(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809000
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】無水アルカリ金属硫化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 17/38 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
C01B17/38
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-128871(P2016-128871)
(22)【出願日】2016年6月29日
(65)【公開番号】特開2018-2511(P2018-2511A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】大槻 周次郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 英樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 敏
(72)【発明者】
【氏名】古沢 高志
【審査官】
壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−349594(JP,A)
【文献】
特開2009−215375(JP,A)
【文献】
特開平09−067108(JP,A)
【文献】
特公平03−039537(JP,B2)
【文献】
特開2013−256416(JP,A)
【文献】
特開平10−310425(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101993117(CN,A)
【文献】
特開2001−158608(JP,A)
【文献】
特開平11−236204(JP,A)
【文献】
特開平10−337401(JP,A)
【文献】
特開2010−168627(JP,A)
【文献】
特開平07−309830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B15/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に溶解する有機溶媒の存在下で、含水アルカリ金属硫化物にマイクロ波照射する工程を有すること、および、水に溶解する有機溶媒がアルコール類であることを特徴とする無水アルカリ金属硫化物の製造方法。
【請求項2】
含水アルカリ金属硫化物が、含水アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物より調製されたアルカリ金属硫化物含有水溶液中に含まれるものである、請求項1に記載の無水アルカリ金属硫化物の製造方法。
【請求項3】
アルカリ金属硫化物含有水溶液を外部加熱し、含水アルカリ金属硫化物を析出させた後、マイクロ波照射を行う、請求項2に記載の無水アルカリ金属硫化物の製造方法。
【請求項4】
前記有機溶媒および水の合計に対する前記有機溶媒の割合が0.1wt%以上かつ100wt%未満の範囲である請求項1−3のいずれか一項に記載の無水アルカリ金属硫化物の製造方法。
【請求項5】
前記有機溶媒が、メタノール、イソプロピルアルコールまたはエチレングリコールである請求項1−4のいずれか一項に記載の無水アルカリ金属硫化物の製造方法。
【請求項6】
減圧下でマイクロ波照射を行う、請求項1−5の何れか一項に記載の無水アルカリ金属硫化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無水アルカリ金属硫化物の製造方法に関し、詳しくは、高純度で均一な無水アルカリ金属硫化物を効率よく製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジニアリングプラスチックや医薬品の原料として、高純度であり、かつ取り扱いの容易な無水アルカリ金属硫化物、中でもポリアリーレンスルフィドやスルフィド結合を有する医薬品等の原料である無水硫化ナトリウムが要求されている。現在、一般に市販されている硫化ナトリウムとしては、硫化ナトリウム水溶液を冷却または濃縮して晶析させた結晶水を有する硫化ナトリウム結晶(Na
2S・9H
2O、Na
2S・6H
2O、Na
2S・5.5H
2O、Na
2S・5H
