特許第6808910号(P6808910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808910
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】コンクリート型枠
(51)【国際特許分類】
   E04G 9/05 20060101AFI20201221BHJP
   B32B 5/22 20060101ALI20201221BHJP
   B32B 21/08 20060101ALI20201221BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   E04G9/05
   B32B5/22
   B32B21/08
   B32B27/40
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-260084(P2014-260084)
(22)【出願日】2014年12月24日
(65)【公開番号】特開2016-121436(P2016-121436A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年11月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124143
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 嘉久
(72)【発明者】
【氏名】二宮 淳
(72)【発明者】
【氏名】南田 至彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 豊邦
(72)【発明者】
【氏名】野中 諒
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−015513(JP,A)
【文献】 特開2005−041898(JP,A)
【文献】 特開2013−163707(JP,A)
【文献】 特開2009−242557(JP,A)
【文献】 特開平07−004028(JP,A)
【文献】 特開2003−246830(JP,A)
【文献】 特開2008−001738(JP,A)
【文献】 特許第6613017(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0275124(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/05,9/10
B32B 5/22
B32B 21/08
B32B 27/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合板(i)、発泡ウレタン層(ii)、及び、上塗り塗膜(iii)が順次積層されており、前記発泡ウレタン層(ii)が、不活性ガス由来の発泡構造を有するウレタンホットメルト樹脂の硬化物であり、前記ウレタンホットメルト樹脂が、芳香族ポリエステルポリオール、及び、ポリエーテルポリオールを含有するポリオールとポリイソシアネートと反応物である、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有することを特徴とするコンクリート型枠。
【請求項2】
前記発泡ウレタン層(ii)の密度が、0.1〜0.8g/cm3の範囲である請求項1記載のコンクリート型枠。
【請求項3】
前記合板(i)が、針葉樹合板又は植林木合板である請求項1又は2記載のコンクリート型枠。
【請求項4】
合板(i)、発泡ウレタン層(ii)、及び、上塗り塗膜(iii)が順次積層されているコンクリート型枠の製造方法であって、前記発泡ウレタン層(ii)が、不活性ガス由来の発泡構造を有するウレタンホットメルト樹脂の硬化物であり、前記ウレタンホットメルト樹脂が、芳香族ポリエステルポリオール、及び、ポリエーテルポリオールを含有するポリオールとポリイソシアネートと反応物である、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有するものであり、前記ウレタンホットメルト樹脂に不活性ガスを注入した後に、それを前記合板(i)上に、ナイフコーターを使用して、1コートで塗布することで発泡ウレタン層(ii)を形成することを特徴とするコンクリート型枠の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐クラック性に優れるコンクリート型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等の建築物を造る際には、組み上げた鉄筋の周りをコンクリート型枠で囲み、その囲まれた空間にコンクリートを流し込み、コンクリート固化後には前記コンクリート型枠は取り外す、コンクリート型枠工法が広く利用されている。近年、建築物の高層化に伴い、コンクリート型枠の消費量も増加しており、建築コスト削減の点から、コンクリート型枠を繰り返し使用できるよう耐久性の向上が求められている。
【0003】
前記コンクリート型枠としては、これまで合板、水性塗膜、及び、アクリル系上塗り塗膜が順次積層されたコンクリート型枠が広く利用されていたが、下塗り塗膜に使用されている水性樹脂の乾燥工程が必要であるため、合板が反り返りやすく、耐久性が低下する問題があった。
【0004】
