(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材上の少なくとも一部に、前記基材と等色の第1の色を有し、基カラー画像の連続階調に対応したレリーフ形状が形成された凸画線が第1の方向に沿って所定のピッチで万線状に配列された凸様模様と、
前記凸様模様の上に、潜像要素とカモフラージュ要素とが隣接し、1本の画線として構成された有色画線が、前記第1の方向に沿って前記凸画線と同一ピッチで万線状に配列された有色万線模様が形成され、
前記潜像要素は、
i)前記基材及び前記第1の色とは異なるプロセスカラーから成る無彩色の第2の色及び前記基カラー画像の色に対応した有色の第3の色を有し、又は
ii)前記基材及び前記第1の色とは異なる前記基カラー画像の色に対応した特色の第5の色を有し、
前記カモフラージュ要素は、
前記i)の場合、前記第2の色及び前記第3の色とは補色のプロセスカラーから成る第4の色を有し、かつ、前記第3の色を有する前記潜像要素に隣接した位置に、前記第4の色を備え、
前記ii)の場合、前記第5の色とは補色の特色から成る第6の色を有し、
前記第3の色と前記第4の色の混色又は前記第5の色と前記第6の色の混色は、無彩色であり、
前記凸画線と前記有色画線は少なくとも一部が重なり、複数配置された前記潜像要素により潜像模様が形成され、
前記基材表面に対して、真上からの観察では前記有色万線模様が一様な前記第2の色として視認され、前記基材表面に対して斜めから観察すると、前記カモフラージュ要素が前記凸画線に遮蔽され、前記潜像模様が前記基カラー画像と同じフルカラーの階調を有して視認できることを特徴とするカラー特殊潜像模様形成体。
基材上の少なくとも一部に、前記基材と等色の凸画線が第1の方向に沿って所定のピッチで万線状に配列された凸様模様と、前記凸様模様の上に、前記凸画線とは異なる色で、補色関係を有する潜像要素とカモフラージュ要素から成る有色画線が前記第1の方向に沿って前記凸画線と同一ピッチで万線状に配列された有色万線模様が形成され、前記基材表面に対して斜めの観察角度のみで前記潜像要素により構成された潜像模様が視認可能なカラー特殊潜像模様の作製方法であって、
前記潜像模様の基カラー画像を作製又は外部から取得する基カラー画像設定工程と、
前記基カラー画像を複数の領域に区分けし、前記領域ごとに濃度の平均化を行い、領域平均化画像を生成する領域平均化工程と、
前記領域平均化画像を前記凸様模様のために多値モノクロ画像に変換した第1の多値モノクロ画像と前記第1の多値モノクロ画像を階調反転した第2の多値モノクロ画像とを作製する多値モノクロ画像生成工程と、
前記凸様模様のための異なる二つのパターンファイルを作製し、前記第1の多値モノクロ画像及び前記第2の多値モノクロ画像にそれぞれ適応し、ポジ状の第1−1の2値画像及びネガ状の第1−2の2値画像を作製する第1の2値画像生成工程と、
前記第1−1の2値画像を構成しているポジ要素と前記第1−2の2値画像を構成しているネガ要素が隣接するように合成する凸様模様生成工程と、
前記基材表面に対して真上から観察した際に、前記潜像模様を不可視化するためのカモフラージュ要素用として、前記領域平均化工程後の画像の各々の画素の濃度値を示す基多値カラー情報を階調反転させた第1−1の多値カラー情報と色相反転させた第1−2の多値カラー情報を作製して、50%の濃度値に平均化して合成することにより第1の多値カラー情報を備えた第1の多値カラー画像を生成し、前記潜像要素用として、前記領域平均化工程後の画像の各々の画素の濃度値を示す基多値カラー情報を明度反転させた第2−1の多値カラー情報を作製して、前記基多値カラー情報と50%の濃度値に平均化して合成することにより第2の多値カラー情報とした第2の多値カラー画像を生成する多値カラー画像生成工程と、
前記第1の多値カラー画像と前記第2の多値カラー画像それぞれに対して、前記第1の方向に配列されたスリットマスクを適応させて前記潜像要素を備えた第1の多値カラー画像及び前記カモフラージュ要素を備えた第2の多値カラー画像を生成するマスク処理工程と、
前記第1の多値カラー画像を構成している潜像要素及び前記第2の多値カラー画像を構成しているカモフラージュ要素が隣接するように合成する有色万線模様生成工程と、を備えたカラー特殊潜像模様の作製方法。
前記領域平均化工程の後に、前記領域平均化画像に対して、前記基材表面の水平方向に対して各領域の境界を目立たなくさせるためのボカシ処理を行う水平ボカシ処理工程を備えたことを特徴とする請求項4から6までのいずれか1項に記載のカラー特殊潜像模様の作製方法。
前記多値カラー画像生成工程において、第1−1の多値カラー情報と色相反転させた第1−2の多値カラー情報及び第2−1の多値カラー情報の基となる画像が、前記領域平均化画像又は前記水平ボカシ処理工程で生成された水平ボカシ処理画像であることを特徴とする請求項7記載のカラー特殊潜像模様の作製方法。
前記請求項4から8までに記載のカラー特殊潜像模様の作製方法により作製された前記凸様模様のデータを基に前記基材上に形成する凸様模様形成工程と、前記基材上に形成された前記凸様模様上に前記有色万線模様のデータを基に形成する有色万線模様形成工程と、を備えたカラー特殊潜像模様形成体の作製方法。
基材上の少なくとも一部に、前記基材と等色の凸画線が第1の方向に沿って所定のピッチで万線状に配列された凸様模様と、前記凸様模様の上に、前記凸画線とは異なる色で、補色関係を有する潜像要素とカモフラージュ要素から成る有色画線が前記第1の方向に沿って前記凸画線と同一ピッチで万線状に配列された有色万線模様が形成され、前記基材表面に対して斜めの観察角度のみで前記潜像要素により構成された潜像模様が視認可能なカラー特殊潜像模様の作製方法であって、
前記潜像模様の基カラー画像を作製又は外部から取得する基カラー画像設定工程と、
前記基カラー画像を複数の領域に区分けし、前記領域ごとに濃度の平均化を行い、領域平均化画像を生成する領域平均化工程と、
前記領域平均化画像を前記凸様模様のために多値モノクロ画像に変換した第1の多値モノクロ画像と前記第1の多値モノクロ画像を階調反転した第2の多値モノクロ画像とを作製する多値モノクロ画像生成工程と、
前記凸様模様のための異なる二つのパターンファイルを作製し、前記第1の多値モノクロ画像及び前記第2の多値モノクロ画像にそれぞれ適応し、ポジ状の第1−1の2値画像及びネガ状の第1−2の2値画像を作製する第1の2値画像生成工程と、
前記第1−1の2値画像を構成しているポジ要素と前記第1−2の2値画像を構成しているネガ要素が隣接するように合成する2値画像の第1の合成工程と、
前記領域平均化工程後の画像から特定の色域を抽出した第3の多値モノクロ画像を生成する色域抽出工程と、
前記第3の多値モノクロ画像に対して、濃度値を異ならせたトーンカーブを適用して階調を変換した多値モノクロポジ画像及び多値モノクロネガ画像を生成する多値モノクロ階調変換工程と、
