(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の非水系二次電池接着層用組成物は、本発明の非水系二次電池用接着層を形成する際に用いることができる。また、本発明の非水系二次電池用接着層は、電池部材同士を接着する際に用いることができる。そして、本発明の非水系二次電池は、本発明の非水系二次電池用接着層を備えることを特徴とする。
【0015】
(非水系二次電池接着層用組成物)
本発明の非水系二次電池接着層用組成物は、粒子状重合体A、粒子状重合体B、及び結着材を含む。そして、粒子状重合体Aが、80℃未満である少なくとも一つのガラス転移温度を有する。さらに、粒子状重合体Bが、コア部と、ガラス転移温度が80℃以上である、コア部の外表面を覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有する。さらに、粒子状重合体Aの体積平均粒子径D50
A及び粒子状重合体Bの体積平均粒子径D50
Bが、0.1μm以上5μm以下である。
ここで、結着材に併せて、上述のような粒子状重合体A及びBを非水系二次電池接着層用組成物に配合することで、上述したような優れた効果が得られる理由は明らかではないが、以下の通りであると推察される。
すなわち、コアシェル構造を有する粒子状重合体Bは、そのシェル部のガラス転移温度が比較的高く、接着層用組成物に配合された場合に主として耐ブロッキング性を向上させるように機能する。一方、粒子状重合体Aは、粒子状重合体Bよりも低い、少なくとも一つの80℃未満のガラス転移温度を有し、接着性に富む。そして、接着層中において、粒子状重合体A及びBが存在することで、粒子状重合体Aにより接着層の接着性を維持しながらも、粒子状重合体Bの存在により接着層のブロッキングを抑制することができるようになると推察される。
さらに、二次電池内におけるイオン拡散性を向上させるためには、接着層中にリチウムイオンなどの電池反応に寄与するイオンが通過可能な間隙を設けることが好ましい。そこで、本発明者らが更に検討をしたところ、粒子状重合体A及びBとして、0.1μm以上5μm以下という特定範囲の体積平均粒子径D50を有するものを配合することで、接着層の接着性及び耐ブロッキング性に併せて、二次電池の低温出力特性も向上させることができることを新たに見出した。これは、上記特定範囲の体積平均粒子径D50を有する粒子状重合体A及びBの間において、電池反応に寄与するイオンの通過に適したサイズの間隙が創出されやすく、これにより、接着層の抵抗を下げることができるので、二次電池の低温出力特性を向上させることができるためであると推察される。
【0016】
<粒子状重合体>
本発明の非水系二次電池接着層用組成物が含有する粒子状重合体A及びBについて、以下に性状及び組成について説明する。ここで、粒子状重合体とは、組成物やスラリー中において粒子形状を維持した状態で分散している成分である。なお、粒子状重合体は、組成物を用いて形成した接着層中では、粒子形状であってもよいし、その他の任意の形状であってもよい。
【0017】
−粒子状重合体の性状−
[粒子状重合体A]
80℃未満である少なくとも一つのガラス転移温度を有する粒子状重合体Aは、本発明の非水系二次電池接着層用組成物を用いた接着層における接着性を向上させるとともに、当該接着層を備える二次電池に優れた低温出力特性を発揮させうる成分である。ここで、粒子状重合体Aの構造に応じて、上述した「80℃未満である少なくとも一つのガラス転移温度」は、粒子状重合体Aのどの部分(又は全体)のガラス転移温度に対応するものであるかということについて概略的に説明する。すなわち、粒子状重合体Aがコアシェル構造を有さない、単一の重合体からなる場合には、上記「80℃未満である少なくとも一つのガラス転移温度」は粒子状重合体A全体のガラス転移温度である。一方、粒子状重合体Aがコアシェル構造を有する場合には、「80℃未満である少なくとも一つのガラス転移温度」は、シェル部のガラス転移温度であることが好ましい。
【0018】
[[粒子状重合体Aのガラス転移温度]]
また、上記「80℃未満である少なくとも一つのガラス転移温度」は、80℃未満であることが好ましく、75℃未満であることがより好ましく、70℃未満であることがさらに好ましい。また、「80℃未満である少なくとも一つのガラス転移温度」は、通常、20℃以上である。粒子状重合体Aの「80℃未満である少なくとも一つのガラス転移温度」が上記範囲内であれば、組成物を用いて形成される接着層の電池部材間における接着性を向上させることができる。
【0019】
なお、粒子状重合体Aの「80℃未満である少なくとも一つのガラス転移温度」を調整する方法としては、例えば、粒子状重合体を調製するために用いる単量体の種類及び量を適切に選択することが挙げられる。
【0020】
[[粒子状重合体Aの構造]]
粒子状重合体Aは、いかなる構造であってもよく、例えば、粒子形状を有する個々の重合体が個別に存在していてもよく、粒子形状を有する個々の重合体が接触して存在していてもよく、また、粒子形状を有する個々の重合体が複合化して存在していてもよい。
個々の粒子が接触または複合化して存在している場合としては、例えば、コア部とコア部の外表面を覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有していても良い。また、シェル部は、コア部の外表面を部分的に覆っていても良い。即ち、粒子状重合体Aのシェル部は、コア部の外表面を覆っているが、コア部の外表面の全体を覆ってはいない被覆態様であってもよい。
【0021】
[[粒子状重合体Aの体積平均粒子径D50
A]]
粒子状重合体Aの体積平均粒子径D50
Aは、0.1μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがより好ましく、0.4μm以上であることがさらに好ましく、5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることが特に好ましい。粒子状重合体Aの体積平均粒子径D50
Aが上記下限値以上であれば、粒子状重合体Aの凝集性が過度に高まることを抑制して、接着層内にて粒子状重合体Aを適度に分散させることができ、接着層を備える二次電池の内部抵抗の上昇を抑制し、二次電池の低温出力特性を向上させることができる。粒子状重合体Aの体積平均粒子径D50
Aが上記上限値以下であれば、接着層の接着性を一層向上させることができる。
【0022】
なお、粒子状重合体Aの体積平均粒子径D50
Aは、本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて測定することができる。
また、粒子状重合体Aがコアシェル構造を有する場合には、コア部及びシェル部を含む全体の粒子径が上記範囲内であることが好ましい。
