特許第6809454号(P6809454)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6809454二次電池負極用スラリー組成物、二次電池用負極および二次電池
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  • 特許6809454-二次電池負極用スラリー組成物、二次電池用負極および二次電池 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809454
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】二次電池負極用スラリー組成物、二次電池用負極および二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1393 20100101AFI20201221BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20201221BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20201221BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20201221BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20201221BHJP
【FI】
   H01M4/1393
   H01M4/587
   H01M4/62 Z
   H01M4/133
   H01M10/0566
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-523094(P2017-523094)
(86)(22)【出願日】2016年5月13日
(86)【国際出願番号】JP2016002367
(87)【国際公開番号】WO2016199353
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2019年4月4日
(31)【優先権主張番号】特願2015-115906(P2015-115906)
(32)【優先日】2015年6月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 徳一
(72)【発明者】
【氏名】周藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン デルマス
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/073647(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/191239(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587,10/36−10/39
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質、粒子状重合体および水を含む二次電池負極用スラリー組成物であって、
前記負極活物質は、O/C値が0.9%以上1.5%以下であって且つBET比表面積が2.5m/g以下である炭素系負極活物質を含み、
前記粒子状重合体は、表面酸量が0.2mmol/g以上2.0mmol/g以下であり、
前記炭素系負極活物質は、炭素質材料と黒鉛質材料の少なくとも一方よりなることを特徴とし、
ここで、前記O/C値は、X線光電子分光法分析により求めたC1sとO1sのそれぞれのスペクトルのピーク面積に基づいて、前記炭素系負極活物質表面における炭素原子(C)濃度に対する酸素原子(O)濃度の比(%)(=O原子濃度/C原子濃度×100)として算出される、二次電池負極用スラリー組成物。
【請求項2】
前記炭素系負極活物質のO/C値(%)をS、前記炭素系負極活物質のBET比表面積(m/g)をT、および前記粒子状重合体の表面酸量(mmol/g)をUとして下記式(1):
X=(S/T)/U・・・(1)
で算出される官能基量/酸量比Xの値が、1.51以上4.50以下である、請求項1に記載の二次電池負極用スラリー組成物。
【請求項3】
前記炭素系負極活物質のBET比表面積が、1.0m/g以上である、請求項1または2に記載の二次電池負極用スラリー組成物。
【請求項4】
前記粒子状重合体の体積平均粒子径D50が、120nm以上500nm以下である、請求項1〜3の何れかに記載の二次電池負極用スラリー組成物。
【請求項5】
更に、BET比表面積が30m/g以上である導電材を前記負極活物質100質量部当たり0.2質量部以上2質量部以下含む、請求項1〜4の何れかに記載の二次電池負極用スラリー組成物。
【請求項6】
更に、1質量%水溶液粘度が150mPa・s以上2000mPa・s以下である水溶性重合体を含む、請求項1〜5の何れかに記載の二次電池負極用スラリー組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の二次電池負極用スラリー組成物を用いて得られる負極合材層を有する、二次電池用負極。
【請求項8】
正極、負極、セパレータおよび電解液を備え、
前記負極が請求項7に記載の二次電池用負極である、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池負極用スラリー組成物、二次電池用負極および二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの二次電池は、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、さらに繰り返し充放電が可能という特性があり、幅広い用途に使用されている。そのため、近年では、二次電池の更なる高性能化を目的として、電極(正極、負極)などの電池部材の改良が検討されている。
【0003】
ここで、リチウムイオン二次電池などの二次電池に用いられる負極は、通常、集電体と、集電体上に形成された電極合材層(負極合材層)とを備えている。そして、この負極合材層は、例えば、負極活物質と、結着材とを分散媒に分散および/または溶解させてなるスラリー組成物を用いて形成される。
【0004】
そこで、近年では、負極合材層の形成に用いられるスラリー組成物を改良することで、二次電池の性能を更に向上させる試みがなされている。
具体的には、例えば特許文献1では、X線光電子分光法(XPS)によって求められる表面官能基量が1.0%以下である複合炭素材料からなる負極活物質と、所定の重量平均分子量を有するカルボキシメチルセルロースと、スチレンブタジエンゴムとを分散媒中に含むスラリー組成物を用いて、カルボキシメチルセルロースの含有割合が所定の範囲内である負極合材層を作製することで、ハイレート充放電に適した二次電池を提供することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−45714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、二次電池内において、負極活物質との接触により電解液が分解されてガスが発生し、セルが膨らんでしまうという問題が従来から知られている。この問題に対し、本発明者は、負極活物質の比表面積を低下させて負極活物質と電解液の接触界面を減らすことで、電解液の分解を抑制することに着想した。その上で本発明者は、上述した従来技術において使用する負極活物質の比表面積の低下を試みたが、過度な増粘によりスラリー組成物の調製が困難となるという問題、また、電荷担体(リチウムイオン二次電池においてはリチウムイオン)の受け入れサイトが減少すること等に起因して二次電池の内部抵抗が上昇してしまい、十分なレート特性が得られないという問題が生じることが明らかになった。
すなわち、上述した従来の技術には、二次電池負極用スラリー組成物の生産性を確保しつつ、二次電池のセルの膨らみおよび内部抵抗の上昇を抑制するという点において、未だ改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、生産性に優れ、また二次電池のセルの膨らみおよび内部抵抗の上昇を抑制しうる二次電池負極用スラリー組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、二次電池のセルの膨らみおよび内部抵抗の上昇を抑制しうる二次電池用負極を提供することを目的とする。
そして、本発明は、セルの膨らみが抑制され、またレート特性に優れる二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、所定の表面官能基量およびBET比表面積を有する炭素系負極活物質を含む負極活物質に対して、結着材として所定の表面酸量を有する粒子状重合体を添加させてスラリー組成物を調製すれば、粒子状重合体添加時の過度な増粘が抑制されること、そして、得られるスラリー組成物を用いて負極を作製すれば、二次電池のセルの膨らみおよび内部抵抗の上昇を抑制して、二次電池にレート特性などの電池特性を良好に発揮させうることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の二次電池負極用スラリー組成物は、負極活物質、粒子状重合体および水を含む二次電池負極用スラリー組成物であって、前記負極活物質は、表面官能基量が0.9%以上1.5%以下であって且つBET比表面積が2.5m2/g以下である炭素系負極活物質を含み、前記粒子状重合体は、表面酸量が0.2mmol/g以上2.0mmol/g以下であることを特徴とする。このように所定の表面官能基量およびBET比表面積を有する炭素系負極活物質と、所定の表面酸量を有する粒子状重合体とを用いれば、スラリー組成物を過度に増粘させずに調製することができ、また二次電池のセルの膨らみおよび内部抵抗の上昇を抑制することができる。
