特許第6807148号(P6807148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6807148-感光性組成物 図000017
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807148
(24)【登録日】2020年12月9日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】感光性組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20201221BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20201221BHJP
   C08F 220/30 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   G03F7/023
   G02B5/20 101
   C08F220/30
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-151153(P2015-151153)
(22)【出願日】2015年7月30日
(65)【公開番号】特開2017-32716(P2017-32716A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】井上 朋之
(72)【発明者】
【氏名】磯部 信吾
(72)【発明者】
【氏名】松本 直純
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−133891(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/088757(WO,A1)
【文献】 特開2013−060537(JP,A)
【文献】 特開2014−186309(JP,A)
【文献】 特開2011−209680(JP,A)
【文献】 特開2014−137454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性ポリマー及びキノンジアジド基含有化合物を含む感光性組成物であって、
前記アルカリ可溶性ポリマーが、下記式(a−1)で表される構成単位(a1)と、架橋性基を有する構成単位(a2)と、ヒドロキシアルキル基を有する構成単位(a3)とを含み、
前記架橋性基がエポキシ基であり、
前記ヒドロキシアルキル基を有する構成単位(a3)は、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシ−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−5−ヒドロキシ−n−ペンチル及び(メタ)アクリル酸−6−ヒドロキシ−n−ヘキシルから選択される少なくとも一種からなる重合性単量体に由来する構成単位であり、
前記アルカリ可溶性ポリマーの質量平均分子量が10000以下である、感光性組成物(ただし、アルカリ可溶性樹脂成分及び感光剤を含む層間絶縁膜用感光性樹脂組成物であって、前記アルカリ可溶性樹脂成分が酸性基含有構成単位、架橋性基含有構成単位及びアルコキシシリル基含有構成単位を含む共重合体を含む、層間絶縁膜用感光性樹脂組成物を除く)。
【化1】
[上記式(a−1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは単結合又は炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、Rは炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、aは1〜5の整数を表し、bは0〜4の整数を表し、a+bは5以下である。なお、Rが2以上存在する場合、これらのRは相互に異なっていてもよいし同じでもよい。]
【請求項2】
アルカリ可溶性ポリマー及びキノンジアジド基含有化合物を含む感光性組成物であって、
前記アルカリ可溶性ポリマーが、下記式(a−1)で表される構成単位(a1)と、架橋性基を有する構成単位(a2)と、ヒドロキシアルキル基を有する構成単位(a3)とを含み、(メタ)アクリル酸から誘導される構成単位を含まず、
前記ヒドロキシアルキル基を有する構成単位(a3)は、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシ−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−5−ヒドロキシ−n−ペンチル及び(メタ)アクリル酸−6−ヒドロキシ−n−ヘキシルから選択される少なくとも一種からなる重合性単量体に由来する構成単位であり、
前記アルカリ可溶性ポリマーの質量平均分子量が10000以下である、感光性組成物(ただし、アルカリ可溶性樹脂成分及び感光剤を含む層間絶縁膜用感光性樹脂組成物であって、前記アルカリ可溶性樹脂成分が酸性基含有構成単位、架橋性基含有構成単位及びアルコキシシリル基含有構成単位を含む共重合体を含む、層間絶縁膜用感光性樹脂組成物を除く)。
【化2】
[上記式(a−1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは単結合又は炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、Rは炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、aは1〜5の整数を表し、bは0〜4の整数を表し、a+bは5以下である。なお、Rが2以上存在する場合、これらのRは相互に異なっていてもよいし同じでもよい。]
【請求項3】
アルカリ可溶性ポリマー及びキノンジアジド基含有化合物を含む感光性組成物であって、
前記アルカリ可溶性ポリマー(ただし、アルコキシシリル基含有構成単位を含む共重合体を除く。)が、下記式(a−1)で表される構成単位(a1)と、架橋性基を有する構成単位(a2)と、ヒドロキシアルキル基を有する構成単位(a3)とを含み、
前記架橋性基がエポキシ基であり、
前記ヒドロキシアルキル基を有する構成単位(a3)は、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシ−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−5−ヒドロキシ−n−ペンチル及び(メタ)アクリル酸−6−ヒドロキシ−n−ヘキシルから選択される少なくとも一種からなる重合性単量体に由来する構成単位であり、
