(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
環構造を主鎖に有する構造単位が、>CH−O−C(=O)−基を環構造に含む構造単位、−C(=O)−O−C(=O)−基を環構造に含む構造単位、−C(=O)−N−C(=O)−基を環構造に含む構造単位、または>CH−O−CH<基を環構造に含む構造単位である、請求項9に記載のメタクリル樹脂組成物。
ガラス転移温度が120℃以上128℃以下であるメタクリル樹脂〔A〕75〜99.8質量%と、紫外線吸収剤〔B〕0.1〜15質量%と、重量平均分子量が3.2万〜30万であるジブロック共重合体からなる化合物〔C〕0.1〜10質量%とを、溶融混練して、メタクリル樹脂組成物を得、
該メタクリル樹脂組成物を溶融成形することを有する、成形体の製造方法。
ガラス転移温度が120℃以上128℃以下であるメタクリル樹脂〔A〕75〜99.8質量%と、紫外線吸収剤〔B〕0.1〜15質量%と、重量平均分子量が3.2万〜30万であるグラフト共重合体からなる化合物〔C〕0.1〜10質量%とを、溶融混練して、メタクリル樹脂組成物を得、
該メタクリル樹脂組成物を溶融成形することを有し、
前記グラフト共重合体は、
主鎖または少なくとも一つのグラフト側鎖が、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を90%以上含有する重合体、スチレンに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位とを含有する重合体、スチレンに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを含有する重合体、スチレンに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とメタクリル酸メチルに由来する構造単位とを含有する重合体、またはポリビニルブチラールからなるもの、
主鎖がポリカーボネートからなるものであり、グラフト側鎖が、芳香族ビニルに由来する構造単位を主に含有する重合体、芳香族ビニルに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位とを含有する重合体、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主に含有する重合体、または芳香族ビニルに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位と(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位とを含有する重合体からなるもの、または
主鎖がポリオレフィンからなるものであり、グラフト側鎖が芳香族ビニルに由来する構造単位を主に含有する重合体、芳香族ビニルに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位とを含有する重合体、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主に含有する重合体、または芳香族ビニルに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位と(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位とを含有する重合体からなるものである、
成形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、メタクリル樹脂〔A〕と、紫外線吸収剤〔B〕と、化合物〔C〕とを含有してなるものである。
【0017】
〔メタクリル樹脂〔A〕〕
メタクリル樹脂〔A〕は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位のみを含有してなる重合体(以下、これをメタクリル樹脂〔A0〕と記すことがある。)またはメタクリル酸メチルに由来する構造単位と他の単量体に由来する構造単位を含有してなるランダム共重合体(以下、このランダム共重合体をメタクリル樹脂〔A1〕と記すことがある。)である。メタクリル樹脂〔A〕として市販のメタクリル樹脂を用いることができる。
【0018】
本発明に用いられるメタクリル樹脂〔A1〕は、耐熱性などの観点から、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の総含有量が、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上である。
【0019】
メタクリル樹脂〔A1〕は、メタクリル酸メチル以外の単量体に由来する構造単位を含有してもよい。メタクリル酸メチル以外の単量体としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸フェニルなどのメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルネニルなどのメタクリル酸シクロアルキルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシルなどのアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸フェニルなどのアクリル酸アリールエステル;アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルネニルなどのアクリル酸シクロアルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリルアミド;メタクリルアミド;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;などの一分子中に重合性の炭素−炭素二重結合を一つだけ有するビニル系単量体を挙げることができる。
【0020】
メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕は、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)の下限が、好ましくは58%、より好ましくは59%、さらに好ましくは60%である。メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕の三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)の上限は、特に制限されないが、製膜性の観点から、好ましくは99%、より好ましくは85%、さらに好ましくは77%、よりさらに好ましくは65%、最も好ましくは64%である。
【0021】
三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)(以下、単に「シンジオタクティシティ(rr)」と称することがある。)は、連続する3つの構造単位の連鎖(3連子、triad)が有する2つの連鎖(2連子、diad)が、ともにラセモ(rrと表記する)である割合である。なお、ポリマー分子中の構造単位の連鎖(2連子、diad)において立体配置が同じものをメソ(meso)、逆のものをラセモ(racemo)と称し、それぞれm、rと表記する。
三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)(%)は、重水素化クロロホルム中、30℃で
1H−NMRスペクトルを測定し、そのスペクトルからTMSを0ppmとした際の0.6〜0.95ppmの領域の面積(X)と0.6〜1.35ppmの領域の面積(Y)とを計測し、式:(X/Y)×100にて算出することができる。
【0022】
メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで得られるクロマトグラムに基いて算出されるポリスチレン換算の重量平均分子量Mw
A1が、好ましくは5万〜20万、より好ましくは5.5万〜16万、さらに好ましくは6万〜12万である。Mw
A1が高くなるほど、メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕から得られる成形体の強度が高くなる傾向がある。Mw
A1が低くなるほど、メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕の成形加工性が良好になり、得られる成形体の表面平滑性が良好になる傾向がある。
【0023】
メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで得られるクロマトグラムに基いて算出されるポリスチレン換算の数平均分子量Mn
A1に対する重量平均分子量Mw
A1の比Mw
A1/Mn
A1が、好ましくは1.0以上5.0以下、好ましくは1.2以上2.5以下、さらに好ましくは1.3以上1.7以下である。Mw
A1/Mn
A1が低くなるほど、耐衝撃性や靭性が良好になる傾向がある。Mw
A1/Mn
A1が高くなるほど、メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕の溶融流動性が高くなり、得られる成形体の表面平滑性が良好になる傾向がある。
【0024】
本発明に用いられるメタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕は、分子量200000以上の成分(高分子量成分)の含有量が、好ましくは0.1〜10%、より好ましくは0.5〜5%である。また、本発明に用いられるメタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕は、分子量15000未満の成分(低分子量成分)の含有量が、好ましくは0.1〜5%、より好ましくは0.2〜3%である。メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕が高分子量成分および低分子量成分をこの範囲にて含有していることで、製膜性が向上し、均一な膜厚のフィルムを得やすい。
分子量200000以上の成分の含有量は、GPCで測定されたクロマトグラムとベースラインとで囲まれる部分の面積のうちの、分子量200000の標準ポリスチレンの保持時間より前に検出されるクロマトグラムとベースラインとで囲まれる部分の面積の割合として算出する。分子量15000未満の成分の含有量は、GPCで得られるクロマトグラムとベースラインとで囲まれる部分の面積のうちの、分子量15000の標準ポリスチレンの保持時間より後に検出されるクロマトグラムとベースラインとで囲まれる部分の面積の割合として算出する。
【0025】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィによる測定は、以下のようにして行う。溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとして東ソー株式会社製のTSKgel SuperMultipore HZM−Mの2本とSuperHZ4000を直列に繋いだものを用いる。分析装置として、示差屈折率検出器(RI検出器)を備えた東ソー株式会社製のHLC−8320(品番)を使用した。試験対象のメタクリル樹脂4mgをテトラヒドロフラン5mlに溶解させて、試験対象溶液を調製した。カラムオーブンの温度を40℃に設定し、溶離液流量0.35ml/分で、試験対象溶液20μlを注入して、クロマトグラムを測定した。
クロマトグラムは、試験対象溶液と参照溶液との屈折率差に由来する電気信号値(強度Y)をリテンションタイムXに対してプロットしたチャートである。
分子量400〜5000000の範囲の標準ポリスチレンをゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定し、リテンションタイムと分子量との関係を示す検量線を作成した。クロマトグラムの高分子量側の傾きがゼロからプラスに変化する点と、低分子量側のピークの傾きがマイナスからゼロに変化する点を結んだ線をベースラインとした。クロマトグラムが複数のピークを示す場合は、最も高分子量側のピークの傾きがゼロからプラスに変化する点と、最も低分子量側のピークの傾きがマイナスからゼロに変化する点を結んだ線をベースラインとした。
【0026】
メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕は、230℃および3.8kg荷重の条件で測定して決定されるメルトフローレートが、好ましくは0.1〜30g/10分以上、より好ましくは0.5〜20g/10分、さらに好ましくは1〜15g/10分である。
【0027】
また、メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕は、ガラス転移温度が、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは123℃以上である。メタクリル樹脂〔A0〕またはメタクリル樹脂〔A1〕のガラス転移温度の上限は、特に制限はないが、好ましくは131℃である。
【0028】
ガラス転移温度は、DSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度である。DSC曲線は、測定対象樹脂を、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量計を用いて、230℃まで昇温し、次いで室温まで冷却し、その後、室温から230℃までを10℃/分で昇温させたときの、2回目の昇温時の示差走査熱量測定で得られるものである。
【0029】
本発明に用いられるメタクリル樹脂〔A〕は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位と環構造を主鎖に有する構造単位とを含有するランダム共重合体(以下、このランダム共重合体をメタクリル樹脂〔A2〕と記すことがある。)であってもよい。環構造を主鎖に有する構造単位を含有することによってメタクリル樹脂組成物の耐熱性が向上する。よって、メタクリル酸メチルに由来する構造単位と環構造を主鎖に有する構造単位とを含有するメタクリル樹脂〔A2〕における、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の総含有量を、上述した範囲よりも低くすることができる。例えば、メタクリル酸メチルに由来する構造単位と環構造を主鎖に有する構造単位とを含有するメタクリル樹脂〔A2〕における、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の総含有量は、好ましくは20〜99質量%、より好ましくは30〜95質量%、さらに好ましくは40〜90質量%である。環構造を主鎖に有する構造単位の総含有量は、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは5〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%である。メタクリル酸メチルに由来する構造単位と環構造を主鎖に有する構造単位とを含有するメタクリル樹脂〔A2〕はメタクリル酸メチルに由来する構造単位と環構造を主鎖に有する構造単位以外の他の構造単位を有してもよい。係る構造単位は前述したようなメタクリル酸メチル以外の単量体として例示した単量体に由来する構造単位であることができる。
【0030】
環構造を主鎖に有する構造単位としては、>CH−O−C(=O)−基を環構造に含む構造単位、−C(=O)−O−C(=O)−基を環構造に含む構造単位、−C(=O)−N−C(=O)−基を環構造に含む構造単位、または>CH−O−CH<基を環構造に含む構造単位が好ましい。
環構造を主鎖に有する構造単位は、無水マレイン酸、N−置換マレイミドなどのような重合性不飽和炭素−炭素二重結合を有する環状単量体をメタクリル酸メチルなどと共重合させることによって、または重合によって得られたメタクリル樹脂の分子鎖の一部を分子内縮合環化させることによって、メタクリル樹脂に含有させることができる。
【0031】
>CH−O−C(=O)−基を環構造に含む構造単位としては、β−プロピオラクトンジイル(別名:オキソオキセタンジイル)構造単位、γ−ブチロラクトンジイル(別名:2−オキソジヒドロフランジイル)構造単位、δ−バレロラクトンジイル(別名:2−オキソジヒドロピランジイル)構造単位などのラクトンジイル構造単位を挙げることができる。なお、式中の「>C」は炭素原子Cに結合手が2つあることを意味する。
【0032】
例えば、δ−バレロラクトンジイル構造単位としては、式(Ib)で表される構造単位を挙げることができる。δ−バレロラクトンジイル構造単位としては、式(Ic)で表される構造単位が好ましい。
【0033】
【化1】
式(Ib)中、R
14およびR
15はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の有機残基であり、R
16は−COORであり、Rは水素原子または炭素数1〜20の有機残基である。*は結合手を意味する。
なお、式(Ib)における、有機残基としては、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、アリール基、−OAc基、および−CN基等を挙げることができる。有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。「Ac」はアセチル基を示す。有機残基は、その炭素数が、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5である。
【0035】
δ−バレロラクトンジイル構造単位は、隣り合う二つのメタクリル酸メチルに由来する構造単位の分子内環化などによって、メタクリル樹脂に含有させることができる。
【0036】
−C(=O)−O−C(=O)−基を環構造に含む構造単位としては、2,5−ジオキソジヒドロフランジイル構造単位、2,6−ジオキソジヒドロピランジイル構造単位、2,7−ジオキソオキセパンジイル構造単位などを挙げることができる。
【0037】
例えば、2,5−ジオキソジヒドロフランジイル構造単位としては、式(IIa)で表される構造単位を挙げることができる。2,5−ジオキソジヒドロフランジイル構造単位としては、式(IIb)で表される構造単位が好ましい。
【0038】
【化3】
式(IIa)中、R
21およびR
22はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の有機残基である。*は結合手を意味する。
なお、式(IIa)における、有機残基としては、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、アリール基、−OAc基、および−CN基等を挙げることができる。有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。「Ac」はアセチル基を示す。有機残基は、その炭素数が、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5である。
【0039】
R
21およびR
22がいずれも水素原子である場合、製造容易性および固有複屈折の調節等の観点から、通常、スチレン等が共重合されていることが好ましい。具体的にはWO2014/021264 Aに記載されているような、スチレンに由来する構造単位とメタクリル酸メチルに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合体を挙げることができる。
【0040】
【化4】
2,5−ジオキソジヒドロフランジイル構造単位は、無水マレイン酸の共重合などによって、メタクリル樹脂に含有させることができる。*は結合手を意味する。
【0041】
