【文献】
本田道隆,エッジ傾斜の有理化近似を用いたプリサンプルドMTF の計測手法,日本放射線技術学会雑誌,2014年,Vol.70 No.4,P346-358
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ROI設定手段は、複数の点を指定されることで、当該複数の点で特定される形状を前記領域として設定し、前記点の移動を指定されることで、前記領域の形状を変化させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のMTF測定装置。
前記エッジ傾き検出手段は、前記エッジ抽出画像において、前記エッジの傾き角度をハフ変換により算出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のMTF測定装置。
前記関数近似手段は、前記エッジ抽出手段で生成されるエッジ抽出画像を、前記エッジ傾き検出手段で検出されたエッジの傾きをなくす方向に回転させ、回転後のエッジ抽出画像におけるエッジを関数で近似することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のMTF測定装置。
【背景技術】
【0002】
高解像度テレビジョンの最大の特徴は、高い空間解像度であり、カメラの解像度特性が重要となる。現行のハイビジョンカメラの解像度測定として、複数の空間周波数を有する矩形波が空間的に配置されたテストチャートを用いる手法が知られている。このテストチャートには、一般に、一般社団法人映像情報メディア学会(ITE:The Institute of Image Information and Television Engineers)が提供しているテストチャート(ITE高精細度インメガサイクルチャート:
図9参照)が用いられる。
図9に示すように、インメガサイクルチャートは、映像周波数1MHzから36MHzまでに相当する白黒の縦縞を並べ、チャート中央と4つのコーナー部分に800TVL/ph(27.7MHz)の縦縞を並べた矩形波のパターンを有している。
【0003】
インメガサイクルチャートを用いる手法では、波形モニタから矩形波の変調度の空間周波数特性を表すCTF(Contrast Transfer Function)を読み取ることが一般的である。
このインメガサイクルチャートを用いる手法は、波形モニタから目視でCTFを読み取ることができる手軽さはあるが、サンプリングの位相の影響で振幅が変動する曖昧さがある。また、一般的に、測定対象であるレンズの中央と周辺とでは解像度特性が異なるため、800TVL/phに相当するチャート中央の矩形波応答しか測定していないのが現状である。
【0004】
さらに、インメガサイクルチャートを用いる手法は、所望の空間周波数特性を得るためには撮像画角を正確にチャートサイズにフレーミングする必要がある。しかし、例えば、4K/8Kカメラでは広角レンズを使用することが多いため、サイズの大きいインメガサイクルチャートが必要となり、非現実的である。
【0005】
そこで、インメガサイクルチャートの代わりに、エッジ画像を含んだチャートを用いて空間周波数特性(MTF)を測定するSlanted-edge法(傾斜エッジ法)が提案されている(特許文献1〜3、非特許文献1参照)。Slanted-edge法は、チャートサイズが比較的小さく、フレーミングが不要な手法で、チャート上のわずかに傾いたエッジ画像を撮像して、そのエッジの広がりからMTFを算出する手法である。
【0006】
このSlanted-edge法は、まず、チャートを撮像したチャート画像からエッジを含む長方形の関心領域(ROI〔Region Of Interest〕;
図10参照)を選定する。そして、Slanted-edge法は、ISO12233に準拠したアルゴリズム(非特許文献1参照)等によって、ROIからエッジを検出する。
【0007】
そして、Slanted-edge法は、ROIの各画素を、エッジの傾きに沿って、サブピクセルで等間隔に区分した投影軸(x軸)に投影する。そして、Slanted-edge法は、それぞれの区分に投影された複数の画素の画素値の平均値を求め、オーバーサンプリング(ISO12233の場合、4倍オーバーサンプリング)されたエッジ広がり関数(エッジプロファイル)を求める。さらに、Slanted-edge法は、エッジ広がり関数を微分して線広がり関数を算出し、線広がり関数をフーリエ変換して絶対値を求めることでMTFを求める。
