特許第6809138号(P6809138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809138
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 45/00 20060101AFI20201221BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20201221BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20201221BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20201221BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20201221BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20201221BHJP
   C08F 297/04 20060101ALN20201221BHJP
   C08G 61/08 20060101ALN20201221BHJP
【FI】
   C08L45/00
   C08L65/00
   C08K5/09
   C08J5/00CES
   C08J5/00CEZ
   B29C45/00
   G02B1/04
   !C08F297/04
   !C08G61/08
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-212979(P2016-212979)
(22)【出願日】2016年10月31日
(65)【公開番号】特開2018-70784(P2018-70784A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 鮎美
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健作
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼岡 瑶子
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−53220(JP,A)
【文献】 特開2011−127017(JP,A)
【文献】 特開2012−72312(JP,A)
【文献】 特開2011−202136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
C08J 5/00−5/24
C08K 5/00−5/59
C08L 45/00−45/02
C08L 65/00−65/04
C08L 101/00−101/16
G02B 1/00−1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環構造含有重合体と炭素数18〜44の飽和脂肪酸とを含有する樹脂組成物であって、
前記脂環構造含有重合体が、ノルボルネン系単量体の開環重合体又はビニル脂環式炭化水素系重合体であり、
前記炭素数18〜44の飽和脂肪酸が、ダイマー酸の水素添加物であり、
前記炭素数18〜44の飽和脂肪酸の含有量が、脂環構造含有重合体100重量部に対して、0.1〜5.0重量部であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
光学用成形体又は医療用成形体の成形材料として用いられる、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形体。
【請求項4】
厚みが3mmの試験片を用いてヘイズを測定して得られたヘイズ値(α)が、1%以下である、請求項3に記載の樹脂成形体。
【請求項5】
厚みが3mmの試験片を、温度85℃、相対湿度90%の環境下に1000時間保持した後、これを25℃で72時間静置する湿熱試験を行ったときに、下記式(1)で算出されるΔHAZEが、0.5パーセントポイント以下である、請求項3又は4に記載の樹脂成形体。
【数1】
〔ヘイズ値(α)は、湿熱試験を行う前の試験片について測定したヘイズ値を表し、ヘイズ値(β)は、湿熱試験後の試験片について測定したヘイズ値を表す。〕
【請求項6】
光学用成形体又は医療用成形体である、請求項3〜5のいずれかに記載の樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温高湿環境下に置かれても白化しにくく、かつ、添加剤のブリードアウト現象が生じにくい、樹脂組成物、及びこの樹脂組成物を成形して得られる
樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脂環構造含有重合体は、透明性、耐熱性、耐薬品性等に優れるため、レンズ等の光学用成形体や医薬品容器等の医療用成形体の成形材料等として広く利用されるようになってきている。
しかしながら、脂環構造含有重合体は長時間高温高湿環境下に置かれると白化することがあった。このため、高温高湿環境下で使用される樹脂成形体の成形材料としては、通常、脂環構造含有重合体と、白化を防止し得る添加剤とを含有する樹脂組成物が用いられてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には脂環構造含有重合体と特定のペンタエリスリトール誘導体組成物とを含有する樹脂組成物が記載されている。また、この文献にはその樹脂組成物を用いることで、光学特性に優れ、さらに高温高湿環境下における光学特性の劣化が抑制された透明熱可塑性成形体が得られることも記載されている。
【0004】
また、長鎖アルキル基を有する飽和脂肪酸は、酸素吸収性を有する樹脂組成物の成分として有用であることが知られている。
例えば、特許文献2には、共役ジエン重合体環化物および炭素数18〜44の飽和脂肪酸を含有する酸素吸収性樹脂組成物等が記載されている。
特許文献2には、その樹脂組成物が酸素吸収性を有する理由として、樹脂組成物中に含まれる共役ジエン重合体環化物が酸化されることが記載されている。また、特許文献2には、樹脂組成物中に炭素数18〜44の飽和脂肪酸が存在することで、樹脂組成物による酸素吸収が促進されることも記載されている。
しかしながら、特許文献2には、脂環構造含有重合体と炭素数18〜44の飽和脂肪酸とを併用することにより奏する効果に関する記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−184955号公報
【特許文献2】WO2011/122548号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、その樹脂組成物を用いることで、光学特性に優れ、さらに高温高湿環境下における光学特性の劣化が抑制された透明熱可塑性成形体が得られることが記載されている。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、ペンタエリスリトール誘導体の効果を十分に発揮させるためにはその含有量を高める必要があり、その結果、ペンタエリスリトール誘導体が、樹脂組成物の成形時や樹脂成形体からブリードアウトし易くなることが分かった。