2,6−ジオキソジヒドロピランジイル構造単位としては、式(IIIa)で表される構造単位、式(IIIb)で表される構造単位を挙げることができる。2,6−ジオキソジヒドロピランジイル構造単位としては、式(IIIc)で表される構造単位が好ましい。
【0042】
【化5】
式(IIIa)中、R
31およびR
32はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の有機残基である。*は結合手を意味する。
【0043】
【化6】
式(IIIb)中、R
33およびR
34はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の有機残基である。*は結合手を意味する。
なお、式(IIIa)および(IIIb)における、有機残基としては、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、アリール基、−OAc基、および−CN基等を挙げることができる。有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。「Ac」はアセチル基を示す。有機残基は、その炭素数が、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5である。
【0045】
2,6−ジオキソジヒドロピランジイル構造単位は、隣り合う二つのメタクリル酸メチルに由来する構造単位の分子内環化などによって、メタクリル樹脂に含有させることができる。
【0046】
−C(=O)−N−C(=O)−基を環構造に含む構造単位(なお、Nが有するもう一つ結合手は表記を省略している。)としては、2,5−ジオキソピロリジンジイル構造単位、2,6−ジオキソピペリジンジイル構造単位、2,7−ジオキソアゼパンジイル構造単位などを挙げることができる。
【0047】
例えば、2,6−ジオキソピペリジンジイル構造単位としては、式(IVa)で表される構造単位を挙げることができる。2,6−ジオキソピペリジンジイル構造単位としては、式(IVb)で表される構造単位が好ましい。
【0048】
【化8】
式(IVa)中、R
41およびR
42はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
43は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基である。*は結合手を意味する。
原料入手の容易さ、費用、耐熱性などの観点から、R
41およびR
42はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であることが好ましく、R
43は水素原子、メチル基、n−ブチル基、シクロへキシル基またはベンジル基であることが好ましい。
【0050】
2,5−ジオキソピロリジンジイル構造単位としては、式(Va)で表される構造単位を挙げることができる。2,6−ジオキソピペリジンジイル構造単位としては、式(Vb)で表される構造単位または式(Vc)で表される構造単位が好ましい。
【0051】
【化10】
式(Va)中、R
52およびR
53はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数6〜14のアルキル基であり、R
51は、炭素数7〜14のアリールアルキル基、または無置換の若しくは置換基を有する炭素数6〜14のアリール基である。アリール基に置換される基は、ハロゲノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数7〜14のアリールアルキル基である。*は結合手を意味する。
【0053】
【化12】
2,5−ジオキソピロリジンジイル構造単位は、N−置換マレイミドの共重合などによって、メタクリル樹脂に含有させることができる。
【0054】
>CH−O−CH<基を環構造に含む構造単位としては、オキセタンジイル構造単位、テトラヒドロフランジイル構造単位、テトラヒドロピランジイル構造単位、オキセパンジイル構造単位などを挙げることができる。なお、式中の「>C」は炭素原子Cに結合手が2つあることを意味する。
【0055】
例えば、テトラヒドロピランジイル構造単位としては、式(VIa)で表される構造単位を挙げることができる。
【0056】
【化13】
式(VIa)中、R
61およびR
62はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭化水素基、または環構造を有する炭素数3〜20の炭化水素基である。*は結合手を意味する。
R
61およびR
62としては、それぞれ独立に、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニル基(式(VI-1))、1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−イル基(式(VI-2))、t−ブチル基(式(VI-3))、または4−t−ブチルシクロヘキサニル基(式(VI-4))が好ましい。なお、式(VI-1)〜(VI-4)中、+は結合位置を示す。
【0061】
上記の環構造を主鎖に有する構造単位のうち、原料および製造の容易さの観点から、δ−バレロラクトンジイル構造単位、または2,5−ジオキソジヒドロフランジイル構造単位が好ましい。
【0062】
メタクリル樹脂〔A2〕は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで得られるクロマトグラムに基いて算出されるポリスチレン換算の重量平均分子量Mw
A2が、好ましくは5万〜20万、より好ましくは5.5万〜16万、さらに好ましくは6万〜12万である。Mw
A2が高くなるほど、メタクリル樹脂〔A2〕から得られる成形体の強度が高くなる傾向がある。Mw
A2が低くなるほど、メタクリル樹脂〔A2〕の成形加工性が良好になり、得られる成形体の表面平滑性が良好になる傾向がある。
【0063】
メタクリル樹脂〔A2〕は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで得られるクロマトグラムに基いて算出されるポリスチレン換算の数平均分子量Mn
A2に対する重量平均分子量Mw
A2の比Mw
A2/Mn
A2が、好ましくは1.0以上5.0以下、好ましくは1.2以上3.0以下である。Mw
A2/Mn
A2が低くなるほど、耐衝撃性や靭性が良好になる傾向がある。Mw
A2/Mn
A2が高くなるほど、メタクリル樹脂〔A2〕の溶融流動性が高くなり、得られる成形体の表面平滑性が良好になる傾向がある。
【0064】
メタクリル樹脂〔A2〕は、230℃および3.8kg荷重の条件で測定して決定されるメルトフローレートが、好ましくは0.1〜20g/10分以上、より好ましくは0.5〜15g/10分、さらに好ましくは1〜10g/10分である。
【0065】
また、メタクリル樹脂〔A2〕は、ガラス転移温度が、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。メタクリル樹脂〔A2〕のガラス転移温度の上限は、特に制限はないが、好ましくは140℃である。
【0066】
本発明に用いられるメタクリル樹脂〔A〕は、1種のメタクリル樹脂によって前記特性を満たすようにしたものであってもよいし、複数種のメタクリル樹脂の混合物によって前記特性を満たすようにしたものであってもよい。
【0067】
本発明に用いられるメタクリル樹脂〔A〕を構成する1種または2種以上のメタクリル樹脂は、どのような製法で得られたものであってもよい。例えば、メタクリル樹脂は、メタクリル酸メチルを重合することによってまたはメタクリル酸メチルと他の単量体とを重合することによって得ることができる。重合は、公知の方法にて行うことができる。重合の方法としては、連鎖移動の形態による分類で、例えば、ラジカル重合、アニオン重合などを挙げることができる。また、反応液の形態による分類で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などを挙げることができる。前述したメタクリル樹脂〔A〕の各特性は、重合温度、重合時間、連鎖移動剤の種類や量や添加時期、重合開始剤の種類や量や添加時期などの重合条件を調整することによって実現できる。このような重合条件による特性制御は当業者においてよく知られた技術であり、目的とする特性を有する樹脂を製造することは当業者にとって困難なことではない。
さらに、前記のような重合によって得られた樹脂を前述したような分子内環化させることによってメタクリル樹脂〔A2〕を得ることができる。
【0068】
本発明に用いられる紫外線吸収剤〔B〕は、熱可塑性樹脂に配合されることがある公知の紫外線吸収剤である。紫外線吸収剤〔B〕の分子量が200以下であると、メタクリル樹脂組成物を成形する際に発泡するなどの現象が生じることがあるため、紫外線吸収剤〔B〕の分子量は、好ましくは200超え、より好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上、よりさらに好ましくは600以上である。
【0069】
一般に、紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物である。紫外線吸収剤は、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有すると言われる化合物である。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、ホルムアミジン類などを挙げることができる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ベンゾトリアゾール類(ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物)、トリアジン類(トリアジン骨格を有する化合物)が好ましい。ベンゾトリアゾール類またはトリアジン類は、紫外線による樹脂の劣化(例えば、黄変など)を抑制する効果が高い。
【0070】
ベンゾトリアゾール類としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN329)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN234)、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール〕(ADEKA社製;LA−31)、2−(5−オクチルチオ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどを挙げることができる。
【0071】
トリアジン類としては、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(ADEKA社製;LA−F70)や、その類縁体であるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製;CGL777、TINUVIN460、TINUVIN479など)、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジンなどを挙げることができる。
【0072】
その他に、波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値ε
maxが1200dm
3・mol
-1cm
-1以下である紫外線吸収剤を好ましく用いることができる。このような紫外線吸収剤としては、2−エチル−2’−エトキシ−オキサルアニリド(クラリアントジャパン社製;商品名サンデユボアVSU)などを挙げることができる。
【0073】
WO2011/089794A1、WO2012/124395A1、特開2012−012476号公報、特開2013−023461号公報、特開2013−112790号公報、特開2013−194037号公報、特開2014−62228号公報、特開2014−88542号公報、特開2014−88543号公報等に開示される複素環構造の配位子を有する金属錯体(例えば、式(8)で表される構造の化合物など)を紫外線吸収剤〔B〕として用いることができる。
【0074】
【化18】
〔式(8)中、Mは金属原子である。
Y
1、Y
2、Y
3およびY
4はそれぞれ独立に炭素原子以外の二価基(酸素原子、硫黄原子、NH、NR
5など)である。R
5はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロアラルキル基、アラル
キル基などの置換基である。該置換基は、該置換基にさらに置換基を有してもよい。
Z
1およびZ
2はそれぞれ独立に三価基(窒素原子、CH、CR
6など)である。R
6はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロアラルキル基、アラル
キル基などの置換基である。該置換基は、該置換基にさらに置換基を有してもよい。
R
1、R
2、R
3およびR
4はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、ハロゲノ基、アルキルスルホニル基、モノホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基、チオモルホリノスルホニル基、ピペラジノスルホニル基などの置換基である。該置換基は、該置換基にさらに置換基を有してもよい。a、b、cおよびdはそれぞれR
1、R
2、R
3およびR
4の数を示し且つ1〜4のいずれかの整数である。〕
【0075】
当該複素環構造の配位子としては、2,2’−イミノビスベンゾチアゾール、2−(2−ベンゾチアゾリルアミノ)ベンゾオキサゾール、2−(2−ベンゾチアゾリルアミノ)ベンゾイミダゾール、(2−ベンゾチアゾリル)(2−ベンゾイミダゾリル)メタン、ビス(2−ベンゾオキサゾリル)メタン、ビス(2−ベンゾチアゾリル)メタン、ビス[2−(N−置換)ベンゾイミダゾリル]メタン等およびそれらの誘導体を挙げることができる。このような金属錯体の中心金属としては、銅、ニッケル、コバルト、亜鉛が好ましく用いられる。また、これら金属錯体を紫外線吸収剤として用いるために、低分子化合物や重合体などの媒体に金属錯体を分散させることが好ましい。該金属錯体の添加量は、本発明の樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜5質量部、より好ましくは0.1〜2質量部である。前記金属錯体は380nm〜400nmの波長におけるモル吸光係数が大きいので、十分な紫外線吸収効果を得るために添加する量が少なくて済む。添加量が少なくなればブリードアウト等による成形体外観の悪化を抑制することができる。また、前記金属錯体は耐熱性が高いので、成形加工時の劣化や分解が少ない。さらに前記金属錯体は耐光性が高いので、紫外線吸収性能を長期間保持することができる。
【0076】
なお、紫外線吸収剤のモル吸光係数の最大値ε
maxは、次のようにして測定する。シクロヘキサン1Lに紫外線吸収剤10.00mgを添加し、目視による観察で未溶解物がないように溶解させる。この溶液を1cm×1cm×3cmの石英ガラスセルに注入し、日立製作所社製U−3410型分光光度計を用いて、波長380〜450nmでの吸光度を測定する。紫外線吸収剤の分子量(M
UV)と、測定された吸光度の最大値(A
max)とから次式により計算し、モル吸光係数の最大値ε
maxを算出する。
ε
max=〔A
max/(10×10
-3)〕×M
UV
【0077】
本発明に用いられる化合物〔C〕は、ブロック共重合体またはグラフト共重合体からなるものである。
【0078】
ブロック共重合体は、例えば、重合体Aの分子鎖(重合体ブロックAということがある。)の末端に重合体Bの分子鎖(重合体ブロックBということがある。)の末端が繋がって全体として鎖状または放射状に結合したものである。
ブロック共重合体を構成する重合体ブロックは特に限定されない。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどの重合体ブロックと、ポリアクリル酸エステルなどの重合体ブロックとを有して成るブロック共重合体は、メタクリル樹脂と芳香族低分子化合物との相溶性などが良好となることがある。
ブロック共重合体は、例えば、リビング重合を利用して重合体ブロックAの末端に重合開始点をつくり、この開始点からモノマーを重合させて重合体ブロックBを生成する方法〔i〕、重合体ブロックAと重合体ブロックBとをそれぞれ準備し、それらを付加や縮合反応させる方法〔ii〕などによって製造することができる。
【0079】
グラフト共重合体は、例えば、重合体Aの分子鎖(重合体主鎖ということがある。)の途中に重合体Bの分子鎖(グラフト側鎖ということがある。)の末端が繋がって、全体として分枝状に結合したものである。
グラフト共重合体を構成する主鎖およびグラフト側鎖は特に限定されない。例えば、ポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリル系共重合体などからなる主鎖と、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリル系共重合体などからなるグラフト側鎖とを有してなるグラフト共重合体は、メタクリル樹脂と芳香族低分子化合物との相溶性などが良好となることがある。
グラフト共重合体は、例えば、重合体Aの存在下に重合体Bとなるモノマーを重合させる連鎖移動法〔i〕、グラフト側鎖となる重合体Bの末端に重合性基が導入された高分子化合物と、重合体Aとなるモノマーとを共重合させる方法〔ii〕、主鎖となる重合体Aとグラフト側鎖となる重合体Bをそれぞれ準備し、それらを付加や縮合反応させる方法〔iii〕などによって製造することができる。
【0080】
本発明において化合物〔C〕として用いられる、ブロック共重合体またはグラフト共重合体は、その重量平均分子量が、3.2万〜30万、好ましくは4.5万〜30万、より好ましくは5万〜23万である。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィから測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0081】
本発明において化合物〔C〕として好ましく用いられるブロック共重合体〔C-B1〕は、ブロック共重合体〔C-B1〕を構成する少なくとも一つの重合体ブロック〔c〕が、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を90質量%以上含有する重合体(PMMA)、スチレンに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位とを含有する重合体(AS重合体)、スチレンに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを含有する重合体(SMA重合体)、スチレンに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とメタクリル酸メチルに由来する構造単位とを含有する重合体(SMM重合体)、またはポリビニルブチラール(PVB)からなるものである。これらの重合体ブロック〔c〕はメタクリル樹脂との相溶性が高いものである。なお、ブロック共重合体〔C-B1〕を構成する重合体ブロック〔c〕以外の重合体ブロックは特に制限されない。少なくとも2種の異なる重合体ブロック〔c〕によってブロック共重合体〔C-B1〕を構成する場合には、重合体ブロック〔c〕以外の重合体ブロックは無くてもよい。
【0082】
重合体ブロック〔c〕であるPMMAは、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を90質量%以上含有する重合体である。PMMAは、メタクリル酸メチル以外の単量体として、メタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステルが共重合されていてもよい。