また、粒子状重合体Aの体積平均粒子径D50
Aは、重合時に添加する乳化剤や単量体の量などに基づいて、調節することができる。
【0023】
[粒子状重合体B]
コア部と、ガラス転移温度が80℃以上である、コア部の外表面を覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有する粒子状重合体Bは、接着層の耐ブロッキング性を向上させうる成分である。
【0024】
[[粒子状重合体Bのガラス転移温度]]
また、粒子状重合体Bのシェル部のガラス転移温度は、80℃以上であることが必要であり、90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。また、粒子状重合体Bのシェル部のガラス転移温度は、通常、300℃以下である。粒子状重合体Bのシェル部のガラス転移温度が上記下限値以上であれば、接着層中において粒子状重合体Bが変形しにくくなり、耐ブロッキング性が向上するとともに、当該接着層を備える二次電池の低温出力特性を向上させることができる。なお、粒子状重合体Bのガラス転移温度は、粒子状重合体Aと同様の方途により調節することができる。
【0025】
さらに、粒子状重合体Bのコア部のガラス転移温度が、80℃未満であることが好ましく、75℃未満であることがより好ましく、70℃未満であることが更に好ましい。また、粒子状重合体Bのコア部のガラス転移温度は、通常、20℃以上である。粒子状重合体Bのコア部のガラス転移温度が上記範囲内であれば、粒子状重合体Bに、接着層の耐ブロッキング性を向上させる機能と共に、接着性を向上させる機能を付与することができるからである。
【0026】
[[粒子状重合体Bの体積平均粒子径D50
B]]
粒子状重合体Bの体積平均粒子径D50
Bは、0.1μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましく、5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることがより好ましい。粒子状重合体Bの体積平均粒子径D50
Bが上記下限値以上であれば、粒子状重合体Bの凝集性が過度に高まることを抑制して、接着層内にて粒子状重合体Bを適度に分散させることができ、接着層の内部抵抗の上昇を抑制し、二次電池の低温出力特性を向上させることができる。粒子状重合体Bの体積平均粒子径D50
Bが上記上限値以下であれば、接着層の接着性を一層向上させることができる。なお、粒子状重合体Bの体積平均粒子径D50
Bは、粒子状重合体Aの場合と同様の方途により調節することができる。また、粒子状重合体Bの体積平均粒子径D50
Bは、コア部及びシェル部を含む粒子状重合体B全体としての体積平均粒子径である。
【0027】
[[粒子状重合体Bの構造]]
粒子状重合体Bは、コア部と、コア部とコア部の外表面を覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有する。好ましくは粒子状重合体Bのシェル部は、コア部の外表面を覆っているが、コア部の外表面の全体を覆ってはいない部分被覆態様である。例えば、コアシェル構造の粒子状重合体Bにおいて、粒子形状のコア部を部分的に被覆するように、粒子形状のシェル部が接触して存在していても良い。
【0028】
なお、粒子状重合体Bは、所期の効果を著しく損なわない限り、上述したコア部及びシェル部以外に任意の構成要素を備えていてもよい。具体的には、例えば、有機粒子は、コア部の内部に、コア部とは別の重合体で形成された部分を有していてもよい。具体例を挙げると、有機粒子をシード重合法で製造する場合に用いたシード粒子が、コア部の内部に残留していてもよい。
【0029】
−粒子状単量体の組成−
[粒子状重合体A]
粒子状重合体Aは、粒子状重合体が80℃未満である少なくとも一つのガラス転移温度を有する限りにおいて、あらゆる組成とすることができる。粒子状重合体Aを調製するために用いうる単量体としては、特に限定されることなく、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩化ビニル系単量体;酢酸ビニル等の酢酸ビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸、ブトキシスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体;ビニルアミン等のビニルアミン系単量体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のビニルアミド系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、2−エチルヘキシルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル単量体;2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート等のフッ素含有(メタ)アクリレート単量体;マレイミド;フェニルマレイミド等のマレイミド誘導体;1,3−ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;などが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを意味し、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルを意味する。
【0030】
さらに、粒子状重合体Aは、酸基含有単量体単位を含みうる。ここで、酸基含有単量体としては、酸基を有する単量体、例えば、カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、及び、水酸基を有する単量体が挙げられる。
【0031】
そして、カルボン酸基を有する単量体としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸などが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
また、スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
さらに、リン酸基を有する単量体としては、例えば、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。
また、水酸基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。
なお、本発明において、(メタ)アリルとは、アリル及び/又はメタリルを意味し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味する。
【0032】