添加剤であるペンタエリスリトール誘導体が、樹脂組成物の成形時や得られた樹脂成形体からブリードアウトする現象(ブリードアウト現象)は、光学用成形体においてはその性能低下を引き起こす。また、医療用成形体においては、医薬品等の汚染を引き起こすおそれがある。また、成形時に添加剤がブリードアウトすると金型が汚染するため、生産性が低下することになる。
したがって、成形時や高温高湿環境下に置かれた場合などにおいて、添加剤がブリードアウトすることのない、樹脂組成物や樹脂成形体が要望されていた。
【0007】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、成形時や高温高湿環境下に置かれた場合であっても、白化しにくく、添加剤がブリードアウトすることのない、樹脂組成物、及び、この樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく、脂環構造含有重合体と添加剤とを含有する樹脂組成物について鋭意検討した。その結果、脂環構造含有重合体と、特定量の炭素数18〜44の飽和脂肪酸とを含有する樹脂組成物、及び、この樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形体は、成形時や高温高湿環境下に置かれた場合であっても、白化しにくく、かつ、添加剤のブリードアウト現象が生じにくいものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明によれば、下記〔1〕〜〔4〕の樹脂組成物、及び〔5〕〜〔8〕の樹脂成形体が提供される。
〔1〕脂環構造含有重合体と炭素数18〜44の飽和脂肪酸とを含有する樹脂組成物であって、前記炭素数18〜44の飽和脂肪酸の含有量が、脂環構造含有重合体100重量部に対して、0.1〜5.0重量部であることを特徴とする樹脂組成物。
〔2〕前記脂環構造含有重合体が、ノルボルネン系重合体又はビニル脂環式炭化水素系重合体である、〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕前記炭素数18〜44の飽和脂肪酸が、ダイマー酸の水素添加物又はイソステアリン酸である、〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕光学用成形体又は医療用成形体の成形材料として用いられる、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔5〕前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形体。
〔6〕厚みが3mmの試験片を用いてヘイズを測定して得られたヘイズ値(α)が、1%以下である、〔5〕に記載の樹脂成形体。
〔7〕厚みが3mmの試験片を、温度85℃、相対湿度90%の環境下に1000時間保持した後、これを25℃で72時間静置する湿熱試験を行ったときに、下記式(1)で算出されるΔHAZEが、0.5パーセントポイント以下である、〔5〕又は〔6〕のいずれかに記載の樹脂成形体。
【0010】
【数1】
【0011】
〔ヘイズ値(α)は、湿熱試験を行う前の試験片について測定したヘイズ値を表し、ヘイズ値(β)は、湿熱試験後の試験片について測定したヘイズ値を表す。〕
〔8〕光学用成形体又は医療用成形体である、〔5〕〜〔7〕のいずれかに記載の樹脂成形体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、成形時や高温高湿環境下に置かれた場合であっても、白化しにくく、かつ、添加剤のブリードアウト現象が生じにくい樹脂組成物、及びこの樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形体が提供される。
本発明の樹脂成形体は、光学用成形体や医療用成形体等として好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、1)樹脂組成物、及び、2)樹脂成形体、に項分けして詳細に説明する。
【0014】
1)樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、脂環構造含有重合体と炭素数18〜44の飽和脂肪酸とを含有する樹脂組成物であって、前記炭素数18〜44の飽和脂肪酸の含有量が、脂環構造含有重合体100重量部に対して、0.1〜5.0重量部であることを特徴とする。
【0015】
〔脂環構造含有重合体〕
本発明の樹脂組成物を構成する脂環構造含有重合体は、主鎖及び/又は側鎖に脂環構造を有する重合体である。なかでも、機械的強度、耐熱性等に優れる樹脂成形体が得られ易いことから、主鎖に脂環構造を有するものが好ましい。
脂環構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられる。なかでも、機械的強度、耐熱性等に優れる樹脂成形体が得られ易いことから、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、シクロアルカン構造がより好ましい。
脂環構造を構成する炭素原子数は、特に限定されないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲である。脂環構造を構成する炭素原子数がこれらの範囲内であることで、機械的強度、及び耐熱性等の特性がより高度にバランスされた樹脂成形体が得られ易くなる。
【0016】
脂環構造含有重合体中の脂環構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択することができる。この繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位に対して、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。脂環構造含有重合体中の脂環構造を有する繰り返し単位の割合が30重量%以上であることで、耐熱性、透明性等に優れる樹脂成形体が得られ易くなる。脂環構造含有重合体中の脂環構造を有する繰り返し単位以外の残部は、特に限定されず、使用目的に応じて適宜選択される。
【0017】
脂環構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、通常、5,000〜500,000、好ましくは8,000〜200,000、より好ましくは10,000〜100,000である。脂環構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)がこれらの範囲内であることで、樹脂成形体の機械的強度と、樹脂成形体を製造する際の成形加工性とがより高度にバランスされる。
脂環構造含有重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、通常、1.0〜4.0、好ましくは1.0〜3.0、より好ましくは1.0〜2.5である。
脂環構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。GPCにおける溶媒や標準物質は特に限定されない。例えば、実施例に記載の方法により、GPCを行うことができる。