重合体ブロック〔c〕であるAS重合体は、スチレンに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位とを含有する重合体である。アクリロニトリルに由来する構造単位の割合が高くなればなるほど、引張強さおよび弾性率が高くなり、耐油性、耐薬品性が改善される傾向がある。
重合体ブロック〔c〕であるSMA重合体は、スチレンに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを含有する重合体である。SMA重合体は、高ガラス転移点、高軟化点、高熱安定性、高溶融粘度などの特性を有する。
重合体ブロック〔c〕であるSMM重合体は、スチレンに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とメタクリル酸メチルに由来する構造単位とを含有する重合体である。SMM重合体は耐熱性を高めることができる。
重合体ブロック〔c〕であるPVBは、ポリビニルアルコールにブチルアルデヒドを縮合させて得られる重合体である。
【0083】
ブロック共重合体〔C-B1〕は、必要に応じて、分子鎖中または分子鎖末端に水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基などの官能基を有していてもよい。
【0084】
ブロック共重合体〔C-B1〕は、重量平均分子量Mw
C-B1が、3.2万〜30万、好ましくは4万〜25万、より好ましくは4.5万〜23万、よりさらに好ましくは5万〜20万である。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィから測定される標準ポリスチレン換算の値である。上記のような範囲内にMw
C-B1があることにより、本発明のメタクリル樹脂組成物からなる成形体におけるブツの発生原因となる未溶融物の含有量を極めて少量とすることができる。
ブロック共重合体〔C-B1〕は、重量平均分子量Mw
C-B1と数平均分子量Mn
C-B1との比(Mw
C-B1/Mn
C-B1)が、好ましくは1.0以上2.0以下、より好ましくは1.0以上1.6以下である。上記のような範囲内にMw
C-B1/Mn
C-B1があることにより、本発明のメタクリル樹脂組成物からなる成形体におけるブツの発生原因となる未溶融物の含有量を極めて少量とすることができる。なお、Mw
C-B1およびMn
C-B1は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定した標準ポリスチレン換算の分子量である。
【0085】
本発明において化合物〔C〕として好ましく用いられるブロック共重合体〔C-B2〕は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を主に有する重合体ブロック〔c1〕10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%と、アクリル酸エステルに由来する構造単位を主に有する重合体ブロック〔c2〕20〜90質量%、好ましくは30〜80質量%(重合体ブロック〔c1〕と重合体ブロック〔c2〕の合計が100質量%)とを含有するものである。
重合体ブロック〔c1〕は一分子中に一つのみであってもよいし、二つ以上あってもよい。重合体ブロック〔c1〕が二つ以上であるとき、それぞれの重合体ブロック〔c1〕を構成する構造単位の比率や分子量は相互に同じであっても異なってもよい。
重合体ブロック〔c2〕は一分子中に一つのみであってもよいし、二つ以上あってもよい。重合体ブロック〔c2〕が二つ以上あるとき、それぞれの重合体ブロック〔c1〕を構成する構造単位の比率や分子量は相互に同じであっても異なってもよい。
ブロック共重合体〔C-B2〕における、重合体ブロック〔c1〕の総質量/重合体ブロック〔c2〕の総質量の比は、好ましくは10/90〜80/20、より好ましくは20/80〜70/30である。
【0086】
重合体ブロック〔c1〕は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を主に有するものである。重合体ブロック〔c1〕に含まれるメタクリル酸エステルに由来する構造単位の量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。
【0087】
メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリルなどを挙げることができる。これらの中でも、透明性、耐熱性を向上させる観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。これらメタクリル酸エステルは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
重合体ブロック〔c1〕は、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、メタクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよい。重合体ブロック〔c1〕に含まれるメタクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位の量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
【0089】
メタクリル酸エステル以外の単量体としては、アクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどを挙げることができる。これらメタクリル酸エステル以外の単量体は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
重合体ブロック〔c1〕の重量平均分子量Mw
c1は、下限が、好ましくは5千、より好ましくは8千、さらに好ましくは1万2千、よりさらに好ましくは1万5千、最も好ましくは2万であり;上限が、好ましくは15万、より好ましくは12万、さらに好ましくは10万である。ブロック共重合体〔C-B2〕が重合体ブロック〔c1〕を複数有する場合には、重量平均分子量Mw
c1は、重合体ブロック〔c1〕各々の重量平均分子量を合計した値である。
【0091】
メタクリル樹脂〔A〕の重量平均分子量Mw
Aと重合体ブロック〔c1〕の重量平均分子量Mw
c1との比Mw
A/Mw
c1は、好ましくは0.5以上3.5以下、より好ましくは0.6以上2.7以下、さらに好ましくは0.7以上2.5以下である。Mw
A/Mw
c1が小さすぎるとメタクリル樹脂組成物から作製した成形体の耐衝撃性が低下する傾向がある。一方、Mw
A/Mw
c1が大きすぎるとメタクリル樹脂組成物から作製した成形体の表面平滑性およびヘーズの温度依存性が悪化する傾向がある。Mw
A/Mw
c1が上記範囲にある場合は、温度変化によらず低いヘーズを維持し、広い温度範囲においてヘーズの変化が小さくなる。これは、ブロック共重合体〔C-B2〕がメタクリル樹脂〔A〕中に小さな粒径で均一に分散するからである。
【0092】
ブロック共重合体〔C-B2〕に含まれる重合体ブロック〔c1〕の量は、透明性、柔軟性、成形加工性、表面平滑性の観点から、好ましくは10質量%以上80質量%以下、より好ましくは20質量%以上70質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上60質量%以下である。重合体ブロック〔c1〕の量が上記範囲内にあると、本発明のメタクリル樹脂組成物またはそれからなる成形体の透明性、可撓性、耐屈曲性、耐衝撃性、柔軟性などに優れる。ブロック共重合体〔C-B2〕が重合体ブロック〔c1〕を複数有する場合には、重合体ブロック〔c1〕の量は、重合体ブロック〔c1〕の合計質量に基づいて算出する。
【0093】
重合体ブロック〔c2〕は、アクリル酸エステルに由来する構造単位を主に有するものである。重合体ブロック〔c2〕に含まれるアクリル酸エステルに由来する構造単位の量は、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0094】
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリルなどを挙げることができる。これらアクリル酸エステルは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0095】
重合体ブロック〔c2〕は、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、アクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよい。重合体ブロック〔c2〕に含まれるアクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位の量は、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0096】
アクリル酸エステル以外の単量体としては、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどを挙げることができる。これらアクリル酸エステル以外の単量体は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0097】
重合体ブロック〔c2〕は、本発明のメタクリル樹脂組成物の透明性を向上させる観点などから、アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を好ましくは50〜90質量%、より好ましくは60〜80質量%含有し、(メタ)アクリル酸芳香族炭化水素エステルに由来する構造単位を好ましくは50〜10質量%、より好ましくは40〜20質量%を含有するものであることが好ましい。
アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシルなどを挙げることができる。これらのうち、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
【0098】
(メタ)アクリル酸芳香族炭化水素エステルはアクリル酸芳香族炭化水素エステルまたはメタクリル酸芳香族炭化水素エステルを意味する。(メタ)アクリル酸芳香族炭化水素エステルとしては、例えば、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸スチリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸スチリルなどを挙げることができる。これらのうち、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ベンジルが好ましい。
【0099】
重合体ブロック〔c2〕の重量平均分子量Mw
c2は、下限が、好ましくは5千、より好ましくは1万5千、さらに好ましくは2万、よりさらに好ましくは3万、最も好ましくは4万であり、上限が、好ましくは12万、より好ましくは11万、さらに好ましくは10万である。Mw
c2が小さければ小さいほど、メタクリル樹脂組成物から作製した成形体の耐衝撃性が低下する傾向がある。一方、Mw
c2が大きければ大きいほど、メタクリル樹脂組成物から作製した成形体の表面平滑性が低下する傾向がある。ブロック共重合体〔C-B2〕が重合体ブロック〔c2〕を複数有する場合には、重量平均分子量Mw
c2は、重合体ブロック〔c2〕各々の重量平均分子量を合計した値である。
【0100】
なお、Mw
c1およびMw
c2は、ブロック共重合体〔C-B2〕の製造の各段階、具体的には重合体ブロック〔c1〕を製造するための重合の終了時および重合体ブロック〔c2〕を製造するための重合の終了時に重量平均分子量をそれぞれ測定し、当該重合開始時の重量平均分子量の測定値と当該重合終了時の重量平均分子量の測定値との差を当該重合で得られた重合体ブロックの重量平均分子量と見做して求めた値である。各重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定した標準ポリスチレン換算値である。
【0101】
ブロック共重合体〔C-B2〕に含まれる重合体ブロック〔c2〕の量は、透明性、柔軟性、成形加工性、表面平滑性の観点から、好ましくは20質量%以上90質量%以下、より好ましくは30質量%以上80質量%以下である。重合体ブロック〔c2〕の量が上記範囲内にあると、本発明のメタクリル樹脂組成物またはそれからなる成形体の耐衝撃性、柔軟性などに優れる。ブロック共重合体〔C-B2〕が重合体ブロック〔c2〕を複数有する場合には、重合体ブロック〔c2〕の量は、重合体ブロック〔c2〕の合計質量に基づいて算出する。
【0102】
ブロック共重合体〔C-B2〕は、重合体ブロック〔c1〕と重合体ブロック〔c2〕との結合形態によって特に限定されない。例えば、重合体ブロック〔c1〕の一末端に重合体ブロック〔c2〕の一末端が繋がったもの(〔c1〕−〔c2〕構造のジブロック共重合体);重合体ブロック〔c1〕の両末端のそれぞれに重合体ブロック〔c2〕の一末端が繋がったもの(〔c2〕−〔c1〕−〔c2〕構造のトリブロック共重合体);重合体ブロック〔c2〕の両末端のそれぞれに重合体ブロック〔c1〕の一末端が繋がったもの(〔c1〕−〔c2〕−〔c1〕構造のトリブロック共重合体)などの直鎖型ブロック共重合体を挙げることができる。
【0103】
また、複数の〔c1〕−〔c2〕構造の腕ブロック共重合体の一末端が相互に繋がって放射状構造を成したブロック共重合体([〔c1〕−〔c2〕−]
mX構造の星型ブロック共重合体);複数の〔c2〕−〔c1〕構造の腕ブロック共重合体の一末端が相互に繋がって放射状構造を成したブロック共重合体([〔c2〕−〔c1〕−]
mX構造の星型ブロック共重合体);複数の〔c1〕−〔c2〕−〔c1〕構造の腕ブロック共重合体の一末端が相互に繋がって放射状構造を成したブロック共重合体([〔c1〕−〔c2〕−〔c1〕−]
mX構造の星型ブロック共重合体);複数の〔c2〕−〔c1〕−〔c2〕構造の腕ブロック共重合体の一末端が相互に繋がって放射状構造を成したブロック共重合体([〔c2〕−〔c1〕−〔c2〕−]
mX構造のブロック共重合体)などの星型ブロック共重合体や、分岐構造を有するブロック共重合体などを挙げることができる。なお、ここでXはカップリング剤残基を表す。これらのうち、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、星型ブロック共重合体が好ましく、〔c1〕−〔c2〕構造のジブロック共重合体、〔c1〕−〔c2〕−〔c1〕構造のトリブロック共重合体、〔〔c1〕−〔c2〕−〕
mX構造の星形ブロック共重合体、[〔c1〕−〔c2〕−〔c1〕−]
mX構造の星形ブロック共重合体がより好ましく、〔c1〕−〔c2〕構造のジブロック共重合体がさらに好ましい。mは、それぞれ独立に、腕ブロック共重合体の数を示す。
【0104】
ブロック共重合体〔C-B2〕は、重合体ブロック〔c1〕および重合体ブロック〔c2〕以外の重合体ブロック〔c3〕を有するものであってもよい。
重合体ブロック〔c3〕を構成する主たる構造単位はメタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位である。かかる単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オクテンなどのオレフィン;ブタジエン、イソプレン、ミルセンなどの共役ジエン;スチレン、α−メチルスチレン、p-メチルスチレン、m−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;酢酸ビニル、ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、ε−カプロラクトン、バレロラクトンなどを挙げることができる。
【0105】
ブロック共重合体〔C-B2〕における、重合体ブロック〔c1〕、重合体ブロック〔c2〕および重合体ブロック〔c3〕の結合形態は特に限定されない。例えば、〔c1〕−〔c2〕−〔c1〕−〔c3〕構造のテトラブロック共重合体、〔c3〕−〔c1〕−〔c2〕−〔c1〕−〔c3〕構造のペンタブロック共重合体などを挙げることができる。ブロック共重合体〔C-B2〕が重合体ブロック〔c3〕を複数有する場合、それぞれの重合体ブロック〔c3〕を構成する構造単位の組成比や分子量は、相互に同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0106】
ブロック共重合体〔C-B2〕は、必要に応じて、分子鎖中または分子鎖末端に水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基などの官能基を有していてもよい。
【0107】
ブロック共重合体〔C-B2〕は、重量平均分子量Mw
C-B2が、3.2万〜30万、好ましくは4万〜25万、より好ましくは4.5万〜23万、よりさらに好ましくは5万〜20万である。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィから測定される標準ポリスチレン換算の値である。上記のような範囲内にMw
C-B2があることにより、本発明のメタクリル樹脂組成物からなる成形体におけるブツの発生原因となる未溶融物の含有量を極めて少量とすることができる。
ブロック共重合体〔C-B2〕は、重量平均分子量Mw
C-B2と数平均分子量Mn
C-B2との比(Mw
C-B2/Mn
C-B2)が、好ましくは1.0以上2.0以下、より好ましくは1.0以上1.6以下である。上記のような範囲内にMw
C-B2/Mn
C-B2があることにより、本発明のメタクリル樹脂組成物からなる成形体におけるブツの発生原因となる未溶融物の含有量を極めて少量とすることができる。なお、Mw
C-B2およびMn
C-B2は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定した標準ポリスチレン換算の分子量である。
【0108】
ブロック共重合体〔C-B1〕または〔C-B2〕は、屈折率が、好ましくは1.485〜1.495、より好ましくは1.487〜1.493である。屈折率がこの範囲内であると、本発明のメタクリル樹脂組成物の透明性が高くなる。なお、本明細書で「屈折率」とは、後述する実施例のとおり、波長587.6nm(D線)で測定した値を意味する。
【0109】
ブロック共重合体〔C-B1〕または〔C-B2〕の製造方法は、特に限定されず、公知の手法に準じた方法を採用することができる。例えば、各重合体ブロックを構成する単量体をリビング重合する方法が一般に使用される。このようなリビング重合の手法としては、例えば、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩などの鉱酸塩の存在下でアニオン重合する方法、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法、有機希土類金属錯体を重合開始剤として用い重合する方法、α−ハロゲン化エステル化合物を開始剤として用い銅化合物の存在下ラジカル重合する方法などを挙げることができる。また、多価ラジカル重合開始剤や多価ラジカル連鎖移動剤を用いて、各ブロックを構成するモノマーを重合させ、本発明に用いられるブロック共重合体〔C-B1〕または〔C-B2〕を含有する混合物として製造する方法なども挙げられる。これらの方法のうち、特に、ブロック共重合体〔C-B1〕または〔C-B2〕が高純度で得られ、また分子量や組成比の制御が容易であり、かつ経済的であることから、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法が好ましい。
