(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付した図面を参照して本発明の様々な実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は様々な異なる形態に実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0014】
また、明細書全体で、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含むことができるのを意味する。
【0015】
リチウム二次電池に使用する正極活物質の種類としてはいくつかの種類が存在するが、その中で、リチウムコバルト酸化物、すなわち、LiCoO
2を利用した正極活物質が現在最も幅広く使用されている。しかし、リチウムコバルト酸化物を利用した正極活物質は、コバルト(cobalt)の資源の偏在性と希少性によって製造費用の増加をもたらし、安定した供給が難しいという問題が常に提起されている。
【0016】
これを解決するために、コバルトの代わりをする物質を適用しようとする多様な研究が進められており、その例として、価格が高いコバルトの代わりに低廉なニッケル(Ni)やマンガン(Mn)を一つまたは複合的に用いた正極活物質を開発しようとする試みがある。
【0017】
この中でも、ニッケル(Ni)系複合酸化物はLiCoO
2、LiNiO
2、Li
2MnO
3などの材料が有する費用、安定性および容量などの限界を克服できる材料であって、最近、活発な研究が進められている。
【0018】
一般に、電気自動車用(xEV)二次電池は、高容量、高出力、長寿命、高安全性が要求される。特に、航続距離を300km以上に増加させるための正極および負極活物質の高容量化に対する研究が活発に進められている。
【0019】
これに関連して、ニッケル(Ni)系複合酸化物はリチウム原子1つが抜ける充電反応の際、Ni
2+→Ni
4++2eのように反応して2つの電子を発生させるため、1つの電子だけ発生させるコバルト(Co)、マンガン(Mn)などの他の元素と比較する時、ニッケル(Ni)含有量が増加するほど容量が増加する長所がある。
【0020】
しかし、ニッケル(Ni)系複合酸化物の場合、従来のリチウムコバルト酸化物と比較する時、リチウムが脱離される充電反応の際、脱離されるリチウムの量が多くて構造が不安定で相対的によく崩れ、充電および放電を経ながら容量劣化が相対的に著しく現れるという問題がある。
【0021】
そこで、本発明の発明者らは、リチウム二次電池用正極活物質としてニッケル(Ni)系複合酸化物を使用しながらも高容量化および優れた寿命特性を同時に実現するために研究を重ねた結果、ニッケル(Ni)系複合酸化物を含むコア表面に機能性層を形成させ、前記機能性層の少なくとも一部がコアの結晶構造と異なる1種の結晶構造を含む場合、上記のような目的を達成できることを見出し、本発明の一実施形態を実現した。
【0022】
図1には、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質の断面を例示的に示した。
【0023】
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質150は、コア101と前記コア101の表面に位置する機能性層102とを含むことを特徴とする。
【0024】
この時、前記コア101は、下記の化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0025】
[化学式1]
Li
aNi
xCo
yMe
zO
2
【0026】
前記化学式1において、0.9≦a≦1.1、0.5≦x≦0.93、0<y≦0.3、0<z≦0.3、x+y+z=1であり、Meは、MnまたはAlである。一実施形態によると、0<y≦0.2、0<z≦0.1であってもよい。
【0027】
また、前記正極活物質に含まれるコアはニッケル含有量が高い、すなわち、xが0.5〜0.93の化合物である。特に、前記化学式1において、前記xは0.7≦x≦0.93または0.8≦x≦0.9であってもよい。
【0028】
このようにニッケル含有量が高い、すなわち、xが0.5〜0.93の前記化学式1の化合物を正極活物質のコアに使用する場合、高容量を有するリチウム二次電池を製造することができる。すなわち、xが0.5未満である、ニッケル含有量が低い化合物をリチウム二次電池の正極活物質として使用する場合に比べて、非常に高い容量を示すリチウム二次電池を実現することができる。
【0029】
前記機能性層102は前記コア101の結晶構造と異なる1種の結晶構造を含むことができ、特に、前記コア101の結晶構造と異なる1種の結晶構造のみを含む層を含むことができる。
【0030】
一方、コア101は六方晶系(hexagonal)結晶構造または層状の六方晶系結晶構造を含み、機能性層102はコア101と他の1種の結晶構造を含むことができる。この時、前記1種の結晶構造は、例えば、立方晶系(cubic)構造であってもよい。
【0031】
前記機能性層102の平均厚さは3nm〜60nm、または5nm〜30nmであってもよい。機能性層の平均厚さが3nm以上の場合寿命特性が向上し、60nm以下の場合には、高い容量を有するリチウム二次電池を実現することができる。前記機能性層の平均厚さはTEM分析で得られ、例えば、試料の5ポイントに対して得たTEM分析の平均値で得ることができる。