前記多値モノクロポジ画像及び前記多値モノクロネガ画像に対して下部用のパターンファイルを適用して第2−1及び第3−1の2値画像を生成し、前記多値モノクロポジ画像及び前記多値モノクロネガ画像に対して上部用のパターンファイルを適用して第2−2及び第3−2の2値画像を生成する特色用2値画像生成工程と、
前記第2−1の2値画像と前記第2−2の2値画像を合成して第2の2値画像を生成する2値画像の第2の合成工程と、
前記第3−1の2値画像と前記第3−2の2値画像を合成して第3の2値画像を生成する2値画像の第3の合成工程と、
前記第2の2値画像と前記第3の2値画像を合成して特色用の有色万線模様を生成する特色用有色万線模様生成工程と、を備えたカラー特殊潜像模様の作製方法。
前記領域平均化工程の後に、前記領域平均化画像に対して、前記基材表面の水平方向に対して各領域の境界を目立たなくさせるためのボカシ処理を行う水平ボカシ処理工程を備えたことを特徴とする請求項10から12までのいずれか1項記載のカラー特殊潜像模様の作製方法。
前記請求項10から13までに記載のカラー特殊潜像模様の作製方法により作製された凸様模様のデータを基に基材上に形成する凸様模様形成工程と、基材上に形成された凸様模様上に特色用の有色万線模様のデータを基に形成する特色用の有色万線模様形成工程と、を備えたカラー特殊潜像模様形成体の作製方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
【0029】
図1は、本発明が対象とするカラー特殊潜像模様形成体(以下「カラー形成体」という。)(1)と、その基カラー画像(15)の例である。
図1では、旅券冊子を例として、表紙と裏表紙の間に複数の記録用のページがとじ部により一体化されており、表紙の見返しページ(基材)(2)には、基カラー画像(15)から得られた所有者の顔画像(3)と個人情報(4)、冊子番号(5)、更には本発明の特徴点であるカラー特殊潜像模様(以下「カラー特殊潜像」という。)(6)が形成されている。なお、
図1に示した旅券冊子は一例に過ぎず、必ずしも同じようなデザイン(配置)である必要はない。
【0030】
カラー特殊潜像(6)の大きさについては、基材(2)全体にわたって形成してもよいが、実際の活用形態を考慮すると、
図1に示したように、基材(2)上の一部に形成することが好ましい。したがって、大きさについては、他の模様に影響を及ぼさなければ、特に限定はなく、基材(2)上の少なくとも一部に配置されることとなる。
【0031】
図2は、カラー特殊潜像(6)の構成を示す展開図である。本発明におけるカラー特殊潜像(6)は、凸形状の凸画線(9)が万線状に配置された凸様模様(8)と、その凸様模様(8)の上に印刷された有色画線(11)が万線状に配置された有色万線模様(10)から成る。なお、本発明における「万線状」とは、画線が一定の規則に従って複数配列されている状態をいう。この「万線状」を構成する画線は、好ましくは直線となるが、基材(2)を傾けた際に潜像模様が視認できる設計が可能であれば曲線でも構わない。以下は、直線として説明する。
【0032】
凸様模様(8)を形成するための基材(2)については、凸画線(9)が形成できれば特に限定はない。凸画線(9)を、基材(2)自体を変形(加工)させて形成する場合には、例えば紙基材(2)として、公知のすき入れやエンボス、又はレーザ加工によって形成することができる。具体的な紙としては、上質紙、コート紙、アート紙等、特に限定はないが、平滑性の高い紙が好ましい。また、凸画線(9)をインキによって形成する場合には、前述した紙基材(2)でもよいが、プラスチックのような、より平滑性の高い材料が好ましい。インキが付与可能であれば、金属でもよい。レーザ加工を用いるとプラスチックや金属でも形成可能である。
【0033】
このカラー形成体(1)の効果を
図3に示す。カラー形成体(1)に対して、
図3(a)のように、観察者の視点が基材(2)に対して垂直となる真上からの第1の観察角度(L1)の場合には、カラー特殊潜像(6)は、有色万線模様(10)が視認でき、
図3(b)に示すように、基材(2)を斜めから観察した第2の観察角度(L2)では、背景部(18)に囲まれたカラーの連続階調を備えた潜像模様(7)を視認できる。
【0034】
次に、各々の模様について説明する。
図4は、凸様模様(8)の構成を説明する平面図である。凸様模様(8)は、凸画線(9)が第1の方向(S1:図中→)に万線状に配置されている。第1の方向(S1)は、
図4では図面に対して垂直方向となっているが、特に限定されるものではなく、決められた同じ方向を第1の方向(S1)とする。
【0035】
凸様模様(8)を構成する凸画線(9)は、基材(2)の色と等色の第1の色を有する。また、視認原理の詳細は後述するが、基材(2)を第2の観察角度(L2)から観察した場合に潜像模様(7)を出現させるために、凸画線(9)の一方の斜面が他方の斜面を遮蔽しなければならないことから、この凸画線(9)は、不透明又は半透明のような透過率の低い特性を有しなければならない。さらに、出現する潜像模様(7)がフルカラーの連続階調を備えた画像であるため、そのカラーバランスを崩さないために、基材(2)と等色である必要がある。潜像模様(7)のカラーバランスを崩さないためにも、第1の色は白色系であることが好ましい。
【0036】
凸様模様(8)を構成している複数の凸画線(9)は、
図4の一部拡大図におけるX−X'断面及びX0−X0'断面を示した図である
図5に示すように、1本の画線内において位相のずれの距離(Z)が生じたレリーフ形状を有している。このレリーフ形状は、
図4(b)の四角囲いの領域の拡大図である
図6(a)に示すように、背景部(18)と潜像模様(7)を形成している部分については、基カラー画像(15)の階調に対応して、細かくレリーフが設けられている。このレリーフの役割は、カラー特殊潜像(6)において明暗差を表現するためのものであり、後述する凸画線(9)上に形成される有色画線(11)は直線状であるため、レリーフ形状の凸画線(9)に有色画線(11)の重なる部分の幅を調整することで、潜像模様(7)の連続階調を表現する。詳細な配置関係及び具体的な作製方法については後述する。
【0037】
なお、このレリーフ形状については、
図6(a)に示すように、
図4(a)の黒実線に示した部分を形成する形状の他、
図6(b)に示すように2段階に位相がずれている場合は、2階調を表現可能であり、
図6(c)に示すように連続的に位相がずれている場合は、連続階調を表現可能である。
【0038】
図5の一部拡大図に示すレリーフ形状の位相のずれの距離(Z)は、有色画線(11)のピッチ(P)に対して1/2以下となる。その理由の詳細は後述するが、前述のとおり、凸画線(9)のレリーフ形状は、明暗差を表現するものであり、レリーフ形状における位相のずれの距離(Z)が最大となる箇所は、背景部(18)と潜像模様(7)との区分けの部分で、有色画線(11)のピッチ(P)に対して1/2である。基カラー画像(15)が連続階調となっていれば、潜像模様(7)も同様の連続階調を表現しなければならないため、有色画線(11)のピッチ(P)の1/2以下で、基カラー画像(15)の階調に対応して随時変化している。