【0110】
本発明において化合物〔C〕として好ましく用いられるグラフト共重合体〔C-G1〕は、グラフト共重合体〔C-G1〕を構成する主鎖または少なくとも一つのグラフト側鎖が、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を90質量%以上含有する重合体(PMMA)、スチレンに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位とを含有する重合体(AS重合体)、スチレンに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを含有する重合体(SMA重合体)、スチレンに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とメタクリル酸メチルに由来する構造単位とを含有する重合体(SMM重合体)、またはポリビニルブチラール(PVB)からなり、且つ後述するグラフト共重合体〔C-G2〕およびグラフト共重合体〔C-G3〕以外のものである。これらの重合体はメタクリル樹脂との相溶性が高いものである。
グラフト共重合体〔C-G1〕を構成する主鎖または少なくとも一つのグラフト側鎖である、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を90質量%以上含有する重合体(PMMA)、スチレンに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位とを含有する重合体(AS重合体)、スチレンに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを含有する重合体(SMA重合体)、スチレンに由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とメタクリル酸メチルに由来する構造単位とを含有する重合体(SMM重合体)、またはポリビニルブチラール(PVB)は、ブロック共重合体〔C-B1〕を構成する重合体ブロック〔c〕の説明において述べたとおりのものである。
【0111】
グラフト共重合体〔C-G1〕は、重量平均分子量Mw
C-G1が、3.2万〜30万、好ましくは4万〜25万、より好ましくは4.5万〜23万、よりさらに好ましくは5万〜20万である。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィから測定される標準ポリスチレン換算の値である。上記のような範囲内にMw
C-G2があることにより、本発明のメタクリル樹脂組成物からなる成形体におけるブツの発生原因となる未溶融物の含有量を極めて少量とすることができる。
【0112】
グラフト共重合体〔C-G1〕は、例えば、重合体Aの存在下に重合体Bとなるモノマーを重合させる連鎖移動法〔i〕、グラフト側鎖となる重合体Bの末端に重合性基が導入された高分子化合物と、重合体Aとなるモノマーとを共重合させる方法〔ii〕、主鎖となる重合体Aとグラフト側鎖となる重合体Bをそれぞれ準備し、それらを付加や縮合反応させる方法〔iii〕などによって製造することができる。
【0113】
相溶性の観点から、本発明において化合物〔C〕として好ましく用いられるグラフト共重合体〔C-G2〕は、グラフト共重合体〔C-G2〕を構成する主鎖がポリカーボネートからなるものであり、グラフト共重合体〔C-G2〕を構成するグラフト側鎖が、芳香族ビニルに由来する構造単位を主に含有する重合体、芳香族ビニルに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位とを含有する重合体、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主に含有する重合体、または芳香族ビニルに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位と(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位とを含有する重合体(側鎖を構成するこれらをまとめて「芳香族ビニル/アクリロニトリル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体成分」ということがある。)からなるものである。
【0114】
グラフト共重合体〔C-G2〕の主鎖を構成するポリカーボネートは、その構造によって特に限定されない。ポリカーボネートとしては、多官能ヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成性化合物との反応によって得られる重合体を挙げることができる。
【0115】
グラフト共重合体〔C-G2〕の主鎖を構成するポリカーボネートは、通常のポリカーボネート樹脂と同様の製法、即ち界面重合法、ピリジン法、クロロホルメート法などの溶液重合法、またはエステル交換法などの溶融法で製造することができる。
主鎖を構成するポリカーボネートの粘度平均分子量は4000〜100000が好ましく、5000〜50000がさらに好ましく、6000〜30000が特に好ましい。ポリカーボネートの粘度平均分子量Mvは、ウベローデ型粘度管にて、20℃における塩化メチレン溶液の極限粘度[η]を測定し、下記のSchnellの式より計算した。
[η]=1.23×10
-4Mv
0.83
【0116】
溶液法で製造する場合、反応後のポリカーボネート溶液からポリカーボネートを固形化して回収する方法として次のような方法がある。例えば、ポリカーボネート溶液に貧溶媒を添加して沈殿化する方法、ポリカーボネート溶液から溶媒を留去して濃縮し、粉状体とする方法、ポリカーボネート溶液に貧溶媒を添加し、加熱下の温水中に該混合物を添加し温水中に懸濁させて溶媒および貧溶媒を留去して固形化して水スラリー液を生成させつつ固形化過程の液を湿式粉砕機に循環し粉砕する方法等の種々の方法がある。これらの方法のうち、ポリカーボネートの水懸濁液として、ポリカーボネートの水スラリー液をそのまま用いるのが、合理的で好ましい。
【0117】
ポリカーボネートの製造に使用する二価フェノール系化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタンなどを挙げることができる。
【0118】
反応性の不飽和末端基を有するポリカーボネートを使用することもできる。不飽和末端基を有するポリカーボネートは、ポリカーボネートの製造法、即ち界面重合法、ピリジン法、クロロホルメート法等の溶液法において、分子量調整剤もしくは末端停止剤として、二重結合を有する一官能化合物、を用いることによって得ることができる。
二重結合を有する一官能化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、9−デセン酸、9−ウンデセン酸などの不飽和カルボン酸、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、ソルビン酸クロライド、アリルアルコールクロロホルメート、イソプロペニルフェノールクロロホルメートまたはヒドロキシスチレンクロロホルメートなどの酸クロライドまたはクロロホルメート;イソプロペニルフェノール、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシフェニルマレイミド、ヒドロキシ安息香酸アリルエステルまたはヒドロキシ安息香酸メチルアリルエステルなどの不飽和酸を有するフェノール類等を挙げることができる。二重結合を有する一官能化合物は従来の末端停止剤と併用してもよい。二重結合を有する一官能化合物は、二価フェノール系化合物1モルに対して、通常、1〜25モル%、好ましくは1.5〜10モル%の範囲で使用される。
【0119】
ポリカーボネートは、分岐化剤を二価フェノール系化合物に対して0.01〜3モル%、特に0.1〜1モル%の範囲で併用してなる分岐化ポリカーボネート系樹脂であってもよい。分岐化剤としては、フロログリシン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、1,3,5−トリ(2−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、α,α’,α”−トリ(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼンなどのポリヒドロキシ化合物;3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ブロムイサチン、5−ブロムイサチンなどを挙げることができる。
【0120】
グラフト共重合体〔C-G2〕のグラフト側鎖を構成する重合体の製造に用いられる芳香族ビニルとしては、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、p−メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルスチレンなどを挙げることができる。これらのうち、スチレンが好ましい。
【0121】
グラフト側鎖を構成する重合体の製造に用いられる(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルなどを挙げることができる。これらのうち、(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましい。これら(メタ)アクリル酸エステルは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0122】
グラフト側鎖を構成する重合体には、芳香族ビニル、(メタ)アクリル酸エステルおよびアクリロニトリル以外に、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド、メタクリル酸、アクリル酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミドなどを用いることができる。
【0123】
グラフト共重合体〔C-G2〕は、ポリカーボネートからなる主鎖により形成される連続相中に芳香族ビニル/アクリロニトリル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体成分からなるグラフト側鎖が微細に分散しているか、または芳香族ビニル/アクリロニトリル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体成分からなるグラフト側鎖により形成される連続相中にポリカーボネートからなる主鎖が微細に分散していることが好ましい。グラフト共重合体〔C-G2〕の分散粒子は球状にほぼ均一に分散していることが望ましい。グラフト共重合体〔C-G2〕の分散粒子の粒子径は好ましくは0.001〜10μm、より好ましくは0.01〜5μmである。
【0124】
グラフト共重合体〔C-G2〕中の側鎖の数平均重合度は5〜10000が好ましく、10〜5000がより好ましく、100〜2000がさらに好ましい。数平均重合度が5以上であれば、樹脂組成物の耐候性や耐熱性が高い傾向がある。数平均重合度が10000以下であれば溶融粘度が低く、成形性が良好で、且つ表面外観が良好である傾向がある。
【0125】
グラフト共重合体〔C-G2〕の主鎖を構成するポリカーボネート成分の割合は、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%である。側鎖を構成する芳香族ビニル/アクリロニトリル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体成分の割合は、好ましくは10〜80%、より好ましくは20〜70%である。上記範囲内に各成分の割合があると、メタクリル樹脂〔A〕と紫外線吸収剤〔B〕との相溶性が高くなり、高温での成形時においても、ブリードアウトや紫外線吸収剤の蒸散などによる成形装置の汚染が生じにくくなる傾向が強くなる。
【0126】
グラフト共重合体〔C-G2〕は、重量平均分子量Mw
C-G2が、3.2万〜30万、好ましくは4万〜25万、より好ましくは4.5万〜23万、よりさらに好ましくは5万〜20万である。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィから測定される標準ポリスチレン換算の値である。上記のような範囲内にMw
C-G2があることにより、本発明のメタクリル樹脂組成物からなる成形体におけるブツの発生原因となる未溶融物の含有量を極めて少量とすることができる。
【0127】
グラフト共重合体〔C-G2〕は、例えば、重合体Aの存在下に重合体Bとなるモノマーを重合させる連鎖移動法〔i〕、グラフト側鎖となる重合体Bの末端に重合性基が導入された高分子化合物と、重合体Aとなるモノマーとを共重合させる方法〔ii〕、主鎖となる重合体Aとグラフト側鎖となる重合体Bをそれぞれ準備し、それらを付加や縮合反応させる方法〔iii〕などによって製造することができる。
【0128】
グラフト共重合体〔C-G2〕を製造する際のグラフト化法は、例えば、次のようにして行うことができる。まず、ポリカーボネート粒子を水に懸濁させる。この懸濁液に、側鎖を生成させるためのビニル単量体の1種または2種以上の混合物と、ラジカル重合性有機過酸化物の1種または2種以上の混合物と、10時間の半減期を得るための分解温度が40〜90℃であるラジカル重合開始剤とを含有してなる溶液を加える。
次に、ラジカル重合開始剤の分解が実質的に起こらない条件で加熱し、ビニル単量体、ラジカル重合性有機過酸化物およびラジカル重合開始剤をポリカーボネート粒子中に含浸せしめる。続いて、この水性懸濁液の温度を上昇せしめ、ビニル単量体とラジカル重合性有機過酸化物とをポリカーボネート粒子中で共重合せしめて、グラフト化前駆体を得る。このグラフト化前駆体を150〜350℃の溶融下、混練することにより、グラフト共重合体〔C-G2〕を得ることができる。グラフト化前駆体をメタクリル樹脂〔A〕と伴に150〜350℃の溶融下、混練することにより、メタクリル樹脂〔A〕とグラフト共重合体〔C-G2〕とを含有する樹脂組成物を得ることができる。
このとき、グラフト化前駆体に、別に主鎖と同様のポリカーボネート、または側鎖と同様のビニル系樹脂を混合し、溶融下に混練してもグラフト共重合体〔C-G2〕を得ることができる。
【0129】
前記ラジカル重合性有機過酸化物として、例えば、t−ブチルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、t−アミルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、クミルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、p−イソプロピルクミルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、t−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、t−アミルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、クミルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、p−イソプロピルクミルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、t−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、t−アミルペルオキシアクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシアクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシアクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、クミルペルオキシアクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、p−イソプロピルクミルペルオキシアクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、t−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、t−アミルペルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、クミルペルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、p−イソプロピルクミルペルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、t−ブチルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート、t−アミルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート、クミルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート、p−イソプロピルクミルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボネート、t−アミルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボネート、クミルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボネート、p−イソプロピルクミルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボネート;t−ブチルペルオキシアリルカーボネート、t−アミルペルオキシアリルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシアリルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシアリルカーボネート、p−メンタンペルオキシアリルカーボネート、クミルペルオキシアリルカーボネート、t−ブチルペルオキシメタリルカーボネート、t−アミルペルオキシメタリルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシメタリルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシメタリルカーボネート、p−メンタンペルオキシメタリルカーボネート、クミルペルオキシメタリルカーボネート、t−ブチルペルオキシアリロキシエチルカーボネート、t−アミルペルオキシアリロキシエチルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシアリロキシエチルカーボネート、t−ブチルペルオキシメタリロキシエチルカーボネート、t−アミルペル
オキシメタリロキシエチルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシメタリロキシエチルカーボネート、t−ブチルペルオキシアリロキシイソプロピルカーボネート、t−アミルペルオキシアリロキシイソプロピルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシアリロキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシメタリロキシイソプロピルカーボネート、t−アミルペルオキシメタリロキシイソプロピルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシメタリロキシイソプロピルカーボネート等を挙げることができる。