前記アルカリ可溶性ポリマーの質量平均分子量が10000以下である、感光性組成物。
【化3】
[上記式(a−1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは単結合又は炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、Rは炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、aは1〜5の整数を表し、bは0〜4の整数を表し、a+bは5以下である。なお、Rが2以上存在する場合、これらのRは相互に異なっていてもよいし同じでもよい。]
【請求項4】
アルカリ可溶性ポリマー及びキノンジアジド基含有化合物を含む感光性組成物であって、
前記アルカリ可溶性ポリマー(ただし、アルコキシシリル基含有構成単位を含む共重合体を除く。)が、下記式(a−1)で表される構成単位(a1)と、架橋性基を有する構成単位(a2)と、ヒドロキシアルキル基を有する構成単位(a3)とを含み、(メタ)アクリル酸から誘導される構成単位を含まず、
前記ヒドロキシアルキル基を有する構成単位(a3)は、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシ−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−5−ヒドロキシ−n−ペンチル及び(メタ)アクリル酸−6−ヒドロキシ−n−ヘキシルから選択される少なくとも一種からなる重合性単量体に由来する構成単位であり、
前記アルカリ可溶性ポリマーの質量平均分子量が10000以下である、感光性組成物。
【化4】
[上記式(a−1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは単結合又は炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、Rは炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、aは1〜5の整数を表し、bは0〜4の整数を表し、a+bは5以下である。なお、Rが2以上存在する場合、これらのRは相互に異なっていてもよいし同じでもよい。]
【請求項5】
前記アルカリ可溶性ポリマーにおいて、前記構成単位(a3)の含有量が0質量%超20質量%未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項6】
前記アルカリ可溶性ポリマーにおいて、前記構成単位(a1)の含有量が0質量%超40質量%未満である、請求項1〜のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項7】
前記架橋性基がエポキシ基である、請求項2、4〜6のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項8】
前記アルカリ可溶性ポリマーが、(メタ)アクリル酸から誘導される構成単位を含まない、請求項1、3及び5〜7のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項9】
前記キノンジアジド基含有化合物の含有量が、前記感光性組成物の固形分の質量に対して5.0〜25質量%である、請求項1〜のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項10】
段差を有する基板上に、請求項1〜のいずれか1項に記載の感光性組成物からなる塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を露光及び現像によりパターン化する工程と、
前記パターン化された塗布膜を所定の温度に加熱してパターンを形成する工程と、を含む、パターン形成方法。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか1項に記載の感光性組成物を用いて形成される永久膜。
【請求項12】
請求項11に記載の永久膜を含む、CMOSイメージセンサ用カラーフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ可溶性ポリマー及びキノンジアジド基含有化合物を含む感光性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶パネルやCMOS(固体撮像素子)等の半導体装置に用いられる基板の微細加工において、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートに由来する構成単位を含む樹脂を含有する感光性組成物が永久膜の形成に用いられている。かかる感光性組成物が、ガラス転移温度(Tg)が高い永久膜を与えるためである(例えば、特許文献1)。
【0003】
ところで、CMOS等に用いられるカラーフィルタは、例えば、基板上に、ポジ型感光性組成物を塗布して塗布膜を形成した後、塗布膜に対して、露光、現像を行うことで露光部を除去し、パターン化することでが形成される。
【0004】
しかしながら、基板上にカラーフィルタを製造する際、1〜数μmほど高の段差を有する基板を用いる場合がある。この場合、段差部分に感光性組成物がたまってしまい、基板上に感光性組成物を均一な膜厚で塗布しにくい。このため、段差を備える基板上に形成された感光性組成物からなる塗布膜は、段差に近いほど膜厚が厚い。
このような理由から、段差を備える基板上にパターン化されたカラーフィルタを形成する場合、段差近傍にあるパターン部の高さが、他のパターン部の高さよりも高い問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−54809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような問題を解消する方法として、基板上に嵩上げ膜を形成して段差を小さくする方法が考えられる。先ず、段差を備える基板上に感光性組成物を塗布して塗布膜を形成する。次いで、塗布膜を露光及び現像することにより不要部分である露光部を除去して嵩上げ膜を形成する。これにより、基板上の段差が小さくなる。
【0007】
しかしながら、図1に示すように、段差を有する基板10上に塗布膜11を形成する場合、段差の上部から近傍において、段差の上部から基板表面にかけての傾斜(スロープ)形状が生じてしまう。嵩上げ膜について、嵩上げ膜が形成されてもなおスロープ形状が残存する問題がある。
