第4実施形態)
第4実施形態は、第1実施形態又は第2実施形態における貯留タンク200に接地を施した形態を示すものである。
図8に第4実施形態を第2実施形態における貯留部51の貯留タンク200に適用した一例を示す。尚、実施形態2と同じ構成には同じ番号を付し、説明を省略する。
【0058】
液体原料216を貯留する貯留タンク200を加熱機構(例えば、ヒータ215)により温めた場合、原料や気化ガスは各々が領有する領域(210a、210b)内での熱伝導が異なることから、各々の領域(210a、210b)内で温度差が生じる。生じた温度差は
図8に示す様な対流を発生させる。対流ができることで、原子同士の衝突が発生し静電気が生じ、生じた静電気は原料中、あるいは、気化ガス(気化された原料ガス)中、容器側壁201a、201bに帯電される。
【0059】
これらの静電気は、塵埃や不純物を吸引し、貯留タンク200内部に堆積させて、一定量の容量が超えた時に、原料ガス中や気化ガスを飛散し汚染させる。そのため、貯留タンク200に帯電した静電気を蓄積させないために接地を施し(接合部223にGND線を接続し)、静電気の帯電を防止する構造とした。
【0060】
具体的には、接合部223はボルト223bとナット223c(どちらも金属製)を含む構成であり、
図8に示すように蓋部203と容器部221(頂部221a、221b)が、ボルト223bとナット223cで締め付けることにより加重がかかり取り付けられている。よって、ボルト223bとナット223cにGND線を接続しているため、静電気を逃すことができる。これにより、液対流により生じた静電気が貯留タンク200に蓄積しないため、(液体若しくは固体の)原料で持ち込まれた汚染物質の、静電気による容器部221内面へ再付着(静電吸着)及び堆積を低減することができる。
【0061】
(制御部)
基板処理装置は、各部の動作を制御するコントローラ41を有している。
【0062】
コントローラ41の概略を
図5に示す。制御部(制御手段)であるコントローラ41は、CPU(Central Processing Unit)41a、RAM(Random Access Memory)41b、記憶装置41c、I/Oポート41dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM41b、記憶装置41c、I/Oポート41dは、内部バス41eを介して、CPU41aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ41には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置411や、外部記憶装置412が接続可能に構成されている。更に、上位装置75にネットワークを介して接続される受信部413が設けられる。受信部413は、上位装置75から他の装置の情報を受信することが可能である。
【0063】
記憶装置41cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置41c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等が読み出し可能に格納されている。なお、プロセスレシピは、後述する基板処理モードで実施される基板処理工程における各手順をコントローラ41に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM41bは、CPU41aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0064】
I/Oポート41dは、昇降部材、ヒータ、マスフローコントローラ、バルブ等に接続されている。
【0065】
コントローラ41は、MFCの流量調整、バルブの開閉動作、ヒータの温度調整、真空ポンプの起動及び停止、ボート回転機構の回転速度調節、ボート昇降機構の昇降動作制御等が行われる。
【0066】
なお、コントローラ41は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていても良い。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ等)412を用意し、係る外部記憶装置412を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ41を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置412を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置412を介さずにプログラムを供給するようにしても良い。なお、記憶装置41cや外部記憶装置412は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置41c単体のみを含む場合、外部記憶装置412単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合が有る。
【0067】
(基板処理工程)