【0032】
前記リチウム二次電池用正極活物質150は、100ppm〜400ppm範囲、または100ppm〜200ppmの硫黄(sulfur)を含んでもよい。全体正極活物質を基準に硫黄の含有量が100ppm以上の場合高容量のリチウム二次電池を実現でき、400ppm以下の場合には、リチウム二次電池の寿命特性を向上させることができる。
このように、正極活物質が前記コアの結晶構造と異なる1種の結晶構造を含む機能性を含む場合、構造的により安定されるので、電池の充電・放電時に正極活物質の構造がよく維持されることができ、よってサイクル寿命の特性及び安定性に優れることができる。
【0033】
以下、
図2を参照して、本発明の他の実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質を説明する。
図2は、本発明の他の実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質の断面を例示的に示した図である。本実施形態の正極活物質151の説明において、上述した
図1によるリチウム二次電池用正極活物質150と実質的に同一の構成に対する詳細な説明は省略する。
【0034】
図2を参照すると、本実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質151は、コア101と前記コア101の表面に位置する機能性層102とを含む。本実施形態において、前記機能性層102は、少なくとも2種の結晶構造を含む第1層102aと、第1層102aの表面に位置する第2層102bとを含んでもよい。第2層102bは、コア101と異なる少なくとも1種の結晶構造を含んでもよい。
【0035】
この時、第1層102aは、立方晶系構造および六方晶系構造が混合された構造を含んでもよい。また、第2層102bは立方晶系構造を含んでもよい。第2層102bは立方晶系構造および六方晶系構造を含んでもよいが、立方晶系構造が六方晶系構造よりも多いことがある。また、第2層102bは立方晶系構造だけで形成されてもよい。機能性層に含まれる六方晶系構造も六方晶系構造または層状の六方晶系構造であってもよい。
【0036】
本実施形態で第1層102aはコア101の表面に位置し、第2層102bは、第1層102aの表面に位置することができる。すなわち、第2層102bは、リチウム二次電池用正極活物質151の最外郭に位置することができる。
【0037】
前記機能性層102の平均厚さは、3nm〜60nmまたは5nm〜30nmであってもよい。機能性層の平均厚さが3nm以上の場合寿命特性が向上し、60nm以下の場合には、高い容量を有するリチウム二次電池を実現することができる。
【0038】
この時、第1層102aの平均厚さは、前記機能性層102全体の平均厚さを基準に、2%〜20%範囲であってもよい。機能性層102全体で立方晶系結晶構造で構成される第1層102aの平均厚さが前記範囲を満足する場合、リチウムの脱離および挿入の際、正極活物質の構造劣化を抑制することができる。
【0039】
一方、実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質は、例えば、混合物製造、1次熱処理、洗浄、脱水、乾燥および2次熱処理を含む方法で製造されることができる。
【0040】
混合物製造は、例えば、リチウム含有化合物、ニッケル含有化合物、コバルト含有化合物、Me(MeはMnまたはAlである)含有化合物を混合する方法で行ってもよい。
前記ニッケル含有化合物、前記コバルト含有化合物および前記Me(MeはMnまたはAlである)含有化合物は一般的に不純物としてSを含み、例えば、1000pppm〜2000pppmの含量で含んでもよい。
【0041】
この時、前記リチウム含有化合物は、酢酸リチウム、硝酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、これらの水和物、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
前記ニッケル含有化合物は、硝酸ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸ニッケル、これらの水和物、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0043】
前記コバルト含有化合物は、硝酸コバルト、水酸化コバルト、炭酸コバルト、酢酸コバルト、硫酸コバルト、これらの水和物またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0044】
前記Me含有化合物は、例えば、Me含有ナイトレート、Me含有ヒドロキシド、Me含有カーボネート、Me含有アセテート、Me含有スルフェート、これらの水和物またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0045】
前記リチウム含有化合物、前記ニッケル含有化合物、前記コバルト含有化合物、前記Me含有化合物の混合比は、上述した化学式1で表される化合物が得られるように適切に調節することができる。
【0046】