【0018】
脂環構造含有重合体のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、通常、50〜300℃、好ましくは100〜280℃、特に好ましくは115〜250℃、更に好ましくは120〜200℃の範囲である。
脂環構造含有重合体のガラス転移温度(Tg)が50℃以上であることで、耐熱性に優れる樹脂成形体が得られ易くなる。また、脂環構造含有重合体のガラス転移温度(Tg)が300℃以下の脂環構造含有重合体を含有する樹脂組成物は溶融時に十分な流動性を有し、成形性に優れる。
ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に基づいて測定することができる。
なお、脂環構造含有重合体が2以上のガラス転移温度を有するとき、上記のガラス転移温度は、最高温度のものを意味する。
脂環構造含有重合体は、非晶性樹脂(融点を有しない樹脂)であることが好ましい。脂環構造含有重合体が非晶性樹脂であることで、透明性により優れる樹脂成形体が得られ易くなる。
【0019】
脂環構造含有重合体の具体例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度に優れる樹脂成形体が得られ易いことから、ノルボルネン系重合体又はビニル脂環式炭化水素系重合体が好ましい。
なお、本明細書において、これらの重合体は、重合反応生成物だけでなく、その水素化物も意味するものである。
本発明の樹脂組成物において、脂環構造含有重合体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
(1)ノルボルネン系重合体
ノルボルネン系重合体は、ノルボルネン骨格を有する単量体であるノルボルネン系単量体を重合して得られる重合体又はその水素化物である。
ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体、これらの開環重合体の水素化物、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体などが挙げられる。
【0021】
ノルボルネン系単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するものをいう。)、トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(メタノテトラヒドロフルオレン、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体などが挙げられる。
【0022】
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基などが挙げられる。
置換基を有するノルボルネン系単量体としては、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
これらのノルボルネン系単量体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、及びこれらの誘導体などの単環の環状オレフィン系単量体などが挙げられる。これらの置換基としては、ノルボルネン系単量体の置換基として示したものと同様のものが挙げられる。
これらの単量体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。これらの置換基としては、ノルボルネン系単量体の置換基として示したものと同様のものが挙げられる。
これらの単量体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
ノルボルネン系単量体の開環重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体は、単量体成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合させることにより合成することができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒等が挙げられる。
ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0026】
ノルボルネン系重合体が、ノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体又はその水素化物である場合、ノルボルネン系単量体由来の繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位中、好ましくは99モル%以下、より好ましくは30〜99モル%、さらに好ましくは50〜97モル%、特に好ましくは70〜95モル%である。
【0027】
ノルボルネン系単量体の付加重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体は、単量体成分を、公知の付加重合触媒の存在下で重合させることにより合成することができる。付加重合触媒としては、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒が挙げられる。
【0028】
ノルボルネン系重合体が、ノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体である場合、ノルボルネン系単量体由来の繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位中、好ましくは99モル%以下、より好ましくは30〜99モル%、さらに好ましくは50〜97モル%、特に好ましくは70〜95モル%である。
【0029】
これらのノルボルネン系重合体の中でも、耐熱性、機械的強度等に優れる樹脂成形体が得られ易いことから、ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物が好ましく、ノルボルネン系単量体として、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエンを用いたノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物がより好ましい。ノルボルネン系重合体中の、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン由来の繰り返し単位の量は、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましい。
【0030】
(2)単環の環状オレフィン系重合体
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの、単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体が挙げられる。
これらの付加重合体の合成方法は特に限定されず、公知の方法を適宜利用することができる。
【0031】
(3)環状共役ジエン系重合体
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−又は1,4−付加重合した重合体及びその水素化物などが挙げられる。