【0008】
通常、Slanted-edge法は、
図11(a)に示すように、チャートCHを撮像したチャート画像から、縦に長い長方形で長辺方向にわずかに傾いたエッジを中心あたりに含むように領域(ROI)を設定し、ROIの各画素を投影軸(x軸)に投影する。また、Slanted-edge法は、
図11(b)に示すように、横に長い長方形で長辺方向にわずかに傾いたエッジを中心あたりに含むように領域(ROI)を設定した場合、ROIを90度回転させて、
図11(a)と同様の投影軸(x軸)に画素を投影する。
【0009】
また、特許文献2に開示されているSlanted-edge法では、
図12に示すように、エッジの傾きが多方向(
図12では、12方向)に存在するチャート(矢車チャート)CHでMTFを測定する場合、各ROI(R
1〜R
12)の回転角が既知であるため、その角度だけROIを回転させることで、同一の投影軸(x軸)に画素を投影する。
このように、従来は、長方形のROIの短い辺を投影軸(x軸)と平行になるように回転し、MTFを測定していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のように、長方形のROIを設定し、MTFを測定する手法では、ROI近傍に別のパターンが存在する場合、ROIの位置が制限される場合がある。
例えば、
図13に示すように、多方向のエッジを含むチャート(矢車チャート)CHでレンズ周辺のMTFを測定する場合、
図13(a)のように、正しくROIを設定することができる。しかし、チャート中心部のMTFを測定する場合、
図13(b)に示すように、ROI内に他のエッジが含まれてしまい、正しくMTFを測定することができないという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、Slanted-edge法において、エッジを含む領域を任意の形状で設定してMTFを測定することが可能なMTF測定装置およびそのプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、本発明に係るMTF測定装置は、境界でコントラストの異なるチャートを用いて、撮像系の空間周波数特性を表すMTFを測定するMTF測定装置であって、ROI設定手段と、領域抽出手段と、エッジ抽出手段と、エッジ傾き検出手段と、画像回転手段と、関数近似手段と、投影情報生成手段と、投影画素値平均化手段と、周波数特性演算手段と、を備える構成とした。
【0015】
かかる構成において、MTF測定装置は、ROI設定手段によって、撮像系が撮像したチャート画像において、境界を含んだ領域を設定する。このとき、ROI設定手段は、領域を、矩形に限定せずに任意形状の多角形、円または楕円として設定する。
そして、MTF測定装置は、領域抽出手段によって、チャート画像から、ROI設定手段で設定された領域の画像をROI画像として抽出する。
そして、MTF測定装置は、エッジ抽出手段によって、ROI画像における画素分布から、例えば、ソーベル(sobel)法等によりROI画像のエッジを抽出してエッジ抽出画像を生成する。
【0016】
また、MTF測定装置は、エッジ傾き検出手段によって、エッジ抽出画像から、ハフ変換等により、直交座標の予め定めた一方の座標軸に対するエッジの傾き角度を検出する。
そして、MTF測定装置は、画像回転手段によって、一方の座標軸に対して、エッジの傾きをなくす方向にROI画像を傾き角度だけ回転する。これにより、ROIの形状に関わらず、回転したROI画像のエッジの向きは、直交座標の他方の座標軸と直交する方向になる。
また、MTF測定装置は、関数近似手段によって、回転後のエッジを2次関数等の関数で近似する。
そして、MTF測定装置は、投影情報生成手段によって、近似した関数上で、回転後のROI画像の画素位置と、当該画素位置に対応する直交座標の他方の座標軸におけるサブピクセル単位の位置とを対応付けた投影情報を生成する。
そして、MTF測定装置は、投影画素値平均化手段によって、投影情報を用いて、回転後のROI画像における各画素の画素値を直交座標の他方の座標軸に投影し、サブピクセル単位で平均化することで、エッジの特性を示すエッジプロファイルを生成する。
【0017】
さらに、MTF測定装置は、周波数特性演算手段によって、エッジプロファイルを微分することで線広がり関数を求め、その線広がり関数をフーリエ変換することでMTFを算出する。
【0018】