なお、本発明において、「表面官能基量」とは、X線光電子分光法によって決定した炭素系負極活物質表面における炭素原子(C)濃度と酸素原子(O)濃度の比により表される値であり、O/C値とも呼ばれる。そして「表面官能基量」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて導出することができる。
また、本発明において、「BET比表面積」とは、窒素吸着法によるBET比表面積を指し、ASTM D3037−81に準拠して測定することができる。
そして、本発明において、「表面酸量」とは、粒子状重合体の表面部分に存在する酸の量であって、粒子状重合体の固形分1g当たりの酸量を指す。そして「表面酸量」は、本明細書に記載の方法を用いて導出することができる。
【0010】
ここで、本発明の二次電池負極用スラリー組成物において、前記炭素系負極活物質の表面官能基量(%)をS、前記炭素系負極活物質のBET比表面積(m2/g)をT、および前記粒子状重合体の表面酸量(mmol/g)をUとして下記式(1):
X=(S/T)/U・・・(1)
で算出される官能基量/酸量比Xの値が、1.51以上4.50以下であることが好ましい。上記官能基量/酸量比Xの値が上述の範囲内であれば、スラリー組成物の生産性を更に高めつつ、二次電池のセルの膨らみおよび内部抵抗の上昇を一層抑制することができるからである。
【0011】
そして、本発明の二次電池負極用スラリー組成物において、前記炭素系負極活物質のBET比表面積が、1.0m2/g以上であることが好ましい。炭素系負極活物質のBET比表面積が1.0m2/g以上であれば、二次電池の内部抵抗の上昇を一層抑制することができるからである。
【0012】
更に、本発明の二次電池負極用スラリー組成物において、前記粒子状重合体の体積平均粒子径D50が120nm以上500nm以下であることが好ましい。粒子状重合体の体積平均粒子径D50が上述の範囲内であれば、スラリー組成物の生産性を更に高めつつ二次電池のセルの膨らみを一層抑制し、また負極のピール強度を向上させることができるからである。
なお、本発明において、「体積平均粒子径D50」とは、レーザー回折法で測定された粒度分布(体積基準)において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を指す。
【0013】
加えて、本発明の二次電池負極用スラリー組成物は、更に、BET比表面積が30m2/g以上である導電材を前記負極活物質100質量部当たり0.2質量部以上2質量部以下含むことが好ましい。スラリー組成物が、BET比表面積が30m2/g以上である導電材を上述の範囲内の配合量で含めば、二次電池のセルの膨らみおよび内部抵抗の上昇を一層抑制することができるからである。
【0014】
ここで、本発明の二次電池負極用スラリー組成物は、更に、1質量%水溶液粘度が150mPa・s以上2000mPa・s以下である水溶性重合体を含むことが好ましい。スラリー組成物が、上述した1質量%水溶液粘度を有する水溶性重合体を含めば、二次電池の内部抵抗の上昇を一層抑制することができるからである。
なお、本発明において、「1質量%水溶液粘度」は、B型粘度計を使用し、JIS K7117−1に準拠して、温度25℃、pH8、ローターM4、回転数60rpmの条件下で測定することができる。
【0015】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の二次電池用負極は、上述した何れかの二次電池負極用スラリー組成物を用いて得られる負極合材層を有する。このように、上述した何れかの二次電池負極用スラリー組成物を用いて得られる負極を用いれば、二次電池のセルの膨らみおよび内部抵抗の上昇を十分に抑制することができる。
【0016】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の二次電池は、正極、負極、セパレータおよび電解液を備え、前記負極が上述した二次電池用負極である。このように、上述した二次電池用負極を備える二次電池は、セルの膨らみが抑制されており、またレート特性などの電池特性に優れる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、生産性に優れ、また二次電池のセルの膨らみおよび内部抵抗の上昇を抑制しうる二次電池負極用スラリー組成物を提供することができる。
本発明によれば、二次電池のセルの膨らみおよび内部抵抗の上昇を抑制しうる二次電池用負極を提供することができる。
本発明によれば、セルの膨らみが抑制され、またレート特性に優れる二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】粒子状重合体の表面酸量を算出する際に作成する塩酸添加量−電気伝導度曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の二次電池負極用スラリー組成物は、二次電池の負極の形成に用いられる。そして、本発明の二次電池用負極は、本発明の二次電池負極用スラリー組成物から形成される負極合材層を備えることを特徴とする。更に、本発明の二次電池は、本発明の二次電池用負極を用いたことを特徴とする
【0020】
(二次電池負極用スラリー組成物)
本発明の二次電池負極用スラリー組成物は、負極活物質および結着材が、分散媒としての水系媒体に分散した組成物である。そして、本発明の二次電池負極用スラリー組成物は、負極活物質として、表面官能基量が0.9%以上1.5%以下であり且つBET比表面積が2.5m2/g以下である炭素系負極活物質を含み、結着材として、表面酸量が0.2mmol/g以上2.0mmol/g以下である粒子状重合体を含むことを特徴とする。
そして、本発明の二次電池負極用スラリー組成物は、上述した炭素系負極活物質と上述した粒子状重合体を併用しているため、スラリー組成物調製の際の過度な増粘を抑制することができる。そして当該スラリー組成物を用いれば、二次電池のセルの膨らみおよび内部抵抗の上昇を抑制しうる負極を作製することができる。
【0021】
<負極活物質>
負極活物質は、二次電池の負極において電子の受け渡しをする物質である。例えばリチウムイオン二次電池の負極活物質としては、通常は、リチウムを吸蔵および放出し得る物質を用いる。リチウムを吸蔵および放出し得る物質としては、例えば、炭素系負極活物質、非炭素系負極活物質、および、これらを組み合わせた活物質などが挙げられる。
そして、本発明の二次電池負極用スラリー組成物では、負極活物質として、少なくとも、表面官能基量が0.9%以上1.5%以下であって且つBET比表面積が2.5m2/g以下である炭素系負極活物質を使用することを必要とする。
【0022】
[炭素系負極活物質]
ここで、炭素系負極活物質とは、リチウムを挿入(「ドープ」ともいう。)可能な、炭素を主骨格とする活物質をいう。なお、以下に、上述した所定の性状を有する炭素系負極活物質について詳述するが、本発明の二次電池負極用スラリー組成物は、上述した所定の性状を有さない炭素系負極活物質を含んでいてもよい。
【0023】
[[表面官能基量]]
炭素系負極活物質は、表面官能基量(O/C値)が0.9%以上1.5%以下であることが必要であり、1.0%以上であることが好ましく、1.0%超であることがより好ましく、1.1%以上であることが更に好ましく、1.4%以下であることが好ましく、1.3%以下であることがより好ましい。炭素系負極活物質の表面官能基量が0.9%未満であると、二次電池の内部抵抗が上昇するためレート特性を確保することができない。一方、炭素系負極活物質の表面官能基量が1.5%超であると、炭素系負極活物質同士の相互作用が過剰に強まることで炭素系負極活物質の良好な分散が阻害され、スラリー組成物の生産性が低下する。
なお、炭素系負極活物質の表面官能基量は、後述するメカノケミカル処理の強度を変更することにより調節することができる。具体的には、メカノケミカル処理に用いる装置の解砕時における回転速度を上昇させることで、表面官能基量を高めることができる。
【0024】
[[BET比表面積]]
また、炭素系負極活物質は、BET比表面積が2.5m2/g以下であることが必要であり、2.3m2/g以下であることが好ましく、2.2m2/g以下であることがより好ましく、2.0m2/g以下であることが更に好ましく、また1.0m2/g以上であることが好ましく、1.1m2/g以上であることがより好ましく、1.2m2/g以上であることが更に好ましい。炭素系負極活物質のBET比表面積2.5m2/g超であると、負極活物質と電解液の接触界面が増大し、電解液の分解によるセルの膨らみを十分に抑制することができない。一方、炭素系負極活物質のBET比表面積が1.0m2/g以上であれば、二次電池の内部抵抗の上昇を抑制してレート特性を一層高めることができる。
なお、炭素系負極活物質のBET比表面積の調節方法は特に限定されず、公知の方法で調節することができる。また例えば、上述した表面官能基量同様、メカノケミカル処理に用いる装置の解砕時における回転速度を上昇させることで、BET比表面積を高めることもできる。
【0025】
[[炭素系負極活物質の調製方法]]
そして、上述した所定の性状を有する炭素系負極活物質の調製方法は特に限定されないが、例えば、公知の炭素系負極活物質にメカノケミカル処理を施すことで得ることができる。
【0026】
公知の炭素系負極活物質としては、例えば炭素質材料と黒鉛質材料とが挙げられる。
炭素質材料は、炭素前駆体を2000℃以下で熱処理して炭素化させることによって得られる、黒鉛化度の低い(即ち、結晶性の低い)材料である。なお、炭素化させる際の熱処理温度の下限は特に限定されないが、例えば500℃以上とすることができる。
そして、炭素質材料としては、例えば、熱処理温度によって炭素の構造を容易に変える易黒鉛性炭素や、ガラス状炭素に代表される非晶質構造に近い構造を持つ難黒鉛性炭素などが挙げられる。