【0039】
図5に示す凸画線(9)の高さ(H)については、特に限定されるものではないが、前述したような、カラー形成体(1)をセキュリティ印刷物とした場合、10μm〜100μmの範囲で形成されるのが好ましい。
【0040】
凸画線(9)の高さ(H)を100μmより高くすることも可能であるが、基材(2)の厚さや基材(2)を構成する材料、更には、画線をインキにより形成可能な高さを考慮すると、基材(2) が必要以上に厚くなり、加工効率が悪くなるという問題が生じるため、好ましくない。また、高さ(H)を10μmより低くすることも可能であるが、基材(2)を第2の観察角度(L2)から観察した場合に、他方の斜面を遮蔽することが困難となり、潜像模様(7)が明確に視認できなくなるため、好ましくない。
【0041】
また、凸画線(9)同士のピッチ(P)も、特に限定されるものではないが、カラー形成体(1)をセキュリティ印刷物とした場合、ピッチ(P)は、80μm〜1,000μmの範囲で形成されるのが好ましい。
【0042】
ピッチ(P)を1,000μmより広くすることも可能であるが、潜像模様(7)を付与するカラー特殊潜像(6)が大きくなり、カラー形成体(1)を構成するデザイン、例えば、他の印刷図柄の画像分解能が下がるので好ましくない。また、ピッチ(P)を80μmより狭くすることは、製造上困難であり、好ましくない。
【0043】
凸画線(9)の画線幅(W1)については、ピッチ(P)に対応して形成される。視認性の良好な潜像模様(7)を形成するためには、ピッチ(P)に対してほぼ1/2の凸画線(9)の画線幅(W1)が好ましく、例えば、ピッチ(P)が80μmのときの凸画線(9)の画線幅(W1)は、40μmであり、ピッチ(P)が1,000μmのときの凸画線(9)の画線幅(W1)は、500μmというように、ピッチ(P)に対して凸画線(9)の画線幅(W1)を選定し、潜像模様(7)の視認性を鑑みて適宜調整すればよい。
【0044】
次に、凸様模様(8)の上に印刷された有色万線模様(10)について説明する。
図7は、有色万線模様(10)の平面図及びその一部拡大図である。有色万線模様(10)は、
図7(a)に示すように、有色画線(11)が第1の方向(S1)に万線状に配置されて成り、第1の観察角度(L1)から観察すると同色の一様な万線模様として視認できる。この肉眼で一様に見える色を第2の色とすると、有色万線模様(10)は、第2の色を有していることとなる。
【0045】
有色画線(11)は、
図7(a)の一部拡大図である
図7(b)に示すように、第3の色を有する潜像要素(14)と、第3の色とは補色関係の第4の色を有するカモフラージュ要素(13)を備えている。このカモフラージュ要素(13)と潜像要素(14)は対を成して配置されており、潜像模様(7)の基となる基カラー画像(15)におけるカラーバランスに合わせて、潜像模様(7)においてフルカラー表現したい箇所に、このカモフラージュ要素(13)と潜像要素(14)を配置することとなり、
図7(b)に示すカラー表示域(C)に該当する。
【0046】
また、1本の有色画線(11)は、前述のフルカラー表現しない箇所について、具体的には、背景部(18)や人物の髪の毛やまゆ毛の無彩色で表現するところは、モノトーン表示域(M)として、カモフラージュ要素(13)と潜像要素(14)の混合色の第2の色で形成される。有色画線(11)については、微細(具体的には後述する。)な幅の要素であるため、カラー表示域(C)については、第4の色のカモフラージュ要素(13)と第3の色の潜像要素(14)から成っているが、肉眼では二つの色が混色した状態で視認されるため、モノトーン表示域(M)の色と等色として視認され、結果的に、有色画線(11)は、1本が1色によって形成されているかのように視認されることとなる。
【0047】
なお、モノトーン表示域(M)については、有色画線(11)が1本で形成されているように見えるが、カラー表示域(C)では第4の色で形成されているカモフラージュ要素(13)が、モノトーン表示域(M)では、無彩色の第2の色で形成され、またカラー表示域(C)では第3の色で形成されている潜像要素(14)が、モノトーン表示域(M)では、無彩色の第2の色で形成されている。実際にはモノトーン表示域(M)において、カモフラージュ要素(13)と潜像要素(14)の双方が第2の色で形成されているため、それぞれを識別できず、1本で形成されているように見えるものである。したがって、有色画線(11)は、カモフラージュ要素(13)と潜像要素(14)で形成されて成る。
【0048】
以上のことから、有色万線模様(10)が一様な第2の色で視認されるということは、前述のとおり、第3の色と第4の色の混合色が第2の色となり、モノトーン表示域(M)を構成している有色画線(11)は、第2の色として識別される。
【0049】
このカモフラージュ要素(13)及び潜像要素(14)のカラー表示域(C)とモノトーン表示域(M)との境界については、肉眼では識別ができないため、潜像模様(7)の境界線で明瞭に分かれていてもよいが、より違和感のないようにするには、
図7(b)のように、潜像模様(7)の境界を挟んだ両側が第2の色、いわゆる第3の色と第4の色の混合色によるグラデーションとなっていることが好ましい。
【0050】
作製方法の詳細は後述するが、潜像要素(14)は、基カラー画像(15)のフルカラーの連続階調に対応した色彩を有しているため、1本の潜像要素(14)内でも色彩が変化することもあるが、複数の潜像要素(14)においても各々異なる色となり、潜像要素(14)を構成する色を総称して第3の色という。なお、本発明において「基カラー画像(15)のフルカラーの連続階調に対応した色彩」とは、基カラー画像(15)の各画素の色彩と、有色万線模様(10)を構成している有色画線(11)の同じ位置については、同じ色彩を有することをいう。同様に、カモフラージュ要素(13)は、潜像要素(14)と補色関係を有していることから、複数の潜像要素(14)が基カラー画像(15)のフルカラーの連続階調に対応して各々異なる色を有していることにあわせ、カモフラージュ要素(13)についても、各々異なる色を有しているが、総称して第4の色という。
【0051】
潜像要素(14)が基材(2)を第2の観察角度(L2)から観察した場合に潜像模様(7)を形成するための要素であることに対し、カモフラージュ要素(13)は、第1の観察角度(L1)から観察した場合に潜像模様(7)を視認できないようにするための要素である。そのため、カモフラージュ要素(13)の第4の色は、潜像要素(14)の第3の色と補色関係であることが必要となる。具体的には、1色で構成されているモノトーン表示域(M)の有色画線(11)は、潜像模様(7)の中の無彩色で構成されている領域を構成するものである。この無彩色は、グレー色及び黒色のように、彩度を有さない色である。