2O等)や60%程度の濃度の硫化ナトリウム熱水溶液をペレット状、フレーク状、チップ状等に固化して得られる含水硫化ナトリウム等がある。しかしながら、これらの硫化ナトリウムは水分を30 % 以上含有するものであり、純度が低いことに加えて潮解性が強く酸化され易いという欠点を有する。
【0003】
これらアルカリ金属硫化物を原料とする化学反応においては、製品中に存在する水が好ましくない副反応を誘発することや反応の平衡状態を変えると言う問題点があるため、反応に使用する前に脱水等の操作が必要となって操作が煩雑となる。また反応をスムーズに進行させるために反応溶媒に良分散して溶解し易い様な微粒子状の無水アルカリ金属硫化物が望まれている。
【0004】
無水硫化ナトリウムを得る方法としては、水和または含水硫化ナトリウムを融点以上の温度に加熱し脱水する方法が一般的である。しかしながら、水分を含有する硫化ナトリウムを融解させると極めて高粘度の塊となって、容器に強固に付着して攪拌や取り出しが困難となる。これまでに無水硫化ナトリウムの製法として知られているものには、
(1)水和硫化ナトリウム・9水和物)をパイプに充填し、攪拌することなく1トールの減圧下で特定の条件で加熱して融解を避けながら徐々に800℃まで昇温し、強制脱水する方法(特許文献1参照)。
(2)水酸化ナトリウムを2〜15質量%含有する97℃以上の硫化ナトリウム水溶液から無水硫化ナトリウム結晶を析出させる方法(特許文献2参照)
(3)高水和硫化ナトリウム結晶を500トール以下の圧力で高水和硫化ナトリウム結晶から硫化ナトリウム1水和物への相転移点±10℃で4〜5時間加熱し、次いで大気圧下または減圧下で90〜200℃で4〜5時間加熱して無水硫化ナトリウムを得る方法(特許文献3参照)。
(4)炭化水素溶媒あるいはポリハロ芳香族化合物の存在下、硫化ナトリウム水和物及び有機スルホン酸金属塩、ハロゲン化リチウム、有機カルボン酸金属塩、リン酸アルカリ金属塩の中から選ばれる少なくとも一種の金属塩を接触せしめ脱水を行ない、硫化ナトリウム組成物を得る方法(特許文献4、5参照)等が知られている。
【0005】
しかしながら、(1)の方法は、加熱温度が極めて高温であることから実用的ではなく、しかも得られた無水硫化ナトリウムは水和物の結晶形状を保持した骸晶となり、比表面積が大きく潮解性があり、非常に酸化され易いものであった。(2)及び(3)の方法は、これらの欠点を改良した方法ではあるが、(2)の方法では無水硫化ナトリウム結晶を析出させている間の水酸化ナトリウム濃度及び温度を厳密に制御する必要があり容易な方法ではなかった。また、(3)の方法では、減圧下で長時間を要し数工程が必要であり、原料としてNa
2S・5水和物を溶融させることなく粒子形を保持したまま脱水を行なっており、原料であるNa
2S・5水和物の粒子径がそのまま無水硫化ナトリウムの粒子径に反映し、得られる無水硫化ナトリウムの粒子径も1〜1.5mmと、比較的大きい結晶であった。このような結晶体を呈していると、比表面積が小さくなり、エンジニアリングプラスチックや医薬品の原料として用いた場合に反応性が低下したり、それゆえ、別途、当該結晶を微子粒状(例えば800μm以下)にまで破砕する工程が必要になることもあった。また、(4)の方法では脱水時の系に有機スルホン酸金属塩、ハロゲン化リチウム、有機カルボン酸金属塩、リン酸アルカリ金属塩等を分散剤として加える必要があるため脱水後の系内はそれら金属塩との混合物となり無水硫化ナトリウム単品を取り出すことは不可能に近かった。
【0006】
そこで、微粒子状の高純度の無水アルカリ金属硫化物を得る方法として、アルカリ金属硫化物水溶液と、該水溶液の沸点以下の融点を有する分散媒とを接触させ脱水を行なう、無水アルカリ金属硫化物と分散媒の混合物の製造方法が知られている(特許文献6参照)。しかし該方法もエネルギー効率が低く、生産性良く無水アルカリ金属硫化物を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許2533163号公報
【特許文献2】特開昭64−28207号公報
【特許文献3】特開平2−51404号公報
【特許文献4】特開昭60−200807号公報
【特許文献5】特開昭60−210509号公報