これらの付加重合体の合成方法は特に限定されず、公知の方法を適宜利用することができる。
【0032】
(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体
ビニル脂環式炭化水素系重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素化物;後述するビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素化物;などが挙げられる。また、ビニル脂環式炭化水素系単量体やビニル芳香族系単量体と、これらの単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。かかる共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体等が挙げられる。ブロック共重合体としては、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、又はそれ以上のマルチブロック共重合体や傾斜ブロック共重合体などが挙げられ、特に限定されない。
【0033】
ビニル脂環式炭化水素系重合体としては、ビニル芳香族系単量体由来の繰り返し単位を主構成成分とする2つの重合体ブロック[A]、[A]と、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を主構成成分とする重合体ブロック[B]とを有する、[A]−[B]−[A]構造のブロック共重合体(以下、「重合体(α)」ということがある。)の、主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化して得られる、[A’]−[B’]−[A’]構造のブロック共重合体水素化物が好ましい。
本明細書において、「主構成成分とする」とは、そのブロック中、50重量%以上を占める繰り返し単位をいう。
【0034】
重合体(α)において、重合体ブロック[A]や重合体ブロック[A]に含まれるビニル芳香族系単量体由来の繰り返し単位の量は、各重合体ブロック中、70〜100重量%が好ましく、80〜100重量がより好ましく、90〜100重量%がさらに好ましい。
【0035】
ビニル芳香族系単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン等のアルキル置換スチレン系単量体;2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、4−ブロモスチレン、2,4−ジブロモスチレン等のハロゲン置換スチレン系単量体;2−メチル−4,6−ジクロロスチレン等の置換基としてハロゲン原子及びアルキル基を有するスチレン系単量体;ビニルナフタレン;等が挙げられる。これらのビニル芳香族系単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
重合体ブロック[A]や重合体ブロック[A]に含まれていてもよい、ビニル芳香族系単量体由来の繰り返し単位以外の繰り返し単位としては、エチレン由来の繰り返し単位;プロピレン、1−ブテン等のα−オレフィン由来の繰り返し単位;共役ジエン単量体由来の繰り返し単位;等が挙げられる。
【0037】
重合体(α)において、重合体ブロック[B]に含まれる共役ジエン単量体由来の繰り返し単位の量は、重合体ブロック[B]中、70〜100重量%が好ましく、80〜100重量がより好ましく、90〜100重量%がさらに好ましい。
【0038】
共役ジエン単量体としては、イソブチレン;1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。これらの単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
重合体ブロック[B]に含まれていてもよい、共役ジエン単量体由来の繰り返し単位以外の繰り返し単位としては、エチレン由来の繰り返し単位;プロピレン、1−ブテン等のα−オレフィン由来の繰り返し単位;ビニル芳香族系単量体由来の繰り返し単位;等が挙げられる。
【0040】
重合体(α)は、各重合体ブロックに対応する単量体を用いて重合反応を行うことにより得ることができる。
重合反応は、重合体(α)を合成できるものであれば特に限定されない。重合反応としては、ラジカル重合反応、アニオン重合反応、カチオン重合反応、配位アニオン重合反応、配位カチオン重合反応等が挙げられる。
これらの中でも、リビングアニオン重合反応が好ましい。
リビングアニオン重合反応は、常法に従って行うことができる。
【0041】
重合体(α)の水素化反応は、常法に従って、水素化触媒の存在下に、重合体(α)を水素と接触させることにより行うことができる。
【0042】
〔炭素数18〜44の飽和脂肪酸〕
本発明の樹脂組成物は、炭素数18〜44の飽和脂肪酸を含有する。炭素数18〜44の飽和脂肪酸を含有することで、本発明の樹脂組成物や該樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形体は、成形時や高温高湿環境下に置かれた場合であっても、白化しにくく、かつ、添加剤のブリードアウト現象が生じにくいものとなる。
【0043】
飽和脂肪酸の炭素数は18〜44であり、28〜44が好ましく、36〜44がより好ましい。
飽和脂肪酸の炭素数が18未満のときは、飽和脂肪酸がブリードアウトし易くなり、また、成形時に金型を汚染するおそれがある。さらに、脂環構造含有重合体と混ざり難いため、樹脂成形体が白濁する傾向がある。一方、炭素数が44を超える飽和脂肪酸は、通常、入手が困難である。
【0044】
炭素数18〜44の飽和脂肪酸としては、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の炭素数18〜44の直鎖飽和脂肪酸;イソステアリン酸、イソアラキジン酸、イソベヘン酸、イソリグノセリン酸等の炭素数18〜44の分岐飽和脂肪酸;ダイマー酸の水素添加物等の不飽和脂肪酸の多量体の水素添加物であって炭素数が18〜44である脂肪酸;等が挙げられる。
炭素数18〜44の飽和脂肪酸は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
これらの中でも、炭素数18〜44の飽和脂肪酸としては、ダイマー酸の水素添加物又はイソステアリン酸が好ましい。
【0046】
「ダイマー酸」とは、不飽和脂肪酸の分子間重合反応によって得られる脂肪族二塩基酸である。
ダイマー酸としては、下記式(2)で示される非環型ダイマー酸、下記式(3)で示される単環型ダイマー酸、下記式(4)で示される多環型ダイマー酸、下記式(5)で示される芳香環型ダイマー酸が挙げられる。
【0047】
【化1】
【0048】
式(2)〜(5)中、R〜Rはそれぞれ独立にアルキル基を表し、A〜Aはそれぞれ独立にアルキレン基を表す。
【0049】
「ダイマー酸の水素添加物」とは、これらのダイマー酸が有する不飽和結合を水素化し、飽和結合とした化合物である。ダイマー酸の水素添加反応は常法に従って行うことができる。