【0052】
本発明の潜像模様(7)は、人物の顔画像(3)を主な対象としていることから、人物の顔を例にとれば、髪の毛やまゆ毛がこの無彩色により構成されている領域となる。カモフラージュ要素(13)と潜像要素(14)は補色関係を有しているが、補色を混合するとグレーの無彩色となる。したがって、人物の顔画像(3)における色彩を有する領域を不可視化するために、髪の毛やまゆ毛の無彩色に合わせることで、潜像模様(7)が全て無彩色となっているため、目視での識別ができなくなっている。さらに、潜像模様(7)の周囲の背景部(18)をモノトーン表示域(M)として無彩色の第2の色で形成することで、潜像模様(7)と背景部(18)との識別もできなくなり、完全に潜像模様(7)を不可視化することができる。
【0053】
潜像模様(7)と背景部(18)との識別については、前述した凸画線(9)の一部に形成されているレリーフ部(12)で行うこととなる。レリーフ部(12)により、凸画線(9)は、画線の一部で位相が異なる。この位相の差により、明度の差を表現する。したがって、この明度の差により、潜像模様(7)と背景部(18)とが識別される。
【0054】
有色画線(11)同士のピッチ(P)は、凸画線(9)同士のピッチ(P)に等しく、80μm〜1,000μmの範囲で形成されるのが好ましい。
【0055】
また、有色画線(11)の画線幅(W2)は、少なくとも10μmより広く、上限は、ピッチ(P)に対して、9/10の範囲の有色画線(11)の画線幅(W2)で形成される。これは、仮に、有色画線(11)の画線幅(W2)がピッチ(P)に対して9/10より広いと、凸画線(9)のレリーフ部(12)において有色画線(11)が重なるので、コントラストが得られず潜像模様(7)が視認できないからである。また、有色画線(11)の画線幅(W2)が10μmより狭いと、凸画線(9)と有色画線(11)の重なる面積が小さいため潜像模様(7)の視認性が低下するからである。
【0056】
ただし、潜像模様(7)のカラーバランスを考慮すると、ピッチ(P)のほぼ1/2の有色画線(11)の画線幅(W2)であることが好ましい、いわゆる有色画線(11)の画線幅(W2)と、有色画線(11)同士の間の非画線の幅(W3)はほぼ等しくなる。
【0057】
また、有色画線(11)の画線幅(W2)におけるカモフラージュ要素(13)と潜像要素(14)のそれぞれの画線幅(W2−1、W2−2)の割合については、ほぼ1/2ずつで等しくなる。前述のとおり、カモフラージュ要素(13)と潜像要素(14)は補色関係を有し、二つの要素の混合色が無彩色となることから、仮に、各要素の画線幅(W2−1、W2−2)が異なると、混合色が無彩色とはならなくなって、第1の観察角度(L1)からの観察においても潜像模様(7)が基カラー画像(15)の色彩又は基カラー画像(15)の補色の色彩で若干視認できてしまい、そもそもの潜像効果を失ってしまう。
【0058】
有色画線(11)を形成する方法としては、公知のIJP方式、オフセット印刷方式、フレキソ印刷方式等、凸様模様(8)上に形成できれば特に限定はない。ただし、潜像模様(7)の鮮明なフルカラーの連続階調を表現するためには、凸画線(9)との高い刷り合せ精度を要することから、IJP方式等の無版印刷機(デジタル印刷機)が好ましい。
【0059】
本発明のカラー特殊潜像(6)をIJP方式で形成することにより、後述する各模様(8、10)のデータをカラー形成体(1)1枚ごとに異ならせて可変情報として付与することもできる。特に、基カラー画像(15)を人物(顔)とすることで、
図1に示したような旅券冊子として十分活用できることとなる。
【0060】
有色画線(11)が有している第2の色、第3の色及び第4の色については、プロセスカラーのシアン、マゼンタ及びイエローを用いてもよいが、所望するそれぞれの色を、各種顔料等を混合した特色により形成してもよい。プロセスカラーを用いた場合にはシアン、マゼンタ及びイエローの3色のカラーバランスが品質を左右する。一方、特色を用いた場合は2色で構成するため、プロセスカラーのカラーバランスの不安定要因が緩和されるという利点がある。
【0061】
ここで本発明における「フルカラー」の意味を説明する。前述のとおり、有色画線(11)を形成するための色については、プロセスカラーの3色を用いると、基カラー画像(15)と同じ色彩をフルカラーで表現できる。ただし、本発明のカラー特殊潜像(6)の対象とする基カラー画像(15)は人物(顔)であることから、髪の毛やまゆ毛を無彩色で表現し、残りの色はほぼ肌色となることから、特色2色を用いるとカラー特殊潜像(6)を形成することができる。したがって、プロセスカラーと特色のどちらを用いてカラー特殊潜像(6)を形成するかは、作製者が適宜決めればよいが、特色を用いた場合には、一般的なフルカラーとはならない。ただし、特色を用いた場合でも、限りなくフルカラーに近い模様として視認できるため、本発明における「フルカラー」とは、連続階調を有するカラー模様のことをいい、一般的なプロセスカラーを用いた連続階調の模様と、特色を用いた連続階調の模様の両方が該当するものとする。この特色を用いた有色万線模様(10)については、後述する。
【0062】
次に、有色画線(11)と凸画線(9)の配置関係について説明する。
図8及び
図9は、凸画線(9)と、その上に形成する有色画線(11)の配置関係を示す。
図9(a)は、
図8(b)に示すX1−X1'断面であり、モノトーン表示域(M)にあって、基カラー画像(15)の「白色背景部」にある場合、第2の観察角度(L2)から観察した際、有色画線(11)の中心線(T2)が凸画線(9)の中心線(T1)に対して、凸画線(9)の画線幅(W1)の1/2だけ観察者側の奥方向にずれていることから、少なくともカモフラージュ要素(13)及び潜像要素(14)が凸画線(9)の中心線(T1)に対して、観察者から見て反対側の斜面に配置され、凸画線(9)に遮蔽されることで視認不可能となっている。したがって、観察者には、第1の色、すなわち白色系の色として認識される。
【0063】
一方、
図9(b)は、
図8(b)に示すX2−X2'断面であり、カラー表示域(C)にあって、基カラー画像(15)の「肌色顔部」にある場合、第2の観察角度(L2)から観察した際、有色画線(11)の中心線(T2)が凸画線(9)の中心線(T1)にほぼ等しいことから、有色画線(11)は、凸画線(9)の上に形成され、少なくともカモフラージュ要素(13)が凸画線(9)に遮蔽され、視認不可能となっている。したがって、凸画線(9)の中心線(T1)に対して、観察者から見て反対側の斜面に配置され、潜像要素(14)は観察者から見て手前の凸画線(9)の斜面に配置される。これにより、観察者には潜像要素(14)の第3の色、すなわち肌色として認識される。