従って、前記下塗り塗膜についても種々の研究がなされており、例えば、前記下塗り塗膜に湿気硬化型ポリウレタンホットメルトを使用した報告がなされている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルトを使用した場合には、乾燥工程が不要となるため、生産性に優れるものの、コンクリート型枠が繰り返し使用された場合に、クラックが入りやすいとの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−15513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、耐クラック性に優れるコンクリート型枠を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、合板(i)、発泡ウレタン層(ii)、及び、上塗り塗膜(iii)が順次積層されていることを特徴とするコンクリート型枠を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンクリート型枠は、下塗り塗膜に発泡ウレタン層(ii)を使用することにより、外部からの衝撃を吸収しやすく、耐クラック性に優れるものである。また、日本において広く利用されている、節や木目の強い針葉樹合板や植林木合板を基板としても、コンクリート型枠表面に凹凸を浮かばせず、外観にも優れるものである。更に、前記発泡ウレタン層(ii)及び上塗り塗膜(iii)は1コートでも形成可能であり、生産性にも優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のコンクリート型枠は、合板(i)、発泡ウレタン層(ii)、及び、上塗り塗膜(iii)が順次積層されているものである。
【0011】
前記合板(i)としては、例えば、ラワン合板、シナ合板、針葉樹合板、植林木合板等を使用することができる。これらの樹木を使用した合板の構成としては、1種類の樹木による単層又は複数の層であってもよいし、2種類以上の樹木による複数の層であってもよい。前記合板(i)としては、昨今のラワン材の枯渇、及び、国産材の有効活用促進の流れから、針葉樹合板又は植林木合板を使用することが好ましい。
【0012】
前記針葉樹合板に使用できる針葉樹としては、例えば、椴松、唐松、檜、杉等を使用することができる。また、前記植林木合板に使用できる植林木としては、例えば、ポプラ、ファルカタ、カメレレ、ユーカリ、ゴム、エリマ、ターミナリア、キャンプノスペルマ、アカシアマンギューム、グメリナ、メルクシパイン、ラジアータパイン等を使用することができる。
【0013】
なお、前記針葉樹合板又は植林木合板の上には前記針葉樹合板又は植林木合板が有する木目や抜け節を緩和する目的で下地処理が施されていてもよいが、本発明で使用する発泡ウレタン層(ii)によれば、前記下地処理を施さなくても経時的な節や木目による浮き出しのないコンクリート型枠が得られる。
【0014】
前記発泡ウレタン層(ii)は、発泡構造を有するウレタン樹脂により形成されるものである。前記ウレタン樹脂としては、例えば、ウレタンホットメルト樹脂、二液型ウレタン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂等を用いることができる。これらの中でも、耐クラック性、上塗り塗膜(iii)との接着性、及び、コンクリート型枠の生産性をより一層向上でいる点から、ウレタンホットメルト樹脂を使用することが好ましい。
【0015】
前記ウレタンホットメルト樹脂としては、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有するものであることが好ましい。また、前記ウレタンプレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるものであることが好ましい。
【0016】
前記ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール。ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリアクリルポリオール、ダイマージオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、発泡構造においてもより一層優れた接着性を有する点から、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールを含有するポリオールを用いることが好ましい。
【0017】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、芳香族ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、結晶性ポリエステルポリオール、非晶性ポリエステルポリオール等を用いることができる。これらのポリエステルポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、接着強度、及び、機械的強度をより一層向上できる点から、芳香族ポリエステルポリオール、及び/又は、ポリカプロラクトンポリオールを用いることが好ましい。
【0018】
前記ポリエステルポリオールを用いる場合の使用量としては、接着強度、及び、機械的強度をより一層向上できる点から、ポリオール全量中30〜95質量%の範囲であることが好ましく、50〜90質量%の範囲がより好ましい。
【0019】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリテトラメチレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレンポリオール等を用いることができる。これらのポリエーテルポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記ポリエーテルポリオールを用いる場合の使用量としては、接着強度、及び、機械的強度をより一層向上できる点から、ポリオール全量中5〜70質量%の範囲であることが好ましく、7〜60質量%の範囲がより好ましい。
【0021】
前記ポリオールの数平均分子量としては、接着強度、及び、機械的強度の点から、500〜8,000の範囲であることが好ましく、700〜5,000の範囲がより好ましく、800〜3,000の範囲が更に好ましい。なお、前記ポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0022】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0023】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0024】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、反応性、及び、接着強度の点から、ジフェニルメタンジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0025】