次に、基板を処理する例について説明する。ここでは、半導体デバイスの製造工程の一例として、ソース(原料)とリアクタント(反応ガス)を交互に処理室に供給することで膜処理を行うサイクル処理を説明する。本実施形態においては、ソースとしてのヘキサクロロジシラン(Si
2Cl
6、略称:HCDS)ガスを用い、リアクタントとしてアンモニア(NH
3)ガスを用いて基板上でシリコン窒化膜(Si
3N
4膜、以下、SiN膜ともいう)を形成する例を記す。なお、HCDSは液体原料の一例である。
【0068】
本実施形態における成膜処理では、処理室2のウエハ31に対してHCDSガスを供給する工程(ステップ1)と、処理室2からHCDSガス(残留ガス)を除去する工程(ステップ2)と、処理室2のウエハ31に対してNH
3ガスを供給する工程(ステップ3)と、処理室2からNH
3ガス(残留ガス)を除去する工程(ステップ4)と、を非同時に行うサイクルを所定回数(1回以上)行うことで、ウエハ31上にSiN膜を形成する。
【0069】
先ず、上述した様にウエハ31をボート32に装填し、処理室2に搬入する。このとき、
図2に記載のように、貯留部51は液体原料ユニット71に接続される。ボート32を処理室2に搬入後、後述する4つのステップを順次実行する。
【0070】
(ステップ1)
ステップ1では、ヒータ42とヒータ215を稼働させた状態で、HCDSガスとキャリアガス(N
2ガス)を流す。まずバルブ52、バルブ55、バルブ67を開ける。HCDSガスは供給管47aから原料供給管204を介して貯留部51に供給される。HCDSガスは貯留室210に貯留されると共に、ヒータ215によって気化される。気化されたガス状のHCDSガスは、配管206を介して第一MFC49により流量調整されて供給管47bに供給される。供給管47bでは、第1キャリアガス供給管53から第二MFC54により流量調整されたキャリアガス(N
2ガス)が混合される。この混合ガスを第1ノズル56の第1ガス供給孔57から処理室2内に供給しつつガス排気管66から排気する。第一MFC49で制御するHCDSガスの供給流量は0.1〜0.5g/minである。ウエハ31にHCDSガスを晒す時間は20〜180秒間である。この時のヒータ42の温度はウエハ31が550〜650℃になる様設定してある。又、処理室2内の圧力は30〜120Paである。これによりウエハ31上にSiを含む膜が形成される。
【0071】
(ステップ2)
ステップ2では、第1ガス供給管47のバルブ52及び第1キャリア供給管53のバルブ55を閉めて、HCDSガスガスとキャリアガスの供給を止める。ガス排気管66のバルブ67は開いたままにし、真空ポンプ68により、処理炉29を20Pa以下に排気し、残留HCDSガスガスを処理室2内から排除する。又、この時には不活性ガス、例えばキャリアガスとして使ったN
2ガスを処理炉29に供給すると、更に残留HCDSガスを排除する効果が高まる。
【0072】
(ステップ3)
ステップ3では、NH
3ガスとキャリアガス(N
2ガス)を流す。まず第2ガス供給管48に設けたバルブ59、第2キャリアガス供給管61に設けたバルブ63を共に開けて、第2ガス供給管48から第三MFC58により流量調整されたNH
3ガスと、第2キャリアガス供給管61から第四MFC62により流量調整されたキャリアガス(N
2ガス)とを混合し、第2ノズル64の第2ガス供給孔65から処理室2内に供給しつつガス排気管66から排気する。ウエハ31にNH
3ガスを晒す時間は10〜120秒間である。この時のウエハ31の温度はHCDSガスの供給時と同じく550〜650℃である。又、処理室2内の圧力はHCDSガスの供給時と異なり、900〜980Paである。NH
3ガス
の供給により、ウエハ31の下地膜上のSiを含む膜とNH
3ガスとが反応して、ウエハ31上にSiN膜が形成される。
【0073】
(ステップ4)
ステップ4では、膜を形成後、バルブ59及びバルブ63を閉じ、真空ポンプ68により処理室2内を真空排気し、成膜に寄与した後に残留するNH
3ガスを排除する。又、この時には不活性ガス、例えばキャリアガスとして使ったN
2ガスを処理室2内に供給すると、更に残留するNH
3ガスを処理室2から排除する効果が高まる。
【0074】
又、上述したステップ1〜4を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰返すことにより、ウエハ31上に所定の膜厚のSiN膜を形成することができる。
【0075】
図9は、既存の溶接を用いて製作した貯留容器と本実施形態(第1実施形態乃至第4実施形態)における貯留タンク200各々に不活性ガスを流して、貯留容器を介して排出された不活性ガスを数秒間集塵した結果の比較である。0.026μm以上の塵埃は、作業環境で34個であったため、この値を基準とした。この基準値(34個)からの増加量は、既存の溶接を用いて製作した貯留容器で69個に対し、本実施形態での貯留容器では41個と28個の大幅な削減をすることができた。
【0076】
図10は
図9に示すパーティクルから比較例と本実施形態における貯留タンク200の両方で抽出されたパーティクル(比較例21個、本発明18個)をそれぞれ成分解析した結果を示す。
【0077】