【特許文献6】特開平9−67108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、微粒子状の高純度の無水アルカリ金属硫化物を生産性良く製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記の課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、含水アルカリ金属硫化物中に含まれる結晶水を、アルコール中に溶出させながら脱水させることで、効率よく、無水アルカリ金属硫化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、アルコール溶媒の存在下で、含水アルカリ金属硫化物にマイクロ波照射する工程を有することを特徴とする無水アルカリ金属硫化物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、微粒子状の高純度の無水アルカリ金属硫化物を生産性良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の無水アルカリ金属硫化物の製造方法は、水に溶解する有機溶媒の存在下で、含水アルカリ金属硫化物にマイクロ波照射する工程を有することを特徴とする。
【0013】
本発明で用いる含水アルカリ金属硫化物としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム等の化合物の液状又は固体状の含水物が挙げられ、その固形分濃度は特に限定されないが10〜80質量%、特に35〜65質量%であることが好ましい。含水アルカリ金属硫化物として、好ましいのは含水硫化ナトリウムである。使用する含水硫化ナトリウムの形状は、結晶、フレーク状、固形、液体及び水溶液のいずれでもかまわない。
【0014】
含水アルカリ金属硫化物は、例えば、含水アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物より調製されたものであってもよい。含水アルカリ金属水硫化物としては、例えば水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウム等の化合物の液状又は固体状の含水物が挙げられ、その固形分濃度は特に限定されないが10〜80質量%、特に35〜65質量%であることが好ましい。含水アルカリ金属水硫化物として、好ましいのは含水水硫化ナトリウムである。使用する含水水硫化ナトリウムの形状は、結晶、フレーク状、固形、液体及び水溶液のいずれでもかまわない。また、アルカリ金属水酸化物は、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、及びこれらの水溶液が挙げられる。なお、該水溶液として用いる場合には、濃度20質量%以上の水溶液であることが好ましい。これらの中でも特に水酸化リチウムと水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが好ましく、特に水酸化ナトリウムが好ましい。アルカリ金属水酸化物の使用量は、無水アルカリ金属硫化物の生成が促進される点から、アルカリ金属水硫化物1モル当たり、0.8〜1.2モルの範囲が好ましく、特に0.9〜1.1モルの範囲がより好ましい。
【0015】
水に溶解する有機溶媒としては、例えば、アセトン(溶解度:全ての割合で水と相溶する。沸点:56.1℃)等のケトン類;メタノール(溶解度:全ての割合で水と相溶する、沸点:64.7℃)、エタノール(溶解度:全ての割合で水と相溶する、沸点:78.3℃)、イソプロピルアルコール(溶解度:全ての割合で水と相溶する、沸点:82.26℃)、エチレングリコール(溶解度:全ての割合で水と相溶する、沸点:197℃)等のアルコール類;酢酸メチル(溶解度:24質量%、沸点:56.9℃)等のエステル類等が挙げられる。これらの有機溶剤は単独で用いても良いし、2種以上を混合した混合溶剤を用いても良い。有機溶剤として好ましいものはケトン類、アルコール類であり、より好ましいものはメタノール、アセトン、イソプロピルアルコール、エチレングリコールであり、最も好ましいものはメタノール、アセトン、エチレングリコールである。
【0016】
また、マイクロ波照射する際の、前記有機溶媒および水の合計に対する前記有機溶媒の割合は、本発明の効果を損ねない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは0.1%以上の範囲であり、さらに好ましくは、15質量%以上の範囲であり、さらに30質量%以上の範囲がより好ましい。一方、上限値は、100質量%未満の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは90質量%以下の範囲であり、さらに、80質量%以下の範囲がより好ましい。なお、100質量%未満とは、系内に存在する結晶水と、遊離の水(いわゆる自由水)のうち、遊離の水をすべて除いた状態のものを含む。
【0017】
含水アルカリ金属硫化物を含む、アルカリ金属硫化物水溶液と前記有機溶剤を水が除去され得る温度、一般に70℃〜200、好ましくは100℃〜200℃の温度になるようマイクロ波照射を行い加熱することで脱水を行なう。