次に、1次熱処理は、例えば、700℃〜1000℃で行ってもよく、この時、1次熱処理時間は5時間〜30時間であってもよい。また、1次熱処理は、酸素(O
2)雰囲気、または大気(air)雰囲気下で行ってもよい。この熱処理工程で前記化学式1で表される化合物を含むコアが形成され得る。
【0047】
前記洗浄は、例えば、コアおよび溶媒を0.5〜1.5:1の重量比で混合し、1分〜60分間攪拌する工程で行ってもよい。前記溶媒としては水を用いてもよい。前記コア及び溶媒の混合比が前記範囲を外れる場合、例えば、溶媒を過量または少量用いる場合、適合した機能性層が形成されず、適切でない。
【0048】
この時、得られた混合液のpHは3〜13であってもよく、適切には7〜13であってもよい。また、前記溶媒温度は15℃〜35℃範囲であってもよい。上記溶媒として塩基溶媒を用いてもよい。この際に塩基溶媒はアンモニア、水酸化ナトリウムまたはこれらの組み合わせの塩基を水に添加したものを用いてもよい。この際に、前記塩基溶媒の濃度は塩基溶媒のpHが約11.5〜13.5になるように調節してもよい。例えば、塩基としてアンモニアを用いる場合、塩基溶媒の濃度は10重量%〜30重量%であってもよく、塩基として水酸化ナトリウムを用いる場合、塩基溶媒の濃度は5重量%〜15重量%であってもよい。
【0049】
上記洗浄工程によって、上記コアに含まれる硫黄の含有量を調節することができる。
【0050】
以降、脱水および乾燥工程を経た後、100℃〜700℃の温度範囲で2次熱処理して、実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質を製造することができる。この時、脱水工程は、当該技術分野においてよく知られた通常の方法で行ってもよく、乾燥は80〜240℃の温度範囲で行ってもよい。
【0051】
次に、本発明の他の実施形態は、前記正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極および電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0052】
図3に、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池を概略的に示した。
図3では、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池が角型の場合を例として説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、円筒型、パウチ型など多様な形態の電池に適用できる。
【0053】
図3を参照すると、一実施形態によるリチウム二次電池100は、正極10と負極20との間にセパレータ30を介在して巻き取られた電極組立体40と、前記電極組立体40が内蔵されるケース50とを含むことができる。前記正極10、前記負極20および前記セパレータ30は電解液(図示せず)に含浸されている。
【0054】
前記正極10は、正極活物質層および前記正極活物質を支持する電流集電体を含む。前記正極活物質層において、前記正極活物質の含有量は、正極活物質層全体重量に対して90重量%〜98重量%であってもよい。
【0055】
本発明の一実施形態において、前記正極活物質層はバインダーおよび導電材をさらに含んでもよい。この時、前記バインダーおよび導電材の含有量は、正極活物質層全体重量に対してそれぞれ1重量%〜5重量%であってもよい。
【0056】
前記バインダーは、正極活物質粒子を互いによく付着させ、また正極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たす。バインダーの代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリレーテッドスチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0057】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を起こさずに電子伝導性材料であれば何れのものを使用してもよい。導電材の例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0058】
前記電流集電体としてはAlを使用してもよいが、これに限定されるものではない。
【0059】
前記負極20は、電流集電体および前記電流集電体上に形成されている負極活物質を含む負極活物質層を含む。
【0060】
前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質、または遷移金属酸化物を含む。
【0061】
前記リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質は炭素物質であり、リチウムイオン二次電池において一般的に使用する炭素系負極活物質は何れのものを使用してもよく、その代表的な例としては、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらを共に使用してもよい。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状もしくは繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0062】
