特許第6808300号(P6808300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6808300ココアパウダー含有天ぷら用バッター及びこれを使用した天ぷらの製造方法並びにココアパウダー含有天ぷら用バッターミックス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808300
(24)【登録日】2020年12月11日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】ココアパウダー含有天ぷら用バッター及びこれを使用した天ぷらの製造方法並びにココアパウダー含有天ぷら用バッターミックス
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/157 20160101AFI20201221BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20201221BHJP
【FI】
   A23L7/157
   A23L35/00
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-21905(P2018-21905)
(22)【出願日】2018年2月9日
(65)【公開番号】特開2019-135972(P2019-135972A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2019年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】日本製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【弁理士】
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】古田久恵
【審査官】 山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−197817(JP,A)
【文献】 特開2008−253145(JP,A)
【文献】 特開2002−027933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉及び/又は澱粉の合計100質量部に対しココアパウダーを質量部以上10質量部以下含有することを特徴とする天ぷら用バッター。
【請求項2】
穀粉及び/又は澱粉の合計100質量部に対しココアパウダーを質量部以上10質量部以下含有することを特徴とする天ぷら用バッター生地を調製し、ついで前記バッター生地で具材を被覆し、フライすることを特徴とする天ぷらの製造方法。
【請求項3】
穀粉及び/又は澱粉の合計100質量部に対しココアパウダーを質量部以上10質量部以下含有することを特徴とする天ぷら用バッターミックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ココアパウダー含有天ぷら用バッター及びこれを使用した天ぷらの製造方法並びにココアパウダー含有天ぷら用バッターミックスに関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷらの衣のサクサクとした食感を向上させるため、様々な添加物を使用する試みがなされている。
例えば、極度硬化油とグリセリン有機酸脂肪酸エステルを溶融混合した後、粉末化して得られる粉末状油脂を含有することを特徴とする天ぷら衣用品質改良剤が知られている(例えば特許文献1参照)。
また、イヌリンと高純度粉末レシチンとを含有することを特徴とする天ぷら用衣材が知られている(例えば特許文献2参照)。
また、植物ステロールを0.5重量%以上含有することを特徴とする揚げ物用組成物が知られている(例えば特許文献3参照)。
また、ネイティブジェランガムを配合してなるフライ食品用ミックスが知られている(例えば特許文献4参照)。
また、分離大豆蛋白質を1〜10重量%、グリセリン有機酸エステルを0.1〜1.0重量%、硬化油粉末を1〜10重量%、トレハロースを1〜10重量%含有することを特徴とする天ぷら粉組成物が知られている(例えば特許文献5参照)。
一方、ココアパウダーは、主にココア飲料やチョコレートの原料として使用されている(例えば特許文献6参照)。
ココアパウダーではないがカカオを揚げ物衣材として使用する例として乳化剤と抗酸化機能を有する天然物質を組合せることが知られている。
天然抗酸化物として緑茶、ウーロン茶、カカオ、リンゴ、ブドウ、ゴマ、ローズマリー、オリーブ、ダイズ、ブルーベリー及び/またはタマネギが例示されている(例えば特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-57987号公報
【特許文献2】特開2011-62154号公報
【特許文献3】特開2003−235484号公報
【特許文献4】特開2000−189090号公報
【特許文献5】特開平10−327788号公報
【特許文献6】特開2011-19441号公報
【特許文献7】特開2002−27933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、サクサク感があり歯切れがよい食感を有する衣を得ることが出来る天ぷら用バッター及びこれを使用する天ぷらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定量のココアパウダーを含むバッターを使用した天ぷらの衣はサクサク感があり歯切れがよい食感を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、穀粉及び/又は澱粉の合計100質量部に対しココアパウダーを質量部以上10質量部以下含有することを特徴とする天ぷら用バッターである。