嵩上げ膜において段差部近傍に膜厚の厚いスロープが存在すると、カラーフィルタを形成する際に、感光性組成物を均一に塗布しにくい。
【0008】
このような理由から、嵩上げ膜には、加熱により流動して容易に平坦化される良好な熱フロー性が要求される。また、嵩上げ膜の形成に使用される感光性組成物には良好な解像性と、現像後に過度に膜減りしない高い残膜率とが要求され、嵩上げ膜には、パターン化後も透過率が経時に亘って変化しない長期安定性に優れることも要求される。
【0009】
本発明は、以上のような課題に鑑みなされたものであり、その目的は、熱フロー性、及び解像性に優れ、現像時の残膜率が高く、且つ透過率の長期安定性に優れる膜を形成可能な感光性組成物と、当該感光性組成物を用いるパターン形成方法と、当該感光性組成物を用いて形成される永久膜と、当該永久膜を含むCMOSイメージセンサ用カラーフィルタとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、特定のアルカリ可溶性ポリマー、及びキノンジアジド基含有化合物を含む感光性組成物を用いることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の第一の態様は、アルカリ可溶性ポリマー及びキノンジアジド基含有化合物を含む感光性組成物であって、
前記アルカリ可溶性ポリマーは、下記式(a−1)で表される構成単位(a1)と、架橋性基を有する構成単位(a2)と、ヒドロキシアルキル基を有する構成単位(a3)とを含み、質量平均分子量が15000未満であることを特徴とする感光性組成物である。
【化1】
[上記式(a−1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは単結合又は炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、Rは炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、aは1〜5の整数を表し、bは0〜4の整数を表し、a+bは5以下である。なお、Rが2以上存在する場合、これらのRは相互に異なっていてもよいし同じでもよい。]
【0012】
本発明の第二の態様は、
段差を有する基板上に、第一の態様に係る感光性組成物からなる塗布膜を形成する工程と、
塗布膜を露光及び現像によりパターン化する工程と、
パターン化された塗布膜を所定の温度に加熱してパターンを形成する工程と、を含む、パターン形成方法である。
【0013】
本発明の第三の態様は、第一の態様に係る感光性組成物を用いて形成される永久膜である。
【0014】
本発明の第四の態様は、第三の態様に係る永久膜を含む、CMOSイメージセンサ用カラーフィルタである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱フロー性、及び解像性に優れ、現像時の残膜率が高く、且つ透過率の長期安定性に優れる膜を形成可能な感光性組成物と、当該感光性組成物を用いるパターン形成方法と、当該感光性組成物を用いて形成される永久膜と、当該永久膜を含むCMOSイメージセンサ用カラーフィルタとを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】段差付きの基板上に形成された塗布膜の断面を模式的に示す図である。
図2】(a)は実施例1で得られた嵩上げ膜の電子顕微鏡像を示す図であり、(b)は比較例8で得られた嵩上げ膜の電子顕微鏡像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0018】
本発明の感光性組成物は、アルカリ可溶性ポリマー、及びキノンジアジド基含有化合物を含む。以下、感光性組成物について、「組成物」と記載する場合がある。
【0019】
<アルカリ可溶性ポリマー>
アルカリ可溶性ポリマーは、下記式(a−1)で表される構成単位(a1)と、架橋性基を有する構成単位(a2)と、ヒドロキシアルキル基を有する構成単位(a3)とを含む。
【化2】
[上記一般式(a−1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは単結合又は炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、Rは炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、aは1〜5の整数を表し、bは0〜4の整数を表し、a+bは5以下である。なお、Rが2以上存在する場合、これらのRは相互に異なっていてもよいし同じでもよい。]
【0020】
上記式(a−1)において、Rは、メチル基であることが好ましい。(この構成単位を以下「PQMA単位」ということがある。
【0021】
は単結合又は炭素原子数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である。Rの具体例としては、単結合の他にメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、tert−ブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基等が挙げられる。中でも、単結合、メチレン基、エチレン基が好ましい。特に、単結合である場合には、アルカリ可溶性を向上させることができるので好ましい。
【0022】
aは、本発明の効果の観点や、製造が容易であるという点から、1であることが好ましい。
【0023】
ベンゼン環における水酸基は、Rと結合している炭素原子を基準(1位)としたとき、4位に結合していることが好ましい。
【0024】
は炭素原子数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。中でも製造が容易であるという点から、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0025】
上記構成単位(a1)としては具体的には、下記式(a1−1)〜(a1−3)で表される単位が挙げられる。特に、式(a1−2)で表される構成単位が好ましい。
【化3】
【0026】
この構成単位(a1)は、下記式(a1)’で表される重合性単量体同士を重合させること、又は下記式(a1)’で表される重合性単量体と他の重合性単量体とを共重合させることにより、アルカリ可溶性ポリマーに導入することができる。
【化4】
[上記式(a1)’中、R、R、R、a、bは上記と同様である。]
【0027】