前記リチウム金属の合金としては、リチウム、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群より選択される金属の合金が用いることができる。
【0063】
前記リチウムをドープおよび脱ドープできる物質としては、Si、Si−C複合体、SiOx(0<x<2)、Si−Q合金(前記Qはアルカリ金属、アルカリ土金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)、Sn、SnO
2、Sn−R合金(前記Rはアルカリ金属、アルカリ土金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、またこれらの中の少なくとも一つとSiO
2を混合して使用することができる。前記元素QおよびRとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されることを使用することができる。
【0064】
前記遷移金属酸化物としては、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物またはリチウムチタン酸化物などが挙げられる。
【0065】
前記負極活物質層において、負極活物質の含有量は、負極活物質層全体重量に対して95重量%〜99重量%であってもよい。
【0066】
本発明の一実施形態において、前記負極活物質層はバインダーを含み、選択的に導電材をさらに含んでもよい。前記負極活物質層において、バインダーの含有量は負極活物質層全体重量に対して1重量%〜5重量%であってもよい。また、導電材をさらに含む場合には、負極活物質を90重量%〜98重量%、バインダーを1重量%〜5重量%、導電材を1重量%〜5重量%使用してもよい。
【0067】
前記バインダーは、負極活物質粒子を互いによく付着させ、また負極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たす。前記バインダーとしては、非水溶性バインダー、水溶性バインダーまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0068】
前記非水溶性バインダーとしては、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、ポリエチレンオキシドのようなエチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミド、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0069】
前記水溶性バインダーとしては、ゴム系バインダーまたは高分子樹脂バインダーが挙げられる。前記ゴム系バインダーは、スチレン−ブタジエンラバー、アクリレーテッドスチレン−ブタジエンラバー(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンラバー、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、およびこれらの組み合わせから選択されるものであってもよい。前記高分子樹脂バインダーは、エチレンプロピレン共重合体、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、およびこれらの組み合わせから選択されるものであってもよい。
【0070】
前記負極バインダーとして水溶性バインダーを使用する場合、粘性を付与可能なセルロース系化合物を増粘剤としてさらに含んでもよい。このセルロース系化合物としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用することができる。前記アルカリ金属としては、Na、K、またはLiを使用することができる。このような増粘剤の使用含有量は、負極活物質100重量部に対して0.1重量部〜3重量部であってもよい。
【0071】
前記導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を起こさずに電子伝導性材料であれば何れのものを使用してもよい。導電材の例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0072】
前記集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステレンス鋼箔、チタニウム箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0073】
前記電解質は非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。
【0074】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質役割を果たす。
【0075】
前記非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒を使用することができる。
【0076】