【0064】
ただし、前述したように、潜像模様(7)は連続階調画像であるため、微妙な階調差を表現しなければならないことから、凸画線(9)は、連続階調に対応した微妙な曲線を有しているため、カモフラージュ要素(13)と潜像要素(14)が完全に中心線(T1)を境に区分けされて配置される、いわゆる凸画線(9)の中心線(T1)と有色画線(11)の中心線(T2)が同じ位置に配置されないところも存在する。
【0065】
すなわち、有色画線(11)は直線形状を有しているが、凸画線(9)は、連続階調を表現するため、基カラー画像(15)の階調に対応した曲線を有している。凸画線(9)の曲線における最大の位相のずれの距離(Z)は、有色画線(11)の画線幅(W2)のほぼ1/2の距離である。この基カラー画像(15)の連続階調に対応して凸画線(9)の形状を形成する方法は後述する。この凸画線(9)の曲線形状により、直線形状に形成されている有色画線(11)の潜像要素(14)が、凸画線(9)の中心線(T1)に対して、観察者から見て反対側の斜面(
図8(b)中上側)に配置されているところもある。この潜像要素(14)と凸画線(9)との位置関係が微細な連続階調を表現していることとなる。
【0066】
位相のずれの距離(Z)については、無彩色の第2の色における明暗の変化及びカモフラージュ要素(13)の遮蔽を考慮すると、有色画線(11)の画線幅(W2)のほぼ1/2に該当する距離とすることが好ましい。仮に1/2より狭い距離又は広い距離の位相のずれ量とした場合、潜像模様(7)のカラーバランスが崩れ、基カラー画像(15)に忠実なフルカラーの連続階調を表現できなくなってしまう。
【0067】
次に、プロセスカラーを用いずに、特色を用いた有色万線模様(10)について説明する。特色を用いて有色万線模様(10)を形成する場合には、プロセスカラーの3色を用いる場合よりも1色少なく、2色によって形成することが可能となる。前述のとおり、本発明の基カラー画像(15)について、人物(顔)を対象とした場合、肌色の主成分が赤血球のヘモグロビンの色、すなわち赤色であることから、色空間の中の赤成分(R成分)とその近傍色により作製したインキを用いることができる。このインキにより形成された潜像要素(14)の肌色を第5の色という。
【0068】
特色の第5の色を用いて潜像要素(14)を形成した場合においても、前述のプロセスフルカラーを用いた場合と同様に、カモフラージュ要素(13)は、潜像要素(14)の第5の色と補色関係を有する第6の色を有する。この第6の色についても、プロセスカラーで作製するものではなく、第5の色と同様に、特色により形成されたものである。
【0069】
特色による有色画線(11)についても、画線幅(W)、ピッチ(P)、配置関係等、構成は前述したプロセスカラーを用いて形成する場合と同様であるため、詳細は省略する。また、作製方法については、後述する。
【0070】
次に、本発明のカラー形成体(1)の作製方法について説明する。なお、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
【0071】
(カラー形成体の作製装置)
本発明は、写真等のフルカラー階調を有する基カラー画像(15)を、画線を用いて構成されているカラー特殊潜像(6)から成る印刷模様内に、フルカラー階調のイメージとして埋め込み、そのままのフルカラー階調のイメージとして出現することが可能なカラー形成体(1)作製方法に関するものである。本実施の形態におけるカラー形成体(1)用のデータの作製装置は、
図10のブロック図に示されるように、入力手段(M1)、編集手段(M2)、出力手段(M3)、表示手段(M4)、通信インターフェース(M5)及びデータベース(M6)を少なくとも備えている。
【0072】
入力手段(M1)は、カラー画像入力手段(M1a)と情報入力手段(M1b)とで構成され、カラー画像入力手段(M1a)における基カラー画像(15)の入力は、デジタルカメラ、スキャナ等、特に限定されるものではない。また、データベース(M6)又は通信インターフェース(M5)によってあらかじめ登録されたデータベースサーバから画像、テキスト等を得ることもできる。
【0073】
一方、情報入力手段(M1b)は、キーボード等からの入力、また、データベース(M6)と同じパソコン内に登録されている数値情報、通信インターフェース(M5)によってあらかじめ入力された外部のデータベースサーバから数値情報を得ることができる。この数値情報とは、後述する第1の画像、第2の画像及び第3の画像に関わる出力解像度等である。
【0074】
編集手段(M2)は、前処理画像生成手段(M2a)と、万線模様生成手段(M2b)と、凸様模様生成手段(M2c)とで構成されている。通信インターフェース(M5)又はデータベース(M6)から得られたカラー画像、数値情報、パターンファイル等により、前処理画像生成手段(M2a)では、前処理画像が生成され、万線模様生成手段(M2b)では、有色万線模様(10)が生成され、凸様模様生成手段(M2c)では、凸様模様(8)が生成される。
【0075】
出力手段(M3)は、UV・インクジェットプリンタ等のコンピュータからの画像を印刷可能な印刷装置等であり、特に限定されるものではない。表示手段(M4)は、パソコンのモニタ、専用のモニタ等、特に限定されるものではない。また、通信インターフェース(M5)は、USB、RS−232C、IEEE1394等、特に限定されるものではない。
【0076】
次に、カラー形成体(1)の作製方法について、
図11を用いて詳細に説明する。データの作製方法については、一点鎖線に囲まれた大きく三つの処理フローから構成されている。前処理フローは、前処理画像生成手段(M2a)において実行され、有色万線模様生成フローは、万線模様生成手段(M2b)において実行され、凸様模様生成フローは、凸様模様生成手段(M2c)において実行される。
【0077】
(前処理フロー)
まず、前処理フローについて説明する。カラー画像を設定するStep1は、基カラー画像設定工程において、例えば、デジタルカメラ等から入力されたカラー画像を設定する。本実施の形態は、
図12に示された顔写真から成る基カラー画像(15)として、例えば24bitRGB形式といった多値カラー画像を用い、画像解像度を1,200dpi、画像サイズを1,535×1,535Pixelとした。
【0078】
なお、必要に応じてStep1−2の基カラー画像(15)の彩度を上げる彩度調整工程を加えてもよい。彩度を上げる理由としては、
図3(b)で示した基材(2)を傾けて観察した際に、より鮮やかにフルカラー画像を現出させるためである。
【0079】
次に、Step2の領域平均化処理工程では、基カラー画像(15)を領域平均化処理によって多値カラー画像から成る領域平均化画像(19)に変換する。領域平均化処理は、