なお、MTF測定装置は、コンピュータを、前記したROI設定手段、領域抽出手段、エッジ抽出手段、エッジ傾き検出手段、画像回転手段、エッジプロファイル生成手段、周波数特性演算手段として機能させるためのMTF測定プログラムで動作させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
本発明によれば、任意の形状でROIを設定することができるため、チャート上で、他のエッジと重複しないように任意の場所でROIを設定することができる。これによって、本発明は、1つのチャートから、効率よくMTFを測定することができる。
また、従来は、水平方向、垂直方向または斜め45度から数度傾いたエッジでのみしかMTFを測定することができなかった。しかし、本発明によれば、水平方向、垂直方向または斜め45度以外であれば、何度傾いたエッジであってもMTFを測定することができる。そのため、本発明は、従来のように、チャート上のわずかに傾いたエッジ画像を厳密に撮像する必要はない。これによって、本発明は、MTF測定の利便性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[MTF測定装置の構成]
最初に、
図1を参照して、本発明の実施形態に係るMTF測定装置1の構成について説明する。
【0022】
MTF測定装置1は、撮像系2の空間周波数特性を表すMTFを測定するものである。MTF測定装置1による測定を行う場合は、撮像系2と表示装置3とを接続して使用する。
【0023】
撮像系2は、MTFの被測定対象となるビデオカメラまたはスチールカメラ、MTFの被測定対象となるレンズを含んだカメラ等である。なお、撮像系2は、MTF特性に影響を与える映像処理装置(例えば、ダウンコンバータ、アップコンバータ〔超解像〕)であってもよい。また、被測定対象は、カメラのDETAIL(ディテール)コントロールによってMTFが変化する映像であってもよい。
この撮像系2は、チャートCHを撮像した画像を、MTF測定装置1に出力する。
【0024】
チャート(MTF測定用チャート)CHは、境界でコントラストの異なるチャートである。なお、ここでは、チャートCHとして矢車チャートを例として説明するが、境界でコントラストの異なるエッジを含むものであれば、どのようなものであっても構わない。
【0025】
表示装置3は、MTF測定装置1を操作するユーザインタフェースを提供するとともに、撮像系2が撮像したチャート画像、測定結果となるグラフ等を表示するものである。例えば、表示装置3は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等である。
なお、表示装置3は、撮像系2が撮像したチャート画像を表示する表示装置と、測定結果となるグラフ等を表示する表示装置とをそれぞれ別に設けてもよい。
【0026】
以下、撮像系2で撮像された画像によって、撮像系2のMTFを測定するMTF測定装置1の構成について詳細に説明する。
図1に示すように、MTF測定装置1は、チャート画像記憶手段10と、ROI設定手段11と、ROI画像抽出手段12と、エッジプロファイル生成手段13と、周波数特性演算手段14と、測定結果表示手段15と、を備える。
【0027】
チャート画像記憶手段10は、撮像系2でMTF測定用のチャートCHを撮像した画像(チャート画像)を記憶するものである。このチャート画像記憶手段10は、図示を省略した映像入力手段を介して、チャート画像が撮像系2から入力され、入力したチャート画像を記憶する。このチャート画像記憶手段10は、新たなチャート画像が撮像系2から入力された場合、すでに記憶しているチャート画像を新たなチャート画像で上書きする。このチャート画像記憶手段10は、例えば、ハードディスク、メモリ等の一般的な記憶装置である。
なお、チャート画像記憶手段10が記憶するチャート画像は、図示を省略した映像出力手段を介して表示装置3に出力されるとともに、ROI画像抽出手段12によって読み出される。
【0028】
ROI設定手段11は、撮像系2で撮像したチャート画像内で、境界(エッジ)を含む関心領域(ROI)を設定するものである。
このROI設定手段11は、表示装置3が表示しているチャート画像内において、測定者によって、任意形状の閉領域を指定されることで、当該閉領域をROIとして設定する。
【0029】
例えば、ROI設定手段11は、
図2(a)に示すように、チャート画像内で任意の4点を指定されることで、指定された4点を頂点とする四角形(台形、ひし形等)をROIとして設定する。