さらに、粒子状重合体Aは、上記単量体単位に加え、架橋性単量体単位を含んでいることが好ましい。架橋性単量体とは、加熱又はエネルギー線の照射により、重合中又は重合後に架橋構造を形成しうる単量体である。
【0033】
架橋性単量体としては、例えば、当該単量体に2個以上の重合反応性基を有する多官能単量体が挙げられる。このような多官能単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物;エチレンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート等のジ(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のトリ(メタ)アクリル酸エステル化合物;アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体;などが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0034】
粒子状重合体Aを調製するにあたり、上記各種単量体の組合せ及び配合割合は、目的とする粒子状重合体Aのガラス転移温度、粒子径、構造などに応じて、任意に変更することができる。
【0035】
[粒子状重合体B]
粒子状重合体Bは、シェル部のガラス転移温度を80℃以上とすることができる限りにおいて、あらゆる組成とすることができる。粒子状重合体Bを調製するにあたり、粒子状重合体Aについて上述した単量体を用いることができる。さらに、粒子状重合体Bを調製するにあたり、上記各種単量体の組合せ及び配合割合は、目的とする粒子状重合体の性状に応じて、任意に変更することができる。
【0036】
−粒子状重合体の調製方法−
上述した粒子状重合体A及びBは、特に限定されることなく、既知の重合方法により調製することができる。重合様式は、特に限定されず、例えば溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの様式も用いることができる。重合方法としては、例えばイオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などいずれの方法も用いることができる。また、乳化重合においては、シード粒子を用いるシード重合を採用してもよい。さらに、コアシェル構造を有する粒子状重合体A/Bを調製する場合には、例えば、多段階乳化重合法が挙げられる。そして、多段階乳化重合法としては、例えば国際公開第2015/005145号に記載される既知の重合法を用いることができる。また、多段階乳化重合に使用される乳化剤、分散剤、重合開始剤、連鎖移動剤などは、一般に用いられるものを使用することができ、その使用量も、一般に使用される量とすることができる。
【0037】
具体的には、多段階乳化重合法の重合手順として、まず、溶媒である水に、コア部を形成する単量体および乳化剤を混合し、その後重合開始剤を入れ、乳化重合することによってコア部を構成する粒子状の重合体を得る。さらに、このコア部を構成する粒子状の重合体の存在下にシェル部を形成する単量体の重合を行うことによって、コアシェル構造を有する粒子状重合体を得ることができる。この際、コア部の外表面をシェル部によって部分的に覆う観点から、シェル部の重合体の単量体は複数回に分割して、または、連続で重合系に供給することが好ましい。シェル部の重合体の単量体を重合系に分割して、または、連続で供給することにより、シェル部を構成する重合体が粒子状に形成され、当該粒子がコア部と結合することで、コア部を部分的に覆うシェル部を形成することができる。
また、シェル部の重合体を形成する単量体は、重合溶媒に対して親和性の低い単量体を用いると、コア部を部分的に覆うシェル部を形成し易くなる傾向がある。重合溶媒が水の場合、シェル部の重合体を形成する単量体は、疎水性単量体を含むことが好ましく、上述した通り芳香族ビニル単量体を含むことが特に好ましい。
また、用いる乳化剤量を少なくすると、コア部を部分的に覆うシェル部を形成し易くなる傾向があり、適宜乳化剤量を調整することで、コア部を部分的に覆うシェル部を形成することができる。
なお、コアシェル構造を有する粒子状重合体A/Bのコア部の直径、コアシェル構造を有する粒子状重合体A/Bの粒子径、および、シェル部が粒子形状である場合のシェル部の直径は、例えば、乳化剤の量、単量体の量などを調整することにより、所望の範囲にすることができる。
【0038】
そして、重合に使用される乳化剤、分散剤、重合開始剤、重合助剤などは、一般に用いられるものを使用することができ、その使用量も、一般に使用される量とすることができる。
【0039】
−粒子状重合体A及びBの含有比率−
粒子状重合体A及び粒子状重合体Bの含有比率は、粒子状重合体Aの含有量が、粒子状重合体Bの含有量に対して、質量基準で、2/3倍以上であることが好ましく、1倍以上であることがより好ましく、9倍以下であることが好ましく、4倍以下であることがより好ましい。粒子状重合体Aの含有量を上記下限値以上とすることで、接着層の接着性を向上させるとともに、二次電池の低温出力特性を向上させることができる。また粒子状重合体Aの含有量を上記上限値以下とすることで、接着層の耐ブロッキング性を向上させることができる。
【0040】
−粒子状重合体の体積平均粒子径D50の比率−
ここで、粒子状重合体Bの体積平均粒子径D50
Bは、粒子状重合体Aの体積平均粒子径D50
Aの0.5倍以上が好ましく、0.6倍以上がより好ましく、0.7倍以上が更に好ましく、5倍以下が好ましく、4倍以下がより好ましく、3倍以下がさらに好ましく、2倍以下が特に好ましい。粒子状重合体A及びBの各体積平均粒子径D50を上記範囲内とすることで、接着層のイオン拡散性を向上させて、二次電池の低温出力特性を向上させることができる。特に、上記下限値以上であれば、接着層の耐ブロッキング特性を向上させることができ、上記上限値以下であれば、接着層の電池部材間における接着性を向上させることができる。
【0041】
<結着材>
そして、非水系二次電池接着層用組成物は、上述した粒子状重合体A及びBの他に結着材を含む。ここで、結着材とは、粒子状重合体A及びBを接着層から脱落しにくくし得る成分であり、上記粒子状重合体A及びBとは異なる成分である。結着材としては、かかる機能を奏しうる限りにおいて、特に限定されることなく、既知の結着材、例えば、熱可塑性エラストマーを用いることができる。そして、熱可塑性エラストマーとしては、共役ジエン系重合体及びアクリル系重合体が好ましく、アクリル系重合体がより好ましい。