また前記バッター生地で具材を被覆し、フライすることを特徴とする天ぷらの製造方法である。
更に、穀粉及び/又は澱粉の合計100質量部に対しココアパウダーを質量部以上10質量部以下含有することを特徴とする天ぷら用バッターミックスである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の天ぷら用バッターを使用した天ぷらの衣はサクサク感があり歯切れがよい食感を有する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用できる穀粉は、特に限定されず、例えば、小麦粉、そば粉、ライ麦粉、大
麦粉、米粉、トウモロコシ粉、オーツ粉末を使用することができる。
また本発明で使用できる澱粉は特に限定されず例えば、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、
モチ種トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、さつまいも澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、さご澱
粉、くず澱粉等を使用することができる。
これらの澱粉は未加工の生澱粉でもよく、リン酸架橋、アセチル化などのエステル化や
ヒドロキシプロピル化などのエーテル化、湿熱処理、温水処理、油脂加工、α化等の加工した澱粉でも使用できる。
【0008】
本発明で使用するココアパウダーとは、カカオマスから脂肪分であるココアバターを除いた残りであるココアケーキを粉砕して粉末状にしたものであり市販品を使用できる。
ココアパウダーは、特有のにがみがあり天ぷらの衣に使用した場合にも衣に、にがみが感じられる。
しかし、使用量を調整することで、にがみを許容範囲に抑え、サクサク感があり歯切れがよい食感を有する衣を得ることができる。
ココアパウダーの使用量は、増えるに従って、衣のサクサク感があり歯切れがよいという食感改良効果は増すが、穀粉及び/又は澱粉の合計100質量部に対しココアパウダーを10質量部を超えて使用した場合は、にがみが許容範囲を超えてしまうので不適である。
また、ココアパウダーの使用量が、穀粉及び/又は澱粉の合計100質量部に対し0.1質量部未満ではサクサク感があり歯切れがよいという食感改良効果が十分得られない。
なお、ココアパウダーの使用量が増すに従い、バッター粘度が上昇するが加水量を適宜調整することでバッター粘度を調整できる。
【0009】
本発明のバッターミックスは、穀粉及び/又は澱粉並びにココアパウダーの他に必要に応じて、膨張剤、乳化剤、植物性蛋白質、油脂、デキストリン、糖類、卵粉、食塩、香辛料、着色料、調味料等の副資材を配合することができる。
【0010】
本発明のバッターミックスの使用方法は、通常のバッターミックスと同様でよい。
具体的には、前記バッターミックスに対し加水してバッターを調製する。
加水量はバッターの温度にもよるがバッターミックス100質量部に対し、80〜200質量部程度である。
【0011】
バッターを調製した後、該バッターに具材をくぐらせ、バッターで具材を被覆する。
具材は、バッターにくぐらせる前に打ち粉を付着させてもよい。
打ち粉には、小麦粉等の穀粉及びコーンスターチ等の澱粉を単独又は併用して使用する
ことができる。
【0012】
具材の種類は特に限定されず例えば、鶏肉、豚肉、えび、イカ等を挙げることができる

バッターを被覆した具材は、160〜180℃で2〜5分間ほどフライして天ぷらを得ることができる。
本発明の天ぷらにはパン粉等のブレッダーを被覆するものは含まれないが、例えば、
スライスアーモンド等を部分的に付着させるものは含まれる。
【0013】
このようにして得た天ぷらは冷蔵又は冷凍し保管、流通することができる。
また、保存料を加えて、常温で保管、流通することができる。
冷蔵又は冷凍した天ぷらは自然解凍又は電子レンジ又はオーブン等で再加熱して食することができる。
再加熱は、天ぷらの中心温度が50℃程度になるように行なう。
【実施例】
【0014】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
参考例1〜3、実施例〜6、比較例1〜3]
小麦粉、コーンスターチ、ココアパウダーを表1に示す割合でビニール袋に入れ手でよく振って均等になるように混合し、バッターミックスを得た。
【0015】
【表1】
【0016】
前記バッターミックス100質量部に対し水を表1に示す割合で加え、ホイッパーで攪拌し、バッターを得た。
加水量を調整したのは、ほぼ同じバッター粘度にすることでバッターの付着状態をそろえて、バッターの付着状態による差異をなくすためである。
小麦粉50質量%、コーンスターチ50質量%の組成の打ち粉をまぶした平均重量13gの、のばし海老を前記バッターにくぐらせ、バッターで被覆した。
その後、170℃のサラダ油で2分間フライして天ぷらを得た。
これを、以下の評価基準で10名のパネラーにより評価を行った。
・食感
5点・・・歯切れが良く、サクサクしていて良い
4点・・・歯切れが良くやや良い
3点・・・普通
2点・・・歯切れが悪いやや悪い
1点・・・歯切れが悪く、噛み切りにくく悪い
・にがみ
○・・・にがみをほとんど感じず許容範囲
△・・・ややにがみを感じるが許容範囲
×・・・許容できないにがみを感じる
結果を表2〜表3に示す。
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
【0019】
比較例1は、ココアパウダーを含まない場合であり、これをコントロールとした。
ココアパウダーを使用した場合は、使用しない場合よりサクサク感があり歯切れがよい食感となった。
使用しない場合より劣った場合はなかった。
比較例3は、サクサク感があり歯切れがよい食感で食感自体は優れていたが、許容できないにがみを感じたパネラーがいたため不適とした。