【0130】
これらの中で、t−ブチルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、t−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、t−ブチルペルオキシアリルカーボネート、t−ブチルペルオキシメタリルカーボネートが好ましい。
【0131】
グラフト共重合体〔C-G2〕は、上記のようにして製造してもよいし、市販品(例えば、日油(株)社製のモディパーCシリーズ(CL430-G))を用いてもよい。
【0132】
本発明において化合物〔C〕として好ましく用いられるグラフト共重合体〔C-G3〕は、グラフト共重合体〔C-G3〕を構成する主鎖がポリオレフィンからなるものであり、グラフト共重合体〔C-G3〕を構成するグラフト側鎖が、芳香族ビニルに由来する構造単位を主に含有する重合体、芳香族ビニルに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位とを含有する重合体、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主に含有する重合体、または芳香族ビニルに由来する構造単位とアクリロニトリルに由来する構造単位と(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位とを含有する重合体(側鎖を構成するこれらをまとめて「芳香族ビニル/アクリロニトリル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体成分」ということがある。)からなるものである。
【0133】
グラフト共重合体〔C-G3〕の主鎖を構成するポリオレフィンは、その重合態様(分子量や鎖状構造)によって特に限定されない。ポリオレフィンは、非極性α−オレフィン単量体に由来する単量体を含有する重合体である。非極性α−オレフィン単量体としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1等を挙げることができる。
非極性α−オレフィン単量体に由来する構成単位を主に含有するポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体などを挙げることができる。
【0134】
ポリオレフィンは、極性ビニル系単量体に由来する構成単位を含有してもよい。極性ビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等のα,β−不飽和カルボン酸及びその金属塩、アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル等のα,β−不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステル等の不飽和グリシジル基含有単量体等を挙げることができる。
非極性α−オレフィン単量体と極性ビニル系単量体とからなる(共)重合体の具体例としては、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン−メタクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体等を挙げることができる。
以上のようなポリオレフィンは、1種を単独で、または2種以上を混ぜ合わせて用いることができる。これらポリオレフィンのうち、流動性の観点からポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンが好ましい。
【0135】
グラフト共重合体〔C-G3〕のグラフト側鎖を構成する重合体としては、グラフト共重合体〔C-G2〕のグラフト側鎖を構成する重合体の説明において述べたものと同じものを用いることができる。
【0136】
グラフト共重合体〔C-G3〕は、ポリオレフィンからなる主鎖により形成される連続相中に芳香族ビニル/アクリロニトリル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体成分からなるグラフト側鎖が微細に分散しているか、または芳香族ビニル/アクリロニトリル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体成分からなるグラフト側鎖により形成される連続相中にポリオレフィンからなる主鎖が微細に分散していることが好ましい。グラフト共重合体〔C-G3〕の分散粒子は球状にほぼ均一に分散していることが望ましい。グラフト共重合体〔C-G3〕の分散粒子の粒子径は好ましくは0.001〜10μm、より好ましくは0.01〜5μmである。
【0137】
グラフト共重合体〔C-G3〕中の側鎖の数平均重合度は、5〜10000が好ましく、10〜5000がより好ましく、100〜2000がさらに好ましい。数平均重合度が5以上であれば、樹脂組成物の耐候性や耐熱性が高い傾向がある。数平均重合度が10000以下であれば溶融粘度が低く、成形性が良好で、且つ表面外観が良好である傾向がある。
【0138】
グラフト共重合体〔C-G3〕の主鎖を構成するポリオレフィン成分の割合は、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%である。側鎖を構成する芳香族ビニル/アクリロニトリル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体成分の割合は、好ましくは10〜80%、より好ましくは20〜70%である。上記範囲から各成分の割合が外れると、メタクリル樹脂〔A〕と紫外線吸収剤〔B〕との相溶性が低下し、高温での成形時において、ブリードアウトなどの発生や紫外線吸収剤の蒸散による成形装置を汚染する問題が発生する。
【0139】
グラフト共重合体〔C-G3〕は、重量平均分子量Mw
C-G3が、3.2万〜30万、好ましくは4万〜25万、より好ましくは4.5万〜23万、よりさらに好ましくは5万〜20万である。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィから測定される標準ポリスチレン換算の値である。上記のような範囲内にMw
C-G3があることにより、本発明のメタクリル樹脂組成物からなる成形体におけるブツの発生原因となる未溶融物の含有量を極めて少量とすることができる。
【0140】
グラフト共重合体〔C-G3〕は、例えば、重合体Aの存在下に重合体Bとなるモノマーを重合させる連鎖移動法〔i〕、グラフト側鎖となる重合体Bの末端に重合性基が導入された高分子化合物と、重合体Aとなるモノマーとを共重合させる方法〔ii〕、主鎖となる重合体Aとグラフト側鎖となる重合体Bをそれぞれ準備し、それらを付加や縮合反応させる方法〔iii〕などによって製造することができる。
【0141】
グラフト共重合体〔C-G3〕を製造する際のグラフト化法は、例えば、次のようにして行うことができる。まずオレフィン系(共)重合体を水に懸濁させる。該懸濁液に、側鎖を生成させるためのビニル単量体の1種または2種以上の混合物と、ラジカル重合性有機過酸化物の1種又は2種以上の混合物と、10時間の半減期を得るための分解温度が40〜90℃であるラジカル重合開始剤とを含有してなる溶液を加える。
そして、ラジカル重合開始剤の分解が実質的に起こらない条件で加熱し、ビニル単量体、ラジカル重合性有機過酸化物及びラジカル重合開始剤をオレフィン系(共)重合体に含浸せしめる。次いで、この水性懸濁液の温度を上昇せしめ、ビニル単量体とラジカル重合性有機過酸化物とをオレフィン系(共)重合体中で共重合せしめて、グラフト化前駆体を得る。
このグラフト化前駆体を100〜350℃の溶融下、混練することにより、グラフト共重合体〔C-G3〕を得ることができる。グラフト化前駆体をメタクリル樹脂〔A〕と伴に100〜350℃の溶融下、混練することにより、メタクリル樹脂〔A〕とグラフト共重合体〔C-G3〕とを含有する樹脂組成物を得ることができる。
このとき、グラフト化前駆体に、別に主鎖と同様のポリオレフィン、または側鎖と同様のビニル系樹脂を混合し、溶融下に混練してもグラフト共重合体〔C-G3〕を得ることができる。
【0142】
グラフト共重合体〔C-G3〕は、上記のようにして製造してもよいし、市販品(例えば、日油(株)社製のモディパーA1100、モディパーA4300、モディパーA4400)などを用いてもよい。
【0143】
本発明において化合物〔C〕として好ましく用いられるグラフト共重合体は、メタクリル樹脂〔A〕との相容性が良くより透明なメタクリル樹脂組成物が得られるという観点から、グラフト共重合体〔C-G1〕またはグラフト共重合体〔C-G2〕が好ましい。
【0144】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてフィラーを含んでいてもよい。フィラーとしては、炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。本発明のメタクリル樹脂組成物に含有し得るフィラーの量は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。
【0145】
本発明に用いられるメタクリル樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の重合体を含んでいてもよい。他の重合体としては、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリノルボルネンなどのポリオレフィン樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂などのスチレン系樹脂;メチルメタクリレート系重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマーなどのポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン変性樹脂;アクリル系コアシェルゴム、シリコーンゴム;SEPS、SEBS、SISなどのスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDMなどのオレフィン系ゴムなどを挙げることができる。かかる含有され得る他の重合体として透明性、耐熱性の観点からポリカーボネート樹脂が好ましい。これら重合体のメタクリル樹脂組成物中の含有量は20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0146】
本発明のメタクリル樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、熱劣化防止剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、耐衝撃性改質剤、蛍光体などの他の添加剤を含有していてもよい。
【0147】
酸化防止剤は、酸素存在下においてそれ単体で樹脂の酸化劣化防止に効果を有するものである。例えば、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などを挙げることができる。これらの中、着色による光学特性の劣化防止効果の観点から、リン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤との併用がより好ましい。
リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用する場合、リン系酸化防止剤/ヒンダードフェノール系酸化防止剤を質量比で0.2/1〜2/1で使用するのが好ましく、0.5/1〜1/1で使用するのがより好ましい。
【0148】
リン系酸化防止剤としては、2,2−メチレンビス(4,6−ジt−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(ADEKA社製;商品名:アデカスタブHP−10)、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製;商品名:IRGAFOS168)
、3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサー3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA社製;商品名:アデカスタブPEP−36)などを挙げることができる。
【0149】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(BASF社製;商品名IRGANOX1010)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASF社製;商品名IRGANOX1076)などが好ましい。
【0150】
熱劣化防止剤としては、実質上無酸素の状態下で高熱にさらされたときに生じるポリマーラジカルを捕捉することによって樹脂の熱劣化を防止できるものである。
該熱劣化防止剤としては、2−t−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGM)、2,4−ジt−アミル−6−(3’,5’−ジ−tert−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGS)などが好ましい。
【0151】
光安定剤は、主に光による酸化で生成するラジカルを捕捉する機能を有すると言われる化合物である。好適な光安定剤としては、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格を持つ化合物などのヒンダードアミン類を挙げることができる。
【0152】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアロアミド酸、メチレンビスステアロアミド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、パラフィンワックス、ケトンワックス、オクチルアルコール、硬化油などを挙げることができる。
【0153】
離型剤としては、成形用金型からの離型を容易にする機能を有する化合物である。離型剤としては、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステルなどを挙げることができる。本発明においては、離型剤として、高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用することが好ましい。高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用する場合、高級アルコール類/グリセリン脂肪酸モノエステルの質量比が、2.5/1〜3.5/1の範囲で使用するのが好ましく、2.8/1〜3.2/1の範囲で使用するのがより好ましい。
【0154】
高分子加工助剤としては、通常、乳化重合法によって製造することができる、0.05〜0.5μmの粒子径を有する重合体粒子である。該重合体粒子は、単一組成比および単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよいし、また組成比または極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。この中でも、内層に低い極限粘度を有する重合体層を有し、外層に5dl/g以上の高い極限粘度を有する重合体層を有する2層構造の粒子が好ましいものとして挙げられる。高分子加工助剤としては、極限粘度が3〜6dl/gであることが好ましい。
【0155】
耐衝撃性改質剤としては、アクリル系ゴムもしくはジエン系ゴムをコア層成分として含むコアシェル型改質剤;ゴム粒子を複数包含した改質剤などを挙げることができる。
有機色素としては、樹脂に対しては有害とされている紫外線を可視光線に変換する機能を有する化合物が好ましく用いられる。
光拡散剤や艶消し剤としては、ガラス微粒子、ポリシロキサン系架橋微粒子、架橋ポリマー微粒子、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどを挙げることができる。
蛍光体として、蛍光顔料、蛍光染料、蛍光白色染料、蛍光増白剤、蛍光漂白剤などを挙げることができる。
【0156】
これらの添加剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの添加剤は、メタクリル樹脂〔A〕や化合物〔C〕などを製造する際の重合反応液に添加してもよいし、製造されたメタクリル樹脂〔A〕や化合物〔C〕などに添加してもよいし、メタクリル樹脂組成物を調製する際に添加してもよい。本発明のメタクリル樹脂組成物に含有される他の添加剤の合計量は、得られるフィルムの外観不良を抑制する観点から、メタクリル樹脂〔A〕に対して、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下である。
【0157】
本発明のメタクリル樹脂組成物の調製方法は特に限定されない。例えば、化合物〔C〕の存在下にメタクリル酸メチルを含む単量体混合物を重合してメタクリル樹脂〔A〕を生成させる方法や、メタクリル樹脂〔A〕、紫外線吸収剤〔B〕および化合物〔C〕を溶融混練する方法などを挙げることができる。これらのうち溶融混練法は工程が単純であるので、好ましい。溶融混練の際に、必要に応じて他の重合体や添加剤を混合してもよいし、メタクリル樹脂〔A〕を他の重合体および添加剤と混合した後に紫外線吸収剤〔B〕および化合物〔C〕と混合してもよいし、紫外線吸収剤〔B〕を他の重合体および添加剤と混合した後にメタクリル樹脂〔A〕および化合物〔C〕と混合してもよいし、化合物〔C〕を他の重合体および添加剤と混合した後にメタクリル樹脂〔A〕および紫外線吸収剤〔B〕と混合してもよいし、その他の方法でもよい。混練は、例えば、ニーダールーダー、一軸または二軸押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの公知の混合装置または混練装置を使用して行なうことができる。これらのうち、二軸押出機が好ましい。混合・混練時の温度は、使用するメタクリル樹脂〔A〕および化合物〔C〕の溶融温度などに応じて適宜調節することができるが、好ましくは110℃〜300℃である。
【0158】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、メタクリル樹脂〔A〕を、好ましくは75〜99.8質量%、より好ましくは82〜99.5質量%、さらに好ましくは89〜99.2質量%含む。この範囲でメタクリル樹脂〔A〕を含むと透明性と耐熱性に優れる。
本発明のメタクリル樹脂組成物は、紫外線吸収剤〔B〕を、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.2〜10質量%、さらに好ましくは0.3〜5質量%含む。この範囲で紫外線吸収剤〔B〕を含むと波長380nmの光透過率を薄肉成形体において5%以下に調整しやすい。本発明のメタクリル樹脂組成物は、紫外線吸収剤〔B〕と他の添加剤との合計含有量が、好ましくは1質量%超、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、よりさらに好ましくは2.5質量%以上である。なお、他の添加剤は、酸化防止剤、熱劣化防止剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、耐衝撃性改質剤、および蛍光体であり、化合物〔C〕はこれらに含まれないものとする。