ここで、共役ジエン系重合体とは、共役ジエン単量体単位を含む重合体を指し、共役ジエン系重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)などの、芳香族ビニル単量体単位及び脂肪族共役ジエン単量体単位を含む重合体や、アクリルゴム(NBR)(アクリロニトリル単位及びブタジエン単位を含む重合体)などが挙げられるが、スチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。また、アクリル系重合体とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体を指す。ここで、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を形成し得る(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、粒子状重合体を調製するために用いる単量体と同様のものを用いることができる。
なお、これらの結着材は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
また、結着材は粒子状であっても良いが、この場合の粒子径は粒子状重合体A及びBよりも小さいことが好ましく、通常0.05μm以上0.4μm未満である。結着材が粒子状である場合に、粒子径が粒子状重合体A及びBよりも小さければ、粒子状重合体A及びBの接着層からの脱落を効果的に抑制することができるからである。
【0043】
<その他の成分>
非水系二次電池接着層用組成物は、上述した粒子状重合体、結着材以外にも、任意のその他の成分を含んでいてもよい。これらのその他の成分としては、例えば、濡れ剤、粘度調整剤、電解液添加剤などの既知の添加剤が挙げられる。これらのその他の成分は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
−粒子状重合体A及びBの含有量−
本発明の非水系二次電池接着層用組成物における粒子状重合体A及びBの合計含有量は、粒子状重合体A及びB、並びに結着材の合計固形分量を100質量%として、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。
【0045】
<非水系二次電池接着層用組成物の調製方法>
ここで、非水系二次電池接着層用組成物の調製方法は、特に限定はされないが、例えば、粒子状重合体A及びBと、結着材と、濡れ剤などの任意のその他の成分とを溶媒に溶解又は分散させて接着剤組成物を調製する。具体的には、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、ビーズミル、ロールミル、フィルミックス等の分散機を使用し、粒子状重合体A及びBと、結着材やその他の成分とを溶媒中に分散又は溶解させて非水系二次電池接着層用組成物を調製する。
【0046】
(非水系二次電池用接着層)
上述した非水系二次電池接着層用組成物を用い、適切な基材上に接着層を形成することができる。具体的には、非水系二次電池接着層用組成物を適切な基材上で乾燥することにより、非水系二次電池用接着層を形成することができる。即ち、本発明の非水系二次電池用接着層は、上述した非水系二次電池接着層用組成物の乾燥物よりなり、通常、上記有機粒子及び上記接着層用結着材を含有し、任意に、上記その他の成分を含有する。なお、上述した粒子状重合体A/B、及び/または接着層用結着材が架橋性単量体単位を含む場合には、かかる架橋性単量体単位間にて、スラリー組成物の乾燥時、または、乾燥後に任意に実施される熱処理時に架橋が形成されていてもよい(即ち、非水系二次電池用接着層は、上述した粒子状重合体A/B、及び/または接着層用結着材の架橋物を含んでいてもよい)。なお、非水系二次電池用接着層中に含まれている各成分の好適な存在比は、非水系二次電池接着層用組成物中の各成分の好適な存在比と同じである。
また、接着層用組成物中においてコアシェル構造を有する粒子状重合体A/Bを配合した場合には、有機粒子全体としての形状は元の粒子形状から変化している場合であっても、コアシェル構造自体は維持されていることが好ましい。
そして、本発明の非水系二次電池用接着層は、上述した粒子状重合体A及びBを含んでいるので、耐ブロッキング性に優れ、かつ、当該接着層を備える二次電池の低温出力特性を優れたものとすることができる。
【0047】
<基材>
接着層を形成する基材としては、特に限定されず、例えばセパレータの一部を構成する部材として接着層を使用する場合には、基材としてはセパレータ基材を用いることができ、また、電極の一部を構成する部材として接着層を使用する場合には、基材としては集電体上に電極合材層を形成してなる電極基材を用いることができる。また、基材上に形成した接着層の用法に特に制限は無く、例えばセパレータ基材等の上に接着層を形成してそのままセパレータ等の電池部材として使用してもよいし、電極基材上に接着層を形成して電極として使用してもよいし、離型基材上に形成した接着層を基材から一度剥離し、他の基材に貼り付けて電池部材として使用してもよい。
しかし、接着層から離型基材を剥がす工程を省略して電池部材の製造効率を高める観点からは、基材としてセパレータ基材又は電極基材を用いることが好ましい。
【0048】
[セパレータ基材]
接着層を形成するセパレータ基材としては、特に限定されることなく、例えば特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、二次電池内の電極活物質の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
なお、セパレータ基材に対して、接着層以外の、所期の機能を発揮し得る任意の層を適用することも可能である。
【0049】
[電極基材]
接着層を形成する電極基材(正極基材及び負極基材)としては、特に限定されないが、集電体上に電極合材層が形成された電極基材が挙げられる。
ここで、集電体、電極合材層中の成分(例えば、電極活物質(正極活物質、負極活物質)及び電極合材層用結着材(正極合材層用結着材、負極合材層用結着材)など)、並びに、集電体上への電極合材層の形成方法は、既知のものを用いることができ、例えば特開2013−145763号公報に記載のものを用いることができる。
なお、電極基材は、接着層以外の、所期の機能を有する任意の層をその一部に含んでいてもよい。
【0050】
[離型基材]
接着層を形成する離型基材としては、特に限定されず、既知の離型基材を用いることができる。
【0051】
<非水系二次電池用接着層の形成方法>
上述したセパレータ基材、電極基材などの基材上に接着層を形成する方法としては、以下の方法が挙げられる。:
1)接着層用組成物をセパレータ基材または電極基材の表面(電極基材の場合は電極合材層側の表面、以下同じ)に塗布し、次いで乾燥する方法;
2)接着層用組成物にセパレータ基材または電極基材を浸漬後、これを乾燥する方法;
3)接着層用組成物を、離型基材上に塗布、乾燥して接着層を製造し、得られた接着層をセパレータ基材または電極基材の表面に転写する方法。