また、ROI設定手段11は、
図2(b)に示すように、チャート画像内で任意の3点を指定されることで、指定された3点を頂点とする三角形をROIとして設定することとしてもよい。
また、ROI設定手段11は、
図2(c)に示すように、チャート画像内で任意の2点を楕円の長軸の頂点として指定されることで、指定された楕円をROIとして設定することとしてもよい。
なお、ROI設定手段11は、領域内に1つのエッジのみを含むように設定する形状であれば、
図2で例示した形状に限定されず、任意の多角形、円であっても構わない。
【0030】
また、ROI設定手段11は、指定された位置に予め定めた形状(例えば、四角形)の枠を表示し、マウス等の指示手段(不図示)によって、頂点の位置を変化させることで、領域の形状を変形することとしてもよい。また、ROI設定手段11は、指示手段によって、頂点の増減を行うこととしてもよい。
【0031】
これによって、ROI設定手段11は、チャートCHに複数のエッジが含まれている場合であっても、1つのエッジだけを含んだ領域としてROIを設定することができる。また、ROI設定手段11は、予め定めた形状の領域内に複数のエッジが含まれる場合でも、形状を変えることで、1つのエッジだけを含んだ領域としてROIを設定することができる。
このROI設定手段11は、ROIの領域を特定するROI情報(例えば、
図2(a)の例では、4点の座標)を、ROI画像抽出手段12に出力する。
【0032】
ROI画像抽出手段12は、チャート画像記憶手段10が記憶するチャート画像から、ROI画像を抽出し、エッジの向きが投影軸に対して垂直方向となるように回転させるものである。ここでは、ROI画像抽出手段12は、領域抽出手段12aと、エッジ抽出手段12bと、エッジ傾き検出手段12cと、画像回転手段12dと、を備える。
【0033】
領域抽出手段12aは、チャート画像記憶手段10が記憶するチャート画像から、ROI設定手段11で設定されたROI情報で示される領域の画像(ROI画像)を抽出するものである。すなわち、領域抽出手段12aは、ROI情報で示される領域内部の座標位置と画素値とを対とするROI画像をチャート画像から抽出する。この領域抽出手段12aは、抽出したROI画像を、エッジ抽出手段12bに出力する。
【0034】
エッジ抽出手段12bは、領域抽出手段12aで抽出されたROI画像から、エッジを検出し、抽出するものである。このエッジ抽出手段12bにおけるエッジの抽出手法は、既知の手法を用いることができる。例えば、エッジ抽出手段12bは、ソーベルフィルタ、ラプラシアンフィルタ、キャニーフィルタ等、画像内の輝度値の変化を強調する先鋭化フィルタをROI画像に適用し、2値化することでエッジを抽出したエッジ抽出画像を生成する。
【0035】
なお、ROI画像が任意の形状で、ROI境界がエッジとして抽出される場合、エッジ抽出手段12bは、ROI境界のエッジをマスク処理によって削除することとする。例えば、エッジ抽出手段12bは、ROIの形状を特定するROI情報に基づいて、ROIの輪郭線を太線化した領域に含まれるエッジを除外する。
このエッジ抽出手段12bは、エッジを抽出したエッジ抽出画像をエッジ傾き検出手段12cに出力する。
【0036】
エッジ傾き検出手段12cは、エッジ抽出手段12bでエッジを抽出したエッジ抽出画像から、エッジを直線とみなして、直交座標の予め定めた一方の座標軸(ここでは、y軸とする)に対する傾き角度を検出するものである。このエッジ傾き検出手段12cにおけるエッジの傾き検出は、既知の手法を用いることができる。例えば、エッジ傾き検出手段12cは、ハフ(Hough)変換によるエッジの傾き検出を行う。
【0037】
ここで、
図3を参照して、エッジ傾き検出手段12cが行うハフ変換を用いたエッジの傾き検出について説明する。
図3(a)に示すように、エッジ抽出画像Eの画像座標を直交座標(x,y)としたとき、原点からエッジ(直線)eまでの法線の長さr、角度θは、以下の式(1)で表すことができる。
【0039】
ここで、θは、直交座標(x,y)の垂直軸(y軸)を0度とし、座標原点Oの反時計回りを正とする。
このとき、エッジeの各座標点を通る直線は無数に存在する。しかし、エッジeの各座標点の座標(x,y)を前記式(1)に代入し、rおよびθを、
図3(b)に示すように、極座標(r,θ)にプロットしたとき、エッジeの垂直軸に対する傾き角度θ
1の位置にプロット点が集中する。
【0040】