なお、上記のように、ダイマー酸の水素添加物は、不飽和脂肪酸の分子間重合反応、及び、その後の水素添加反応により得ることができるが、その反応生成物は、単量体化合物、三量体化合物、不飽和結合が残存した化合物等を不純物として含有する場合がある。そのような混合物であっても、不純物の量が少ない場合は、本発明の樹脂組成物の原料として使用することができる。
混合物中に含まれる不純物の含有量は、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。
また、混合物のヨウ素価は、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。
【0050】
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、前記脂環構造含有重合体と前記炭素数18〜44の飽和脂肪酸とを含有するものである。
炭素数18〜44の飽和脂肪酸の含有量は、脂環構造含有重合体100重量部に対して、0.1〜5.0重量部であり、好ましくは0.5〜5.0重量部、より好ましくは1.0〜2.0重量部である。
炭素数18〜44の飽和脂肪酸の含有量が、脂環構造含有重合体100重量部に対して0.1重量部を下回ると、その効果が十分には得られず、高温高湿環境下に置かれた樹脂組成物や樹脂成形体が白化し易くなる。一方、炭素数18〜44の飽和脂肪酸の含有量が、脂環構造含有重合体100重量部に対して5.0重量部を超えると、樹脂組成物や樹脂成形体から炭素数18〜44の飽和脂肪酸がブリードアウトしたり、炭素数18〜44の飽和脂肪酸の分散が十分でないため、樹脂組成物や樹脂成形体の透明性が劣ったり、ガラス転移温度が低下したりするおそれがある。
【0051】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲でその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、脂環構造含有重合体以外の重合体や酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、可塑剤、酸補足剤等の添加剤が挙げられる。
【0052】
脂環構造含有重合体以外の重合体としては、軟質重合体やテルペンフェノール樹脂が挙げられる。
軟質重合体は、特開2006−124580号公報等に記載された、通常30℃以下のTgを有する重合体であり、Tgが複数存在する場合には、少なくとも最も低いTgが30℃以下である重合体である。このような軟質重合体の中でも、JIS K 7210に従って測定される230℃、21.18Nにおけるメルトマスフローレート(MFR)が10g/10分〜100g/10分のものが好ましい。
【0053】
軟質重合体としては、例えば、液状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのオレフィン系軟質重合体;ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブチレン・スチレン共重合体などのイソブチレン系軟質重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体などのジエン系軟質重合体;ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサンなどのケイ素含有軟質重合体;ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレート・スチレン共重合体などのα,β−不飽和酸からなる軟質重合体;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などの不飽和アルコール及びアミン又はそのアシル誘導体又はアセタールからなる軟質重合体;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴムなどのエポキシ系軟質重合体;フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴムなどのフッ素系軟質重合体;天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどの軟質重合体が挙げられる。これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、また、変性反応により官能基を導入したものでもよい。
これらの軟質重合体は、それぞれ1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
これらの中でも、特に透明性、耐高温高湿性に優れることからジエン系軟質重合体が好ましく、特にスチレンを用いたジエン系軟質重合体が好ましく、とりわけポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレンが耐高温高湿性の観点から好ましい。
【0055】
本発明の樹脂組成物が軟質重合体を含有する場合、その含有量は、脂環構造含有重合体100重量部に対して、通常、0.05〜0.5重量部、好ましくは0.1〜0.3重量部である。軟質重合体の含有量が多すぎると樹脂組成物の透明性が低下するおそれがある。
【0056】
テルペンフェノール樹脂は、テルペン化合物とフェノール類の重合反応生成物である。テルペンフェノール樹脂は、例えば、テルペン化合物1モルとフェノール類0.1〜15モルを、フリーデルクラフト触媒のもとで、−10〜+120℃の温度で0.5〜20時間、カチオン重合反応させて製造することができる。
【0057】
テルペン化合物としては、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、カンフェン、トリシクレン、サビネン、パラメンタジエン類、カレン類等が挙げられる。
【0058】
フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA等が挙げられる。
【0059】
フリーデルクラフト触媒としては、塩化亜鉛、四塩化チタン、塩化錫、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、塩化鉄、三塩化アンチモン等々が挙げられる。
【0060】
また、テルペンフェノール樹脂を水素添加した水添テルペン樹脂オリゴマー等をテルペンフェノール樹脂として使用することもできる。
テルペンフェノール樹脂は市販品を利用してもよい。市販品としては、ヤスハラケミカル社製のポリスターシリーズやマイテイーエースシリーズが挙げられる。
【0061】
本発明の樹脂組成物がテルペンフェノール樹脂を含有する場合、その含有量は、脂環構造含有重合体100重量部に対して、通常、1〜15重量部、好ましくは、2〜10重量部である。テルペンフェノール樹脂の含有量が多すぎると、樹脂成形体の熱安定性が低下するおそれがある。
【0062】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0063】
フェノール系酸化防止剤としては、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、α−トコフェノール、2,2,4−トリメチル−6−ヒドロキシ−7−t−ブチルクロマン、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、〔ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]〕等が挙げられる。