前記ウレタンプレポリマーは、空気中やウレタンプレポリマーが塗布される被着体中に存在する水分と反応して架橋構造を形成しうるイソシアネート基を有するものである。
【0026】
前記ウレタンプレポリマーの製造方法としては、例えば、前記ポリイソシアネートの入った反応容器に、前記ポリオールの混合物を滴下した後に加熱し、前記ポリイソシアネートの有するイソシアネート基が、前記ポリオールの有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0027】
前記ポリイソシアネートが有するイソシアネート基と前記ポリオールが有する水酸基の当量比(NCO/OH)としては、接着強度、及び、機械的強度をより一層向上できる点から、1.1〜5の範囲が好ましく、1.5〜3の範囲がより好ましい。
【0028】
前記ウレタンプレポリマーは、通常、無溶剤下で製造することができるが、前記ポリオールとポリイソシアネートとを有機溶剤中で反応させることによって製造してもよい。有機溶剤中で反応させる場合には、反応を阻害しない酢酸エチル、酢酸n−ブチル、メチルエチルケトン、トルエン等の有機溶剤を使用することができるが、反応の途中又は反応終了後に減圧加熱等の方法により有機溶剤を除去することが必要である。
【0029】
前記ウレタンプレポリマーを製造する際には、必要に応じてウレタン化触媒を用いることができる。ウレタン化触媒は、前記反応の任意の段階で、適宜加えることができる。
【0030】
前記ウレタン化触媒は、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン及びN−メチルモルホリン等の窒素原子を有する化合物;酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫等の金属塩;ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物などを用いることができる。これらのウレタン化触媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率(NCO%)としては、接着強度、及び、機械的強度をより一層向上できる点から、1〜10%の範囲が好ましく、1.5〜5%の範囲がより好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率は、JIS K1603−1:2012に準拠し、電位差滴定法により測定した値を示す。
【0032】
前記ウレタンプレポリマーの120℃における粘度としては、塗布性、接着強度、及び、機械的強度をより一層向上できる点から、1,000〜100,000mPa・sの範囲であることが好ましく、3,000〜50,000mPa・sの範囲がより好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマーの120℃における溶融粘度は、120℃に溶融したウレタンプレポリマーを、コーンプレート粘度計(ICI製)にて測定した値を示す。
【0033】
前記ウレタンホットメルト接着剤は、前記ウレタンプレポリマーのみから構成されてもよいが、必要に応じてその他の添加剤を含有していてもよい。
【0034】
前記その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、充填材、染料、顔料、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0035】
なお、前記ウレタンホットメルト樹脂(未発砲物)の硬化皮膜の100%モジュラスとしては、接着強度、及び、機械的強度をより一層向上できる点から、1〜70MPaの範囲であることが好ましく、1.5〜50MPaの範囲がより好ましい。なお、前記100%モジュラスは、前記ウレタンホットメルト樹脂を23℃の雰囲気下、離型紙上に50μmの厚さとなるようにアプリケーターで塗工し、硬化させた硬化皮膜を得、該硬化皮膜を、テンシロン(オリエンテック株式会社製テンシロン万能試験機「RTC−1210A」)を使用して、25℃、湿度50%の雰囲気下で、クロスヘッド速度:300mm/分の条件で測定し得られた100%モジュラスの値を示す。
【0036】
前記ウレタン樹脂に発泡構造を形成する方法としては、例えば、前記ウレタン樹脂にギヤーポンプ、中圧発泡機、ウルトラフォームミックス等の発泡機を使用して、窒素ガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガスを注入、混合する方法が挙げられる。更に、該不活性ガスにより注入された発泡体をミキサー等を使用して更に微細化してもよい。
【0037】
前記方法により発泡構造が形成されたウレタン樹脂を前記合板(i)に塗布する方法としては、例えば、ナイフコーター、スプレーコーター、T−ダイコーター、ロールコーター等を使用する方法;多条ビード塗布方式等の方法が挙げられる。なお、前記塗布方式としては、前記合板(i)として針葉樹合板又は植林木合板を使用する場合には、ナイフコーターによる塗布方式(ナイフコート方式)を採用することが好ましい。その理由としては、前記針葉樹合板又は植林木合板の表面に抜け節(穴になっている節)や木目が存在しても、ナイフコーターにより前記ウレタン樹脂をきれいに充填塗布できるため、得られるコンクリート型枠表面は凹凸がなく、外観、及び、耐クラック性がより一層向上する。
【0038】
なお、前記ウレタン樹脂としては、非常に高粘度なものもあり、高粘度なウレタン樹脂は一般的にナイフコーターによる塗布は非常に困難である。しかしながら、本発明においてはウレタン樹脂に前述の方法により発泡構造を形成させることにより、塗布する際の見かけの粘度が低下するためナイフコーターによる塗布を効率的に行うことができる。
【0039】
前記ウレタン樹脂の塗布量としては、耐クラック性、外観、及び、塗布性の点から、20〜150g/mの範囲であることが好ましい。
【0040】
以上の方法により得られる発泡ウレタン層(ii)の密度としては、耐クラック性をより一層向上できる点から、0.1〜0.8g/cmの範囲であることが好ましく、0.2〜0.6g/cmの範囲がより好ましい。