エッジ傾き検出手段12cは、角度θを−90度から90度までの範囲で、前記式(1)により、エッジ抽出画像Eにおけるエッジeの各座標点のxy座標値から長さrを計算する。なお、rおよびθは、ROI画像の解像度に応じた適当なサンプリング間隔とすればよいが、例えば、rは1画素間隔、θは0.1度を最小単位とする。
そして、エッジ傾き検出手段12cは、
図3(c)に示すように、エッジeから、rおよびθの値を行列の要素とするハフ変換行列Aを生成する。
そして、エッジ傾き検出手段12cは、ハフ変換行列Aにおいて、角度θのピーク値を探索し、エッジeの傾き角度とする。
【0041】
なお、エッジ傾き検出手段12cは、エッジの傾き角度を0.1度単位等の所定間隔で算出するため、厳密な傾き角度を求めてはいない。しかし、後記するエッジプロファイル生成手段13において、Slanted-edge法における投影軸への画素の投影を、エッジに沿って行うため、問題にはならない。
【0042】
図1に戻って、MTF測定装置1の構成について説明を続ける。
エッジ傾き検出手段12cは、検出したエッジの傾き角度を画像回転手段12dに出力する。
【0043】
画像回転手段12dは、エッジ傾き検出手段12cで検出されたエッジの傾き角度に基づいて、ROI画像のエッジの向きが投影軸に垂直方向となるようにROI画像を回転させるものである。
この画像回転手段12dは、エッジ傾き検出手段12cでエッジが垂直軸(y軸)に対して角度θ傾いていると検出された場合、−θ分だけROI画像を回転させる。
これによって、ROI画像抽出手段12は、ROIの形状によらず、エッジの向きが投影軸に対して垂直方向になるようにROI画像を変換することができる。
この画像回転手段12dは、回転したROI画像を、エッジプロファイル生成手段13に出力する。
【0044】
なお、ROI画像抽出手段12は、角度θ傾いているROI画像を−θ分だけ傾けるため、エッジを投影軸に対してほぼ垂直にすることができる。この場合、
図4(a)に示すように、例えば、エッジeの傾きθeが−30度であっても、
図4(b)に示すように、30度回転させたROI画像の各画素の中心は、x軸のサブピクセルに対して、それぞれずれている。そのため、エッジの画素値が複数のサブピクセルに分散されることになり、Slanted-edge法を適用することが可能になる。
【0045】
一方、角度θが0度、±45度、±90度の場合、すなわち、エッジが、垂直方向、斜め45度方向、垂直方向の場合、ROI画像の回転に伴って、エッジの画素値が、同じサブピクセルに投影されることになるため、Slanted-edge法には適さない。しかし、チャートCHまたは撮像系2を傾けることで、これらの角度を避けることは容易である。もし、角度θが0度、±45度、±90度の場合、MTF測定装置1は、エラーメッセージ等を表示し、測定者がチャートCHの角度を変える等の処理を行えばよい。
【0046】
エッジプロファイル生成手段13は、ROI画像抽出手段12で抽出および回転されたROI画像のエッジの画素分布形状を示すエッジプロファイルを生成するものである。ここでは、エッジプロファイル生成手段13は、関数近似手段13aと、投影情報生成手段13bと、投影画素値平均化手段13cと、を備える。
【0047】
関数近似手段13aは、ROI画像抽出手段12で生成されたROI画像の画素値分布から、ROI画像内のエッジを、2次関数、指数関数等の予め定めた非線形関数で近似するものである。すなわち、エッジ関数近似手段131は、ROI画像を水平方向および垂直方向の軸を2軸とする座標(xy座標)に配置した際のエッジを関数で近似する。このエッジを関数で近似する手法は、既知の手法(特許文献3参照)を用いればよい。
この関数近似手段13aは、関数を特定するパラメータ(係数)を投影情報生成手段13bに出力する。
【0048】
投影情報生成手段13bは、関数近似手段13aで求められた関数で特定されるエッジの傾き(曲線)に沿ってROI画像の各画素の画素位置を、投影軸(直交座標の他方の座標軸;ここでは、x軸とする)の座標に対応付けた投影情報を生成するものである。
なお、投影軸の座標系は、ROI画像の画素単位の座標系よりも小さいサブピクセル単位とし、例えば、1画素の1/4や1/8とする。
この投影情報生成手段13bは、ROI画像の投影情報を、投影画素値平均化手段13cに出力する。
【0049】
ここで、
図5を参照して、投影情報生成手段13bが、近似した関数を用いて、ROI画像の画素を、投影軸(x軸)に対応付ける手法について説明する。