図13に示したように、基カラー画像(15)中の横画素数(v)と縦画素数(h)の領域内における近傍の画素濃度で平均値にすることである。本実施の形態では、横画素数(v)を24Pixel、縦画素数(h)を48Pixelとした。なお、縦画素数(h)は、カラー特殊潜像(6)のピッチ(P)に相当するものである。
【0080】
次に、Step2で変換された領域平均化画像(19)に水平ボカシ処理を施すことで、
図14に示したように、横画素数(v)の方向に所定の画素数の近傍をぼかした多値カラー画像から成る水平ボカシ処理画像(20)に変換するStep2−2の水平ボカシ処理工程を加えてもよい。水平ボカシ処理は後述する万線模様と凸様模様の高品質化のための処理であり、必ずしも必要とされる処理ではない。本実施の形態では、横画素数(v)の方向に24Pixelの水平ボカシ処理を施した。
【0081】
領域平均化画像(19)又は水平ボカシ処理画像(20)は、万線模様生成フロー及び凸様模様生成フローに移行し、各々の処理が自動的に実行される。
【0082】
(凸様模様生成フロー)
次に、凸様模様生成フローについて説明する。Step3は、多値モノクロ画像生成工程として、二つの多値モノクロ画像を生成する。一つ目の画像は、Step2で変換された領域平均化画像(19)又はStep2−2で変換された水平ボカシ処理画像(20)が、
図15(a)に示したように、例えば8bitグレ―スケール形式といった第1の多値モノクロ画像(21)に変換される。
【0083】
二つ目の画像は、一つ目の画像として生成された第1の多値モノクロ画像(21)の階調反転、すなわち各々の画素濃度値(グレーレベル)が反転され、
図15(b)に示したように、第1の多値モノクロ画像(21)に対してネガ状の第2の多値モノクロ画像(22)に変換される。例えば、第1の多値モノクロ画像(21)が8bit形式であった場合、多値情報(D
0)の画像全体の各々の画素の濃度値(0〜255のグレーレベル)を数式1で変換することによって階調反転された多値情報(D
1)となる。
【0085】
次に、Step4では、第1の2値画像生成工程として、まず、Step3で生成された第1の多値モノクロ画像(21)に、
図16に示したような第1のパターンファイル(A)を適用する。第1のパターンファイル(A)は、臨界値配列画像とも呼ばれる多値画像であり、縦の画素数は、Step2において近傍の画素濃度で平均値にする際に用いられた縦画素数(h)と等しく、本実施の形態では48Pixelとしている。第1のパターンファイル(A)が第1の多値モノクロ画像(21)全体に適用されることで、
図16に示したポジ状の第1−1の2値画像(23)が生成される。
【0086】
あわせてStep3で生成されたネガ状の第2の多値モノクロ画像(22)に、
図17に示したような第2のパターンファイル(B)を適用する。第2のパターンファイル(B)は、第1のパターンファイル(A)と同じく臨界値配列画像とも呼ばれる多値画像であり、縦の画素数は、Step2において近傍の画素濃度で平均値にする際に用いられた縦画素数(h)と等しく、本実施の形態では、48Pixelとしている。第2のパターンファイル(B)がネガ状の第2の多値モノクロ画像(22)全体に適用されることで、
図17に示したネガ状の第1−2の2値画像(24)が生成される。
【0087】
次に、Step5の凸様模様生成工程では、Step4で生成された第1−1の2値画像(23)と第1−2の2値画像(24)が合成され、
図18に示す第1の2値画像となる凸様模様(8)の基画像(25)が完成する。この凸様模様(8)の基画像(25)を印刷したものが
図2に示された凸様模様(8)である。この時、第1−1の2値画像(23)と第1−2の2値画像(24)の合成については、それぞれの画像を示す全体領域同士は同じ領域に配置されることとなるが、第1−1の2値画像(23)をポジ状に構成しているポジ要素(40)と、第1−2の2値画像(24)をネガ状に構成しているネガ要素(41)とは重ならず、
図18の一部拡大図に示した第1の2値画像のように、隣接して配置されていることとなる。
【0088】
(万線模様生成フロー)
次に、
図11の点線で囲われた万線模様生成フローについて説明する。Step6は多値カラー情報変換工程として、領域平均化画像(19)又は水平ボカシ処理画像(20)の基多値カラー情報(R
0,G
0,B
0)を、カモフラージュ要素(13)及び潜像要素(14)の基となる多値カラー情報に変換する。まず、カモフラージュ要素(13)用として、Step2で変換された領域平均化画像(19)又はStep2−2で変換された水平ボカシ処理画像(20)のいずれかの多値カラー画像の階調反転が行われる。例えば、領域平均化画像(19)又は水平ボカシ処理画像(20)が24bitRGB形式であった場合、基多値カラー情報(R
0,G
0,B
0)の画像全体の各々の画素の濃度値(0〜255のグレーレベル)を数式2で変換することによって階調反転された第1−1の多値カラー情報(R
1,G
1,B
1)となる。すなわち、基カラー画像(15)の基多値カラー情報(R
0,G
0,B
0)が、例えば、
図19(a)に示す画素の濃度値であったとき、階調反転された第1−1の多値カラー情報(R
1,G
1,B
1)は、
図19(b)に示す画素の濃度値に変換される。
【0090】
次に、Step2で変換された領域平均化画像(19)又はStep2−2で変換された水平ボカシ処理画像(20)のいずれかの多値カラー画像の色相反転が行われる。例えば、領域平均化画像(19)又は水平ボカシ処理画像(20)が24bitRGB形式であった場合、基多値カラー情報(R
0,G
0,B
0)の画像全体の各々の画素の濃度値(0〜255のグレーレベル)を数式3で変換することによって色相反転された第1−2の多値カラー情報(R
2,G
2,B
2)となる。すなわち、基カラー画像(15)の基多値カラー情報(R
0,G
0,B
0)が、例えば、
図19(a)に示す画素の濃度値であったとき、色相反転された第1−2の多値カラー情報(R
2,G
2,B
2)は、例えば、
図19(c)に示す画素の濃度値に変換される。
【0092】
次に、階調反転された第1−1の多値カラー情報(R
1,G
1,B
1)と、色相反転された第1−2の多値カラー情報(R
2,G
2,B
2)を用い、画像全体の各々の画素の濃度値(0〜255のグレーレベル)を数式4で変換して合成することによって平均化(50%合成)された第1の多値カラー情報(R
4,G
4,B
4)となる。すなわち、平均化された第1の多値カラー情報(R
4,G
4,B
4)は、例えば、
図19(e)に示す画素の濃度値に変換される。第1の多値カラー情報(R
4,G
4,B
4)を備えた画像が第1の多値カラー画像(26)となる。
【0094】
次に、潜像要素(14)用として、Step2で変換された領域平均化画像(19)又はStep2−2で変換された水平ボカシ処理画像(20)のいずれかの多値カラー画像の明度反転が行われる。例えば、領域平均化画像(19)又は水平ボカシ処理画像(20)が24bitRGB形式であった場合、基多値カラー情報(R