ここで、易黒鉛性炭素としては、例えば、石油または石炭から得られるタールピッチを原料とした炭素材料が挙げられる。具体例を挙げると、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチ系炭素繊維、熱分解気相成長炭素繊維などが挙げられる。
また、難黒鉛性炭素としては、例えば、フェノール樹脂焼成体、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、擬等方性炭素、フルフリルアルコール樹脂焼成体(PFA)、ハードカーボンなどが挙げられる。
【0027】
黒鉛質材料は、易黒鉛性炭素を2000℃以上で熱処理することによって得られる、黒鉛に近い高い結晶性を有する材料である。なお、熱処理温度の上限は、特に限定されないが、例えば5000℃以下とすることができる。
そして、黒鉛質材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などが挙げられる。
ここで、人造黒鉛としては、例えば、易黒鉛性炭素を含んだ炭素を主に2800℃以上で熱処理した人造黒鉛、MCMBを2000℃以上で熱処理した黒鉛化MCMB、メソフェーズピッチ系炭素繊維を2000℃以上で熱処理した黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維などが挙げられる。
【0028】
また、公知の炭素系負極活物質としては、特開2013−45714号公報に記載された、高い結晶性炭素からなる芯粒子の表面に低結晶性炭素の被膜を形成してなる複合炭素材料も挙げられる。
【0029】
ここで、メカノケミカル処理とは、摩擦、圧縮等の機械エネルギーにより固体物質の粉砕処理を行うことで、この処理の過程で局部的に生じる高いエネルギーを利用して、処理対象の固体物質に結晶化反応、固溶反応、相転位反応等の化学反応を生じさせる処理をいう。
上述の公知の炭素系負極活物質をメカノケミカル処理することで、当該炭素系負極活物質の表面に、多くの官能基(典型的には、酸素原子を有する官能基)を生じさせることができる。そして、メカノケミカル処理の条件は、所望の表面官能基量やBET比表面積に応じて適宜設定することができる。
【0030】
[非炭素系負極活物質]
非炭素系負極活物質は、炭素系負極活物質を除く活物質であり、非炭素系負極活物質としては、例えば金属系負極活物質を挙げることができる。
【0031】
金属系負極活物質とは、金属を含む活物質であり、通常は、リチウムの挿入が可能な元素を構造に含み、リチウムが挿入された場合の単位質量当たりの理論電気容量が500mAh/g以上である活物質をいう。金属系負極活物質としては、例えば、リチウム金属、リチウム合金を形成し得る単体金属(例えば、Ag、Al、Ba、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、Sr、Zn、Tiなど)およびその合金、並びに、それらの酸化物、硫化物、窒化物、ケイ化物、炭化物、燐化物などが用いられる。
【0032】
そして、金属系負極活物質の中でも、ケイ素を含む活物質(シリコン系負極活物質)が好ましい。シリコン系負極活物質を用いることにより、リチウムイオン二次電池を高容量化することができるからである。
シリコン系負極活物質としては、例えば、ケイ素(Si)、ケイ素を含む合金、SiO、SiOx、Si含有材料を導電性カーボンで被覆または複合化してなるSi含有材料と導電性カーボンとの複合化物などが挙げられる。なお、これらのシリコン系負極活物質は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
ケイ素を含む合金としては、例えば、ケイ素と、チタン、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅からなる群より選択される少なくとも一種の元素とを含む合金組成物が挙げられる。
また、ケイ素を含む合金としては、例えば、ケイ素と、アルミニウムと、鉄などの遷移金属とを含み、さらにスズおよびイットリウム等の希土類元素を含む合金組成物も挙げられる。
【0034】
SiOxは、SiOおよびSiO2の少なくとも一方と、Siとを含有する化合物であり、xは、通常、0.01以上2未満である。そして、SiOxは、例えば、一酸化ケイ素(SiO)の不均化反応を利用して形成することができる。具体的には、SiOxは、SiOを、任意にポリビニルアルコールなどのポリマーの存在下で熱処理し、ケイ素と二酸化ケイ素とを生成させることにより、調製することができる。なお、熱処理は、SiOと、任意にポリマーとを粉砕混合した後、有機物ガスおよび/または蒸気を含む雰囲気下、900℃以上、好ましくは1000℃以上の温度で行うことができる。
【0035】
Si含有材料と導電性カーボンとの複合化物としては、例えば、SiOと、ポリビニルアルコールなどのポリマーと、任意に炭素材料との粉砕混合物を、例えば有機物ガスおよび/または蒸気を含む雰囲気下で熱処理してなる化合物を挙げることができる。また、複合化物は、SiOの粒子に対して、有機物ガスなどを用いた化学的蒸着法によって表面をコーティングする方法、SiOの粒子と黒鉛または人造黒鉛をメカノケミカル処理によって複合粒子化(造粒化)する方法などの公知の方法でも得ることができる。
【0036】
なお、本発明のスラリー組成物に用いる負極活物質は、非炭素系負極活物質の含有割合が30質量%未満であることが好ましく、15質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることが更に好ましく、5質量%未満であることが特に好ましく、0質量%であることが最も好ましい。負極活物質中の非炭素系負極活物質の含有割合が30質量%未満であれば、所定の性状を有する炭素系負極活物質と、後述する粒子状重合体との併用による効果が十分に発揮され、スラリー組成物の生産性向上、並びに二次電池のセルの膨らみ抑制および内部抵抗の上昇抑制を、バランス良く達成することが可能となる。
【0037】
<粒子状重合体>
粒子状重合体は、本発明の二次電池負極用スラリー組成物を用いて形成した負極合材層を備える負極において、負極合材層中の各成分同士または各成分と集電体とを結着させる。なお、粒子状重合体としては、水などの水系媒体に分散可能な重合体を用いることができる。
【0038】
[表面酸量]
ここで、粒子状重合体は、表面酸量が、0.2mmol/g以上2.0mmol/g以下であることが必要であり、0.22mmol/g以上であることが好ましく、1.5mmol/g以下であることが好ましく、1.3mmol/g以下であることがより好ましく、1.0mmol/g以下であることが更に好ましく、0.8mmol/g以下であることが特に好ましい。粒子状重合体の表面酸量が0.2mmol/g未満であると、上述した所定の性状を有する炭素系負極活物質と粒子状重合体を十分に相互作用させることができない。そのため、当該炭素系負極活物質同士の凝集による増粘が抑制できず、スラリー組成物の生産性を確保することができない。さらには、粒子状重合体の水中での安定性が低下して水中において粒子状重合体が好適な分散性を確保することができないため、スラリー組成物の集電体への塗布密度が低下し、セルの膨れが悪化する。一方、粒子状重合体の表面酸量が2.0mmol/g超であると、負極のピール強度を十分に確保することができず、二次電池の電池特性(レート特性など)が低下する。
【0039】
なお、本発明において「表面酸量」は、以下の方法で算出することができる。
まず、粒子状重合体を含む水分散液を調製する。蒸留水で洗浄したガラス容器に、前記粒子状重合体を含む水分散液を入れ、溶液電導率計をセットして攪拌する。なお、攪拌は、後述する塩酸の添加が終了するまで継続する。
粒子状重合体を含む水分散液の電気伝導度が2.5〜3.0mSになるように、0.1規定の水酸化ナトリウム水溶液を、粒子状重合体を含む水分散液に添加する。その後、6分経過してから、電気伝導度を測定する。この値を測定開始時の電気伝導度とする。
さらに、この粒子状重合体を含む水分散液に0.1規定の塩酸を0.5mL添加して、30秒後に電気伝導度を測定する。その後、再び0.1規定の塩酸を0.5mL添加して、30秒後に電気伝導度を測定する。この操作を、30秒間隔で、粒子状重合体を含む水分散液の電気伝導度が測定開始時の電気伝導度以上になるまで繰り返し行う。
得られた電気伝導度のデータを、電気伝導度(単位「mS」)を縦軸(Y座標軸)、添加した塩酸の累計量(単位「mmol」)を横軸(X座標軸)としたグラフ上にプロットする。これにより、図1のように3つの変曲点を有する塩酸添加量−電気伝導度曲線が得られる。3つの変曲点のX座標および塩酸添加終了時のX座標を、値が小さい方から順にそれぞれP1、P2、P3およびP4とする。X座標が零から座標P1まで、座標P1から座標P2まで、座標P2から座標P3まで、および、座標P3から座標P4まで、の4つの区分内のデータについて、それぞれ、最小二乗法により近似直線L1、L2、L3およびL4を求める。近似直線L1と近似直線L2との交点のX座標をA1(mmol)、近似直線L2と近似直線L3との交点のX座標をA2(mmol)、近似直線L3と近似直線L4との交点のX座標をA3(mmol)とする。
粒子状重合体1g当たりの表面酸量は、下記の式(a)から、塩酸換算した値(mmol/g)として与えられる。なお、粒子状重合体1g当たりの水相中の酸量(粒子状重合体を含む水分散液における水相中に存在する酸の量であって粒子状重合体の固形分1g当たりの酸量、「粒子状重合体の水相中の酸量」ともいう)は、下記の式(b)から、塩酸換算した値(mmol/g)として与えられる。また、水中に分散した粒子状重合体1g当たりの総酸量は、下記式(c)に表すように、式(a)及び式(b)の合計となる。
(a) 粒子状重合体1g当たりの表面酸量=(A2−A1)/水分散液中の粒子状重合体の固形分量
(b) 粒子状重合体1g当たりの水相中の酸量=(A3−A2)/水分散液中の粒子状重合体の固形分量