前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などを使用することができる。前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、デカノライド(decanolide)、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などを使用することができる。前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどを使用することができる。また、前記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどを使用することができる。また、前記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどを使用することができ、前記非プロトン性溶媒としては、R−CN(Rは炭素数2〜20の直鎖状、分枝状または環状構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3−ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類などを使用することができる。
【0077】
前記有機溶媒は、単独または一つ以上を混合して使用することができ、一つ以上を混合して使用する場合の混合比率は、目的の電池性能に応じて適切に調節することができ、これは当該分野に従事する者には広く理解され得る。
【0078】
また、前記カーボネート系溶媒の場合、環状(cyclic)カーボネートと鎖状(chain)カーボネートとを混合して使用することが好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、1:1〜1:9の体積比で混合して使用することによって、電解液の性能を向上させることができる。
【0079】
前記有機溶媒は、前記カーボネート系溶媒に芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含んでもよい。この時、前記カーボネート系溶媒と前記芳香族炭化水素系有機溶媒は、1:1〜30:1の体積比で混合されてもよい。
【0080】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒としては、下記の化学式2の芳香族炭化水素系化合物を使用することができる。
【0082】
(前記化学式2において、R
1〜R
6は互いに同一または異なり、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基、ハロアルキル基およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。)
【0083】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2−ジフルオロベンゼン、1,3−ジフルオロベンゼン、1,4−ジフルオロベンゼン、1,2,3−トリフルオロベンゼン、1,2,4−トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2−ジヨードベンゼン、1,3−ジヨードベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1,2,3−トリヨードベンゼン、1,2,4−トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、2,3−ジフルオロトルエン、2,4−ジフルオロトルエン、2,5−ジフルオロトルエン、2,3,4−トリフルオロトルエン、2,3,5−トリフルオロトルエン、クロロトルエン、2,3−ジクロロトルエン、2,4−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロトルエン、2,3,4−トリクロロトルエン、2,3,5−トリクロロトルエン、ヨードトルエン、2,3−ジヨードトルエン、2,4−ジヨードトルエン、2,5−ジヨードトルエン、2,3,4−トリヨードトルエン、2,3,5−トリヨードトルエン、キシレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0084】
前記電解質は、電池の寿命を向上させるために、ビニレンカーボネート、または下記の化学式3のエチレンカーボネート系化合物を寿命向上添加剤としてさらに含んでもよい。
【0085】
[化学式3]
【化2】
(前記化学式3において、R
7およびR
8は互いに同一または異なり、水素、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO
2)およびフッ素化された炭素数1〜5のアルキル基からなる群より選択され、前記R
7およびR
8のうち少なくとも一つはハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO
2)およびフッ素化された炭素数1〜5のアルキル基からなる群より選択されるが、ただし、R
7およびR
8がいずれも水素ではない。)
【0086】
前記エチレンカーボネート系化合物の代表的な例としては、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネートまたはフルオロエチレンカーボネートなどが挙げられる。このような寿命向上添加剤がさらに使用される場合、その使用量は適切に調節することができる。