本発明のメタクリル樹脂組成物は、化合物〔C〕を、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.3〜8質量%、さらに好ましくは0.5〜6質量%含む。この範囲で化合物〔C〕を含むと、ブリードアウト、紫外線吸収剤の蒸散などが抑制され、メタクリル樹脂組成物の耐熱性を維持しつつ、耐光性および耐候性を発揮できる。
【0159】
本発明のメタクリル樹脂組成物をGPCにて測定して決定される重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5万〜20万、より好ましくは5.5万〜16万、さらに好ましくは6万〜12万、特に好ましくは7万〜10万である。メタクリル樹脂組成物をGPCにて測定して決定される分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、好ましくは1.0〜5.0、より好ましくは1.2〜3.0、さらに好ましくは1.3〜2.0、特に好ましくは1.3〜1.7である。Mwや分子量分布(Mw/Mn)がこの範囲にあると、メタクリル樹脂組成物の成形加工性が良好となり、耐衝撃性や靭性に優れた成形体を得易くなる。
【0160】
本発明のメタクリル樹脂組成物を230℃および3.8kg荷重の条件で測定して決定されるメルトフローレートは、好ましくは0.1〜30g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分、最も好ましくは1.0〜15g/10分である。
【0161】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、ガラス転移温度が、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは123℃以上である。
【0162】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、3.2mm厚さのヘーズが、3.0%以下が好ましく、2.0%以下がより好ましく、1.5%以下がさらに好ましい。
【0163】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、保存、運搬、または成形時の利便性を高めるために、ペレットなどの形態にすることができる。
【0164】
本発明のメタクリル樹脂組成物は公知の成形方法によって成形体とすることができる。成形方法としては、例えば、Tダイ法(ラミネート法、共押出法など)、インフレーション法(共押出法など)、圧縮成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、真空成形法、射出成形法(インサート法、二色法、プレス法、コアバック法、サンドイッチ法など)などの溶融成形法ならびに溶液キャスト法などを挙げることができる。
これらの成型方法では、一般に樹脂組成物を成形するために金型が用いられる。例えば、シート成形用ロール、フィルム成形用ロール、圧縮成形用金型、ブロー成形用金型、カレンダーロール、真空成形用金型、射出成形用金型、キャスト重合用鋳型などの金型を挙げることができる。金型は必ずしも金属製である必要はなく、例えばゴムロール、強化ガラスなども金型に含まれる。本発明のメタクリル樹脂組成物は、金型汚れを生じにくいため、長時間の連続生産や成形工程を多数繰返す生産に好適に使用できる。
【0165】
本発明のメタクリル樹脂組成物を溶融押出法によりダイから押し出してロールで冷却してフィルムを形成する際に、ピンニングを行うことができる。ピンニングは、ダイから押し出されたフィルム状溶融体をロールに密着させることである。ピンニングとしては、エアナイフピンニング、真空吸引ピンニング、電気ピンニングなどを挙げることができるが、電気ピンニングが好ましい。電気ピンニングを行うための装置には、針状電極、ワイヤ電極、バンド電極などのピンニング電極が設置されている。
【0166】
本発明においては、先ず、エッジピンニング(フィルム状溶融体の側端部のみをロールに密着させる)を行うことが好ましい。エッジピンニングは公知の方法で行うことができる。例えば、フィルム状溶融体がロールに着地する直前にフィルム状溶融体の側端部の近傍で針状電極などのピンニング電極を用いて静電気を帯びさせる。上記のように側端部に静電気を帯びさせたフィルム状溶融体がロールに着地すると、フィルム状溶融体の側端部は静電気によってロール面に密着する。フィルム状溶融体はロールで冷やされる。冷却の途上でフィルム状溶融体には張力などが生じるが、エッジピンニングで両端が抑えられているので、ネックインまたは中だるみ現象を防止することができる。エッジピンニングに用いられるピンニング電極の設置位置は、フィルム状溶融体の側端部に静電気を帯びさせることができる位置であれば特に限定されない。例えば、ピンニング電極は、フィルム状溶融体の表面からの距離が、1〜10mmとなる位置に設置することが好ましい。フィルム状溶融体の表面からの距離が短すぎるとピンニング電極がフィルム状溶融体に接触することがある。フィルム状溶融体の表面からの距離が長すぎると密着が不十分になることがある。ピンニング電極に印加する電圧は火花放電を生じない程度であることが好ましい。火花放電が生じると、フィルムのロール面への密着が不十分になる上に、ロール面を損壊させることがある。
【0167】
次に、フィルム状溶融体の着地しているロール面の全幅にてピンニングを行うことができる。全幅ピンニングは公知の方法で行うことができる。例えば、ロールの回転軸に平行な方向に張り渡したワイヤ電極を用いて全幅にて静電気を帯びさせる。これによって、フィルム状溶融体の側端部が中央部に比べてロール面に密に付着していた状態から、フィルム状溶融体全面がロール面に同程度のレベルで付着した状態になる。この状態にした後、ロール面からフィルム状溶融体を引き剥がす。これによって、ピンニングバブル(フィルムとロール面と
の間に封じこまれる空気)またはフィルム幅方向に生じることがあるスジの発生を防止することができる。なお、全幅にての帯電は、フィルム状溶融体がガラス転移温度より低い温度になったときに行うことが好ましい。全幅ピンニングにおけるピンニング電極の設置位置は、フィルム状溶融体の全幅にて静電気を帯びさせることができる位置であれば特に限定されない。例えば、ワイヤ電極は、フィルム状溶融体の表面からの距離が、1〜10mmとなる位置に設置することが好ましい。フィルム状溶融体の表面からの距離が短すぎるとワイヤ電極がフィルム状溶融体に接触することがある。フィルム状溶融体の表面からの距離が長すぎると付着レベルの均一化が不十分になることがある。さらに、ワイヤ電極は、フィルム状溶融体の温度がガラス転移温度よりも低い温度まで冷やされた位置に設置することが好ましい。フィルム状溶融体の温度がガラス転移温度よりも高い温度までしか冷やされていない位置に設置するとフィルム幅方向にスジが生じる傾向がある。ワイヤ電極は、使用するワイヤの破断張力の、好ましくは5%以上99%以下、より好ましくは30%以上95%以下、さらに好ましくは50%以上90%以下の張力で、張り渡したものであることが好ましい。張力が低すぎるとワイヤが垂れ下がり帯電の均一化が不十分になる傾向がある。張力が高すぎるとワイヤが破断しやすい傾向がある。ワイヤ電極に印加する電圧は火花放電を生じない程度であることが好ましい。火花放電が生じると、帯電の均一化が不十分になる上に、ロール面を損壊させることがある。
【0168】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、ピンニングを伴うフィルム成形の行い易さおよびフィルムに残留する歪みの少なさの観点から、貯蔵弾性率(E’)が、5×10
5Pa〜0.5×10
5Paであることが好ましい。
【0169】
本発明の成形体の用途としては、例えば、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板などの看板部品;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイなどのディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリアなどの照明部品;ペンダント、ミラーなどのインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根などの建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバーなどの輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機用ディスプレイカバーなどの電子機器部品;保育器、レントゲン部品などの医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、観察窓などの機器関係部品;ディスプレイ装置のフロントライト用導光板およびフィルム、バックライト用導光板及びフィルム、液晶保護板、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面板、拡散板、反射材などの光学関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音壁などの交通関係部品;自動車内装用表面材、携帯電話の表面材、マーキングフィルムなどのフィルム部材;洗濯機の天蓋材やコントロールパネル、炊飯ジャーの天面パネルなどの家電製品用部材;その他、温室、大型水槽、箱水槽、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスクなどが挙げられる。
【0170】
本発明の成形体は、耐候性に優れ、また紫外線吸収剤のブリードアウトが抑制される点から、例えば、各種カバー、各種端子板、プリント配線板、スピーカー、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、また、映像・光記録・光通信・情報機器関連部品としてカメラ、VTR、プロジェクションTV等のファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ、各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LD等)基板の保護フィルム、光スイッチ、光コネクター、液晶ディスプレイ、液晶ディスプレイ用導光フィルム・シート、フラットパネルディスプレイ、フラットパネルディスプレイ用導光フィルム・シート、プラズマディスプレイ、プラズマディスプレイ用導光フィルム・シート、電子ペーパー用導光フィルム・シート、位相差フィルム・シート、偏光フィルム・シート、偏光板保護フィルム・シート、偏光子保護フィルム・シート、波長板、光拡散フィルム・シート、プリズムフィルム・シート、反射フィルム・シート、反射防止フィルム・シート、視野角拡大フィルム・シート、防眩フィルム・シート、輝度向上フィルム・シート、液晶やエレクトロルミネッセンス用途の表示素子基板、タッチパネル、タッチパネル用導光フィルム・シート、各種前面板と各種モジュール間のスペーサーなど、各種の光学用途へ特に好適に適用可能である。
具体的には、例えば、携帯電話、デジタル情報端末、ポケットベル、ナビゲーション、車載用液晶ディスプレイ、液晶モニター、調光パネル、OA機器用ディスプレイ、AV機器用ディスプレイ等の各種液晶表示素子やエレクトロルミネッセンス表示素子あるいはタッチパネルなどに用いることができる。また、耐候性に優れている点から、例えば、建築用内・外装用部材、カーテンウォール、屋根用部材、屋根材、窓用部材、雨どい、エクステリア類、壁材、床材、造作材、道路建設用部材、再帰反射フィルム・シート、農業用フィルム・シート、照明カバー、看板、透光性遮音壁など、公知の建材用途へも特に好適に適用可能である。
【0171】
本発明の成形体は、太陽電池用途として太陽電池表面保護フィルム、太陽電池用封止フィルム、太陽電池用裏面保護フィルム、太陽電池用基盤フィルム、ガスバリアフィルム用保護フィルムなどへも適用可能である。
【0172】
成形体の一形態である本発明のフィルムは、その製法によって特に限定されない。本発明のフィルムは、例えば、前記メタクリル樹脂組成物を、溶液キャスト法、溶融流延法、押出成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法などの公知の方法にて製膜することによって得ることができる。これらのうち、押出成形法が好ましい。押出成形法によれば、改善された靭性を持ち、取扱い性に優れ、靭性と表面硬度および剛性とのバランスに優れたフィルムを得ることができる。押出機から吐出されるメタクリル樹脂組成物の温度は好ましくは160〜270℃、より好ましくは220〜260℃に設定する。
【0173】
押出成形法のうち、良好な表面平滑性、良好な鏡面光沢、低ヘーズのフィルムが得られるという観点から、前記メタクリル樹脂組成物を溶融状態でTダイから押出し、次いでそれを二つ以上の鏡面ロールまたは鏡面ベルトで挟持してフィルムを形成することを含む方法が好ましい。鏡面ロールまたは鏡面ベルトは、金属製であることが好ましい。一対の鏡面ロールまたは鏡面ベルトの間の線圧は、好ましくは2N/mm以上、より好ましくは10N/mm以上、さらにより好ましくは30N/mm以上である。
【0174】
また、鏡面ロールまたは鏡面ベルトの表面温度は共に130℃以下であることが好ましい。また、一対の鏡面ロール若しくは鏡面ベルトは、少なくとも一方の表面温度が60℃以上であることが好ましい。このような表面温度に設定すると、押出機から吐出される前記メタクリル樹脂組成物を自然放冷よりも速い速度で冷却することができ、表面平滑性に優れ且つヘーズの低いフィルムを製造し易い。
【0175】
本発明のフィルムは延伸処理を施したものであってもよい。延伸処理によって、機械的強度が高まり、ひび割れし難いフィルムを得ることができる。延伸方法は特に限定されず、一軸延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、チュブラー延伸法などを挙げることができる。延伸時の温度は、均一に延伸でき、高い強度のフィルムが得られるという観点から、100〜200℃が好ましく、120℃〜160℃がより好ましい。延伸は、通常長さ基準で100〜5000%/分で行われる。延伸は、面積比で1.5〜8倍になるように行うことが好ましい。延伸の後、熱固定を行うことによって、熱収縮の少ないフィルムを得ることができる。
【0176】
本発明のフィルムの厚さは、特に制限されないが、光学フィルムとして用いる場合、その厚さは、好ましくは1〜300μm、より好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜40μmである。フィルムの厚さが薄くなるほど紫外線吸収能が低くなる。本願発明のメタクリル樹脂組成物では紫外線吸収剤を多量に添加してもブリードアウトを発生させにくいので、薄肉のフィルムにおいて紫外線吸収能を高くすることが容易である。
【0177】
本発明のフィルムは、厚さ40μmにおけるヘーズが、好ましくは0.2%以下、より好ましくは0.1%以下である。これにより、表面光沢や透明性に優れる。また、液晶保護フィルムや導光フィルムなどの光学用途においては、光源の利用効率が高まり好ましい。さらに、表面賦形を行う際の賦形精度に優れるため好ましい。
【0178】
本発明のフィルムは、透明性が高く、耐熱性が高く、高温での成形時においても、金型汚れ、ブリードアウトなどの発生が抑制され、紫外線吸収剤の蒸散による問題の発生を低減でき、また薄く形成できるため、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、液晶保護板、携帯型情報端末の表面材、携帯型情報端末の表示窓保護フィルム、導光フィルム、銀ナノワイヤーやカーボンナノチューブを表面に塗布した透明導電フィルム、各種ディスプレイの前面板用途などに好適である。特に本発明のフィルムは位相差が小さいため、偏光子保護フィルムに好適である。
本発明のフィルムは、透明性、耐熱性が高く、紫外線吸収剤を多量に添加してもブリードアウトを発生させにくいので、光学用途以外の用途として、IRカットフィルムや、防犯フィルム、飛散防止フィルム、加飾フィルム、金属加飾フィルム、太陽電池のバックシート、フレキシブル太陽電池用フロントシート、シュリンクフィルム、インモールドラベル用フィルム、ガスバリアフィルム用基材フィルムに使用することができる。
【0179】
本発明のフィルムやシートの少なくとも片面に機能層を設けることができる。機能層としては、ハードコート層、アンチグレア層、反射防止層、スティッキング防止層、光拡散層、防眩層、静電気防止層、防汚層、易滑性層、ガスバリア層などが挙げられる。
【0180】
本発明の偏光板は、本発明の偏光子保護フィルムを少なくとも1枚含むものである。好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂から形成される偏光子と本発明の偏光子保護フィルムが接着剤層を介して積層されてなるものである。
【0181】
本発明の好ましい一実施形態に係る偏光板は、
図1に示すように、偏光子11の一方の面に、接着剤層12、および本発明の偏光子保護フィルム14がこの順で積層され、偏光子11のもう一方の面に、接着剤層15、および光学フィルム16がこの順で積層されてなるものである。接着剤層12と接する本発明の偏光子保護フィルム14の表面には易接着層13を設けても良いが(
図2参照)、本発明の偏光子保護フィルム14の場合、好適には易接着層13を設けずとも接着性を保持できる。易接着層13を設けた場合、接着剤層12と偏光子保護フィルム14の接着性がより良好となる点で好ましいが、生産性とコストの点では劣る。
【0182】
上記ポリビニルアルコール系樹脂から形成される偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性物質(代表的には、ヨウ素、二色性染料)で染色して一軸延伸することによって得られる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂を任意の適切な方法(例えば、樹脂を水または有機溶媒に溶解した溶液を流延成膜する流延法、キャスト法、押出法)にて製膜することによって得ることができる。
該ポリビニルアルコール系樹脂は、重合度が、好ましくは100〜5000、さらに好ましくは1400〜4000である。また、偏光子に用いられるポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚さは、偏光板が用いられるLCDの目的や用途に応じて適宜設定され得るが、代表的には5〜80μmである。
【0183】
本発明の偏光板に設けることができる接着剤層は光学的に透明であれば特に制限されない。接着剤層を構成する接着剤として、例えば、水系接着剤、溶剤系接着剤、ホットメルト系接着剤、UV硬化型接着剤などを用いることができる。これらのうち、水系接着剤およびUV硬化型接着剤が好適である。
【0184】
水系接着剤としては、特に限定されないが、例えば、ビニルポリマー系、ゼラチン系、ビニル系ラテックス系、ポリウレタン系、イソシアネート系、ポリエステル系、エポキシ系等を例示できる。このような水系接着剤には、必要に応じて、架橋剤や他の添加剤、酸等の触媒も配合することができる。前記水系接着剤としては、ビニルポリマーを含有する接着剤などを用いることが好ましく、ビニルポリマーとしては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。またポリビニルアルコール系樹脂には、ホウ酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミン、シュウ酸などの水溶性架橋剤を含有することができる。特に偏光子としてポリビニルアルコール系のポリマーフィルムを用いる場合には、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する接着剤を用いることが、接着性の点から好ましい。さらには、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂を含む接着剤が耐久性を向上させる点からより好ましい。前記水系接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5〜60質量%の固形分を含有してなる。