これらの中でも、前記1)の方法が、接着層の膜厚制御をしやすいことから特に好ましい。該1)の方法は、詳細には、接着層用組成物をセパレータ基材または電極基材上に塗布する工程(塗布工程)と、セパレータ基材または電極基材上に塗布された接着層用組成物を乾燥させて接着層を形成する工程(乾燥工程)を備える。
【0052】
塗布工程において、接着層用組成物をセパレータ基材または電極基材上に塗布する方法は、特に制限は無く、例えば、スプレーコート法、ドクターブレード法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。なかでも、より薄い接着層を形成する点から、グラビア法が好ましい。
また乾燥工程において、基材上の接着層用組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。乾燥条件は特に限定されないが、乾燥温度は好ましくは30〜80℃で、乾燥時間は好ましくは30秒〜10分である。
【0053】
なお、基材上に形成された接着層の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは3μm以下、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。接着層の厚みが、前記範囲の下限値以上であることで、接着層の強度を十分に確保することができ、前記範囲の上限値以下であることで、接着層のイオン拡散性を確保し二次電池の低温出力特性をさらに向上させることができる。
【0054】
(非水系二次電池)
本発明の非水系二次電池は、上述した非水系二次電池用接着層を備え、当該非水系二次電池用接着層を介して電池部材同士を接着したことを特徴とする。そして、本発明の非水系二次電池は、低温出力特性に優れている。
具体的には、本発明の非水系二次電池は、例えば、正極と、負極と、セパレータと、電解液とを備え、正極上、負極上及びセパレータ上の少なくとも1つの上に、或いは、これらの電池部材と電池容器との間に、上述した非水系二次電池用接着層を形成したものである。そして、本発明の非水系二次電池の一例では、非水系二次電池用接着層を介して、正極とセパレータ、及び/又は、負極とセパレータが接着されて一体化される。
【0055】
特に、本発明の非水系二次電池は、捲回型又は積層型であることが好ましい。二次電池を捲回型又は積層型に成形する際に、例えば、熱プレス工程を実施することで、本発明の接着層により良好な接着性が発揮されることで、良好な低温出力特性を得ることができるからである。
【0056】
<正極及び負極>
本発明の二次電池は、上述したように、正極、負極、及びセパレータの少なくとも一つが接着層を有する。すなわち、集電体上に電極合材層を形成してなる電極基材の上に接着層を設けてなる電極を用いることができる。なお、電極基材及びセパレータ基材としては、「非水系二次電池用接着層」の項で挙げたものと同様のものを用いることができる。
また、接着層を有さない正極及び負極としては、特に限定されることなく、上述した電極基材よりなる電極を用いることができる。
【0057】
<電解液>
電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。支持電解質としては、例えば、リチウムイオン二次電池においてはリチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、CF
3SO
3Li、C
4F
9SO
3Li、CF
3COOLi、(CF
3CO)
2NLi、(CF
3SO
2)
2NLi、(C
2F
5SO
2)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF
6、LiClO
4、CF
3SO
3Liが好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
【0058】
電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えばリチウムイオン二次電池においては、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが好適に用いられる。またこれらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いのでカーボネート類が好ましい。通常、用いる溶媒の粘度が低いほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、溶媒の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
なお、電解液中の電解質の濃度は適宜調整することができる。また、電解液には、既知の添加剤を添加してもよい。
【0059】
<非水系二次電池の製造方法>
非水系二次電池は、例えば、正極と負極とをセパレータを介して重ね合わせ、得られた正極−セパレータ−負極の積層体を、そのまま、或いは、必要に応じて、巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することで製造し得る。ここで、電池容器には、必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をしてもよい。電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
【実施例】
【0060】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される構造単位の上記重合体における割合は、特に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
実施例及び比較例において、ガラス転移温度、粒子状重合体の体積平均粒子径D50、接着性(電池部材間の接着性)、接着層の耐ブロッキング性、二次電池の低温出力特性は、下記の方法で測定及び評価した。
【0061】
<ガラス転移温度>
実施例、比較例にて製造した粒子状重合体(1)及び(2)を、それぞれ、測定試料とした。測定試料10mgをアルミパンに計量し、示差熱分析測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「EXSTAR DSC6220」)にて、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲−100℃〜500℃の間で、昇温速度10℃/分で、JIS Z 8703に規定された条件下で測定を実施し、示差走査熱量分析(DSC)曲線を得た。この昇温過程で、微分信号(DDSC)が0.05mW/分/mg以上となるDSC曲線の吸熱ピークが出る直前のベースラインと、吸熱ピーク後に最初に現れる変曲点でのDSC曲線の接線との交点を、ガラス転移温度(℃)として求めた。