図5では、説明を分かり易くするため、ROI画像R上に非線形関数で特定されるエッジeを重ねて図示している。また、ROI画像Rの各画素の白点または黒点は、ROI画像Rのxy座標における画素位置を示している。
【0050】
図5に示すように、投影情報生成手段13bは、ROI画像R上の画素位置を、エッジeの傾きに沿って、x座標のサブピクセル単位の座標(x
sub座標)と対応付ける。
例えば、投影情報生成手段13bは、エッジe上の画素g
1の座標を、エッジeの関数において、y=0に対応するx
sub座標のx
1と対応付ける。また、投影情報生成手段13bは、エッジe上に存在しない画素g
2を、エッジeを水平方向にスライドさせた画素g
2を通る関数(図中、点線)において、y=0に対応するx
sub座標のx
2と対応付ける。
【0051】
図1に戻って、MTF測定装置1の構成について説明を続ける。
投影画素値平均化手段13cは、投影情報生成手段13bで生成された投影情報に基づいて、ROI画像抽出手段12で回転されたROI画像の各画素の画素値を、投影軸のサブピクセルごとに投影し平均化するものである。すなわち、投影画素値平均化手段13cは、エッジを近似した関数に沿って、ROI画像の画素値を投影軸(x軸)のサブピクセル単位で平均化することで、
図6に示すように、エッジの画素分布形状を示すエッジプロファイルを生成する。
この投影画素値平均化手段13cは、生成したエッジプロファイルを、周波数特性演算手段14に出力する。
【0052】
周波数特性演算手段14は、エッジプロファイル生成手段13で生成されたエッジプロファイルからMTFを算出するものである。
この周波数特性演算手段14は、エッジプロファイル生成手段13で生成されたエッジプロファイルを微分することで、線広がり関数(LSF:Line Spread Function)を求め、そのLSFをフーリエ変換する。これによって、周波数特性演算手段14は、MTFを求めることができる。
この周波数特性演算手段14は、算出したMTFを測定結果表示手段15に出力する。
【0053】
測定結果表示手段15は、周波数特性演算手段14で算出されたMTFの測定結果を表示するものである。この測定結果表示手段15は、周波数特性演算手段14で算出されたMTFをグラフ化する。
例えば、測定結果表示手段15は、
図7に示すように、横軸を周波数(cycles/pixel)、縦軸をMTFとするグラフに対応するデータをプロットする。
この測定結果表示手段15は、このグラフを表示装置3に出力して表示する。これによって、測定者は、被測定対象である撮像系2のMTFを認識することができる。
【0054】
以上説明したようにMTF測定装置1を構成することで、MTF測定装置1は、任意の形状のROIからエッジの傾きを検出し、MTFを測定することができる。
これによって、MTF測定装置1は、チャートCH上の任意の位置に存在するエッジ部分をROIとして設定することができ、1つのチャートCHから効率よくMTFを測定することができる。
【0055】
また、MTF測定装置1は、ROIからエッジの傾きを検出し、Slanted-edge法を適用可能なエッジの傾きに変換するため、従来のように、水平方向、垂直方向または斜め45度の特定の角度から数度傾いたエッジ画像を厳密に撮像する必要はない。そのため、MTF測定装置1は、水平方向、垂直方向または斜め45度以外であれば、何度傾いたエッジであってもMTFを測定することができ、MTF測定の利便性を高めることができる。
なお、MTF測定装置1は、図示を省略したコンピュータを、前記した各手段として機能させるためのMTF測定プログラムで動作させることができる。
【0056】
[MTF測定装置の動作]
次に、
図8を参照(構成については適宜
図1参照)して、本発明の実施形態に係るMTF測定装置1の動作について説明する。
【0057】
まず、ステップS1において、MTF測定装置1は、撮像系2で撮像されるチャート画像を入力し、チャート画像記憶手段10に記憶するとともに、表示装置3に表示する。
そして、ステップS2において、MTF測定装置1は、ROI設定手段11によって、境界(エッジ)を含むROIを設定する。例えば、ROI設定手段11は、表示装置3が表示しているチャート画像内において、測定者が操作するポインティングデバイス(不図示)で、任意の形状の領域を指定されることで、当該ROIの形状を特定するROI情報を設定する。