構成単位(a2)は、架橋性基を有する構成単位である。この架橋性基は、熱により架橋する官能基である。アルカリ可溶性ポリマーが構成単位(a2)を有することにより、透過率の長期安定性に優れる永久膜を形成できる。架橋性基としては例えば、エポキシ基、オキセタニル基が挙げられる。この構成単位(a2)は、中でも、共重合体の製造の容易さからエポキシ基を有することが好ましい。構成単位(a2)がエポキシ基を有する場合には、組成物としての保存安定性が低下する場合がある。しかし、アルカリ可溶性ポリマーとして、上記構成単位(a1)と構成単位(a2)とを組み合わせて含む共重合体を用いることにより、組成物の保存安定性を向上させることができる。
【0028】
このような架橋性基としてエポキシ基を有する構成単位(a2)は、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸−β−メチルグリシジル、メタクリル酸−β−メチルグリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタクリレート等の重合性単量体を共重合させることにより誘導することができる。これらの構成単位(a2)は、単独、あるいは2種以上が組み合わされていてもよい。
【0029】
特に好ましい構成単位(a2)としては、下記式(a2−1)や(a2−2)で表される構成単位が挙げられる。構成単位(a2)は、製造の容易さ、コストの優位性及び耐溶剤性を高める点から好ましく用いられる。
【化5】
[上記式(a2−1)及び(a2−2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。]
【0030】
構成単位(a3)は、ヒドロキシアルキル基を有する構成単位である。ヒドロキシアルキル基において、アルキル基は直鎖または分岐鎖状である。ヒドロキシアルキル基の炭素原子数は特に限定されないが、例えば1〜6が好ましく、2〜4がより好ましい。水酸基の数は特に限定されないが、通常は1つが好ましい。
【0031】
ヒドロキシアルキル基を有する構成単位(a3)は、例えば、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシ−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−5−ヒドロキシ−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−6−ヒドロキシ−n−ヘキシル等の重合性単量体を共重合することにより誘導することができる。これらの構成単位(a3)は、単独、あるいは2種以上が組み合されていてもよい。
特に好ましい構成単位(a3)としては、具体的には、下記式(a3−1)で表される単位が挙げられる。
【化6】
[上記式(a3−1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。]
【0032】
アルカリ可溶性ポリマーが構成単位(a3)を含む共重合体を含有することにより、組成物のアルカリ現像液に対する溶解性が向上する。また、構成単位(a2)成分との架橋性が高まり、露光部と未露光部とのアルカリ現像液に対する溶解性の差(コントラスト)が大きくなって、ポジ型レジストとして充分に機能することができる。
【0033】
なお、アルカリ可溶性ポリマーは、構成単位(a1)、(a2)、及び(a3)を含み、(メタ)アクリル酸類から誘導される構成単位を含まないのが特に好ましい。つまり、カルボキシル基を有する構成単位を含まないことが特に好ましい。これにより、感光性組成物の安定性が向上する。
【0034】
アルカリ可溶性ポリマーにおいて、構成単位(a1)の含有量は、0質量%超40質量%未満が好ましい。構成単位(a1)の含有量の上限は、20質量%以下がより好ましい。構成単位(a1)の含有量が上記範囲内にあれば、組成物を用いて、透過率の長期安定性に優れる永久膜を形成しやすい。
【0035】
アルカリ可溶性ポリマーにおいて、構成単位(a2)の含有量は、20質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましい。構成単位(a2)の含有量が上記範囲であることで、構成単位(a1)と構成単位(a2)との架橋が促進されるとともに、組成物を用いて、透過率の長期安定性に優れる永久膜を形成しやすい。
【0036】
アルカリ可溶性ポリマーにおいて、構成単位(a3)の含有量は、0質量%超20質量%以上が好ましく、10質量%〜20質量%がより好ましい。構成単位(a3)の含有量が上記範囲であることで、アルカリ可溶性に優れ、また、上記範囲内において、構成単位(a3)の含有量が多いほど、組成物の解像性の向上が期待できる。
【0037】
アルカリ可溶性ポリマーの質量平均分子量(Mw:ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のポリスチレン換算による測定値。本明細書において同じ。)は、15000未満であり、3000〜10000であることがより好ましい。アルカリ可溶性ポリマーの質量平均分子量が上記範囲であることで、熱フロー性に優れる膜を形成できる。また、上記範囲内においてアルカリ可溶性ポリマーの質量平均分子量が小さいほど、熱フロー性の向上を期待できる。
【0038】
アルカリ可溶性ポリマーは、公知のラジカル重合により、製造することができる。すなわち、前記構成単位(a1)、(a2)、(a3)を誘導する重合性単量体、及び公知のラジカル重合開始剤を重合溶媒に溶解した後、加熱撹拌することにより製造することができる。
【0039】
アルカリ可溶性ポリマーは、上記共重合体以外に、他の重合体を含んでいてもよい。他の重合体としては、構成単位(a3)を含む重合体、構成単位(a1)と構成単位(a3)とを含む共重合体、構成単位(a2)と構成単位(a3)とを含む共重合体等が挙げられる。構成単位(a1)と構成単位(a3)とを含む共重合体、及び構成単位(a2)と構成単位(a3)とを含む共重合体は、それぞれ、構成単位(a1)と構成単位(a3)とからなる共重合体、及び構成単位(a2)と構成単位(a3)とからなる共重合体であってよい。他の共重合体は、1種であっても、2種以上組み合わせてもよい。他の共重合体の含有量は、構成単位(a1)、(a2)、及び(a3)を含む共重合体100質量部に対して、0質量部〜50質量部が好ましく、0質量部〜30質量部がより好ましい。
【0040】
<キノンジアジド基含有化合物>
感光剤(PAC)となるキノンジアジド基含有化合物としては、具体的には、フェノール化合物(フェノール性水酸基含有化合物ともいう)と、ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物と、の完全エステル化物や部分エステル化物が挙げられる。