【0062】
<粒子状重合体の体積平均粒子径D50>
実施例、比較例で製造した各粒子状重合体(1)、(2)について、固形分濃度0.1質量%に調整した水分散溶液の、レーザー回折式粒子径分布測定装置(ベックマン・コールター社製、製品名「LS−230」)により測定された粒度分布(体積基準)において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(μm)として求め、体積平均粒子径D50とした。
【0063】
<電池部材間の接着性>
実施例、比較例で作成した非水系二次電池用接着層を形成した正極、及びセパレータを、それぞれ幅10mm、長さ50mmに切り出した。そして、正極とセパレータ積層させて積層体とした。そして、温度80℃、荷重10kN/mのロールプレスで積層体をプレスし、試験片を得た。この試験片を、電極(正極)の集電体側の面を下にして、電極の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。そして、セパレータ基材の一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を、正極及びセパレータを備える積層体について3回行い、応力の平均値をピール強度として求めて、下記の基準で評価した 。ピール強度の値が大きいほど、電池部材間の接着性が高いことを示す。
A:ピール強度が10N/m以上
B:ピール強度が5N/m以上10N/m未満
C:ピール強度が5N/m未満
【0064】
<接着層の耐ブロッキング性>
実施例、比較例で作成した非水系二次電池用接着層を形成したセパレータ及び正極を、幅5cm×長さ5cm、にそれぞれ正方形に裁断した。得られた正方形片を、接着層付きセパレータ同士、及び接着層付き正極同士が、それぞれ、接着層面が向かい合うように、2枚重ね合わせ、重ね合わせた後に40℃、10g/cm
2の加圧下に置いて、測定試料を作製した。得られた測定試料を24時間放置し、接着層付きセパレータ同士、及び接着層付き正極同士が接着しているか確認した。24時間放置後の測定試料において、重ね合わせられた非水系二次電池用接着層を形成したセパレータ、又は正極同士が接着している場合、重ね合わせられたセパレータ、又は正極の正方形片1枚全体を固定し、もう1枚を0.3N/mの力で引っ張り、剥離可能か否かを確認し、接着状態(ブロッキング状態)を下記基準で評価した。接着が観察されないほど耐ブロッキング性が良好であることを表す。
A:正方形片同士が接着していない。
B:正方形片同士同士が接着しているが剥がれる。
C:正方形片同士同士が接着し剥がれない。
【0065】
<二次電池の低温出力特性>
実施例、比較例にて製造した容量40mAhの積層ラミネート型リチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、0.1Cの充電レートで5時間の充電の操作を行い、その時の電圧V0を測定した。その後、−10℃環境下で、1Cの放電レートにて放電の操作を行い、放電開始15秒後の電圧V1を測定した。
そして、電圧変化ΔVを、ΔV=V0−V1にて計算し、下記の基準で評価した。この電圧変化ΔVの値が小さいほど、二次電池が低温出力特性に優れることを示す。
A:電圧変化ΔVが350mV未満
B:電圧変化ΔVが350mV以上500mV未満
C:電圧変化ΔVが500mV以上
【0066】
(実施例1)
<粒子状重合体(1)の調製>
粒子状重合体(1)として、粒子状重合体A1を調製した。
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、過流酸カリウム0.5部を供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
一方、別の容器でイオン交換水50部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3部、並びに、重合性単量体として、メタクリル酸メチル60部、アクリル酸ブチル35部、メタクリル酸4部、架橋性単量体としてエチレングリコールジメタクリレート1部を混合して単量体混合物を得た。この単量体混合物を4時間かけて前記反応器に連続添加して、60℃で重合を行った。添加終了後、70℃に加温して3時間撹拌して反応を終了し、粒子状重合体A1を含む水分散液を調製した。そして、粒子状重合体A1の体積平均粒子径D50
(1)、及びガラス転移温度を測定した。結果を表1に示す。
【0067】
<粒子状重合体(2)の調製>
粒子状重合体(2)として、コアシェル構造を有する粒子状重合体B1を調製した。
まず、コア部の形成にあたり、攪拌機付き5MPa耐圧容器に、メタクリル酸メチル単量体42部、アクリル酸ブチル24.5部、メタクリル酸単量体2.8部、エチレングリコールジメタクリレート0.7部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、イオン交換水150部、及び、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、60℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で、シェル部を形成するために、スチレン29.7部、メタクリル酸単量体0.3部を連続添加し、70℃に加温して重合を継続し、転化率が96%になった時点で、冷却し反応を停止して、粒子状重合体B1を含む水分散液を製造した。そして、粒子状重合体B1の体積平均粒子径D50
(2)、及びガラス転移温度を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
<接着層用結着材の作製>
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製、製品名「エマール2F」)0.15部、並びに過流酸アンモニウム0.5部を、それぞれ供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
一方、別の容器でイオン交換水50部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、並びに、重合性単量体として、アクリル酸ブチル94部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド1部及びアリルグリシジルエーテル1部を混合して単量体混合物を得た。この単量体混合物を4時間かけて前記反応器に連続的に添加して重合を行った。添加中は、60℃で反応を行った。添加終了後、さらに70℃で3時間撹拌して反応を終了し、接着層用結着材としてアクリル系重合体を含む水分散液を製造した。得られたアクリル系重合体の体積平均粒子径D50は0.36μmであった。
【0069】