0,G
0,B
0)の画像全体の各々の画素の濃度値(0〜255のグレーレベル)を数式5で変換することによって明度反転された第2−1の多値カラー情報(R
3,G
3,B
3)となる。すなわち、基カラー画像(15)の基多値カラー情報(R
0,G
0,B
0)が、例えば、
図19(a)に示す画素の濃度値であったとき、明度反転された第2−1の多値カラー情報(R
3,G
3,B
3)は、例えば、
図19(d)に示す画素の濃度値に変換される。
【0096】
次に、Step2で変換された領域平均化画像(19)又はStep2−2で変換された水平ボカシ処理画像(20)から成る基多値カラー情報(R
0,G
0,B
0)と明度反転された第2−1の多値カラー情報(R
3,G
3,B
3)を用い、画像全体の各々の画素の濃度値(0〜255のグレーレベル)を数式6で変換して合成することによって平均化(50%合成)された第2の多値カラー情報(R
5,G
5,B
5)となる。平均化された第2の多値カラー情報(R
5,G
5,B
5)は、例えば、
図19(f)に示す画素の濃度値に変換される。第2の多値カラー情報(R
5,G
5,B
5)を備えた画像が第2の多値カラー画像(27)となる。
【0098】
次に、Step7のマスク処理工程では、Step6で平均化された第1の多値カラー情報(R
4,G
4,B
4)を、
図20(a)に示すように第1の多値カラー画像(26)に展開し、その際に画線状の上部スリット(Q1)マスクを適用する。これにより、
図20(a)の一部拡大図である
図20(b)に示すように、補色関係の第4の色を有するカモフラージュ要素(13)が形成される。
【0099】
一方、Step6で平均化された第2の多値カラー情報(R
5,G
5,B
5)を、
図21(a)に示すように第2の多値カラー画像(27)に展開し、その際に画線状の下部スリット(Q2)マスクを適用する。これにより、
図21(a)の一部拡大図である
図21(b)に示すように、補色関係の第3の色を有する潜像要素(14)が形成される。
【0100】
さらに、Step8の有色万線模様生成工程では、Step7で生成された第1の多値カラー画像(26)と第2の多値カラー画像(27)とが合成され、
図7で示された有色万線模様(10)の基画像が完成する。有色万線模様(10)の基画像を印刷したものが
図2に示された有色万線模様(10)である。
【0101】
図11のフロー図では、凸様模様(8)の画像データと有色万線模様(10)の画像データの作製までの工程を示しているが、前述した基材(2)上にそれぞれのデータを用いて形成する凸様模様形成工程と有色万線形成工程により本発明のカラー形成体(1)を作製することができる。
【0102】
(特色万線模様生成フロー)
前述したように、本発明におけるフルカラーは、特色で表現してもよい。特色を用いる利点としては、印刷色数を減らすこと又は色安定性が向上することである。
図22で特色万線模様生成フローについて説明する。
【0103】
Step9の色域抽出工程では、Step2で変換された領域平均化画像(19)の多値カラー画像又はStep2−2で変換された水平ボカシ処理画像(20)において、特定の色域(肌色)抽出が行われる。なお、基カラー画像(15)は人物(顔)であり、人物(顔)の肌色の主成分は赤血球のヘモグロビンの色、すなわち赤色であることから、
図23に示すように、基カラー画像(15)が24bitRGB形式であった場合、色空間(28)のうち赤成分(R成分)とその近傍色を抽出すればよい。これにより、赤色成分が抽出された第3の多値モノクロ画像(29)が得られる。
【0104】
次に、Step10の多値モノクロ階調変換工程では、Step9で得られた赤色成分が抽出された第3の多値モノクロ画像(29)を、メモリ上に準備された2系統の8bitグレースケール画像としたとき、それぞれにトーンカーブの適用が行われる。本実施の形態では、
図24に示されたように、1系統目の第3の多値モノクロ画像(29)は、第1のトーンカーブ(30)が適用される。濃度値255を濃度値222とし、濃度値0を濃度値199とし、リニアな連続性をもったトーンカーブとしている。この結果、第1のトーンカーブ(30)を適用後の多値モノクロポジ画像(31)は、一見してコントラストの低いポジ状となって生成される。また、2系統目の第3の多値モノクロ画像(29)は、第2のトーンカーブ(32)が適用される。濃度値255を濃度値232とし、濃度値0を濃度値255とし、リニアな連続性をもったトーンカーブとしている。この結果、第2のトーンカーブ(32)を適用後の多値モノクロネガ画像(33)は、一見してコントラストの低いネガ状となって生成される。
【0105】
次に、Step11の特色用の2値画像生成工程では、まず、Step10で生成された1系統目の多値モノクロポジ画像(31)において、
図25に示す下部用の第3のパターンファイル(K1)を適用し、
図26に示す第2−1の2値画像(34)が生成される。あわせて、Step10で生成された2系統目の多値モノクロネガ画像(33)において、
図25に示す上部用の第4のパターンファイル(K2)を適用し、
図26に示す第2−2の2値画像(35)が生成される。この第2−1の2値画像(34)と、第2−2の2値画像(35)とをStep12の2値画像の第2の合成工程で合成することにより、
図26に示す第2の2値画像(36)となり、これがフルカラーにおける肌色用画像となる。
【0106】
また、Step10で生成された1系統目の多値モノクロポジ画像(31)において、
図25に示す下部用の第5のパターンファイル(K3)を適用し、
図27に示す第3−1の2値画像(37)が生成される。さらにStep10で生成された2系統目の多値モノクロネガ画像(33)において、
図25に示す上部用の第6のパターンファイル(K4)を適用し、
図27に示す第3−2の2値画像(38)が生成される。この第3−1の2値画像(37)と、第3−2の2値画像(38)とをStep13の2値画像の第3の合成工程で合成することにより、
図27に示す第3の2値画像(39)となり、これがフルカラーにおける補色用画像となる。
【0107】
さらに、Step14の特色用有色万線模様生成工程では、Step12の2値画像の第2の合成工程で生成された第2の2値画像(36)、いわゆる肌色用画像と、Step13の2値画像の第3の合成工程で生成された第3の2値画像(39)、いわゆる補色用画像を、それぞれの画像を合成して有色万線模様(10')を生成する。この有色万線模様(10')は、
図28の一部拡大図に示すように、図面上の上側に配置されている要素が、カモフラージュ要素(13')となり、図面上の下側に配置されている要素が潜像要素(14')となる。
【0108】