【0064】
リン系酸化防止剤としては、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジターシャリーブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジターシャリーブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジターシャリーブチルフェニル)4,4’−ビフェニルジホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。
【0065】
イオウ系酸化防止剤としては、ジステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート等が挙げられる。
【0066】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アクリレート系紫外線吸収剤、金属錯体系紫外線吸収剤等が挙げられる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
【0067】
近赤外線吸収剤としては、シアニン系近赤外線吸収剤;ピリリウム系赤外線吸収剤;スクワリリウム系近赤外線吸収剤;クロコニウム系赤外線吸収剤;アズレニウム系近赤外線吸収剤;フタロシアニン系近赤外線吸収剤;ジチオール金属錯体系近赤外線吸収剤;ナフトキノン系近赤外線吸収剤;アントラキノン系近赤外線吸収剤;インドフェノール系近赤外線吸収剤;アジ系近赤外線吸収剤;等が挙げられる。
可塑剤としては、燐酸トリエステル系可塑剤、脂肪酸一塩基酸エステル系可塑剤、二価アルコールエステル系可塑剤、オキシ酸エステル系可塑剤等が挙げられる。
酸補足剤としては、酸化マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0068】
これらの成分の含有量は、目的に合わせて適宜決定することができる。含有量は、脂環構造含有重合体100重量部に対して、通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
【0069】
本発明の樹脂組成物は、常法に従って、各成分を混合することにより得ることができる。混合方法としては、各成分を適当な溶媒中で混合する方法や、溶融状態で混錬する方法が挙げられる。
【0070】
混練は、単軸押出し機、二軸押出し機、バンバリーミキサー、ニーダー、フィーダールーダー等の溶融混練機を用いて行うことができる。混練温度は、好ましくは200〜400℃、より好ましくは240〜350℃の範囲である。混練に際し、各成分を一括添加して混練してもよいし、数回に分けて添加しながら混練してもよい。
混錬後は、常法に従って、棒状に押出し、ストランドカッターで適当な長さに切ることで、ペレット化することができる。
【0071】
本発明の樹脂組成物は、高温高湿環境下に置かれても白化しにくいものである。
例えば、本発明の樹脂組成物を用いることで、後述するヘイズ値の樹脂成形体を効率よく製造することができる。
【0072】
本発明の樹脂組成物は、成形時や高温高湿環境下に置かれても、白化しにくく、かつ、添加剤のブリードアウト現象が生じにくいものであるため、光学用成形体や医療用成形体の成形材料として好ましく用いられる。
【0073】
2)樹脂成形体
本発明の樹脂成形体は、本発明の樹脂組成物を成形して得られるものである。
本発明の樹脂成形体の成形方法は特に限定されず、射出成形法、プレス成形法、押出し成形法、ブロー成形法等の従来公知の成形法が挙げられる。なかでも、目的の樹脂成形体を寸法精度よく成形し得ることから、射出成形法、プレス成形法が好ましく、射出成形法がより好ましい。
【0074】
射出成形法を用いて樹脂成形体を成形する際は、通常、成形材料(前記樹脂組成物)を射出成形機のホッパーに投入し、高温のシリンダー内でこれを可塑化し、次いで、溶融樹脂(可塑化された樹脂)を、ノズルから金型内に射出する。溶融樹脂が金型内で冷却固化することにより、目的の樹脂成形体を得ることができる。
シリンダー温度は、通常150〜400℃、好ましくは200〜350℃、より好ましくは250〜310℃の範囲で適宜選択される。シリンダー温度が過度に低いと溶融樹脂の流動性が低下し、樹脂成形体にヒケやひずみを生じるおそれがある。一方、シリンダー温度が過度に高いと成形材料の熱分解によるシルバーストリークが発生したり、樹脂成形体が黄変したりするおそれがある。
【0075】
シリンダーから金型へ溶融樹脂を射出するときの射出速度は、1〜1,000cm/秒が好ましい。射出速度がこの範囲であることで、外観形状に優れる樹脂成形体が得られ易くなる。シリンダーから金型へ溶融樹脂を射出するときの射出圧は、特に限定されず、金型の種類や、成形材料の流動性等を考慮して適宜設定すればよい。射出圧は、通常、50〜1,500MPaである。
【0076】
射出成形法においては、通常、金型内を溶融樹脂で満たした後も、金型のゲート部分の溶融樹脂が完全に冷却固化するまでの一定時間、スクリューを稼働させて、金型内の溶融樹脂に圧力をかける(以下、この圧力を「保圧」という)。
保圧は、一般に金型の締め圧の範囲内で設定されるが、通常、その上限は200MPa以下、好ましくは170MPa以下、より好ましくは150MPa以下である。保圧が200MPa以下であることで、歪の少ない樹脂成形体が得られ易くなる。
一方、保圧の下限は、通常、10MPa以上、好ましくは12MPa以上、より好ましくは15MPa以上である。保圧が10MPa以上であることで、ひけの発生が防止され、かつ、寸法精度に優れた樹脂成形体が得られ易くなる。
【0077】
金型温度は、通常、成形材料中の脂環構造含有重合体のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度であり、好ましくはTgよりも0〜50℃低い温度、より好ましくはTgよりも5〜20℃低い温度である。金型温度がこの範囲内であることで、歪の少ない樹脂成形体が得られ易くなる。
【0078】
また、射出成形法においては、樹脂成形体の色調低下を抑えたり、酸化物やボイドの発生を低減するために、成形材料の予備乾燥を行ったり、射出成形機のホッパー部から窒素などの不活性ガスを通じたりしてもよい。
予備乾燥の条件は特に限定されず、例えば、100〜110℃で4〜12時間、真空乾燥を行うことにより、予備乾燥をすることができる。
【0079】
本発明の樹脂成形体は、光透過性に優れ、さらに、高温高湿環境下に置かれても白化しにくいものである。
【0080】
例えば、本発明の樹脂成形体に由来する厚みが3mmの試験片を用いてヘイズを測定して得られたヘイズ値(α)は、通常、1%以下、好ましくは0.5%以下である。
また、厚みが3mmの試験片を、温度85℃、相対湿度90%の環境下に1000時間保持した後、これを25℃で72時間静置する湿熱試験を行ったときに、下記式(1)で算出されるΔHAZEは、通常、0.5パーセントポイント以下、好ましくは0.2パーセントポイント以下である。