<非水系二次電池接着層用組成物スラリーの作製>
固形分相当で、上記粒子状重合体(1)75部と、上記粒子状重合体(2)25質量部とを撹拌容器内で混合し、さらに上記接着層用結着材22部混合し、非水系二次電池接着層用組成物を得た。
さらに上記粒子状重合体(1)と(2)の固形分100部に対し、表面張力調整剤(エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合体)1部を添加し、さらにイオン交換水により希釈し、固形分濃度30%の非水系二次電池接着層用組成物スラリーを得た。
【0070】
<非水系二次電池用接着層を形成したセパレータの作製>
セパレータ(ポリプロピレン製、セルガード2500)基材上に、上記接着層用組成物スラリーを塗布し、50℃で3分間乾燥させた。この操作をセパレータ基材の両面について行い、片面厚み1μmずつの非水系二次電池用接着層を両面に備えるセパレータを得た。得られたセパレータにつき、上述の方法に従って試験片を作成して、接着層の耐ブロッキング性及び接着性を評価した。結果を表1に示す。
【0071】
<負極の作製>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン33部、イタコン酸3.5部、スチレン63.5部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部及び重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状の負極用結着材(SBR)を含む混合物を得た。上記負極用結着材を含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った後、30℃以下まで冷却し、負極用結着材を含む水分散液を得た。
次に、負極活物質としての人造黒鉛(体積平均粒子径D50:15.6μm)100部を、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙社製「MAC350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1部に添加して、イオン交換水で固形分濃度68%に調整した後、25℃で60分間混合した。さらにイオン交換水で固形分濃度62%に調整した後、さらに25℃で15分間混合した。次いで、得られた混合液に、上記の負極用結着材を固形分相当量で1.5部添加し、イオン交換水で最終固形分濃度が52%となるように調整し、さらに10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して二次電池負極用スラリー組成物を得た。
そして、上記で得られた負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理してプレス前の負極原反を得た。このプレス前の負極原反をロールプレスで圧延して、負極合材層の厚みが80μmのプレス後の負極を得た(片面負極)。
【0072】
<正極の作製>
正極活物質としてのLiCoO
2(体積平均粒子径D50:12μm)100部と、導電材としてのアセチレンブラック(電気化学工業社製「HS−100」)を2部と、正極用結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ社製、#7208)を固形分相当で2部とを混合し、N−メチルピロリドンを加えて全固形分濃度を70質量%とした。これらをプラネタリーミキサーにより混合し、正極用スラリー組成物を調製した。
そして、上記正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミ箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の正極原反を得た。このプレス前の正極原反をロールプレスで圧延して、正極合材層の厚みが80μmのプレス後の正極を得た(片面正極)。
【0073】
<リチウムイオン二次電池の製造>
上記で得られたプレス後の正極を4cm×4cmの正方形に切り出し、正極の正極合材層の面上に上記で得られた非水系二次電池用接着層付きセパレータを5cm×5cmに切り出し配置した。さらに上記の通り作製したプレス後の負極を4.2cm×4.2cmに切り出し、これを非水系二次電池用接着層付きセパレータ上に、負極合材層側の表面が対向するよう配置し、積層体とした。次いで得られた積層体を温度60℃、0.5MPaでプレスして接着させた。続いて接着した積層体を電池の外装としてのアルミ包材外装で包み、電解液(溶媒:エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)/ビニレンカーボネート(VC)(体積比)=68.5/30/1.5、電解質:濃度1MのLiPF
6)を空気が残らないように注入した。そして、150℃で、当該アルミ包材外装の開口をヒートシールし、アルミ包材外装を密封閉口し、40mAhの積層ラミネート型リチウムイオン二次電池を製造した。
そして、製造したリチウムイオン二次電池について、低温出力特性を評価した。結果を表1に示す。
【0074】
(実施例2)
粒子状重合体(1)として粒子状重合体A2を調製した。粒子状重合体A2の調製にあたり、メタクリル酸メチルの配合量を68部とし、アクリル酸ブチル27部に変更した以外は実施例1と同様にして、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例3)
粒子状重合体(2)としてコアシェル構造の粒子状重合体B2を調製した。粒子状重合体B2の調製において、シェル部の形成時のスチレンの配合量を27.6部とし、2−エチルヘキシルアクリレートを2.1部配合した以外は実施例1と同様にして、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
(実施例4)
非水系二次電池接着層用組成物スラリーの作製時に、粒子状重合体(1)の配合量を85部とし、粒子状重合体(2)の配合量を15部とした以外は実施例1と同様にして、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
(実施例5)
粒子状重合体(1)として、粒子状重合体A1とは径の異なる粒子状重合体A3を、粒子状重合体(2)として、粒子状重合体B1とは径の異なる粒子状重合体B3を、それぞれ調製した。粒子状重合体A3の調製時に、乳化剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの配合量を0.4部に変更した以外は、実施例1と同様にした。また、粒子状重合体B3の調製時にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの配合量を0.2部に、過硫酸カリウムの配合量を0.2部に変更した以外は実施例1と同様にした。