(c) 水中に分散した粒子状重合体1g当たりの総酸基量=(A3−A1)/水分散液中の粒子状重合体の固形分量
【0040】
そして、粒子状重合体の表面酸量は、粒子状重合体として用いる重合体の製造に使用する単量体の種類および量を変更することにより調整することができる。具体的には、例えば、カルボン酸基を含有する単量体などの酸性基含有単量体の使用量を増加することにより表面酸量を増大させることができる。
【0041】
[体積平均粒子径D50]
そして、本発明の二次電池負極用スラリー組成物に用いる粒子状重合体は、体積平均粒子径D50が、120nm以上であることが好ましく、130nm以上であることがより好ましく、500nm以下であることが好ましく、250nm以下であることがより好ましい。粒子状重合体の体積平均粒子径D50が120nm以上であれば、上述した所定の性状を有する炭素系負極活物質と粒子状重合体の好適に相互作用させることができる。そのため、炭素系負極活物質同士の凝集による増粘を抑制することでスラリー組成物の生産性を更に高めることができる。また、スラリー組成物中において粒子状重合体が好適な分散性を確保することができ、スラリー組成物の集電体への塗布密度を高めてセルの膨れを一層抑制すると共に負極のピール強度を高めることができる。一方、粒子状重合体の体積平均粒子径D50が500nm以下であれば、粒子状重合体と、当該粒子状重合体を介して結着される成分や集電体との接触面積が低下するのを抑制して、負極のピール強度を高めることができる。
【0042】
そして、粒子状重合体の体積平均粒子径D50は、粒子状重合体として用いる重合体の製造条件を変更することにより調整することができる。具体的には、例えば、粒子状重合体として用いる重合体をシード重合により調製する場合には、重合に使用するシード粒子の数や粒子径を調整することにより粒子状重合体の体積平均粒子径D50を制御することができる。
【0043】
[粒子状重合体の種類]
ここで、粒子状重合体としては、既知の重合体、例えば、ジエン重合体、アクリル重合体、フッ素重合体、シリコン重合体などが挙げられる。これらの重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0044】
具体的には、粒子状重合体としては、ジエン重合体、特に脂肪族共役ジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位を有する共重合体、或いは、その水素添加物を用いることが好ましい。剛性が低くて柔軟な繰り返し単位であり、結着性を高めることが可能な脂肪族共役ジエン単量体単位と、重合体の電解液への溶解性を低下させて電解液中での粒子状重合体の安定性を高めることが可能な芳香族ビニル単量体単位とを有する共重合体よりなる粒子状重合体は、結着材としての機能を良好に発揮し得るからである。
【0045】
[[脂肪族共役ジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位を有する共重合体の調製に用いる単量体]]
ここで、脂肪族共役ジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位を有する共重合体を粒子状重合体として用いる場合、脂肪族共役ジエン単量体単位を形成し得る脂肪族共役ジエン単量体としては、特に限定されることなく、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などを用いることができる。なお、脂肪族共役ジエン単量体は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0046】
そして、粒子状重合体中において、脂肪族共役ジエン単量体単位の含有割合は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。脂肪族共役ジエン単量体単位の含有割合が20質量%以上であれば、スラリー組成物を用いて形成される負極の柔軟性を高めることができる。また、脂肪族共役ジエン単量体単位の含有割合が70質量%以下であれば、粒子状重合体の結着力が十分に高くなり、負極合材層を構成する成分同士および負極合材層と集電体とを良好に結着させて負極のピール強度を高めることができる。
【0047】
また、芳香族ビニル単量体単位を形成し得る芳香族ビニル単量体としては、特に限定されることなく、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどを用いることができる。なお、芳香族ビニル単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0048】
そして、粒子状重合体中において、芳香族ビニル単量体単位の含有割合は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。芳香族ビニル単量体単位の含有割合が30質量%以上であれば、バインダー組成物を用いて形成される負極の耐電解液性を向上させることができる。また、芳香族ビニル単量体単位の含有割合が80質量%以下であれば、共重合体よりなる粒子状重合体の結着力が十分に高くなり、負極合材層を構成する成分同士および負極合材層と集電体とを良好に結着させて負極のピール強度を高めることができるからである。
【0049】
なお、脂肪族共役ジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位を有する共重合体は、脂肪族共役ジエン単量体単位として1,3−ブタジエン単位を含み、芳香族ビニル単量体単位としてスチレン単位を含む(即ち、スチレン−ブタジエン共重合体または水素化スチレン−ブタジエン共重合体である)ことが好ましい。
【0050】
また、本発明で用いる粒子状重合体が上述した表面酸量を有する必要がある観点からは、脂肪族共役ジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位を有する共重合体(粒子状重合体)は、酸性基含有単量体単位を含むことが好ましい。酸性基含有単量体単位としては、エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位、スルホン酸基を有する不飽和単量体単位が挙げられる。中でも、粒子状重合体は、エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を含むことが好ましい。
【0051】
ここで、エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を形成し得るエチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、エチレン性不飽和モノカルボン酸およびその誘導体、エチレン性不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物並びにそれらの誘導体などが挙げられる。
エチレン性不飽和モノカルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。そして、エチレン性不飽和モノカルボン酸の誘導体の例としては、2−エチルアクリル酸、イソクロトン酸、α−アセトキシアクリル酸、β−trans−アリールオキシアクリル酸、α−クロロ−β−E−メトキシアクリル酸、β−ジアミノアクリル酸などが挙げられる。
エチレン性不飽和ジカルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。そして、エチレン性不飽和ジカルボン酸の酸無水物の例としては、無水マレイン酸、ジアクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。さらに、エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体の例としては、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸、マレイン酸ジフェニル、マレイン酸ノニル、マレイン酸デシル、マレイン酸ドデシル、マレイン酸オクタデシル、マレイン酸フルオロアルキルなどが挙げられる。中でも、エチレン性不飽和モノカルボン酸が好ましく、アクリル酸が特に好ましい。
これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0052】
また、スルホン酸基を有する不飽和単量体単位を形成し得るスルホン酸基を有する不飽和単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0053】
そして、粒子状重合体中において、酸性基含有単量体単位の含有割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上であり、また好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。酸性基含有単量体単位の含有割合が1質量%以上であることで、粒子状重合体の表面酸量を本願の所望の範囲まで上昇させ易く、負極の膨れを抑制しつつリチウムイオン二次電池の電池特性を優れたものとすることができる。一方、酸性基含有単量体単位の含有割合が15質量%以下であることで、粒子状重合体の調製が容易となる。
【0054】
また、上述した脂肪族共役ジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位を有する共重合体(粒子状重合体)は、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含むことが好ましい。
ここで、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を形成し得る水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどが挙げられる。中でも、2−ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。
これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0055】
そして、粒子状重合体中において、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有割合は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上、特に好ましくは0.8質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有割合が0.5質量%以上であることで、エチレン性不飽和カルボン酸単量体などの酸性基含有単量体と他の単量体との共重合性を高めることができる。一方、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有割合が5質量%以下であることで、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体同士が重合して重合体を形成することを抑制し、粒子状重合体へのエチレン性不飽和カルボン酸単量体の共重合性が向上するため、上述した単量体の共重合を良好に進行させることができる。
【0056】
また、上述した脂肪族共役ジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位を有する共重合体は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した以外にも任意のその他の繰り返し単位を含んでいてもよい。
その他の繰り返し単位の含有割合は、特に限定されないが、上限は合計量で6質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、2質量%以下が特に好ましい。
【0057】
[粒子状重合体の調製方法]
粒子状重合体は、上述した単量体を含む単量体組成物を水系溶媒中で重合することにより調製することができる。
ここで、本発明において単量体組成物中の各単量体の含有割合は、粒子状重合体における単量体単位(繰り返し単位)の含有割合に準じて定めることができる。
【0058】
水系溶媒は粒子状重合体が粒子状態で分散可能なものであれば格別限定されることはないが、水は可燃性がなく、粒子状重合体の粒子の分散体が容易に得られやすいという観点から特に好ましい。なお、主溶媒として水を使用して、粒子状重合体の粒子の分散状態が確保可能な範囲において水以外の溶媒を混合して用いてもよい。
【0059】
重合様式は、特に限定されず、例えば溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの様式も用いることができる。重合方法としては、例えばイオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などいずれの方法も用いることができる。なお、高分子量体が得やすいこと、並びに、重合物がそのまま水に分散した状態で得られるので再分散化の処理が不要であり、そのまま本発明のバインダー組成物や本発明のスラリー組成物の製造に供することができることなど、製造効率の観点からは、乳化重合法が特に好ましい。なお、乳化重合は、常法に従い行うことができる。また、乳化重合においては、シード粒子を用いるシード重合を採用してもよい。
【0060】
そして、重合に使用される乳化剤、分散剤、重合開始剤、重合助剤などは、一般に用いられるものを使用することができ、その使用量も、一般に使用される量とする。
【0061】
また、本発明で使用する粒子状重合体を製造すべく、バッチ重合、セミバッチ重合を用いることができるが、反応系に単量体を連続的又は断続的に添加するセミバッチ重合を用いることが好ましい。セミバッチ重合を用いることで、エチレン性不飽和カルボン酸単量体などの酸性基含有単量体を反応系に最初から一括で添加するバッチ重合を用いた場合に比して、粒子状重合体の表面酸量を容易に制御することができる。
【0062】
セミバッチ重合を用いた粒子状重合体の調製方法としては、例えば、粒子状重合体が上述した脂肪族共役ジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位を有する共重合体である場合、脂肪族共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体および酸性基含有単量体を含む一次単量体組成物を、反応系に連続的又は断続的に添加し、単量体組成物の添加率が70%以上となってから、水酸基含有(メタ)アクリル酸単量体を含む二次単量体組成物の添加を開始し、粒子状重合体を得る方法が好ましい。この好適な態様について、以下に詳述する。
なお、「連続的又は断続的に添加」とは、単量体組成物を反応系に一度に添加するのではなく、ある程度の時間(例えば30分以上)をかけて添加することをいう。
また、「単量体組成物の添加率」とは、重合に用いる全単量体組成物に占める、反応系内に添加済みの単量体の割合(質量%)をいう。
【0063】
「一次単量体組成物」は、重合の開始段階から反応系へ添加する単量体組成物である。重合に用いる全単量体組成物のうち、好ましくは80〜99質量%、より好ましくは90〜99質量%を、一次単量体組成物に含める。そして、一次単量体組成物は、芳香族ビニル単量体、脂肪族共役ジエン単量体、酸性基含有単量体を含むことが好ましく、また、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体を実質的に含有しないことが好ましい。
セミバッチ重合を用いた粒子状重合体の調製においては、例えば、この一次単量体組成物に、適宜、乳化剤、連鎖移動剤、水を加えてなる混合物と、別途用意した重合開始剤とを一つの反応容器に添加することで重合反応を開始する。この際の反応条件は特に限定されないが、反応温度は、好ましくは60〜90℃である。また、重合開始から、単量体組成物の添加率が70%に達するまでの時間は、特に限定されないが好ましくは2〜6時間、より好ましくは3〜5時間である。
【0064】
そして単量体組成物の添加率が70%以上となってから(即ち、重合に用いる全単量体組成物のうち70質量%を反応系に添加し終えた時以降から)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む二次単量体組成物の添加を開始する。二次単量体組成物の添加開始から、二次単量体組成物の添加が終了するまでの時間は、特に限定されないが好ましくは1〜3時間である。このように、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体を後で添加することで、酸性基含有単量体と他の単量体との共重合を良好に進行させ、表面酸量の大きさを容易に制御することができる。
【0065】
また、一次単量体組成物と二次単量体組成物の添加は別々に終了してもよいし、同時に終了してもよい。重合開始から全単量体組成物の添加が終了するまでの時間は、特に限定されないが好ましくは3〜8時間、より好ましくは4〜7時間である。そして全単量体組成物の添加が終了した後、0〜90℃で3〜9時間反応させることが好ましい。
【0066】
その後、重合転化率が十分(例えば95%以上)となった時点で冷却し反応を停止させる。
ここで、上述した重合の後、得られた水分散液は、例えばアルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Rb、Cs)の水酸化物、アンモニア、無機アンモニウム化合物(例えばNH4Clなど)、有機アミン化合物(例えばエタノールアミン、ジエチルアミンなど)などを含む塩基性水溶液を用いて、pHが通常5以上であり、通常10以下、好ましくは9以下の範囲になるように調整して、粒子状重合体の水分散液としてもよい。なかでも、アルカリ金属水酸化物によるpH調整は、負極のピール強度を向上させるので、好ましい。
また、pH調整後に、加熱減圧蒸留によって、未反応の単量体を除去することが好ましい。
【0067】
[粒子状重合体の配合量]
そして、本発明の二次電池負極用スラリー組成物中の粒子状重合体の量は、上述した負極活物質100質量部当たり、0.5質量部以上であることが好ましく、また、5.0質量部以下であることが好ましい。粒子状重合体の配合量を負極活物質100質量部当たり0.5質量部以上とすれば、負極合材層を構成する成分同士および負極合材層と集電体とを良好に結着させることができ、負極のピール強度を高めることができる。また、粒子状重合体の配合量を負極活物質100質量部当たり5.0質量部以下とすれば、スラリー組成物の生産性および二次電池のレート特性を確保することができる。
【0068】
[官能基量/酸量比X]
ここで、本発明の二次電池負極用スラリー組成物において、炭素系負極活物質の表面官能基量(%)をS、前記炭素系負極活物質のBET比表面積(m2/g)をT、および粒子状重合体の表面酸量(mmol/g)をUとして下記式(1):
X=(S/T)/U・・・(1)
で算出される官能基量/酸量比Xの値が、1.51以上であることが好ましく、1.80以上であることがより好ましく、2.00以上であることが更に好ましく、4.50以下であることが好ましく、4.30以下であることがより好ましい。Xの値が上述の範囲内であれば、炭素系負極活物質と粒子状重合体が良好に相互作用することで、スラリー組成物の生産性向上、並びに二次電池のセルの膨らみ抑制および内部抵抗の上昇抑制を、バランス良く達成することが可能となる。
【0069】
<その他の成分>
本発明の二次電池負極用スラリー組成物は、上記成分の他に、導電材、水溶性重合体、補強材、レベリング剤、電解液添加剤などの成分を含有していてもよい。これらその他の成分は、電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られず、公知のもの、例えば国際公開第2012/115096号、特開2012−204303号公報に記載のものを使用することができる。