図10に示すように、本実施形態(第1実施形態乃至第4実施形態)における貯留タンク200によれば、パーティクルの成分を解析したところ、比較例では、鉄とニッケル(Fe+Ni)が主に析出されたパーティクルが4個、アルミニウム(Al)が主に析出されたパーティクルが8個、他の金属が析出されたパーティクル6個、炭素(C)とシリコン(Si)及び酸素(O)がそれぞれ1個だった。一方、本実施形態では、全てのパーティクルが主に炭素(C)が析出されたものの金属成分が検出されることはなかった。よって、溶接を用いないことで金属汚染を大幅に低減できる。尚、本実施形態で確認された、炭素(C)を主とするパーティクルは、集塵環境で確認したパーティクルの成分と同様のものであった。
【0078】
本実施形態(第1実施形態乃至第4実施形態)における貯留容器によれば、以下の効果のうち一つ又は複数の効果を奏する。
【0079】
(1)内部に液体又は固体の原料が貯留される貯留室を構成する容器部と、貯留室内で気化された原料を排出する配管が設けられる蓋部(蓋壁)と、容器部と蓋部の間に貯留室を密閉(隔離)するように設けられるシール部材の外側に接合部を有するように構成されているので、接合部がシール部材により、液体または固体原料及び気化された原料と非接触となる。よって、接合部(溶接)から貯留容器内にゴミの混入することを防ぐことができるのでパーティクルが低減される。
【0080】
(2)蓋部が配管やエアバルブがフランジ部を介して設けられる構成となっている。これにより、蓋部を刳り貫いて設けられる流路を密閉(隔離)するように設けられるシール部材の外側に蓋部とフランジ部の接合部を有するように構成されているので、接合部がシール部材により、液体または固体原料及び気化された原料と非接触となる。よって、接合部(溶接)から気化されたガスが流れる配管内(流路)にゴミの混入することを防ぐことができるのでパーティクルが低減される。
【0081】
(3)蓋部203をボルトで締め付けて密閉可能なシール部222を用いた構造としたことにより、全ての接合面を溶接で密閉化していたタンク構造と異なり、ボルト223bを外すことで個々の部位を容易に解体できる為、例えば、貯留タンク200単体を個別に隅々まで洗浄でき高清浄化が可能である。
【0082】
(4)従来、不具合が生じた際、不具合部品交換により大気や塵埃がタンク内に流入することで、タンク内部の清浄度が低下し、再利用ができない事態となっていたが、本構造により個々の部位(例えばタンク)の交換後、洗浄とシール部222を新規品に代えることで、清浄度が保たれることとなり、再利用が可能となった。
【0083】
(5)フランジ部214を用いての密閉化は、フランジ部214を複数のボルト等で均等な加重を加え、シール部212を用いた構造で密閉化している。これにより、個々の部品(エアバルブや液面レベルセンサ等)に不具合が生じた場合、全ての接合面を溶接で密閉化していたタンク構造は不具合部品交換により大気や塵埃がタンク内に流入することで、タンク内部の清浄度が低下し、再利用ができない事態となっていたが、本実施形態における貯留部51の構造とすることで、該当部品、及び、密閉可能なシール部212の交換と開放部の洗浄(例えば貯留タンク200)で容易に復旧が可能となった。
【0084】
(本発明の他の実施形態)
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0085】
例えば、上述の各実施形態では、基板処理装置が行う成膜処理として、ソース(液体原料)としてHCDSガスを用い、リアクタント(反応ガス)としてNH
3ガスを用いて、それらを交互に供給することによってウエハW上にSiN膜を形成する場合を例にあげたが、本発明がこれに限定されることはない。すなわち、ソースとしては液体原料を用いていれば良く、リアクタントとしてはソースと反応して膜処理を行うガスを用いて他の種類の薄膜を形成しても構わない。さらには、3種類以上の処理ガスを用いる場合であっても、これらを交互に供給して成膜処理を行うのであれば、本発明を適用することが可能である。
【0086】
また、例えば、上述した各実施形態では、基板処理装置が行う処理として半導体装置における成膜処理を例にあげたが、本発明がこれに限定されることはない。すなわち、成膜処理の他、酸化膜、窒化膜を形成する処理、金属を含む膜を形成する処理であってもよい。また、基板処理の具体的内容は不問であり、成膜処理だけでなく、アニール処理、酸化処理、窒化処理、拡散処理、リソグラフィ処理等の他の基板処理にも好適に適用できる。さらに、本発明は、他の基板処理装置、例えばアニール処理装置、酸化処理装置、窒化処理装置、露光装置、塗布装置、乾燥装置、加熱装置、プラズマを利用した処理装置等の他の基板処理装置にも好適に適用できる。また、本発明は、これらの装置が混在していてもよい。
【0087】
また、例えば、上述した各実施形態は、半導体製造プロセスについて説明したが、それに限るものではなく、化学工業分野における液体の高清浄度を必要とする液体を貯留する液体原料タンクや中間貯蔵タンク、気化器に内蔵する液体タンク等に用いても良い。ここでいう化学工業分野における液体とは、例えば純水、過酸化水素水、アンモニア水、アルコール類、有機酸類である。
【0088】
また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。