その後、ステップS3において、MTF測定装置1は、領域抽出手段12aによって、チャート画像記憶手段10が記憶するチャート画像から、ステップS2で設定されたROI情報で特定される領域の画像を、ROI画像として抽出する。
【0058】
そして、ステップS4において、MTF測定装置1は、エッジ抽出手段12bによって、ステップS3で抽出されたROI画像からエッジを抽出する。
さらに、ステップS5において、MTF測定装置1は、エッジ傾き検出手段12cによって、ステップS4で抽出されたエッジから、ハフ変換を用いてエッジの傾き角度を検出する。
【0059】
その後、ステップS6において、MTF測定装置1は、画像回転手段12dによって、ステップS3で抽出したROI画像を、ステップS5で検出した傾き角度を0度にする方向に回転させる。
そして、ステップS7において、MTF測定装置1は、関数近似手段13aによって、ステップS6で回転されたROI画像のエッジを、2次関数等の非線形関数で近似する。
【0060】
そして、ステップS8において、投影情報生成手段13bによって、ステップS7で近似した関数で特定されるエッジの傾き(曲線)に沿ってROI画像の各画素の画素位置を、投影軸(x軸)の座標に対応付けた投影情報を生成する。
さらに、ステップS9において、MTF測定装置1は、投影画素値平均化手段13cによって、ステップS8で生成された投影情報に基づいて、ROI画像の各画素の画素値を、投影軸のサブピクセルごとに投影し平均化することで、エッジプロファイルを生成する。
【0061】
その後、ステップS10において、MTF測定装置1は、周波数特性演算手段14によって、ステップS9で生成されたエッジプロファイルを微分することで、線広がり関数(LSF)を求め、そのLSFをフーリエ変換することでMTFを算出する。
【0062】
そして、ステップS11において、MTF測定装置1は、測定結果表示手段15によって、ステップS10で算出されたMTFの測定結果を表示する。例えば、測定結果表示手段15は、
図7に示すように、横軸を周波数(cycles/pixel)、縦軸をMTFとするグラフに対応するデータをプロットして、表示装置3に表示する。
【0063】
以上の動作によって、MTF測定装置1は、測定者によって設定されるチャート上の任意の位置、任意の形状のROIでMTFを測定することができる。
これによって、MTF測定装置1は、1つのチャートから効率よくMTFを測定することができる。また、MTF測定装置1は、ROI内のエッジの傾きを検出し、ROI画像を回転させるため、水平方向、垂直方向または斜め45度以外であれば、何度傾いたエッジであってもMTFを測定することができ、MTF測定の利便性を高めることができる。
【0064】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、この実施形態に限定されものではない。
【0065】
(変形例1)
ここでは、MTF測定装置1は、エッジ抽出手段12bおよびエッジ傾き検出手段12cによって、ROI画像におけるエッジの傾き角度を検出した。
しかし、このエッジの傾き角度は、水平方向、垂直方向または斜め45度を除く任意の角度でよいため、測定者が手動で傾きを設定することとしてもよい。
【0066】
その場合、MTF測定装置1は、エッジ抽出手段12bおよびエッジ傾き検出手段12cの代わりに、測定者からエッジの傾きの指定を受け付けるエッジ傾き指定手段(不図示)を備えることとすればよい。ここで、エッジ傾き指定手段は、例えば、測定者によって、ROI画像のエッジ上の2点を指定されることで、2点で特定される直線の傾きをエッジの傾きとする。また、例えば、エッジ傾き指定手段は、ROI画像上に線分を描画し、測定者のマウス等の操作によって、線分の両端位置を移動させてエッジに合わせることで、線分の傾きからエッジの傾きを求めてもよい。
【0067】
(変形例2)
また、ここでは、MTF測定装置1は、関数近似手段13aによって、ROI画像から、ROI画像上のエッジを2次関数等の関数で近似した。
しかし、関数近似手段13aは、エッジ抽出手段12bで生成されるエッジ抽出画像から、エッジを関数近似することとしてもよい。
【0068】
その場合、関数近似手段13aは、エッジ抽出手段12bで生成されるエッジ抽出画像を、エッジ傾き検出手段12cで検出された傾きをなくす方向(傾き角度を0度にする方向)に回転させ、回転後のエッジ抽出画像におけるエッジの画素位置のデータ列から、関数近似を行えばよい。