【0070】
ここで、アセチレンブラックなどの導電材は、負極合材層中において導電パスを良好に形成し、二次電池のレート特性を高める観点から、BET比表面積が30m2/g以上であることが好ましい。そして、導電材の量は、負極活物質100質量部当たり、0.2質量部以上であることが好ましく、0.4質量部以上であることがより好ましく、2質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以下であることがより好ましい。導電材の配合量を負極活物質100質量部当たり0.2質量部以上とすれば、二次電池の内部抵抗の上昇を抑制し、レート特性を一層高めることができる。また、導電材の配合量を負極活物質100質量部当たり2質量部以下とすれば、スラリー組成物の集電体への塗布密度が高めてセルの膨れを一層抑制しつつ、負極のピール強度を高めることができる。
【0071】
また水溶性重合体としては、特に限定されることなく、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、ポリアクリル酸またはその塩などを好適に用いることができる。そして、水溶性重合体は、1質量%水溶液粘度が150mPa・s以上であることが好ましく、180mPa・s以上であることがより好ましく、2000mPa・s以下であることが好ましく、1800mPa・s以下であることがより好ましい。水溶性重合体の1質量%水溶液粘度が150mPa・s以上であれば、粘度調整剤として良好に機能しうり、2000mPa・s以下であれば、二次電池の内部抵抗の上昇を抑制し、レート特性を一層高めることができる。そして、水溶性重合体の量は、例えば、負極活物質100質量部当たり0.7質量部以上3.0質量部以下とすることができる。
【0072】
<二次電池負極用スラリー組成物の調製>
本発明の二次電池負極用スラリー組成物の調製は、上記各成分を分散媒としての水系媒体中に分散させることにより調製することができる。具体的には、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、フィルミックスなどの混合機を用いて上記各成分と水系媒体とを混合することにより、スラリー組成物を調製することができる。
ここで、水系媒体としては、通常は水を用いるが、任意の化合物の水溶液や、少量の有機媒体と水との混合溶液などを用いてもよい。また、スラリー組成物の固形分濃度は、各成分を均一に分散させることができる濃度、例えば、30質量%以上90質量%以下とすることができる。更に、上記各成分と水系媒体との混合は、通常、室温以上80℃以下の温度範囲で、10分以上数時間以下行うことができる。
【0073】
(二次電池用負極)
本発明の二次電池用負極は、本発明の二次電池負極用スラリー組成物を使用して製造することができる。
ここで、本発明の二次電池用負極は、集電体と、集電体上に形成された負極合材層とを備え、負極合材層は、本発明の二次電池負極用スラリー組成物から得られる。なお、負極合材層中に含まれている各成分は、本発明の二次電池負極用スラリー組成物中に含まれていたものであり、それら各成分の好適な存在比は、二次電池負極用スラリー組成物中の各成分の好適な存在比と同じである。
そして、本発明の二次電池用負極は、二次電池のセルの膨らみを抑制しつつ、二次電池に優れたレート特性を発揮させることができる。
【0074】
<二次電池用負極の製造方法>
本発明の二次電池用負極は、例えば、集電体上に、上述した二次電池負極用スラリー組成物を塗布する工程(塗布工程)と、集電体上に塗布された二次電池負極用スラリー組成物を乾燥し、集電体上に負極合材層を形成する工程(乾燥工程)とを経て製造される。
【0075】
[塗布工程]
上記二次電池負極用スラリー組成物を集電体上に塗布する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。具体的には、塗布方法としては、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などを用いることができる。この際、スラリー組成物を集電体の片面だけに塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。塗布後乾燥前の集電体上のスラリー膜の厚みは、乾燥して得られる負極合材層の厚みに応じて適宜に設定しうる。
【0076】
ここで、スラリー組成物を塗布する集電体としては、電気導電性を有し、かつ、電気化学的に耐久性のある材料が用いられる。具体的には、集電体としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などからなる集電体を用い得る。中でも、負極に用いる集電体としては銅箔が特に好ましい。なお、前記の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0077】
[乾燥工程]
集電体上のスラリー組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。このように集電体上のスラリー組成物を乾燥することで、集電体上に負極合材層を形成し、集電体と負極合材層とを備える二次電池用負極を得ることができる。
【0078】
なお、乾燥工程の後、金型プレスまたはロールプレスなどを用い、負極合材層に加圧処理を施してもよい。加圧処理により、負極のピール強度を向上させることができる。
【0079】
(二次電池)
本発明の二次電池は、正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備え、負極として、本発明の二次電池用負極を用いたものである。そして、本発明の二次電池は、本発明の二次電池用負極を用いているので、セルの膨らみが抑制されており、またレート特性などの電池特性に優れている。以下、二次電池がリチウムイオン二次電池である場合を例に挙げ、正極、電解液、およびセパレータについて記載するが、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。
【0080】
<正極>
正極としては、リチウムイオン二次電池用正極として用いられる既知の正極を用いることができる。具体的には、正極としては、例えば、正極合材層を集電体上に形成してなる正極を用いることができる。
なお、集電体としては、アルミニウム等の金属材料からなるものを用いることができる。また、正極合材層としては、既知の正極活物質と、導電材と、結着材とを含む層を用いることができる。
【0081】
<電解液>
電解液としては、溶媒に電解質を溶解した電解液を用いることができる。
ここで、溶媒としては、電解質を溶解可能な有機溶媒を用いることができる。具体的には、溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等のアルキルカーボネート系溶媒に、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、酢酸メチル、ジメトキシエタン、ジオキソラン、プロピオン酸メチル、ギ酸メチル等の粘度調整溶媒を添加したものを用いることができる。
電解質としては、リチウム塩を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。これらのリチウム塩の中でも、有機溶媒に溶解しやすく、高い解離度を示すという点より、電解質としてはLiPF6、LiClO4、CF3SO3Liが好ましい。
【0082】
<セパレータ>
セパレータとしては、例えば、特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、リチウムイオン二次電池内の電極活物質の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系の樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)からなる微多孔膜が好ましい。
【0083】
<二次電池の製造方法>
本発明の二次電池は、例えば、正極と、負極とを、セパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。二次電池の内部の圧力上昇、過充放電などの発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
【実施例】
【0084】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、炭素系負極活物質の表面官能基量、粒子状重合体の表面酸量および体積平均粒子径D50、二次電池負極用スラリー組成物の生産性、二次電池用負極のピール強度、並びに二次電池のセル膨らみ(初期)、セル膨らみ(100サイクル後)およびレート特性は、それぞれ以下の方法を使用して評価した。
【0085】
<表面官能基量(O/C値)>
X線光電子分光法分析を行い、C1sとO1sのそれぞれスペクトルのピーク面積を求めた。このピーク面積に基づいて炭素系負極活物質表面における炭素原子(C)濃度に対する酸素原子(O)濃度の比(%)(=O原子濃度/C原子濃度×100)を算出し、この値を表面官能基量(%)とした。なお、X線光電子分光法分析には、Thermo Fisher Scientific社製のVG Theta Probeを用いた。
<表面酸量>
蒸留水で洗浄した容量150mLのガラス容器に、調製した粒子状重合体を含む水分散液(固形分濃度2%に調整)を50g入れ、溶液電導率計をセットして攪拌した。なお、攪拌は、後述する塩酸の添加が終了するまで継続した。
粒子状重合体を含む水分散液の電気伝導度が2.5〜3.0mSになるように、0.1規定の水酸化ナトリウム水溶液を、粒子状重合体を含む水分散液に添加した。その後、6分経過してから、電気伝導度を測定した。この値を測定開始時の電気伝導度とした。