【0081】
【数2】
【0082】
式(1)中、ヘイズ値(α)は、湿熱試験を行う前の試験片について測定したヘイズ値を表し、ヘイズ値(β)は、湿熱試験後の試験片について測定したヘイズ値を表す。
【0083】
これらの性質が十分に生かされることから、本発明の樹脂成形体は、光学用成形体や医療用成形体として好ましく用いられる。
光学用成形体としては、カメラの撮像系レンズ、ビデオカメラの撮像系レンズ、センサー用レンズ、望遠鏡レンズ、光ディスク用のピックアップレンズ等の光学レンズ;光学ミラー;プリズム;偏光フィルム、位相差フィルム等の光学フィルム;等が挙げられる。
医療用成形体としては、医薬品容器、化粧品容器、食品用容器等の容器類;ディスポーザブルシリンジ、プレフィルドシリンジ、バイアル、点眼薬容器、医療用検査セル、輸液バッグ、メス、鉗子、送液管等の医療用器具;シャーレ、培養容器、ディスポーザブルピペット等の実験器具;等が挙げられる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。以下において、「部」及び「%」は特に断りのない限り、重量基準である。
【0085】
各種の物性の測定は、下記の方法に従って行った。
(1)重量平均分子量(Mw)
製造例1において、[A]−[B]−[A]構造のブロック共重合体〔重合体(α1)〕を製造する途中工程での重合体、重合体(α1)、及び、[A’]−[B’]−[A’]構造のブロック共重合体水素化物〔脂環構造含有重合体(1)〕の重量平均分子量(Mw)は、THFを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として求めた。測定装置として、東ソー社製、HLC8020GPCを用い、カラム温度は38℃で行った。
製造例2において、脂環構造含有重合体(2)の重量平均分子量(Mw)は、シクロヘキサンを溶離液とするGPCによる標準ポリイソプレン換算値として求めた。
標準ポリイソプレンとしては、東ソー社製標準ポリイソプレン(Mw=602、1390、3920、8050、13800、22700、58800、71300、109000、280000)を用いた。測定は、東ソー社製カラム(TSKgelG5000HXL、TSKgelG4000HXL及びTSKgel G2000HXL)を3本直列に繋いで用い、流速1.0mL/分、サンプル注入量100μL、カラム温度40℃の条件で行った。
【0086】
(2)水素添加率
重合体の水素化反応における水素転化率は、H−NMRにより測定した。
(3)ガラス転移温度(Tg)
製造例1の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、以下の方法により測定した。
製造例1で得られたペレットをプレス成形して、長さ50mm、幅10mm、厚さ1mmの試験片を作製し、この試験片を用いて、JIS−K7244−4法に基づき、粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、ARES)を使用して、−100℃から+150℃の範囲で、昇温速度5℃/分で粘弾性スペクトルを測定した。損失正接tanδの低温側のピークトップ温度から、重合体ブロック[B]成分に由来するソフトセグメントのガラス転移温度(Tg1)、高温側のピークトップ温度から、重合体ブロック[A]成分に由来するハードセグメントのガラス転移温度(Tg2)を求めた。
【0087】
製造例2の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析計(DSC6220SII、ナノテクノロジー社製)を用いて、JISK7121に基づき昇温速度10℃/分の条件で測定した。
なお、樹脂組成物の組成を考慮すると、今回測定された、樹脂組成物のガラス転移温度は、その樹脂組成物に含まれる脂環構造含有重合体のガラス転移温度とみなすことができる。
【0088】
(4)耐高温高湿性(白化防止性)
(ヘイズ)
実施例又は比較例で得られた試験片について、ヘイズメータ(日本電色工業社製、製品名「NDH2000」)を用いてヘイズを測定した〔ヘイズ値(α)〕。ヘイズを測定した後、試験片を高温高湿試験器内(温度85℃、相対湿度90%)に1000時間保持した後、これを試験器外に取り出して(急激に試験器外環境に移して)、25℃で72時間静置した。この試験片についてヘイズを測定し〔ヘイズ値(β)〕、上記式に基づき、ヘイズ変化(ΔHAZE)を算出した。ΔHAZEが小さいほど、耐高温高湿性が優れていることを示す。
【0089】
(5)金型汚れ性
実施例又は比較例で得たペレットを成形材料として用いて、以下の条件で500ショット連続して射出成形を行った。その後、用いた金型を観察し、そこに付着した白点の有無で金型汚れ性を評価した。
(成形条件)
射出成形機:ファナック社製、ロボショットα−100B
金型:長さ65mm、幅65mm、厚さ3mmの金型
シリンダー温度:(Tg+140)℃
金型温度:(Tg−10)℃
射出圧:70MPa
【0090】
[製造例1]
窒素置換した重合反応器に、脱水シクロヘキサン270部、脱水スチレン8部及びジブチルエーテル1.1部を入れた。全容を60℃で攪拌しながら、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.82部を加えて重合を開始させた。引続き全容を60℃で20分間攪拌した。
この時点(重合第1段階)で反応液をガスクロマトグラフィー(以下、「GC」と記載することがある。)及びGPCにより分析した結果、重合転化率は99.5%、Mwは4,200であった。
次に、反応液に、脱水イソプレン15部を40分間に亘って連続的に添加し、添加終了後そのまま30分間攪拌を続けた。この時点(重合第2段階)で、反応液をGC及びGPCにより分析した結果、重合転化率は99.5%、Mwは11,700であった。
その後、更に、反応液に脱水スチレン77部を、200分間に亘って連続的に添加し、添加終了後そのまま60分攪拌した。この時点(重合第3段階)で、反応液をGC及びGPCにより分析した結果、重合転化率はほぼ100%、生成した重合体(α1)の重量平均分子量(Mw)は52,600であった。次いで、イソプロピルアルコール1.0部を加えて反応を停止させた。
【0091】
次に、上記の重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として、珪藻土担持型ニッケル触媒(製品名「E22U」、ニッケル担持量60%、日揮触媒化成社製)4.0部、及び脱水シクロヘキサン30部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度190℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。
水素化反応により得られた反応溶液を分析した結果、生成した脂環構造含有重合体(1)の重量平均分子量(Mw)は55,800、水素化率はほぼ100%であった。この反応溶液に対して、珪藻土(昭和化学工業社製、製品名「ラヂオライト(登録商標)♯500」)を濾過床として、加圧濾過器(石川島播磨重工社製、製品名「フンダフィルタ−」)を使用し、圧力0.25MPaで加圧濾過処理を行い、無色透明な溶液を得た。得られた溶液に、脂環構造含有重合体(1)100部当り、酸化防止剤〔ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、製品名「イルガノックス(登録商標)1010」)〕、0.1部を溶解したキシレン溶液2.0部を添加した。