さらに、非水系二次電池接着層用組成物スラリーの作製時に、粒子状重合体(1)の配合量を85部とし、粒子状重合体(2)の配合量を15部とした。
これらの点以外は実施例1と同様にして、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
(実施例6)
非水系二次電池接着層用組成物スラリーの作製時に、粒子状重合体(1)の配合量を60部とし、粒子状重合体(2)の配合量を40部とした以外は実施例1と同様にして、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
(実施例7)
粒子状重合体(1)として、粒子状重合体A1とは径の異なる粒子状重合体A4を調製した。粒子状重合体A4の調製時に、乳化剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの配合量を0.2部に変更した以外は、実施例1と同様にした。
さらに、非水系二次電池接着層用組成物スラリーの作製時に、粒子状重合体(1)の配合量を60部とし、粒子状重合体(2)の配合量を40部とした。
これらの点以外は実施例1と同様にして、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
(実施例8)
粒子状重合体(1)として、粒子状重合体A1とは径の異なる粒子状重合体A5を、粒子状重合体(2)として、粒子状重合体B1とは径の異なる粒子状重合体B4を、それぞれ調製した。
粒子状重合体A5の調製時に、乳化剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの配合量を0.2部に、過硫酸カリウムの配合量を0.2部に変更した以外は、実施例1と同様にした。
粒子状重合体B4の調製時に、乳化剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの配合量を0.2部に、過硫酸カリウムの配合量を0.3部に変更した以外は、実施例1と同様にした。
さらに、非水系二次電池接着層用組成物スラリーの作製時に、粒子状重合体(1)の配合量を80部とし、粒子状重合体(2)の配合量を20部とした。
これらの点以外は実施例1と同様にして、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
(実施例9)
実施例1と同様にして、粒子状重合体A1及びB1を調製して、非水系二次電池接着層用組成物スラリーを調製した。そして、リチウムイオン二次電池の製造時に、接着層を形成することなくセパレータ基材をそのままセパレータとして使用し、負極、正極として、接着層を備える負極、接着層を備える正極を使用した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。そして、上記方法に従って各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。なお、接着層を備える負極及び接着層を備える正極の作製方法は、それぞれ以下の通りである。
【0082】
<接着層を備える負極/正極の作製>
実施例1と同様にして、集電体上に厚さ80μmの負極/正極合材層を形成し、電極基材を得た後、負極/負極合材層側の面に、接着層用組成物スラリーを塗布し、50℃で3分間乾燥させた。これにより、厚さ1μmの接着層を片面に備える負極/正極を作製した。
【0083】
(比較例1)
粒子状重合体(1)として、ガラス転移温度が80℃超である粒子状重合体C1を調製した。粒子状重合体C1の調製時に、メタクリル酸メチル単量体の配合量を74部に変更し、アクリル酸ブチルの配合量を21部に変更した以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体C1を含む水分散液を製造した。それ以外は実施例1と同様にして、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
(比較例2)
粒子状重合体(2)として、コア部のガラス転移温度が80℃以上でありシェル部のガラス転移温度が80℃未満である粒子状重合体D1を調製した。粒子状重合体D1の調製時に、メタクリル酸メチルの配合量を52.5部、アクリル酸ブチルの配合量を14部、スチレンの配合量を26.4部とし、2−エチルヘキシルアクリレートを3.3部配合した以外は実施例4と同様にして粒子状重合体D1を含む水分散液を製造した。これ以外は実施例1と同様にして、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
(比較例3)
粒子状重合体(1)として、体積平均粒子径が0.1μmよりも小さい粒子状重合体C2を、粒子状重合体(2)として、粒子状重合体B1とは径の異なる粒子状重合体B5を、それぞれ調製した。
粒子状重合体C2の調製時に、乳化剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの配合量を3部に、過硫酸カリウム配合量を1部に変更した以外は、実施例1と同様にした。
粒子状重合体B5の調製時に、乳化剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの配合量を0.6部に変更した以外は、実施例1と同様にした。
これらの点以外は実施例1と同様にして、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(比較例4)
粒子状重合体(1)として、粒子状重合体A1とは径の異なる粒子状重合体A6を、粒子状重合体(2)として、体積平均粒子径が0.1μmよりも小さい粒子状重合体D2を、それぞれ調製した。
粒子状重合体A6の調製時に、乳化剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの配合量を0.6部に変更した以外は、実施例1と同様にした。
粒子状重合体D2の調製時に、乳化剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの配合量を3部に、過硫酸カリウム配合量を1部に変更した以外は、実施例1と同様にした。
これらの点以外は実施例1と同様にして、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1の実施例1〜9より、共に、体積平均粒子径D50が0.1μm以上5μm以下である2種類の粒子状重合体であって、80℃未満である少なくとも一つのガラス転移温度を有する粒子状重合体と、コアシェル構造を有し、シェル部のガラス転移温度が80℃以上である粒子状重合体と、結着材とを含む組成物から形成される接着層は、耐ブロッキング性に優れることが分かる。加えて、当該接着層を備える二次電池は低温出力特性に優れることが分かる。