さらに、この粒子状重合体を含む水分散液に0.1規定の塩酸を0.5mL添加して、30秒後に電気伝導度を測定した。その後、再び0.1規定の塩酸を0.5mL添加して、30秒後に電気伝導度を測定した。この操作を、30秒間隔で、粒子状重合体を含む水分散液の電気伝導度が測定開始時の電気伝導度以上になるまで繰り返し行った。
得られた電気伝導度データを、電気伝導度(単位「mS」)を縦軸(Y座標軸)、添加した塩酸の累計量(単位「mmol」)を横軸(X座標軸)としたグラフ上にプロットした。これにより、図1のように3つの変曲点を有する塩酸添加量−電気伝導度曲線が得られた。3つの変曲点のX座標を、値が小さい方から順にそれぞれP1、P2およびP3とした。X座標が零から座標P1まで、座標P1から座標P2まで、および、座標P2から座標P3まで、の3つの区分内のデータについて、それぞれ、最小二乗法により近似直線L1、L2およびL3を求めた。近似直線L1と近似直線L2との交点のX座標をA1(mmol)、近似直線L2と近似直線L3との交点のX座標をA2(mmol)とした。
粒子状重合体1g当たりの表面酸量は、下記の式から、塩酸換算した値(mmol/g)として求めた。
粒子状重合体1g当たりの表面酸量=A2−A1
<体積平均粒子径D50>
粒子状重合体の体積平均粒子径D50は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製、LS230)を用いて測定した。
<スラリー組成物の生産性>
リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物の調製に際し、粒子状重合体を含む水分散液の投入前の混合液の粘度η0を、B型粘度計(25℃、回転数60rpm)を用いて測定した。そして、粒子状重合体を含む水分散液を投入して得られるスラリー組成物の粘度η1を上述と同様の条件で測定し、粘度変化率(%)(=η1/η0×100)を算出した。粘度変化率は、粒子状重合体の添加によるスラリー組成物の増粘のし易さを表す指標であり、例えばこの値が110%超であるとスラリー組成物の生産性が悪く、110%以下であるとスラリー組成物の生産性が良好であると言える。
<ピール強度>
作製した負極を、幅1.0cm×長さ10cmの矩形に切って試験片とした。そして、試験片の負極合材層側の表面を上にして固定し、試験片の負極合材層側の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープはJIS Z1522に規定されるものを用いた。その後、試験片の一端からセロハンテープを50mm/分の速度で180°方向(試験片の他端側)に引き剥がしたときの応力を測定した。測定を10回行い、応力の平均値を求めて、これをピール強度(N/m)とした。ピール強度が大きいほど、集電体に対する負極合材層の結着強度が優れていることを示す。
<セル膨らみ(初期)>
作成したリチウムイオン二次電池の初期容量を確認後、当該リチウムイオン二次電池を25℃で4.2V CC−CV充電(Cut-off条件0.02C)にて満充電にした。この際のセルの厚みを、厚み測定機を用いて10点で測定し、それらを平均して平均厚みT0を算出した。そして、25℃にて1Cでの充放電を10サイクル(4.2V−3.0V)行った後、満充電の際のセルの平均厚みT1を上述のT0と同様にして測定し、厚み変化率(%)(=(T1−T0)/T0×100)を算出した。厚み変化率が小さいほどセル膨らみ(初期)が抑制されていることを示す。
<セル膨らみ(100サイクル後)>
作成したリチウムイオン二次電池の初期容量を確認後、当該リチウムイオン二次電池を25℃で4.2V CC−CV充電(Cut-off条件0.02C)にて満充電にした。この際のセルの厚みを、厚み測定機を用いて10点で測定し、それらを平均して平均厚みT0を算出した。そして、25℃にて1Cでの充放電を100サイクル(4.2V−3.0V)行った後、満充電の際のセルの平均厚みT2を上述のT0と同様にして測定し、厚み変化率(%)(=(T2−T0)/T0×100)を算出した。厚み変化率が小さいほどセル膨らみ(100サイクル後)が抑制されていることを示す。
<レート特性>
作成したリチウムイオン二次電池の初期容量を確認後、当該リチウムイオン二次電池を25℃で4.2V CC−CV充電(Cut-off条件0.02C)にて満充電にし、その後−10℃の環境下において0.2Cで3.0VまでCC放電し、その際の放電容量C1を得た。そして、リチウムイオン二次電池を25℃で4.2V CC−CV充電(Cut-off条件0.02C)にて再び満充電にし、その後−10℃の環境下において1Cにて3.0VまでCC放電し、その際の放電容量C2を得た。C1に対するC2の比(C2/C1)を算出した。この値が大きい程、リチウムイオン二次電池がレート特性に優れていることを示す。
【0086】
(実施例1)
<炭素系負極活物質の調製>
芯粒子としての球形化黒鉛(体積平均粒子径D50:15μm、タップ密度:0.85g/cm3、BET比表面積:6.0m2/g)100部に対し、低結晶性炭素の被膜形成材料としてのタールピッチを30部添加し、ヘンシェルミキサーを用いて200℃で30分混合した。得られた混合物を、窒素雰囲気下1000℃でプレ焼成後、粉砕し、更に窒素雰囲気下2600℃で焼成し、複合炭素材料を得た。この複合炭素材料を、ホソカワミクロン社製のメカノフュージョンシステムを用いて解砕し(メカノケミカル処理)、炭素系負極活物質Aを得た。そして、炭素系負極活物質Aの表面官能基量およびBET比表面積を測定した。結果を表1に示す。
<粒子状重合体の調製>
芳香族ビニル単量体としてスチレン60.5部、脂肪族共役ジエン単量体として1,3−ブタジエン35部、酸性基含有単量体としてイタコン酸3.5部、連鎖移動剤としてtert-ドデシルメルカプタン0.25部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.35部の混合物を入れた容器Aから、これらの混合物の耐圧容器Bへの添加を開始し、これと同時に、重合開始剤として過硫酸カリウム1部の耐圧容器Bへの添加を開始することで重合を開始した。反応温度は75℃を維持した。
また、重合開始から4時間後(単量体組成物全体のうち70%添加後)、耐圧容器Bに水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体として2−ヒドロキシエチルアクリレートを1部、1時間半に亘って加えた。
重合開始から5時間半後、これら単量体組成物の全量添加が完了し、その後、さらに85℃に加温して6時間反応させた。
重合転化率が97%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状重合体を含む混合物を得た。この粒子状重合体を含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整した。その後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。さらにその後冷却し、所望の粒子状重合体を含む水分散液(固形分濃度:40%)を得た。この粒子状重合体を含む水分散液を用いて、表面酸量および体積平均粒子径D50を測定した。結果を表1に示す。
【0087】
<リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物の調製>
ディスパー付きのプラネタリーミキサーに、負極活物質として上述した炭素系負極活物質を100部、水溶性高分子としてカルボキシメチルセルロース(CMC、1質量%水溶液粘度:250mPa・s)を固形分換算で1.5部、導電材としてのアセチレンブラック(BET比表面積:68m2/g)を1部加えた。これらの混合物をイオン交換水で固形分濃度56%に調整した後、25℃で60分間混合した。次に、イオン交換水で固形分濃度52%に調整した後、さらに25℃で15分間混合し混合液を得た。
上記の混合液に、粒子状重合体を含む水分散液を、粒子状重合体の固形分換算で1.6部、及びイオン交換水を入れ、最終固形分濃度50%となるように調整し、さらに10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物を得た。なおこのリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物の調製に、上述のようにしてスラリー組成物の生産性を評価した。結果を表1に示す。
【0088】
<リチウムイオン二次電池用負極の製造>
上記リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ15μmの銅箔の上に塗付量が9〜10mg/cm2となるように塗布した。このリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物が塗布された銅箔を、0.5m/分の速度で、温度60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより、乾燥させた。その後、温度120℃のオーブン内で2分間加熱処理して負極原反を得た。
得られた負極原反をロールプレス機にて負極合材層の密度が1.6〜1.7g/cm3となるようプレスを行い、リチウムイオン二次電池用負極を得た。このリチウムイオン二次電池用負極を用いて、ピール強度を評価した。結果を表1に示す。
【0089】
<リチウムイオン二次電池用正極の製造>
プラネタリーミキサーに、正極活物質としてのLiCoO2100部、導電材としてのアセチレンブラック2部(電気化学工業(株)製、HS−100)、結着材としてのPVDF(ポリフッ化ビニリデン、(株)クレハ化学製、KF−1100)2部、さらに全固形分濃度が67%となるように2−メチルピリロドンを加えて混合し、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を調製した。
得られたリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミ箔の上に塗布した。このリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物が塗布されたアルミ箔を、0.5m/分の速度で温度60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより、乾燥させた。その後、温度120℃のオーブン内で2分間加熱処理して、正極原反を得た。
得られた正極原反をロールプレス機にて正極合材層の密度が3.40〜3.50g/cm3になるようにプレスを行い、リチウムイオン二次電池用正極を得た。
【0090】
<リチウムイオン二次電池の製造>
単層のポリプロピレン製セパレータ(幅65mm、長さ500mm、厚さ25μm;乾式法により製造;気孔率55%)を用意し、50mm×200mmに切り出した。
そして、作製した正極を、45mm×150mmに切り出した。さらに、作製した負極を、47mm×155mmに切り出した。これら切り出した正極、セパレータ、および負極をこの順に積層した後、捲き回して捲回体を作製し、アルミ包材外装に入れた。その後、電解液として濃度1.0MのLiPF6溶液(溶媒はエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)=3/7(体積比)の混合溶媒、添加剤としてビニレンカーボネート2質量%含有)を充填した。さらに、150℃のヒートシールをしてアルミ包材外装の開口を密封閉口し、リチウムイオン二次電池を製造した。得られたリチウムイオン二次電池を用いて、セル膨らみ(初期)、セル膨らみ(100サイクル後)、およびレート特性を評価した。結果を表1に示す。
【0091】
(実施例2)
タールピッチの添加量を、球形化黒鉛100部当たり25部とした以外は、実施例1と同様にして炭素系負極活物質Bを得た。
そして、上記得られた炭素系負極物質Bを炭素系負極活物質Aに替えて使用した以外は、実施例1と同様にして、粒子状重合体、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池を製造し、各種評価を行なった。結果を表1に示す。
【0092】
(実施例3)
メカノケミカル処理の際に、用いる上述の装置の回転速度を上昇させた以外は、実施例1と同様にして炭素系負極活物質Cを得た。
そして、上記得られた炭素系負極物質Cを炭素系負極活物質Aに替えて使用した以外は、実施例1と同様にして、粒子状重合体、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池を製造し、各種評価を行なった。結果を表1に示す。
【0093】
(実施例4、7、13)
粒子状重合体の調製の際に、用いる単量体をそれぞれ表1のように変更した以外は実施例1と同様にして、炭素系負極活物質、粒子状重合体、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池を製造し、各種評価を行なった。結果を表1に示す。
【0094】
(実施例5、12)
粒子状重合体の調製の際に、ラウリル硫酸ナトリウムの量をそれぞれ0.15部、0.40部とした以外は、実施例1と同様にして、炭素系負極活物質、粒子状重合体、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池を製造し、各種評価を行なった。結果を表1に示す。
【0095】
(実施例6)
メカノケミカル処理の際に、用いる上述の装置の回転速度を低下させた以外は、実施例1と同様にして炭素系負極活物質Dを得た。
そして、上記得られた炭素系負極物質Dを炭素系負極活物質Aに替えて使用した以外は、実施例1と同様にして、粒子状重合体、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池を製造し、各種評価を行なった。結果を表1に示す。
【0096】
(実施例8、9)
リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物の調製の際に、1質量%水溶液粘度が250mPa・sのCMCに替えて、1質量%水溶液粘度がそれぞれ1000mPa・s、1900mPa・sのCMCを使用した以外は、実施例1と同様にして、炭素系負極活物質、粒子状重合体、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池を製造し、各種評価を行なった。結果を表1に示す。
【0097】
(実施例10、11)
リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物の調製の際に、導電材の添加量を負極活物質100部当たりそれぞれ1.8部、0.3部とした以外は実施例1と同様にして、炭素系負極活物質、粒子状重合体、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池を製造し、各種評価を行なった。結果を表1に示す。
【0098】
(比較例1)
芯粒子としての球形化黒鉛(体積平均粒子径D50:15μm、タップ密度:0.85g/cm3、BET比表面積:6.0m2/g)100部に対し、低結晶性炭素の被膜形成材料としてのタールピッチを15部添加し、ヘンシェルミキサーを用いて200℃で30分混合した。得られた混合物を、窒素雰囲気下1000℃でプレ焼成後、更に窒素雰囲気下2600℃で焼成した後、アーステクニカ社製のクリプトロンを用いて粉砕し、炭素系負極活物質Eを得た。
そして、上記得られた炭素系負極物質Eを炭素系負極活物質Aに替えて使用した以外は、実施例1と同様にして、粒子状重合体、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池を製造し、各種評価を行なった。結果を表1に示す。
【0099】
(比較例2)
芯粒子としての球形化黒鉛(体積平均粒子径D50:15μm、タップ密度:0.85g/cm3、BET比表面積:6.0m2/g)100部に対し、低結晶性炭素の被膜形成材料としてのタールピッチを30部添加し、ヘンシェルミキサーを用いて200℃で30分混合した。得られた混合物を、窒素雰囲気下1000℃でプレ焼成後、アーステクニカ社製のクリプトロンを用いて粉砕し、更に窒素雰囲気下2600℃で焼成して、炭素系負極活物質Fを得た。
そして、上記得られた炭素系負極物質Fを炭素系負極活物質Aに替えて使用した以外は、実施例1と同様にして、粒子状重合体、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池を製造し、各種評価を行なった。結果を表1に示す。
【0100】
(比較例3)
粒子状重合体の調製の際に、用いる単量体を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、炭素系負極活物質、粒子状重合体、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池を製造し、各種評価を行なった。結果を表1に示す。
【0101】
(比較例4)
メカノケミカル処理の際に、用いる上述の装置の回転速度を更に上昇させた以外は、実施例3と同様にして炭素系負極活物質Gを得た。
そして、上記得られた炭素系負極物質Gを炭素系負極活物質Aに替えて使用した以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物の調製を試みたが、過度な増粘によりスラリー組成物を調製することができなかった。
【0102】
なお、以下に示す表1中、
「ST」はスチレンを示し、
「BD」は1,3−ブタジエンを示し、
「IA」はイタコン酸を示し、
「AA」はアクリル酸を示し、
「2−HEA」は、2−ヒドロキシエチルアクリレートを示す。
【0103】
【表1】
【0104】
表1の実施例1〜13および比較例1〜4から、実施例1〜13では、二次電池負極用スラリー組成物の生産性、並びに二次電池のセルの膨らみ抑制およびレート特性を、バランスよく確保できていることがわかる。
ここで、表1の実施例1、2および6より、炭素系負極活物質の比表面積を調節することで、二次電池のレート特性を更に向上させつつ、セルの膨らみを一層抑制しうることがわかる。
また、表1の実施例1、3より、炭素系負極活物質の表面官能基量を調節することで、スラリー組成物の生産性を更に向上させうることがわかる。
そして、表1の実施例1、4、7、13より、粒子状重合体の表面酸量を調節することで、スラリー組成物の生産性を更に向上させつつ二次電池のセルの膨らみを一層抑制しうり、また負極のピール強度を向上させうることがわかる。
加えて、表1の実施例1、5、12より、粒子状重合体の体積平均粒子径D50を調節することで、スラリー組成物の生産性を更に向上させつつ二次電池のセルの膨らみを一層抑制しうり、また負極のピール強度を向上させうることがわかる。
また、表1の実施例1、8、9より、水溶性重合体であるCMCの1質量%水溶液粘度を調節することで、二次電池のレート特性を更に向上させうることがわかる。
そして、表1の実施例1、10、11より、導電材であるアセチレンブラックの量を調節することで、二次電池のレート特性を更に向上させつつセルの膨らみを一層抑制しうり、また負極のピール強度を向上させうることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明によれば、生産性に優れ、また二次電池のセルの膨らみおよび内部抵抗の上昇を抑制しうる二次電池負極用スラリー組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、二次電池のセルの膨らみおよび内部抵抗の上昇を抑制しうる二次電池用負極を提供することができる。
そして、本発明によれば、セルの膨らみが抑制され、またレート特性に優れる二次電池を提供することができる。
図1