【0018】
マイクロ波照射による結晶水の脱水は、(1)前記有機溶媒の存在下、含水アルカリ金属硫化物にマイクロ波照射する、(2)含水アルカリ金属硫化物が水溶液状態の場合で、かつ前記有機溶媒として水よりも沸点の高いものを用いる場合、(2a)アルカリ金属硫化物含有水溶液をヒーター等で外部加熱し、遊離の水を脱水させつつ、前記有機溶媒を加えながら、含水アルカリ金属硫化物を溶解ないし析出させた後、次に、溶解ないし析出した含水アルカリ金属硫化物に、必要に応じて前記有機溶媒または後述する分散媒を追加した上で、マイクロ波照射する、(2b)アルカリ金属硫化物含有水溶液に前記有機溶媒を加えた上で、ヒーター等で外部加熱し、遊離の水を脱水させながら含水アルカリ金属硫化物を溶解ないし析出させた後、次に、溶解ないし析出した含水アルカリ金属硫化物に、必要に応じて前記有機溶媒または後述する分散媒を追加しながら、マイクロ波照射する、(3)含水アルカリ金属硫化物が水溶液状態の場合で、かつ前記有機溶媒として水よりも沸点の低いものを用いる場合、(3a)アルカリ金属硫化物含有水溶液をヒーター等で外部加熱し、遊離の水を脱水させつつ、後述する分散媒を加えながら含水アルカリ金属硫化物を析出させた後、次に、析出した含水アルカリ金属硫化物に、前記有機溶媒を加えた上で、マイクロ波照射する、(3b)アルカリ金属硫化物含有水溶液に後述する分散媒を加えた上で、ヒーター等で外部加熱し、遊離の水を脱水させながら含水アルカリ金属硫化物を析出させた後、次に、析出した含水アルカリ金属硫化物に、前記有機溶媒を加えた上で、マイクロ波照射する、方法などが挙げられる。いずれの場合も、含水アルカリ金属硫化物を前記有機溶媒に溶解した状態ないし分散媒に分散した状態で析出させ、当該溶解ないし分散状態を維持した上でマイクロ波照射することが重要である。
【0019】
当該分散媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、テトラリン、ジフェニル等の芳香族炭化水素、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素の炭化水素化合物、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、テトラクロロベンゼン、ジクロロジフェニルスルホン、ジクロロジフェニルエーテル等のポリハロ芳香族化合物及びこれらの混合物が挙げられる。これらのうち特にキシレン、p−ジクロロベンゼンは好適である。分散媒として特にp−ジクロロベンゼンを用いた場合は、そのままポリアリーレンスルフィドの製造に使用できるためさらに好ましい。分散媒を使用する場合、その量は、前記の分散状態が維持できれば特に制限は無いが、好ましくはアルカリ金属硫化物の硫黄原子1モルに対して0.1〜10モルの範囲であることが好ましく、さらに1〜5モルの範囲であることがより好ましい。
【0020】
マイクロ波照射は、マイクロ波発振機を用いて行い、水分子を加熱することが可能な周波数であれば特に限定されないが、好ましくは0.915GHz、または2.450GHzが挙げられ、その何れであっても良い。
【0021】
上記の方法により得られた無水アルカリ金属硫化物は、乾燥して粉末状ないし顆粒状の無水アルカリ金属硫化物として調製することができる。脱水が終了した時点での系内は前記有機溶媒または前記分散媒中に微粒状の無水アルカリ金属硫化物が分散している状態であることが好ましい。無水アルカリ金属硫化物は、ろ過等の手段により、前記有機溶媒や分散媒と固液分離することも可能であるが、潮解性を有することから、記有機溶媒または前記分散媒中に微粒状の無水アルカリ金属硫化物が分散している状態で保存ないし使用することが好ましい。
【0022】
上記の方法で得られた本発明の無水アルカリ金属硫化物は、高純度で均一なことから エンジニアリングプラスチックや医薬品の原料として用いることができる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特に断りが無い場合、%は質量%をあらわすものとする。
【0024】
(測定法)水分量
水分気化装置を備えた電量式カールフィッシャー水分計(京都電子工業社製)を用い、得られた無水硫化ナトリウムを280℃20分加熱して、蒸発させた水分を窒素ガスでカールフィッシャー液に送り、カールフィッシャー法にて水分量を測定した。
【0025】
(測定法)結晶中の無水硫化ナトリウムの純度測定
無水硫化ナトリウムの純度測定はJIS K1435−1986に準拠した測定により求めた。
【0026】