【0185】
また前記接着剤には、金属化合物フィラーを含有させることができる。金属化合物フィラーにより、接着剤層の流動性を制御することができ、膜厚を安定化して、良好な外観を有し、面内が均一で接着性のバラツキのない偏光板が得られる。
【0186】
接着剤層の形成方法は特に制限されない。例えば、上記接着剤を対象物に塗布し、次いで加熱または乾燥することによって形成できる。接着剤の塗布は本発明の偏光子保護フィルムまたは光学フィルムに対して行ってもよいし、偏光子に対して行ってもよい。接着剤層を形成した後、偏光子保護フィルム若しくは光学フィルムと偏光子とを押し合わせることによって両者を積層することができる。積層においてはロールプレス機や平板プレス機などを用いることができる。加熱乾燥温度、乾燥時間は接着剤の種類に応じて適宜決定される。
接着剤層の厚さは、乾燥状態において、好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.03〜5μmである。
【0187】
本発明の偏光板に施すことができる易接着処理は、偏光子保護フィルムと偏光子とが接する面の接着性を向上させるものである。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、低圧UV処理等の表面処理を挙げることができる。
【0188】
また、易接着層を設けることも可能である。易接着層としては、例えば、反応性官能基を有するシリコーン層を挙げることができる。反応性官能基を有するシリコーン層の材料は、特に制限されないが、例えば、イソシアネート基含有のアルコキシシラノール類、アミノ基含有アルコキシシラノール類、メルカプト基含有アルコキシシラノール類、カルボキシ含有アルコキシシラノール類、エポキシ基含有アルコキシシラノール類、ビニル型不飽和基含有アルコキシシラノール類、ハロゲン基含有アルコキシラノール類、イソシアネート基含有アルコキシシラノール類を挙げることができる。これらのうち、アミノ系シラノールが好ましい。シラノールを効率よく反応させるためのチタン系触媒や錫系触媒を上記シラノールに添加することにより、接着力を強固にすることができる。また上記反応性官能基を有するシリコーンに他の添加剤を加えてもよい。他の添加剤としては、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン-フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂などの粘着付与剤;紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤等を挙げることができる。また、易接着層として、セルロースアセテートブチレート樹脂をケン化させたものからなる層も挙げられる。
【0189】
上記易接着層は公知の技術により塗工、乾燥して形成される。易接着層の厚さは、乾燥状態において、好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは10〜50nmである。塗工の際、易接着層形成用薬液を溶剤で希釈してもよい。希釈溶剤は特に制限されないが、アルコール類を挙げることができる。希釈濃度は特に制限されないが、好ましくは1〜5質量%、より好ましくは1〜3質量%である。
【0190】
光学フィルム16は本発明の偏光子保護フィルムであってもよいし、別の任意の適切な光学フィルムであってもよい。用いられる光学フィルムは、特に制限されず、例えば、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、メタクリル樹脂等からなるフィルムを挙げることができる。
【0191】
セルロース樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このよう
なセルロースエステル系樹脂の具体例としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネート等を挙げることができる。これらのなかでも、セルローストリアセテートが特に好ましい。セルローストリアセテートは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。セルローストリアセテートの市販品の例としては、富士フイルム社製の商品名「UV−50」、「UV−80」、「SH−80」、「TD−80U」、「TD−TAC」、「UZ−TAC」や、コニカミノルタ社製の「KCシリーズ」等を挙げることができる。
【0192】
環状ポリオレフィン樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂を挙げることができる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびに、それらの水素化物などを挙げることができる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーを挙げることができる。
【0193】
環状ポリオレフィン樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、ポリプラスチックス株式会社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品名「APEL」を挙げることができる。
【0194】
光学フィルム16を構成するメタクリル樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切なメタクリル樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリメタクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合
体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体( 例えば、メタクリル酸メチル− メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)を挙げることができる。
【0195】
光学フィルム16を構成するメタクリル樹脂の具体例として、例えば、三菱レイヨン株式会社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A 、特開2013−033237やWO2013/005634号公報に記載のメタクリル酸メチルとマレイミド系単量体を共重合したアクリル樹脂、WO2005/108438号公報に記載の分子内に環構造を有するアクリル樹脂、特開2009−197151号公報に記載の分子内に環構造を有するメタクリル樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高ガラス転移温度(Tg)メタクリル樹脂を挙げることができる。
【0196】
光学フィルム16を構成するメタクリル樹脂として、ラクトン環構造を有するメタクリル樹脂を用いることもできる。高い耐熱性、高い透明性、二軸延伸することにより高い機械的強度を有するからである。
【0197】
ラクトン環構造を有するメタクリル樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有するメタクリル樹脂を挙げることができる。
【0198】
本発明の偏光板は、画像表示装置に使用することができる。画像表示装置の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)のような自発光型表示装置、液晶表示装置を挙げることができる。液晶表示装置は、液晶セルと、当該液晶セルの少なくとも片側に配置された上記偏光板とを有する。
この際、本発明の偏光子保護フィルムは、上記偏光板の少なくとも液晶セル側に設けられることが好ましい。
【0199】
以下、実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、物性値等の測定は以下の方法によって実施した。
【0200】
(重合転化率)
島津製作所社製ガスクロマトグラフ GC−14Aに、カラムとしてGL Sciences Inc.製 Inert CAP 1(df=0.4μm、0.25mmI.D.×60m)を繋ぎ、インジェクション温度を180℃に、検出器温度を180℃に、カラム温度を60℃(5分間保持)から昇温速度10℃/分で200℃まで昇温して、10分間保持する条件に設定して、測定を行い、この結果に基づいて重合転化率を算出した。
【0201】
(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)にて下記の条件でクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンの分子量に換算した値を算出した。ベースラインはGPCチャートの高分子量側のピークの傾きが保持時間の早い方から見てゼロからプラスに変化する点と、低分子量側のピークの傾きが保持時間の早い方から見てマイナスからゼロに変化する点を結んだ線とした。
GPC装置:東ソー株式会社製、HLC−8320
検出器:示差屈折率検出器
カラム:東ソー株式会社製のTSKgel SuperMultipore HZM−Mの2本とSuperHZ4000を直列に繋いだものを用いた。
溶離剤: テトラヒドロフラン
溶離剤流量: 0.35ml/分
カラム温度: 40℃
検量線:標準ポリスチレン10点のデータを用いて作成
【0202】
(三連子表示のシンジオタクティシティ(rr))
メタクリル樹脂の
1H−NMRスペクトルを、核磁気共鳴装置(Bruker社製 ULTRA SHIELD 400 PLUS)を用いて、溶媒として重水素化クロロホルムを用い、室温、積算回数64回の条件にて、測定した。そのスペクトルからTMSを0ppmとした際の0.6〜0.95ppmの領域の面積(X)と、0.6〜1.35ppmの領域の面積(Y)とを計測し、次いで、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)を式:(X/Y)×100にて算出した。
【0203】
(ガラス転移温度Tg)
メタクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂およびメタクリル樹脂組成物を、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量測定装置(島津製作所製、DSC−50(品番))を用いて、230℃まで1回目の昇温をし、次いで室温まで冷却し、その後、室温から230℃までを10℃/分で2回目の昇温をさせる条件にてDSC曲線を測定した。2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を本発明におけるガラス転移温度とした。
【0204】
(未延伸フィルムの強度)
未延伸フィルムの両端を手で持って、軽く張力をかけた際の状態を評価した。
A:未延伸フィルムの外観に変化はなく、得られたままの状態を保持できた。
B:未延伸フィルムがもろく、ひび割れてしまった。
【0205】
(表面平滑性)
未延伸フィルムまたは二軸延伸フィルムの表面を目視により観察し以下の基準で表面平滑性を評価した。
A:表面が平滑である。
B:表面に凹凸がある。
【0206】
(全光線透過率)
二軸延伸フィルムから試験片を切り出し、その全光線透過率をJIS K7361−1に準じて、ヘーズメータ(村上色彩研究所製、HM−150)を用いて測定した。
また、メタクリル樹脂組成物を熱プレスして、3.2mm厚の成形体を形成し、その全光線透過率を上記と同様にして測定した。
【0207】
(波長380nm光透過率)
二軸延伸フィルムから試験片を切り出し、その全光線透過率をJIS K7361−1:1997に準じて、分光光度計(島津製作所製、UV−3600)を用いて波長380nmにおける透過率を測定した。
【0208】
(ヘーズ)
二軸延伸フィルムから試験片を切り出し、そのヘーズをJISK7136に準拠して、ヘーズメータ(村上色彩研究所製、HM−150)を用いて測定した。
また、メタクリル樹脂組成物を熱プレスして、3.2mm厚の成形体を形成し、そのヘーズを上記と同様にして測定した。
【0209】
(延伸性)
未延伸フィルムを二軸延伸する際、以下の基準で延伸性を評価した。
A:割れやクラックのない二軸延伸フィルムを10サンプル中、5サンプル以上取得できた。
B:割れやクラックのない二軸延伸フィルムを10サンプル中、4サンプル以下しか取得できなかった。
【0210】
(ロール汚れ)
メタクリル樹脂組成物をOptical Control System社製の製膜機(型式FS−5)にて、シリンダおよびTダイの温度290℃、リップ間隙0.5mm、吐出量2.7kg/hr、ロール温度85℃、フィルム引取り速度2.2m/分で押出し、フィルム厚さ100μmに調整し、製膜時のロール汚れを観察した。ロール汚れはフィルムが通過する金属ロール表面を目視で観察し、製膜開始からロール全面に白もやが発生するまでの時間で評価した。
また、製膜開始から3時間経過したときに得られた未延伸フィルムから100mm×60mmの試験片を切出し、その外観を、以下の基準で目視評価した。
A:欠点が100個未満
B:欠点が100個以上
【0211】
(製造例1)(メタクリル樹脂〔A−a〕の製造)
撹拌翼と三方コックが取り付けられた5Lのガラス製反応容器内を窒素で置換した。これに、室温下にて、トルエン1600g、1,2−ジメトキシエタン80g、濃度0.45Mのイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムのトルエン溶液53.5g(30.9mmol)、および濃度1.3Mのsec−ブチルリチウムの溶液(溶媒:シクロヘキサン95質量%、n−ヘキサン5質量%)6.17g(10.3mmol)を仕込んだ。撹拌しながら、これに、−20℃にて、蒸留精製したメタクリル酸メチル550gを30分間かけて滴下した。滴下終了後、−20℃にて180分間撹拌した。溶液の色が黄色から無色に変わった。この時点におけるメタクリル酸メチルの転化率は100%であった。
得られた溶液にトルエン1500gを加えて希釈した。次いで、該希釈液をメタノール100kgに注ぎ入れ、沈澱物を得た。得られた沈殿物を80℃、140Paにて24時間乾燥して、Mwが96100で、分子量分布が1.07で、シンジオタクティシティ(rr)が83%で、ガラス転移温度が133℃で、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の割合が100質量%であるメタクリル樹脂〔A−a〕を得た。
【0212】
(製造例2)(メタクリル樹脂〔A−b〕の製造)
撹拌翼と三方コックが取り付けられた5Lのガラス製反応容器内を窒素で置換した。これに、室温下にて、トルエン1600g、1,2−ジメトキシエタン80g、濃度0.45Mのイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムのトルエン溶液73.3g(42.3mmol)、および濃度1.3Mのsec−ブチルリチウムの溶液(溶媒:シクロヘキサン95%、n−ヘキサン5%)8.44g(14.1mmol)を仕込んだ。撹拌しながら、これに、15℃にて、蒸留精製したメタクリル酸メチル550gを30分間かけて滴下した。滴下終了後、15℃で90分間撹拌した。溶液の色が黄色から無色に変わった。この時点におけるメタクリル酸メチルの重合転化率は100%であった。
得られた溶液にトルエン1500gを加えて希釈した。次いで、希釈液をメタノール100kgに注ぎ入れ、沈澱物を得た。得られた沈殿物を80℃、140Paにて24時間乾燥して、Mwが70000で、分子量分布が1.06で、シンジオタクティシティ(rr)が75%で、ガラス転移温度が131℃で、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が100質量%であるメタクリル樹脂〔A−b〕を得た。
【0213】
(製造例3)(メタクリル樹脂〔A−c〕の製造)
攪拌機および採取管が取り付けられたオートクレーブ内を窒素で置換した。これに、精製されたメタクリル酸メチル100質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル(水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.0054質量部、およびn−オクチルメルカプタン0.203質量部を入れ、撹拌して、原料液を得た。かかる原料液中に窒素を送り込み、原料液中の溶存酸素を除去した。
オートクレーブと配管で接続された槽型反応器に容量の2/3まで原料液を入れた。温度を140℃に維持して先ずバッチ方式で重合反応を開始させた。重合転化率が55質量%になったところで、平均滞留時間150分となる流量で、原料液をオートクレーブから槽型反応器に供給し、且つ原料液の供給流量に相当する流量で、反応液を槽型反応器から抜き出して、温度140℃に維持し、連続流通方式の重合反応に切り替えた。切り替え後、定常状態における重合転化率は48質量%であった。
【0214】
定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、平均滞留時間2分間となる流量で内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入し、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去して、溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂を内温260℃の二軸押出機に供給してストランド状に吐出し、ペレタイザーでカットして、ペレット状の、Mwが101000で、分子量分布が1.87で、シンジオタクティシティ(rr)が52%で、ガラス転移温度が120℃で、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が100質量%であるメタクリル樹脂〔A−c〕を得た。
【0215】
(製造例4)(メタクリル樹脂〔A−d〕の製造)
攪拌機および採取管が取り付けられたオートクレーブ内を窒素で置換した。これに、精製されたメタクリル酸メチル100質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル(水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.0074質量部、およびn−オクチルメルカプタン0.28質量部を入れ、撹拌して、原料液を得た。かかる原料液中に窒素を送り込み、原料液中の溶存酸素を除去した。
オートクレーブと配管で接続された槽型反応器に容量の2/3まで原料液を入れた。温度を140℃に維持して先ずバッチ方式で重合反応を開始させた。重合転化率が55質量%になったところで、平均滞留時間150分となる流量で、原料液をオートクレーブから槽型反応器に供給し、且つ原料液の供給流量に相当する流量で、反応液を槽型反応器から抜き出して、温度140℃に維持し、連続流通方式の重合反応に切り替えた。切り替え後、定常状態における重合転化率は52質量%であった。
【0216】