【0041】
上記フェノール化合物としては、具体的には、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のポリヒドロキシベンゾフェノン類;
トリス(4−ヒドロシキフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン等のトリスフェノール型化合物;
2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−5−ヒドロキシフェノール、2,6−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール等のリニア型3核体フェノール化合物;
1,1−ビス〔3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル〕イソプロパン、ビス[2,5−ジメチル−3−(4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン、ビス[2,5−ジメチル−3−(4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−エチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−エチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2,5−ジメチル−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン等のリニア型4核体フェノール化合物;
2,4−ビス[2−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルベンジル]−6−シクロヘキシルフェノール、2,4−ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルベンジル]−6−シクロヘキシルフェノール、2,6−ビス[2,5−ジメチル−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシベンジル]−4−メチルフェノール等のリニア型5核体フェノール化合物等のリニア型ポリフェノール化合物;
ビス(2,3,−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、2,3,4−トリヒドロキシフェニル−4′−ヒドロキシフェニルメタン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2′,3′,4′−トリヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2′,4′−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4′−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−2−(3′−フルオロ−4′−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4′−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(4′−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジメチルフェニル)プロパン等のビスフェノール型化合物;
1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1−[1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、等の多核枝分かれ型化合物;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等の縮合型フェノール化合物等が挙げられる。
これらは単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0042】
上記ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物としては、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸又はナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホン酸等を挙げることができる。
【0043】
他のキノンジアジド基含有化合物としては、例えばオルトベンゾキノンジアジド、オルトナフトキノンジアジド、オルトアントラキノンジアジド又はオルトナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類等の化合物の核置換誘導体が挙げられる。さらには、オルトキノンジアジドスルホニルクロリドと、水酸基又はアミノ基をもつ化合物(例えばフェノール、p−メトキシフェノール、ジメチルフェノール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ナフトール、ピロカテコール、ピロガロール、ピロガロールモノメチルエテール、ピロガロール−1,3−ジメチルエーテル、没食子酸、水酸基を一部残してエステル化又はエ−テル化された没食子酸、アニリン、p−アミノジフェニルアミン等)と、の反応生成物等も用いることができる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
これらのキノンジアジド基含有化合物は、例えばトリスフェノール型化合物と、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリド又はナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリドと、をジオキサン等の適当な溶剤中において、トリエタノールアミン、炭酸アルカリ、炭酸水素アルカリ等のアルカリの存在下で縮合させ、完全エステル化又は部分エステル化することにより製造することができる。キノンジアジド基含有化合物としては、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化物が好ましい。
【0045】
キノンジアジド基含有化合物の含有量は、全固形成分に対し、5質量%〜25質量%が好ましく、7.5質量%〜15質量%がより好ましい。