【0041】
前記上塗り塗膜(iii)に使用される上塗り塗料としては、例えば、アクリル塗料、エポキシ塗料、ウレタン塗料等の公知の上塗り塗料を使用することができる。これらの中でも、汎用性の点から、アクリル塗料を使用することが好ましい。
【0042】
前記アクリル塗料は、(メタ)アクリル化合物を重合して得られるアクリル重合体を含有するものである。
【0043】
前記(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリル化合物;(メタ)アクリルアミド、N, N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基を有する(メタ)アクリル化合物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基有する(メタ)アクリル化合物;エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物等を用いることができる。
【0044】
前記アクリル塗料は、前記アクリル重合体の他に、必要に応じて、有機溶剤、水性媒体等を含有してもよい。
【0045】
前記有機溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、エチレンカーボネート等を用いることができる。これらの有機溶剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記水系媒体としては、イオン交換水、蒸留水;これらと前記有機溶剤との混合物等を用いることができる。
【0047】
前記上塗り塗料を前記発泡ウレタン層(ii)上に塗布する方法としては、ナイフコーター、スプレーコーター、T−ダイコーター、ロールコーター等を使用する方法;多条ビード塗布方式等の方法が挙げられる。なお、ロールコーターを使用する場合には、ロールコーター上に設けた2つの液溜め部に前記発泡構造を有するウレタン樹脂、及び、前記上塗り塗料をそれぞれ溜めておき、発泡ウレタン層(ii)、及び、上塗り塗膜(iii)を同時に塗布し、2層を同時に形成させることもできる。
【0048】
前記上塗り塗料の塗布量としては、例えば、5〜300g/mの範囲である。
【0049】
以上、本発明のコンクリート型枠は、下塗り塗膜に発泡ウレタン層(ii)を使用することにより、外部からの衝撃を吸収しやすく、耐クラック性に優れるものである。また、日本において広く利用されている、節や木目の強い針葉樹合板や植林木合板を基板としても、コンクリート型枠表面に凹凸を浮かばせず、外観にも優れるものである。更に、前記発泡ウレタン層(ii)及び上塗り塗膜(iii)は1コートでも形成可能であり、生産性にも優れるものである。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0051】
[合成例1]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに、芳香族ポリエステルポリオール(ビスフェノールAのプロピレンオキサイド6モル付加物、イソフタル酸及びセバシン酸を反応させて得られたもの、数平均分子量2,000)を60質量部、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2,000)を10質量部、ポリカプロラクトンポリオール(パーストープ社製「CAPA6400」、数平均分子量38,000)を10質量部を入れ、混合し、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、フラスコ内を90℃に冷却し、70℃で溶融した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを20質量部加え、窒素雰囲気下でイソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で約3時間反応させることによってイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(120℃における溶融粘度;5,000mPa・s、NCO%;3.5%)を得、ウレタンホットメルト樹脂(1)(以下、「UH樹脂(1)」と略記する。)を得た。なお、得られたウレタンホットメルト樹脂の硬化皮膜の100%モジュラス値は、3MPaであった。
【0052】
[実施例1]
合成例1で得られたUH樹脂(1)を、東邦機械工業株式会社製の中圧発泡機「東邦A−201型混合装置」を使用して窒素ガスとの混合により密度が0.4g/cmの発泡体にさせ、ナイフコート方式で椴松合板(抜け節あり)へ80g/mの塗布量で塗布した。前記UH樹脂(1)の硬化後、DIC株式会社製アクリル塗料「アクリディックA−1300」(以下「Ac塗料−1」と略記する。)を80g/mの塗布量で塗布し、乾燥させることで、コンクリート型枠を得た。
【0053】
[実施例2〜5、比較例1]
使用する発泡機、塗布方式、合板の種類および意匠層の種類を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にしてコンクリート型枠を得た。
【0054】
[耐クラック性の評価方法]
実施例及び比較例で得られたコンクリート型枠を使用して、コンクリート型枠用合板の日本農林規格(農林水産省告示第853号 平成11件6月)の第四条「3.試験の方法」(8)寒熱繰返し試験に準拠した耐クラック性試験(寒熱繰返し試験)、及び、(9)耐アルカリ試験に準拠した耐クラック性試験(耐アルカリ試験)を行い、クラックが発生するか評価した。いずれの場合においても、クラックが発生しなかった場合は「T」、クラックが発生した場合は「F」と評価した。
【0055】
【表1】
【0056】
「ウルトラフォームミックス」:ノードソン株式会社製「Foam−Cube」を使用して塗布した。
【0057】
本発明のコンクリート型枠である実施例1〜5は、耐クラック性に優れることが分かった。
【0058】
一方、比較例1は、発泡ウレタン層(ii)の代わりに、発泡構造を有しないウレタン層を使用した態様であるが、耐クラック性が不良であった。