次いで、この溶液を、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力1kPa以下で、溶液からシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去した。溶融ポリマーをダイからストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーにより樹脂組成物のペレット95部を得た。得られたペレットに含まれる脂環構造含有重合体(1)の重量平均分子量(Mw)は、55,200、樹脂組成物のガラス転移温度は、(Tg1)は−50℃、(Tg2)は128℃であった。
【0092】
〔製造例2〕
窒素置換した重合反応器に、テトラシクロ(9.2.1.02,10.03,8)テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(以下、「MTF」と略記する。)65モル%、テトラシクロドデセン(以下、「TCD」と略記する。)30モル%、ビシクロ(2.2.1)ヘプタ−2−エン(以下、「NB」と略記する。)5モル%、からなる単量体混合物7部(重合に使用するモノマー全量に対して1%)、脱水シクロヘキサン1600部、分子量調節剤として1−ドコセン1.5部、ジイソプロピルエ−テル1.3部、イソブチルアルコール0.33部、トリイソブチルアルミニウム0.84部及び六塩化タングステン0.66%シクロヘキサン溶液30部を入れ、55℃で10分間攪拌した。
次いで、反応系を55℃に保持し、攪拌しながら、前記重合反応器中に前記と同様の組成の単量体混合物693部と六塩化タングステン0.66%シクロヘキサン溶液72部を各々150分かけて連続的に滴下し、滴下終了後30分間攪拌した。その後、イソプロピルアルコール1.0部を添加して重合反応を停止させた。ガスクロマトグラフィーによって重合反応溶液を分析したところ、単量体の転化率は、100%であった。
【0093】
次いで、上記重合反応溶液300部を攪拌器付きオートクレーブに移し、シクロヘキサン100部および珪藻土担持ニッケル触媒(日揮化学社製、製品名「T8400RL」、ニッケル担持率58%)2.0部を加えた。オートクレーブ内を水素で置換した後、180℃、4.5MPaの水素圧力下で6時間水素化反応を行った。
【0094】
水素化反応で得られた反応溶液に対して、珪藻土(昭和化学工業社製、製品名「ラヂオライト(登録商標)♯500」)を濾過床として、加圧濾過器(石川島播磨重工社製、製品名「フンダフィルタ−」)を使用し、圧力0.25MPaで加圧濾過処理を行い、無色透明な溶液を得た。次いで、得られた溶液に、前記水素化物100部当り、酸化防止剤〔ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、製品名「イルガノックス(登録商標)1010」)〕0.5部を加えて、これを溶解させた。
この溶液をフィルター(キュノーフィルター社製、製品名「ゼータプラス(登録商標)30H」、孔径0.5〜1μm)で濾過した後、濾液を金属ファイバー製フィルター(ニチダイ社製、孔径0.4μm)にて濾過して異物を除去した。
次いで、上記で得られた濾液を、円筒型濃縮乾燥機(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮機に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、水冷後、ペレタイザー(長田製作所製、製品名「OSP−2」)でカッティングして樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットに含まれる脂環構造含有重合体(2)の重量平均分子量(Mw)は29,000、樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は144℃、水添率は99%以上であった。
【0095】
〔実施例、比較例で用いた化合物〕
実施例及び比較例においては、製造例(1)、(2)で得られた脂環構造含有重合体(1)、(2)に加えて、以下の重合体や添加剤を使用した。
重合体(3):三井化学社製、APL5014DP(環状オレフィン共重合体)
添加剤(1):CRODA社製、PRIPOL1004(水添ダイマー酸(C44))
添加剤(2):CRODA社製、PRIPOL1009(水添ダイマー酸(C36))
添加剤(3):CRODA社製、PRIPOL2033(水添ダイマージオール(C36))
添加剤(4):CRODA社製、PRIAMINE1075(水添ダイマージアミン(C36))
【0096】
[実施例1]
製造例1で得た、脂環構造含有重合体(1)を含有するペレットと、添加剤(1)〔脂環構造含有重合体(1)100部に対して2.0部を2軸混練機(パーカーコーポレーション製、HK−25D)で混練して押出し、ペレットを得た。得られたペレットを100℃で4時間加熱して乾燥させ、次いで射出成形機に投入し以下の条件で射出成形し、耐高温高湿性試験用の試験片を得た。
(成形条件)
射出成形機:ファナック社製、ロボショットα−100B
金型:長さ65mm、幅65mm、厚さ3mmの金型
シリンダー温度:(Tg+140)℃
金型温度:(Tg−10)℃
射出圧:60MPa
【0097】
次いで、得られた試験片を用いてヘイズ測定、及び湿熱試験を行った。結果を第1表に示す。
【0098】
[実施例2〜6、比較例1〜4]
第1表に記載の配合に変えたことを除き、実施例1と同様にしてペレット及び試験片を得、各種測定を行った。結果を第1表に示す。
【0099】
[実施例7]
脂環構造含有重合体(3)100部、添加剤(1)2.0部を2軸混練機(パーカーコーポレーション製、HK−25D)で混練して押出し、ペレットを得た。得られたペレットを100℃で4時間加熱して乾燥させ、次いで射出成形機に投入し、以下の条件で射出成形し、耐高温高湿性試験用の試験片を得た。
(成形条件)
射出成形機:ファナック社製、ロボショットα−100B
金型:長さ65mm、幅65mm、厚さ3mmの金型
シリンダー温度:(Tg+140)℃
金型温度:(Tg−10)℃
射出圧:60MPa
【0100】
【表1】
【0101】
第1表から以下のことが分かる。
実施例1〜7の樹脂組成物を用いて得られた樹脂成形体は、ヘイズ値が小さく、また、耐高温高湿性に優れる。また、繰り返し成形を行っても、ブリード現象が起こりにくく金型汚れがない。
一方、比較例1の樹脂組成物は、炭素数18〜44の飽和脂肪酸を含有しないため、得られた樹脂成形体は、耐高温高湿性に劣っている。
比較例2の樹脂組成物は、炭素数18〜44の飽和脂肪酸の量が多過ぎるため、成形時に金型が汚れ易く、また得られる樹脂成形体はヘイズ値が大きくなっている。
比較例3、4では、炭素数18〜44の飽和脂肪酸に代えて、他の添加剤〔添加剤(3)、(4)〕を用いたものであるが、本発明の効果は得られず、金型が汚れたり(比較例4)、耐高温高湿性に劣ったりしている(比較例3、4)。