キノンジアジド基含有化合物の含有量が5質量%以上であることによって、解像度に優れ、残膜率の高い嵩上げ膜を形成できる組成物を得やすい。
キノンジアジド基含有化合物の含有量が25質量%以下であることによって、感度が良好であり、透過率の長期安定性に優れる膜を形成できる組成物を得やすい。
【0046】
<有機溶剤>
感光性組成物は、塗布性を改善したり、粘度を調整したりするために、適当な有機溶剤に溶解した溶液として使用することが好ましい。
【0047】
有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート(MA)、3−メトキシブタノール(BM)、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、炭酸メチル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0048】
有機溶剤の使用量は特に限定されない。有機溶剤の使用量は、組成物が基板等に塗布可能な濃度であるように、塗布膜厚に応じて適宜設定される。具体的には、感光性組成物の固形分濃度が10質量%〜50質量%、好ましくは15質量%〜35質量%の範囲内であるように用いることが好ましい。
【0049】
<その他の成分>
感光性組成物は、界面活性剤や、増感剤、消泡剤、架橋剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0050】
界面活性剤としては、従来公知のものを使用できる。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の化合物が挙げられる。具体的には、X−70−090(商品名、信越化学工業社製)等を挙げることができる。界面活性剤の添加により、塗布性に優れ、平坦な膜を形成できる組成物を得やすい。
【0051】
増感剤としては、従来公知のポジ型レジストに用いられるものを使用することができる。消泡剤としては、従来公知のものを使用できる。消泡剤としては、シリコーン系化合物、フッ素系化合物が挙げられる。
【0052】
架橋剤としては、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物が挙げられる。このような化合物としては、中でも、単官能、2官能又は3官能以上の(メタ)アクリレートが、重合性が良好であり、得られる膜の強度が向上する点から好ましく用いられる。
【0053】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート等が挙げられる。単官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えばアロニックスM−101、同M−111、同M−114(東亜合成化学工業(株)製)、KAYARAD TC−110S、同TC−120S(日本化薬(株)製)、ビスコート158、同2311(大阪有機化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0054】
2官能(メタ)アクリレートとしては、例えばエチレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート等が挙げられる。2官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えばアロニックスM−210、同M−240、同M−6200(東亜合成化学工業(株)製)、KAYARAD HDDA、同HX−220、同R−604(日本化薬(株)製)、ビスコート260、同312、同335HP(大阪有機化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0055】
3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイロキシエチル)フォスフェート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。3官能以上の(メタ)アクリレートの市販品としては、例えばアロニックスM−309、同M−400、同M−402、同M−405、同M−450、同M−7100、同M−8030、同M−8060(東亜合成化学工業(株)製)、KAYARAD TMPTA、同DPHA、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同DPCA−120(日本化薬(株)製)、ビスコート295、同300、同360、同GPT、同3PA、同400(大阪有機化学工業(株)製)等が挙げられる。これらの架橋剤は、単独であるいは組み合わせて用いられる。
【0056】
<感光性組成物の調製>
本発明に係る感光性組成物は、例えば、各成分を、ロールミル、ボールミル、サンドミル等の撹拌機で混合(分散及び混練)し、必要に応じて孔径5μmのメンブランフィルタ等のフィルタで濾過して調製することができる。
【0057】
<嵩上げ膜の形成>
次に、本発明における感光性組成物を用いて、基板上に嵩上げ膜を形成する方法について説明する。
【0058】
先ず、段差を有する基板上に感光性組成物を塗布して塗布膜を形成する。塗布膜をプレベークすることにより溶剤を除去する。例えば、ガラス、石英、シリコーン、透明樹脂等からなる基板を使用することができる。塗布方法としては、例えば、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法等の各種の方法を用いることができる。また、プレベークの条件は、各成分の種類や配合割合等によっても異なるが、例えば、80℃〜120℃で1分〜10分間程度の条件である。
【0059】
次いで、塗布膜にポジ型のマスクを介して紫外線等の放射線を露光したのち、アルカリ現像液により現像することにより、不要な部分である露光部を除去して嵩上げ膜を形成する。露光に使用される放射線としては、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用することができる。
【0060】
アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア等の無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミン等の一級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の二級アミン類;トリメチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン類;ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;ピロール、ピペリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等の環状三級アミン類;ピリジン、コリジン、ルチジン、キノリン等の芳香族三級アミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アンモニウム塩等の水溶液を使用することができる。また、アルカリ現像液には、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒及び/又は界面活性剤を適当量添加することもできる。
【0061】
現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、シャワー法等のいずれでもよく、現像時間は、通常、10秒間〜180秒間である。アルカリ現像後、例えば流水洗浄を行って、例えば圧縮空気や圧縮窒素で乾燥することにより、パターンを形成する。
【0062】
次いで、ホットプレート、オーブン等の加熱装置にて、所定温度、例えば150℃〜250℃で、所定時間ポストベークを行うことによって、上記嵩上げ膜を形成することができる。
なお、上記の方法で嵩上げ膜を形成する場合、図1に示されるように、段差付近において塗布膜にスロープ形状が生じてしまう。塗布膜の加熱前には、嵩上げ膜の段差の近傍の箇所には、段差の上部から基板の表面にかけて傾斜する膜厚の厚い部分(スロープ部)が存在する。
しかし、前述の感光性組成物は熱フロー性に優れる。このため、スロープ部を有する嵩上げ膜を加熱すると、熱流動によりスロープ部が消失し、平坦な嵩上げ膜が形成される。
【0063】
このようにして、得られた嵩上げ膜は、熱フロー性及び解像性に優れ、現像時の残膜率が高い感光性組成物を用いて形成されているため、平坦且つ所望する形状を有している。このため、上記の方法により嵩上げ膜を形成する場合、カラーフィルタを形成する際に、カラーフィルタを形成するための材料を嵩上げ膜上に均一に塗布しやすい。
【0064】
<カラーフィルタ>
本発明に係るカラーフィルタは、上述した嵩上げ膜上に形成される。このカラーフィルタを製造するには、先ず、黒色顔料が分散された感光性組成物を用い、上記の方法と同様にして、樹脂パターン(ブラックマトリクス)を形成する。次いで、赤色、緑色、及び青色の原色系の着色剤(RGB)、シアン、マゼンタ、及びイエロー、あるいはシアン、マゼンタ、イエロー、及びグリーンの補色系の着色剤(CMY又はCMYG)が分散された感光性組成物を用いて、ブラックマトリクスにより区画された領域内に同様にパターン形成を行い、各色の画素パターンを形成する。これにより、カラーフィルタが形成される。
【0065】
なお、カラーフィルタの製造にあたっては、ブラックマトリクスによって区画された各領域に赤色、緑色、及び青色の各色のインクをインクジェットノズルから吐出し、溜められたインクを熱又は光で硬化させ、カラーフィルタを製造することもできる。
【0066】
本発明に係る感光性組成物は、CMOSで使用されるカラーフィルタを製膜する際の嵩上げ膜として使用されている。しかし、本発明はこれに限定されないことは言うまでもない。例えば、液晶で使用されるカラーフィルタをパターン化する際の嵩上げ膜として使用してもよい。
【0067】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【0068】
<実施例1〜実施例12、比較例1〜比較例8>
下記の表1に示される質量比で各成分が構成されるように、且つ表1に示される質量平均分子量(Mw)となるように重合性単量体を混合し、常法に従いアルカリ可溶性ポリマーを調製した。
表1中、構成単位(a1)は4−ヒドロキシフェニルメタクリレート(PQMA)に由来し、構成単位(a2)はグリシジルメタクリレート(GMA)に由来し、構成単位(a3)はメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(2−HEMA)に由来する。
表1中、構成単位(a1)、(a2)、(a3)の数字は、アルカリ可溶性ポリマー中の質量比である。
感光剤としては、4−[2−[4−[1,1ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニル]プロパン−2−イル]フェノールの1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル(3モル体)を用いた。溶剤としては、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)=6:4(質量比)の混合溶剤を用いた。
【0069】
【表1】
【0070】
得られた実施例1〜12及び比較例1〜8の感光性組成物を、ガラス基板上に、膜厚0.9μmとなるようにスピンナーで塗布後、ホットプレート上にて110℃で120秒間乾燥させて塗布膜を得た。この塗布膜に対して、ポジ型マスクを介してミラープロジェクションアライナー(商品名:TME−150RTO、トプコン社製)を用いて露光した。次いで、26℃にてNaOH・NaCO混合水溶液(0.825質量%)(現像液)中にて、90秒間浸漬させ現像を行い、純水でのリンス洗浄を経て不要部分を除去した。その後、230℃で20分間ポストベークを行った。
【0071】
上記のようにして得られた各実施例及び各比較例の嵩上げ膜について、長期安定性(透過率)、熱フロー性、解像性、残膜率の各項目について評価を行った。各評価基準は以下の通りである。
【0072】
<長期安定性(透過率)の評価>
各実施例及び各比較例で得られた嵩上げ膜について、150℃で2000時間オーブンに放置する試験を行い、可視領域となる波長400nmの光線の透過率の推移を測定した。
各評価基準は、以下の通りである。
○:2000時間後の透過率が83%以上である
△:2000時間後の透過率が80%以上である
×:2000時間後の透過率が80%未満である
【0073】
表1の結果から、各実施例の感光性組成物を用いて形成された嵩上げ膜はいずれも透過率の長期安定性に優れることがわかる。構成単位(a1)の比率が20質量%以下となる実施例では、特に透過率が高いのに対し、構成単位(a1)の比率が多い比較例ほど透過率が低かった。このことから、構成単位(a1)の比率を下げることで、長期安定性(透過率)が向上することがわかる。
【0074】
感光剤の添加量を減らすと長期安定性(透過率)が向上することがわかる。感光剤の添加量は、長期安定性(透過率)の点からは、15質量%以下が好ましいことがわかる。
【0075】