【0087】
前記リチウム塩は有機溶媒に溶解されて、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。このようなリチウム塩の代表的な例としては、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6、LiN(SO
2C
2F
5)
2、Li(CF
3SO
2)
2N、LiN(SO
3C
2F
5)
2、LiC
4F
9SO
3、LiClO
4、LiAlO
2、LiAlCl
4、LiN(C
xF
2x+1SO
2)(C
yF
2y+1SO
2)(ここで、xおよびyは自然数であり、例えば1〜20の整数である)、LiCl、LiIおよびLiB(C
2O
4)
2(リチウムビスオキサレートボラート(lithium bis(oxalato)borate:LiBOB)からなる群より選択される一つまたは二つ以上を支持(supporting)電解塩として含む。リチウム塩の濃度は、0.1M〜2.0M範囲内で使用することがよい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれれば、電解質が適切な電導度および粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0088】
リチウム二次電池の種類に応じて、
図1に示したように、正極と負極の間にセパレータ30が存在することもある。このようなセパレータ30としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデンまたはこれらの2層以上の多層膜が使用でき、ポリエチレン/ポリプロピレンの2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層セパレータなどのような混合多層膜が使用できることはもちろんである。
【0089】
以下、実施例を通じて本発明を具体的に説明する。
【0090】
実施例1
水酸化リチウム、水酸化ニッケル、水酸化コバルト、アルミニウムヒドロキシドを、Li:Ni:Co:Alが1:0.85:0.13:0.02のモル比となるように混合した。
【0091】
前記混合物を700〜800℃および酸素(O
2)雰囲気下で20時間熱処理して、LiNi
0.85Co
0.13Al
0.02O
2正極活物質コアを製造した。上記正極活物質コアと水を1:0.75(約1.33:1)の重量比で混合した後、10分程度攪拌して洗浄工程を行った後、脱水および乾燥工程を経た後、700℃で熱処理して上記コアの表面に5nm厚さの結晶化された機能性層が形成された正極活物質を製造した。上記正極活物質と混合した溶媒のpHは7.5であり、上記乾燥工程は180℃で行った。
【0092】
この時、正極活物質コアは層状の六方晶系構造を含み、前記機能性層は全体が立方晶系構造を含むように構成された。また、正極活物質の硫黄含有量は300ppmであった。
【0093】
製造された正極活物質94重量%、ポリフッ化ビニリデンバインダー3重量%およびケッチェンブラック導電材3重量%をN−メチルピロリドン溶媒中で混合して正極活物質組成物を製造した。この正極活物質組成物をAl電流集電体に塗布して、正極を製造した。
【0094】
正極、リチウム金属対極および電解質を使用し、通常の方法でコイン形態の半電池を製造した。前記電解質として1.0M LiPF
6が溶解されたエチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの混合溶媒(50:50体積比)を使用した。
【0095】
実施例2
正極活物質コア表面に立方晶系と六方晶系との混合構造からなる第1層を形成し、第1層の表面に立方晶系構造を含む第2層を形成して第1層および第2層を含む機能性層を形成し、正極活物質の硫黄含有量が200ppmとなるように正極活物質コアと水の混合比を重量比1:1で混合した洗浄工程条件を調節したことを除いては、実施例1と同様の方法で正極活物質を製造した。この時、第1層と第2層の平均厚さ比率は1:4であった。上記正極活物質と混合した溶媒のpHは7.5であった。
【0096】
その後、実施例1と同様の方法で正極を製造した後、コイン形態の半電池を製造した。
【0097】
実施例3
水にNaOHを添加してpHが12.5である塩基溶媒(濃度:5重量%)を製造し、正極活物質コアと上記塩基溶媒を1:0.75(約1.33:1)の重量比で混合して洗浄工程を行ったことを除いては、実施例1と同様の方法で正極活物質の硫黄の含有量が400ppmである正極活物質を製造した。
【0098】
その後、実施例1と同様の方法で正極を製造した後、コイン形態の半電池を製造した。
【0099】
実施例4
正極活物質コアの表面に立方晶系と六方晶系との混合構造からなる第1層を形成し、第1層の表面に立方晶系構造を含む第2層を形成し、第1層及び第2層を含む機能性層を形成し、正極活物質の硫黄含有量が100ppmとなるように正極活物質コアと水の混合比を1:1.5(約0.67:1)の重量比で混合した洗浄工程条件を調節したことを除いては、実施例1と同様の方法で正極活物質を製造した。この際に、第1層及び第2層の平均厚さの比率は1:4であった。上記正極活物質と混合した溶媒のpHは7.5であった。
【0100】
その後、実施例1と同様の方法で正極を製造した後、コイン形態の半電池を製造した。