(測定法)無水硫化ナトリウムの二次粒子径
無水硫化ナトリウムの二次粒子径は、JIS Z8815−1994に準拠した測定により求めた。
【0027】
〔実施例1〕
攪拌機及びデカンターを備えたフラスコに含水水硫化ナトリウム(48.30%水硫化ソーダ水溶液)116.1g(水硫化ナトリウム1.000モル)、48.64%水酸化ナトリウム水溶液82.22g(水酸化ナトリウム1.000モル)及びエチレングリコール62.00g(1.000モル、密度1.113(室温、常圧))を入れ昇温を開始した。内温170℃で2時間維持し、水を留去させた。留出開始後しばらくすると系内に粒子が分散し始めた。2時間後118.0gの水が留出したので脱水を終了した。脱水終了時の系内は、含水硫化ナトリウムを含む微粒子がエチレングリコールに分散している状態であった。
【0028】
次に、内温140℃を維持しつつ、マイクロ波発振機を用いて、窒素ガス中、周波数2.450GHzのマイクロ波を2分間照射させた。マイクロ波照射後の系内は、無水硫化ナトリウム微粒子がエチレングリコールに分散している状態であった。
【0029】
冷却後粒子をろ過し、100℃で2時間減圧乾燥し77.20g(収率99.50%)の粒状生成物を得た。生成物は、無水硫化ナトリウム99.99%及び水分0.001%を含むものであった。得られた無水硫化ナトリウムの粒子径は、下記表1に示した。
【0030】
〔実施例2〕
含水硫化ナトリウム・9水和物(和光純薬工業株式会社「和光一級」)240.2g(硫化ナトリウム1.00モル)、水79.20g及びエチレングリコール62.00g(1.000モル)を入れ昇温を開始した。内温140℃で2時間維持し、水を留去させた。留出開始後しばらくすると系内に粒子が分散し始めた。2時間後79.20gの水が留出したので脱水を終了した。脱水終了時の系内は、含水硫化ナトリウムを含む微粒子がエチレングリコールに分散している状態であった。
【0031】
次に、内温140℃を維持しつつ、マイクロ波発振機を用いて、窒素ガス中、周波数2.450GHzのマイクロ波を2分間照射させた。マイクロ波照射後の系内は、無水硫化ナトリウム微粒子がエチレングリコールに分散している状態であった。
【0032】
冷却後粒子をろ過し、100℃で2時間減圧乾燥し77.2g(収率99.5%)の粒状生成物を得た。生成物は無水硫化ナトリウム99.999%及び水分0.001%を含むものであった。得られた無水硫化ナトリウムの粒子径は、下記表1に示した。
【0033】
〔実施例3〕
含水硫化ナトリウム・9水和物240.2g(硫化ナトリウム1.00モル)、水79.2g及びエチレングリコール62g(1.0モル)を入れ昇温を開始した。内温140℃で2時間維持し、水を留去させた。留出開始後しばらくすると系内に粒子が分散し始めた。2時間後79.2gの水が留出したので脱水を終了した。脱水終了時の系内は、含水硫化ナトリウムを含む微粒子がエチレングリコールに分散している状態であった。
【0034】
次に、内温140℃を維持しつつ、13.3kPaまで減圧した上で、マイクロ波発振機を用いて、周波数2.450GHzのマイクロ波を2分間照射させた。マイクロ波照射後の系内は、無水硫化ナトリウム微粒子がエチレングリコールに分散している状態であった。
【0035】
冷却後粒子をろ過し、100℃で2時間減圧乾燥し77.2g(収率99.5%)の粒状生成物を得た。生成物は無水硫化ナトリウム99.999%及び水分0.001%を含むものであった。得られた無水硫化ナトリウムの粒子径は、下記表1に示した。
【0036】
〔比較例1〕
攪拌機及びデカンターを備えたフラスコに含水水硫化ナトリウム(48.30%水硫化ソーダ水溶液)116.1g(水硫化ナトリウム1.000モル)、48.64%水酸化ナトリウム水溶液82.22g(水酸化ナトリウム1.000モル)及び分散媒としてp−ジクロロベンゼン147.0g(1.000モル)を入れ昇温を開始した。内温が140℃に到達すると水とp−ジクロロベンゼンの留出 が始まった。p−ジクロロベンゼンは、デカンターで分離して連続的に系内に戻した。留出開始後しばらくすると系内に粒子が分散し始めた。2時間後90.0gの水が留出し内温がp−ジクロロベンゼンの沸点である174℃に上昇したので脱水を終了した。脱水終了時の系内は、無水硫化ナトリウムの微粒子がp−ジクロロベンゼンに分散している状態であった。冷却後粒子をろ取し、100℃で2時間減圧乾燥し77.2g(収率99.0%)の粒状生成物を得た。生成物は硫化ナトリウム98%及び水分0.001%を含むものであった。得られた無水硫化ナトリウムの粒子径は、下記表1に示した。
【0037】
【表1】