<熱フロー性の評価>
各実施例及び比較例の感光性組成物を120℃で1分加熱し、その後の硬化膜の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。なお、比較例8で得られた感光性組成物では、実施例1と同加熱条件では、十分な平坦化が見られなかったため、160℃で5分加熱後、さらに220℃で5分再加熱した。各評価基準は、以下の通りである。
○:十分な平坦化が観察された
△:平坦化が十分でないことが観察された
【0076】
表1の結果からわかるように、質量平均分子量(Mw)が6000であるアルカリ可溶性ポリマーを含む実施例1〜12及び比較例1〜7の感光性組成物を用いる場合、十分に平坦な嵩上げ膜が形成された。他方、質量平均分子量(Mw)が15000と大きいアルカリ可溶性ポリマーを含む比較例8の感光性組成物を用いる場合、十分に平坦な嵩上げ膜を形成できなかった。
【0077】
実施例1及び比較例8の感光組性成物を用いて形成された硬化膜の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を図2に示す。図2から、質量平均分子量(Mw)が6000と小さいアルカリ可溶性ポリマーを含む実施例1の感光性組成物を用いる場合、成膜面が十分に平坦化されることがわかる。他方、質量平均分子量(Mw)が15000であるアルカリ可溶性ポリマーを含む比較例8の感光性組成物を用いる場合、成膜面が十分に平坦化されないことがわかる。
【0078】
これらの結果から、感光性組成物に含まれるアルカリ可溶性ポリマーの質量平均分子量(Mw)が小さいほど、感光性組成物が熱フロー性に優れ、段差を有する基板上に嵩上げ膜を形成する場合でも平坦な嵩上げ膜を形成できることがわかる。
【0079】
<解像性の評価>
各実施例及び各比較例で得られた嵩上げ膜の形状を、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、パターンの周囲に現れるホワイトバンドの幅を比較した。各評価基準は、以下の通りである。なお、ホワイトバンドはパターンのトップ部分の寸法よりもボトム部分の寸法の方が大きいときに確認される。ホワイトバンドの幅はトップ部分とボトム部分との寸法差であり、テーパ形状の度合いを示す。ホワイトバンドの幅が小さいほどパターンの垂直性が高く良好である。
○:ホワイトバンドの幅が小さい
△:ホワイトバンドの幅が中程度
×:ホワイトバンドの幅が大きい
表1の結果から、各実施例の感光性組成物はいずれも解像性に優れることがわかる。
【0080】
比較例3の感光性組成物を用いて形成された嵩上げ膜の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果と比較例6の感光性組成物を用いて形成された嵩上げ膜の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果との比較から、構成単位(a1)の比率を上げることにより、ホワイトバンドの幅が小さくなり、感光性組成物のアルカリ可溶性が向上し、解像性が向上することがわかる。
【0081】
実施例1、4、7、8及び比較例6の感光性組成物を用いて形成された嵩上げ膜の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果から、構成単位(a3)が付加されたアルカリ可溶性ポリマーを含む実施例1、4、7の感光性組成物は、構成単位(a3)が付加されていないアルカリ可溶性ポリマーを含む比較例6の感光性組成物に比べ、アルカリ可溶性が向上し解像性が改善していることがわかる。
但し、実施例8について、構成単位(a3)の比率を上げすぎると、溶解性が速くなり、スペース部分の寸法が広がってしまうため、アルカリ可溶性ポリマーにおける構成単位(a3)の比率は20質量%を超えないのが好ましい。
【0082】
実施例3、4、5、及び12の感光性組成物においては、いずれもアルカリ可溶性ポリマーにおける構成単位(a3)の比率が12.5質量%であり、感光剤の添加量が異なる組成物である。実施例3、4、5、及び12の感光性組成物を用いて形成された嵩上げ膜の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果から、感光剤の添加量が5質量%以上、好ましくは7.5%質量以上であることにより、より解像性に優れる感光性組成物が得られることがわかる。
【0083】
<残膜率の評価>
現像前に測定した嵩上げ膜の膜厚に対する、現像後に測定した嵩上げ膜の膜厚の割合である。嵩上げ膜の膜厚は、触針式表面形状測定器(Dektak150、株式会社アルバック製)を用いて測定した。各評価基準は、以下の通りである。
○:残膜率が90%以上。
△:残膜率が90%未満。
【0084】
実施例1、4、6、8及び比較例6の感光性組成物(構成単位(a1)の比率が20質量%で、感光剤の添加量が10質量%と同じであるが、構成単位(a3)の比率が互いに異なるアルカリ可溶性ポリマーを含む。)を用いて嵩上げ膜を形成した場合の残膜率を表2に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
実施例1、2、9、及び10の感光性組成物(構成単位(a3)の比率は10質量%と同じアルカリ可溶性ポリマーを含むが、感光剤の添加量が互いに異なる。)を用いて嵩上げ膜を形成した場合の残膜率を表3に示す。
【0087】
【表3】
【0088】
実施例3、4、5、及び12の感光組成物(構成単位(a3)の比率は12.5質量%と同じであるアルカリ可溶性ポリマーを含むが、感光剤の添加量が互いに異なる。)を用いて嵩上げ膜を形成した場合の残膜率を表4に示す。
【0089】
【表4】
【0090】
実施例6、7、及び11の感光性組成物(構成単位(a3)の比率は15質量%と同じであるアルカリ可溶性ポリマーを含むが、感光剤の添加量が互いに異なる。)を用いて嵩上げ膜を形成した場合の残膜率を表5に示す。
【0091】
【表5】
【0092】
表2の結果から、構成単位(a3)の比率が小さいほど感光性組成物を用いて形成される嵩上げ膜の現像液に対する耐性が増し、残膜率が上がることがわかる。また、表2〜表5から、感光剤の添加量が5質量%以上、より好ましくは7.5質量%以上であることにより、感光性組成物を用いて形成される嵩上げ膜の現像液に対する耐性が増し、残膜率が上がることがわかる。また、構成単位(a3)の比率が大きくなるほど残膜率が低下する傾向にあるが、感光剤の添加量を多くすることにより、残膜率の低下を抑制できることがわかる。
【符号の説明】
【0093】
10 基板
11 塗布膜

図1
図2