【0101】
比較例1
水にNaOHを添加してpHが12.5である塩基溶媒(濃度:5重量%)を製造し、正極活物質コアと上記塩基溶媒を1:0.5の重量比で混合して洗浄工程を行ったことを除いては、実施例1と同様の方法で別途の機能性層なしに層状の六方晶系構造からなり、硫黄含有量が1000ppmである正極活物質を製造した。
【0102】
その後、実施例1と同様の方法で正極を製造した後、コイン形態の半電池を製造した。
【0103】
比較例2
正極活物質コア表面に立方晶系と六方晶系との混合構造からなる機能性層を形成し、正極活物質の硫黄含有量が500ppmとなるように正極活物質と水を1:0.5の重量比で混合する洗浄工程条件を調節して正極活物質を製造したことを除いては、実施例1と同様の方法で正極活物質を製造した。
【0104】
その後、実施例1と同様の方法で正極を製造した後、コイン形態の半電池を製造した。
【0105】
比較例3
正極活物質コア表面に立方晶系と六方晶系との混合構造からなる機能性層を形成し、正極活物質の硫黄含有量が30ppmとなるように正極活物質と水を1:3の重量比で混合する洗浄工程条件を調節して正極活物質を製造したことを除いては、実施例1と同様の方法で正極活物質を製造した。
【0106】
その後、実施例1と同様の方法で正極を製造した後、コイン形態の半電池を製造した。
【0107】
実施例1〜4および比較例1〜3により製造された正極活物質において、機能性層の結晶構造と平均厚さ、および正極活物質の硫黄含有量を下記表1に示した。
【0109】
実験例1
実施例1〜4および比較例1〜3により製造された半電池を25℃で、3.0V〜4.3V範囲内で1Cで充放電を200回実施して、放電容量を測定した。また、1回放電容量に対する200回放電容量比率を計算して容量維持率を求め、これをサイクル寿命とした。
【0112】
表2を参照すると、本発明の一実施形態による正極活物質を含む半電池である実施例1〜4の場合、比較例1〜3と比較すると、容量が優れており、かつ、200回目のサイクルでも優れた寿命特性を示すことが確認できる。
【0113】
実験例2−正極活物質の機能性層の結晶構造測定
【0114】
図4および
図7には、それぞれ実施例2により製造された正極活物質および比較例2により製造された正極活物質表面に対して高分解能電子透過顕微鏡(HR−TEM、high−resolution transmission electron microscopy)を利用した測定結果を示した。
【0115】
図5は、
図4における2番目の四角形位置で高速フーリエ変換のパターン(FFT patterns、fast fourier transform patterns)を示したものであり、
図6は、
図4における1番目の四角形位置で高速フーリエ変換のパターン(FFT patterns、fast fourier transform patterns)を示したものである。
【0116】
より具体的には、
図5は、第1層の表面に位置する第2層(平均厚さ約20nm)の高速フーリエ変換のパターンを示したものであり、
図6は、コア表面と第2層の間に位置する第1層(平均厚さ約5nm)の高速フーリエ変換のパターンを示したものである。
図5および
図6を参照すると、実施例2により製造された正極活物質の機能性層は、コア表面に位置し立方晶系構造と六方晶系構造とが混合された第1層と、前記第1層の表面に位置し立方晶系構造を含む第2層とで構成されることが確認できる。
【0117】
一方、
図8は、
図7における2番目の四角形位置で高速フーリエ変換のパターン(FFT patterns、fast fourier transform patterns)を示したものであり、
図9は、
図7における1番目の四角形位置で高速フーリエ変換のパターン(FFT patterns、fast fourier transform patterns)を示したものである。
【0118】
より具体的には、
図8は、機能性層(平均厚さ約5nm)の高速フーリエ変換のパターンを示したものであり、
図9は、コアの高速フーリエ変換のパターンを示したものである。
図8および
図9を参照すると、比較例2により製造された正極活物質は、層状の六方晶系構造を含むコアと、コアの表面に位置し六方晶系構造と立方晶系構造とが混合された機能性層とで構成されることが確認できる。
【0119】
すなわち、本発明の実施例のように層状の六方晶系構造または六方晶系結晶構造の正極活物質コア表面に立方晶系構造から構成される機能性層が形成されるか、または立方晶系構造と六方晶系構造とが混合された第1層と、立方晶系構造を含む第2層とで構成される機能性層が形成された場合、リチウムの脱/挿入時に正極活物質の表面構造が劣化することを抑制するため、リチウム二次電池の寿命特性を向上させることができる。また、機能性層の結晶構造は上述の通りであり、かつ正極活物質の硫黄含有量が50ppm〜400ppm範囲を満足する場合、容量が優れると同時に寿命特性が向上したリチウム二次電池を実現することができる。
【0120】
以上で本発明に関する好ましい実施例を説明したが、本発明は、前記実施例に限定されず、本発明の実施例から当該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者によって容易に変更されて均等であると認められる範囲の全ての変更を含む。