図28に示した特色用の有色万線模様(10')は、当然、特色を2色準備して印刷してもよいが、
図26に示す第2の2値画像(36)と、
図27に示す第3の2値画像(39)は、それぞれの画像を、特色を色画像化し合成した多値カラー画像にし、出力手段(M3)の色分解手段にてCMYK化して印刷してもよい。
【0109】
図22のフロー図では、特色を用いて有色万線模様(10)を形成するための画像データの作製までの工程を示しているが、前述した基材(2)上に、先に説明した凸様模様(8)の画像データを用いて形成する凸様模様形成工程と、この特色用の有色万線模様(10')の画像データを用いて形成する有色万線形成工程により、本発明のカラー形成体(1')を作製することができる。
【0110】
次に、前述したカラー形成体(1)を
図3(a)に示す第1の観察角度(L1)、すなわち、カラー形成体(1)を真上方向から観察した場合に視認される副カラー模様(43)を付与した形態について説明する。この副カラー模様(43)を付与することにより、カラー形成体(1)の観察角度を異ならせることで、異なる画像にスイッチする効果を有することができる。
【0111】
(副カラー模様の付与)
副カラー模様(43)を有するカラー形成体(1)は、
図29(a)に示すように、観察者の視点が基材(2)に対して垂直となる真上からの第1の観察角度(L1)の場合、カラー特殊潜像模様(42)は、前述の基カラー画像(15)とは異なる副カラー模様(43)を視認することができ、
図29(b)に示すように、基材(2)を斜めから観察する第2の観察角度(L2)では、カラーの連続階調を備えた潜像模様(7)を視認できる。つまり、真上からの観察と斜めからの観察とでカラー画像がスイッチするカラー形成体(1)である。
【0112】
副カラー模様(43)を形成する画線は、基材(2)とは異なる第7の色として、プロセスカラー又は特色により凸様模様(8)及び有色万線模様(10)と同様のピッチで万線状に形成され、基材(2)を第2の観察角度(L2)から視認した場合に凸画線(9)の死角となる位置に形成する必要がある。すなわち、
図9(a)に示す凸画線(9)の中心線(T1)に対して、観察者から見て反対側の斜面に配置される。このとき重要なのは、副カラー模様(43)と潜像模様(7)が観察角度により完全にスイッチして確認できるようにするため、潜像模様(7)を形成するための潜像要素(14)と副カラー模様(43)を形成する副カラー画線(44)が重ならないように配置される。これにより、副カラー模様(43)を形成する画線は、凸画線(9)に遮蔽されることで視認不可能な状態となる。
【0113】
(副カラー模様生成工程)
副カラー模様(43)の生成工程について、
図30に示すフローを用いて詳細に説明する。Step17は、多値モノクロ画像生成工程として、二つの多値モノクロ画像を生成する。一つ目の画像は、前述のStep2で変換された領域平均化画像(19)又はStep2−2で変換された水平ボカシ処理画像(20)が、例えば、8bitグル―スケール形式といった第4の多値モノクロ画像に変換される。
【0114】
二つ目の画像は、一つ目の画像として生成された第4の多値モノクロ画像の階調反転、すなわち、各々の画素濃度値(グレーレベル)が反転され、第4の多値モノクロ画像に対してネガ状の第5の多値モノクロ画像に変換される。
【0115】
Step17で生成された第4の多値モノクロ画像及び第5の多値モノクロ画像は、
図11の凸様模様生成工程と類似しているが、副カラー模様準備処理工程では、観察者から見て凸画線(9)の反対側に副カラー模様(43)を形成する必要があることから、この位置を特定するために別の工程として多値モノクロ画像を生成する工程である。
【0116】
次に、Step18では、第4の2値画像生成工程として、まず、Step17で生成された第4の多値モノクロ画像に、
図31に示したような第7のパターンファイル(K5)を適用する。第7のパターンファイル(K5)の縦の画素数は、Step2において近傍の画素濃度で平均値にする際に用いられた縦画素数(h)と等しく、本実施の形態では48Pixelとしている。第7のパターンファイル(K5)が第4の多値モノクロ画像全体に適用されることで、
図31に示したポジ状の第4−1の2値画像(45)が生成される。
【0117】
あわせてStep17で生成されたネガ状の第5の多値モノクロ画像に、
図32に示したような第8のパターンファイル(K6)を適用する。第8のパターンファイル(K6)の縦の画素数は、Step2において近傍の画素濃度で平均値にする際に用いられた縦画素数(h)と等しく、本実施の形態では、48Pixelとしている。第8のパターンファイル(K6)がネガ状の第5の多値モノクロ画像全体に適用されることで、
図32に示したネガ状の第4−2の2値画像(46)が生成される。
【0118】
次に、Step19の副カラー画像用マスク生成処理では、Step18で生成された第4−1の2値画像(45)と第4−2の2値画像(46)が合成され、
図33に示す第1の2値画像となる副カラー画像用マスクの基画像(47)が完成する。
【0119】
(前処理フロー)
副カラー模様(43)の生成における前処理フローについて説明する。副カラー画像(48)を設定するStep15は、副カラー画像設定工程において、例えば、デジタルカメラ等から入力されたカラー画像を設定する。本実施の形態は、
図34に示された桜の花びらからなる副カラー画像(48)として、例えば、24bitRGB形式といった多値カラー画像を用い、画像解像度を1,200dpi、画像サイズを1,535×1,535Pixelとした。なお、副カラー画像(48)についても、必要に応じて前述したStep2の領域平均化処理によって多値カラー画像から成る領域平均化画像に変換してもよい。
【0120】
次に、Step16のトーンカーブの変更を行う。例えば、副カラー画像(48)が24bitRGB形式であった場合、RGB各チャンネルの濃度値は0〜255のグレーレベルで表されることから、Step16のトーンカーブの変更によって、およそ128〜255のグレーレベルにするのが望ましい。
【0121】
(後処理フロー)
副カラー模様(43)の生成における後処理フローについて説明する。Step20では、トーンカーブの変更がなされた副カラー画像(48)に副カラー画像用マスクの基画像(47)を適用する。
図35は副カラー画像(48)に副カラー画像用マスクの基画像(47)が適用された副カラー画像(49)が示されたものである。
【0122】
さらに、Step21では、Step8又はStep14で得られた有色万線模様(10)と、Step7で生成された第1の多値カラー画像(26)と第2の多値カラー画像(27)とが合成された有色万線模様(10)の基画像と、Step20で得られた副カラー画像(49)とを合成することにより、
図36に示すような副カラー模様(43)を有する有色万線模様(10”)の基画像が完成する。