定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、平均滞留時間2分間となる流量で内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入し、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去して、溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂を内温260℃の二軸押出機に供給してストランド状に吐出し、ペレタイザーでカットして、ペレット状の、Mwが82000で、分子量分布が1.92で、シンジオタクティシティ(rr)が51%で、ガラス転移温度が120℃で、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が100質量%であるメタクリル樹脂〔A−d〕を得た。
【0217】
(製造例5)(メタクリル樹脂〔A−e〕の製造)
メタクリル樹脂〔A−a〕60質量部およびメタクリル樹脂〔A−c〕40質量部を混ぜ合わせ、二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)で250℃にて混練押出してメタクリル樹脂〔A−e〕を製造した。
【0218】
(製造例6)(メタクリル樹脂〔A−f〕の製造)
メタクリル樹脂〔A−b〕60質量部およびメタクリル樹脂〔A−d〕40質量部を混ぜ合わせ、二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)で260℃にて混練押出してメタクリル樹脂〔A−f〕を製造した。
【0219】
(製造例7)(メタクリル樹脂〔A−g〕の製造)
攪拌機および採取管が取り付けられたオートクレーブ内を窒素で置換した。これに、精製されたメタクリル酸メチル93.4質量部、アクリル酸メチル6.6質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル(水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.0080質量部、およびn−オクチルメルカプタン0.45質量部を入れ、撹拌して、原料液を得た。かかる原料液中に窒素を送り込み、原料液中の溶存酸素を除去した。
オートクレーブと配管で接続された槽型反応器に容量の2/3まで原料液を入れた。温度を140℃に維持して先ずバッチ方式で重合反応を開始させた。重合転化率が55質量%になったところで、平均滞留時間150分となる流量で、原料液をオートクレーブから槽型反応器に供給し、且つ原料液の供給流量に相当する流量で、反応液を槽型反応器から抜き出して、温度140℃に維持し、連続流通方式の重合反応に切り替えた。切り替え後、定常状態における重合転化率は55質量%であった。
【0220】
定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、平均滞留時間2分間となる流量で内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入し、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去して、溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂を内温260℃の二軸押出機に供給してストランド状に吐出し、ペレタイザーでカットして、ペレット状の、Mwが55000で、分子量分布が1.91で、シンジオタクティシティ(rr)が51%で、ガラス転移温度が110℃で、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が95質量%であるメタクリル樹脂〔A−g〕を得た。
【0221】
(製造例8)(メタクリル樹脂〔A−h〕の製造)
スクリュー回転数120rpm、温度250℃に設定された二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)に、メタクリル樹脂〔A−d〕を2kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた。ノズルから樹脂100質量部に対して2質量部のモノメチルアミン(イミド化剤:三菱ガス化学株式会社製)を注入した。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のモノメチルアミンを20Torrに減圧されたベント口から排出した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却し、次いでペレタイザーでペレット化することにより、メタクリル系樹脂〔A−h’〕を得た。
【0222】
次いで、押出機各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数100rpmに設定された二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)に、ホッパーからメタクリル系樹脂〔A−h’〕を1kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた。ノズルから樹脂100質量部に対して0.8質量部の炭酸ジメチルと0.2質量部のトリエチルアミンの混合液を注入し樹脂中のカルボキシル基の低減を行った。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰の炭酸ジメチルを20Torrに減圧されたベント口から排出した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却し、次いでペレタイザーでペレット化し、酸価を低減したメタクリル系樹脂〔A−h”〕を得た。
【0223】
さらに、スクリュー回転数100rpm、温度230℃に設定された二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)にメタクリル系樹脂〔A−h”〕を供給量1kg/hrの条件で投入した。ベント口の圧力を20Torrに減圧して未反応の副原料などを含む揮発分を除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却し、次いでペレタイザーでペレット化することにより、メタクリル樹脂〔A−h〕を得た。
【0224】
メタクリル樹脂〔A−h〕は、イミド化率が3.6モル%、Mwが82000、Mw/Mnが1.95、ガラス転移温度が124℃、酸価が0.27mmol/gであった。
【0225】
(製造例9)(メタクリル樹脂〔A−i〕の製造)
WO 2014−021264 Aの実施例に記載の共重合体(A−1)の製造方法と同じ方法でメタクリル樹脂〔A−i〕を得た。
13C‐NMR分析によって、メタクリル樹脂〔A−i〕は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を26質量%、環状構造を有する無水マレイン酸に由来する構造単位を18質量%、スチレンに由来する構造単位を56質量%含有するものであった。
メタクリル樹脂〔A−i〕は、Mwが169000、Mw/Mnが2.47、Tgが137℃であった。
【0226】
スミペックスMHF(住友化学社製)を用意し、これをメタクリル樹脂〔A−j〕として用いた。
【0227】
メタクリル樹脂〔A−a〕〜〔A−j〕の物性を表1に示す。
【0229】
使用した紫外線吸収剤〔B〕を以下に記載した。
B−a:2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(ADEKA社製;LA−F70)
B−b:2,2‘−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−オクチルフェノール](ADEKA社製;LA−31)
【0230】
化合物〔C〕として使用したブロック共重合体を以下に説明する。
【0231】
製造例10 (ジブロック共重合体〔C−B2−a〕の製造)
内部を脱気し、窒素で置換した三口フラスコに、室温にて乾燥トルエン735kgと、1,2−ジメトキシエタン36.75kgと、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム20molを含有するトルエン溶液39.4kgとを入れた。これにsec−ブチルリチウム1.17molを加えた。さらにこれにメタクリル酸メチル39.0kgを加え、室温で1時間反応させてメタクリル酸メチル重合体〔c1
1〕を得た。反応液に含まれるメタクリル酸メチル重合体〔c1
1〕の重量平均分子量Mw
c11は45800であった。
【0232】
次いで、反応液を−25℃にし、アクリル酸n−ブチル29.0kgとアクリル酸ベンジル10.0kgとの混合液を0.5時間かけて滴下して、メタクリル酸メチル重合体〔c1
1〕の末端から重合反応を継続させて、メタクリル酸メチル重合体ブロック〔c1
1〕とアクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸ベンジルからなるアクリル酸エステル重合体ブロック〔c2〕とからなるジブロック共重合体〔C−B2−a〕を得た。反応液に含まれるブロック共重合体〔C−B2−a〕は、重量平均分子量Mw
CB-1が92000、重量平均分子量Mw
CB-1/数平均分子量Mn
CB-1が1.06であった。メタクリル酸メチル重合体〔c1
1〕の重量平均分子量が45800であったので、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸ベンジルからなるアクリル酸エステル重合体〔c2〕の重量平均分子量を46200と決定した。アクリル酸エステル重合体〔c2〕に含まれるアクリル酸ベンジルの割合は25.6質量%であった。
【0233】
続いて、反応液にメタノール4kgを添加して重合を停止させた。その後、反応液を大量のメタノールに注ぎジブロック共重合体〔C−B2−a〕を析出させ、該析出物を濾し取り、80℃、1torr(約133Pa)で、12時間乾燥させた。アクリル酸エステル重合体ブロック〔c2〕の質量に対するメタクリル酸エステル重合体ブロック〔c1
1〕の質量の比は50/50であった。
【0234】
製造例11 (トリブロック共重合体〔C−B2−b〕の製造)
内部を脱気し、窒素で置換した三口フラスコに、室温にて乾燥トルエン2003kgと、1,2−ジメトキシエタン100.15kgと、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム20molを含有するトルエン溶液51.5kgとを入れた。これにsec−ブチルリチウム1.13molを加えた。さらにこれにメタクリル酸メチル34.3kgを加え、室温で1時間反応させてメタクリル酸メチル重合体〔c1
1〕を得た。反応液に含まれるメタクリル酸メチル重合体〔c1
1〕の重量平均分子量Mw
c11は6000であった。
【0235】
次いで、反応液を−30℃にし、アクリル酸n−ブチル266.3kgを0.5時間かけて滴下することによって、メタクリル酸メチル重合体〔c1
1〕の末端から重合反応を継続させて、メタクリル酸メチル重合体ブロック〔c1
1〕とアクリル酸n−ブチルからなるアクリル酸エステル重合体ブロック〔c2〕とからなるジブロック共重合体を得た。反応液に含まれるジブロック重合体の重量平均分子量は53000であった。メタクリル酸メチル重合体ブロック〔c1
1〕の重量平均分子量が6000であったので、アクリル酸n−ブチルからなるアクリル酸エステル重合体ブロック〔c2〕の重量平均分子量を47000と決定した。アクリル酸エステル重合体〔c2〕に含まれるアクリル酸ベンジルの割合は0質量%であった。
【0236】
続いて、メタクリル酸メチル297.3kgを添加して、反応液を室温に戻し、8時間攪拌することによって、アクリル酸エステル重合体ブロック〔c2〕の末端から重合反応を継続させて、メタクリル酸メチル重合体ブロック〔c1
1〕とアクリル酸n−ブチルからなるアクリル酸エステル重合体ブロック〔c2〕とメタクリル酸メチル重合体ブロック〔c1
2〕とからなるトリブロック共重合体〔C−B2−b〕を得た。
【0237】
その後、反応液にメタノール4kgを添加して重合を停止させた。その後、反応液を大量のメタノールに注ぎトリブロック共重合体〔C−B2−b〕を析出させ、該析出物を濾し取り、80℃、1torr(約133Pa)で、12時間乾燥させた。トリブロック共重合体〔C−B2−b〕は重量平均分子量Mw
CB-2が105000、Mw
CB-2/Mn
CB-2が1.08であった。ジブロック共重合体の重量平均分子量が53000であったので、メタクリル酸メチル重合体ブロック〔c1
2〕の重量平均分子量を52000と決定した。アクリル酸エステル重合体ブロック〔c2〕の質量に対するメタクリル酸エステル重合体ブロック〔c1
1〕と〔c1
2〕の合計質量の比は45/55であった。
【0238】
製造例12 (トリブロック共重合体〔C−B2−c〕の製造)
重合体ブロック〔c1
1〕作製におけるメタクリル酸メチルの量を124.7kgに変え、アクリル酸n−ブチルの量を175.6kgに変え、重合体ブロック〔c1
2〕作製におけるメタクリル酸メチルを171.5kgに変えた他は製造例11と同じ方法でメタクリル酸メチル重合体ブロック〔c1
1〕とアクリル酸n−ブチルからなるアクリル酸エステル重合体〔c2〕とメタクリル酸メチル重合体ブロック〔c1
2〕からなるトリブロック共重合体〔C−B2−c〕を得た。メタクリル酸メチル重合体ブロック〔c1
1〕はMw
c11が22000であった。アクリル酸エステル重合体〔c2〕は、Mw
c2が31000、アクリル酸ベンジルの割合が0質量%であった。メタクリル酸メチル重合体ブロック〔c1
2〕はMw
c12が30000であった。トリブロック共重合体〔C−B2−c〕はMw
CB-3が83000、Mw
CB-3/Mn
CB-3が1.09
であった。アクリル酸エステル重合体ブロック〔c2〕の質量に対するメタクリル酸エステル重合体ブロック〔c1
1〕と〔c1
2〕の合計質量の比は37/63であった。
【0239】
製造例13 (ジブロック共重合体〔C−B2−d〕の製造)
メタクリル酸メチルの量を158.7kgに変え、アクリル酸n−ブチルの量を334.2kgに変えた他は製造例10と同じ方法でメタクリル酸メチル重合体ブロック〔c1
1〕とアクリル酸n−ブチルからなるアクリル酸エステル重合体〔c2〕とからなるジブロック共重合体〔C−B2−d〕を得た。
メタクリル酸メチル重合体ブロック〔c1
1〕はMw
c11が28000であった。アクリル酸エステル重合体〔c2〕は、Mw
c2が59000で、アクリル酸ベンジルの割合が0質量%であった。ジブロック共重合体〔C−B2−d〕はMw
CB-4が87000、Mw
CB-4/Mn
CB-4が1.10であった。アクリル酸エステル重合体ブロック〔c2〕の質量に対するメタクリル酸エステル重合体ブロック〔c1
1〕の質量の比は68/32であった。
【0240】
化合物〔C〕として使用したブロック共重合体〔C−B2−a〕、ブロック共重合体〔C−B2−b〕、ブロック共重合体〔C−B2−c〕、およびブロック共重合体〔C−B2−d〕の物性を表2に示す。
【0242】
化合物〔C〕として使用したグラフト共重合体を以下に記載した。
C−G2−a:ポリカーボネート(PC)(主鎖)とスチレン−アクリロニトリル−メタクリル酸グリシジル(側鎖)とのグラフト共重合体(日油(株)製「モディパーCL430G」
C−G3−a
:エチレン-メタクリル酸グリシジル共重合体(EGMA)(主鎖)とアクリル酸ブチル-メタクリル酸メチル共重合体(P(BA/MMA))(側鎖)とのグラフト共重合体(日油(株)製「モディパーA4300」
C−G3−b
:エチレン-メタクリル酸グリシジル共重合体(EGMA)(主鎖)とスチレン-アクリロニトリル共重合体(AS)(側鎖)とのグラフト共重合体(日油(株)製「モディパーA4400」
【0243】
グラフト共重合体〔C−G2−a〕、グラフト共重合体〔C−G3−a〕、およびグラフト共重合体〔C−G3−b〕の物性を表3に示す。
【0245】
使用したその他の重合体
PC樹脂:直鎖のポリカーボネート樹脂(住化スタイロンポリカーボネート社製、SD POLYCA TR−2201(品番)、MVR(300℃、1.2Kg、10分間;JIS K7210準拠)=210cm
3/10分、Mw=22000、Mw/Mn=2.0)
AS樹脂:スチレン−アクリロニトリルランダム共重合体(新日鉄住金化学社製、エスチレン AS−61(品番)、MFR(220℃、10Kg、10分間;JIS K7210準拠)=35g/10分、Mw=130000、Mw/Mn=2.4)
フェノキシ樹脂;Phenoxy(新日鉄住金化学社製、YP−50S(品番)、MFR(230℃、3.8Kg、10分間;JIS K7210準拠)=22g/10分、Mw=55000、Mw/Mn=2.5)
【0246】
使用した高分子加工助剤を以下に記載した。なお、ここでMMAはメタクリル酸メチルに由来する構造単位を意味し、BAはアクリル酸ブチルに由来する構造単位を意味する。
F1:株式会社三菱レイヨン社製メタブレンP550A(平均重合度:7734、MMA88質量%/BA12質量%)
F2:株式会社クレハ社製パラロイドK125P(平均重合度:19874、MMA79質量%/BA21質量%)
【0247】
<実施例1>
メタクリル樹脂〔A−f〕100質量部、紫外線吸収剤〔B−a〕0.9質量部、ブロック共重合体〔C−B2−a〕5質量部及び加工助剤〔F1〕2質量部を混ぜ合わせ、二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)で250℃にて混練押出してメタクリル樹脂組成物〔1〕を製造した。
メタクリル樹脂組成物〔1〕を熱プレス成形して50mm×50mm×3.2mmの板状成形体を形成し、全光線透過率、ヘーズおよびガラス転移温度を測定した。メタクリル樹脂組成物〔1〕の物性を表4に示す。
【0248】
メタクリル樹脂組成物〔1〕を、80℃で12時間乾燥させた。20mmφ単軸押出機(OCS社製)を用いて、樹脂温度260℃にて、メタクリル樹脂組成物〔1〕を150mm幅のTダイから押し出し、それを表面温度85℃のロールにて引き取り、幅110mm、厚さ160μmの未延伸フィルムを得た。製造された未延伸フィルムについての表面平滑性と強度の評価結果を表4に示す。
【0249】
前記の手法にて得られた厚さ160μmの未延伸フィルムを、二辺が押出方向と平行となるように100mm×100mmの小片に切り出し、パンタグラフ式二軸延伸試験機(東洋精機(株)製)により、ガラス転移温度+10℃の延伸温度、一方向150%/分の延伸速度、一方向2倍の延伸倍率で押出方向と平行な方向を先に、次いでその垂直方向という順に逐次二軸延伸し(面積比で4倍)、10秒間保持の条件で延伸し、次いで室温下に取り出すことで急冷して、厚さ40μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムについての表面平滑性、全光線透過率、波長380nm光透過率、ヘーズおよび延伸性の測定結果を表4に示す。
【0250】
<実施例2〜23、比較例1〜10>
表4〜表7に示す配合とする以外は実施例1と同じ方法でメタクリル樹脂組成物〔2〕〜〔33〕を製造し、実施例1と同じ方法で評価した。評価結果を表4〜表7に示す。
メタクリル樹脂組成物〔1〕の代わりにメタクリル樹脂組成物〔2〕〜〔33〕を用いた以外は実施例1と同じ方法で未延伸フィルム並びに二軸延伸フィルムを得た。評価結果を表4〜表7に示す。
なお、実施例20では、幅110mm、厚さ80μmの未延伸フィルムが得られるように、ロールの引取り速度を調整した。実施例20における二軸延伸は実施例1と同じ方法で行った。
【0255】
以上の結果から、紫外線吸収剤とブロック共重合体またはグラフト共重合体とをメタクリル樹脂に配合してなる本発明のメタクリル樹脂組成物は、耐熱性が高く、製膜時の成形装置への汚染が少ないことがわかる。本発明のメタクリル樹脂組成物は、成形性および延伸性が良好である。また、本発明のフィルムを延伸することによって40μm以下の薄肉のフィルムを得ることができる。